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【発明の名称】 耐切創性に優れた防水手袋
【発明者】 【氏名】中村 英夫
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本町1丁目5番6号 東レ・デュポン株式会社内

【氏名】波多野 武
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本町1丁目5番6号 東レ・デュポン株式会社内

【氏名】山本 勉
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本町1丁目5番6号 東レ・デュポン株式会社内

【要約】 【課題】耐切創性に優れ、風合いがよく、ピンホールが実質的にない防水手袋を汎用的に提供すること。

【解決手段】高強力有機繊維の短繊維束を含み、その表面における3mm以上の毛羽数が0本/10m、1mm以上3mm未満の毛羽数が100本/10m以下である糸から構成されている手袋であって、その表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする耐切創性に優れ、ピンホールが実質的にない防水手袋。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高強力有機繊維の短繊維束を含み、その表面における3mm以上の毛羽数が0本/10m、1mm以上3mm未満の毛羽数が100本/10m以下である糸から構成されている手袋であって、その表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする耐切創性に優れ、ピンホールが実質的にない防水手袋。
【請求項2】 手袋を構成する糸が、高強力有機繊維の短繊維束のみからなることを特徴とする請求項1に記載の防水手袋。
【請求項3】 手袋を構成する糸が、高強力有機繊維を含む短繊維束からなる芯成分と、フィラメント糸からなる鞘成分とからなる芯鞘型複合糸であることを特徴とする請求項1に記載の防水手袋。
【請求項4】 手袋を構成する糸が、高強力有機繊維を含む短繊維束からなる芯成分と、毛焼き可能な短繊維束からなる鞘成分とからなる芯鞘型複合糸であり、かつ、鞘成分が毛焼きされていることを特徴とする請求項1に記載の防水手袋。
【請求項5】 毛焼き可能な短繊維束が、コットン、ポリエチレンテレフタレート繊維および高強力ポリビニルアルコール繊維からなる群から選ばれる少なくとも1以上の繊維からなることを特徴とする請求項4に記載の手袋。
【請求項6】 芯成分/鞘成分重量比が、100/0を超えて、0/100未満であることを特徴とする請求項3〜5に記載の手袋。
【請求項7】 高強力有機繊維が、芳香族ポリアミド繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であることを特徴とする請求項1〜6に記載の手袋。
【請求項8】 芳香族ポリアミド繊維が、メタ系アラミド繊維またはパラ系アラミド繊維であることを特徴とする請求項7に記載の手袋。
【請求項9】 芳香族ポリアミド繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする請求項7に記載の手袋。
【請求項10】 樹脂が、アクリロニトリル−ブタジエンゴムであることを特徴とする請求項1に記載の手袋。
【請求項11】 手袋が、編み手袋または縫製手袋であることを特徴とする請求項1に記載の手袋。
【請求項12】 芯成分が高強力有機繊維を含む短繊維束からなり、鞘成分がフィラメント糸または毛焼き可能な短繊維束からなる芯鞘型複合糸から構成されている手袋であって、さらにその表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする耐切創性に優れ、ピンホールが実質的にない防水手袋。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐切創性に優れ、風合いがよく、ピンホールが実質的にない防水手袋に関する。
【0002】
【従来の技術】短繊維束(以下、スパン糸ともいう)を用いて作製された編み手袋または縫製手袋等の手袋に防水性を付与するため、天然または合成ラテックスを手袋表面に被覆するディップ加工が一般的に行われている。しかし、スパン糸表面には通常、毛羽があり、その毛羽立ちが原因で樹脂被膜にピンホールと呼ばれる微小な孔が発生することがある。使用される繊維が通常の合成繊維や天然繊維の場合、前記ピンホールはほとんど問題にならないが、剛性の高い高強力有機繊維を用いた場合、ピンホールの発生が顕著になる。そこで、このピンホールを回避するために、表面が平滑である長繊維束(以下、フィラメント糸という)を用いて手袋を作製し、樹脂被膜を形成することが考えられる。しかしながら、高強力有機繊維のフィラメント糸は太繊度の製品が主流であり、これらのフィラメント糸で構成された手袋は、風合いがわるく、長時間の装着には適していない。そこで、細繊度の糸が求められるのであるが、高強力有機繊維の細繊度フィラメント糸は、その工業的にはほとんど製造されておらず、製品が極めて高価となるため、それを用いて構成される手袋を汎用的なコストで提供することができない。そのため、やはり防水性手袋においては細繊度の糸が生産性よく安価に得られるスパン糸を使用することが好ましい。しかるに、高強力有機繊維のスパン糸を使用する際には、前述したピンホールの問題があるため、耐切創性と防水機能を兼ね備え、着用感にも優れた汎用手袋を実現することは極めて困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐切創性に優れ、風合いがよく、ピンホールが実質的にない防水手袋を汎用的に提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく、種々の糸について試行錯誤の検討を行った結果、芯成分に高強力有機繊維を含む短繊維束を使用し、鞘成分がフィラメント糸または毛焼きが可能な短繊維束からなる芯鞘型複合糸で作製される手袋であり、その表面が樹脂で被覆されている手袋の創製に成功すると共に、当該手袋が上記問題を一挙に解決することを見出した。さらに本発明者らは検討を重ね、手袋を構成する糸として、3mm以上の毛羽数が0本/10m、1mm以上3mm未満の毛羽数が約100本/10m以下である高強力有機繊維を含むスパン糸を用いれば、風合いがよく、その結果、長時間の装着にも適していて、さらに樹脂被膜にピンホールが実質的になく、耐切創性に優れた手袋を得ることができることも知見した。さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち、本発明は、(1)高強力有機繊維の短繊維束を含み、その表面における3mm以上の毛羽数が0本/10m、1mm以上3mm未満の毛羽数が100本/10m以下である糸から構成されている手袋であって、その表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする耐切創性に優れ、ピンホールが実質的にない防水手袋、(2)手袋を構成する糸が、高強力有機繊維の短繊維束のみからなることを特徴とする前記(1)に記載の防水手袋、(3)手袋を構成する糸が、その最外層部表面が毛焼きされている高強力有機繊維の短繊維束であることを特徴とする前記(2)に記載の防水手袋、(4)手袋を構成する糸が、紡績時にその表面の毛羽を軽減する処理がなされている高強力有機繊維の短繊維束であることを特徴とする前記(2)に記載の防水手袋、(5)手袋を構成する糸が、樹脂でサイジングされている高強力有機繊維の短繊維束であることを特徴とする前記(2)に記載の防水手袋、に関する。
【0006】また、本発明は、(6)手袋を構成する糸が、高強力有機繊維を含む短繊維束からなる芯成分と、フィラメント糸からなる鞘成分とからなる芯鞘型複合糸であることを特徴とする前記(1)に記載の防水手袋、(7)手袋を構成する糸が、高強力有機繊維を含む短繊維束からなる芯成分と、毛焼き可能な短繊維束からなる鞘成分とからなる芯鞘型複合糸であり、かつ、鞘成分が毛焼きされていることを特徴とする前記(1)に記載の防水手袋、(8)毛焼き可能な短繊維束が、コットン、ポリエチレンテレフタレート繊維および高強力ポリビニルアルコール繊維からなる群から選ばれる少なくとも1以上の繊維からなることを特徴とする前記(7)に記載の手袋、(9)芯成分/鞘成分重量比が、100/0を超えて、0/100未満であることを特徴とする前記(6)〜(8)に記載の手袋、に関する。
【0007】また、本発明は、(10)高強力有機繊維が、芳香族ポリアミド繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であることを特徴とする前記(1)〜(9)に記載の手袋、(11)芳香族ポリアミド繊維が、メタ系アラミド繊維またはパラ系アラミド繊維であることを特徴とする前記(10)に記載の手袋、(12)芳香族ポリアミド繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする前記(10)に記載の手袋、(13)樹脂が、アクリロニトリル−ブタジエンゴムであることを特徴とする前記(1)に記載の手袋、(14)手袋が、編み手袋または縫製手袋であることを特徴とする前記(1)に記載の手袋、に関する。
【0008】さらに、本発明は、(15)芯成分が高強力有機繊維を含む短繊維束であり、鞘成分がフィラメント糸または毛焼き可能な短繊維束からなる芯鞘型複合糸から構成されている手袋であって、さらにその表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする耐切創性に優れ、ピンホールが実質的にない防水手袋、(16)高強力有機繊維が、芳香族ポリアミド繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維であることを特徴とする(15)に記載の手袋、(17)芳香族ポリアミド繊維が、メタ系アラミド繊維またはパラ系アラミド繊維であることを特徴とする(16)に記載の手袋、(18)芳香族ポリアミド繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維であることを特徴とする(16)に記載の手袋、(19)毛焼き可能な短繊維束が、コットン、ポリエチレンテレフタレート繊維または高強力ポリビニルアルコール繊維からなることを特徴とする(15)に記載の手袋、に関する。
【0009】また、本発明は、(20)樹脂が、アクリロニトリル−ブタジエンゴムであることを特徴とする(15)に記載の手袋、(21)芯成分/鞘成分重量比が、100/0を超えて、0/100未満であることを特徴とする(15)に記載の手袋、(22)手袋が、編み手袋または縫製手袋であることを特徴とする(15)に記載の手袋、に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明に係る手袋は、高強力有機繊維の短繊維束を含み、その表面における3mm以上の毛羽数が0本/10m、1mm以上3mm未満の毛羽数が約100本/10m以下である糸から構成されている手袋であって、さらに手袋表面を樹脂で被覆されていることを特徴とする。本発明にかかる手袋は、上記の構成要件を満たしていれば、どのような手袋であってもかまわない。また、本明細書中、短繊維束とは、短繊維を収束させて束状としたものの意味であって、紡績糸はもちろん、紡績糸を製造する途中段階で得られるスライバーや粗糸をも含んでいる。
【0011】本発明で用いられる高強力有機繊維としては、パラ系アラミド繊維またはメタ系アラミド繊維等の芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維(以下PBO繊維と略す)、ポリベンズイミダゾール繊維等のヘテロ環高性能繊維および高強力ポリビニルアルコール系繊維などが、好適な例として挙げられる。中でも、芳香族ポリアミド繊維またはPBO繊維が好ましく用いられる。
【0012】上記芳香族ポリアミド繊維は、別名アラミド繊維とも呼ばれており、パラ系アラミド繊維またはメタ系アラミド繊維に大別できる。これらアラミド繊維は、公知またはそれに準ずる方法で製造できる。また、パラ系アラミド繊維としては、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(東レ・デュポン株式会社製、商品名ケブラー)およびコポリパラフェニレン−3,4’−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、商品名テクノーラ)等の市販品を用いてもよく、メタ系アラミド繊維としては、例えばポリメタフェニレンテレフタルアミド繊維(デュポン株式会社製、商品名ノーメックス)等の市販品を用いてもよい。中でも、本発明においては、高強力有機繊維として、パラ系アラミド繊維であるポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維を用いるのがより好ましい。
【0013】上記ヘテロ環高性能繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール(PBZT)繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維またはポリベンズイミダゾール繊維等が挙げられる。ヘテロ環高性能繊維は、公知またはそれに準ずる方法で製造でき、また、例えば市販の繊維(例えば、東洋紡株式会社製、商品名ザイロンなどのPBO繊維)等を用いることもできる。
【0014】上記全芳香族ポリエステル繊維としては、例えばパラヒドロキシ安息香酸の自己縮合ポリエステル、テレフタル酸とハイドロキノンからなるポリエステル、またはパラヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸からなるポリエステルからなる繊維などが挙げられる。全芳香族ポリエステル繊維は、公知またはそれに準ずる方法で製造でき、また、例えばベクトラン(商品名、株式会社クラレ製)などの市販品を用いることもできる。
【0015】上記高強力ポリビニルアルコール系繊維は、下記のようなポリビニルアルコール(以下「PVA」と略す)から構成される。PVAとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル(ポリビニルアセテート)をアルコールに溶かし、アルカリ(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなど)を加えて鹸化するなど、自体公知の方法により製造されたものを用いてもよい。また、本発明で用いるPVAとして、自体公知の方法により変性させた変性PVAを用いてもよく、また、本発明の目的を損なわない限りにおいて、PVAを主成分とする共重合体であっても構わない。
【0016】本発明にかかる手袋を構成する糸は、上記した高強力有機繊維を含む短繊維束であれば、残りの成分として、どのような成分を含んでいても良い。しかし、耐切創性を確保できる程度に、高強力有機繊維を含むことが好ましく、そのような範囲としては、手袋を構成する糸の全重量に対し、約20〜90重量%程度であることが望ましい。また、残りの成分としては、高強力有機繊維と混紡可能な繊維である公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の合成繊維が挙げられる。
【0017】本発明にかかる手袋を構成する糸(以下、単に構成糸という)は、上述のような高強力有機繊維の短繊維束を含み、その表面における3mm以上の毛羽数が0本/10m、1mm以上3mm未満の毛羽数が約100本/10m以下であることを特長とする。より好ましくは、表面に毛羽が実質的にない糸を用いる。ここで、糸表面の毛羽は、JIS L 1095,7.22.2 B法に従い、毛羽カウンター「フライカウンター モデルDT−104」(東レエンジニアリンク株式会社製)を用いて、糸速度25m/分で、1,3,5,7mmの毛羽本数を測定し、糸10mあたりのそれぞれの本数として得られる。かかる特長を有する構成糸の具体的態様としては、(a)芯鞘型複合糸または(b)高強力有機繊維のみからなる短繊維束が挙げられる。以下に、それぞれの態様について詳述する。
【0018】まず、構成糸の一態様である芯鞘型複合糸について説明する。芯鞘型複合糸の芯成分は、高強力有機繊維を含む短繊維束であることが好ましく、該高強力有機繊維としては、前記した繊維が好ましく使用される。
【0019】芯鞘型複合糸の鞘成分は、フィラメント糸でも短繊維束でもかまわず、公知の方法に従って作ることが可能である。鞘成分になるフィラメント糸としては、どのような繊維を用いてもかまわないが、本発明の目的である耐切創性に積極的に寄与しうるような繊維であることが好ましい。このような繊維としては、例えば高強力PVA繊維等が挙げられる。
【0020】鞘成分になる短繊維束としては、その毛羽を焼却除去する毛焼きおよび/または毛羽を寝かせた状態で固定する熱セットが可能である繊維であれば、どのようなものでもかまわない。例えば、コットン、麻または羊毛等の天然繊維、ナイロン、高強力PVAまたはポリエステル等の合成繊維、またはこれらの組み合わせからなる繊維等が挙げられる。中でも、コットン、ポリエチレンテレフタレート繊維または高強力PVA繊維が、鞘成分として好適に用いられる。
【0021】本発明に係る芯鞘型複合糸の芯成分または鞘成分を構成する短繊維束は、糸の原料となる短繊維を通常の短繊維紡績工程である打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡の各工程を通すことにより作成されるスライバーや粗糸、さらには紡績糸であってよい。また、繊維長を長くして(約76〜160mm程度)、一般のソ毛紡績を通して得られるスライバーや粗糸、さらには紡績糸を用いてもよい。紡績糸の場合、撚り方向はS、Zいずれでも良いが、撚り係数は一般の紡績糸よりやや低めであることが耐切創性、耐摩耗性の点で望ましい。また、芯成分、鞘成分ともに単繊維繊度は、特に限定されない。
【0022】本発明で用いられる鞘成分を形成するフィラメント糸は、公知またはそれに準ずる方法で製造できる。例えば、ゲル紡糸、液晶紡糸、溶融紡糸、湿式紡糸または乾式紡糸等の方法が挙げられる。
【0023】本発明で用いられる芯成分または鞘成分を形成する短繊維束の製造方法は、公知またはそれに準ずる方法で製造できる。短繊維束は、紡績工程を経ることによって作製され、例えば綿糸紡績法、ソ毛紡績法またはトウ紡績法等が挙げられる。
【0024】該短繊維束を製造する好ましい方法としては、例えば原料となるフィラメント糸をカットして短繊維(ステープル)にする。ここでステープル化は、公知の手段により行われてよく、例えば平均繊維長±約13mm程度のバリアブルカットによっても行われてもよく、長繊維を把持した一対以上のローラ間の速度差によってカットする牽切方式によりステープル化する方法によってもよい。原料となる短繊維を打綿して繊維塊をほぐした後、短繊維を櫛でけずり、繊維長をそろえて平行にならべる。ローラ間でドラフトをかけて細くし、均等な太さのスライバー(繊維束)を作る練条を行う。次いで、ドラフトをかけて細い粗糸をつくる粗紡を行い、ドラフトをかけて所望の太さの糸を作る精紡を行うことで、短繊維束を作製することができる。
【0025】該短繊維束を製造するさらに好ましい方法としては、以下に示すような方法が挙げられる。例えばパラ系アラミド繊維であるポリパラフェニレンテレフタルアミドと濃硫酸から紡糸用ドープをつくり、該ドープを紡糸口金の細孔を通して一旦空気中に紡出し、直ちに水中に導き凝固させ、フィラメントを形成する。得られたパラ系アラミド繊維フィラメントをクリンパーにかけて、捲縮を与え、紡績に適した長さ、例えば通常スクエアカットにより、例えば約38〜152mm程度にカットして、パラ系アラミド繊維ステープルを得る。得られたステープルを梳綿機に通し、スライバーを形成し、該スライバーを平行にならべるために練条機に通す。練条機に通されたスライバーを粗紡機にかけて、粗糸を得た後、最後に精紡機にかけて、短繊維束を得る。
【0026】本発明に係る芯鞘型複合糸を得る方法としては、(a)芯成分と短繊維束である鞘成分からなる二層構造糸を紡績する方法、(b)芯成分にフィラメント糸である鞘成分を巻きつけてカバリングする方法、(c)芯成分の周りを、フィラメント糸である鞘成分で製紐する方法、または(d)芯成分をスパン糸である鞘成分で製紐する方法が考えられる。
【0027】本発明に係る芯鞘型複合糸の製造方法は、公知の方法に従ってよく、特に限定されるものではないが、好ましくは次のような方法によって製造するとよい。
【0028】前記(a)の方法である芯成分と鞘成分を紡績によって複合する方法は、公知の手段に従ってよい。例えば、芯および鞘成分がスライバーや粗糸の場合には、例えば一対のテーパーローラーからなるフロントトップローラーおよびフロントボトムローラーを有するリング精紡機により、ガイドを介してフロントローラーの送り出し量の高い側へ通したエプロンドラフト後の鞘成分と、送り出し量の低い側へ通したエプロンドラフト後の芯成分を同時に精紡し、芯成分を中心に鞘成分を実撚付与時に順次巻回させることにより、芯成分をこより状に包み込む状態に糸形成させるようにすればよい。
【0029】前記(b)の方法である芯成分にフィラメント糸である鞘成分を巻きつけてカバリングする方法は、公知の手段に従ってよい。例えば、芯成分の周りにこより状にフィラメント糸を巻きつけていく方法等が挙げられる。かかる場合、鞘成分のフィラメント糸は、1本でも、2本以上の複数本使用してもかまわない。
【0030】前記(c)および(d)の方法である芯成分を鞘成分で製紐する方法は、公知の方法に従ってよく、特に限定されないが、通常は組紐機(製紐機)を用いて行われる。例えば4本の鞘糸を準備し、右側または左側の糸を交互に真中に配置させて芯糸の周りに組み上げていく。製紐に用いる糸条の数は、4本に限らず、8本、12本または16本の場合など目的に応じて変えることができる。
【0031】本発明に係る芯鞘型複合糸を作製するより好ましい方法を、図面を用いて説明する。図1は、本発明の芯鞘型複合糸を製造する精紡機において、ドラフト、加撚する概要を示すものである。
【0032】精紡機にセットされた芯成分と鞘成分とは、それぞれトランペット1,2を経てバックローラー3に供給され、エプロンドラフト4を経た後、一対のフロントテーパーローラー5a,5bに把持される。この一対のフロントテーパーローラー5a,5bでは、それぞれ送り出し量の高い側(径の大きい側)へはトランペット1を介して鞘成分を供給し、送出し量の低い側(径の小さい側)へはトランペット2を介して芯成分を供給する。次いでフロントテーパーローラー5a,5bに把持されながら出てきた芯成分、鞘成分を間隔約3〜15mm程度の範囲にとって合体させ、芯成分に鞘成分を被覆させながら、芯鞘型複合糸6を形成し、これにリング、トラベラで実撚を付与しながら糸管7に巻き取る。
【0033】本発明に係る芯鞘型複合糸を作製するさらに好ましい方法を、図面を用いて説明する。図2は芯成分が紡績糸である場合の本発明にかかる芯鞘型複合糸を製造する精紡機の概略図である。
【0034】上記と同様に、一対のフロントテーパーローラー5a,5bを有するリング精紡機において、そのフロントテーパーローラー5a,5bの送り出し量の低い側(径の小さい側)に、フロントテーパートップローラー5aとドラフトエプロン4との間からガイド8を介して短繊維束の芯成分を送り込んで把持させるようにしている。一方、鞘成分は、粗糸Bをトランペット1からバックローラ3に送り込み、通常のブレーキドラフト、エプロンドラフトを行わせて、フリースに形成した後、フロントテーパーローラー5a,5bの送り出し量の高い側(径の大きい側)に把持させ、芯成分、鞘成分の間隔を約3〜13mm程度の範囲にとって合体させ、芯成分(紡績糸)に鞘成分のフリースを実撚付与時に順次巻回させながら、芯成分をこより状に包み込む状態にして芯鞘型複合糸6を形成させるようにする。合体時のヨリ方向はS、Zいずれでも良いが、芯成分(紡績糸)と同方向のヨリの場合には、芯鞘型複合糸はバルキー性が少なくなる反面、耐切創性、耐摩耗性が向上するようになる。
【0035】本発明に係る芯鞘型複合糸の撚り方向としては、S、Zのいずれでもよい。また、該芯鞘型複合糸の単糸繊度(綿紡番手)は、特に限定されないが、例えば約110〜3340dtex(26.6〜11.8番)程度、好ましくは約220〜450dtex(53〜1.75番)程度の繊度である細い糸を用いるほうが、手袋の柔軟性を向上することができる。
【0036】本発明において、芯鞘型複合糸に与える撚り数は特に限定しないが、撚り数(t/25.4mm)=K×(綿番手)1/2 の式で定められる撚り係数Kが、約2.8〜4.5程度の範囲である撚り数にするのがよい。
【0037】本発明に係る芯鞘型複合糸は、芯成分/鞘成分重量比が、100/0を超えて、0/100未満であることが好ましく、より好ましくは、20/80〜90/10、さらに好ましくは50/50〜90/10である。本発明の目的である耐切創性が優れ、風合いのよい手袋を得るためには、上記範囲が好ましい。
【0038】以上述べてきた本発明で用いる芯鞘型複合糸に対して、公知の後処理が行われてよい。特に、鞘成分が毛焼きおよび/または熱セット可能な短繊維束からなる場合は、その表面における3mm以上の毛羽数が0本/10m、1mm以上3mm未満の毛羽数が約100本/10m以下となるように、好ましくは表面の毛羽が実質的になくなるように、毛焼きや熱セット処理を行うことが好ましい。前記毛焼き処理としては、例えば熱板、ガス炎などによって毛羽を焼き取り除く手段(例えば特開昭49−25290)、耐火煉瓦のスリット内でガスを燃焼させ発生した高温ガスで毛羽を焼く手段(例えば特公昭47−21635または特公昭51−38839)、毛焼き後に裏面を水冷ロールで冷却する手段(特開昭48−45687)等を便宜に採用することができる。また、毛焼き処理を行う機械としては、例えばスイスSSM社製のヤーンシンジングマシン(SSMGSX Yarn singeing machine)等が挙げられ、これはガスバーナー方式での糸の直接毛焼きを行う。この毛焼き処理は、糸の段階で行わず、手袋を作製した後に該手袋に対し行ってもよい。例えば、編成した手袋を手型に装着して毛焼釜を通過させる等してもよい。さらに縫製手袋の場合は、本発明の糸で織られた布地を毛焼き処理することも可能である。また、熱セットによる毛羽寝かせ固定は、加熱されたサンドが流動するセットゾーンに糸を連続走行させる方式の連続式糸セット機を用いるなどの公知の方法で行われる。
【0039】次に、構成糸の他の態様である高強力有機繊維のみからなる短繊維束(スパン糸)について述べる。前記スパン糸は、1種類の高強力有機繊維からなっていてもよいし、2種以上の高強力有機繊維からなっていてもよい。かかるスパン糸は、例えばコンパクトスピンと呼ばれる紡績技術によって作製することができる。コンパクトスピン紡績技術としては、例えば特開平10−025629等に開示されており、コンパクトスピン紡績機としては、例えばドイツ・シュエッセン(Suessen)社の登録商標であるEliTeシステムをドラフトゾーンに適用して改造された従来から公知である各種の精紡機、あるいはスイス・リーター(Rieter)社の登録商標であるCOM4システムを備えた同社製K44型リング精紡機などが挙げられる。
【0040】上記スパン糸は、高強力有機繊維を用いて常法によりスパン糸を作製し、かかるスパン糸の表面を平滑にすることによっても得られる。前記スパン糸の表面を平滑にする方法としては、(x)糸を毛焼き処理に付す方法、または(y)糸を樹脂でサイジングする方法等が挙げられる。これらの処理は、通常の方法によって作製されたスパン糸はもちろん、上述した芯鞘型複合糸およびコンパクトスピン紡績技術によって作製されたスパン糸等に施してもよい。
【0041】糸を毛焼き処理に付す方法(x)としては、上述したような公知の方法に従ってよい。また、毛焼き処理は、手袋を作製した後に該手袋に対して行ってもよいことは、上述の通りである。
【0042】糸に樹脂でサイジングする方法(y)は、手袋を構成する糸表面に存在する毛羽を寝かせる程度に糊剤を塗布すればよい。すなわち、樹脂によるサイジングは、高強力有機繊維の短繊維束全体を被覆または含浸している必要はなく、前記短繊維束の表面の毛羽を寝かせて接着できる必要最低限であることが望ましい。サイジング方法は、公知の方法に従ってよく、サイジングするために使用される樹脂は、手袋表面に形成される樹脂被膜と相性の良い樹脂、好ましくは非水溶性の樹脂を用いることが好ましい。より具体的には、手袋表面に形成される樹脂被膜が、アクリロニトリル−ブタジエンゴムである場合、サイジング樹脂として、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、例えば日本ゼオン製のニポールSX1503を用いることが好ましい。
【0043】以上述べてきた構成糸を用いて手袋を作製する。本発明の手袋は、編み手袋でも縫製手袋でもよい。また、5本指の手袋に限らず、ミトン型など目的により自由に選択することができる。
【0044】本発明の手袋は、手袋の内側(皮膚に接する面)と手袋の外側とに配置される糸条の単繊維繊度が異なっていてもよい。特に、手袋の内側は細い単繊維、具体的には約3.3dtex以下の単繊維からなる糸条が配置され、手袋の外側は太い単繊維、具体的には約3.3dtex以上の単繊維からなる糸条が配置されている手袋が好ましい。かかる構造の手袋は、外側が太い単繊維からなる糸条で構成されているので切創抵抗が向上し、一方で内側が細い単繊維からなる糸条で構成されているのでチクチク感が低減する。
【0045】本発明の手袋は、公知の方法に従って製造することができる。本発明にかかる編み手袋の好ましい製造方法の具体的態様を、図面を用いて以下に示す。本発明において用いる手袋11は、図示は省略したが編針を摺動可能に収納したニードルベッドを前後に少なくとも一対備えた横編機を用いて以下に示すようにして編成される。まず、図3に示すように、前後のニードルベッドの所定の編針に編糸をジグザグに供給して人指し指用指袋13、中指用指袋14、薬指用指袋15、小指用指袋16がそれぞれの先端部分から編み出され、人指し指用指袋13、中指用指袋14、薬指用指袋15、小指用指袋16の四本胴部分18、親指用指袋12および親指用指袋12を加えた五本胴部分19を順次編成した後、ゴム編みの挿入口20が編成され、この編地が横編機から払い落とされる。しかして横編機から払い落とされた編地の挿入口20の端部はオーバーロックミシンにより解れ止め21が施されると手袋が形成される。
【0046】本発明の手袋は、上記のようにして作製された手袋の表面全体に樹脂を被覆することを特長としている。樹脂で被覆することにより、手袋に防水性が付与される。さらに、滑りにくくなるという利点がある。また、例えば、油や溶剤などの液状物、または埃や砂等の粉粒物が手袋の編目から入り込むことが実質的になくなるという利点も生じてくる。その結果、装着者が前記液状物や粉粒物が入り込むことによる不快感を感じることがなくなり、手袋や手を汚したりすることもなくなる。さらに、加工樹脂を適宜選択すれば、耐水性、耐油性、耐溶剤性または耐紫外線性など種々の性質を本発明に係る手袋に与えることができる。
【0047】本発明にかかる手袋において、外側の樹脂層の厚さは特に限定されない。通常は、約300μm程度以下、より好ましくは約200μm程度以下であるが、被膜強度が許す限り薄くすることが望ましい。
【0048】本発明で用いられる樹脂被膜用の樹脂は、特に限定されず、公知の樹脂、好ましくは可撓性樹脂、より好ましくは熱可塑性樹脂を用いてよい。具体的には、例えば、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、好ましくは軟質塩化ビニル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、シリコーン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(以下NBRと略す)、アクリルゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、合成ゴム、天然ゴム、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。中でも、耐油性、低温特性、突刺抵抗等に優れたNBRが好ましく用いられる。また、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素系の樹脂を樹脂被膜に使用すると、樹脂中の可塑剤(例えば、フタル酸ジ−2−エチルエキシル等)などが溶出する可能性あるので、食品分野での使用には塩素系以外の樹脂、例えばNBRや天然ゴム等の樹脂が好ましい。
【0049】例えば、樹脂で被覆する手袋の表地を構成する糸の鞘成分として短繊維束が使用される場合には、上述したように樹脂で被覆を行う前に糸の表面の毛羽を焼く、いわゆる毛焼き処理が、この段階で行われてもよい。毛焼き後は、好ましくは水洗、乾燥する。また、構成糸が高強力有機繊維のみからなるスパン糸であって、表面の毛羽を少なくするために毛焼き処理を必要とする場合も同様である。
【0050】本発明において、手袋表面に樹脂で被膜を形成する方法は、公知方法に従って容易に行うことができる。本発明に係る手袋は、例えば、手袋製造用の陶器製または金属製の手型に、手袋を被せ、この手袋を被せた手型を樹脂の溶液または分散液(以下、「樹脂液」と総称する。)に指先から手首部分まで浸漬し、その後引き上げ、所望によりさらにこの操作を繰り返し、さらに所望により脱溶剤用の水中に浸漬して、乾燥および脱型することによって製造することができる。なお、樹脂液における樹脂濃度または樹脂を浸漬する回数などにより、外側の樹脂の厚さを任意に調整することができる。
【0051】ここで、樹脂液において用いる溶媒または分散媒は、樹脂の種類によって適宜選択することができる。具体的には、例えば、樹脂としてポリウレタン樹脂を用いる場合、ジメチルホルムアミドまたはメチルエチルケトンなどが挙げられる。また、樹脂液における樹脂の濃度は、当技術分野の公知技術に基づき適宜選択することができる。また、上記樹脂液に着色剤、酸化防止剤、可塑剤、老化防止剤その他従来公知の各種添加剤を所望により含有させることは何ら差支えない。
【0052】手袋に上記樹脂液を含浸させる方法としては、樹脂液を満たした浴に手袋を被せた手型を浸漬させる方法を記載したが、本発明においてはこれに限定されるものでなく、公知の方法を用いてよい。例えば、スプレー等用いて、手袋を被せた手型に上記樹脂液を吹き付けるという方法が他の例として挙げられる。
【0053】上記乾燥工程は特に限定されず、乾燥時の温度も、用いている繊維や樹脂液の種類などにより異なるので一概には言えない。例えば、熱風や加熱炉などを用いた比較的高温下での乾燥でもよいし、約30〜50℃程度の保温室を用いる乾燥であってもよいし、室温での乾燥であっても良い。
【0054】上記方法において、手袋の内部に含浸する樹脂の量を少なくするために、手袋を樹脂液に含浸させる工程の前に、公知の前処理を行ってもよい。上記前処理としては、例えば、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等で撥油処理を行うこと等が例示される。
【0055】本発明に係る手袋をNBRラテックスで被覆する際には、上記浸漬加工法が好適に用いられるが、かかる方法の具体的態様としては、以下に示すような態様が挙げられる。編み手袋をかぶせた手型を、所望により例えば30重量%硝酸カルシウムのメタノール溶液等の凝固液に浸漬してもよい。手型を凝固液から引き上げた後、または編み手袋を手型にかぶせた直後に、該手型をNBRラテックスコンパウンド分散液に浸漬し、手型表面にNBRラテックスの凝固膜を形成する。次いで、手型をNBRラテックスコンパウンド分散液から引き上げて加熱を行い、凝固膜をNBR成形被膜とする。最後に、NBR成形被膜が形成された手袋を手型から脱離する。
【0056】本発明にかかる手袋は、耐切創性に優れ、風合いがよく、防水性があるので、さまざまな分野で用いることが可能である。例えば、食品分野、医療分野、工業分野等、幅広く利用されることが可能である。
【0057】
【実施例】以下、実施例をあげて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限るものではない。なお、実施例における耐切創性の値は、ISO 13997法に記載の試験方法により測定された値である。測定において、刃はAmerican Safety Razor Co., 品番No.88-0121を使用する。また、本実施例中のNBRラテックスコンパウンドの原料および組成等は、以下に示すとおりである。
(a)NBRラテックスコンパウンドの原料;
NBRラテックス:Nippol LX551(日本ゼオン株式会社製)
nBA−AN−AA共重合ラテックス:n−ブチルアクリレートを94モル%、アクリロニトリルを5モル%、アクリル酸を1モル%含む、数平均分子量約25万の共重合体ラテックス(b)NBRラテックスコンパウンド分散液の組成;NBRラテックスを80重量部、nBA−AN−AA共重合ラテックスを20重量部、酸化亜鉛を2重量部、硫黄を1重量部、加硫促進剤としてテトラエチルアンモニウムクロライドを0.5重量部、老化防止剤としてN−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンを1重量部および顔料を適量混合した分散液【0058】〔実施例1〕芯成分として、東レ・デュポン社製ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(商品名 KEVLAR29)の単糸繊度1.67dtex、捲縮数8山/25mm、捲縮度9%、繊維長51mmのステープルからなる短繊維束を、鞘成分として、特公平6−33523に記載された方法で製造された高強力PVA繊維の2.8dtex、51mmステープルからなる短繊維束を用い、一対のフロントテーパーローラーを有する2インチリング精紡機に仕掛け、鞘成分をトランペットに通してフロントローラーの送り出し量の高い側へバックローラーから供給し、フロントローラーの送り出し量の低い供給側へ、芯成分をガイドに通して供給した。精紡トータルドラフトを16.2〜31.1倍に設定し、得られる芯鞘型複合糸の番手を292dtex(綿番手20s/1)、撚り係数はK=3.5(19.2t/25.4mm)、撚り方はZ撚りとした。両糸条の間隔を5mmになるように、トランペットとガイドの間隔およびコレクターで調整した後、ドラフトし、合体させ通常の方法で管糸に巻き取り、鞘成分が芯鞘型複合糸に占める割合が30重量%で、芯成分が芯鞘型複合糸に占める割合が70重量%であった。
【0059】得られた芯鞘型複合糸を、2本より合わせて、双糸292dtex×2(20/2)とした。この双糸をシェーラー・シュヴァイター・メットラー社製の「SSM−GSX ヤーンシンジングマシン」を用い、糸速度1000m/分でガスバーナー部分を通過させて毛羽焼きをした。毛焼き後の双糸表面の毛羽を、JIS L 1095,7.22.2 B法に従い、毛羽カウンター“フライカウンター モデルDT−104”(東レエンジニアリング株式会社製)を用いて、糸速度25m/分で毛羽本数を測定したところ、3mm以上の毛羽は皆無であり、1mm以上3mm未満の毛羽も検知されない結果であった。ついで、毛焼き後の双糸を3本引きそろえて、SFG−10ゲージタイプの手袋編機(株式会社島精機製作所製)に供給して、10ゲージの手袋を編みたてた。該手袋を陶器製手型に装着して、30重量%の硝酸カルシウムを含むメタノール溶液に浸漬した後、NBRラテックスコンパウンド分散液に30秒間浸漬した。その後、該樹脂被膜手袋を水洗して、余分なNBRラテックスコンパウンド分散液を落とし、130℃で1時間加熱乾燥し、手型から外して、本発明の手袋を得た。
【0060】得られた手袋を、装着してみると、肌ざわりがよく、細かい作業も容易にでき、長時間装着しても疲労を感じなかった。さらに、耐切創性を確認するため、先に示したISO 13997に記載の方法で試験を行ったところ、値は8.50Nを示し、耐切創性が高いことがわかった。さらに、ピンホールの有無を確認するために、10%エタノール水溶液に0.5重量%のメチレンブルーを溶かした液を手袋内部に満たし棒にぶら下げ、ぶら下げられた手袋を水で湿らせたろ紙にくるみ、30時間放置したが、ろ紙には青色斑点は全く生じていなかった。このことから、得られた手袋には、ピンホールがないことが確認された。
【0061】〔実施例2〕実施例1と同様の紡績方法で、芯成分に実施例1で用いたポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、鞘成分に木綿を用い、芯成分が60重量%、鞘成分が40重量%の芯鞘型複合紡績糸双糸(292dtex×2)と単糸(292dtex)を得た。これら得られた芯鞘型複合紡績糸の双糸(292dtex×2)1本と単糸(292dtex)1本を引き揃えて、SFG−13ゲージタイプの手袋編機(株式会社島精機製作所製)に供給して、13ゲージの手袋を編みたてた。得られた手袋を陶器製手型に装着して炉内温度800℃の毛焼き釜内を素早く通過させて毛焼きを行った。手袋を作製する前に、手袋を構成する芯鞘型複合紡績糸の表面の毛羽を、実施例1と同様にして測定したところ、7mm以上の毛羽0本/10m、5mm以上7mm未満の毛羽 82本/10m、3mm以上5mm未満の毛羽 645本/10m、1mm以上3mm未満の毛羽 3115本/10mであった。しかし、上記のように毛焼きを行った手袋の表面をルーペで観察したところ、目立った毛羽は見られなかった。
【0062】次いで実施例1と全く同じ方法で樹脂被膜手袋を作製した。得られた手袋は、実施例1の手袋よりも薄手で、これを装着してみると柔らかくさらに細かい作業が容易にできることがわかった。また、耐切創性とピンホールの有無を実施例1と同じ方法で確認した。切創抵抗は、4.77Nで薄手の手袋としては耐切創性が高い。またピンホールの有無を確認する試験でピンホールがないことが確認された。
【0063】〔実施例3〕東レ・デュポン社製ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(商品名 KEVLAR29)の単糸繊度1.67dtex、捲縮数8山/25mm、捲縮度9%、繊維長51mmのステープルを用い、通常の紡績工程を通してポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維100%からなる295dtex(綿番手 20s/1)のスパン糸を得た。得られた糸を常法により2本撚り合わせて双糸とした。この双糸をシェーラー・シュヴァイター・メットラー社製の「SSM−GSXヤーンシンジングマシン」を用い、糸速度600m/分でガスバーナー部分を通過させて毛羽焼きした。得られた糸は平滑な外観を有し、表面の毛羽をJISL 1095,7.22.2 B法に従い、毛羽カウンター「フライカウンター モデルDT−104」(東レエンジニアリンク株式会社製)を用いて、糸速度25m/分で毛羽本数を測定したところ、3mm以上の毛羽は皆無、1mm以上3mm未満の毛羽は30本/10m以下という結果であった。
【0064】この毛焼き処理した双糸を3本引きそろえて、SFG−10ゲージタイプの手袋編機(株式会社島精機製作所製)に供給して、10ゲージの手袋を編みたてた。該手袋を実施例1と全く同様にして樹脂被覆し、本発明の手袋を得た。
【0065】得られた手袋を、装着してみると、肌ざわりがよく、細かい作業も容易にでき、長時間装着しても疲労を感じなかった。また、耐切創性とピンホールの有無を実施例1と同じ方法で確認した。その結果、耐切創性の値は8.83Nを示し、耐切創性が高いことがわかった。また、得られた手袋にはピンホールがないことが確認された。
【0066】
【発明の効果】本発明の手袋は、高強力有機繊維を含んでいるので、耐切創性に優れており、スパン糸で構成されているため、風合いがよい。さらに手袋表面が、ピンホールが実質的にない樹脂被膜で被覆されているので、防水性に優れている。
【出願人】 【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本町1丁目5番6号
【出願日】 平成14年1月18日(2002.1.18)
【代理人】 【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
【公開番号】 特開2003−138410(P2003−138410A)
【公開日】 平成15年5月14日(2003.5.14)
【出願番号】 特願2002−10744(P2002−10744)