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【発明の名称】 着 物
【発明者】 【氏名】野村 幸男
【住所又は居所】京都府京都市北区堀川通り北大路下ル東角 株式会社幸和内

【要約】 【課題】熟練を要さず、簡単・迅速にワンタッチで着用でき、しかも個々の身体にフィットして、美しく着こなすことができる着物を提供する。

【解決手段】身頃1a,1b,2a,2bにダーツ、タック、ギャザー、シャーリング等のひだ取り7を設けることによってウエスト付近を人体の体型に倣って絞り、着付に際して生ずるゆとりを予め始末して御端折を不要とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ウエスト付近を人体の体型に倣って絞ってあることを特徴とする、対丈の着物。
【請求項2】 後身頃および前身頃にひだ取りを設けることにより、着用した時に生ずるゆとりを予め始末してあることを特徴とする請求項1の着物。
【請求項3】 ウエスト付近において、後身頃から前身頃および衽にかけてベルトを縫着したことを特徴とする請求項1または2の着物。
【請求項4】 前記ベルトが後身頃では背縫に対して直角であり、脇縫から前身頃および衽にかけて下り勾配を有することを特徴とする請求項3の着物。
【請求項5】 前記ベルトが、着物の生地で芯地を覆って構成されていることを特徴とする請求項3の着物。
【請求項6】 前記ベルトに、ベルトの端部と脇縫付近とを係止するための止め具を設けたことを特徴とする請求項3の着物。
【請求項7】 前記止め具が、複数のアイとフックとの対で構成されることを特徴とする請求項3の着物。
【請求項8】 御端折として機能する布帛を前記ベルトの下縁に取り付けたことを特徴とする請求項3の着物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は着物に関するもので、より詳しくは、振袖や留袖、袷、単衣、浴衣など和服の長着に関する。
【0002】
【従来の技術】和服は直線裁ちのものを着付によって着こなすようになっている。着付には熟練を要するところ、生活習慣の変化に伴い、着物を着る機会が少なくなったことから、着付に習熟する機会も減ってきている。したがって、着物は、洋服のように一人で手軽に着用することは困難であり、美容院等で着付の依頼をするのが一般的である。
【0003】下着を付けた後、帯を巻く前までの、一般的な着付の要領を順を追って記載するならば次のとおりである。
(1)着物の袖を通したら、左右の襟先を合わせ持って胸の前に、また、背縫いが後ろ中心になるようにきものを整える。
(2)上前の襟先から10センチ上を持ち、裾を踵すれすれに引き上げてから、上前端を真横に合わせ、下前の合わせ分を右手に引いておく。
(3)上前を左に開いてゆるまないようにし、右手の下前分をつま先5〜6センチぐらい引き上げて、下半分を包み込むように合わせる。
(4)右脇で褄先が2〜3センチ上がりになるように、上前を重ねる。
(5)後ウエストから腰にかけてのしわが出やすいので余分の後のゆるみを、合わせめの中に入れ込んでおく。
(6)腰骨より2〜3センチ上のいちばんおさまりやすいところに腰紐を当てて締める。このとき、着物のにしわが出ないよう注意する。腰紐は一巻き目をしっかりと締め、二巻き目で結ぶ。結び目が御端折の下から見えないように、ごろごろしないようにきちんと始末をする。
(7)左右の身八口から両手を入れ、背中央から両脇に下ろして山を整え、後御端折を始末する。同じように前の御端折も、身八口から両手を前に入れて整える。
(8)左手で左身八口より下前の襟を持ち、右手で左襟を持って同時に引き、胸合わせを整える。
(9)共襟先で襟幅の1/3を内側に折って襟幅を整え、襟合わせをする。
(10)胸紐(第二腰紐)を締める。結び目は前中央を避けて一結びしてから、ゆるまないように交差させてはさんでおく。
(11)背の始末をする。背にしわが出ないように、やせてスマートな人は、外向きのダーツをとる。背幅の広い人の場合は、ダーツを内向きに折ると、スマートに見える。胸元にゆるみの出る場合は、わきでダーツをとっておく。
(12)御端折の始末をする。左手で御端折の上一枚を押さえ、脇から右手を入れて、下前分を上半身の方へ折り上げて一枚にしておく。御端折の長さは、帯下に右4センチ、左6センチぐらいの船底形のカーブになるように整え、長すぎる分は引き上げて、伊達締めで押さえる。
(13)伊達締めは胸元や御端折の着くずれがないように当てる。そして、伊達締めを後ろに回し、しわにならないように、片方をきちんと折り返して締める。余分な御端折を始末しながら、中央を避けて一結びし、ねじるように交差させてはさんでおく。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上に述べたところから明らかなように、従来の着物には、着付が面倒で、時間がかかる、という問題がある。また、着物の着付には通常、腰紐、着物ベルト、伊達締め、体型補整パット等々の和装小物類を必要とする。
【0005】この発明の目的は、熟練を要することなく、また、従来のように和装小物類を必要とすることなく、一人で簡単に着用できる着物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明では、着物の丈を着用する者の身長に合わせた対丈の着物とするとともに、立体裁断の技術を取り入れることによって、上記課題を解決した。
【0007】すなわち、この発明の着物は、請求項1に記載したように、ウエスト付近を人体の体型に倣って絞ってある、着丈の着物である。着丈の着物すなわち着物の丈を着用する者の身長に合わせた着物とすることにより、御端折が不要となる。ここで、着丈の着物というときは、いわゆるオーダーメイドに限らず、たとえばL、M、Sのように複数の着丈のものを用意しておき着用者に最も適したサイズを選ぶ場合も含まれる。
【0008】ウエスト付近を人体の体型に倣って絞ってあることにより、着付に際して余分な布部分すなわちゆとりの始末がほとんど不要となり、あるいは、少なくとも非常に簡単になる。とりわけ一人で着付をする場合、後身頃の始末は困難で、時間を要する場合が多いものである。
【0009】総じてこの発明の着物は、高度の技術や熟練を要することなく一人で簡単に着付ができ、洋服感覚で着用できるワンタッチ着物とでも称すべきものである。しかも、個々の身体によくフィットし、着物を着慣れない人でも美しく着こなすことができる。
【0010】ウエスト付近を人体の体型に倣って絞るための具体的な方法としては、請求項2に記載のように、後身頃および前身頃にダーツ、タック、ギャザー、シャーリングなど(ここでは「ひだ取り」と総称する。)を設けることが挙げられる。これらのひだ取りの縫い目は、着物の上に巻いた帯によって少なくとも部分的に隠されるため、美観を損なう心配はない。
【0011】請求項3の考案は、請求項1または2に記載した着物において、ウエスト付近において、後身頃から前身頃および衽にかけてベルトを縫着したことを特徴とする。従来の着物の着付に際しては、袖を通した後、上前を左に開いた状態で、右手の下前をたくし上げて下半身を包み込むように合わせ、続いて上前をたくし上げて重ねるところ、この発明の着物の場合には、ベルト部分を持つことによって上記の操作を簡単に行うことができる。なお、ベルトの取付け位置の例として、より具体的には、ベルトの上縁が身八口の下端とほぼ一致する、あるいは、ベルトの上縁が身八口の下端よりも僅かに低くなるような位置が挙げられる。
【0012】請求項4の考案は、請求項3に記載した着物において、前記ベルトが後身頃では背縫に対して直角であり、脇縫から前身頃および衽にかけて下り勾配を有することを特徴とする。ベルトがほぼ水平になるようにして下前および上前を合わせることにより、自動的に、下前を引き上げ、かつ、上前の褄先が右脇で 上がりになるようにして上前を重ねることになる。
【0013】請求項5の考案は、請求項3に記載した着物において、前記ベルトが、着物の生地で芯地を覆って構成されていることを特徴とする。これにより、ベルトがある程度の保形性を有するため、着付が一層容易となる。
【0014】請求項6の発明は、請求項3に記載した着物において、前記ベルトに、ベルトの端部と脇縫付近とを係止するための止め具を設けたことを特徴とする。下前、上前を胴部に合わせた後、従来ならば腰紐で縛って固定していたところ、この発明の着物は対丈で御端折が不要なため、ベルトの止め具を係止することによりワンタッチで、下前と上前をゆるまないように固定することができる。止め具の具体例としては、アイとフックの対で構成される鉤ホック類やベルクロ(登録商標)のようなマジックテープ等々が挙げられる。ボタンや紐を採用することも可能であるが、ワンタッチで止められるという操作性の面で鉤ホックがすぐれている。請求項7の発明のように、フックと複数のアイとが一組となった鉤ホックを使用すれば寸法調節が可能であるため、この面からも鉤ホックが有利である。なお、マジックテープは操作性にはすぐれるものの、着物の生地を傷めるおそれがある。
【0015】請求項8の発明は、請求項3に記載した着物において、御端折として機能する布帛を前記ベルトの下縁に取り付けたことを特徴とする。着物に伝統的に存在する御端折が全くないと違和感を与えるかもしれないので、帯の下から部分的に露出してあたかも従来の御端折があるかのように見せる、つまり、御端折として機能する布帛を設けることができる。また、この布帛は、全周にわたって存在するため、前後身頃に形成したひだ取りを隠す役割をも果たす。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】図示した実施の形態によれば、着物は、前身頃1a,1b、後身頃2a,2b、衽3a,3b、袖4a,4b、襟5およびベルト6によって構成されている。これらのパーツはベルト6を除いて従来の着物を構成するパーツと同じであるが、ここでは、図から明らかなように、ウエスト付近で絞ってある点が従来と異なる。実際には、衽3a,3bと前後身頃1a,1b,2a,2bはベルト6を境にして上部と下部に分断されたパーツを、それぞれ、ベルト6に縫着することによって図示するような長着に仕立ててある。上下に分断されていることからたとえば前身頃の上部11を身頃、下部13をスカートと呼ぶならば、図5に示すように、ベルト6は着物の生地からなる表布62と見返し側布64とでインベルその他の芯地66を覆って構成されており、そのベルト6の上縁に身頃11を縫着し、ベルト6の下縁にスカート13と御端折として機能するぺプラムその他の布帛14とを縫着してある。なお、符合15はスカート裏地を示す。
【0018】下前身頃1aおよび上前身頃1bには、上記の絞りを実現するために、符合7で示すように、ひだ取りを設けてある。図4に示されるように、左右の後身頃2a,2bは背縫8で縫着され、かつ、符合7で示すように、ひだ取りによって上記の絞りを実現している。ひだ取り(ダーツ、タック、ギャザー、シャーリング等)の形態や数は図面に例示したものに限らず、体型に応じた所定の絞りが実現するように適宜設定すべきものである。
【0019】ベルト6には、両脇縫付近に、二組の鉤ホック10a,10bならびに12a,12bを取り付けてある。一方の組の鉤ホックはフック10aと複数のアイ10bとが対をなし、他方の組も鉤ホックはフック12aと複数のアイ12bとが対をなしている。複数のアイのうちのどれにフックをかけるかによって寸法調節ができる。
【0020】ベルト6の取り付け位置を例示するならば、ベルト6の上縁が身八口16a,16bの下端付近に位置する。ベルト6は、図4に示されるように後では水平であるが、図2および図3に示されるように前では脇から下り勾配となっている。言い換えるならば、ベルト6は後身頃2a,2bでは背縫8に対して直角であるが、脇縫9から前身頃1a,1bおよび衽3a,3bにかけて徐々に下降している。ベルト6の水平部分と下降端(襟先部分)との間の寸法は、着物を着用したときの褄先の高さ位置を決定することから、たとえば5〜7センチ程度の範囲内で適当に設定する。
【0021】袖4a,4bは従来と異なるところはない。ここでは振袖の場合を例示してある。なお、袖口18と振り20の裏に襦袢生地を縫い付けておくことも可能であり、そうすることによって着物を着たときあたかも襦袢を着ているように見えるので、襦袢を省略、あるいは、簡易なものにすることができる。
【0022】襟5も従来と異なるところはない。図示は省略したが、襟芯の入った襦袢襟を取り付けておくことによって、襦袢を省略、あるいは、簡易なものとすることができる。また、あらかじめ重ね襟を取り付けておくこともできる。
【0023】この着物は、下前1aの襟先を左脇の身八口16b付近まで胴回りを半周させて一対の鉤ホック10a,10bで止め、続いて、上前1bの襟先を右脇の身八口16a付近まで胴回りを半周させて一対の鉤ホック12a,12bで止める。図1はこのときの状態を示す。その後、図示しない帯を巻いて締めるのであるが、帯もワンタッチ式のものを使用することによって、全体として着付が簡単かつ迅速となる。ワンタッチ式の帯については既に知られているのでここでは詳細は省略する。なお、御端折として機能する布帛14を着物ではなく帯または帯板に取り付けてもよい。
【0024】以上説明したように、この実施の形態による着物は、着用したとき、身頃に余分な弛みを生ずることなく、身体によくフィットする。しかも、ベルトが水平になるようにして下前、上前を合わせることにより、褄先が若干上がった状態となるため、非常に外観よく、また、裾さばきよく、着こなすことができる。なお、身頃には、帯で隠れる部分にひだ取りを設けるだけで、他に余分な縫い目は存在しないので、この点においても非常に美しい着付けが可能となる。鉤ホックで止めた後は、手で押さえていなくてもよいため、腕の上げ下ろしや身体の移動が自由にでき、しかも、それによって着くずれを生ずることがない。後は帯を締めて着付を完了する。
【出願人】 【識別番号】595110601
【氏名又は名称】株式会社幸和
【住所又は居所】京都府京都市北区堀川通北大路一筋下ル東角66番地の2
【出願日】 平成13年12月13日(2001.12.13)
【代理人】 【識別番号】100064584
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 省吾 (外3名)
【公開番号】 特開2003−183909(P2003−183909A)
【公開日】 平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願番号】 特願2001−380288(P2001−380288)