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【発明の名称】 耐切創高保温手袋
【発明者】 【氏名】山本 勉
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本町1丁目5番6号 東レ・デュポン株式会社本社内

【氏名】波多野 武
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本町1丁目5番6号 東レ・デュポン株式会社本社内

【氏名】山田 賢孝
【住所又は居所】滋賀県大津市大江1丁目1番1号 東レ株式会社瀬田工場内

【要約】 【課題】

【解決手段】引張弾性率が300cN/dtex以上の高機能繊維と、ポリフェニレンサルファイド繊維とを含み、接触温冷感が0.065(W/cm)以下で、かつクロー値が0.910(℃・m2・hr/kcal)以上であることを特徴とする手袋。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 引張弾性率が300cN/dtex以上の高機能繊維と、ポリフェニレンサルファイド繊維とを含み、接触温冷感が0.065(W/cm)以下で、かつクロー値が0.910(℃・m2・hr/kcal)以上であることを特徴とする手袋。
【請求項2】 耐切創性が、3.0N以上であることを特徴とする請求項1に記載の手袋。
【請求項3】 手袋の表面が高機能繊維から主として構成されており、裏面がポリフェニレンサルファイド繊維から主として構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の手袋。
【請求項4】 高機能繊維が、紡績糸または伸縮伸長率が10%以上の加工糸であることを特徴とする請求項1〜3に記載の手袋。
【請求項5】 高機能繊維とポリフェニレンサルファイド繊維を、重量比30〜90:70〜10で混紡した糸で編成されている請求項1〜3に記載の手袋。
【請求項6】 高機能繊維が、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール系繊維および超高分子量ポリエチレン繊維からなる群から選ばれる1以上の繊維であることを特徴とする請求項1〜5に記載の手袋。
【請求項7】 高機能繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする請求項1〜5に記載の手袋。
【請求項8】 10ゲージ以上の編み機で編成され、生地目付が350g/m以下であることを特徴とする請求項1〜7に記載の手袋。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、保温性および引張強度や耐切創性に優れた手袋に関する。
【0002】
【従来の技術】近年手袋に対しては、その使用目的に応じて種々の特性が要求されてきている。例えば自動車産業における板金工程や冷蔵庫などの家電製品産業においてバリの出た金属鋼板を扱う作業、または割れやすいガラスを取り扱う産業もしくは刃物を取り扱う食品産業などの切創事故を起こしやすい作業において、当該作業者の手を保護するために使用される作業手袋には、優れた引張強度や耐切創性が要求される。加えて、寒冷地などの低温の環境で使用される作業用手袋には、保温性も要求される。また、スキーまたはスケートなどの寒冷地で行われるスポーツで使用される手袋、モータスポーツなど体感温度が低くなるスポーツで使用される手袋においても、保温性とともに優れた引張強度や耐切創性が要求される。さらに、医療分野で使用される手袋においても、メスや注射針などの医療器具で医療従事者が創傷を受けないように優れた引張強度や耐切創性が要求されるとともに、寒冷時に細かい作業を行う場合には保温性も要求される。
【0003】このように優れた引張強度や耐切創性と保温性とを兼ね備えた手袋に対する要求は大きいにもかかわらず、特に目付の小さい手袋でそのような手袋は未だ市場化されていないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、優れた引張強度や耐切創性と保温性とを兼ね備えた手袋を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく多数の繊維及びその組み合わせを検討したところ、引張弾性率が約300cN/dtex以上の高機能繊維と、ポリフェニレンサルファイド繊維(以下、PPS繊維という。)を組み合わせた手袋は、優れた引張強度や耐切創性と保温性という2つの特性を兼ね備えていることを知見した。本発明者らは、さらに検討を重ね、本発明を完成した。
【0006】すなわち、本発明は、(1) 引張弾性率が300cN/dtex以上の高機能繊維と、ポリフェニレンサルファイド繊維とを含み、接触温冷感が0.065(W/cm)以下で、かつクロー値が0.910(℃・m2・hr/kcal)以上であることを特徴とする手袋、(2) 耐切創性が、3.0N以上であることを特徴とする前記(1)に記載の手袋、(3) 手袋の表面が高機能繊維から主として構成されており、裏面がポリフェニレンサルファイド繊維から主として構成されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の手袋、(4) 高機能繊維が、紡績糸または伸縮伸長率が10%以上の加工糸であることを特徴とする前記(1)〜(3)に記載の手袋、(5) 高機能繊維とポリフェニレンサルファイド繊維を、重量比30〜90:70〜10で混紡した糸で編成されている前記(1)〜(3)に記載の手袋、に関する。
【0007】また、本発明は、(6) 高機能繊維が、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリビニルアルコール系繊維および超高分子量ポリエチレン繊維からなる群から選ばれる1以上の繊維であることを特徴とする前記(1)〜(5)に記載の手袋、(7) 高機能繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする前記(1)〜(5)に記載の手袋、(8) 10ゲージ以上の編み機で編成され、生地目付が350g/m以下であることを特徴とする前記(1)〜(7)に記載の手袋、に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で用いる高機能繊維としては、引張弾性率が約300cN/dtex以上であれば、特に限定されず、公知の繊維を用いてよい。なかでも、さらに、引張強度が約5cN/dtex以上、好ましくは約10cN/dtex以上であることが好ましい。なお、引張り弾性率または引張強度は、JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法8.5.1に従って容易に測定できる。また、本発明で用いる高機能繊維としては、熱分解点が約300℃以上である繊維も好ましい。なお、熱分解点はJIS K 7120:1987 プラスチックスの熱重量測定方法に従って容易に測定できる。
【0009】具体的に、本発明で用いられる高機能繊維としては、例えば、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ヘテロ環高性能繊維、超高分子量ポリエチレン繊維またはポリビニルアルコール系繊維などが挙げられる。なかでも、パラ系芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(以下、PBOという)繊維が、熱分解点が約300℃以上の耐熱性を有することから好ましい。
【0010】上記全芳香族ポリアミド繊維としては、パラ系アラミド繊維が好適な例として挙げられる。全芳香族アラミド繊維は、公知またはそれに準ずる方法で製造できる。また、パラ系アラミド繊維としては、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名ケブラー)およびコポリパラフェニレン−3,4’−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商品名テクノーラ)等の市販品を用いてよい。中でも、本発明においては、高機能繊維として、パラ系アラミド繊維であるポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を用いるのがより好ましい。
【0011】全芳香族ポリエステル繊維としては、例えばパラヒドロキシ安息香酸の自己縮合ポリエステル、テレフタル酸とハイドロキノンからなるポリエステル、またはパラヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸からなるポリエステルからなる繊維などが挙げられる。全芳香族ポリエステル繊維は、公知またはそれに準ずる方法で製造でき、また、例えばベクトラン(商品名、株式会社クラレ製)などの市販品を用いることもできる。
【0012】上記ヘテロ環高性能繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール(PBZT)繊維、PBO繊維またはポリベンズイミダゾール繊維等が挙げられる。ヘテロ環高性能繊維は、公知またはそれに準ずる方法で製造でき、また、例えば市販の繊維(例えば、東洋紡株式会社製、商品名ザイロンなどのPBO繊維)等を用いることもできる。
【0013】超高分子量ポリエチレン繊維は、ホモポリマーであってもよいし、炭素数3〜10程度の低級α−オレフィン類、例えばプロピレン、ブテン、ペンテンまたはヘキセン等との共重合体であってもよい。該エチレンとα−オレフィンとの共重合体としては、後者の割合が炭素数1000個あたり平均0.1〜20個程度、好ましくは平均0.5〜10個程度である共重合体を用いるのが好ましく、かかる共重合体は高強度や高引張弾性率などの優れた機械的性質を示す。超高分子量ポリエチレン繊維の製造方法は、例えば特開昭55−5228、特開昭55−107506などに開示されており、これら自体公知の方法を用いてよい。また、超高分子量ポリエチレン繊維として、ダイニーマ(商品名 東洋紡株式会社製)等の市販品を用いてもよい。
【0014】上記ポリビニルアルコール系繊維は、引張強度の大きい高強度タイプの物が好ましい。下記のようなポリビニルアルコール(以下「PVA」と略す)から構成される。PVAとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル(ポリビニルアセテート)をアルコールに溶かし、アルカリ(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなど)を加えて鹸化するなど、自体公知の方法により製造されたものを用いてもよい。また、本発明で用いるPVAとして、自体公知の方法により変性させた変性PVAを用いてもよく、また、本発明の目的を損なわない限りにおいて、PVAを主成分とする共重合体であっても構わない。また、ポリビニルアルコール系繊維として、クラロンKII(高強度タイプ)(商品名、株式会社クラレ製)等の市販品を用いてもよい。
【0015】本発明で用いるPPS繊維とは、その構成単位の約90%以上が−(C6 4−S)−で構成されるフェニレンサルファイド構造単位を含有する重合体からなる繊維が特に好ましい。前記PPS繊維は、公知の方法に従って容易に製造することができる。また、前記PPS繊維として、例えば、トルコン(商品名 東レ株式会社製)などの市販のPPS繊維を用いてよい。
【0016】本発明にかかる手袋は、上記高機能繊維およびPPS繊維を含むことを特長とする。本発明にかかる手袋を構成する糸条(以下、単に構成糸条という。)は、前記2種の繊維を含めば特に限定されない。例えば、上記高機能繊維およびPPS繊維を複数本用いた引き揃え糸もしくは撚り糸を用いてもよいし、上記2種の繊維を混紡または混繊した糸条を用いてもよい。また、高機能繊維からなる糸条およびPPS繊維からなる糸条を組み合わせて用いてもよい。本発明の構成糸条としては、高機能繊維とポリフェニレンサルファイド繊維を、重量比30〜90:70〜10程度で混紡した糸条が好適な態様として挙げられる。また、高機能繊維からなる糸条およびPPS繊維からなる糸条を組み合わせて用いる場合、高機能繊維からなる糸条は、紡績糸または伸縮伸長率が10%以上の加工糸であることが好ましい。なお、伸縮伸長率は、JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法8.11.A法にしたがって測定することができる。前記加工糸としては特に限定されないが、捲縮加工されている糸が好ましい。このように紡績糸または伸縮伸長率が10%以上の加工糸を用いることにより、本発明にかかる手袋が柔軟性または伸縮性を有するため、装着感の向上、作業性の向上、装着時の疲れの軽減などの利点がある。
【0017】前記加工糸は、公知の方法で製造することができる。前記製造方法としては、例えば、全芳香族ポリアミド繊維などの高機能繊維をその分解開始温度以上、分解温度未満(メタ系アラミド繊維の場合390℃以上460℃未満)に加熱した非接触ヒーターを用い仮撚り捲縮加工した後、弛緩熱処理するという仮撚り法(特開平6−280120)、耐熱高機能繊維糸条に撚りを加えた後、高温高圧水蒸気もしくは高温高圧水処理、または乾熱処理により熱セットを行い、次いで前記撚りの解撚を行う方法(特開2001−248027)などが挙げられる。
【0018】本発明にかかる手袋には、上記高機能繊維およびPPS繊維以外の他の繊維を含んでいてもよい。前記他の繊維は特に限定されず、例えばナイロンなどのポリアミド系繊維などの公知繊維であってよいが、例えば、木綿繊維、羊毛繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエステル繊維などが、保温性向上の点から好ましい。前記他の繊維のうち、例えば、ポリエステル繊維やポリアクリロニトリル繊維などの合成繊維においては、糸の断面形状が丸断面だけでなく、三角やY型断面や中空断面や田型断面など、保温性をより向上した断面形状の繊維も好ましく用いられる。以上のように、本発明にかかる手袋に、上記高機能繊維およびPPS繊維以外の他の繊維を含む場合、前記他の繊維の含有割合は、全繊維重量のうち約50重量%以下、約30重量%以下であることが好ましい。
【0019】また、伸縮性を付与する目的で、他の繊維としてポリウレタン繊維を用いることも好ましい。特に、手首などの締め付け部分には、ポリウレタン繊維を用いることが好ましい。また、例えば、手のひらや手の甲、または指袋の一部または全部に、ポリウレタン繊維を用いた締め付け部分を有していてもよい。前記ポリウレタン系弾性繊維は公知のものであってよい。中でも、切断伸度が約100%以上、好ましくは約150%以上、より好ましくは約200%以上であるポリウレタン系弾性繊維を用いるのが好ましい。なお、切断伸度は、JIS L 1033(1999)に従って、例えば、株式会社島津製作所社製のオートグラフを用いて測定することができる。該ポリウレタン系弾性繊維は、公知またはそれに準ずる方法によって製造できる。例えばポリマージオールと、イソシアネートと、多官能活性水素化合物を反応させて得られる。なお、手首などの締め付け部分には、当技術分野で常用されているゴム糸などを用いてもよい。
【0020】本発明にかかる手袋は、保温性に優れているという利点を有する。保温性に優れていることの指標として、本発明にかかる手袋は、接触温冷感が約0.065(W/cm)以下、より好ましくは約0.062(W/cm)以下であることが挙げられる。ここで、接触温冷感は、加藤テック株式会社製のKES−F7機を用いて求められるq max値である。ここで、q maxは面積9cm、質量9.79gの純銅板(熱容量0.41855J/℃)に熱を貯え、これが試料表面に接触した直後、貯えられた熱量が低温側の試料物体に移動する際の熱量のピーク値を測定したものである。前記測定は、人体の皮膚が物体に接触するときに感じる温冷感に関係していると考えられる熱移動をショミレートしている。q maxが大きいほど冷に、小さいほど温に対応する。具体的には、前記KES−F7機のBTBoxの温度を室温+10℃に設定し、温度が安定した時点で面積9cm、質量9.79gの純銅板の検知部を有するTBox(質量90g)を乗せてTBoxの温度がBTBoxと同じ温度になるまで待ち、温度が同じになった時点で厚さ10mmの発泡ポリスチレンの上に置いた試料の上にTBoxの純銅板の検知部を乗せて計器のq max値を読み取る。測定数nは3以上とし、その平均値を本発明で言う接触温冷感とする。また、単位はW/cmで表わされる。
【0021】また、保温性に優れていることの指標として、本発明にかかる手袋は、クロー値が約0.910(℃・m2・hr/kcal)以上、より好ましくは約0.950(℃・m2・hr/kcal)以上であることが挙げられる。ここで言うクロー値(clo)値とは、Gagge A.P、BurtonA.Lらによって提案された保温性の評価手法であって、1クローは、気温21℃、湿度50%以下、風速5cm/sの室内で椅子に座っている人の皮膚温を平均33℃に保つのに必要な断熱性であると定義されている。実際の評価方法は、40℃の高温側恒温体Th(℃)と20℃の低温側恒温体Tl(℃)の2枚の恒温体の間にサンプルを挟み、定常状態となるまで待ってから、高温側恒温体から低温側恒温体に流れる熱流量B(kcal/m2・hr)を測定し、下式にてクロー値(℃・m2・hr/kcal)を算出する。
クロー値(℃・m2・hr/kcal)=[Th(℃)−Tl(℃)]/[0.18×B(kcal / m2・hr)]=[40(℃)−20(℃)]/[0.18×B(kcal /m2・hr)]
【0022】本発明にかかる手袋は、耐切創性に優れているという利点をも有する。耐切創性に優れていることの指標として、本発明にかかる手袋は、約3.0N以上、好ましくは約5.0N以上であることが挙げられる。ここで、耐切創性は、ASTM F1790−97に従って、規定の刃(American SafetyRazer Co.,品番No.88−0121)を用いて、切創抵抗を測定する。測定値はN(ニュートン)で示し、規定の試料台上に測定試料を置き、規定刃を25.4mm(1インチ)水平に移動させたとき刃がサンプルを切断して貫通するために必要な荷重を示し、数値が大きいほど切れにくいことを示す。
【0023】また、本発明にかかる手袋は、手袋が着火・着炎する可能性がある場合など使用目的に応じて難燃性を有することも好ましい。具体的には、限界酸素指数(LOI)が22程度以上であることが好ましい。限界酸素指数(LOI)とは、JIS K 7201に基づいて測定される酸素指数法による酸素指数であって、具体的には、物質が3分以上継続して燃焼するか、または、着炎後の燃焼長さが50mm以上燃え続けるのに必要な最低の酸素濃度を意味するものである。従って、この限界酸素指数が高いほど難燃性が高いものとなる。
【0024】本発明にかかる手袋は、公知の方法で容易に製造することができる。より具体的には、本発明にかかる手袋の製造方法としては、公知の手袋編機を用いて手袋を編み上げる方法、または織編物を公知の方法に従って手袋の形に切断して縫い上げる方法などが挙げられる。前者の方法としては、例えば市販のコンピューター手袋編機SFGやSTJ(株式会社島精機製作所製)を用いて手袋を作製する方法などが挙げられる。この製造方法によれば1工程で本発明にかかる手袋が製造できるので、製造工程が簡略であり、それゆえに製品が安価に供給できるという利点がある。なかでも、本発明にかかる手袋は、10ゲージ以上の編み機で編成され、生地目付が約350g/m以下であることがより好ましい。このような薄手の手袋のほうが作業性や運動性が低下することを極力避けることができるからである。
【0025】後者の方法において用いる織編物は、自体公知の生地の形成方法に従って作製することができる。生地の形成方法としては、例えば平織、朱子織、綾織、横縞織、からみ織または斜文織などの織物;例えば、平編み、ゴム編み、もしくはパール編みなどの横編み、またはシングルデンビー編みなどの縦編みなどの編物等が挙げられる。織編物の表裏形態としては、両面フラット形態、片面フラット・他面凹凸形態、両面凹凸形態、片面パイル形態、両面パイル形態、メッシュ形態等、特に限定されるものではない。また起毛形態にしてもよい。
【0026】本発明にかかる手袋の好ましい態様としては、手袋の表面が高機能繊維から主として構成されており、手袋の裏面がPPS繊維から主として構成されている手袋が挙げられる。構成糸条をこのように配置することにより、手袋の内側の保温性がより向上されるとともに、表面の耐切創性がより向上する。ここで、裏面とは肌に接する面、つまり内側の面のことであり、表面とは肌に接しない面、つまり外側の面のことである。ここで「主として構成している」とは、表面が例えば高機能繊維のみで、裏面が例えばPPS繊維のみで構成されていることがより好ましいが、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、表面にPPS繊維もしくは他の繊維、また、裏面層に高機能繊維もしくは他の繊維がある程度混在されて構成されていてもよい。具体的には、例えば、表面における高機能繊維の混合率が約60重量%程度以上、逆に裏面におけるPPS繊維の混合率を約60重量%程度以上とすることが好ましい。
【0027】本発明にかかる手袋の好ましい態様として、少なくとも手袋の内側に起毛を有するパイル布帛からなっている手袋が挙げられる。このように、特に手袋の内側に起毛を有することにより、保温性が向上するとともに、肌触りがよくなり装着感も向上する。本発明で用いる上記パイル布帛は、公知の構造を有していてよい。パイル布帛は、地糸とパイル用糸から構成されており、地糸を織ったり編んだりしてなる地組織からパイル用糸が立毛している織編布が好ましい。該パイル布帛は、片面のみに立毛を有していてもよいし、両面に立毛を有していてもよい。ただし、片面のみに立毛を有している場合は、立毛している面を手袋の内側に配置することが特に好ましい。また、地組織は、例えば天竺組織またはニット編とウェルト編を組み合わせた組織等公知の組織であってよい。また、本発明で用いるパイル布帛において形成されているパイルの形状としては、ループパイルであっても、カットパイルであってもよく、ループパイルとカットパイルの混在であってもよい。また、パイル長としては特に限定されないが、約1〜10mm程度が好ましい。パイル布帛は、公知の方法で製造できる。また、手袋を製造するのと同時にパイルを形成することも好ましい態様である。
【0028】本発明の手袋は、手袋の裏面と手袋の表面とを主として構成する糸条の単繊維繊度が異なっていてもよい。特に、手袋の裏面は細い単繊維、具体的には約3.3dtex以下の単繊維からなる糸条から主として構成され、手袋の表面は太い単繊維、具体的には約3.3dtex以上の単繊維からなる糸条から主として構成されている手袋が好ましい。かかる構造の手袋は、外側が太い単繊維からなる糸条で構成されているので切創抵抗が向上し、一方で内側が細い単繊維からなる糸条で構成されているのでチクチク感が低減する。
【0029】本発明に係る手袋は、その用途は問わないが、例えば作業用手袋またはスポーツ手袋などの保温性および耐切創性が要求される用途に特に好適に用いられる。具体的には、自動車産業における板金工程や冷蔵庫などの家庭製品産業においてバリの出た金属鋼板を扱う作業、または割れやすいガラスを取り扱う産業もしくは刃物を取り扱う食品産業などの切創事故を起こしやすい作業において、当該作業者の手や腕を保護するために用いられる作業用手袋として好適に用いられる。また、スキーまたはスケートなどの寒冷地で行われるスポーツで使用される手袋、モータスポーツなど体感温度が低くなるスポーツで使用される手袋、さらに、医療分野で使用される手袋としても好適に用いられる。なお、本発明に係る手袋の形態は特に限定されない。本発明に係る手袋は、5本指の手袋に限られず、ミトン型など目的によりその形態を自由に選択することができる。
【0030】
【実施例】〔実施例1〕引張弾性率490cN/dtex、単糸繊度1.32dtexの東レ・デュポン株式会社製 KEVLAR(登録商標)糸にクリンプ加工して、51mmに切断し、通常の紡績方法で得られた20番手/1本のポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維ステープル糸を2本引き揃えて表糸とした。引張弾性率48cN/dtex、単糸繊度1.0dtexの東レ株式会社製 トルコン(登録商標)にクリンプを与えて、51mmに切断し、通常の紡績方法で得られた20番手/1本のPPS繊維ステープル糸を2本引き揃えて裏糸とした。かかる表糸および裏糸を用いて、島精機株式会社製 SJF(10G)により、度目3.0で手袋に編成した。
【0031】〔実施例2〕実施例1で使用したKEVLAR(登録商標)糸の51mmカットのステープルと、トルコン(登録商標)糸の51mmカットのステープルとを、80:20の重量比で混紡して20番手/1本のステープル糸を得た。得られたステープル糸を2本ずつ引き揃え、かかる引き揃え糸を用いて、実施例1と全く同様の方法で本発明にかかる手袋を得た。
【0032】〔比較例1〕実施例1で使用したKEVLAR(登録商標)の20番手/1本のステープル糸を4本引き揃え、かかる引き揃え糸を用いて実施例1と全く同様の方法で手袋を得た。
【0033】〔比較例2〕実施例1で使用したトルコン(登録商標)の20番手/1本のステープル糸を4本引き揃え、かかる引き揃え糸を用いて実施例1と全く同様の方法で手袋を得た。
【0034】〔試験例〕実施例1,2および比較例1,2で得られた手袋を鋏で切り開き、それぞれを平面布帛状とし、手首部および指部などを含まない部分で、下記表に記載の物性を測定した。なお、目付は、手袋を切り開いて、手首部および指部などを含まない部分の面積および重量を測定して、1m当たりの重量(g)に換算した。また、他の物性は上述のとおりに測定した。
【0035】
【表1】

【0036】
【発明の効果】本発明は、ニーズがありながらもいまだ上市されていなかった、優れた引張強度や耐切創性と保温性とを兼ね備えた手袋を提供する。
【出願人】 【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本町一丁目1番1号
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋室町2丁目2番1号
【出願日】 平成14年4月12日(2002.4.12)
【代理人】 【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
【公開番号】 特開2003−306817(P2003−306817A)
【公開日】 平成15年10月31日(2003.10.31)
【出願番号】 特願2002−111252(P2002−111252)