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【発明の名称】 乳化シロップ剤
【発明者】 【氏名】打越 正延
【住所又は居所】東京都墨田区文花2−1−3 花王株式会社研究所内

【氏名】安増 毅
【住所又は居所】東京都墨田区文花2−1−3 花王株式会社研究所内

【要約】 【課題】

【解決手段】次の成分(A)及び(B):(A)糖類 30〜80重量%、(B)脂質−蛋白質複合体 0.5〜20重量%を含有する乳化シロップ剤;及びこれを用いるバタークリームの製法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の成分(A)及び(B):(A)糖類 30〜80重量%、(B)脂質−蛋白質複合体 0.5〜20重量%を含有する乳化シロップ剤。
【請求項2】 更に蛋白質、乳化剤及び油脂から選ばれる1種以上を含有するものである請求項1記載の乳化シロップ剤。
【請求項3】 更に、蛋白質を1〜5重量%、乳化剤を0.1〜5重量%、油脂を0〜30重量%含むものである請求項1又は2記載の乳化シロップ剤。
【請求項4】 バタークリーム調製用乳化シロップである請求項1〜3のいずれか1項記載の乳化シロップ剤。
【請求項5】 バター、マーガリン又はショートニングに請求項1〜4のいずれか1項記載の乳化シロップ剤を混合することを特徴とするバタークリームの製造法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は風味、食感が良好で、保存安定性及び耐熱性に優れたバタークリームの製造に有用な乳化シロップ剤に関する。
【0002】
【従来の技術】バタークリームは、洋菓子の飾り、ケーキ製造用原料等として広く用いられている。バタークリームの製造法としては通常、バター、ショートニング、マーガリン等に糖液、澱粉、カスタード、ジャム等を加えて混合する方法が採用されている。しかしながら、バターやマーガリンに濃厚な糖液を混合すると、粘度が高くハンドリング性が悪い、また、風味・食感において、甘味が強い、食感が悪い、特に乳風味を中心とした風味が弱くなる等の問題がある。これに対し、特開昭58−58136号記載の方法等により、予め糖液を水中油型乳化分散組成物、すなわち乳化シロップとしておき、これを用いてバタークリームを製造すると容易に安定なバタークリームを得ることができることが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、当該従来の乳化シロップを用いて得られたバタークリームは、乳風味や食感の点で十分満足できるものではなく、改良が求められていた。従って、本発明は風味の良好なバタークリームを製造するのに有用な乳化シロップを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者は、種々検討した結果、糖類に脂質−蛋白質複合体を加えて乳化すればバタークリームの風味を良好にする乳化シロップが得られることを見出した。そして更に検討したところ、糖類と脂質−蛋白質複合体とを一定範囲の濃度にすることにより、風味だけでなく、保存安定性及び耐熱性にも優れたバタークリーム調製に有用な乳化シロップが得られることを見出した。
【0005】すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):(A)糖類 30〜80重量%、(B)脂質−蛋白質複合体 0.5〜20重量%を含有する乳化シロップ剤を提供するものである。
【0006】また、本発明は、バター、マーガリン又はショートニングに当該乳化シロップ剤を混合することを特徴とするバタークリームの製造法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の乳化シロップ剤に用いられる(A)糖類としては、甘味を呈する糖類であり、例えばブドウ糖、果糖等の単糖類、ショ糖、マルトース等の二糖類、水飴、デキストリン、転化糖、異性化糖、ハチ蜜及びこれらの混合物等が挙げられる。このうち、グルコース、マルトース等の混合物が特に好ましい。
【0008】糖類(A)は、本発明乳化シロップ剤中に30〜80重量%含有するが、好ましくは40〜70重量%、更に好ましくは50〜70重量%含有する。30重量%未満では得られるバタークリームの微生物耐性が十分でなく、また、耐熱性の点において、クリームの分離(離水)、オイルオフが起こりやすくなる。一方、80重量%を超えると粘度が高くなりすぎ、ハンドリング性が低下する、保存中に糖の結晶が析出する、食感的にねとつき感が強くなるなどの点で好ましくない。
【0009】糖類(A)としては、ショ糖等の固形物の形態で使用してもよいが、濃厚糖水溶液として使用するのが、ハンドリング性、結晶析出防止、微生物耐性、糖の溶解が容易であるなどの点で好ましい。当該濃厚糖水溶液の濃度としては、40〜85重量%、更に50〜85重量%、更に60〜80重量%が好ましい。これらの濃厚糖水溶液を使用する場合、糖の終濃度が上記範囲になるように使用量を調整すればよい。
【0010】本発明に用いられる脂質−蛋白質複合体としては、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、リン脂質等の脂質と、蛋白質とが強い親和力により複合体を形成したものである。脂質としてはリン脂質、特にレシチンが好ましく、大豆、卵、牛脂、なたね、ひまわり、サフラワー、綿実、とうもろこし、アマニ、ゴム、オリーブ、米、きり、グレープ、アボガド、ヤシ、パーム等の動植物レシチンがより好ましく、大豆レシチンが特に好ましい。蛋白質としては、乳蛋白質、植物性蛋白質、動物性蛋白質が挙げられる。このうち、乳蛋白質、その分画物が特に好ましい。
【0011】当該脂質−蛋白質複合体(B)は、例えば脂質、蛋白質及びその他の成分を水に分散させ、機械的手段及び/又は超音波処理して得られる乳化物を脱水乾燥して得ることができる。
【0012】(B)脂質−蛋白質複合体は、本発明乳化シロップ剤中に0.5〜20重量%含有する必要がある。0.5重量%未満では、これを得られるバタークリームの風味が向上せず、また保存安定性が十分でないだけでなく、耐熱性も低下する。一方、20重量%を超えると、食感が悪くなり安定性が低下による分離現象が生じるなどの点で好ましくない。(B)脂質−蛋白質複合体の好ましい含有量は0.5〜10重量%であり、更に好ましくは1〜5重量%である。
【0013】本発明の乳化シロップ剤には、更に蛋白質、乳化剤及び油脂から選ばれる成分を含有させるのが、バタークリームの乳化安定性、風味、食感等を向上させる点で好ましい。ここで蛋白質としては、乳蛋白質、植物性蛋白質、動物性蛋白質、より具体的には、カゼイン、ホエー蛋白、脱脂粉乳、全脂粉乳、乳性蛋白及び大豆蛋白、更に蛋白質を含む原料として、牛乳、生乳、加糖煉乳、無糖煉乳等が挙げられる。当該蛋白質は風味、食感、乳化安定性の点から、本発明乳化シロップ剤中に1〜5重量%、更に1〜4重量%含有するのが好ましい。
【0014】乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リン脂質、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の食品用に使用される乳化剤であれば特に制限されない。これらの乳化剤のうち、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数12〜24のもの、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸が好ましい。なお、オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸が含まれても良い。これらの乳化剤は、本発明乳化シロップ剤中に乳化安定性の点から0.1〜5重量%、更に0.1〜2重量%含有するのが好ましい。
【0015】油脂としては、ナタネ油、大豆油、コーン油、綿実油、パーム油、ヤシ油、牛脂、ラード、魚油等いずれも使用でき、またこれらの水添物、エステル交換物であっても良く、また加工油脂であってもよい。当該油脂は、本発明乳化シロップ剤中に0〜30重量%、特に5〜30重量%含有するのが好ましい。
【0016】更に、本発明の乳化シロップ剤中には、前記成分以外に水、グリセリンなどのポリオール類、グリシン製剤などの静菌剤、食用色素、フレーバー類、ガムを中心とする増粘剤、リン酸塩などのpH調整剤を含有させることができる。ここで水の含有量は20〜70重量%、特に20〜50重量%であるのが好ましい。
【0017】本発明の乳化シロップ剤は、例えば前記成分を混合し、万能攪拌機、ニーダー、高速回転強せん断型攪拌分散機、コロイドミル、ホモジナイザー、連続式乳化分散機等のミキサーを用いて乳化し、必要により冷却することにより製造することができる。得られたシロップ剤は水中油型乳化系を形成しており、その油滴の平均粒径は通常0.02〜10.00μm、好ましくは0.02〜3.00μmであるのが、乳化安定性の点で好ましい。
【0018】かくして得られた乳化シロップ剤を用いてバタークリームを製造するには、バター、マーガリン又はショートニングに乳化シロップ剤を混合すればよい。ここで乳化シロップ剤はバター、マーガリン又はショートニング100重量部に対し、50〜400重量部、特に50〜300重量部用いるのが好ましい。またバター、マーガリン又はショートニングは、乳化シロップ剤添加前にホバートミキサー等のミキサーを用いて比重0.4〜0.45g/mLになるまでホイップし、これに乳化シロップ剤を添加し比重が0.6〜0.8g/mL(目標0.7g/mL)になるようにホイップするのが好ましい。また、バター、マーガリン又はショートニングと乳化シロップを同時に添加し、ホバートミキサー等のミキサーを用いて、比重0.6〜0.88g/mL(目標0.7g/mL)になるようにホイップしても良い。さらには、バター、マーガリン又はショートニングを、ホバートミキサー等のミキサーを用いて、比重0.4〜0.5g/mLになるまでホイップし、乳化シロップ剤も同様にホバートミキサー等のミキサーを用いて0.4〜0.8g/mLになるまでホイップして混合しても良い。
【0019】
【実施例】製造例1(脂質−蛋白質複合体の製造)
ホエー蛋白(三栄化学(株)製:商品名ミルプロ−H)200g、大豆レシチン(ツルレシチン(株)製:商品名SLPホワイト)80gを混練し、2Lの水に分散後ホモミキサーにて均質化した。得られた乳化物を0.1Torrで減圧脱水し、固形物中の水分を10.8重量%にした。これを粉砕し、20メッシュの篩で篩過して脂質−蛋白質複合体(複合体B)250gを得た。
【0020】実施例1表1記載の処方に従い、以下のようにして乳化シロップ剤を調製した。すなわち、油脂(ヤシ油(花王(株)製))を50℃に昇温しカゼイン、ホエー、レシチンを溶解、分散する(油相)。糖液(ハイマルトースシラップMC−45(日本食品化工(株)製))を40〜50℃に昇温し複合体B、乳化剤(リョートーシュガーエステル S−1170(三菱化学フーズ(株)製))、水を溶解、分散する(水相)。油相をホモミキサー(特殊機化工業(株)製 約5000rpm)で攪拌しながら水相を添加する。添加終了後(約5000rpm 約10分間)攪拌し、ホモゲナイザー((株)イズミフードマシナリー製 一次圧:150kgf/cm2、二次圧:0kgf/cm2)で乳化を行う。乳化後、氷冷しながら約30℃まで冷却する。冷却後冷蔵庫(約5℃)にて一晩エージングし、乳化シロップ剤とした。調製後、5℃での粘度、粒子径、乳化安定性を測定及び評価した。粘度はB型粘度計で、粒子径はSALD−2100(島津(株)製)により測定した。また乳化安定性は、5℃で1晩エージングした後の状態を目視で判定した。
【0021】
【表1】

【0022】実施例2マーガリン(花王(株)製:商品名クリームワンダー(B)型、融点約35℃、25℃のSFC約15%)100重量部をホバートミキサー(ホバート社製)で比重が0.4〜0.45g/mLになるまでホイップした。これに乳化シロップ剤を100重量部又は300重量部を徐々に添加したバタークリームを調製した(表2)。調製後風味、食感、安定性、25℃での耐熱性を下記の手段により評価した。
【0023】(1)風味調製したバタークリームの風味について、専門パネラー(5人)による官能評価で評価した。
(2)食感調製したバタークリームの食感について、専門パネラー(5人)による官能評価で評価した。
(3)安定性ホイップ直後の状態を観察し判定した。評価としては、ホイップからの水相の分離の度合いを評価した。
(4)耐熱性調製したバタークリームを25℃にて5日間放置しその形状変化と離水状態を観察した。
【0024】結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】表1及び2に示すように、糖濃度が30重量%未満の乳化シロップを用いて製造したバタークリームは、乳風味、食感は良かったものの、安定性、耐熱性が悪く、25℃2日目でカビが発生した。また脂質−蛋白質複合体を含まないか、0.5重量%未満の乳化シロップ剤を用いて製造したバタークリームは風味及び食感が良くなかった。また脂質−蛋白質複合体含量が20重量%を超える乳化シロップを用いて製造したバタークリームは食感が悪く、安定性が低下し、分離現象が認められた。
【0027】これに対し、糖濃度及び蛋白−蛋白質複合体濃度が本発明の範囲にある乳化シロップ剤を用いて製造したバタークリームは、風味、食感が良いだけでなく、安定性及び耐熱性にも優れていることがわかる。
【0028】
【発明の効果】本発明の乳化シロップ剤を用いれば、風味、食感が良好で、保存安定性及び耐熱性に優れたバタークリームが得られる。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋茅場町1丁目14番10号
【出願日】 平成13年12月20日(2001.12.20)
【代理人】 【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸 (外6名)
【公開番号】 特開2003−180267(P2003−180267A)
【公開日】 平成15年7月2日(2003.7.2)
【出願番号】 特願2001−387840(P2001−387840)