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【発明の名称】 玄米粉
【発明者】 【氏名】土屋 敬子
【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区上品濃12番13号 株式会社ファンケル中央研究所内

【氏名】青砥 弘道
【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区上品濃12番13号 株式会社ファンケル中央研究所内

【氏名】伊藤 幸彦
【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区上品濃12番13号 株式会社ファンケル中央研究所内

【氏名】喜瀬 光男
【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区上品濃12番13号 株式会社ファンケル中央研究所内

【氏名】石渡 健一
【住所又は居所】神奈川県横浜市戸塚区上品濃12番13号 株式会社ファンケル中央研究所内

【要約】 【課題】原料米に含まれる栄養価の損失が少なく、食味、保存性に優れ、飲食用に適した玄米粉及びその製造法を提供すること。

【解決手段】保水力が3.5〜5.0、膨潤容積が5〜10ml/gであり、γ−アミノ酪酸を100gあたり5〜20mg含むことを特徴とする玄米粉、及び玄米を含水処理した後、部分α化処理し、ついで乾燥してなる玄米を焙煎、粉砕処理することを特徴とする玄米粉の製造法。本発明の玄米粉は、乾燥した玄米を非加水状態で焙煎するので、栄養価の損失が少なく、玄米粉の風味の劣化が抑制され、長期保存が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 保水力が3.5〜5.0、膨潤容積が5〜10ml/gであり、γ−アミノ酪酸を100gあたり5〜20mg含むことを特徴とする玄米粉。
【請求項2】 玄米を含水処理した後、部分α化処理し、ついで乾燥してなる玄米を焙煎、粉砕処理することを特徴とする玄米粉の製造法。
【請求項3】 焙煎処理を乾燥状態で行うことを特徴とする請求項2の玄米粉の製造法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、玄米に含まれる栄養価の損失が少なく、食味、保存性に優れ、飲食用に適した玄米粉に関する。
【0002】
【従来の技術】玄米は、白米に比べ栄養価が高いことは一般によく知られている。最近は、γ-アミノ酪酸を富化させた発芽玄米などもあり、炊飯という手段以外でもその栄養学的特性を生かしつつ、手軽に摂取できるように、玄米或いは発芽玄米を粉末化処理した粉が流通している。しかしながら、玄米をそのまま粉砕処理した玄米粉は、風味の劣化が早く、長期の保存に適していないという問題がある。さらには粉砕直後の粉でも調理加工用途には利用できるが、そのまま飲食するには風味に乏しく、必ずしも適しているものではなかった。
【0003】玄米粉の風味を向上させ、飲食用途に利用できるようにする手段として、玄米を焙炒処理する方法がある。例えば、玄米を発芽させて焙煎、粉砕して飲食品とする特開平02-257842号の技術が公知となっている。該特許では、特に焙煎条件に関しては限定していないが、170〜180℃程度、7〜10時間程度行う方が好ましいと明記している。しかし、このような一般的な焙煎条件下では、その加温工程で栄養成分が大きく損なわれるという問題がある。その上に、澱粉のα化が過度に進み過ぎ、澱粉の老化などに起因する経時的な粘度、粘弾性の低下が生じ、さらに食味の劣化が発生する。一方、栄養分が損なわれず且つ長期保存に耐えられるようした焙煎方法として、特開2000-201638号の技術が応用できるが、原料米を含水させた状態で焙炒装置で加熱処理することから、例えば、胚芽中に含まれる易水溶性の栄養素であるγ-アミノ酪酸の損失が大きいという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、原料米に含まれる栄養価の損失が少なく、食味、保存性に優れ、飲食用に適した玄米粉及びその製造法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討を繰り返した結果、原料に供する玄米を含水処理した後、部分α化処理し、乾燥した玄米を非加水状態で焙煎することにより、栄養価の損失を少なくし、食味、保存性に優れ、飲食用に適した玄米粉が得られることを見出し、本発明にいたった。即ち、本発明は以下の通りである。
1.保水力が3.5〜5.0、膨潤容積が5〜10ml/gであり、γ−アミノ酪酸を100gあたり5〜20mg含むことを特徴とする玄米粉、2.玄米を含水処理した後、部分α化処理し、ついで乾燥してなる玄米を焙煎、粉砕処理することを特徴とする玄米粉の製造法、3.焙煎処理を乾燥状態で行うことを特徴とする前記2の玄米粉の製造法。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の玄米粉は、例えば次のような方法により製造することができる。原料に供する玄米を通常2乃至4回程洗米する。水切り後、あるいはそのまま発芽槽(発芽用タンク)で水に浸漬し、必要により間欠的に散水を行うことにより、含水処理する。含水処理は、通常、20乃至50℃の温水中に10乃至48時間程度浸漬するか、或いは例えば、3乃至5時間程浸漬し、その後、脱水処理し、間欠的に散水を行うことにより、計5乃至45時間程度、高湿度の条件下で処理することにより、玄米中のγ−アミノ酪酸の富化を5〜25mg/100g程度までにする工程である。含水処理に要する時間の目安は、玄米が胚の部分から0.5〜2.0mm程度の膨らみ、或いは突起部、幼芽が確認できる程度の状態が良い。尚、洗米及び浸漬に供する水は、水道水、蒸留水、井戸水、酸性水、電解食塩水、オゾンを溶存させた水等の食品用に使用できる水であれば、いずれの使用も可能である。
【0007】含水処理後は、玄米を加熱し部分α化処理を行う。玄米粉としての所望のα化度に制御するために、玄米はα化度を、例えば5〜50%程度にするのが好ましく、さらに好ましくは10〜40%程度になるように加熱処理を行うのが良い。その際の加熱方法としては、具体的には、飽和水蒸気か熱水あるいは過熱蒸気等を熱媒体として高湿度雰囲気、例えば湿度60%以上の雰囲気で対象物を加熱する方法である。この場合には、加熱対象物と熱媒体を直接接触させ加熱する方法と例えば湿度60%以上の雰囲気でかつ伝導加熱方式のように間接的に熱媒体を接触させ、加熱する方法のどちらでも実施可能である。尚、ここで示すα化度とは、α化デンプンと生デンプンまたは老化デンプンを識別するのに優れた方法であるα−アミラーゼ・プルラナーゼ法(BAP法)によって測定した値である。
【0008】具体的な部分α化処理条件は、例えば、蒸気温度98〜180℃で3秒〜30分間の蒸気処理である。蒸気温度が98℃未満の場合、α化、乾燥自体に問題はないが、所望のα化に要する時間が長くなるため、工業的に大量生産を行う場合には、あまり好ましくない。一方で、180℃を超えるとα化が進みすぎる問題があり、それをそのまま乾燥工程に移行すると、玄米の粒自体のブロッキングにより、乾燥効率が悪くなる。処理時間は、3秒未満では、粒のα化度にムラが生じやすいこともあるが、実際の工程における制御も難しい。また、処理時間が30分を超えると玄米のα化が進行し過ぎ、玄米の乾燥効率が悪く、好ましくない。
【0009】また、上述した以外の方法として米飯製造や発酵工業等で行われる米の蒸煮処理を用いた方法が例示できる。具体的には、例えば、発芽処理した玄米を0.1〜7.0kg/cm2、好ましくは0.1〜2.0cm2の条件下で、3秒〜30分間、好ましくは1〜30分間蒸気で処理する方法である。蒸気圧が、0.1kg/cm2未満では、所望のα化度が得られず、処理時間が3秒未満でも同様である。逆に処理時間が長くなりすぎると、α化が進み過ぎ、粒のブロッキングが生じ易くなり、乾燥工程のハンドリングが悪くなる。一方、蒸気圧が7.0kg/cm2を超えると、圧力が高すぎ、安全性に問題がある。
【0010】部分α化処理工程後、次の乾燥工程へ移行するが、乾燥は、対流(熱風)乾燥法、放射乾燥法、伝導乾燥法、電磁波等による均一発熱法、真空乾燥法、凍結乾燥法等のいずれの方法をもっても行うことが可能である。乾燥玄米の含水量は10〜20%が好ましい。このようにして得られた乾燥玄米を、改めて水を加えることなく焙煎、粉砕して玄米粉とする。
【0011】従来の焙煎方法は、熱効率を上げるために玄米を含水させて焙煎していたが、含水状態で焙煎する工程を経ることで易水溶性栄養成分の溶出、例えば、機能性成分として注目されているγ−アミノ酪酸の損失が起こる。本発明においては、玄米を含水処理した後、部分α化処理し、ついで乾燥させた後に、水を加えることなく非加水条件で焙煎することで、易水溶性の機能性成分の損失を抑制することができる。非加水条件で熱効率を上げ、且つ粒の焦げ付きを防ぐために、例えば、熱風を循環させた流動方式、ドラム式などの焙煎装置を使用することができる。温度、時間などの条件は、所望の焙煎状態によって異なるが、栄養価を損なうこと無く、且つ風味に優れた玄米粉を得るためには、例えば100℃〜300℃の温度域で、積算温度2.0〜6.0℃・hの範囲で焙煎を行う方が好ましい。尚、ここでいう積算温度とは、焙煎時の処理温度と処理時間の積で表した値である。
【0012】以上のような方法で得られる玄米粉は、保水力が3.5〜5.0、膨潤容積が5〜10ml/g、γ−アミノ酪酸を100gあたり5〜20mg含むことを特徴とし、飲食用の液体などの成分と混合した場合、玄米粉粒子の内部及び粒子間に吸液、保持することが出来、且つ個々の玄米粉粒子が膨潤した粒子を形成し、玄米中の澱粉由来の糊状感を感じることなく、なめらかなテクスチャーを持つゾル状の飲食物が得られる。保水力が3.5未満または膨潤容積が5ml/g未満では、飲食用の液体と玄米粉を混合した場合の吸液、保持力が弱く、味の馴染みが遅くなる。一方、保水力5.0または膨潤容積が10ml/gを超えると、飲食用の液に玄米粉を混合すると、なめらかなテクスチャーが損なわれる傾向がある。
【0013】本発明でいう保水力は、以下の方法で算出する。試料5g(無水換算)を、約25℃の水75mlを入れたビーカー中に、スターラーで約500rpmで攪拌させつつ添加し、均一に分散させる。ついで、分散液として100mlのメスシリンダーに全量を移して100mlに正確にメスアップする。次に、得られた分散液を、遠心沈降管に移し、4200rpmで10分間遠心分離する。上澄液を捨て、湿潤沈積物の重量を測定し(W0)、次いで該沈積物を常圧加熱乾燥法(135℃、3時間)にて乾燥後、秤量し(W)、次式で求めた値を保水力とする。
【0014】保水力=湿潤沈積物(W0)/乾燥沈積物(W)
【0015】本発明でいう膨潤容積は、試料を含水させ、一定時間放置後の単位重量あたりの膨潤度を測定して算出する。具体的な方法は、澱粉5g(無水換算)を、約25℃の水75mlを入れたビーカー中に、スターラーで約500rpmで攪拌させつつ添加し、均一に分散させる。ついで、分散液として100mlのメスシリンダーに全量を移して100mlに正確にメスアップする。次に、分散液を均一にした後、室温で18時間放置した後の沈降体積を読み、それを試料1g(無水換算)あたりの体積に換算し、膨潤容積(ml/g)とする。
【0016】
【実施例】以下に、本発明について実施例を挙げて説明する。
実施例1原料玄米(北海道産ほしのゆめ)を25℃の恒温水中で20時間含水処理後、98℃、4分間加熱し、部分α化処理を行い、引き続き、流動層乾燥機にて水分15%まで乾燥させた。得られた乾燥玄米を、ロータリー流動焙炒装置で300℃、29秒間、焙煎処理を行い、焙煎処理玄米を粒度100メッシュパスまで粉砕処理し、飲食用の玄米粉を製造した。
実施例2原料玄米(北海道産ほしのゆめ)は、実施例1と同様の方法で含水処理、部分α化処理後、水分15%まで乾燥させた。得られた玄米は、ロータリー流動焙炒装置で290℃、28秒間、焙煎処理を行い、焙煎処理玄米を粒度100メッシュパスまで粉砕処理し、飲食用の玄米粉を製造した。
【0017】実施例3原料玄米(北海道産ほしのゆめ)は、実施例1と同様の方法で含水処理、部分α化処理後、水分15%まで乾燥させた。得られた玄米は、ロータリー流動焙炒装置で250℃、75秒間、焙煎処理を行い、焙煎処理玄米を粒度100メッシュパスまで粉砕処理し、飲食用の玄米粉を製造した。
実施例4原料玄米(北海道産ほしのゆめ)は、実施例1と同様の方法で含水処理、部分α化処理後、水分15%まで乾燥させた。得られた玄米は、ロータリー流動焙炒装置で320℃、45秒間、焙煎処理を行い、焙煎処理玄米を粒度100メッシュパスまで粉砕処理し、飲食用の玄米粉を製造した。
【0018】比較例1原料玄米(北海道産ほしのゆめ)は、実施例1と同様の方法で含水処理、部分α化処理後、水分15%まで乾燥させた。得られた玄米を含水させ、蒸煮処理し、ロータリー流動焙炒装置で250℃、75秒間、焙煎処理を行い、焙煎処理玄米を粒度100メッシュパスまで粉砕処理し、玄米粉を製造した。
比較例2原料玄米(北海道産ほしのゆめ)は、実施例1と同様の方法で含水処理、部分α化処理後、水分15%まで乾燥させた。得られた玄米は、そのまま粒度100メッシュパスまで粉砕処理し、玄米粉を製造した。
【0019】比較例3原料玄米(北海道産ほしのゆめ)を含水させ、蒸煮処理し、直ちにロータリー流動焙炒装置で250℃、75秒間、焙炒処理を行い、焙炒処理玄米を粒度100メッシュパスまで粉砕処理し、玄米粉を製造した。
比較例4原料玄米(北海道産ほしのゆめ)を粒度100メッシュパスまで粉砕処理し、玄米粉を製造した。
比較例5原料玄米(北海道産ほしのゆめ)を非加水下でロータリー流動焙炒装置で250℃、75秒間、焙炒処理を行い、焙炒処理玄米を粒度100メッシュパスまで粉砕処理し、玄米粉を製造した。
【0020】実施例1〜4、比較例1〜5で得られた玄米粉の物性(保水力及び膨潤容積)を前記した方法で測定した。その結果を表1に示す。さらに、食味評価(180ccのミルクに5g溶解して飲用)、γ−アミノ酪酸量、保存性(常温で保管時の賞味期限)について評価を行った。その結果を表2に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】本発明の範囲外である比較例1は、焙煎時に加水状態で焙煎することにより、γ‐アミノ酪酸の損失が大きい。一方、玄米を含水処理、部分α化処理し、乾燥した後、焙煎せずに粉末化した比較例2の玄米粉は、玄米特有の糠臭があり、飲料に混ぜて飲むには、抵抗がある。また、玄米をそのまま加水状態で焙煎、或いは非加水状態で焙煎した比較例3、4の玄米粉は、香ばしさはあるものの、γ‐アミノ酪酸の含有量が少なく、さらに保存性も悪い。玄米をそのまま粉砕した比較例5の玄米粉においては、風味も悪く、保存性も悪い。一方、本発明の範囲内である実施例1〜4の発芽玄米粉は、風味も良好で、保存性に優れており、健康食品として毎日飲用する飲食用素材として適している。
【0024】
【発明の効果】以上のように、本発明の玄米粉は、原料に供する玄米を含水処理した後、部分α化処理し、乾燥した玄米を非加水状態で焙煎することにより、栄養価の損失を少なくすることができる。また、玄米粉の風味の劣化が抑制され、例えば、ノシメマダラメイガ、コクゾウムシなどの害虫も発生せず、微生物の汚染も少なく、長期保存が可能となる。また、乾燥処理後、非加水状態で焙煎すると易水溶性の栄養成分であるγ−アミノ酪酸などの機能性成分の損失を抑制することが可能となり、且つ玄米の風味が良くなり、玄米粉を飲料などに混ぜることで、糊状感を感じること無く、なめらかなテクスチャーを持つゾル状の飲食物が得られるなど、食味にも優れている。
【出願人】 【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
【住所又は居所】神奈川県横浜市栄区飯島町109番地1
【出願日】 平成14年1月25日(2002.1.25)
【代理人】 【識別番号】100098556
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々 紘造
【公開番号】 特開2003−219818(P2003−219818A)
【公開日】 平成15年8月5日(2003.8.5)
【出願番号】 特願2002−16289(P2002−16289)