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【発明の名称】 中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷及びその製造方法
【発明者】 【氏名】西堀 貞夫

【氏名】小林 龍巳

【氏名】白井 真紀

【氏名】中村 雄一郎

【要約】 【課題】靴等の種々の履物に利用可能であり、通気性等の衛生面及び安定性や衝撃吸収性等の機能面に優れ、窮屈感がなく、履き心地及び歩き具合の良好な、中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷(及びその製造方法)を提供する。

【解決手段】クッション材10は、中空樹脂線条体30を、任意の形状に圧縮成形することによって製造されたものであり、足1から掛る荷重を支える靴底12又は中敷13として用いられることが好ましい。また、通気性を備え、足1で踏み着ける(加圧)ことにより、各線条31内の空気室31a及び線条31と線条31によって形成される空隙に存在する空気が踏出され、足1を浮かせる(減圧する)ことにより、空気室31a及び上記空隙に空気が吸込まれる構成である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも熱可塑性樹脂から成る中空の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る所定の嵩密度の空隙を備える立体構造体を圧縮成形して成ることを特徴とする中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷。
【請求項2】前記立体構造体は、通気性を備えることを特徴とする請求項1記載の中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷。
【請求項3】前記立体構造体は、加圧されることにより内部の空気が踏出され、減圧されることにより内部に空気を吸込むことを特徴とする請求項1又は2記載の中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷。
【請求項4】前記立体構造体は、荷重及び床反力を足底全面に分散させることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷。
【請求項5】前記立体構造体は、動摩擦係数が高いことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷。
【請求項6】雌型の上に、少なくとも熱可塑性樹脂から成る中空の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る所定の嵩密度の空隙を備える立体構造体を置き、該立体構造体を前記雌型と雄型で型締めし、成形することを特徴とする中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷の製造方法。
【請求項7】少なくとも熱可塑性樹脂から成る中空の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る所定の嵩密度の空隙を備える立体構造体を、直接又は間接的に足で踏むことにより加圧し、成形することを特徴とする中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、靴等の種々の履物に利用される靴底又は中敷及びその製造方法に係り、詳しくは、少なくとも熱可塑性樹脂から成る中空の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る所定の嵩密度の空隙を備える立体構造体から成り、通気性等の衛生面及び安定性や衝撃吸収性等の機能面に優れ、窮屈感がなく、履き心地及び歩き具合が良好で、廉価な、中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在では、革靴、スニーカー、ブーツ、サンダル、スリッパ等、多種多様の履物(以下、単に靴又は靴底という)が普及している。中には、靴底の上に中敷を敷いて使用する場合もある。中敷には、クッション性を高めると共に、身長を高く見せる等の効果もある。
【0003】また、靴底や中敷には、足の裏を刺激する等、健康面を重視したものもある。足の裏は第2の心臓と言われているように、足の裏を刺激することは非常に効果的である。これは、足の裏を刺激する反射で全身が刺激され、体の各器官が活性化するためである。ここでは、機能が亢進し過ぎているものは抑えられ、機能が低下しているものは活発になる等の調整がされる。また、副交感神経の活性が高まり、心身の緊張が取れ、リラックスできるという効果もある。さらに、足の血液循環が改善されるので全身の血行が良くなり、様々な状態が改善される等の効果もある。
【0004】靴や中敷には、抗菌・防臭加工が施されていることが多い。一般的には、このように、衛生的であると共に、窮屈感がなく、爪先当たりがなく、履き心地及び歩き具合が良好で、安定性や衝撃吸収性等の機能面においても優れている程、靴や中敷として好ましい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、抗菌・防臭加工がされていると言っても、現状の靴(特に革靴等)は、靴内の換気が悪く、発汗等に好適に対処していないため、不衛生であることは否めない。一般に、人の汗腺はほぼ全身に開口しており、その分泌様式によりエクリン腺(小汗腺)とアポクリン腺(大汗腺)の2種類に分けられるが、人の足底に開口している汗腺はエクリン腺であり、特に足底はこの汗腺密度が全身の中でも最も高い部位である。また、一般の汗腺の開口部は皮膚の凹面に位置するのに対して、足底は逆に凸面に開口しているため、接触した物体(靴底等)に趾紋として付着する。また、足底の汗の成分は他の部位の汗よりも食塩濃度が高いので、蒸発し難い。また、体毛があれば毛の機能と空気との関係で空間が形成され、べたつかない状態となり通気性が保たれるが、足底は全身の皮膚中で唯一体毛が生えていないため、発汗し難いという問題もある。このように、足底は汗腺密度が高く、さらに不感蒸泄量が多いにもかかわらず、閉塞性の靴を履いていることが多いため、換気状態は悪化しており、汗により不快感が生じ、水虫や悪臭の原因にもなっている。
【0006】また、舗装された歩道を長時間歩行する際には、靴擦れは勿論、足から伝わる膝や腰への負担も軽視できない。従って、衝撃吸収性の良い靴底又は中敷が求められるが、そのような機能を有するものは比較的高価であることが多く、広く一般的に普及する程、廉価で提供することは困難である。また、身長の低い人等は、中敷でカバーすることもあるが、通気性が悪く、靴内で滑り易い等、材質や形状に難点が多く、履き心地及び歩き具合も悪い等の不都合がある。
【0007】そこで、上記課題に鑑み、本発明は、少なくとも熱可塑性樹脂から成る中空の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る所定の嵩密度の空隙を備える立体構造体から成り、通気性等の衛生面及び安定性や衝撃吸収性等の機能面に優れ、窮屈感がなく、履き心地及び歩き具合が良好で、廉価な、中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷を提供することを目的とする。また、上記中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷の好適な製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、少なくとも熱可塑性樹脂から成る中空の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る所定の嵩密度の空隙を備える立体構造体を圧縮成形して成ることを特徴とする中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷である。
【0009】「連続線条及び/又は短線条」は、好ましくは熱可塑性樹脂、例えば、汎用プラスチック(ポリオレフィン、ポリスチレン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニール等)、エンジニアリングプラスチック(ポリアミド、ポリカーボネート、飽和ポリエステル、ポリアセタール等)等である。例えば、ポリエチレン(以下PEと記す)、ポリプロピレン(以下PPと記す)又はナイロン等の熱可塑性エラストマーより成ることが好ましい。
【0010】特に、PE,PP等のポリオレフィン系樹脂に、酢酸ビニル樹脂(以下VACと記す)、酢ビエチレン共重合体(以下EVAと記す)又は、スチレンブタジエンスチレン(以下SBSと記す)を混合したものが好ましい。このとき、ポリオレフィン系樹脂とVAC又はEVAの酢ビ含有率の混合比は、70〜97重量%:3〜30重量%、好ましくは80〜90重量%:10〜20重量%が好ましい。これは、VAC又はEVAが3重量%以下であると反発弾性が低下し、30重量%以上になると熱的特性が低下するからである。また、ポリオレフィン系樹脂とSBSとの混合比は、50〜97重量%:3〜50重量%、好ましくは70〜90重量%:10〜30重量%が好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂は再生樹脂であっても良い。また、多層に重ね合わせることも好ましい。
【0011】「連続線条及び/又は短線条」の構造は中空が好ましい。特にパイプ状が好ましい。中空の連続線条及び/又は短線条の場合、空気が管の中に閉じ込められることになり、空気ばねの特性が発現し、独特のクッション性が生じるので好ましい。座屈も防止できる。また、空気が入ることによって、立体構造体の剛性が保たれる。中空は連続であっても良いし、不連続であっても良い。1本の線条に中空部と該中空部が塞がれた部分とを共に有している場合等が一例として挙げられる。
【0012】「連続線条及び/又は短線条」の線径は、1.0〜3.0mm、特に1.5〜2.0mmであることが好ましい。これ以下であると、線条に腰が無くなり、融着部が多くなって空隙率が低下する。これ以上であると、線条に腰がありすぎ、ループ又はカールが形成されず、融着部が少なくなり、強度が低下する。また、中空率が10%以下では重量軽減に寄与せず、80%以上ではクッション性が低下する。
【0013】「立体構造体」の嵩密度は、0.005〜0.08g/cm3、好ましくは、0.02〜0.06g/cm3であることが好ましい。嵩密度0.005g/cm3以下では、強度が低下する。嵩密度0.08g/cm3以上では重量軽減が果たせず、弾性が消失する。また、この中空樹脂線条体は全体が一定の密度であるに限らず、所定間隔毎に粗密構造であっても良い。この場合の嵩密度は、粗の部分では、0.005〜0.03g/cm3、好ましくは0.008〜0.03g/cm3、特に0.01〜0.03g/cm3が好ましい。密の部分では、0.03〜0.08g/cm3、好ましくは0.04〜0.07g/cm3、特に0.05〜0.06g/cm3が好ましい。
【0014】「立体構造体」の空隙率は、96〜99%、好ましくは、97〜99%、特に97〜98%であることが好ましい。靴底又は中敷としての弾性と強度を維持し、重量を軽減するため、空隙率は上記範囲が好ましい。
[空隙率(%)]=(1−[嵩密度]/[樹脂の密度])×100【0015】「靴底」とは、革靴、スニーカー、ブーツ、デッキモカシン又はスノーシューズ等の靴底に限らず、サンダル又はスリッパ等の底部分も含むものである。「中敷」とは、靴内において靴底に脱着可能に取り付けられるものが好ましい。なお、ここでは、少なくとも靴底又は中敷を中空樹脂線条体により構成すれば良いが、靴全体を中空樹脂線条体で構成しても構わない。また、靴底又は中敷の一部(例えばコアになる部分等)を中空樹脂線条体で構成するものであっても良い。
【0016】請求項2記載の発明は、前記立体構造体は、通気性を備えることを特徴とする請求項1記載の中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷である。
【0017】ここでは、線条と線条によって形成される空隙に通気性を備えることは勿論、各線条内の中空部にも通気性を備えることが好ましい。これにより、靴内の空気の入換えを招き、靴内換気を好適に促すことができる。
【0018】請求項3記載の発明は、前記立体構造体は、加圧されることにより内部の空気が踏出され、減圧されることにより内部に空気を吸込むことを特徴とする請求項1又は2記載の中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷である。
【0019】「内部」とは、各線条内の中空部又は線条と線条によって形成される空隙をいう。ここでは、空間を加圧する(踏み着ける)ことによって内部の空気が踏出され、減圧する(足を浮かせる)と内部に空気を吸込むことにより(ふいご現象)、空気の対流が生じるので、靴内換気の面で優れていると共に、クッション特性(エアクッション)により衝撃吸収性においても優れている。また、エアクッションを踏むことにより、足の裏が好適にマッサージされるので、むくみ緩和効果や疲労回復効果もある。
【0020】請求項4記載の発明は、前記立体構造体は、荷重及び床反力を足底全面に分散させることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷である。
【0021】靴底又は中敷は、加圧されることにより足底全面に好適にフィットして足底全面を受けるため、土踏まずの部分にも荷重が分担され、足底の面圧が好適に低下する。例えば、立脚した足底が地面に着いているとき、体重及び慣性力が地面を圧する力と同等の力が地面から足底への反力(床反力)として働いているが、その反力を靴底又は中敷全面で緩和するため、疲労が少ない。このように、応力分散効果(ストレスエスケープメント)が働くため、衝撃吸収性に優れている。
【0022】請求項5記載の発明は、前記立体構造体は、動摩擦係数が高いことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷である。
【0023】このように、動摩擦係数が高ければ、靴内滑りが少なく、防滑特性が良いので、特に中敷として利用することが好ましい。
【0024】請求項6記載の発明は、雌型の上に、少なくとも熱可塑性樹脂から成る中空の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る所定の嵩密度の空隙を備える立体構造体を置き、該立体構造体を前記雌型と雄型で型締めし、成形することを特徴とする中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷の製造方法である。
【0025】「雌型」及び/又は「雄型」は、コンクリート製が好ましいが、金属又は繊維強化プラスチック(FRP)等の複合合成樹脂材料から構成したものであっても良い。特に、「雄型」は、石膏等に足を圧接することにより趾紋を採取して仮型枠を製造し、該仮型枠にコンクリート等の原料を垂らし込んで形成することが好ましい。
【0026】型締めの際には、中空樹脂線条体を軟化させるのに必要な温度条件で、ヒーター、湯又はスチーム等により、雌型及び/又は中空樹脂線条体を加熱することが好ましい。また、はみ出した端末はトリミングすることが好ましい。型締め後には、中空樹脂線条体を冷却してばね特性を固定することが好ましい。冷却には自然冷却又は強制冷却があり、強制冷却は冷水を用いることが好ましい。
【0027】この製造方法によれば、スクライバーによる足型の平面測定ではなく、瞬時に立体的に測定から成形まで可能である。また、製品特性や細かなニーズに対応可能な靴底又は中敷の製造が容易となる。
【0028】請求項7記載の発明は、少なくとも熱可塑性樹脂から成る中空の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る所定の嵩密度の空隙を備える立体構造体を、直接又は間接的に足で踏むことにより加圧し、成形することを特徴とする中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷の製造方法である。
【0029】「間接的」とは、靴下又は耐熱用ガード等を介して、中空樹脂線条体を足で踏むことが好ましい。例えば、軟化点の低い樹脂の場合は、ヒーター、湯又はスチーム等で加熱した樹脂を素足で直接加圧することにより、趾紋を採取することが好ましい。一方、軟化点の高い樹脂の場合は、同加熱した樹脂を靴下又は耐熱用ガード等を装着した足で間接的に加圧することが好ましい。このように、直接又は間接的に足で踏むことにより、ほぼ全面で負荷を分担でき、面圧が下がるため好ましい。このとき、上記同様、はみ出した端末はトリミングすることが好ましい。型締め後には、中空樹脂線条体を冷却してばね特性を固定することが好ましい。冷却には自然冷却又は強制冷却があり、強制冷却は水を用いることが好ましい。
【0030】この製造方法によれば、スクライバーによる足型の平面測定ではなく、瞬時に立体的に測定から成形まで可能である。また、雄型が不要である。特に、細部まで再現可能であるため、個人の足に合わせてオリジナルなものを成形する等、不特定多数のニーズや本人専用のオーダーメイドにも細かく対応でき製品の付加価値が高くなる。
【0031】
【発明の実施の形態】まず、中空樹脂線条体30について説明する。図1(a)に示す通り、本実施形態で使用する中空樹脂線条体30は、熱可塑性樹脂、例えば、PE,PP等のポリオレフィン系樹脂と、VAC,EVA又はSBSとの混合物(例えば、熱可塑性エラストマー)を原料とするパイプ状の連続線条及び/又は短線条(以下、単に線条31という)がランダムに絡合集合して成る空隙を備える立体構造体であり、この線条31は、複数のループ又はカールを形成している(図1(a)の部分拡大図A参照)。本実施例において、中空樹脂線条体30を構成する線条31は空気室31aを備え(図1(a)の部分拡大断面図B参照)、空気室31a内の空気は、外部から加圧されることにより踏出され、減圧されることにより空気を吸込む構成である(ふいご現象)。
【0032】ここでは、この立体構造体の嵩密度を、0.005〜0.03g/cm3、好ましくは、0.008〜0.03g/cm3、特に0.01〜0.03g/cm3とすることが好ましい。また、この立体構造体の空隙率は、96〜99%、好ましくは、97〜99%、特に97〜98%とすることが好ましい。
【0033】次に、中空樹脂線条体30を圧縮成形して成り、靴底12又は中敷13として利用されるクッション材10について説明する。クッション材10は、上記混合物を原料として成形された立体構造体である中空樹脂線条体30を、後述するように任意の形状に圧縮成形することによって製造されたものであり、図1(b)の側面図に示す通り、足1から掛る荷重を支える靴底12又は靴11内に敷く中敷13として用いられることが好ましい。
【0034】クッション材10は、中空樹脂線条体30から成るため、通気性が抜群である。例えば、線条31と線条31によって形成される空隙に通気性を備えることは勿論、各線条31内の空気室31aにも通気性を備えることが好ましい。
【0035】クッション材10は、足1で踏み着ける(加圧)ことにより、各線条31内の空気室31a及び線条31と線条31によって形成される空隙に存在する空気が踏出され、足1を浮かせる(減圧する)ことにより、空気室31a及び上記空隙に空気が吸込まれる(ふいご現象)。これにより、クッション材10内部に空気の対流が生じ、靴11内の空気の入換えを招き、靴内換気を好適に促すことができる。
【0036】また、上記ふいご現象により、クッション材10はばね特性(エアクッション機能)を備えることとなり、衝撃吸収性においても優れている。特に、エアクッション機能を備えたクッション材10を踏むことにより、足1の裏側(足底2)が好適にマッサージされるので、むくみ緩和効果や疲労回復効果もあり、長時間の歩行にも好適である。
【0037】また、クッション材10のばね特性は、中空樹脂線条体30の密度、材質及び/又は線径によって部分毎に可変とすることができる。また、圧縮成形の際の雄型のストロークを調整することにより、クッション材10の厚みを自在に調節し、形状又は大きさの異なるクッション材10を成形することができる。例えば、ヒール部10aを高くすることにより(例えば3cm)、身長を高く見せる効果も備えることができる(図1(b)参照)。
【0038】図2又は図3に示す通り、クッション材10は、靴底12としても良いし、中敷13としても良い。また、靴底12又は中敷13以外の靴11の構成部分をクッション材10で構成しても良い。
【0039】例えば、図2(a)の側面断面図に示す通り、クッション材10を靴底12(コアとなる部分)の形状に成形することができる。また、図2(b)の側面断面図に示す通り、靴11の全体をクッション材10で形成し、足1を覆うように構成することもできる。このとき、クッション材10の周囲を被覆物14(例えば、革靴等の場合は天然皮革若しくは人工皮革等、又はスニーカー等の場合は布等)で覆うことが好ましい。被覆物14はクッション材10の成形後に覆うことが好ましい。
【0040】また、図3(a)又は図3(b)の斜視図に示す通り、靴11内に敷く中敷13として成形することもできる。中敷13とした場合、現在履いている革靴やスニーカー等に敷くだけで、そのまま使用でき好適である。特に中敷13として利用する場合は、動摩擦係数を高くし、防滑特性を向上させることにより、靴11内での滑りが少なくなるので好ましい。
【0041】なお、クッション材10は、図示した形状に限定されないことは言うに及ばず、適宜形状に成形可能であり、種々の形状の履物に対応可能である。例えば、図4(a)に示すスニーカー111、図4(b)に示すウエスタンブーツ211、図4(c)に示すデッキモカシン311、図4(d)に示すスノーシューズ411等の各種形状に適応可能なようにクッション材110,210,310,410を成形可能である。
【0042】次に、一般的な歩行時における足底圧変化及び着力点軌跡について説明し、本実施形態の靴底12又は中敷13の具体的な作用を説明する。図5(a)の説明図に示す通り、足底2は、土踏み部3や足趾部5等の立脚時又は歩行時等に地面と接触する部分(図中斜線部分)と土踏まず部4等の地面と接触しない部分(上記斜線部以外の部分)とに分けることができる。ここでは、図5(b)の説明図に示す通り、地面と接触する部分(土踏み部3)は、足前方部(MP部)、足中央部(MID/FOOT部)、踵部(HEEL部)の3つの部位に分類し、さらに、MP部を内側a、中間b、外側cの3つの部位に分類する。また、足趾部5も第1趾を内側a、第2趾及び第3趾を中間b、第4趾及び第5趾を外側cとに分類し、足底2の地面と接触する部分を合計8分割する。
【0043】図6の圧力分布図に、成人男子21〜40歳の歩行中の足底2を8分割し、それぞれの部位の最大ピーク足底圧の平均値(図中丸印)と標準偏差(図中縦線)を示す。例えば、HEEL部に掛かる荷重圧力は約400〜600g/cmの範囲内であり、平均510g/cmを示す。MID/FOOT部に掛かる荷重圧力は約260〜420g/cmの範囲内であり、平均340g/cmを示す。MP部の内側aに掛かる荷重圧力は約310〜590g/cmの範囲内であり、平均460g/cmを示す。MP部の中間bに掛かる荷重圧力は約430〜590g/cmの範囲内であり、平均510g/cmを示す。MP部の外側cに掛かる荷重圧力は約260〜480g/cmの範囲内であり、平均370g/cmを示す。足趾部の内側aに掛かる荷重圧力は約310〜700g/cmの範囲内であり、平均510g/cmを示す。足趾部の中間bに掛かる荷重圧力は約260〜510g/cmの範囲内であり、平均380g/cmを示す。足趾部の外側cに掛かる荷重圧力は約60〜320g/cmの範囲内であり、平均190g/cmを示す。
【0044】上記結果からも明らかなように、最も高い圧力はHEEL部、MP部の内側a及び中間b、足趾部5の内側aに集中し、MID/FOOT部、MP部の外側c、足趾部5の中間b及び外側cに掛る圧力は低い。従って、足底の圧力分布は一定ではないことがわかる。
【0045】また、図7の説明図に示す通り、歩行時(例えば速度1.32m/s)における着力点は、踵の中央部2aから始まり、図中矢印に示す通り、第3又は第4中足骨遠位端2bまですばやく移動し、その付近で移動速度が落ちると同時に方向が変化し、多少ゆるやかに前進した後、第1趾2c方向にすばやく移動する。
【0046】このように、足底圧や着力点は上記のように変化するが、図8(a)及び図8(b)に示す従来の一般的な靴底512では、ヒール部分512a及び前方部分512bに荷重が集中し、足底2の土踏まず部4に圧力が分配されず、疲労し易い等の不都合がある。
【0047】それに比べ、本実施形態の靴底12又は中敷13では、クッション材10は、踏み着けられることにより足底2全面に好適にフィットして足底2全面を受けるため、土踏み部3だけでなく、土踏まず部4にも荷重が分担され、足底2の面圧が好適に低下する。例えば、立脚した足底2が地面に着いているとき、体重及び慣性力が地面を圧する力と同等の力が地面から足底2への反力(床反力)として働いているが、その反力をクッション材10で緩和するため、疲労が少ない。このように、クッション材10は、エアクッション機能だけでなく、応力分散効果(ストレスエスケープメント)も働くため、衝撃吸収性に非常に優れている。なお、足底2の土踏み部3又は土踏まず部4に好適にフィットするように、クッション材10には適宜盛り上り部を形成することが好ましい。
【0048】次に、本実施形態のクッション材10の製造装置及び製造方法について説明する。なお、中空樹脂線条体30の製造方法については後述する。
【0049】クッション材10は、靴底12又は中敷13として利用されるため、ここでは足型を測定し、趾紋を採取することが好ましい。一般に、靴11等を製造するためには、図9(a)及び図9(b)に示す通り、第2趾先端点1aから踵点1bまでの足底2の全長L、内側中足点1cから外側中足点1dまでのボール幅W、内側中足点1cから踵点1bまでの内不踏長L、及び踝点1eから踵点1bまでの足底2の長さL等、また、各部位での床から足甲6までの高さ(第1趾関節高H、ボール高H、足背高H等)を測定する必要がある。
【0050】このとき、例えば、図10の斜視図に示す通り、スクライバー7等により、第2趾先端点1a、踵点1b、内側中足点1c、外側中足点1d等を倣い、平面的に測定することができるが、本実施例では、下記方法により、瞬時に立体的に測定から成形までが可能である。
【0051】本実施例のクッション材10の製造方法には主として2つの方法がある。1つは、仮型枠32から雄型33を作成し(図11参照)、雄型33と雌型34により圧縮成形して製造する方法である(図12参照)。また1つは、雄型33に代えて足1で直接又は間接的に圧縮成形して製造する方法である(図13参照)。
【0052】まず、雄型33と雌型34により圧縮成形する方法においては、図11(a)の側面図に示す通り、石膏等の適宜の材質に足1を圧接することにより足型を採取し、雄型33の仮型枠32を作る。図11(b)の側面図に示す通り、この足型を採取した仮型枠32にコンクリート等の雄型33の原材料33aを垂らし込んで固め、仮型枠32から離形することにより雄型33を作る。このとき、仮型枠32には、適宜離形材を塗布しておくことが好ましい。
【0053】図12(a)の側面断面図に示す通り、雌型34の上に中空樹脂線条体30を置き、図中矢印に示すように、雄型33で圧縮成形する。本製造方法においては、中空樹脂線条体30の線条31を構成する原料樹脂の軟化点以上の温度が必要であるため、雄型33、雌型34及び/又は中空樹脂線条体30自体を加熱することが好ましい。このとき、湯(好ましくは70度以上)又はスチーム等で加熱することが好ましい。また、熱伝導体(例えばヒーター等)を雄型33又は雌型34に埋め込んで加熱することも好ましい。保温効果を高めるために、雄型33又は雌型34の周囲を断熱材(例えば木、発泡樹脂等の容器等)で覆うことも好ましい。
【0054】雄型33及び雌型34は、鉄等の金属、繊維強化プラスチック(FRP)等の複合合成樹脂材料から構成したものであっても良いが、コンクリート製が好ましい。コンクリートであれば、成形性に優れ、混練して型枠に流し込むだけで製造できるため、雄型33及び雌型34自体のコストが削減される上(例えば従来の金型の1/50〜1/100)、複雑な形状の雄型33及び雌型34を製造することもできるし、同一物を容易に複製することもできる等、精度も向上する。また、コンクリートであれば製品に馴染み易いため、型締めするだけで、クッション材10の表面を研磨したように滑らかに成形することもできる。また、コンクリートであれば、クッション材10の成形時における加圧力にも好適に耐えられる等、耐久性も高い。また、離形の際にも、雄型33及び雌型34がコンクリート製であれば、原料樹脂が溶けて雄型33及び雌型34に接着することもなく、離型剤が不要である。
【0055】雄型33は、パンタグラフジャッキ、油圧シリンダ、空気圧シリンダ等により、中空樹脂線条体30を上から型締めすることが好ましい。雄型33の自重を利用して型締めしても良い。型締め時には、加圧力等を適宜調整することにより、クッション材10の密度、ばね特性又は剛性等を自在に変えることができる。また、厚さ等も任意に調整できるため、オーダーメイド等にも好適に応じられ、不特定多数の細かなニーズにも簡単に対応できる。
【0056】また、型締め状態を所定時間維持した後、熱カッター等で、雄型33の周縁を倣って、雄型の端からはみ出したバリをトリミングすると同時に端末を熱溶着することが好ましい。この段階でトリミングすることにより、端末のほどけがなくなると共に、後から寸法取りする必要もなく、処理が簡単である。その後、雌型34に冷却水を投入する等して、中空樹脂線条体30を固化する。自然冷却しても良いが、水を入れて急冷することより成形時間が短縮できる。そして、図12(b)の平面図に示す通り、硬化時間経過後、離型し、クッション材10を得る。
【0057】また、足1で直接又は間接的に圧縮成形する方法においては、図13(a)の側面図に示す通り、素足で中空樹脂線条体30を直接踏み込むことにより加圧し、趾紋を採取し、圧縮成形する。このとき、中空樹脂線条体30は、湯、スチーム又はヒーター等で加熱することが好ましい。なお、素足で踏む場合は、軟化点の低い合成樹脂を原料樹脂としている場合が好ましい。一方、軟化点の高い合成樹脂を原材料としている場合は、図13(b)の側面図に示す通り、足1に靴下等の耐熱用ガード8を装着して、中空樹脂線条体30を間接的に踏み込むことにより加圧し、趾紋を採取し、圧縮成形することが好ましい。その他については、雄型33と雌型34で圧縮成形する製造方法と概ね同様であるので、上記説明を援用する。
【0058】次に、上記中空樹脂線条体30の製造方法の一例について説明する。図14の模式図に示す通り、本実施形態における中空樹脂線条体30の製造方法において、好適には、PE,PP等のポリオレフィン系樹脂と、VAC、EVA又はSBS等の原料樹脂は、後述するタンブラー、切り出しフィーダ、或いは定量供給機等を経てドライブレンドされ、又は、混合若しくは溶融混合してペレット化されて、押出成形機20のホッパー21へ送られる。
【0059】具体的には、原料樹脂、例えば、PPとSBSをタンブラー(加藤理機製作所製KR混合機)で、40rpm、15分間混合する。
【0060】次に、図15の斜視図に示す通り、この原料樹脂から成る混合物を単軸押出成形機20のホッパー21より投入し、所定温度(例えば200℃〜260℃)で溶融混錬し、成形ダイ22に設けた所定径の多数のノズルから所定の押出速度において溶融押し出し、後述の引取機23により引き取ることにより、所定の線径(例えば、600〜90,000デニール、好ましくは3,000〜30,000デニール、より好ましくは、6,000〜10,000デニール)の中空の線条31を形成し、この溶融状態の線条31に、例えば、直径1〜10mm、好ましくは直径1〜5mmのループを形成させ、隣同士の線条31とバス25内(水中)で接触絡合させることによりランダムなループを形成する。このとき、接触絡合部位の少なくとも一部は、相互に溶融接着されることが好ましい。
【0061】上記ランダムなループの集合である立体構造体の厚さ及び嵩密度は、バス25内の引取機23の引き取りロール24,24間で設定される。この立体構造体(例えば、厚さ10〜200mm、幅2,000mm)は、線条31が、カール又はループ状にランダムに成形され、水中で固化し、巻き取りロール26,26により中空樹脂線条体30として取り出される。
【0062】また、水中においてこのループが形成された線条31を引取機23により引き取る際には、引取機23の速度を変更することで、クッション特性を変更しても良い。その場合、この立体構造体の嵩密度を比較的増大させる場合、0.03〜0.08g/cm3、好ましくは、0.04〜0.07g/cm3、特に0.05〜0.06g/cm3とすることが好ましい。また、この立体構造体の空隙率を減少させる場合、91〜97%、好ましくは、92〜96%、特に93〜94%とすることが好ましい。
【0063】また、例えば、引き取りロール24,24の引き取り速度をタイマー等により設定時間毎に、設定時間内、低速にする等、引取機23の引き取り速度を所定の間隔(例えば3〜5m)で低速に調整することにより、中空樹脂線条体30の長手方向において、所定間隔ごと(例えば、30〜50cm)に低速引き取り時に形成された嵩密度の大きい部分とそれ以外の部分、すなわち、粗密を連続して形成しても良い。
【0064】上記製造方法によって、一例として、嵩密度0.03g/cm3、厚さ50mmの中空樹脂線条体30を得た。なお、立体構造体は、それぞれ1種又は複数種の異なる特性の組合せから成るものを用いて製造することもできる。なお、上記製造方法により成形された中空樹脂線条体30の製造例及び実験結果等、その他詳細については、本発明者が先に開発した特願2000−246907号等を参照されたい。
【0065】
【発明の効果】請求項1〜5に記載された発明によれば、通気性等の衛生面、及び安定性や衝撃吸収性等の機能面に優れ、窮屈感がなく、靴擦れも少なく、履き心地及び歩き具合が良好な、靴底又は中敷を廉価で提供することができる。具体的には、(1)中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷は、通気性を備えるので、靴内の空気の入換えを招き、靴内換気を好適に促すことができ、衛生面において優れている。
(2)中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷は、内部で空気の対流が生じるので、靴内換気の面で優れていると共に、クッション特性(エアクッション)により衝撃吸収性においても優れている。また、エアクッションを踏むことにより、足の裏が好適にマッサージされるので、むくみ緩和効果や疲労回復効果においても優れている。
(3)中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷は、足底全面に好適にフィットして、土踏まずの部分にも荷重が分担され、足底の面圧が好適に低下するため、応力分散効果(ストレスエスケープメント)が働き、疲労が少なく、衝撃吸収性においても優れている。
(4)中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷は、動摩擦係数が高く、靴内滑りが少ないので、防滑特性において優れている。
(5)中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷は、水洗いも可能であり、乾燥も早いため、衛生面において優れている。
(6)中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷は、形状が自在であるので、各種製品要求、特性に容易に応じることができると共に、不特定多数の細かなニーズにまでも対応でき、製品としての付加価値が高くなる。
(7)中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷は、熱可塑性樹脂製食用油包装容器及び廃棄農業用プラスチックフィルム等の再利用用途としての再生樹脂であるPE等の樹脂を高付加価値な製品として再生することができると共に、中空樹脂線条体から成るクッション材自体が、再溶融することにより、何回でも再生可能である。このように、リサイクル性に優れており、使用済み後の環境にも負荷を与えないよう配慮されている。また、リサイクル樹脂の使用が可能であるので、安価に製造することが可能である。
【0066】また、請求項6〜7に記載された発明によれば、上記中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷を、好適に製造することができる。特に、この製造方法によれば、スクライバーによる足型の平面測定ではなく、瞬時に立体的に測定から成形まで可能である。また、雄型を不要とすることもできる。さらに、細部まで再現可能であるため、個人の足に合わせてオリジナルなものを成形する等、不特定多数の細かなニーズや本人専用のオーダーメイドにも細かく対応でき製品の付加価値が高くなる。
【0067】なお、本発明における中空樹脂線条体を用いた靴底又は中敷の形態は、上記に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得るものである。また、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、流行(時代の流れ)等によりファッション性を加えることができるものであり、それらの改変、改質等も本発明の技術的範囲に含まれることとなる。
【出願人】 【識別番号】591007789
【氏名又は名称】アイン株式会社総合研究所
【出願日】 平成14年4月24日(2002.4.24)
【代理人】 【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
【公開番号】 特開2003−310302(P2003−310302A)
【公開日】 平成15年11月5日(2003.11.5)
【出願番号】 特願2002−122563(P2002−122563)