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【発明の名称】 脱脂糠粉末の製造方法および脱脂糠粉末
【発明者】 【氏名】山口 明

【氏名】池森 ▲しん▼二

【要約】 【課題】米糠から米油原油を抽出した後の脱脂糠を、食品として有効利用することを可能とするような、新たな加工技術を提供する。

【解決手段】米糠の低温圧搾機によって得られた蝋分1%以下、油分12%以下の脱脂糠を粉砕することによって、脱脂糠粉末を得る。好ましくは、脱脂糠粉末の粒径を250μm以下とすることができる。好ましくは、脱脂糠は粉砕した後に、100〜120℃の温度範囲内で焙煎できる。得られた脱脂糠粉末は、小麦粉と同様に各種の食品原料として容易に利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】米糠の低温圧搾機によって得られた蝋分1%以下、油分12%以下の脱脂糠を粉砕することによって、脱脂糠粉末を得ることを特徴とする、脱脂糠粉末の製造方法。
【請求項2】前記脱脂糠粉末の粒径250μm以下とすることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】前記脱脂糠の油分が10%以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】前記脱脂糠を粉砕した後に、100〜120℃の温度範囲内で焙煎することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項5】前記米糠を前記低温圧搾機において圧搾する前に、100〜130℃の温度範囲内で加温し、焙煎することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つ請求項に記載の方法。
【請求項6】請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の方法によって得られたことを特徴とする、脱脂糠粉末。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶剤を使用しない脱脂糠粉末の製造方法および脱脂糠粉末に関するものである。
【0002】
【従来の技術】米糠は、ビタミン、ミネラル、繊維質成分の宝庫であり、また良質な油分を含んでいる貴重な食料源である。玄米の栄養分のうち90%以上は米糠に含まれている。日本国における米糠の年間生産量は約90万トンであるので、米糠を食品として有効利用することは、食料の大半を輸入に依存するわが国において重要な課題である。
【0003】しかし、米糠の処理技術には困難な問題があり、食品としての利用は限界があった。通常法では、米糠を乾式エクストルージョンまたはクッキング、あるいは湿式エクストルージョンまたは水蒸気処理に供することによって、米糠に含まれるリパーゼを失活させる。そして、米糠をノルマルヘキサンによって処理することで米油を抽出している(溶剤抽出法)。得られた米油原油は、通常、0.5%程度の微粉末と5〜8%の蝋を含む。原油を脱ガム、脱酸、脱蝋、脱色、ウインター処理し、次いで脱臭している。米油原油を抽出した残留分はいわゆる脱脂糠である。脱脂糠は、多量のビタミン、ミネラル、繊維質成分の他、多様な生理活性物質を含んでおり、人の健康に資することが明らかである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、米糠から米油原油をノルマルヘキサンを使用して抽出すると、大豆油や菜種油の場合と比べて溶剤のロスが多く、大気中に比較的に多量の溶剤が放出されるために、環境的に悪影響がある。そして、ノルマルヘキサンを使用して米油原油を抽出すると、抽出後の脱脂糠は、ノルマルヘキサンを含有するおそれがあることから、人用の食品としては使用できなかった。
【0005】また、エキスペラーによって米糠を圧搾し、残留した脱脂糠を粉砕し、微粉末を得ることも知られている。しかし、この場合には、米糠が摩擦熱により200℃以上の高温にさらされるために、タンパク質およびでんぷんが熱変性する。このため、例えば脱脂糠粉末と小麦粉を混合してミックス粉とし、ミックス粉を使用してスポンジケーキを造ると、製品が離水してしまい、所定の形状を保持できず、このため食品原料としては利用困難であった。
【0006】このため、脱脂糠は、飼料、きのこ栽培床、肥料として商品化されているために、付加価値が低く、取引価格が低い。例えば、平成13年時点においては、米糠の一部は産業廃棄物として廃棄されている。
【0007】このように、脱脂糠は、多種多様なビタミン、ミネラル、その他の生理活性物質を含有していることから、本来は健康食品やその原料として高価格で取引されるべきポテンシャルを有しながらも、食品加工技術の停滞のために、現実には非常な低価格で取り引きされ、あるいは米糠の段階で産業廃棄物として廃棄されている。
【0008】本発明の課題は、米糠から米油原油を抽出した後の脱脂糠を、食品として有効利用することを可能とするような、新たな加工技術を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、米糠の低温圧搾機によって得られた蝋分1%以下、油分12%以下の脱脂糠を粉砕することによって、脱脂糠粉末を得ることを特徴とする、脱脂糠粉末の製造方法に係るものである。
【0010】また、本発明は、前記方法によって得られたことを特徴とする、脱脂糠粉末に係るものである。
【0011】本発明者は、米糠の低温圧搾機によって得られた蝋分1%以下、油分12%以下の脱脂糠が、容易に粉砕可能であり、従来困難であった水準の米糠の超微細粉末が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【0012】即ち、前述のような脱脂糠の塊(ケーキ)は、通常の粉砕機によって、粒径250μm以下まで容易に粉砕することができ、粒径が揃った粉末を得ることができる。
【0013】ノルマルヘキサンなどの有機溶剤を利用して米油原油を抽出した後の脱脂糠は、残留溶剤の可能性のために食品としては利用できない。これに対して、米糠の専用低温圧搾機によって得られた脱脂糠にはこのような健康上、環境上の問題はなく、食品としての阻害要因がない。
【0014】その上、前記脱脂糠の粉砕によって得られた微粉末は、例えば小麦粉と同様に種々の粉末原料として利用可能なものであり、この脱脂糠粉末を使用して所定形状の食品を製造した場合に、離水を生じにくく、食品の形状保持性が良好なものであった。即ち、本発明の脱脂糠粉末は、例えば小麦粉と同様に、パン、クッキー、ケーキ等の粉末焼成食品用の原料粉末、めん類、パスタ、シリアルバーなどの粉末成形食品の原料粉末、チョコレートなどの菓子類、カレールーの増量剤ないし栄養添加剤、シリアル食品用粉末、ふりかけ、ヨーグルトやプリン等のトッピング材料として有効利用可能なものである。その上、本発明の脱脂糠粉末は、例えば小麦粉などの既存の食品原料と比較して、著しく栄養分、繊維質成分の多い機能性を持った食品である。又、微粉末にすることにより、糖類が直接舌で感じ取れるようになり、甘みとうま味が出て、きな粉のような食感を有す。このためにあらゆる食品に栄養添加剤として利用できる。
【0015】食品として利用されるには、一般生菌数が日本では10の3乗以下を基準とするが、例えば後述するような気流乾燥及び焙煎処理をすることによって、一般生菌数を1000以下にする事が可能である。又、精米直後の米糠を原料とするため、食品に適した酸価の低い脱脂米糠が得られる。
【0016】このように、本発明において、従来、動物飼料、キノコ栽培床、肥料としてしか利用されてこず、あるいは廃棄物処理されていた脱脂糠を、高付加価値を有する一般食品用途に販売することが可能となり、これによって新たな産業分野を創出する可能性を有するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、適宜図面を参照しつつ、本発明を更に詳細に説明する。図1は、本発明の好適な実施形態における処理プロセスを示すフローチャートであり、図2、図3は、それぞれ、本発明で好適に使用できる処理装置を示すブロック図である。
【0018】まず、図2、図3に矢印Aで示すように、原料である米糠をバケット1内に投入し、定量スケール2によって一定量の米糠を秤量し、米糠を一定量ごとシフター3に送る。原料となる米糠は、代表的には、次のような成分を含有している。
水 分:13〜15%油 分:18〜20%固 形 分:65〜70%蝋 分:0.9〜1.6%リン脂質:0.3〜0.5%酵 素:リパーゼなど【0019】シフター3によって、不要な異物(例えば石、砕けた米)を矢印Bのように除去する。次いで、米糠を一定量ごと乾燥機5に送り、送風機4から熱風を送風して気流乾燥する。この気流乾燥によって、比較的に短時間で殺菌および乾燥を行う。乾燥後の米糠の好ましい水分量は5〜10%である。
【0020】次いで、ライン6を通して米糠を空気輸送し、サイクロン7を通してケトル8へと投入する。ケトル8においては、米糠を加熱焙煎し、これによってリバーゼを失活させて米糠の酸価の上昇を止める。この点について説明する。一般に、玄米を精米すると、米糠中のリパーゼが直ちに活性化され、米糠中のトリグリセリドを加水分解し、遊離脂肪酸、ジグリセリド、モノグリセリドを生み出す。遊離脂肪酸の量が増大すると、遊離脂肪酸の酸化によって米糠に石鹸様の匂いが発生し、食用に適さなくなる。このため、本実施形態においては、乾燥後に米糠を焙煎することで、リパーゼを失活させる。
【0021】ただし、焙煎時の温度が高くなると、米糠中のタンパク質およびデンプンが変性し、脱脂糠粉末の形状保持性が低下する傾向がある。従って、脱脂糠粉末の形状保持性を良好とするという観点からは、焙煎時の温度を130℃以下とすることが好ましい。また、リバーゼを失活させるという観点からは、焙煎時の温度を100℃以上とすることが好ましい。また、好ましくは、焙煎段階での米糠の水分量を2〜8%とする。
【0022】次いで、米糠を専用低温圧搾機9に投入し、低温圧搾を行う。低温圧搾とは、米糠を加圧し100℃以下の温度の米油原油を絞り出すことである。また、脱脂糠粉末の形状保持性を向上させるという観点から、低温圧搾後のケーキの温度を100℃以下とすることが好ましい。
【0023】ここで、低温圧搾に供する米糠の温度は、前述したように、100℃以上、130℃以下とすることが、リパーゼを失活させる上で好ましい。特に好ましくは、100℃以上、115℃、更に好ましくは105℃以上、110℃以下に加熱された米糠を低温圧搾機に投入し、低温圧搾を行う。
【0024】特に好ましくは、低温圧搾機が、100℃以上、115℃、更に好ましくは105℃以上、110℃以下に加熱された米糠を受け入れて圧搾し、蝋分の多くを米油原油中に絞り出すのに好適な圧搾機である。このような圧搾機は、長年業界において要望されるところであったが、最近、「ミラクルチャンバー」という商品名で販売されるに至った。「ミラクルチャンバー」の入手先情報は以下のとおりである。株式会社テクノシグマ 千葉県松戸市日暮1丁目15−3【0025】低温圧搾機9によって得られた米油原油は、ポンプ10を通して静置タンク11に送り、静置する。次いで、米油原油は、濾過、脱夾、脱ガム、脱蝋、物理精製(脱酸、脱色)、脱臭の各処理を施し、一番絞りのプレミアム精製米油として販売できる。
【0026】一方、低温圧搾機においては、脱脂糠の蝋分が1%以下となり、油分が12%以下となるような圧力を加える。この脱脂糠を、本発明に従って加工し、粉末化する。まず、低温圧搾直後の脱脂糠は、形状が一定していないので、まず図2に示すように、脱脂糠を解砕機(デタッチャー)12によって解砕し、粒度を一定にする。この際の粒度は粗くてよく、例えば710〜1410μmである。
【0027】次いで、解砕後の脱脂糠を吸引式空気輸送路13によって送り、脱脂糠を送りながら空冷する。この段階においては、脱脂糠をいったんサイロ中に貯蔵することができ、製品のブリッジのおそれはない。次いで、脱脂糠を粉砕機14へと送り、粉砕する。この粉砕段階においては、製品の最終的な用途に応じて、適切な粉砕機を選定する。例えば、ハンマーミル、ピンミル、ローラーミル、石臼、ディスクミルを例示できる。次いで、粉砕後の粉末を、熱風送風機15およびサイクロン16を用い、シフター17を通してタンク18へと送り、分級し、貯蔵する。タンク18から、一定量の粉末を計量装置19によって計量し、所定の容器に充填し、出荷する。
【0028】好適な実施形態においては、低温圧搾直後の脱脂糠の蝋分の含有量は、0.8%以下であり、これによって一層高度の微粉砕が可能となる。なお、蝋分とは、室温で固形の脂肪族エステルのことであり、典型的には、炭素数16以上の飽和脂肪酸と炭素数24以上の脂肪族アルコールとのエステルである。
【0029】また、好適な実施形態においては、低温圧搾直後の脱脂糠の油分の含有量を10%以下とすることができ、これによって脱脂糠粉末を貯蔵したときの酸価の上昇を一層効果的に抑制できる。この観点からは、脱脂糠の油分の含有量を6%以下とすることが更に好ましい。脱脂糠の油分の含有量が少なすぎ、あるいは油分が実質的に存在しない場合には、脱脂糠粉末の食味、うま味が若干落ちる。しかし、このような場合であっても、健康食品としては極めて有用である。
【0030】一方、脱脂糠粉末の食味を向上させ、一般的な食品としての付加価値を向上させるという観点からは、脱脂糠の油分の含有量を6%以上とすることが好ましく、8%以上とすることが一層好ましい。ただし、この場合には、脱脂糠粉末を貯蔵したときに、酸価が経時的に上昇する傾向がある。
【0031】このような脱脂糠粉末の酸価の上昇を抑制するという観点からは、図3に示すように、低温圧搾後の脱脂糠を炒り釜20に送り、低温焙煎し、次いで脱脂糠を粉砕することが好ましい。この焙煎段階においては、脱脂糠粉末の形状保持性を良好とするという観点からは、焙煎時の温度を120℃以下とすることが好ましく、焙煎時間を2時間以下とすることが好ましい。また、脱脂糠粉末の酸価の上昇抑制という観点からは、焙煎時の温度を100℃以上とすることが好ましく、焙煎時間を90分以上とすることが好ましい。
【0032】粉砕後の脱脂糠粉末の平均粒型は特に制限されない、しかし、食品原料としての有用性を向上させるためには、脱脂糠粉末の平均粒径は180μm以下であることが好ましく、30μm以下であることが更に好ましい。
【0033】
【実施例】図1、図2を参照しつつ説明した方法に従い、米糠を処理し、脱脂糠粉末を得た。具体的には、220kg/時間の能力で米糠をバケット1に投入した。米糠の水分含有量は14〜15%である。気流乾燥直後の米糠の水分含有量は7〜8%とした。米糠をケトル8に投入し、105〜110℃で0.5時間加熱焙煎し、水分含有量4〜5%の米糠を得た。この米糠を200kg/時間の能力で低温圧搾し、25kg/時間の米油原油と、170kg/時間の脱脂糠とを得た。
【0034】脱脂糠の蝋分含有量は0.6%であり、油分含有量は8%である。蝋分および油分は、以下の方法で測定した。
蝋分脱脂糠から油分抽出し脱ガム処理した試料20gを200ml三角フラスコに取り、MEK120mlを加え、加熱溶解する。これを放冷、又は水冷して5〜6℃にする。重量既知の濾紙(No.2 7cm又は9cm)を用いて吸引濾過をする。残渣のついた濾紙を 風乾後、残渣の重量を秤量する。
蝋分(%)=A/B×油分A:残渣の重量(g)
B:試料採取量(g)
【0035】油分試料10gを円筒濾紙に秤取し、脱脂綿で軽く蓋をしてソックスレー抽出器に入れる。抽出フラスコ(重量既知)にエチルエーテルを約100ml入れ、ソックスレー抽出装置に装着し、ウォーターバス上で5時間加熱抽出を行う。抽出速度は溶剤循環約12〜13回/時間になるように調整する。抽出終了後、抽出フラスコはロータリーエバポレーターに取り付けエチルエーテルを完全に蒸発させる。抽出フラスコを室温まで放冷後重量を秤量する。
油分(%)=A/B×100A:抽出油分含量(g)
B:試料採取量(g)
【0036】脱脂糠を解砕し、吸引式供給路13で送り、ロール式粉砕機14に投入した。得られた粉末をふるい分けし、平均粒径約280μmの粉末(1)と、平均粒径約180μmの超微粉末(2)とを得た。粉末(1)の量は約43kg/時間であり、粉末(2)の量は約110kg/時間である。ロール式粉砕機においては、特にトラブルなく大量の脱脂糠を粉砕し、平均粒径約180μmの超微粉末を得ることができた。この超微粉末の粒径は、日本国内で流通している小麦粉の粒径と同水準であるので、食用に適している。
【0037】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、米糠から米油原油を抽出した後の脱脂糠を、食用として有効利用することを可能とするような、新たな加工技術を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】396009458
【氏名又は名称】三和油脂株式会社
【識別番号】501486774
【氏名又は名称】株式会社テクノシグマ
【出願日】 平成13年12月18日(2001.12.18)
【代理人】 【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔 (外2名)
【公開番号】 特開2003−180275(P2003−180275A)
【公開日】 平成15年7月2日(2003.7.2)
【出願番号】 特願2001−384435(P2001−384435)