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【発明の名称】 被 服
【発明者】 【氏名】三宅 国夫
【住所又は居所】岡山県岡山市昭和町3番12号 カイタック株式会社内

【要約】 【課題】肩上部から縫合線および縫い代を排すると共に、縫いツレやシワなどのシームパッカリングや活動時のツッパリ感を解消して着用感を向上させることができ、さらには製作工程の煩雑化を防止することのできる被服を提供する。

【解決手段】前身頃の左前肩部SLおよび右前肩部SRを後身頃Bと連続して一体に形成する。また、前記左右の前肩部SL,SRの下端縁6−7および6’−7’と、それと縫合される前身頃片Fの上端縁13−14および13’−14’を所定の曲線となるように形成し、よって前記前身頃片Fと後身頃Bを接続する縫合線13,6−14,7および13’,6’−14’,7’を、前記左右の前肩部SL,SRの下端において前記所定の曲線に形成する、より具体的には、TシャツT1の立位着用時において着用者の鎖骨上部に相当する部位に位置し、かつ、その裾11,3−11’,3’方向に凸部を有する曲線に形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前身頃の左前肩部および右前肩部が後身頃と連続して一体に形成され、かつ前記左右の前肩部の下端縁がそれぞれ所定の曲線に形成されると共に、前記下端縁と縫合される前記左右の前肩部下部の前身頃の上端縁が、前記所定の曲線に対応する曲線に形成され、よって前記前身頃と後身頃を接続する縫合線が、前記左右の前肩部下端において前記所定の曲線に形成されるように構成したことを特徴とする被服。
【請求項2】 前記縫合線が、前記被服の立位着用時において着用者の鎖骨上部に相当する位置に形成されると共に、前記所定の曲線が、前記被服の完成時においてその裾方向に凸部を有する曲線であるように構成したことを特徴とする請求項1項記載の被服。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は被服に関し、より具体的には、肩上部から縫い目および縫い代を排した被服に関する。
【0002】尚、この明細書において、「肩上部」、「前肩部」および「鎖骨部」などの語句は、人体の当該部位を示すと共に、着用時において着用者の人体部位に干渉(接触)する被服の部位を示すものとして使用する。
【0003】また、「前身頃」とは、特に符合を付さない限り、被服の着用時において人体前面に位置する生地全てを意味し、「後身頃」とは、同様に人体後面(背面)に位置する生地全てを意味する。
【0004】
【従来の技術】被服は、上衣、下衣および全身衣に大別することができる。このうち上衣および全身衣は、素材やデザインシルエットに関わらず、その自重(重量)の殆どが着用時において肩上部に加わるため、上衣や全身衣の着用感は、デザインや素材などを含めた肩上部の形態により大きく左右される。
【0005】このため、肌に直接触れる被服、例えばTシャツやシャツなどにあっては、肌触りの良い素材を用いることによって着用感を向上させている。尚、これら上衣および全身衣の多くは、図12に示す後身頃PBの上端縁P5(B)−P8(B)およびP5’(B)−P8’(B)、ならびに、図13に示す前身頃PFの上端縁P5(F)−P8(F)およびP5’(F)−P8’(F)が、着用時において肩上部の中心線、あるいはその付近となるように形成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、従来の被服の多くは、後身頃の上端縁ならびに前身頃の上端縁が、着用時において肩上部の中心線、あるいはその付近となるように形成されると共に、後身頃と前身頃の接続は、これら上端縁を縫合することによって行なわれることから、縫合線(縫い目)や縫い代が肩上部、即ち被服の自重が最も集中する部位に形成される。このため、かかる縫合線や縫い代が肌に干渉してゴワツキや不快感を与え、着用感を低下させるといった不具合があった。
【0007】特に、肩上部に形成される縫合線や縫い代には、伸びの防止や縫い代始末のためのテープ状の付属部品などを使用する丁寧な縫製始末が施されることが多く、このテープ状の付属部品がかえって着用感を大きく低下させるといった問題があった。
【0008】このような不具合を解決する被服として、例えばラグランスリーブと言われる肩上部付近の形状がある。このラグランスリーブは、袖グリが通常のアームホールに位置せず、衿グリからすぐに袖山となるように形成されるため、肩上部から縫合線および縫い代を排することができ、よって肩上部における被服の肌への干渉をフラットな面干渉とすることができる。このため、ラグランスリーブは着用感の低下を防止することができると共に、腕回りの動作性などの点においても優れた特性を有している。
【0009】しかしながら、上記したラグランスリーブの肩上部は、構造上の理由から、一般に生地地の目が縦方向で構成されるため、素材に関わらず伸縮性や柔軟性に乏しいといった不具合があった。また、縫合線および縫い代は肩上部に存在しないものの、前身頃と後身頃に各1本の縫合線および縫い代が形成されるため、製作工程が煩雑化するといった問題があると共に、活動時のツッパリ感などの点においても改善の余地を残していた。
【0010】尚、肩上部から縫合線および縫い代を排した被服としては、上記ラグランスリーブの他に、メリヤス(ニットやジャージなどの編み物であり、一枚の布状を呈する被服)肌着のように、前身頃と後身頃が連続し、全く縫合線が存在しないものもある。
【0011】しかしながら、このメリヤス肌着は人体にフィットし難く、着用感において満足できるものではなかった。
【0012】また、ワイシャツに代表されるように、肩上部に切替えを施すことにより、肩部付近のデザインを多様化させると共に、肩部付近の強度を向上させて安定した着用感を得ることが行なわれているが、切替えを施した被服の多くは切替え部位の縫合が直線で施されているため、縫いツレやシワ、縮みなどのシームパッカリングの影響を受け易いと共に、活動時にツッパリ感を与えるといった不具合があった。
【0013】従って、この発明の目的は、上記した課題を解決し、肩上部から縫合線および縫い代を排すると共に、シームパッカリングや活動時のツッパリ感を解消して着用感を向上させることができ、さらには製作工程の煩雑化を防止することのできる被服を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、請求項1項にあっては、前身頃の左前肩部および右前肩部が後身頃と連続して一体に形成され、かつ前記左右の前肩部の下端縁がそれぞれ所定の曲線に形成されると共に、前記下端縁と縫合される前記左右の前肩部下部の前身頃の上端縁が、前記所定の曲線に対応する曲線に形成され、よって前記前身頃と後身頃を接続する縫合線が、前記左右の前肩部下端において前記所定の曲線に形成されるように構成した。
【0015】前身頃の左前肩部および右前肩部が後身頃と連続して一体に形成されると共に、前記前身頃と後身頃を接続する縫合線が、前記左右の前肩部下端において所定の曲線に形成されるように構成したので、肩上部から縫合線および縫い代を排することができ、着用感を向上させることができる。また、前身頃と後身頃を接続する縫合線は、前記左右の前肩部下端において形成される1本のみとなり、製作工程を煩雑化させることもない。
【0016】さらに、かかる縫合線を所定の曲線とすることで、直線とした場合に比して長さが増加すると共に、その動きに余裕が生じ、シームパッカリングや活動時のツッパリ感を解消して着用感をより一層向上させることができる。
【0017】また、請求項2項にあっては、前記縫合線が、前記被服の立位着用時において着用者の鎖骨上部に相当する位置に形成されると共に、前記所定の曲線が、前記被服の完成時においてその裾方向に凸部を有する曲線であるように構成した。
【0018】これにより、前身頃と後身頃を接続する縫合線が人体の形状、特に鎖骨付近の形状にフィットしたものとなり、着用感をより一層向上させることができる。また、違和感のない、優れたデザインとすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照してこの発明の一つの実施の形態に係る被服を説明する。
【0020】尚、この実施の形態において示す寸法は、身長170cmの日本人男性の平均的体型をモデルにした場合の数値である。
【0021】図1はこの実施の形態に係る被服、より具体的にはTシャツ(符合T1で示す)の正面図であり、図2はその背面図である。両図に示すように、TシャツT1は、前身頃片Fと、前身頃の左前肩部SLおよび右前肩部SRが連続して一体に形成される後身頃Bと、首リブNRと、左右の袖部Sの各生地片からなる。
【0022】図3は、上記した生地片のうち、縫合前の後身頃Bを裏側から示す平面図である。同図に示すように、後身頃Bは、後中心線(一点鎖線で示す)1−2を軸として左右対称な右後身頃BRと左後身頃BLからなる。右後身頃BRは、前記した後中心線1−2と、それに連続する各辺、具体的には、後にTシャツT1の裾となる直線辺たる2−3と、後に脇線となる直線辺たる3−4と、後に袖グリとなる曲線辺たる4−5および5−6と、曲線辺たる6−7(後述)と、後に首グリとなる曲線辺たる7−8および曲線辺たる8−1とによって画成される領域であり、左後身頃BLは、同様に前記した後中心線1−2と、それに連続する直線辺たる2−3’、直線辺たる3’−4’、曲線辺たる4’−5’、曲線辺たる5’−6’、曲線辺たる6’−7’、曲線辺たる7’−8’および曲線辺たる8’−1によって画成される領域である。
【0023】左右の後身頃BLおよびBRの上部には、図1に示すTシャツT1の完成時において前身頃の左前肩部および右前肩部となる前記した右前肩部SR(領域5−6−7−8)および左前肩部SL(領域5’−6’−7’−8’)が連続して一体に形成される。また、図3における右前肩部SRおよび左前肩部SLの上端縁(図1にあっては下端縁)である曲線辺たる6−7および6’−7’は、所定の曲線(後述)となるように形成される。
【0024】尚、同図において、破線5−8および5’−8’は、TシャツT1の完成時における肩上部の中心線、即ち、TシャツT1の着用時において最も自重が集中する線分であって、従来技術に係る一般的な被服の前身頃と後身頃の縫合線となる直線を示す。また、両矢印BMは着用時における後身頃身丈を示す。
【0025】次いで図4を参照し、前記した前身頃片Fについて説明する。同図は、縫合前の前身頃片Fを表側から示す平面図である。
【0026】図示の如く、前身頃片Fは、前中心線(一点鎖線で示す)9−10を軸として左右対称な右前身頃FRと左前身頃FLからなる。右前身頃FRは、前記した前中心線9−10と、それに連続する各辺、具体的には、後に裾となる直線辺たる10−11と、後に脇線となる直線辺たる11−12と、後に袖グリとなる曲線辺たる12−13と、曲線辺たる13−14(後述)と、後に首グリとなる曲線辺たる14−9とによって画成される領域であり、左前身頃FLは、同様に前記した前中心線9−10と、それに連続する直線辺たる10−11’、直線辺たる11’−12’、曲線辺たる12’−13’、曲線辺たる13’−14’、および曲線辺たる14’−9によって画成される領域である。
【0027】ここで、この実施の形態に係るTシャツT1にあっては、前記したように前身頃の左右の前肩部SLおよびSRが後身頃Bに連続して一体に形成されることから、前身頃片Fは、図3に示した左右の前肩部SLおよびSRに相当する部位が切り取られた形状となる。従って、同図に示す前身頃片Fは、TシャツT1の前身頃のうち、前肩部下部の領域となる。この意味から、同図に符合Fで示す前身頃については『片』という記載を付し、前身頃の一部として表現した。
【0028】前身頃片Fの上端縁たる線分13−14および13’−14’は、前記した後身頃Bに連続する左右の前肩部SLおよびSRの上端縁(TシャツT1の完成時にあっては下端縁)たる所定の曲線6−7および6’−7’と対応する所定の曲線となるように形成される。
【0029】ここで、前述の図13に示した従来技術に係る一般的な被服の前身頃PFと比較する。従来の一般的な前身頃PFにおいて、P14−P13−P5(F)−P8(F)で画成される領域がこの実施の形態に係る右前肩部SRに相当する部位であり、P14’−P13’−P5’(F)−P8’(F)で画成される領域が左前肩部SLに相当する部位である。
【0030】尚、図13において2点鎖線で示す線分P13−P14およびP13’−P14’は、立位着用時において着用者の鎖骨上部に相当する位置であり、この実施の形態に係る前身頃片Fにあっては、前記した所定の曲線13−14および13’−14’がそれに相当する。
【0031】次いで図5を参照し、上記した前身頃片Fと後身頃Bから連続する左右の前肩部SLおよびSRからなるTシャツT1の前身頃全体を説明する。尚、理解の便宜のため、図13に示した従来技術に係る前身頃PFと対比して示す。図5において、左前身頃が従来技術に係る前身頃(左前身頃PFL)であり、右前身頃がこの実施の形態に係る前身頃(右前身頃FRおよび右前肩部SR)である。また、右前身頃にあっても、参考のため従来技術に係る前身頃との相違部分を破線で示す。
【0032】同図に示すように、この実施の形態にあっては、前中心線の上端9、即ち首グリ端縁が、前身頃PFに比して上方に延長した位置、具体的には1.5cm上方に延長した位置に形成される。また、肩上部の中心線たる線分5−8の首グリ側端縁8も、同様に1.5cm上方に延長した位置に形成される。この際、肩上部の中心線たる線分5−8が延長されて日本人の平均的体型の肩幅に合致しなくなることから、線分5−8の袖側端縁5を略平行(高さを変化させずに)に首グリ側に移動させ、線分5−8が日本人の平均的体型(身長170cm男性)の肩幅に合致する長さとなるように調整する。
【0033】ここで、首グリ端縁を上方に延長したことから、同図において2点鎖線で示す鎖骨上部相当位置の首グリ側端縁P14が、同様に符合14で示す位置へと上方移動(1.5cm)される。ここで特徴的なことは、上方移動した首グリ側端縁14と、位置変更のない袖側端縁13を直線で結ぶのではなく、従来の鎖骨上部相当位置(2点鎖線)と偏差の少ない滑らかな曲線で結ぶことで、前身頃片Fと右前肩部SR(および左前肩部SL)の縫合線を、同図に3点鎖線で示すように、鎖骨上部に相当する位置において、裾(直線辺10−11)方向に凸部を有する曲線(前記した所定の曲線)としたことである。尚、鎖骨上部に相当する位置とは、被服の着用時において鎖骨付近に干渉する部位であり、前記した平均的体型(身長170cm男性)にあっては、肩上部の中心線たる5−8および5’−8’から平行に略13cm下方へ移動した位置とされる。
【0034】かく形成された前身頃(前身頃片F、左前肩部SLおよび右前肩部SR)を図6に示す。上記した理由から、同図で両矢印FMで示す前身頃身丈は、図3で示す後身頃身丈BMに比して1.5cm長くなる。尚、前身頃片F、左前肩部SLおよび右前肩部SRを一体的に示すが、左右の前肩部SLおよびSRは実際には後身頃Bに連続して一体に形成され、前身頃片Fとは鎖骨上部相当位置で縫合によって接続されるのは前述の通りである。
【0035】次いで図7に、上述した前身頃片Fと後身頃Bを縫合して形成された身頃Mを示す。同図に示すように、前身頃片Fと後身頃Bは、所定の曲線で形成された前身頃片Fの上端縁13−14および13’−14’と右前肩部SRの下端縁6−7および左前肩部SLの下端縁6’−7’をそれぞれ縫合すると共に、後身頃Bの脇線の直線辺たる3−4および3’−4’と、前身頃片Fの脇線の直線辺たる11−12および11’−12’をそれぞれ縫合して接続される。
【0036】このうち、前身頃片Fの上端縁13−14および13’−14’と右前肩部SRの下端縁6−7および左前肩部SLの下端縁6’−7’の縫合線、即ち、前身頃片Fと後身頃Bを接続する縫合線は、左右の前肩部SLおよびSRの下端、より具体的には鎖骨上部相当位置において、TシャツT1の完成時における裾11,3−11’,3’方向(TシャツT1の立位着用時における下方)に凸部を有する曲線に形成される。
【0037】これに対し、図12および図13に示した従来技術に係る一般的な前身頃PFおよび後身頃PBにあっては、前述した如く、その上端縁が着用時における肩上部の中心線あるいはその近辺に位置するように形成されることから、それらを接続する縫合線は、着用者の肩上部の中心線(あるいはその近辺)に位置することとなる。
【0038】このため、従来技術に係る一般的な被服にあっては、その自重が最も集中する肩上部における被服の肌への干渉が幅の狭い線干渉(接触)となり、着用感を低下させるといった問題があった。特に、縫合線や縫い代に伸びの防止や縫い代始末のためのテープ状の付属部品などを使用した場合などにあっては、着用感の低下が顕著であった。
【0039】他方、この実施の形態に係るTシャツT1にあっては、上記した如く左前肩部SLおよび右前肩部SRが後身頃Bに連続して一体に形成されるので、前身頃片Fと後身頃Bを接続する縫合線が着用者の肩上部に形成されることがない。このため、肩上部における被服の肌への干渉をフラットな面干渉(接触)とすることができ、着用感の低下を解消することができる。さらに、TシャツT1の完成時において、かかる縫合線の本数は鎖骨上部相当位置に形成される1本のみであり、製作工程の煩雑化を招くこともない。
【0040】また、縫合線が立位着用時における着用者の鎖骨上部相当位置において、TシャツT1の裾方向に凸部を有する曲線となるため、鎖骨上部付近の人体形状に良く沿った着用感の高い構造とすることができる。さらに、縫合線を直線とした場合に比して長さが増加すると共に、その動きに余裕が生じるため、シームパッカリングや活動時のツッパリ感が解消され、着用感をより一層向上させることができる。
【0041】また、図7において脇線が揃っていないのは、右後身頃BRの幅寸法が右前身頃FRのそれに比して横方向に2cm広く形成されると共に、左後身頃BLの幅寸法が、同様に左前身頃FLのそれに比して横方向に2cm広く形成され、よって後身頃B全体にあっては前身頃片Fに比して横方向に4cm幅広に形成されるためである。
【0042】人の腕回りの動作は、そのほとんどが体中心線よりも前方で行なわれる。また、上体に関しては、後方に反らす動作よりも前屈動作の方が頻繁に行なわれると共に、前屈動作の方が後方に反らす動作に比して屈曲量が大きい。このため、体中心線よりも後ろ、即ち後身頃において、加わる張力が大きくなると共に、伸び縮みが頻繁に繰り返されることとなる。従って、後身頃(体中心線を含む)に形成される縫合線は、縫いツレやシワなどのシームパッカリングの影響を受けてゴワツキが生じやすい。
【0043】ところが、この実施の形態に係るTシャツT1はあっては、上記したように後身頃B全体を前身頃片Fに比して横方向に4cm幅広に形成する、即ち、後身頃Bと前身頃片Fの縫合線を体中心線よりも前方に位置させることにより、着用時において、前記した所定の曲線からなる縫合線13,6−14,7および13’,6’−14’,7’に上体や腕の動作に起因するツレやシワなどの影響を受けにくくなり、よってかかる縫合線を、素材の特性に関わらず、柔軟でゴワツキの生じない、人体形状に良く沿ったものとすることができる。
【0044】図8は、図7に示す身頃Mの立位着用時における状態を右側方から見た側面図である。同図において着用者の人体シルエット(前記した身長170cm男性の平均的体型)を1点鎖線で示す。同図から良く示すように、人の平均的体型にあっては、肩上部中心線(破線で示す)より後方の背中側の厚みに比し、それよりも前方の胸側の方が厚みがある。従って、前身頃と後身頃が同じ身丈長さで形成されると、前身頃身丈が不足して被服の裾がつり上がってしまい、着用感を低下させる一因になると共に、被服本来のシルエットを崩してしまう。特に、前身頃に柄模様などが施されている場合、つり上がりによって柄模様が変形し、かかる不都合が顕著であった。
【0045】ところが、この実施の形態にあっては、上述したように前身頃身丈FMが後身頃身丈BMに比して1.5cm長く形成されることから、従来不足しがちであった鎖骨から胸部にかけての胸厚み分を効果的に補うことができ、裾11,3−11’,3’−11,3につり上がりが生じない。
【0046】より具体的には、この実施の形態に係るTシャツT1にあっては、首グリ端縁を上方に延長し、かつ、鎖骨上部相当部位に位置する縫合線をTシャツT1の完成時における裾方向に凸部を有する曲線とすることで、人体の前方への厚みが増加しはじめる鎖骨上部に相当する位置の生地に余裕を持たせ、かつ、鎖骨上部付近の人体形状に良く沿った縫合線になって生地余裕分を効果的に胸厚み方向(前方)へと位置させることができるため、裾につり上がりが生じず、よって着用感の低下やシルエットの悪化を防止することができる。さらには、人体の形状、特に鎖骨付近の形状に良くフィットした着用感の高い、かつデザイン性に優れた被服とすることができる。
【0047】図9は、図8に示す状態を右斜め上方から見た肩上部付近の斜視図である。後身頃Bから連続して一体に形成された左右の前肩部SLおよびSRの下端縁6−7および6’−7’が、前身頃片Fの上端縁13−14および13’−14’と縫合されることにより、前身頃と後身頃を連続するための縫合線が左右の前肩部SLおよびSRの下端、具体的には鎖骨上部に相当する位置において、所定の曲線、即ち裾方向に凸部を有する曲線で1本のみ形成されることが、同図から良く理解できよう。
【0048】図7の説明に戻ると、身頃Mの袖グリ12,4−13,6−5−12,4および12’,4’−13’,6’−5’−12’,4’に、図10に示す袖部S(左右同一のため一つのみ示す)を縫合すると共に、首グリ1−8−9−8’−1に首リブNR(図7において図示せず)を縫合することにより、図1および図2に示すTシャツT1が完成する。
【0049】この実施の形態にあっては、上記した如く、左前肩部SLおよび右前肩部SRが後身頃Bに連続して一体に形成されるので、肩上部における被服の肌への干渉をフラットな面干渉(接触)とすることができ、着用感の低下を解消することができる。さらに、製作工程の煩雑化を招くこともない。
【0050】また、前身頃片Fと後身頃Bを接続する縫合線が、立位着用時における鎖骨上部相当位置において、TシャツT1の裾方向に凸部を有する曲線となるように形成されるため、鎖骨上部付近の人体形状に良く沿った着用感の高い構造とすることができる。さらに、縫合線を直線とした場合に比して長さが増加すると共に、その動きに余裕が生じるため、シームパッカリングや活動時のツッパリ感が解消され、着用感をより一層向上させることができる。
【0051】また、後身頃Bが前身頃片Fに比して横方向に幅広に形成されるため、着用時において前身頃片Fと後身頃Bを接続する縫合線に縫いツレやシワなどの影響を受けにくくなり、よってかかる縫合線を、素材の特性に関わらず、柔軟でゴワツキの生じない、人体形状に良く沿ったものとすることができる。
【0052】さらに、前身頃身丈FMを後身頃身丈BMに比して長く形成するように構成したことから、従来不足しがちであった鎖骨から胸部にかけての胸厚み分を効果的に補って裾につり上がりが生じず、よって着用感の低下やシルエットの悪化を解消することができる。さらには、人体の形状、特に鎖骨付近の形状に良くフィットした着用感の高い、かつデザイン性に優れた被服とすることができる。
【0053】次いで図11を参照し、この発明の第2の実施の形態について説明する。この実施の形態にあっては、上述した左右の前肩部が連続して一体の形成された後身頃と、それに縫合接続される前身頃片を衿付きシャツに適用した。
【0054】具体的には、衿付きシャツ(より詳しくは台衿付きのシャツ)S1は、同図に示すように前身頃片SFと、前身頃の左前肩部SSLおよび右前肩部SSRが連続して一体に形成される後身頃SBと、衿部NCと、左右の袖部SSの各生地片からなる。また、前身頃片SFは、その中心線(図示せず)において右前身頃SFRと左前身頃SFLに分離(切断)されると共に、右前身頃SFRにはボタンBTが複数個設けられ、左前身頃SFLのあわせ部MTに形成されたボタンホール(図示せず)に前記ボタンBTを挿通することによって右前身頃SFRと左前身頃SFLを係止可能とされる。
【0055】ここで、左前肩部SSLおよび右前肩部SSRが後身頃SBから連続して一体に形成されるのは上述の通りであり、鎖骨上部相当位置において所定の曲線(衿付きシャツS1の完成時において裾方向に凸部を有する曲線)に形成された左前肩部SSLおよび右前肩部SSRの下端縁と前身頃片SFの上端縁を縫合することにより、前身頃片SFと後身頃SBが接続されることは第1の実施の形態と同様である。また、他の構成および効果も第1の実施の形態と同じであるため、これ以上の説明は省略する。
【0056】以上のように、この発明の実施の形態に係る被服(TシャツT1および衿付きシャツS1)あっては、前身頃の左前肩部SL(およびSSL)および右前肩部SR(およびSSR)が後身頃B(およびSB)と連続して一体に形成され、かつ前記左右の前肩部SL(SSL),SR(SSR)の下端縁6−7および6’−7’がそれぞれ所定の曲線に形成されると共に、前記下端縁と縫合される前記左右の前肩部SL(SSL),SR(SSR)下部の前身頃(前身頃片F(およびSF))の上端縁13−14および13’−14’が、前記所定の曲線に対応する曲線に形成され、よって前記前身頃(前身頃片F(SF))と後身頃B(SB)を接続する縫合線13,6−14,7および13’,6’−14’,7’が、前記左右の前肩部SL(SSL),SR(SSR)下端において前記所定の曲線に形成されるように構成した。
【0057】また、請求項2項にあっては、前記縫合線13,6−14,7および13’,6’−14’,7’が、前記被服の立位着用時において着用者の鎖骨上部に相当する位置に形成されると共に、前記所定の曲線が、前記被服の完成時においてその裾11,3−11’,3’方向に凸部を有する曲線であるように構成した。
【0058】尚、上記において、一部の寸法を具体的な数値で示したが、それらは前述したように身長170cmの日本人男性の平均的体型をモデルにした場合であり、着衣対称の身長あるいは性別、さらには使用する生地の特性などによって任意に設定(変更)して良い。
【0059】また、上記においてTシャツT1および衿付きシャツS1を例にとって説明したが、それらに限られるものではなく、他の形態の被服についても適用可能である。
【0060】
【発明の効果】請求項1項にあっては、肩上部から縫合線および縫い代を排することができ、着用感を向上させることができる。また、前身頃と後身頃を接続する縫合線は、前記左右の前肩部下端において形成される1本のみとなり、製作工程を煩雑化させることもない。
【0061】さらに、かかる縫合線を所定の曲線とすることで、直線とした場合に比して長さが増加すると共に、その動きに余裕が生じ、シームパッカリングや活動時のツッパリ感を解消してより一層着用感を向上させることができる。
【0062】また、請求項2項にあっては、前身頃と後身頃を接続する縫合線が人体の形状、特に鎖骨付近の形状にフィットしたものとなり、着用感をより一層向上させることができる。また、これによって違和感のない、優れたデザインとすることができる。
【出願人】 【識別番号】592186777
【氏名又は名称】カイタック株式会社
【住所又は居所】岡山県岡山市昭和町3−12
【出願日】 平成13年10月22日(2001.10.22)
【代理人】 【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
【公開番号】 特開2003−129316(P2003−129316A)
【公開日】 平成15年5月8日(2003.5.8)
【出願番号】 特願2001−323096(P2001−323096)