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【発明の名称】 加工蛸
【発明者】 【氏名】山本 格万

【要約】 【課題】歩留まりをより向上させることを目的とする。

【解決手段】塩もみした蛸を蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程を含む加工工程にかけることにより得られる加工蛸において、上記蒸し工程の温度を100℃を超えて400℃以下の範囲の温度とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 塩もみした蛸を蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程を含む加工工程にかけることにより得られる加工蛸において、上記蒸し工程の温度が100℃を超えて400℃以下の範囲の温度であることを特徴とする加工蛸。
【請求項2】 塩もみした蛸を蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程を含む加工工程にかけることにより得られる加工蛸において、上記の各加工工程にかけた直後の歩留まりが89〜94%であることを特徴とする加工蛸。
【請求項3】 塩もみした蛸を蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程を含む加工工程にかけることにより得られる加工蛸において、上記の各加工工程にかけてから3日間経過した後の歩留まりが82〜91%であることを特徴とする加工蛸。
【請求項4】 塩もみした蛸を蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程を含む加工工程にかけることにより得られる加工蛸において、蛸の塩もみの工程又は上記ボイル工程で発色剤を用いることにより発色した赤味が少なくとも5日間保持されることを特徴とする加工蛸。
【請求項5】 蛸の塩もみ工程、蒸し工程及び冷却工程を含む加工工程を経て得られる、表皮の損傷度が20%以下であり、茶系の色を有する加工蛸。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、塩もみした蛸を蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程を含む加工工程にかけることにより得られる加工蛸に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】一般的に、蒸し蛸又は蒸しボイル蛸は、生蛸を塩もみする塩もみ工程、塩もみされた蛸を水蒸気中で蒸す蒸し工程、蒸された蛸を熱水中に浸けるボイル工程、及びボイルした蛸を冷却する冷却工程の各加工工程によって蒸し蛸又は蒸しボイル蛸が製造される。この塩もみ工程、蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程のいずれの加工工程においても、工程にかけた後の蛸の重量は、工程にかける前の蛸の重量より小さくなる。この工程にかける前の蛸の重量を基準とした工程にかけた後の蛸の重量の割合、すなわち、歩留まりは、蒸し蛸又は蒸しボイル蛸の価格が重量基準で定められることから、大きい方が好ましい。
【0003】このため、塩もみ工程、ボイル工程、冷却工程等の各加工工程で各種の薬品を添加して、歩留まりを向上する方法が行われている。しかしながら、上記の薬品は、使用量が少ない方が好ましいため、必ずしも十分な歩留まり向上効果を得られない場合がある。
【0004】そこで、この発明は、歩留まりをより向上させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、塩もみした蛸を蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程を含む工程を含む加工工程にかけることにより得られる加工蛸において、上記蒸し工程の温度を100℃を超えて400℃以下の範囲の温度とすることにより、上記課題を解決したのである。
【0006】蒸し温度を100℃を超えた温度とするので、蒸し工程の時間を短縮することができる。このため、蒸し工程による歩留まりの低下を抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態を説明する。この発明にかかる加工蛸は、塩もみした蛸を蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程を含む加工工程にかけることにより得られる加工蛸である。
【0008】上記加工蛸を製造する加工工程は、生蛸を塩もみする塩もみ工程、塩もみした蛸を水蒸気で蒸す蒸し工程、蒸した蛸を熱水に浸けてボイルするボイル工程、及びボイルした蛸を冷却する冷却工程を含む。
【0009】上記蒸し工程の温度、すなわち蒸しに使用される水蒸気の温度は、100℃を超えて400℃以下の範囲の温度がよく、103℃以上300℃以下が好ましい。100℃以下では、蒸し時間が長くなり、蛸の肉汁が外部に出るため、歩留まりの低下を招く場合がある。一方、400℃を超えてもよいが、温度を上げすぎると蛸の表皮が固くなり、食感として好ましくない傾向があり、400℃以下で十分である。
【0010】上記の蒸し温度は、常法で得られる90〜98℃程度の水蒸気を加熱することにより得られる。このような蒸し工程を有する蒸し機としては、図1や図2に示す過熱器1、21を有する図3に示す蒸し機が例としてあげられる。
【0011】図1(a)(b)に示す過熱器1は、断面が矩形の筒部材2の一端を蒸気ボイラ3に接続し、筒部材2の外側に取付板4を介して電磁誘導加熱用コイル5を取り付けたもので、コイル5に接続した高周波交流電源(図示省略)のスイッチを入れて、筒部材2をコイル5で加熱することにより、筒部材2内に形成された流路を流れる蒸気を加熱して、筒部材2の他端の排出口2aから100℃を超えた水蒸気(以下、「過熱蒸気」と称する。)として排出する装置である。
【0012】上記筒部材2の内壁2bには、蒸気の流路内に張り出す邪魔板6が、流路に沿って一定の間隔で千鳥状に設けられている。これらの各邪魔板6は、筒部材2と同一の材料で形成されており、互いに隣接するもの同士が流路断面内で一定の面積だけラップするように配されている。
【0013】この過熱器1では、蒸気ボイラ3から供給された蒸気が、筒部材2の内壁2bからだけでなく邪魔板6からも熱を伝達されるうえ、蒸気の流れの方向が筒部材2内で邪魔板6によって何度も大きく変えられることにより、筒部材2および邪魔板6から蒸気への熱伝達が効率よく行われるようになっており、短い流路で効率よく必要な温度の過熱蒸気を得ることができる。
【0014】図2に示す過熱器21は、らせん状の螺旋管22の一端を蒸気ボイラ(図示せず)に接続し、螺旋管22の外側に電磁誘導加熱用コイル23をらせん状に取り付けたもので、コイル23に接続した高周波交流電源(図示省略)のスイッチを入れて、螺旋管22をコイル23で加熱することにより、螺旋管22内を流れる蒸気を加熱して、螺旋管22の他端の排出口22aから過熱蒸気として排出する装置である。
【0015】図3に示す蒸し機は、装置両端の回転体7に巻き掛けられ、塩もみされた蛸8を図中の矢印の方向に搬送する網状の無端ベルト9と、無端ベルト9の蛸搬送経路10のほとんどを囲む加熱室11とを備え、加熱室11内の蛸搬送経路10の上流側と下流側の2箇所で、それぞれ1台の過熱器1(又は21)から蒸気配管12を介して供給される過熱蒸気を蛸8に吹き付けるようにしたものである。各過熱器1(又は21)は、加熱室11の天井部の上面に取り付けられており、それぞれの入側を共通の1台の蒸気ボイラ3に接続することができる。
【0016】上記各蒸気配管12は、図3に示すように、加熱室11内で2本の支管12a、12bに分かれており、これらの各支管12a、12bが、蛸搬送経路10の上方と下方でそれぞれ搬送方向と直交する方向に延びて、その先端を閉じられている。そして、各支管12a、12bから分岐した枝管12cが、搬送方向に延びてその先端を閉じられており、これらの各枝管12cに複数のノズルが搬送方向に沿って取り付けられている。
【0017】すなわち、過熱器1(又は21)から蒸気配管12に供給された過熱蒸気は、蒸気配管12の支管12aまたは12bを通って枝管12cに流れ込み、枝管12cに取り付けられたノズルから蛸8に向けて吹き付けられるようになっている。蛸8は、搬送経路10の上方のノズルからは直接、搬送経路10下方のノズルからは無端ベルト9を通して過熱蒸気を吹き付けられるので、上下むらなく加熱される。
【0018】なお、各過熱器1(又は21)には一つの蒸気ボイラ3から蒸気が供給されるようになっているが、過熱器1(又は21)ごとに過熱蒸気の温度を調節することができるので、蛸搬送経路10の上流と下流で、必要に応じて温度の異なる過熱蒸気を蛸8に吹き付けることもできる。
【0019】上記蒸し工程にかける時間は、蛸の大きさにもよるが、1〜15分がよく、2〜10分が好ましい。1分より短いと、蒸しが不十分となる場合がある。一方、15分より長くてもよいが、効率的な面からみると15分で十分である。
【0020】上記の塩もみ工程をした後で、かつ蒸し工程にかける前の蛸の重量を基準とした、蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程にかけた直後の加工蛸の重量の割合、すなわち、歩留まりは、89〜94%がよく、90〜93%が好ましい。89%を下回ると、得られる加工蛸の重量損失が大きくなる。特に80%程度まで下がると、蒸し工程の温度が90〜98℃の一般の蒸し条件下による歩留まりと差がなくなる。一方、94%を超える歩留まりを得ることは好ましいことであるが、困難な場合がある。
【0021】ところで、上記の各加工工程をかけた後の加工蛸の歩留まりは、時間が経つにつれ、蛸の肉汁の流出等により低下する。しかし、上記の蒸し温度の範囲で蒸し工程を行った加工蛸は外表面部の身のしまりが良くなり、蛸の肉汁の流出等が少なくなるため、歩留まりの低下は抑制される。上記の塩もみした後で、かつ蒸す前の蛸の重量を基準とした、上記各加工工程を行ってから3日間経過した後の加工蛸の歩留まりは、82〜91%がよく、83〜90%が好ましい。82%より少ないと、得られる加工蛸の重量損失が大きくなる。一方、91%より大きい方が好ましいが困難な場合がある。
【0022】上記塩もみ工程を含む上記加工蛸の加工工程、すなわち、塩もみ工程、蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程のうち、塩もみ工程又はボイル工程で発色剤を用いることにより、得られる加工蛸に赤味の発色を生じさせることができる。また、必要に応じて、発色した赤味を定着させるため、冷却工程に発色定着剤を用いることができる。この発色剤や発色定着剤を用いることにより、加工蛸がきれいな赤味に発色し、その赤味が少なくとも5日間、好ましくは少なくとも7日間保持される。これは、蒸し条件が上記の通り高い温度でかつ短時間で行われるので、蛸の身のしまりが良くなるため、発色成分が空気中の酸素と接触しにくくなり、発色成分が酸化されにくくなるためと考えられる。なお、赤味が保持される期間は、長ければ長いほどよいが、加工蛸の品質保証期間まで保持されれば十分である。
【0023】上記発色剤の例としては、ミョウバン、エリソルビン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等があげられる。また、発色定着剤の例としては、L−アスコルビン酸等があげられる。
【0024】なお、加工蛸の加工工程には、上記の蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程以外に、必要に応じて、蛸の表面を焼く焼き工程を加えることができる。この焼き工程は、上記の蒸し工程、ボイル工程及び冷却工程のいずれかの加工工程の後に配することができる。
【0025】ところで、上記の塩もみ工程、蒸し工程、ボイル工程、及び冷却工程を含む蛸の加工工程において、上記蒸し工程を従来の100℃未満の温度で行い、かつ、上記発色剤を用いない場合、得られる加工蛸の表皮は、その大半が損傷して剥けた状態となる。この場合、白い蛸の状態となって、商品価値が大幅に低下する。
【0026】これに対し、上記蒸し工程を上記したこの発明における条件、すなわち、100℃を超えて400℃以下の範囲の温度で蒸し工程を行うと、上記発色剤を用いなくても、表皮の損傷を低く抑えた加工蛸を得ることができる。これは、蒸し工程で使用する水蒸気が100℃を超えているため、乾燥した水蒸気(すなわち、液状の水分を含まないH2Oガス)が蛸に触れることとなる。これにより、いわゆる水ぶくれみたいな症状が生じにくくなり、表皮が損傷して剥けにくくなるためと考えられる。
【0027】この表皮の損傷度(すなわち、表皮の剥けた程度)は、全体の面積の20%以下がよく、10%以下がよく、5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。20%を超えると、商品価値が大幅に低下する。この損傷度は低ければ低いほど商品価値は向上する。このため、損傷度0%が最もよい。
【0028】ただ、この場合、発色剤を使用しないので、得られる加工蛸は、赤くならず、茶色、薄茶色、濃い茶色等の茶系の色を有する。この茶系の色を有する加工蛸は、赤くないので、あまり好ましくないと判断されるかもしれないが、発色剤という化学薬品を使用しない点から判断すると、現代における食品の脱化学物質志向の人にはあった食品といえる。
【0029】なお、茶系の色を有する加工蛸は、上記の通り、塩もみ工程、上記温度範囲での蒸し工程、ボイル工程、及び冷却工程を含む蛸の加工工程を経て得られるが、このうち、ボイル工程は必ずしも必要でなく、蛸の塩もみ工程、上記温度範囲での蒸し工程及び冷却工程を含む加工工程を経ることによっても得ることができる。これは、発色剤を用いる場合、ボイル工程は、発色をきれいに生じさせる目的を有するが、発色剤を用いない場合は、この目的を達成する必要がないからである。
【0030】
【実施例】以下、この発明を実施例を用いてより詳細に説明する。
(実施例1〜9、比較例1)凍結した蛸を解凍し、水洗いをした。次いで、発色剤としてFA−11((株)アルス製、エリソルビン酸ナトリウム及びピロ亜硫酸ナトリウム含有)を0.3重量%添加した塩もみ用食塩水(8%食塩含有)を用いて60分間塩もみした。次いで、図1に示す過熱器及び図3に示す蒸し機を用い、表1に示す蒸し温度の条件下で蛸を蒸した。その後、90〜92℃の熱水に1.5分間浸してボイルした後、冷却水に浸して冷却し、加工蛸を製造した。このとき、熱水には、発色剤としてAL−O((株)アルス製、ピロ亜硫酸ナトリウム及び炭酸ナトリウム含有)を0.3重量%加え、冷却水には、発色定着剤としてCP−32((株)アルス製、L−アスコルビン酸含有)を0.3重量%加えた。得られた加工蛸の蒸し状態を下記の基準で判断した。また、得られた加工蛸の塩もみ後を基準とした歩留まりを冷却後及び冷却して3日後に測定・算出した。さらに、得られた加工蛸の色合いを、冷却後、冷却して3日後、5日後及び7日後のそれぞれにおいて目視で判断した。その結果を表1に示す。
【0031】・蒸し状態の判断○:よく蒸されている△:少し蒸しが足らないように感じられるが、食するのには問題がない×:蒸しが不十分である【0032】
【表1】

【0033】(実施例10〜14、比較例2)凍結した蛸を解凍し、水洗いをした。次いで、塩もみ用食塩水(8%食塩含有)を用いて60分間塩もみした。次に、図2に示す過熱器及び図3に示す蒸し機を用い、表2に示す蒸し温度の条件下で蛸を蒸した。そして、冷却水に浸して冷却し、加工蛸を製造した。なお、塩もみ用食塩水には、発色剤を添加せず、冷却水には、発色定着剤を添加しなかった。得られた加工蛸の蒸し状態を上記の基準で判断した。また、得られた加工蛸の塩もみ後を基準とした歩留まりを冷却後及び冷却して3日後に測定・算出した。さらに、得られた加工蛸の色合いを、冷却後、及び冷却して3日後のそれぞれにおいて目視で判断した。さらに、下記の方法で加工後の表皮の損傷度を測定した。その結果を表2に示す。
【0034】加工蛸の損傷度は、表皮全体の面積及び表皮の剥がれの面積を測定して算出した。具体的には、加工蛸全ての表面部(肉部も含めて)を切り開き、紙にその形状を写し取り、次いで切り取り、その質量を測定した。そして、使用した紙の一定面積当たりの質量を別途測定しておき、これらの値から、加工蛸全体の面積を算出した。また、加工蛸のうち表皮が剥がれた部分についても、紙に写し取り、同様にしてこの部分の面積を算出した。それらの値から、損傷度(%)を算出した。
【0035】
【表2】

【0036】
【発明の効果】この発明によれば、蒸し温度を100℃を超えた温度とするので、蒸し工程の時間を短縮することができ、これにより、蒸し工程による歩留まりの低下を抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0037】また、各工程によって発色した赤味を長期間にわたって保持することができる。
【0038】さらに、各工程をかけて長時間たっても、歩留まりの低下を抑制することができる。
【0039】さらにまた、蒸し温度を100℃を超えた温度とするので、発色剤を使用しなくても、表皮が剥がれて損傷するのを防止でき、茶系の色を有する加工蛸を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】591043787
【氏名又は名称】株式会社アルス
【出願日】 平成14年9月12日(2002.9.12)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二 (外2名)
【公開番号】 特開2003−164269(P2003−164269A)
【公開日】 平成15年6月10日(2003.6.10)
【出願番号】 特願2002−266863(P2002−266863)