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【発明の名称】 繊維製品
【発明者】 【氏名】松本 真吾
【住所又は居所】滋賀県大津市大江1丁目1番1号 東レ株式会社瀬田工場内

【氏名】石川 恵美子
【住所又は居所】滋賀県大津市大江1丁目1番1号 東レ株式会社瀬田工場内

【氏名】谷口 卓充
【住所又は居所】滋賀県大津市大江1丁目1番1号 東レ株式会社瀬田工場内

【要約】 【課題】袋状部の耐久性を向上させるとともに、新規なデザイン性をふよするための熱溶着樹脂を用いた繊維製品を提供すること。

【解決手段】接合部分の少なくとも一部分に熱溶着樹脂が挿入され接合されてなる繊維製品であって、一方の部材と他方の部材を接合させ袋状部を形成させた部分の一方の部材の接合部分の接合端が、袋状部最下端と逆方向に向くように熱融着樹脂により接合されてなる繊維製品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】接合部分の少なくとも一部分に熱溶着樹脂が挿入され接合されてなる繊維製品であって、一方の部材と他方の部材を接合させ袋状部を形成させた部分の一方の部材の接合部分の接合端が、袋状部最下端と逆方向に向くように熱融着樹脂により接合されてなる繊維製品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は繊維製品を構成する生地、フィルムなどを熱融着樹脂により接合した繊維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】繊維製品における熱融着樹脂による接合は、特開昭61−252372号公報に開示されているように、熱接着テープを生地と生地との間に挿入し、挿入後、加熱・圧着させることにより生地と生地とを接合させるものが知られている。
【0003】しかし、単純に生地と生地との間に熱接着テープを挿入し、ポケットや裏地など袋状になる部分の接合に用いた場合、ポケットに手を入れたときや裏地が引っかかった時等袋状の両側の生地に力がかかり接合部分に剥離させる応力が集中するために、指で接合部分を突き破ってしまう、表地と裏地の接合部分がパンクしてしまう等の問題が残り、袋状になる部分には熱接着テープによる接合を適用できないものであった。
【0004】また、衣服の裾などの折り返し部分では、生地の上から熱接着テープを加熱・圧着させる方法が知られている。
【0005】しかし、折り返し部分の上から接合させる方法では、裾上げなど片側が閉じ、二枚の生地の動きの少ない部分は生地と生地とを剥離させる力が接合した部分にあまりかからないため熱接着テープによる接合を適用することが可能であるが、いろいろな物を入れるポケットや生地と生地生地の動きの大きい裏地などの袋状の部分では熱接着テープの強力しか持たず適用するのが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、繊維製品を構成するポケットや裏地付けなど袋状部分の接合部分からの剥がれに対する耐性を強化した繊維製品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達したものである。
【0008】すなわち本発明は、接合部分の少なくとも一部分に熱溶着樹脂が挿入され接合されてなる繊維製品であって、一方の部材と他方の部材を接合させ袋状部を形成させた部分の一方の部材の接合部分の接合端が、袋状部最下端と逆方向に向くように熱融着樹脂により接合されてなる繊維製品である。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明における繊維製品とは特に限定されないが、例えば、ファッション用、ユニフォーム用、スポーツ用、和装などの衣類や、フトンカバー、ピロケースなどの建寝装用品や、ショール、鞄、靴などの日用品を挙げることができる。
【0010】本発明における繊維製品を構成する材料としては特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維や綿や羊毛などの天然繊維などを単独または2種以上用いた織編物や不織布などが挙げられる。また、これらの織編物や不織布に、ウレタン樹脂や防水フィルムなどをコーティングやボンディングなどの方法により付与した防水布などを挙げることができる。さらには、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂などからなるフィルム類が挙げられる。
【0011】本発明における熱融着樹脂は特に限定されず、例えば、被接着材料との接着性を重視し選定すればよいが、柔軟性、接着性、加工性、コスト面などの点から、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系の熱融着樹脂の使用が好ましい。
【0012】熱融着樹脂の形状は特に限定されず、例えば、フィルム状、繊維状、粉末状などの形状で使用することができる。中でも、熱融着樹脂をフィルム状にし、テープ状にした熱接着テープが、使用時の操作性の点から特に好ましい。
【0013】本発明において接合部分とは繊維製品を構成する生地を接合する部分のことであり、二枚以上の生地をつなぎ合わせる部分、もしくは一枚の生地を折り返して接合する部分、二枚の生地を貼り付ける部分などのことであり、特に本発明における接合部分は、ポケットなど大きな一枚の生地上に小さな一枚の生地を貼り付ける部分や、裏地付けなど一枚の大きな生地上に同サイズもしくはゆとりを持たせた形でもう一枚の大きな生地を貼り付ける部分など袋状部分を形成させる部分である。
【0014】また、本発明における接合面とは、熱融着樹脂が挿入され接合されている部分であり、生地が熱融着樹脂により接合されている面である。
【0015】本発明の繊維製品の袋状部を形成させる部分の接合部は、接合する部材の接合面が、たとえば、衣服の裏面にポケット状の一枚の生地を接着する場合にはポケット状の生地の生地端をポケットの内側となる生地面同士が接触するように折り返しすことにより袋状部最下端と接合端とを逆方向に向け接合させるものである。 通常、単純に重ね合わせて接合した場合は袋状部の最下端と接合端が同方向に向き、袋状部にものを入れる、手を入れる等重力方向の力が加わった場合、接合部分で生地と生地とが開く、すなわち接合部分が剥離される方向に力が加わるため容易に剥がれや破れが生じる。一方、本発明の接合部分では接合端が袋状部最下端と逆方向に向いているため、袋状部にものを入れる、手を入れる等重力方向の力が加わった場合、接合部分の生地には接合部分に対して剥離する方向の力が加わらず、せん断方向に力が働くため熱溶着樹脂の接着力が最大限いかされるものである。
【0016】また、袋状部最下端と接合端が逆方向を向かせる接合部分は、たとえば四角形のポケットの場合には一番力が加わり、剥がれの生じやすいポケットの底辺となる一片には必須であり、より好ましくはポケットの上端を除く三辺を折り返し接合することが効果的である。
【0017】以下、図を用いて、本発明の好ましい態様を説明する。
【0018】図1は、本発明の繊維製品の接合部分の一態様を示す断面模式図である。繊維製品の表生地2と裏生地2′の接合部分には、熱融着樹脂からなる熱接着テープ1が挿入され接合され袋状部8を形成する。
【0019】図1において該熱接着テープ1により接合される二枚の生地の接合部は表生地2では平面上の任意の場所に接合部が決められ、もう一方の裏生地2′は折り返された接合面に熱接着テープ1が挿入され接合されるものである。すなわち、裏生地2′を折り返すことにより裏生地2′の接合端を袋状部8の最下端と逆方向に向けられるものである。
【0020】図2において該熱接着テープ1により接合される二枚の生地の接合部は表生地2では平面上の任意の場所に接合部が決められ、もう一方の裏生地2′は表生地2の平面に当接させた状態で熱接着テープ1が挿入され接合されるものである。すなわち、裏生地2′平面に当接させるため裏生地2′の接合端は袋状部8の最下端と同一方向に向けられるものである。
【0021】図1に示す本発明の袋状部8に手を挿入した場合、図3に示すように指先は袋状部最下端にあたる。さらに手を挿入すると袋状部8の最下端に指が当たるため袋状部8の接合部に下に押し下げようとする力が加わる。この時本発明では接合端が袋状部8の最下端と逆方向に向いているため接着テープ1で接合された部分には接合部分を剥離させる力ではなく剪断方向の力が加わるため熱溶着樹脂の接着力が最大限いかされるものである。
【0022】一方、図2に示す通常の接着縫製に用いられる袋状部8に手を挿入した場合、図3と同様、図4に示すように指先は袋状部最下端にあたる。さらに手を挿入すると袋状部8の最下端に指が当たるため袋状部8の裏生地2′を下方向に押し下げる方向に力が加わる。この時、通常の接合方法では接合端が袋状部8の最下端と同一方向に向いているため接着テープ1で接合された部分には接合部分を剥離させる力が働き容易にはがれが生じるものである。
【0023】袋状部を代表するポケットを例にとりさらに詳しく説明すると、通常の縫い糸を用いたポケットの形状は図9に示すように、表生地2の表側からポケット布3を当接し、ポケット布3の下部と左右を縫い糸を用いて縫着させることにより袋状部8と開口部4とを形成し、任意でフラップ5を取り付けポケットを作成する方法や、図10に示すようにズボン類のポケットに代表されるポケット袋を付ける方法がある。
【0024】図9に示す方法では、表生地の表側に縫い糸によるミシン縫い目が現れることによりデザインが制約され、また、図10に示す方法ではミシン縫い目を極力減らすことは可能であるが、ポケット袋部分が二重になり、かさばる等の欠点を有している。
【0025】このような欠点を解消させ、衣服の表側から縫い糸が見えない状態で袋状部8を形成することが可能であり、新規なデザインを提供可能とすること、ポケット部分が嵩張らない方法として熱接着テープを用いた方法が提案されている。
【0026】通常の熱接着テープを用いたポケット形成方法として図11に示すように表生地2に開口部4を設け、その裏側にポケット布3を熱接着テープ1を用い接合させ袋状部8を形成しポケットとすることが提案されている。
【0027】この場合、ミシン縫い目を見えなくする、ポケット部分の嵩張りをおさえることは可能であるが、上述のとおりポケット布の最下端がはがれやすいという欠点を有している。
【0028】図5に本発明の他の一態様としてポケットに適用した場合の断面模式図を示す。表生地2にポケット布3が熱接着テープ1により接着される。表生地2にはポケット布3との間に構成される袋状部8に手を入れられるよう開口部4が構成される。開口部4の構造は図5に示される片玉縁や両玉縁など通常ポケット口に用いられる構造でなんら差し支えない。
【0029】ポケット布3は、力のかかるポケット下部はポケット布が折り返され熱接着テープ1により表生地2に接着され、ポケット下部で折り返されたのちポケット上部を含めた周囲を熱接着テープ1により接着させる。
【0030】ポケット布3は図6に示されるように目止めテープ6など基布と熱融着樹脂が一体となったテープ類で補強されることは強度を保持する点でより好ましい。
【0031】また、ポケット布下部の接合部の接合端を袋状部8の最下端と逆方向に向けるためには図1のように折り返すことも可能であるが、図7に示すように、補強布7と熱融着樹脂と一体となったテープ類をポケット布3に接着し、そのテープ類をポケット布の最下端と逆方向に向けられることも可能である。
【0032】また、図8に示すようにポケット口の開口部4にフラップ5を付けることや、縫い糸を用いて接合された各々の接合部分に目止めテープ6を接着し、防水処理を行うこともなんら差し支えない。
【0033】本発明の構造でポケットを形成した衣服は図13に示す通常方法でポケットを取り付けたものとは異なり、図12に示すように今までにないデザイン性を有するものである。
【0034】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例に用いた評価方法を以下に記載する。
【0035】(評価)
(1)ポケットの耐久性ポケットに手を入れ最下端のはがれを○と×で評価した。○を合格とした。
○:最下端のはがれ、穴が開くことなく使用できた。
×:手をきつくポケットにいれると最下端にはがれが生じポケットに穴が開いた。(2)接合部の強力定速伸長型引張試験器のクランプ間を10cm、スピードを10cm/分に調整し衣服のポケット部を2.54cm幅にカットし、表生地とポケット布をクランプに固定し接合部が剥離もしくは破断するときの強力を測定した。
【0036】(実施例1)78デシテックス、52フィラメントのナイロン6フィラメント糸からなるタテ糸146本/インチ、ヨコ糸94本/インチの織物にウレタンコーティングを行ない、コーティング面に22デシテックス、7フィラメントのナイロン66フィラメント糸からなるトリコット編地を接着した3層構造の防水布を表地とし、その左右の前身頃の胴部分に片玉縁の形状でポケット口を形成した。また、身頃と同じ生地を用い身頃生地の表面がポケットの内側になるようにポケット布をつくり、ポケット布の下端および左右をポケットの内側になる方向に1cmの幅で折り返し、その折り返した部分に1cm幅の熱接着テープを160℃に加熱したアイロンで押さえ仮止めした。その後、熱接着テープにある離型紙をはがし、身頃内側のポケット取り付け位置にポケット布を当接し170℃の熱プレスによりポケットを接着し形成した。
【0037】衣服を着用しポケットに手を入れポケット下部の耐久性を確認した結果、ポケット下部が剥離し穴が開くことなく問題ないものであった。結果を表1に記載する。
【0038】(比較例1)ポケット布を身頃と同じ生地を用い身頃生地の裏面がポケットの内側になるようにポケット布をつくり、ポケット布内側になる面の下端および左右に裁断端から1cm幅の熱接着テープを160℃に加熱したアイロンで押さえ仮止めした以外は実施例1と同様にポケットを接着し形成した。
【0039】衣服を着用しポケットに手を入れポケット下部の耐久性を確認した結果、ポケット下部を指で少し強めに押すとポケット下部が剥離し、ポケットの中でポケット下部を押す動作を繰り返す内完全に剥離しポケットに穴が開いた。結果を表1に記載する。
【0040】
【表1】

【0041】
【発明の効果】本発明の繊維製品は、熱融着樹脂により接合した袋状部の接合端が、袋状部最下端と熱融着樹脂の接着強力を最大限に生かす反対方向に向く構造となっているため、袋状部の耐久性に優れたものである。また、縫糸を用いたミシン縫目では衣服表地に縫い目ができデザイン上の制約が多かったが、本発明の繊維製品では熱融着樹脂を用いて接合しているため、新規なデザインを提供することができ、かつ、ミシンを用いず熱融着樹脂を用いて接合しているため、隙間や針穴がなく接合部分からの水の漏水が効果的に防止される。したがって、防水性能が要求される雨衣や防寒衣、鞄、靴などに好適に使用できる繊維製品を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋室町2丁目2番1号
【出願日】 平成13年12月12日(2001.12.12)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−183921(P2003−183921A)
【公開日】 平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願番号】 特願2001−378420(P2001−378420)