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【発明の名称】 冷却機能を有する衣服、冷却材及びその使用方法
【発明者】 【氏名】宮木 律
【住所又は居所】埼玉県上尾市大字領家字山下1152番地の10 株式会社アイチコーポレーション上尾工場内

【氏名】守屋 伸彦
【住所又は居所】埼玉県上尾市大字領家字山下1152番地の10 株式会社アイチコーポレーション上尾工場内

【氏名】飯島 直之
【住所又は居所】東京都渋谷区広尾五丁目4番3号 ミドリ安全株式会社内

【要約】 【課題】冷却材を装着するに際して、適度な温度調整がなされるようにし、また、冷却持続時間を長くするとともに、薄型化を図り、冷凍させる時間をできるだけ短くできるようにする。

【解決手段】冷却材9は、水系ゲル蓄熱体901を含む蓄熱材903と、蓄熱材903の片面側に配置された断熱プレート材904とを袋体905内に封入した構成とされている。断熱プレート材904は、凍結させた水系ゲル蓄熱体901の低温を冷却材9の表面において適宜な温度となるように温度調整するためのものである。冷却材9を衣服本体1のポケット6、7に収納するとき、断熱プレート材904のある面905aが着用者の身体側に向くようにし、冷却材9とともに外部側にプレート状の断熱パッド10も収納する。断熱パッド10は、外部の熱を冷却材9に伝えにくくするためのものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷却材を収納するためのポケットを備えた冷却機能を有する衣服であって、上記冷却材は、ゲル蓄熱体が保護フィルムにより被覆されてなる蓄熱材と、上記蓄熱材の片面側に配置された断熱プレート材と、上記蓄熱材及び上記断熱プレート材が内部に封入された状態で全周縁部が密封された袋体とにより構成され、上記断熱プレート材のある面が着用者の身体側に向くようにして上記ポケットに取り出し可能に収納されることを特徴とする冷却機能を有する衣服。
【請求項2】 上記ポケットに取り出し可能に収納されるプレート状の断熱パッドを備え、上記断熱パッドが外側に、上記冷却材が着用者の身体側に位置するように上記ポケットに収納されることを特徴とする請求項1に記載の冷却機能を有する衣服。
【請求項3】 上記ポケットには上記断熱パッドを1枚、上記冷却材を2枚収納可能としたことを特徴とする請求項2に記載の冷却機能を有する衣服。
【請求項4】 上記ポケットに上記冷却材を2枚収納する場合に、上記断熱プレート材のない面同士を重ね合わせることを特徴とする請求項3に記載の冷却機能を有する衣服。
【請求項5】 上記冷却材に比べて上記断熱パッドが上記ポケットから取り出しにくくされていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の冷却機能を有する衣服。
【請求項6】 衣服に備えられたポケットに収納される冷却材であって、ゲル蓄熱体が保護フィルムにより被覆されてなる蓄熱材と、上記蓄熱材の片面側に配置された断熱プレート材と、上記蓄熱材及び上記断熱プレート材が内部に封入された状態で全周縁部が密封された袋体とにより構成され、上記断熱プレート材のある面が上記衣服の着用者の身体側に向くようにして上記衣服のポケットに取り出し可能に収納されることを特徴とする冷却材。
【請求項7】 上記袋体の表面には上記衣服のポケットに収納する際の向きが表示されていることを特徴とする請求項6に記載の冷却材。
【請求項8】 ゲル蓄熱体が保護フィルムにより被覆されてなる蓄熱材と、上記蓄熱材の片面側に配置された断熱プレート材と、上記蓄熱材及び上記断熱プレート材が内部に封入された状態で全周縁部が密封された袋体とにより構成された冷却材を、衣服に備えられたポケットに収納して用いる冷却材の使用方法であって、上記断熱プレート材のある面を上記衣服の着用者の身体側に向くようにして上記衣服のポケットに取り出し可能に収納することを特徴とする冷却材の使用方法。
【請求項9】 冷却材を収納するためのポケットを備えた冷却機能を有する衣服であって、メッシュ素材からなる衣服本体と、綿混紡素材からなる立襟とを備え、上記衣服本体及び上記立襟のいずれにもポケットが備えられていることを特徴とする冷却機能を有する衣服。
【請求項10】 上記立襟内に横方向に挿通する紐の両端が上記立襟の両端辺から外部に引き出されており、上記立襟の着用者の首への密着具合を調整可能にしたことを特徴とする請求項9に記載の冷却機能を有する衣服。
【請求項11】 上記紐は上記立襟の上辺に沿って配置されていることを特徴とする請求項10に記載の冷却機能を有する衣服。
【請求項12】 上記紐の両端は上記立襟の両端辺の上下方向途中位置で下方に向けて引き出されていることを特徴とする請求項11に記載の冷却機能を有する衣服。
【請求項13】 上記紐を引っ張った状態に保持する保持機構を有することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の冷却機能を有する衣服。
【請求項14】 上記紐はゴム紐であることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の冷却機能を有する衣服。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温環境(夏季等の暑さを感じる環境下等)での作業時に着用して好適な冷却機能を有する衣服、当該衣服に用いられる冷却材及びその使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から高温環境等での作業時に身体を冷却するための衣服がいくつか提案されている。例えば、ポンプを用いて衣服本体に内蔵されたチューブに冷水を循環させて身体を冷やすものや、コンプレッサを用いて空気を供給して身体を冷やすもの等がある。
【0003】しかしながら、上記のように冷水を循環させたり、空気を供給したりするのでは、ポンプやコンプレッサとそれら接続する耐圧ホース、更にはそれらの電源と電源コード等が必要となり、大型化するとともに、価格も高くなってしまう。また、耐圧ホースや電源コード等は、作業時の邪魔になるだけでなく、作業範囲(行動範囲)が制限されて、作業者すなわち着用者の本来の目的である作業の妨げとなってしまう。
【0004】そこで、凍結させた冷却材を装着することにより冷却機能を発揮する衣服が提案されている。かかる冷却機能を有する衣服によれば、ポンプやコンプレッサ、電源等を不要にして、簡素化、低価格化を図るとともに、作業者の行動を阻害しない(作業範囲が制限されない)ようにすることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のように冷却材を装着する場合に、冷却材には様々なことが要求される。例えば、冷却材が着用者の身体に直接的に触れると局所的若しくは全身が過冷却されてしまうおそれがあるので、適度な温度調整を行う必要がある。また、冷却持続時間は長い方が望まれる一方で、薄型で軽く、しかも、冷凍させる時間ができるだけ短いものが要求される。
【0006】さらに、着用者の身体や脇の下方だけでなく、動脈の通っている首の後部をも冷却することができれば、更に効果的な冷却作用を得ることができる。
【0007】本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、冷却材を用いた冷却機能を有する衣服をより快適なものとし、利便性を高めることを目的とする。具体的には、冷却材を装着するに際して、適度な温度調整がなされるようにすることを目的とする。また、冷却持続時間を長くするとともに、軽量・薄型化を図り、冷凍させる時間をできるだけ短くできることを目的とする。さらには、着用者の首をも快適に冷却できるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の冷却機能を有する衣服は、冷却材を収納するためのポケットを備えた冷却機能を有する衣服であって、上記冷却材は、ゲル蓄熱体が保護フィルムにより被覆されてなる蓄熱材と、上記蓄熱材の片面側に配置された断熱プレート材と、上記蓄熱材及び上記断熱プレート材が内部に封入された状態で全周縁部が密封された袋体とにより構成され、上記断熱プレート材のある面が着用者の身体側に向くようにして上記ポケットに取り出し可能に収納される点に特徴を有する。
【0009】本発明の冷却機能を有する衣服の他の特徴とするところは、上記ポケットに取り出し可能に収納されるプレート状の断熱パッドを備え、上記断熱パッドが外側に、上記冷却材が着用者の身体側に位置するように上記ポケットに収納される点にある。また、上記ポケットには上記断熱パッドを1枚、上記冷却材を2枚収納可能とした点にある。また、上記ポケットに上記冷却材を2枚収納する場合に、上記断熱プレート材のない面同士を重ね合わせる点にある。また、上記冷却材に比べて上記断熱パッドが上記ポケットから取り出しにくくされている点にある。
【0010】本発明の冷却材は、衣服に備えられたポケットに収納される冷却材であって、ゲル蓄熱体が保護フィルムにより被覆されてなる蓄熱材と、上記蓄熱材の片面側に配置された断熱プレート材と、上記蓄熱材及び上記断熱プレート材が内部に封入された状態で全周縁部が密封された袋体とにより構成され、上記断熱プレート材のある面が上記衣服の着用者の身体側に向くようにして上記衣服のポケットに取り出し可能に収納される点に特徴を有する。
【0011】上記本発明の冷却材の他の特徴とするところは、上記袋体の表面には上記衣服のポケットに収納する際の向きが表示されている点にある。
【0012】本発明の冷却材の使用方法は、ゲル蓄熱体が保護フィルムにより被覆されてなる蓄熱材と、上記蓄熱材の片面側に配置された断熱プレート材と、上記蓄熱材及び上記断熱プレート材が内部に封入された状態で全周縁部が密封された袋体とにより構成された冷却材を、衣服に備えられたポケットに収納して用いる冷却材の使用方法であって、上記断熱プレート材のある面を上記衣服の着用者の身体側に向くようにして上記衣服のポケットに取り出し可能に収納する点に特徴を有する。
【0013】本発明の他の冷却機能を有する衣服は、冷却材を収納するためのポケットを備えた冷却機能を有する衣服であって、メッシュ素材からなる衣服本体と、綿混紡素材からなる立襟とを備え、上記衣服本体及び上記立襟のいずれにもポケットが備えられている点に特徴を有する。
【0014】上記本発明の他の冷却機能を有する衣服の他の特徴とするところは、上記立襟内に横方向に挿通する紐の両端が上記立襟の両端辺から外部に引き出されており、上記立襟の着用者の首への密着具合を調整可能とした点にある。また、上記紐は上記立襟の上辺に沿って配置されている点にある。また、上記紐の両端は上記立襟の両端辺の上下方向途中位置で下方に向けて引き出されている点にある。また、上記紐を引っ張った状態に保持する保持機構を有する点にある。また、上記紐はゴム紐である点にある。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の冷却機能を有する衣服、冷却材及びその使用方法の好適な実施の形態について説明する。
【0016】図1には、本実施の形態の冷却機能を有する衣服の外観を示す。図1(a)は衣服の前面側斜視図、(b)は後面側斜視図、(c)はオプションとして用意されている一対のずれ防止ベルト12を示す図である。また、図2には、本実施の形態の冷却機能を有する衣服を広げた状態を示す。図1、2に示すように、本実施の形態の冷却機能を有する衣服は、ベスト型の衣服本体1と、衣服本体1に対して着脱可能とされた立襟2とを備えている。
【0017】衣服本体1は、着用者の前側(胸側)を覆うための左右の前面布101R、101Lと、着用者の後側(背中側)を覆うための後面布102とからなり、左右の前面布101R、101Lをファスナー3により開閉することにより着脱するようになっている。これら前面布101R、101L及び後面布102の素材としては、通気性を確保するためにナイロンメッシュ素材が採用され、その端部にはパイピング始末が施されている。なお、図1、2においてメッシュ模様は省略する。
【0018】後面布102は、着用者の肩から背中までを覆うように裁断されている。また、左右の前面布101R、101Lは、着用者の肩から胸の下方あたりまでを覆うとともに、脇(腋)の下方を覆うよう側方に突出させた突出部103が形成されるように裁断されている。そして、着用者の肩に対応する部位で左右の前面布101R、101Lと後面布102とが縫い付けられている。
【0019】ここで、通常であれば、着用者の脇の下方に対応する部位でも左右の前面布101R、101Lと後面布102とを縫い付けるところであるが、その部分での縫い付けを行っていない。そして、この縫い付けを行っていない脇の下方に対応する部位において、左右の前面布101R、101Lと後面布102とをアジャスタベルト4を介して繋げている。
【0020】衣服本体1は、その身丈を短く、図7に示すように、衣服本体1の下端が着用者の腰骨よりも上に位置するようにしている。これは、着用者の腰骨位置には、道具を収納する道具入れを吊り下げたり、命綱を引っ掛けたりするためのベルト、いわゆる安全帯を巻き付けることが多く、この安全帯に干渉しないようにするためである。
【0021】かかる衣服本体1において、着用者の背中に対応する部位、すなわち後面布102の内側には、縦横に並べた4つの収納ポケット6が設けられている。また、着用者の脇の下方に対応する部位、すなわち左右の前面布101R、101Lの突出部103の内側には、それぞれ1つの収納ポケット7が設けられている。これら収納ポケット6、7は、後述する冷却材9を取り出し可能に収納するためのものである。なお、収納ポケット6、7の開口を開閉可能とすると共に冷却材9の脱落を防止するためにベルクロ等を設けておく。
【0022】立襟2は、ファスナー5を介して衣服本体1に対して着脱可能とされている。このように立襟2を着脱可能とすることにより、不要な場合は取り外すことができ、また、特に汚れやすい襟だけを洗濯することが可能となる。立襟2の素材としては、衣服本体1と同じくナイロンメッシュ素材とするのでは肌が擦れてしまうため、肌触りや洗濯のしやすさを考慮して綿混紡素材、具体的にはツイル素材(斜文織素材)が採用されている。
【0023】立襟2は、上辺の長さに対して、ファスナー5を設けた下辺の長さが長く、展開したときに滑らかな台形形状となるように型取られて裁断されている。そして、台形形状に裁断されたツイル素材を2枚重ね合わせて、更に端部パイピング始末を施しつつ縫製し、ファスナー5も同時に縫製で取り付ける。このようにした立襟2をファスナー5を介して衣服本体1に取り付けると、着用者の首の後部では十分な高さが確保され、直射日光等を十分に防ぐことができる一方で、首の側部では高さが低くなるので、首を動かすのに邪魔になることもない。
【0024】しかも、上述した縫製でツイル素材の肌触りを生かしつつ適当な剛性を持つようにされており、かつ、立襟2の下辺を長くすることにより、後面布102だけでなく左右の前面布101R、101L側に至るまでの長い取り付け長さを確保することができ、後述するように立襟2に冷却材を装着した場合でも、立襟2をしっかりと立たせた状態に維持することができる。
【0025】かかる立襟2において、着用者の首の後部に対応する部位、すなわち立襟2の内側中央寄りの部分には、左右に並べた2つの収納ポケット8が設けられている。収納ポケット8は、後述する冷却材を取り出し可能に収納するためのものである。なお、収納ポケット8には、収納ポケット6、7と同じ目的でベルクロ等を設けておく。
【0026】次に、衣服本体1の収納ポケット6、7に取り出し可能に収納される冷却材9について説明する。図3に示すように、冷却材9は全体としてやや厚みのある略プレート形状をしており、図4に示すように、水系ゲル蓄熱体901が保護フィルム902により被覆されてなる蓄熱材903と、蓄熱材903の片面側のみに配置された断熱プレート材904とを袋体905内に封入し、この袋体905の全周縁部を密封する構成とされている。
【0027】蓄熱材903は、水、エチレングリコール、高吸水性樹脂、抗菌剤等を含む水系ゲル蓄熱材901を保護フィルム902により被覆したものである。水系ゲル蓄熱材901は通常はゲル状であるが、凍結することにより固体状に物理相が変化して、保冷機能を発揮する。
【0028】断熱プレート材904は、発泡ポリエチレンをプレート状にしたものであり、クッション性、断熱性を有する。断熱プレート材904の断熱性は、凍結させた水系ゲル蓄熱体901の低温を冷却材9の表面(袋体905の表面)において、着用者が適宜な温度を感じる状態となるように温度調整をするためのものであり、熱が伝わらないようにするというよりも熱の伝わりが弱くなるように伝熱調整的機能があれば充分である。
【0029】袋体905は、2枚のEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)シート等の所定のコシのある絶縁耐磨耗素材からなっており、全周縁部を溶着して密封させたものである。袋体905は、水系ゲル蓄熱体901を含む蓄熱材903を保護するとともに、水系ゲル蓄熱体901が柔らかくなっているときにも冷却材9が略プレート形状となるよう保持する。また、全周縁部に薄い溶着部906を有するので、柔らかい状態の冷却材9が起立するのを防ぐことができる。これにより、冷却するために柔らかい状態の冷却材9を冷凍庫に投げ入れたような場合でも、常に寝かせた状態になり、起立した格好で凍結しその一部が尖った状態になることを防止することができる。
【0030】図5に示すように、冷却材9を衣服本体1の収納ポケット6、7に収納するのであるが、このとき、断熱プレート材904のある面905aが着用者の身体側に向くようにする。冷却材9の表面(袋体905の表面)には、図3、5に示すように、収納ポケット6、7に収納する際の向き、すなわち、どちらの面を身体側に向けるかを間違えないように表示する文字、図、色等を印刷しておく。本実施の形態では、袋体905を構成するEVAシートに適当な間隔で文字列を斜めに印刷している。
【0031】また、冷却材9とともにプレート状の断熱パッド10も収納する。このとき、断熱パッド10を外部側に、冷却材9を着用者の身体側に位置させる。断熱パッド10は、冷却材9内の断熱プレート材904と同様に発泡ポリエチレン等をプレート状にしたものであるが、衣服本体1のナイロンメッシュ素材に直接触れることから耐磨耗性処理等を施しておくのが望ましい。断熱パッド10は、外部(高温環境)の熱を冷却材9に伝えにくくするためのものであり、高温環境下にあっても水系ゲル蓄熱体901の凍結状態(冷却持続時間)を長時間維持する。
【0032】ここで更に冷却持続時間を長くしたい場合の為に、図6に示すように、衣服本体1のポケット6、7には、冷却材9を1枚だけでなく、2枚収納することができる。冷却材9を2枚収納する場合、断熱プレート材904のない面同士を重ね合わせる、言い方を換えれば、断熱プレート材904のある面905a(印刷面)がそれぞれ着用者の身体側と着用者の反身体側即ち外部側に向くようにして重ね合わせる。このように冷却材9を2枚収納することにより、水系ゲル蓄熱体901の量が倍となるとともに、蓄熱材903同士が直接的に(EVAシートのみを介して)隣接して互いに冷却しあうので、冷却材9が1枚の場合に比べて冷却持続時間をほぼ倍にすることができる。
【0033】発明者らは、本発明の構成の冷却材9を水系ゲル蓄熱体901が125gとなるように複数作成し、次のような二種類の試験をすることで効果を確認した。
【0034】まず第一の試験として、冷却材9を充分に凍結させたものを用意して本発明の衣服本体1の収納ポケット6に上述の方法で1枚若しくは2枚収納したものを準備する。そして、室温35℃の恒温環境下に、縦400mm、横300mmの平面部を有し、300mmの二辺から先端が20mm程内側に曲がった高さ80mmの二つの足部を持つ厚さ1mmのアルミで製作した断面略コ字状の台を設置し、衣服本体1の着用者側が前記台に接するように置いて、冷却材9内断熱プレート材904側の保護フィルム902表面中央の温度を、5℃からカウントして潜熱状態が続いている時間を定冷却時間として測定した。その結果、各ポケット6、7に1枚収納した場合は120分〜170分、2枚収納した場合は約240分程度定冷却時間の性能を発揮した。参考として断熱パッド10と断熱プレート材904が無い以外は同じ仕様(従来品、冷却材1枚)で試験を行った結果は、約40〜60分であった。この結果から明らかなように本発明の冷却材9とそれを用いた衣服本体1では、ベンチテスト的に従来の製品より長時間に亘って冷却性能が維持できる。
【0035】次いで、実際の使用に近い条件での第二の試験を実施した。被験者である着用者が第一の試験での2枚の冷却材9を各収納ポケットに収納した衣服本体1を、通常の作業着の上に室温35℃の恒温環境下で着用(安全靴と保護へルメットも着用)して運動を行ない、背中表面の温度と冷却材の背中側表面中央の温度との差が5℃以上である時間を測定した。冷却物と着用者間に5℃以上の温度差があれば、冷却感を感じ続けることができることを発明者らは経験則から確認しているので、前記の温度差を保持できる時間を設定した。なお、運動は前述の着装でエアロバイク(秦運動具工業株式会社製、型式:LM−1950)を用いて、60kcal/10分間の消費エネルギとなるように20分間エアロバイクを漕ぎ、10分間は座位休憩するというサイクルを繰り返した。その結果、本発明の仕様では約180〜200分間に亘って温度差5℃を維持することができた。参考として第一試験の従来品冷却材で、同様の試験をしたところ約150〜180分間に亘って温度差5℃を維持していた。
【0036】この結果から明らかなように本発明の冷却材9とそれを用いた衣服本体1では、実際の使用に即した条件でも、従来の製品以上に冷却性能が維持できる。なお一使用例としては、凍結させた冷却材9をクーラーボックスに格納して現場に持っていき、作業に際して軽量であることが望まれる場合は各ポケット6、7に冷却材を1枚収納し、冷却材9の交換回数を少なくすることが望まれる場合は各ポケット6、7に冷却材を2枚収納するようにして使い分ければよい。
【0037】次に、立襟2に取り出し可能に収納される冷却材について説明する。図示は省略するが、冷却材9と同様に略プレート形状をしており、2枚のEVAシートの全周縁部を溶着して密封させた袋体内に、水系ゲル蓄熱体を保護フィルムにより被覆してなる蓄熱材が封入されている。
【0038】ただし、衣服本体1は身体に密着する度合いが大きいのに対して、立襟2は首から離れた状態となりやすいので、立襟2に装着する冷却材では温度調整のための断熱プレート材904を設けていない。また、立襟2に装着する冷却材では断熱パッド10に相当する断熱材を袋体内に設けている。なお、立襟2に装着する冷却材は、衣服本体1に装着する冷却材9よりも小さいサイズとされている。
【0039】次に、本実施の形態の冷却機能を有する衣服の着用方法について説明する。上述したように冷却材9をポケット6、7に収納した状態で、図7に示すように、衣服本体1を作業服の上から着用してファスナー3を締めるとともに、アジャスタベルト4を引いて衣服本体1を身体周りにフィットさせるよう調節する。必要であれば立襟2を装着した状態とし、立襟2のポケット8にも冷却材を収納しておく。
【0040】ここで、図1に示すように、衣服本体1の前面下方(アジャスタベルト4の下方)にはファスナー3を挟んで両側にドットボタン11が取り付けられている。また、図1(c)に示すように、オプションとして一対のずれ防止ベルト12が用意されている。各ずれ防止ベルト12は、環状部13が形成されるように曲げられて縫い付けられた帯体14と、環状部13に開口を形成したり、開口を閉じたりするための係合部材15と、衣服本体1側のドットボタン11に嵌合するドットボタン16とを備えるものである。
【0041】衣服本体1の背中部分には冷却材9が装着されるため、その重量により着用中に衣服本体1が背中側にずれてしまうことがある。そのずれが気になるような場合は、ずれ防止ベルト12のドットボタン16を衣服本体1側のドットボタン11に嵌合させるとともに、環状部13内に着用者のベルト17(図7参照)を通した状態で係合部材15を係合させる。これにより、衣服本体1の前面下方がずれ防止ベルト12を介して着用者のベルト17に支持されるので、衣服本体1が背中側にずれるのを防止することができる。
【0042】また、図1に示すように、立襟2の上辺に沿ってゴム紐18が挿通し、その両端が略台形の立襟2の両端辺(下方傾斜部分)に沿った形での立襟の上下方向途中位置で斜め下方に向けて引き出されている。このようにゴム紐18が立襟2の両端辺位置で下方に湾曲するように引き出されているので、ゴム紐を締めても着用者の首には必要以上に触れず、不快感を与えることもない。なお、立襟2の上辺でなく、適当な高さ位置で横方向にゴム紐18を挿通してもよいが、ゴム紐が立襟1の下辺に近い位置にあると、冷却材9を装着していないときや冷却材9が柔らかくなったときに立襟2が後方に反り返ってしまうことがあるので、ゴム紐18を挿通する位置は立襟2の上辺に近い位置、好ましくは上辺に沿って配置するのが望ましい。
【0043】ゴム紐18の両端にはストッパ19が設けられている。ストッパ19は、図8に示すように、円筒形状の樹脂ケース19aと樹脂ケース19aに設けられたボタン19bとを備えており、樹脂ケース19aの側方に形成された貫通穴19cにゴム紐18を通す構成とされている。通常状態では、具体的には図示しないが樹脂ケース19a内でスプリングによりストッパ部材がゴム紐を係止しており、ストッパ19とゴム紐18との相対移動が規制されるが、スプリングに抗してボタン19bを押すと、ストッパ部材がゴム紐18から離れてストッパ19とゴム紐18との相対移動が可能となる。
【0044】一方、衣服本体1の前面上方にはファスナー3を挟んで両側に、より具体的には立襟2からのゴム紐18の引き出し方向の略延長線上にループ状にされた紐体20が固定されている。紐体20のループの大きさは、ストッパ19を縦にすれば通すことができるが、横にしたときは通さない程度の大きさとされており、ストッパ19をループ状にされた紐体20に通した(ストッパ19が紐体20より下方に位置する)状態としておく。
【0045】立襟2の首への密着具合を調整する場合、ストッパ19を紐体20に隣接させた状態でストッパ19のボタン19bを押しながらゴム紐18を引っ張り出したり、戻したりする。そして、適度な密着具合になったならば、ボタン19bを離してストッパ19とゴム紐18との相対移動を規制する。この状態では、ストッパ19が紐体20に係止してゴム紐18が引っ張られた状態となるので、立襟2を着用者の首の後部に密着させることができ、冷気の漏れや熱気の侵入を減らすことができる。すなわち、これらストッパ19及びループ状にされた紐体20が本発明でいう保持機構に相当する。なお、作業中に着用者が首を後方に反らせるときには、ゴム紐18が伸びるのでその動作の妨げになることもない。また、首を後方に反らせた後に前方に戻しても、保持機構のために立襟2は、首の動きに追従することとなる。また、前述のようなゴム紐18をファスナー3と略平行方向にクロスさせることなく胸部に沿うように配置しているので、不必要に首部(頸動脈付近)を圧迫することもない。更に、立襟2と紐体20の距離が比較的短くても良いため紐が作業の邪魔になるようなこともない。
【0046】なお、衣服本体1(ナイロンメッシュ)や立襟2(綿混紡ツイル)だけでなく、すべての素材で金属を使用していない。例えば、ファスナー3、5、アジャスタベルト4やずれ防止ベルト12等に用いられる部材(ドットボタン11、16等)には樹脂素材が採用されている。これは、配電作業等の電気関係の作業を行う場合の安全性を確保するためである。なお、衣服本体1の素材としては、絶縁性素材のゴム等を採用することも考えられるが、発汗による体温調整を阻害するため本実施の形態のようにナイロンメッシュ素材とするのが望ましい。また、衣服本体1をナイロンメッシュ素材とすることにより、洗濯後の乾燥時間が短時間にできるばかりでなく、衣服本体1自体の重量軽減ができ、冷却機能を有する衣服を着用した場合の疲労感を最小限に留めることができる。
【0047】以上述べた本実施の形態の冷却機能を有する衣服及び冷却材においては、冷却材9は袋体905内に蓄熱材903と蓄熱材903の片面側に配置された断熱プレート材904とを備え、断熱プレート材904のある面905aが着用者の身体に向くようにされているので、凍結させた水系ゲル蓄熱体901の低温を冷却材903の表面(袋体905の表面)において適宜な温度となるように温度調整することができ、着用者の身体を直接冷却するのを避け、過冷却を防ぐことができる。また、断熱プレート材904が冷却材9の袋体905に内蔵されており、使用時には断熱プレート材904も既に冷やされた状態となっているので、着用直後からの冷却機能の即効性が期待される。
【0048】しかも、断熱プレート材904を用いるようにしたので、冷却材9の表面において均一な温度を得ることができる。例えば、蓄熱材903の片面側に粒状物を多数設けて粒状物間に断熱層となる空気層を確保したり、気泡室を設けて断熱層となる空気層を確保したりすることにより温度調整を行うことも考えられるが、その場合、断熱層の厚みに偏りが生じてしまい、温度調整がばらついて冷却材9の表面において均一な温度を得ることができない。特に、冷却材9は衣服本体1のポケット6、7に縦にした状態で収納されるので、空気層等では厚さの偏りが大きくなってしまうのに対して、固体の断熱プレート材904を用いることにより、立たせた状態でも均一な温度を得ることができる。また、断熱プレート材904は、水系ゲル蓄熱体901が柔らかくなっているときにも冷却材9が略プレート形状となるよう保持する機能も発揮する。
【0049】また、本実施の形態の冷却機能を有する衣服及び冷却材においては、衣服本体1のポケット6、7に冷却材9とともにプレート状の断熱パッド10も収納するようにしたので、外部(高温環境)の熱を冷却材9に伝えにくくすることができ、水系ゲル蓄熱体901の凍結状態を長時間維持することができる。
【0050】ここで、断熱パッド10を冷却材9の袋体905内に予め封入しておくことも考えられる。しかしながら、冷却材9が厚くなるとともに、袋体905内で水系ゲル蓄熱体901を挟んで両側に断熱プレート材904と断熱パッド10とが存在することになり、水系ゲル蓄熱体901を凍結させるための冷凍時間が長くなってしまう。また、袋体905内で水系ゲル蓄熱体901を挟んで両側に断熱プレート材904と断熱パッド10とが存在するため、冷却材9を2枚重ね合わせると蓄熱材903間には断熱材が介在することになり、本実施の形態で説明したように2枚重ね合わせて使用することができなくなる。
【0051】一方、断熱パッド10をポケット6、7に予め縫い付けておくことも考えられる。しかしながら、衣服本体1を洗濯すると、断熱パッド10が破損等してしまうおそれがある。
【0052】それに対して、本実施の形態のように断熱パッド10を別部材とし、ポケット6、7に冷却材9とともに収納するようにすれば、冷却材9の薄型化を図るとともに、袋体905内で水系ゲル蓄熱体901の片面側に断熱プレート材904が存在するだけなので、水系ゲル蓄熱体901を凍結させるための冷凍時間が長くなってしまうことがない。また、冷却材9を2枚重ね合わせて使用することも可能となる。
【0053】また、衣服本体1を洗濯するときには、断熱パッド10をポケット6、7から取り出せばよく、断熱パッド10が破損等するのを避けることができる。なお、断熱パッド10はポケット6、7から毎回取り出す必要はなく、衣服本体1の洗濯時等にのみ取り出せればよいのに対して、冷却材9は毎回取り出して凍結、使用を繰り返すので、断熱パッド10はポケット6、7から取り出しにくく、冷却材9はポケット6、7から取り出しやすくしておく。例えば、断熱パッド10の大きさをポケット6、7と略同等の大きさとするのに対して、冷却材9の大きさをポケット6、7より小さくし、衣服本体1を逆さにすれば、断熱パッド10はポケット6、7内に残ったまま冷却材9だけが落下するような構成とすればよい。
【0054】なお、上記実施の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記実施の形態では、着用者の背中や脇下に対応する部位に冷却材9を配置するようにしたが、その位置は限定されるものではない。ただし、着用者の胸に対応する部位以外の部位に冷却材9を配置することにより、心臓が冷やされるのを避け、気分が悪くなる等の事態が生じるのを防止することができる。
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、断熱プレート材のある面が着用者の身体に向くように冷却材がポケットに収納されるので、凍結させたゲル蓄熱体の低温を冷却材の表面(袋体の表面)において適宜な温度となるように温度調整することができ、着用者の身体を直接冷却するのを避け、過冷却を防いで、より快適なものとすることができる。また、断熱プレート材が冷却材の袋体に内蔵されており、使用時には断熱プレート材も冷やされた状態となっているので、冷却機能の即効性が期待される。しかも、断熱プレート材を用いるようにしたので、ポケットに縦にした状態で収納しても、温度調整がばらつくのを避けて冷却材の表面において均一な温度を得ることができる。
【0056】さらに、ポケットに冷却材とともにプレート状の断熱パッドも収納することにより、外部(高温環境)の熱を冷却材に伝えにくくすることができ、ゲル蓄熱体の凍結状態を長時間維持することができる。しかも、断熱パッドを別部材とし、ポケットに冷却材とともに収納するので、冷却材の薄型化を図るとともに、袋体内でゲル蓄熱体の片面側に断熱プレート材が存在するだけなので、ゲル蓄熱体を凍結させるための冷凍時間が長くなってしまうことがない。また、冷却材を2枚重ね合わせて使用することも可能となる。
【0057】また、本発明によれば、衣服本体と立襟とを備え、その両方に冷却材を収納するためのポケットを備えているので、着用者の首をも冷却することができ、しかも、衣服本体は通気性に優れたメッシュ素材とする一方で、立襟は肌に擦れやすいメッシュ素材ではなく肌触りのよい綿混紡素材としたので、より快適なものとすることができる。
【出願人】 【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
【住所又は居所】愛知県名古屋市中区千代田2丁目15番18号
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
【住所又は居所】東京都渋谷区広尾5丁目4番3号
【出願日】 平成14年5月10日(2002.5.10)
【代理人】 【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
【公開番号】 特開2003−328213(P2003−328213A)
【公開日】 平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願番号】 特願2002−135715(P2002−135715)