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【発明の名称】 和装品およびその製造方法
【発明者】 【氏名】石川 恵美子
【住所又は居所】滋賀県大津市大江1丁目1番1号 東レ株式会社瀬田工場内

【氏名】松本 真吾
【住所又は居所】滋賀県大津市大江1丁目1番1号 東レ株式会社瀬田工場内

【氏名】大林 浩
【住所又は居所】京都府京都市中京区六角通り室町西入玉蔵町121番地 東レきもの販売株式会社内

【要約】 【課題】ファッショナブルで、着脱しやすく、持ち運びが便利で収納しやすい和装品を提供する。

【解決手段】生地の全部あるいは一部に、ランダムな方向およびランダムな長さに、3〜15mmの距離および1〜5mmの高低差を有するプリーツを有する和装品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】生地の全部あるいは一部に、ランダムな方向およびランダムな長さに、3〜15mmの距離および1〜5mmの高低差を有するプリーツを有する和装品。
【請求項2】少なくとも20重量%の熱可塑性合成繊維を含む織物および/または編物からなることを特徴とする請求項1に記載の和装品。
【請求項3】出来上がり寸法に対して、長さ方向の寸法を5〜20%、幅方向の寸法を20〜40%長く裁断して縫製されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の和装品。
【請求項4】プリーツを伸ばした状態での裾幅寸法が、身幅寸法に対して105〜150%の長さであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の和装品。
【請求項5】ミシンで縫製されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の和装品。
【請求項6】生地の全部あるいは一部に、ランダムな方向およびランダムな長さに3〜15mmの距離のプリーツを有する和装品に、プレス加工を施すことを特徴とする和装品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、不規則なプリーツを有し、着脱性、着用快適性、収納性に優れた和装品に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の着物や襦袢、小物を含む和装品は、縫製、輸送、着用、保管にいたるまで「しわ」が入らないように細心の注意を払わなければならなかった。
【0003】最近では「しわ」が生じないように物理的あるいは化学的に形態安定加工を施した織物や編物が一部市販されているが、収納する時には従来通り和装品特有の畳み方をしなければならなかった。この和装品の畳み方、中でも着物に関しては技術と訓練が必要であり、着物を気軽に着用しなくなった一因でもあった。
【0004】これまでも「しわ」を一つの柄、模様、表面効果として付与した和装品として、緯糸に強撚糸の生糸を用いて精練でタテシボを発現させた楊柳クレープが知られているが、この生地の凹凸間の距離や高低差は小さく、表面効果としてはインパクトに欠けるものであったし、着用後は従来どおり和装品独自の畳み方を行い収納する必要があった。また、特開2000−328313号公報では上衣と下衣に分離した和服の下衣の裾にプリーツを設けたセパレート着物の製造方法が記載されているが、この着物は着用のしやすさ、動きやすさに効果はあるものの、着用後は従来どおり和装品独自の畳み方を行い収納する必要があった。加えて、裾に施したプリーツ部分をきれいに折り畳むのに仮しつけをするなど、手間を加える必要があった。プリーツとは、構成する生地を折り合わせ、折り山を形成することをいう。
【0005】プリーツ加工として、特開平5−98563号公報には、半製品に縫製した衣料を巻く、絞る、折り畳むなどの処理をした後、熱処理して「しわ」を固定するといったプリーツの加工方法が記載されているが、和装品の記載はない。また、特許第3256721号公報においては、3方向に夫々平行なプリーツを施した布製品の形成方法が提案されているが、プリーツの形状が画一で斬新さに欠けるものであった。さらに、実用新案登録第3066866号公報にはサイズフリー衣料が記載されているが、このプリーツ加工の製造方法では、持ち運びや収納がしやすいものの、生地の凹凸の高低差が著しく大きく、着装後、和装品の着姿を実現することができなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、ファッショナブルで、着脱しやすく、持ち運びが便利で収納しやすい和装品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の和装品は、上記目的を達成するため、下記の構成を有する。
【0008】すなわち、生地の全部あるいは一部に、ランダムな方向およびランダムな長さに、3〜15mmの距離および1〜5mmの高低差を有するプリーツを有する和装品である。
【0009】また、本発明の和装品の製造方法は、生地の全部あるいは一部に、ランダムな方向およびランダムな長さに3〜15mmの距離のプリーツを有する和装品に、プレス加工を施すものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の和装品について、一態様を示す図面を参照しながら以下説明する。
【0011】本発明の和装品には、着物、襦袢、帯、肩掛け(ショール)、コートなどが含まれる。
【0012】図1は、本発明においてプリーツ処理する前の状態の一例を示す平面図である。なお、図1において点線で描写している部分は出来上がり予定の寸法を示している。
【0013】図2は、本発明においてプリーツ処理した後の状態の一例を示す平面図である。図2では、和装品の生地の全部に、ランダムな方向およびランダムな長さに3〜15mmの距離および1〜5mmの高低差を有するプリーツを有する着物の正面図を示す。
【0014】図3は、本発明においてプリーツ処理した後の状態の他の例を示す平面図である。
【0015】図3では、和装品の生地の全部に、ランダムなプリーツを有し、さらに一部に形状の異なるプリーツを有する肩掛け(ショール)の平面図を示す。
【0016】本発明における和装品は、和装品の全部あるいは一部にランダムな方向、ランダムな長さに3〜15mmの距離および1〜5mmの高低差を有する多数のプリーツを有する。本発明において、ランダムな方向およびランダムな長さのプリーツは、和装品を構成する生地を平面に置いて見たとき、形成されている方向に一定性がなく、プリーツの折り山の端から端までのプリーツ長さが各種各様で、いろいろな種類の方向と長さが形成されている。プリーツ全体の一部に似たようなパターンを有するプリーツが混在していても差し支えない。
【0017】図4は、本発明におけるプリーツの一例を説明する断面図である。図5は、本発明におけるプリーツの他の例を説明する断面図である。
【0018】プリーツの距離とは、図4または図5に示すように、構成する生地に余分な力を付与しない状態で平面に置いて、プリーツの谷部分(7)から折り山(8)までの道なりの距離(9)をいう。プリーツの距離が3mmより小さい場合、表面効果としてのインパクトに欠け、従来からある楊柳クレープのような強撚糸使いの凹凸と同じ様な表面効果しか与えることができない。また、プリーツの距離が15mmを越え、なおかつ仕上がり予定寸法に仕上げようとすると、プリーツの距離分生地を大きく裁断、縫製する必要があり、そのため和装品の重量が増加し、着用快適性が著しく低下する。より好ましくは、プリーツの距離を5〜10mmとすることが、ファッション性、着用快適性の点で効果を発揮できる。
【0019】プリーツの高低差とは、図4または図5に示すように、構成する生地に余分な力を付与しない状態で平面に置いて、プリーツの底となる谷部分(7)の下に台紙を挿入し接触させ、台紙から垂直方向に起き上がった最も高い部分との高低差(10)をいう。本発明の和装品は、プリーツの高低差が1〜5mmのプリーツを有する。プリーツの高低差が1mmより小さい場合、表面効果としてのインパクトに欠ける。また、プリーツの高低差が5mm以上ある場合、表面の凹凸が大きすぎ、人の好みによっては、受け入れられにくいものであった。
【0020】本発明の和装品に使用する素材は織物か編物、あるいはその組み合わせでもよい。織物と編物の組み合わせ例としては、ショールの長さを約3等分し、中央部(首に巻き付ける部分)を伸縮性のある編物、両端を織物としたショールなどがある。このように素材の切り替えはいずれの場所でも可能であるが、和装品の縫い目部分を利用することが、美観、縫製効率、耐久性の面で好ましい。
【0021】また、使用する素材には熱可塑性繊維が含まれていることが好ましい。ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維が好ましく、なかでもポリエステル系繊維を少なくとも20重量%以上を含むことがより好ましい。熱可塑性繊維を含まない場合は、熱処理によるプリーツ加工での形態保持が困難である。より好ましくは、100%熱可塑性繊維で構成されていることが、繰り返し着用、洗濯後のプリーツ保持性に対して効果が発揮できる。
【0022】プリーツを形成する方法としては、熱処理、化学薬品による処理、プレスなどによる物理的な処理のいずれを用いてもよいが、プリーツ加工の形態保持性や人体への化学薬品の影響などの点から熱処理方法が好ましい。
【0023】本発明における和装品は、プリーツ処理による見た目の収縮率を勘案して、出来上がり寸法に対して、長さ方向の寸法を5〜20%、幅方向の寸法を20〜40%広く裁断して縫製することが好ましい。長さ方向、幅方向の寸法を広くする割合が各々5%、20%より小さくなると形成するプリーツの長さ、距離、高低差が低くなり、表面変化に乏しい和装品となる。また、長さ方向、幅方向の寸法を広くする割合が各々20%、40%を越えると、プリーツの長さ、距離、高低差が大きくなりすぎ、美観を損なうし、加えて出来上がり寸法に仕上げようとすると、重量が増加し、着用快適性が劣る。
【0024】次に、本発明の和装品の製造方法の一例を説明する。
【0025】着物地を、図1のように出来上がり寸法より長さ方向の寸法を5〜20%、幅方向の寸法を20〜40%広く裁断して、前後身頃、衽、衿、袖のパーツを準備する。この時、図1の5に示す身幅に対して、図1の6に示す裾幅寸法を5〜50%広くすることにより、着用状態で、上前衿下および上前衽線が垂直となり、美しい着姿を得ることができる。従来の着物で使われる手縫いの工程を省略し、縫製箇所を全てミシンを使って縫製し、最終縫製品に仕上げる。この時、衽については前身頃を衽付け方向に幅を延長し省略しても良い。次に、縫製品全体あるいはシワを入れたい部分を絞り糸条で固定したり、巻いたり、折り畳んだりして前処理をする。前処理は単独の方法でも幾種類か組み合わせた方法でもプリーツ加工は可能で、出来上がりのプリーツの形状に合った方法で加工すればよい。この後プリーツ機械にかけて折り目を付け、湿熱処理で固定することよりプリーツが形成される。さらに再度、和装品をプレス機械にかけ、表面の凹凸を押しつぶすことにより、目的とするファッション性、着用快適性、収納性に優れた和装品を得ることができる。
【0026】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
【0027】実施例および比較例に用いた和装品の寸法を表1に、和装品の審美性(外観)、着用感、取り扱い性等の評価基準を表2に、また、評価した結果を表3に示す。
【0028】実施例1ポリエステル100%の浴衣地を用い、次の方法でミシンを用い表1の寸法の浴衣に縫製した。
(1)左右前後身頃を背縫い、脇線で縫い合わせる。
(2)左右前身頃に左右衽布を縫いつける。
(3)左右袖を各々袖口止まりから袖下にかけて縫い、袖口、袖ふり部分をステッチで始末し、左右袖を仕上げる。
(4)前身頃と後身頃で形成した袖付け位置に左右の袖を縫い付ける。
(5)身頃に衿を縫いつける。
(6)衿下、裾の縫い目をステッチで始末し、浴衣に仕上げる。
【0029】このように縫製した浴衣を次の方法でプリーツ加工した。
(1)浴衣の生地をつまみ、高さ10mm程度、長さ10cm程度に手作業で糸で絞る。
(2)浴衣全体を絞った後、 プリーツ機械に通し、その後115℃の湿熱処理装置に入れ、30分加熱して熱処理した。
(3)処理装置から取り出し、乾燥した後、120℃のプレス機械で浴衣全体を押しつぶした。
【0030】こうして得られた浴衣の審美性(外観)、着用感、取り扱い性等を評価した結果を表3に示す。
【0031】実施例2ポリエステル70%綿30%の浴衣地を用い、次の方法でミシンを用い表1の寸法の浴衣に縫製した。
(1)左右前後身頃を背縫い、脇線で縫い合わせる。
(2)左右前身頃に左衽布を縫いつける(右前身頃は衽付け方向に幅を延長して裁断するので右衽は省略)。
(3)左右袖を各々袖口止まりから袖下にかけて縫い、袖口、袖ふり部分をステッチで始末し、左右袖を仕上げる。
(4)前身頃と後身頃で形成した袖付け位置に左右の袖を縫い付ける。
(5)身頃に衿を縫いつける。
(6)衿下、裾の縫い目をステッチで始末し、浴衣に仕上げる。
【0032】このように縫製した浴衣を次の方法でプリーツ加工した。
(1)浴衣を、左右脇線で折り畳み、右脇裾から左袖山に向かって高さ15mm程度の山を作るよう手作業で折り畳む。
(2)折り畳んだ浴衣全体を糸で絞った後、 プリーツ機械に通し、その後115℃の湿熱処理装置に入れ、40分加熱して熱処理した。
(3)処理装置から取り出し、乾燥した後、120℃のプレス機械で浴衣全体を押しつぶした。
【0033】こうして得られた浴衣の審美性(外観)、着用感、取り扱い性等を評価した結果を表3に示す。
【0034】実施例3ポリエステル100%の平織り生地を用い、表1の寸法に裁断し、周囲をミシンで三つ折りステッチしてショールに縫製し、次の方法でプリーツ加工した。
(1)ショールの長手方向の一端から30cmの間の生地を数カ所手で15mm程度つまみ、糸で絞る。
(2)ショール全体をプリーツ機械に通し、その後115℃の湿熱処理装置に入れ、30分加熱して熱処理した。
(3)処理装置から取り出し、乾燥した後、120℃のプレス機械でショール全体を押しつぶした。
【0035】こうして得られたショールの審美性(外観)、着用感、取り扱い性等を評価した結果を表3に示す。
【0036】比較例1ポリエステル100%の浴衣地を用い、実施例1と同じ寸法で浴衣に縫製した。
【0037】こうして得られた浴衣の審美性(外観)、着用感、取り扱い性等を評価した結果を表3に併記した。
【0038】比較例2ポリエステル100%の浴衣地を用い、次の方法でミシンを用い表1の寸法の浴衣に縫製した。
(1)左右前後身頃を背縫い、脇線で縫い合わせる。
(2)左右前身頃に左右衽布を縫いつける。
(3)左右袖を各々袖口止まりから袖下にかけて縫い、袖口、袖ふり部分をステッチで始末し、左右袖を仕上げる。
(4)前身頃と後身頃で形成した袖付け位置に左右の袖を縫い付ける。
(5)身頃に衿を縫いつける。
(6)衿下、裾の縫い目をステッチで始末し、浴衣に仕上げる。
【0039】このように縫製した浴衣を次の方法でプリーツ加工した。
(1)浴衣を押込筒中に詰め込んでプレスし、湿熱処理装置で熱固定する。
(2)処理装置から取り出し、乾燥した後、浴衣の形状になるよう引っ張り、成形した。
【0040】こうして得られた浴衣の審美性(外観)、着用感、取り扱い性等を評価した結果を表3に併記した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【発明の効果】本発明における和装品は、ファッション性がある上に伝統的な和装品の雰囲気を十分満足させられるものであり、なおかつ着用快適性に優れるものである。また、着用後の畳み、収納、運搬方法が簡便となり、若者の和装離れを留める一助となりうる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋室町2丁目2番1号
【出願日】 平成14年5月28日(2002.5.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−342807(P2003−342807A)
【公開日】 平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願番号】 特願2002−153542(P2002−153542)