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【発明の名称】 ストレッチ性自己接着芯地及び接着方法
【発明者】 【氏名】中村 良司
【住所又は居所】大阪市北区堂島浜二丁目2番8号 東洋紡績株式会社本社内

【要約】 【課題】接着樹脂のドットプリント処理が必要なく、接着剤の表地への滲み出しがまったくない、自己接着型の芯地であり、風合いの硬化もなく、かつ表地の伸長回復性を阻害しない芯地を提供すること。

【解決手段】熱可塑性ポリウレタン弾性糸を15重量%以上含み、該弾性糸の被覆率が20%未満である複合糸を少なくとも20重量%含むことストレッチ性自己接着芯地を該融点より少なくとも10℃低い温度で圧着することにより製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】熱可塑性ポリウレタン弾性糸を15重量%以上含み、該弾性糸の被覆率が20%未満である複合糸を少なくとも20重量%含むことを特徴とするストレッチ性自己接着芯地。
【請求項2】複合糸の複合形態が撚糸またはカバリング糸またはエアー交絡糸であることを特徴とする請求項1記載のストレッチ性自己接着芯地。
【請求項3】熱可塑性ポリウレタン弾性糸の融点が200℃未満であることを特徴とする請求項1記載のストレッチ性自己接着芯地。
【請求項4】融点が200℃未満である熱可塑性ポリウレタン弾性糸を含む芯地を該融点より少なくとも10℃低い温度で圧着することを特徴とするストレッチ性自己接着芯地の接着方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は他の接着剤を用いる事なく、接着可能で接着後も伸長性、回復性に優れ、風合いが硬化しないストレッチ性自己接着芯地に関する。
【0002】
【従来の技術】被覆副素材である芯地として不織布、織り編み物が用いられており、表地の多様化に対応して様々な改善が加えられてきた。ストレッチ性も表地特性として重要な要件であり、種々の織り編み物が開発されてきた。芯地は表地とのなじみが良いことが必要要件であり、表地のストレッチ化に伴い、芯地にもストレッチ性能が要求されてきた。これに対応すべく特開昭60−45636号公報や特開平09−324339号公報に見られる様な複合紡績弾性糸を用いる提案や、特開昭62−97937号公報に見られる仮撚加工糸を用いる方法、または特開平07−42042号公報のようなコンジュゲートの利用、特開平03−294503号公報や特開平11−200124号公報のように繊維そのものに弾性のあるポリブチレンテレフタレ−トやポリトリメチレンテレフタレ−トを用いる提案もある。しかしいずれの方法も表地との接着にはポリエステル系またはポリアミド系またはポリエチレン系の接着剤が必要であり、接着強度と伸縮性能の両立には難しい条件設定が必要であり、時には風合い硬化をする問題もあった。特に表地の薄地化にともなう接着樹脂の表地への滲みだしの問題も大きな課題となっている。
【0003】芯地を構成する糸そのものに接着性能を持つ繊維を用いる考え方より特開昭61−194221号公報には低融点ポリオレフィンを弾性糸に巻き付けた複合糸の提案がある。しかしこの方法では接着性能はもつものの、伸縮性能が阻害されることが明らかである。
【0004】また特開平09−21033号公報には低融点のポリエステルエラストマーを融着成分として用い、糸内及び糸間を融着して芯地の曲げ剛性を高める方法が提案されているが、糸そのものを融着せしめるため、ソフト風合いの維持や伸長性能の確保には適していない。同思想として特開平04−316629号公報もあるが結果は同じであり、エラストマーの伸縮性能は活かされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の現状に鑑み、接着性能に優れ、かつ接着後も充分に伸縮性能に優れ、風合いが硬化しない芯地を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するものであり、つぎの構成を有するものである。
1.熱可塑性ポリウレタン弾性糸を15重量%以上含み、該弾性糸の被覆率が20%未満である複合糸を少なくとも20重量%含むことを特徴とするストレッチ性自己接着芯地。
2.複合糸の複合形態が撚糸またはカバリング糸またはエアー交絡糸であることを特徴とする第1記載のストレッチ性自己接着芯地。
3.熱可塑性ポリウレタン弾性糸の融点が200℃未満であることを特徴とする第1記載のストレッチ性自己接着芯地。
4.融点が200℃未満である熱可塑性ポリウレタン弾性糸を含む芯地を該融点より少なくとも10℃低い温度で圧着することを特徴とするストレッチ性自己接着芯地の接着方法。
【0007】以下に本発明を詳細に説明する。本発明で最も重要なことは、構成糸の表面に熱可塑性ポリウレタン弾性糸が露出していることと、接着後にポリウレタンと他の複合繊維が自由に変形に追従して移動可能なことにある。このため第一の要件として被覆率が20%未満である必要がある。このことは芯地と表地の接着がポリウレタン弾性糸と表地が複合糸の他成分を介することが少なく接着することを意味し、接着後の伸長性能を維持する上で重要となる。20%以上のなると、接着面に複合糸の他繊維が拘束され伸縮性能が低下する。被覆率は低い方が発明の目的から好ましいが芯地形成時の糸の取扱性から 2%以上がより好ましい。ここで被覆率とは接着時点のポリウレタン弾性糸が複合糸構成他繊維で覆われているいる比率を示し、本発明では撚糸、カバーリング糸の場合は(1)式で、交絡糸の場合は(2)式で表示する。
【0008】
12D×10-3×T×100/{1000×DF×(P+F)/2} (式1)
ここでDは複合糸のウレタン以外の構成繊維の総繊度を、Tは撚糸時の撚り数(T/m) またはカバーリング数(T/m) 但し、ダブルカバーリング糸の場合は上下撚り数の和を、DFは撚糸またはカバーリング時のポリウレタン弾性糸のドラフト率を、Pはセット後の縦伸張率を、Fは同幅だし率を示す。但し織物で経糸使いのみの場合はF=P、緯糸使いのみの場合はP=Fとする。
【0009】
(K×l /1000)×100 (式2)
ここでKは芯地構成複合糸の1mあたりの交絡数(個/m)を、l は平均交絡長(mm) を示す。
【0010】複合糸中の熱可塑性ポリウレタン弾性糸は所望の接着強度より適宜設定できるが15重量%未満では充分な接着性能が得られない。逆に熱可塑性ポリウレタン弾性糸の量が多い場合、接着の面では問題がないが、布帛製造過程の取扱性から50%以下にすることが好ましい。芯地中の複合糸の構成割合は接着性と芯地として要求される伸縮性の観点で設定されるが20重量%未満になると伸縮性能、特に伸長回復性が低下し、目的を達し得ない。多くなることは表地との接着後の伸長応力の要求上限を越えない限り問題はないが、芯地としての価格対応から60%が上限と考えられる。
【0011】本発明に用いる複合糸は交撚糸、カバリング糸、エアー交絡糸で作られた熱可塑性ポリウレタン弾性糸が適度に露出しており他成分との自由度があること好ましく、特に芯鞘複合紡績糸や、サイドバイサイドや芯鞘複合繊維は好ましくない。
【0012】本発明の芯地の他の要点として熱可塑性ポリウレタン糸を線形を保った状態で接着することにあり、接着条件は溶断する以前で軟化点以降で圧着する必要があり、融点より20℃から10℃低い温度で接着するこが肝要である。この時の温度が表地の風合いを損ねると問題になり、このため、熱可塑性ポリウレタンの融点は200℃以下とする必要がある。また該融点の下限は120℃以上であることがこのましい。これ以上になるとアイロン掛けや高温洗濯等の取扱上の問題が生ずるためである。
【0013】また前述のように、接着手段として圧着方法を用いるため、加圧時に複合糸に圧力が集中することが、接着と芯地全体の偏平化を防止する上で複合糸の糸径を他の糸径よりも太くすることが好ましく、糸径比が1.2以上とすることが好ましい。
【0014】本発明の芯地は織物であっても編み物であっても良いし、芯地を構成する複合糸以外の糸は伸縮性のある糸であれば特に限定するものではないが、取扱易さやコストの面からポリエステル系またはナイロン系の仮撚加工糸が好ましい。また複合糸の熱可塑性ウレタン糸との複合相手も同様に理由から、ポリエステル系またはナイロン系の仮撚加工糸が好ましい。
【0015】以下、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、特性値の測定方法は次の通りである。
(接着強力)JIS L 1086に準じて実施する。すなわち2.5cm×15cmの試料をたて、よこ又コース方向、ウエール方向に各5枚採取し、長辺方向に5cm剥離し、つかみ間隔を5cmとして引張試験機に取り付け、10cm/分の引張速度で5cm間剥離し、応力カーブより応力の大きい値を3個、小さい値を3個採取し、6個の平均値として2.5cm当たりの強力とした。
【0016】(伸長及び回復特性の測定)KES(Kawabata's Evaluation System) の引張り特性( 繊維機械学会編 風合い評価の標準化と解析 第2版 第4章 2−1記載)に準じて測定した。すなわち、長さ5cm、幅20cmの試料をひずみ速度 4.00 ×10-3/secの定速で500gf/cmの最大荷重まで引張り、変形回復過程に移り、応力−ひずみ曲線よし最大荷重時のひずみを伸長率とし、回復過程の0応力到達時のひずみを残留ひずみとした。この測定では織編物の縦方向の測定をして代表値とした。
【0017】(融点)示唆走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−2型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、現れる2つのピークの内、高温側のピークを融点とした。
【0018】(接着テスト用の表地)イソフタル酸を10モル%共重合したポリエステルに平均分子量が20,000のポリエチレングリコールを9重量%ブレンドしたポリマーを紡糸、延伸して55デシテックス24フィラメントの易溶出糸を得た。この糸と常法により得たポリエステルフィラメント糸55デシテックス24フィラメントの三角断面形状糸を引き揃え2500T/mのS撚りとZ撚りの強撚糸を作り、各々85℃の湿熱で40分処理して、撚りセットを実施した。この糸を経糸及び緯糸にS,Z2本交互に配し、梨地組織で経糸密度135本/in,緯糸密度82本に織り上げた。通常の精練、プレセット後、60g/l のカセイソーダー溶液で95℃で処理し、55%減量加工をした。染色した後、ファイナルセットして経糸密度192本/in緯糸密度93本の布帛を得た。この布を電子顕微鏡で500倍に拡大して観察した結果、通常のポリエステルフィラメント糸が3次元にコイル構造をなし、易溶出糸は完全に溶出されていた。この布の伸長及び回復特性の測定結果を第一表に示した。この布を実施例及び比較例の表地として用いた。
【0019】
【実施例】(実施例−1)融点が171℃で22デシテックスの熱可塑性ポリウレタンに通常のポリエステル仮撚り1段加工糸33デシテックス18フィラメントを800T/mでZ方向に巻き付け、シングルカバリング糸を得た。この時熱可塑性ポリウレタンは2.5倍に伸長して供給した。このカバリング糸と通常のポリエステル仮撚り1段加工糸33デシテックス18フィラメントを1本交互に経糸に配し、緯糸には通常の仮撚り1段加工糸33デシテックス18フィラメントを用い、平織組織の織物とした。この時、カバリング糸は2.5倍に伸長して供給した。この布を通常工程で精練、プレセットを実施した。プレセットは幅は有り幅、縦方向には精練上がり布を2倍引っ張る条件で140℃で30秒処理し、この時の縦方向のセット率は80%であった。結果的にはカバリング糸はカバリング時の糸長の64%、すなわち、縦伸長率0.64でセットした。得られた芯地の経糸密度は85本/in、緯糸密度は65本/inであった。この芯地の伸長及び回復特性の測定結果を第一表に示した。この芯地と接着テスト用の表地を重ね、フラット型プレス機(アサヒNAP502)で160℃、圧力3.5Kgで30秒処理して接着した。この試料の接着強力の測定結果と伸長及び回復特性の測定結果も第一表に示した。接着強力も伸長及び回復特性も優れた性能をしめした。風合いの硬化もまったくみられなかった。
【0020】(実施例−2)融点が171℃で22デシテックスの熱可塑性ポリウレタンを2.5倍に伸長した糸と通常のポリエステル仮撚り1段加工糸33デシテックス18フィラメントをエアー圧2.5Kg/cm2でエアー交絡させ、平均交絡長が2.8mmで交絡数が32個/mのエアーカバリング糸を得た。この糸と通常のポリエステル仮撚り1段加工糸55デシテックス24フィラメントを1コース毎に配し、32ゲージのシンカー台丸機で天竺組織の丸編み地として精練、セットして編み物芯地を得た。この編み地の密度は50コース/in、28ウエール/inであった。以下、接着およびその試料の評価は実施例−1と同様に行い第一表に示した。接着強力も伸長及び回復特性も優れた性能をしめし、ソフトな風合いを保っていた。
【0021】(比較例−1)芯地としてポリエステル仮撚加工糸33デシテックス18フィラメントが100%で経糸密度が85本/in、緯糸密度が65本/inであり、片面のポリアミド系の接着樹脂を140ポイント/cm2ドットプリントした芯地を用いた以外は実施例−1と全く同じ条件で評価した。その結果を第一表に示した。明らかに表地の伸長回復性能が悪くなった。また僅かではあるが接着樹脂の表地への滲み出しが見られ、部分的に光沢斑を示した。風合いも若干固く感じられた。
【0022】(比較例−2)エアー交絡条件をアエー圧4.5Kg/cm2とし、交絡数を52個/m、平均交絡長を4.8mmとした以外は実施例−2と全く同法で評価した。その結果を第一表に示した。接着性能が劣り、布の伸長時に接着剥離が認められ、伸長及び回復特性は評価に値しないと判断した。
【0023】(比較例−3)熱可塑性ポリウレタンの繊度を11デシテックスとした以外は実施例−1と全く同じ条件で芯地を作成し、評価した。その結果を第一表に示した。接着性能が劣り、実用に耐えない芯地でっしかなかった。
【0024】(比較例−4)熱可塑性ポリウレタン糸を含むカバリング糸の経糸を1/4とした以外は実施例−1と全く同じ条件で芯地を作成し、評価した。その結果を第一表に示した。接着性能が劣り、実用に耐えない芯地でっしかなかった。
【0025】(比較例−5)接着時のプレス温度を180℃とする以外は実施例−1と全く同じ条件で芯地を作成し、評価した。その結果を第一表に示した。充分な接着性能は得られたものの弾性回復性能に著しい低下が見られた。この試料を走査型電子顕微鏡で観察したところ、熱可塑性ポリウレタンが溶断し、線形を保っていなかった。
【0026】
【表1】

【0027】
【発明の効果】本発明の芯地は接着樹脂のドットプリント処理が必要なく、接着剤の表地への滲み出しがまったくない、自己接着型の芯地であり、風合いの硬化もなく、かつ表地の伸長回復性を阻害しない、場合によっては性能を高める芯地である。
【出願人】 【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区堂島浜2丁目2番8号
【出願日】 平成13年10月18日(2001.10.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−129317(P2003−129317A)
【公開日】 平成15年5月8日(2003.5.8)
【出願番号】 特願2001−320739(P2001−320739)