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【発明の名称】 型紙パターンの自動作製方法及び型紙パターンの自動作製システム。
【発明者】 【氏名】柿沼 よしえ

【氏名】灘野 朋美

【要約】 【課題】加齢により体形変化の顕著な高齢者が着易くて、着用時のシルエットの美しい衣服の型紙パターンを自動的に作製する方法及びそのシステムを提供する。

【解決手段】型紙パターンの自動作製方法としては、顧客の人体の体形を3次元計測装置を用いて計測する工程と、展開ソフトを持つパソコンを使用して前記3次元人体計測データをワイヤーフレーム化した複数のパネルから成る2次元データに変換する工程と、アパレルCADを使用して前記2次元データより型紙パターンを作製する工程とから成り、前記3次元人体計測データよりワイヤーフレーム化したヌードボディモデルを作製する工程と、特定の部位にゆとり値を導入してダミーボディモデルを作製する工程と、前記ダミーボディモデルから複数のパネルから成る2次元化された複数の型紙原型に分離変換する工程とを含むものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 顧客の人体の体形を3次元計測装置を用いて計測する工程と、展開ソフトを持つパソコンを使用して前記3次元人体計測データをワイヤーフレーム化した複数のパネルから成る2次元データに変換する工程と、アパレルCADを使用して前記2次元データより型紙パターンを作製する工程とから成り、前記3次元人体計測データを2次元データに変換する工程はさらに、前記3次元人体計測データにワイヤーフレームデータを入力することによりワイヤーフレーム化したヌードボディモデルを作製する工程と、特定の部位にゆとり値を導入してダミーボディモデルを作製する工程と、前記ダミーボディモデルから複数のパネルから成る2次元化された複数の型紙原型に分離変換する工程とを含むことを特徴とする、型紙パターンの自動作製方法。
【請求項2】 前記アパレルCADを使用して前記2次元データより型紙パターンを作製する工程はさらに、前記2次元データである型紙原型を後身頃及び後脇身頃と前身頃及び前脇身頃に切り離す工程と、各身頃をバストライン、ウエストラインで切り離して3分割し隙間をダーツにする工程と、前記3分割した各身頃をつなげアウトラインを引く工程と、このアウトライン、バストライン、及びウエストラインを残して他の線を消す工程と、縫い代をつける工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の型紙パターンの自動作製方法。
【請求項3】 ゆとり値を導入する際の前後の比率を4:6或いは5:5とすることを特徴とする、請求項1乃至2のいずれかに記載の型紙パターンの自動作製方法。
【請求項4】 型紙パターンがジャケット用の場合、ダミーボディモデルの作製時に肩パットをつける部分に形状の変更を加えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の型紙パターンの自動作製方法。
【請求項5】 ゆとり値を導入する部位には、少なくともバスト、ウエスト、及びヒップを含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の型紙パターンの自動作製方法。
【請求項6】 人体の形状を計測する3次元人体計測装置と、この3次元人体計測装置により得られた3次元人体計測データよりワイヤーフレーム化したヌードボディモデルを作製し、このヌードボディモデルに少なくとも特定の部位にゆとり値を導入させて同じくワイヤーフレーム化したダミーボディモデルを作製し、さらにこのダミーボディモデルより2次元化させたパネルから成る型紙原型を作製する展開ソフトを有するパソコンと、このパソコンによって得られた2次元化データである型紙原型より型紙パターンを作製するアパレルCADとで構成したことを特徴とする、型紙パターンの自動作製システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、とくに高齢者向けの衣服の型紙パターンを作製する際に用いて好適な、型紙パターンの自動作製方法並びに型紙パターンの自動作製システムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、急速な高齢化に伴い、消費者人口に占める高齢者の割合は増大し、今後益々加速していくと予想される中、加齢による体形変化(とくに背部の湾曲や左右への傾き、脂肪部分の下垂及び増大)が顕著な高齢者にあっては、既製服のサイズ等に不満を持つ割合が高く、個人対応衣服への要求が高まりつつある。
【0003】一般に個人の 体形に合わせた衣服のための型紙を作製する場合には、まず、型紙作製に必要な各寸法をメジャーを用いて計測し、それをもとに2次元平面で製図していき、仮縫い試着を繰り返しながら体形に合わせていく方法が採られている。しかるに、この方法では型紙を作製するパタンナーの専門技術や感覚によるところが大きく、その習得には膨大な時間を要する。また、高齢者は既製服のサイズに不満を持ち、 体形に合った洋服への潜在的要求が高いが、手計測や試着に時間がかかる従来の方法では、こうした顧客にとって身体的負担が大きい。
【0004】そこで、最近開発されつつある3次元人体計測装置を用いて衣服型紙作製に必要なバスト、ウエスト等の項目について非接触で身体の計測を行い、この計測データ(数値)を用い、ゆとり値を加えて型紙パターンをCAD上で製図、作製する方法が考えられている。
【0005】この型紙パターンの製作方法は人体に対し非接触な計測のため顧客にとって身体的負担は小さいものであるが、この2次元化させた後にゆとり値を導入させる方法は、未だ専門技術や知識及び感性を必要とする部分が多い上に、加齢による体形変化が顕著な高齢者にとっては、こうした方法で型紙パターンを作製して、これに基づいて布を裁断しジャケットを作っても、着用した場合に着易さや、シルエットに不満が生じ、長時間着用すると着疲れがするという苦情が出ることをこの発明者は知見した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこでその理由について調べたところ、上述した3次元人体計測装置を用いて入手した計測データ(数値データ)をそのままアパレルCADに入力させてゆとり値を加えても、このゆとり値の導入は、一般化された値の導入であり、個別毎に必要な部位に対する必要なゆとり値の導入ではない上に、2次元化された後のゆとり値の導入は、実際の体形に即しない値の導入となり易いため、体形変化の著しい高齢者に充分にフィットしたものとならずこれが着用した際の着にくさや、シルエットの悪さの原因となっていることが判明した。
【0007】そこでこの発明者等は3次元人体計測装置を用いて計測し、X・Y・Zから成る3次元の座標値に置き換えて成る3次元採寸画像を取得し、この3次元採寸画像から型紙を作製するのに必要なワイヤーフレームデータを選択してワイヤーフレーム化した複数のパネルから成るヌードボディモデルを作製し、このヌードボディモデルにゆとり値を導入させてダミーボディモデルを作製し、このダミーボディモデルから前後別に2次元化させる展開ソフトを開発し、この2次元化されたデータをアパレルCADに入力させて型紙パターンを得るという手法を開発することによってこの発明を完成させるに至った。
【0008】この発明の目的は、高齢者にとって身体的負担が小さく、高度な専門技術と感性を持つパタンナーを用いなくとも、特に加齢により体形変化の顕著な高齢者が着易くて、着用時のシルエットの美しい衣服の型紙パターンを自動的に作製する方法及びそのシステムを提供せんとするにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成するためにこの発明は、顧客の人体の体形を3次元計測装置を用いて計測する工程と、展開ソフトを持つパソコンを使用して前記3次元人体計測データをワイヤーフレーム化した複数のパネルから成る2次元データに変換する工程と、アパレルCADを使用して前記2次元データより型紙パターンを作製する工程とから成り、前記3次元人体計測データを2次元データに変換する工程にはさらに、前記3次元人体計測データにワイヤーフレームデータを入力することによりワイヤーフレーム化したヌードボディモデルを作製する工程と、特定の部位にゆとり値を導入してダミーボディモデルを作製する工程と、前記ダミーボディモデルから複数のパネルから成る2次元化された複数の型紙原型に分離変換する工程とを含ましめることにより、高齢者にとって身体的負担が小さく、かつパタンナーのような高度な専門家を用いなくとも、体形変化の顕著な高齢者に合った型紙パターンを作製できるようにしたものである。
【0010】その際にこの発明は、前記アパレルCADを使用して前記2次元データより型紙パターンを作製する工程をさらに、前記2次元データである型紙原型を後身頃及び後脇身頃と前身頃及び前脇身頃に切り離す工程と、各身頃をバストライン、ウエストラインで切り離して3分割し隙間をダーツにする工程と、前記3分割した各身頃をつなげアウトラインを引く工程と、このアウトライン、バストライン、及びウエストラインを残して他の線を消す工程と、縫い代をつける工程とを含ましめることにより、一層パタンナーを必要としないで型紙のパターンを作製できるようにしたものである。
【0011】この発明はまた、人体の形状を計測する3次元人体計測装置と、この3次元人体計測装置により得られた3次元人体計測データよりワイヤーフレーム化したヌードボディモデルを作製し、このヌードボディモデルに少なくとも特定の部位にゆとり値を導入させて同じくワイヤーフレーム化したダミーボディモデルを作製し、さらにこのダミーボディモデルより2次元化させたパネルから成る型紙原型を作製する展開ソフトを有するパソコンと、このパソコンによって得られた2次元化データである型紙原型より型紙パターンを作製するアパレルCADとで構成することにより、汎用性のある使い易いシステムで、高齢者にとって身体的な負担が小さく、パタンナーのような高度な専門技術や感性を持つ人を用いなくとも、体形変化の顕著な高齢者に合った型紙パターンを作製できるようにしたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
【試験例】まずこの発明者等は上述した知見に基づいて高齢者の衣服の型紙を作製する際に持たせるべきゆとり値、及びその部位や配分比のデータを得るべく以下の研究を行った。ここにおいてゆとりとは、被服者と被服の間にもたせる隙間のことであり、どんなシルエットの衣服でもゆとりは必要である。適切なゆとり値を被服に持たせることにより、衣服のラインを保つことができ、かつ被服者の可動部位に対する動きを妨げることなく、被服の生地の損傷を抑えることができるものである。
【0013】日本人の人体計測データを参考に20代から70代までの 体形データの平均値を年代ごとに取り出して比較すると図1のようになる。この図1から明らかなように、高齢者の体形は、既製服を作る際の標準体形とされている20代に比べ、身長が低く、袖丈が短く、バスト、ウエスト、腹囲、ヒップが大きくなっていることが解る。そしてバスト、ウエスト、腹囲、ヒップに関しては、バストやヒップの変化に比してウエスト及び腹囲の変化が著しいことが解る。このことから、身体の長さ、太さに関する身長、背丈、前丈、頚椎、乳頭点距離、袖丈、上部胸囲、バスト、ウエスト、腹囲、ヒップ、背肩幅、胸幅、乳頭間隔、腕付け根回りの15項目をピックアップし、型紙を作る際の計測項目とした。
【0014】次に、高齢者婦人2名X氏76歳とY氏75歳を被験者に選び、通常の下着姿となってもらい、上述した15項目について計測し、その計測値を上記図1の年代別の平均計測値と比較した結果、バスト、ウエスト、ヒップが大き目であることを除いて、ほぼ60才代の平均値と一致したことから、この平均値を用いることとし、背丈、バストのみを実測値に合わせて変化し身頃原型■を作製した。この身頃原型■のデータ値に基づいて13号サイズに相当するジャケット型紙をグレーディングにより作製し、X氏とY氏のジャケット試作品Dを2着作製した。尚、このジャケット試作品Dは用いられている計測値からして、市販されている既製品に最も近い型紙の基づいていることになる。そして、衣服に婦人用のジャケットを選んだのは、着用感やシルエットに差が出易いことを考慮したものであり、デザインとしては流行に左右されないオードソックスなものとし、素材としてはゆとり値を明確にするため非伸縮性素材を用いた。
【0015】これに対して、身頃原型■のものよりも用いる実測値項目をさらに前丈、ウエスト、背肩幅と3項目増やして背丈、バスト、前丈、ウエスト、背肩幅の5項目とし、さらに、加齢による 体形変化を考慮して肩ダーツ幅、衿幅、後中心線を変更して身頃原型■を作製した。尚、この身頃原型■と■の型紙の違いと寸法上の違いは図2と図3に示した。
【0016】この身頃原型■からさらに原型作製時には反映され得なかった身体計測値を考慮し、後丈、ヒップ、後ろ幅、前幅、前衿幅、後カマ丈、前力マ丈、力マ幅、袖丈、袖幅、袖口を身体計測値に合わせて修正し、背丈、衿丈、衿幅、背肩幅、袖口の値を変化させず、その他をバスト値にして2cmピッチで3段階グレーディングし(これに伴い、指定した以外の横幅に関する項目はグレーディングされる)、ジャケット型紙を作製し、それぞれバスト値だけで2cmピッチで異なるジャケット試作品を合計で6着作製し、小さいものからそれぞれジャケット試作品A、B、Cとした。
【0017】以上の各ジャケット試作品A、B、C、及びDを2着づつ合計8着を上述した被験者X氏とY氏に実際に着用してもらい、着用感についてアンケートを実施したところ表1のような結果が得られた。
【0018】
【表1】

【0019】尚、4着すべてにおいて、2時間後の着用感に変化はなかった。ジャケット試作品Aには、バストで12cmのゆとり値が含まれているが、アンケートでは胸回り、胸回り、胸回り、袖幅ともにきつく、2人とも不満という結果であった。ジャケット試作品Bには、バストで14cmのゆとり値が含まれているが、2人とも調査したすべての項目で満足という結果であった。ジャケット試作品Cには、バストで16cmのゆとり値が含まれているが、胸回り、胴回り、腹回りが大きすぎるという結果だった。しかし、長さに関する項目についてはちようど良く、全体としてはやや満足という結果であった。これは、普段大きめなものを着用していることが影響していると推測される。そして、ジャケット試作品Dは、既製品の13号サイズを想定して作製したものであり、バストのゆとり値はCと同じ16cmであるが、胸回りなど体の太さに関する項目、背肩幅、袖丈すべて大さめであり、全体としてやや不満という結果であった。
【0020】ジャケット試作品A〜Dの寸法を、21項目で比較した。最低限のゆとり値が入っている身頃原型■との差を表2に示す。
【0021】
【表2】

【0022】表2に示されたように、高齢者の体形を考慮したジャケット試作品A〜Cに比べると、市販品を模したジャケット試作品Dは前丈が短い。これは、前に出た腹などで長さがとられてしまい、裾が前上がりになる可能性を示している。実際被験者が着用しても、前裾が上がり、見た目が悪かった。また、ジャケット試作品Dはウエストがかなり絞ってあり、大きさとしては「きつい」と答えたジャケット試作品Aとほとんど同じであるのに、「大きい」と答えているのは、バスト、ヒップが「大きい」と答えたジャケット試作品Cとほとんど同じであり、全体として大きいという印象を持ったためと推測される。背肩幅や袖幅も大きめにできており、実際着用してもシルエットが良くなかった。加えて前衿幅が小さく、長時間着用していると肩こりなどが生じる可能性があると考えられる。ウエストを絞り、ヒップを大きくしたジャケット試作品Dは、一見シルエットが良さそうに見えるが、着用してみるとあまり良くなかった。
【0023】以上の13号サイズのジャケット試作品の作製試験例から、ゆとり値をもたせる部位としては、バスト、ウエスト、及びヒップの部分がとくに重要であり、被験者のヌード寸法からのゆとり値としては、バストで14cm、ウエストで14.5cm、ヒップで17.4cmが最適であることが判明した。これらのゆとり値を被験者のヌード寸法から割り出したところ、それぞれバスト14.89%、ウエスト17.47%、ヒップ18.13%となったので、これを他のサイズのジャケットを作る場合にもゆとり値の目安とすることができよう。
【0024】この発明者等は、上述した従来技術と以上のような試験例を基にして、以下に説明するように、計測手段として人体に非接触の3次元人体計測装置を用い、この3次元人体計測装置の3次元計測側データに対して型紙製作の際に必要とされる複数の特徴点入力を行って3次元ワイヤーフレーム化したヌードボディモデルを作製し、次いでこのヌードボディモデルにゆとり値を導入させ、同じく3次元ワイヤーフレーム化したダミーボディモデルを作製し、これを2次元化させるパソコン用の展開ソフトを開発し、この2次元化データをアパレルCADに入力させて型紙パターンを作製するという、とくに高齢者の身体にフィットし、着易く、シルエットの良い衣服を製作するための型紙パターンの作製方法並びに自動作製システムを開発したものである。
【0025】
【発明の実施の形態】以下にこの発明の一実施の形態を、高齢者婦人のジャケット用の型紙パターンを作製する場合について図面に基づいて詳細に説明するが、この発明はジャケット以外のさまざまな衣服の型紙パターンの作製、及び、靴等の人間が身に付けるもののオーダーメイドの製作、並びにモデルをもとにして形状を決める板金製品や木工製品に広く応用できるものである。
【0026】図4は、この発明に係る型紙パターンの自動作製システムを示すブロック図であり、図中指示記号1は3次元人体計測装置を示す。この3次元計測装置は、この実施の形態のものでは、32個の赤外線LEDと受光センサーを組み込んだ馬蹄型のセンサーベルト8個が配置されており、薄手の下着或はタイツ等を着用した高齢者をセンサーベルトの中に直立させて、赤外線LEDを上から下へ5mm間隔で順次パルス点灯させ、その反射光を受光センサーが受光することによって計測するものであり、この計測に要する時間は僅か10秒である。計測データ数は約45,000個であり、精度は1,000mm周長基準で±0.5%である。この3次元人体計測装置1は、計測データを3次元構築ソフトによりX(左右)、Y(前後)、Z(高さ)から成る3次元の座標値を持つ3次元採寸画像として記憶するものであり、構成には限定はない。市販されているさまざまな機能の三次元人体計測装置1を用いることができる。要するに3次元人体計測装置1によって得られた3次元採寸画像を、パソコンやCADに入力できれば良い。
【0027】同じく図4において指示記号2は、3次元人体計測装置で得られた3次元採寸画像を2次元データに変換するパソコン用の展開ソフトである。この展開ソフト2はJava(登録商標)動作環境を持つパソコンで動作可能であり、入力された3次元採寸画像をX・Y・Zからなる3次元の座標値をもとにして形状表示を行い、型紙作製に必要な特徴点を入力することによって、まずワイヤーフレーム化してジャケット作製に必要な上半身のヌードボディモデルを作り、さらにゆとり値を導入してダミーボディモデルを作製し、その後展開してワイヤーで区切られた平面を1つのパネルとして前後別に2次元化して型紙原型を作製する機能を有している。 この展開ソフト2は、高齢者婦人の人体が左右大きく変形していることを考慮し、右半分、左半分のどちらからでも前後別に展開できるように工夫されている。そして、この展開ソフトは、ヌードボディモデル作製時にへこみの補間を行う。このへこみとは、例えば女性のバストの谷間や男女を問わずに存在する背中のへこみやくぼみのことであり、このへこみの補間を行わないと、正確なヌードモディモデルは出来上がらないので、この補間を自動的に行うものである。この補間はへこみとなっている座標点をライン上の最も高い点に値を変更してラインを揃えることによってなされる。
【0028】同じく図4に指示記号3で示されたものはアパレルCADであり、展開ソフト2で2次元に複数のパネルで展開された型紙原型をこのアパレルCAD3へ入力し、各パネルの配列を整えることにより衣服作製の基礎となる型紙パターンを作製するものである。この各パネルの整列には無数の方法があるが、いくつか試した結果、図15と図16に示したように、切替ラインで切り離した後、バストライン及びウエストラインを含むパネルをそれぞれのラインが水平な一直線になるように並べ、それらを基準に周りのパネルを並べていき、後にダーツとなる隙間は1〜2本にまとめ、後でバストライン同士、ウエストライン同士をつなげる方法がもっともきれいで現実的であったので、その方法を採用した。
【0029】
【実施例】以下に上述したシステムを用いて高齢者婦人のジャケットの型紙パターンを作製する場合について説明する。まず、被験者に再び上述した試験例の被験者X氏とY氏を選び、薄い下着姿になってもらって、3次元人体計測装置1を用いて全身の計測を行った。このようにして得た被験者X氏とY氏の人体計測データを展開ソフト2をインストールしてあるパソコンへ入力した。以下に、被験者X氏の人体計測データに基づいて型紙パターンを自動作製する場合について説明する。
【0030】この展開ソフト2の動作を図5に示したフローチャートに基づいて説明すると、3次元人体計測装置1により得られた被験者X氏の全身の3次元採寸画像データをパソコンへデータ入力させ展開ソフト2を開くと、図6と図7に示したような、ジャケット作製に必要な上半身の正面と側面の3次元人体採寸画像4,5が画面に表示された。
【0031】次いで、上半身の人体3次元ワイヤーフレーム作製に必要なポイントとラインから成るワイヤーフレームデータをマウス操作によって選択入力した。即ち、図6と図7に示したように、正面画像においては、画面に表示される等のポイント名やライン名をマウス操作によってワイヤーフレームデータとして選択入力し、次いで、側面画像を表示させて、サイドネックポイント、バックネックポイント、フロントネックポイント、ショルダーポイント、及びバストポイント等のポイント名やライン名をマウス操作によってワイヤーフレームデータとして選択入力すると、図8と図9、及び図10に示したようなワイヤーフレーム化したヌードボディモデルの6,7及び8の画像が形成された。ここにおいて、ワイヤーフレームデータのない場合には、座標点抽出を行うと、図8乃至図10に示したようなワイヤーフレーム画像が得られる。尚、このワイヤーフレーム画像は回転可能である。尚、ワイヤーフレームデータとは、衣服の型紙を作製する際に計測することが必要とされる人体の計測ポイントと計測ラインのことである。この展開ソフト2では、上述したポイントとラインを選択することにより、自動的にワイヤーフレーム化したヌードボディモデルが作製されるように構成されている。
【0032】次いで、このワイヤーフレーム化したヌードボディモデル6,7及び8の画像を見ながら、画面右に表示されるデータを見てバスト、ウエスト、ヒップの部位にゆとり値の導入や前後のゆとり配分比、及び微調整を行った。このゆとり値は、上述した配分比に従い、バスト14.89%、ウエスト17.47%、ヒップ18.13%であった。もっとも、ここのところは、ゆとり値の導入を選択することによって、自動的にゆとり値が導入されてゆとり値導入後の画面となるように展開ソフト2を構成しても良い。また、ゆとり配分比は前後5:5とした。さらに、ジャケットは肩パットを入れる関係上、その分実際の肩よりも高く設定するデザイン修正や裾丈の設定を行い、さらに、腕回りや首回りのゆとり値の設定も行った。これらの操作はマウス操作によって行ったが、キーボード操作によって入力するようにしても良いであろう。つまり、マウス操作によるゆとり値導入の選択やキーボード操作によりゆとり値を導入させると、導入後の長さが表示され、拡大してワイヤーフレーム化されたダミーボディモデルに表示されるので、これを見ながら微調整を行った。このようにして、図11乃至図13に示したようなワイヤーフレーム化したダミーボディモデル9,10及び11が作製された。図8乃至図10に示したヌードボディモデル6,7及び8に比べると、その形態の変化は明白である。フレームは全体として大きくなっていることが解る。
【0033】これらの調整が終わった後で展開ボタンを押すと、ワイヤーで区切られた平面を一つのパネルとして前後別に図14に示したように2次元化された右半身前後の平面パネル12,13が型紙原型として展開表示された。勿論上述したように左半身を選択することもできる次いで、このようにして展開ソフト2を使用して得られた型紙原型としての2次元データをアパレルCAD3に入力し、パネルの配列を整えることにより型紙パターンを作製した。このアパレルCADを用いての型紙パターンの作製は以下のようである。
【0034】まず、図15と図16に示したように、パソコンより取り入れた右半身前後2つの平面パネル12,13の中から、右半身の後身頃14と後脇身頃15、及び前身頃20と前脇身頃21となる各部分を、境となる切替ラインで切り離して分離し、さらに同時にバストライン、ウエストラインを水平にするために、バストライン、ウエストラインで切り離して各小パネル14a,14b,14c・15a,15b,15c及び20a,20b,20c・21a,21b,21cとし、並行に揃え、隙間をダーツにした。
【0035】次いで、3分割した各小パネルをつなげて曲線でアウトラインを引き、余分な部分は小パネルを切り取り、不足する部分は小パネルを貼り付けた。さらに、3次元人体計測データでは、腕を広げた状態で計測しているため、肩幅が実際より広く採寸されていることから、パネルを切り取って背肩幅を合せ、さらにダーツを完成させて線の長さを同じくし、修正した背肩幅に合わせて袖ぐりを広げた。このようにして、図15と図16に示したように、修正した各身頃のパネル16,17・22,23を得た。
【0036】次いで、アウトライン18a,19a・24a,25a、バストライン18b,19b・24b,25b、ウエストライン18c,19c・24c,25cを取り出し、ヒップライン18d,19d・24d,25dを引き、身頃間で縫い合わせる部分が合うように微調整をし、さらに着丈が合うように裾の位置を調節した。そして、図15と図16に示したような仮縫い用の縫い代18e,19e・24e,25eをつけて型紙パターン18,19・24,25が完成した。
【0037】そして、この型紙パターンの前身頃と後身頃から、衿とラペル部分を作製し、さらに全ての型紙パターンを脇線中心となるように合わせて現われたアームホールから袖を作製した。以上のようにして完成した型紙パターンを用いて、X氏のデータからはジャケットEを、Y氏のデータからはジャケットFを作製した。そして、これらとは別にゆとり配分比による着やすさの違いを調べるため、ヌードボディモデルに導入するゆとり値の前後の配分比を4:6、6:4に変化させたジャケットを別に作製し、このようにして、それぞれジャケット4:6、ジャケット5:5、及びジャケット6:4とした。
【0038】
【試着試験】X氏にはジャケットE,Y氏にはジャケットFを着用してもらい、着用感やシルエットについて聞き取り調査を行った。更に、着用感については、着用直後と長時間着用後で異なる可能性も考慮し、着用2時間後にも聴取を行った。また、比較のため、それぞれの被験者に上述した試験例を作製してジャケットBを着用してもらい、同様の聞き取り調査を行った。また、ゆとり配分比による着やすさの違いを調査するため、ジャケット4:6、5:5、6:4を被験者に着用してもらい、軽い動作をしてもらった後、感想などを聴取した。なお、これらの着用試験時には、インナーとして、被験者が着慣れた薄手のブラウス等を着用してもらった。アンケート調査の結果を以下の表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】従来の方法で体形に合わせたジャケットBは、同様の方法でゆとり値を変化させて作製したジャケットの中で、着やすさ、シルエットともに最も評価の高いものであった。そのため、着心地に問題はなかったが、3次元計測データから直接型紙にして作製したジャケットE,Fには、特にシルエットの点でかなわなかったようである。バスト、ウエスト、ヒップの大きさはジャケットB,E,Fすべて同値なので、硬いシルエットという印象を与えたのは、この3項目以外の、2次元製図に反映され得なかった要素による立体感の無さであると推測される。また、ジャケットE,Fのほうが袖が美しく感じられたのは、袖型紙を製図する元となるアームホール形状が、2次元製図のものより被験者の体形に近いものであったため、つれたりすることなくよりフィット性の高いシルエットの袖を作製することができたためと思われる。ここで、図17にジャケットEとBの元型紙をウエストラインで重ねたものを示すが、その形状を単純に見比べただけでも大きく異なっていることが分かる。
【0041】表3のアンケート調査の結果によれば、ゆとり値は前後に均等に入れるか、もしくは少し後側に余裕を持たせるほうが、着やすいようである。これは、腕の動きの方向性を考えると当然のことと推測されるが、これ以上の配分は、前後差が3cm以上となってしまうので、見た目にも脇線がずれるなどのシルエットの崩れが予想される。そして、ゆとり値の前後配分は、5:5から4:6の範囲に収めるのが適当であることが判った。
【0042】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、この発明によれば、パタンナーのような専門的な知識や技術及び感性を必要とすることなく、かつ顧客に身体的負担を与えることなく、型紙パターンを作製でき、この型紙パターンを用いることにより、とくに体形変化の著しい高齢者にとっても、気易く身体にフィットし、かつ着用してシルエットの良い衣服を提供することができるという効果を奏し得る。
【出願人】 【識別番号】502185010
【氏名又は名称】柿沼 よしえ
【識別番号】502185021
【氏名又は名称】灘野 朋美
【出願日】 平成14年5月23日(2002.5.23)
【代理人】 【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
【公開番号】 特開2003−342818(P2003−342818A)
【公開日】 平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願番号】 特願2002−149199(P2002−149199)