| 【発明の名称】 |
麦茶残渣サイレージおよびその調製貯蔵方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】蔡 義民
【氏名】藤田 泰仁
【氏名】西田 武弘
【氏名】増田 信義
【氏名】佐藤 貴志
【氏名】佐藤 崇紀
|
| 【要約】 |
【課題】食品産業廃棄物である麦茶残渣の畜産飼料資源としての大量調製貯蔵法を提供し有効利用を促進する。
【解決手段】乳酸菌を接種し、さらに植物繊維分解酵素又は糖質を添加した麦茶残渣を密封できるサイレージ貯蔵容器に詰め込むことにより麦茶残渣サイレージを調製し長期間貯蔵する。麦茶残渣のサイレージは、家畜・家禽飼料として、又、一般飼料の栄養補強・調整あるいは健康促進機能付加用の配合剤として利用される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 植物繊維分解酵素又は糖質を添加し乳酸菌を接種した麦茶残渣をサイレージ発酵することを特徴とする麦茶残渣サイレージの調製貯蔵方法。 【請求項2】 前記麦茶残渣は、水分含量が50〜80重量%であり、植物繊維分解酵素を麦茶残渣に対して0.001〜0.5重量%の割合で添加することを特徴とする請求項1記載の麦茶残渣サイレージの調製貯蔵方法。 【請求項3】 前記麦茶残渣は、水分含量が50〜80重量%であり、前記糖質は単少糖類であって、麦茶残渣に対して0.5〜2.0重量%の割合で添加することを特徴とする請求項1記載の麦茶残渣サイレージの調製貯蔵方法。 【請求項4】 前記乳酸菌は、高機能サイレージ発酵菌であり、Lactobacillus plantarum及びPediococcus acidilacticiからなる群より選択され、前記麦茶残渣1g当りの乳酸菌の菌数が103〜105となるように麦茶残渣に接種されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の麦茶残渣サイレージの調製貯蔵方法。 【請求項5】 前記麦茶残渣を密封可能な容器に高密度に詰め込むことによりサイレージ発酵させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の麦茶残渣サイレージの調製貯蔵方法。 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の調製貯蔵方法によって調製される麦茶残渣サイレージ。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、飲料製造において大量に発生する麦茶の抽出残渣を簡便且つ安価に家畜用飼料として有効利用することを可能とする麦茶残渣サイレージおよびその調製貯蔵方法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、消費者の健康飲料志向の高まりにより茶系飲料の需要が伸び、飲料製造工場における飲料抽出残渣の排出量は増加の一途をたどっている。茶殻等の飲料抽出残渣は、放置すると腐敗による悪臭や、蝿、蛆等の害虫の発生など、環境面や衛生面に悪影響を及ぼす要因となる。従って、飲料抽出残渣は、排出後に早急に処理する必要があり、一部がコンポスト原料として農業資材に用いられているが、現状においては、そのほとんどが産業廃棄物として焼却または埋め立て処理されており、有用成分が残存する抽出残渣の有効利用は殆どなされていない。 【0003】飲料抽出残渣には、麦茶や玄米茶などの穀物茶残渣も含まれており、特に夏場の麦茶の取り扱い量が多い。飲料製造工場から排出される麦茶残渣は水分を含んだままの状態では他の茶系飲料抽出残渣に比べて腐敗が起こり易い。これは、麦茶残渣に多く含まれるタンパク質、澱粉や粗脂肪等が急速に腐敗することによる。そのため、有効利用するためには、残渣排出後に迅速に乾燥や炭化等の加熱処理を行うことにより腐敗を防ぐことが必要である。しかし、麦茶残渣には、以下のような問題がある。 【0004】まず、麦茶残渣を炭化させて土壌改良材にする場合、他の飲料残渣とは異なり自燃して炭化炉内の温度を急激に上昇させるため、炭化炉を損傷させ易い。 【0005】また、麦茶残渣を攪拌型の乾燥機を用いて乾燥させる場合、他の飲料残渣とは異なり粘性を持っているため、乾燥機内壁に麦茶残渣が付着して熱効率が悪くなる。その結果、乾燥の燃費が高価になり、麦茶乾燥物には未乾燥の麦茶残渣や炉壁に付着することにより生じる塊が含まれる。バンド型乾燥機を用いる場合や天日乾燥の場合のような非攪拌型乾燥では、長時間の乾燥時間を有するため効率が悪い。また、麦茶残渣の乾燥物は硬化するため、飼料に使用することが困難という欠点がある。 【0006】このように、麦茶残渣を熱処理する場合には多くの問題が存在するので、熱処理をせずに、麦茶が有するタンパク質や澱粉等の有用成分を利用した家畜飼料としての開発が必要である。 【0007】家畜飼料の保存を可能とする方法としては、従来から、牧草等の飼料をサイレージ貯蔵容器であるサイロ内で発酵させるサイレージ化がある。これは、サイロ内での発酵によって、有害菌の繁殖による飼料の腐敗を抑制し、保存性を高めるものである。このような発酵を利用した方法による発酵飼料の製造について様々な提案がなされている。例えば、特開昭50−68865号公報では、雑穀類に加水し、酵素を添加して放置した後、さらに培養菌を加え、通風状態で発酵させ、糖蜜を加えて再発酵し、発酵飼料を得ている。また、特開平9−51762号公報では、食品残渣である豆腐粕に糟糠類・穀類・糖類を加えて水分を65〜80重量%に調整した後、マセロチーム酵素を加えて発酵するサイレージの製造方法が提案されている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】このように、上述したような資材を原料として改良を各々施した発酵飼料の調製が提案されているが、発酵は微生物の活動によるものであるから、発酵条件を微生物の生育に適正なものとすることが極めて重要であり、発酵原料の状態が異なればそれに適した発酵条件の設定が必要である。また、原料によって得られるサイレージの性質や家畜飼料としての有用性も異なり、有効な用途であるか否かは実際に得られるサイレージの品質による。 【0009】本発明は、麦茶残渣を家畜飼料として簡易に流通できる調製貯蔵技術を開発し、食品産業廃棄物である麦茶残渣の飼料資源としての用途を確立することにより、未利用資源の有効利用の促進を目指すものである。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の麦茶残渣サイレージの調製貯蔵方法は、植物繊維分解酵素又は糖質を添加し乳酸菌を接種した麦茶残渣をサイレージ発酵することを要旨とする。 【0011】調製貯蔵方法の一実施形態として、上記麦茶残渣は、水分含量が50〜80重量%であり、植物繊維分解酵素を麦茶残渣に対して0.001〜0.5重量%の割合で添加することができる。 【0012】また、他の実施形態として、上記麦茶残渣は水分含量が50〜80重量%であり、前記糖質は単少糖類であって前記麦茶残渣に対して0.5〜2.0重量%の割合で添加することができる。 【0013】更に、前記乳酸菌は、Lactobacillus plantarum及びPediococcus acidilacticiからなる群より選択され、上記麦茶残渣1g当りの乳酸菌の菌数が103〜105となるように乳酸菌を前記麦茶残渣に接種することができる。 【0014】また、上記麦茶残渣を密封可能な容器に高密度に詰め込むことによりサイレージ発酵することができる。 【0015】本発明の麦茶残渣サイレージは、畜産・酪農用家畜・家禽飼料として用いられ、又、一般飼料の栄養補強・調整あるいは健康促進機能付加用の配合剤として有効に利用される。 【0016】 【発明の実施の形態】サイレージの調製は、本来、乳酸菌の発酵で生成する乳酸による飼料のpH低下によって腐敗を引き起こす有害菌の繁殖を抑制するものである。従って、麦茶残渣を飼料として長期保存する最も単純な方法は、麦茶残渣に酸を添加してpHを低下させることである。しかし、乳酸以外の有機酸、例えば酢酸などには家畜の忌避作用が強いものが多く、家畜飼料においては好ましくない。一方、乳酸は家畜の嗜好に適しているが、比較的高価なために残渣の処理に用いるには負担が大きい。このような状況から、乳酸菌を活用した乳酸発酵によって麦茶残渣の長期保存を可能にすることは麦茶残渣の利用方法として最も有効な方法である。 【0017】麦茶残渣には、乾燥質量比で15%程度の粗タンパク質や3%程度の粗脂肪を含有し反芻家畜の飼料として有用であるが、飲料工場で抽出後に室温まで冷却して排出された麦茶残渣に存在する微生物を調べると、残渣1g(含水重量)当りに検出される好気性細菌の菌数が107レベル、糸状菌の菌数が103レベルと高く、野生株の乳酸菌は殆ど検出されない。つまり、抗菌性成分を含有する緑茶残渣に比べると麦茶残渣は腐敗菌の汚染を受け易い。従って、麦茶残渣のサイレージ発酵においては、乳酸菌を他の細菌よりも優位に活動させるために麦茶残渣に積極的に乳酸菌を接種することが重要となる。また、麦茶残渣には、グルコース、シュークロース及びフルクトースの含量は極めて低いため、飼料作物のような自然発酵によるサイレージ化は難しく、他の微生物が繁殖すれば、僅かに含まれる糖質も乳酸発酵に利用されなくなる。 【0018】そこで、本願では、麦茶残渣に乳酸菌を積極的に接種し、植物繊維分解酵素を添加してサイレージ発酵できる状態におくことによって乳酸発酵を進行させることを提案する。植物繊維の分解によって生じる糖質等が乳酸発酵促進成分として乳酸菌に利用可能となる。 【0019】また、乳酸菌を接種した麦茶残渣に糖質を添加してサイレージ発酵ができる状態におくことによっても乳酸発酵を進行する。この場合、添加された糖質を乳酸菌が消費して乳酸発酵が促進される。 【0020】このようにして進行する乳酸発酵は、麦茶残渣のpHを低下させ、他の菌に対して優位性を得るだけでなく、麦茶残渣に残存するタンパク質、澱粉等の有用成分を保持する。 【0021】麦茶残渣の乳酸発酵によってpHが低下すると有害菌の活動が抑制されるので、麦茶残渣サイレージは長期保存が可能となる。但し、乳酸発酵が進行しなくても乳酸菌以外の菌の代謝生成物によってpHが低下することはある。このような場合、酢酸、酪酸、プロピオン酸などが生成し、これらの量が多いと品質が低下し、家畜の嗜好に適さない。従って、pHのみに基づいて乳酸発酵の進行状況を断定することはできないが、乳酸発酵が進行すると、麦茶残渣のpHは、概して4.3以下、良好な場合には3.85以下となる。乳酸の量は、対乾燥前(含水)重量比で、0.4%以上、良好な場合には1.0%以上となり、酪酸やプロピオン酸はほぼ検出されない。また、麦茶の成分であるタンパク質や澱粉の総含量は一般的な麦茶原料である大麦の80%前後が残存し、その利用価値は極めて高い。 【0022】以下、サイレージ調製の詳細について説明する。 【0023】本発明においてサイレージ原料として用いる麦茶残渣は、水、熱湯等の抽出溶媒を用いて麦茶から茶の成分を抽出して飲料茶や茶成分加工製品を製造した後に残る抽出残渣である。抽出に用いる麦茶は、麦、はと麦等から製造される麦茶を指し、麦茶製造における加工方法及び加工程度などによって限定されるものではない。 【0024】各種穀物茶類の中で、麦茶及びその残渣は、カルシウム、鉄、カリウム等のミネラルやビタミンB2を含有し、サイレージ調製した飼料を家畜に与えた時に、通常の飼料においては不足する金属などを安定して供給できるという点で好ましい。 【0025】麦茶に対して行われる抽出方法は常法として用いられている各種方法が許容される。但し、麦茶残渣の乳酸発酵を良好に進行させるためには、予め放冷等により冷却して40℃以下まで温度を下げておく。エタノールなど水以外の溶媒による抽出の場合は、熱水洗浄などにより残存非水溶媒を無くしておくことが望ましい。 【0026】また、麦茶残渣のサイレージ発酵は、水分含量が50〜80重量%において進行し易く、特に60〜75重量%において好適である。水もしくは熱、温湯で茶を抽出すると、抽出直後の麦茶残渣の含水量は60〜80重量%であり、スクリュープレス、フィルタープレス、遠心脱水機等を利用した脱水により麦茶残渣の含水量を50〜75重量%まで減少させておくこともできる。あるいは、乾草、稲ワラ、ビートパルプ、ケイントップ、バカス、ウエハー、コーンコブ、圧片大麦等の乾燥飼料を加えることによって、サイレージ調製時の水分含量が50〜80重量%、好ましくは60〜75重量%になるように水分を調整してもよい。水分含量が0〜20重量%の乾燥させた麦茶残渣を利用する場合は、水又は水分含量の高い麦茶残渣を添加するか、水分含量の高いサイレージ調製可能な飼料原料(緑茶残渣等)を添加することなどによって水分含量を調整することもできる。 【0027】上述のように適宜水分調整を行った麦茶残渣は、嫌気状態つまり低酸素状態で乳酸発酵させる。乳酸発酵は、自然環境中に存在する野生乳酸菌によって行うことも可能であるが、確実に乳酸発酵を行うために乳酸菌の接種を行う。接種する菌は、サイレージ調製に用いられている一般的に入手可能な菌やサイレージ添加用に市販されている菌剤等を用いることができる。例えば、Lactobacillus plantarum、Pediococcus acidilacticiなどに属するものが挙げられる。麦茶残渣は繊維質を豊富に含むので、セルラーゼ等の植物繊維分解酵素を添加して糖を生成することによって乳酸菌の生育環境が整えられ、麦茶残渣の発酵がより進行する。あるいは、植物繊維分解酵素に代えて糖を添加することもできる。好気性菌の繁殖による腐敗を防止する上でサイレージ発酵状態であることが重要である。また、植物繊維分解酵素又は糖質を添加する代わりに、植物繊維分解酵素を生成する微生物を接種することも可能であるが、乳酸菌の活動を効率化する点では、植物繊維分解酵素又は糖質を添加する方が適している。 【0028】このように、水分調整を行った麦茶残渣に植物繊維分解酵素又は糖質の添加と乳酸菌の接種とを行ってサイレージ発酵状態に維持するのが最も効率的で確実な形態となる。麦茶残渣への乳酸菌の接種方法は、液状の乳酸菌剤を噴霧器等を用いて麦茶残渣全体に噴霧する方法や、粉状の乳酸菌剤を麦茶残渣全体に散布する方法など、状況に応じて適宜選択することができ、接種と共に麦茶残渣を攪拌して均一に混合する。植物繊維分解酵素又は糖質の添加と乳酸菌の接種とは同時に行っても個別に行っても良いが、他菌の汚染及び繁殖を防止する点で同時に添加することが好ましく、例えば、植物繊維分解酵素又は糖質と乳酸菌とを含有する溶液を調製して麦茶残渣に噴霧するといった実施形態を採ることができる。 【0029】接種する乳酸菌は、麦茶残渣(含水重量)1g当りの菌数が103〜105レベル、好ましくは約105レベルとなるように調整して麦茶残渣に混合する。その際、乳酸菌数が少ないと乳酸菌発酵の効果が弱く、添加量が過剰であるとコスト高になる。 【0030】麦茶残渣に添加する糖質は、乳酸菌が生育するための可溶性炭水化物であり、グルコース、果糖、庶糖、麦芽糖、乳糖等の単少糖類が用いられ、特にグルコースが好ましい。このような糖質を含むビートパルプや糖蜜などの含糖材料を用いて、麦茶残渣の水分調整を兼ねて添加してもよい。 【0031】植物繊維分解酵素は、麦茶残渣のセルロースを分解して糖質を供給できる酵素であればその種類はいずれでもよい。使用可能な酵素剤として、例えば、市販のアクレモニウムセルラーゼ等のようなものが挙げられる。 【0032】添加する植物繊維分解酵素の濃度は、酵素の分解能力、麦茶の種類、品質、麦茶残渣の含水量、乳酸菌の種類によって適宜調整する。標準的な分解能力の酵素の場合、麦茶残渣(含水重量)に対して、好ましくは0.001〜0.5重量%、より好ましくは0.01〜0.2重量%程度となるような割合に調整する。その際、酵素量が少ない場合は糖質供給の効果が弱く、逆に高い場合はコスト高になる。 【0033】糖質は、麦茶残渣(含水重量)に対して、0.5〜2.0重量%の範囲で添加するとよい。糖蜜、ビートパルプ等を加える場合、その純糖質含有量を考慮して、相当量を適宜添加すればよい。その際、糖質の添加量が少ないと乳酸菌による発酵が不十分となり、過剰であるとコスト高になる。 【0034】植物繊維分解酵素又は糖質を添加し乳酸菌を接種した麦茶残渣は、嫌気状態で発酵させる。これを実施する一形態として、密封可能な容器に麦茶残渣を高密度に詰め込むものがある。密封可能な容器としては、例えば、タワーサイロ、鉄板枠サイロ、地下角形サイロ、バンカーサイロなどの一般的にサイレージに用いられるサイロ施設、樹脂製ドラム缶やカップサイロなどの流通可能な小型の密封可能な容器などが挙げられ、サイレージを密封状態で保存可能なものであればよい。発酵を行う温度は、常温〜40℃程度の範囲であれば良い。乳酸菌の多くは、最適温度が30〜40℃近辺にあり、これ以下の温度でも概ね良好に発酵を行う。サイレージ飼料が完成するまでの発酵期間は、常温で1〜2カ月程度であり、温度が高ければ発酵期間は短くなる。得られたサイレージは、嫌気状態で未開封であれば、長年にわたって保存可能である。サイレージ発酵は、雰囲気を窒素や炭酸ガスなどの酸素を含まないガスで置換することによっても可能である。 【0035】得られた麦茶残渣サイレージは、一般的な飼料作物サイレージと同様に、乳牛、肉牛、ヤギ、緬羊等の反芻家畜類、食用豚や、鶏、うずら等の食肉用あるいは産卵用鳥類等の各種家畜・家禽の飼料として用いられる。麦茶残渣の乳酸発酵によって得られるサイレージは、乳酸を豊富に含み、酪酸やプロピオン酸をほとんど含まず、アンモニア態窒素の含有量も極めて低いので、非常に良好な飼料である。加えて、酢酸の含有量が低く抑えられるので、家畜の摂取忌避を生じ難く、飼料として優れている。更に、プロバイオティック乳酸菌の添加により、家畜の病原菌、病害虫に対する抗菌・耐性作用や下痢抑制などの健康増進、腸内フローラの改善や排便消臭などによる環境改善にも有効である。 【0036】また、麦茶残渣のサイレージは栄養価が高く、一般的な飼料作物・牧草サイレージと比較し澱粉質の含量が高く、リノール酸やビタミンB2、ナイアシン等を含むので、そのまま飼料として用いても有効であるだけでなく、栄養補助を目的として他の飼料に添加して用いるのにも適している。例えば、乳・肉牛用飼料のエネルギーを適正化する上で極めて有用である。又、その他の生理活性物質やカルシウム、鉄、カリウム等のミネラルも残存する。従って、飼料として与えた場合に、家畜の疲労及びストレスの軽減、胃粘膜の保護、血流促進等の効果が得られる。更に、麦茶残渣のサイレージには身体の熱を冷ます作用を有する成分も含まれており、この作用と血流促進効果とにより、夏期における乳牛の搾乳量の減少が抑制され、生乳生産の安定化に極めて有用である。 【0037】以上の説明から理解されるように、本発明に係る麦茶残渣サイレージの調製貯蔵方法は、他の穀物茶残渣をサイレージ化することにも利用可能であり、各穀物茶残渣の含有成分を活かしたサイレージを得ることができる。 【0038】 【実施例】以下、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。 【0039】(実施例1) 糖による効果乳酸菌として飼料作物から分離・選抜された優良菌株ラクトバチルス・プランタラムFG1(Lactobacillus plantarum FG1、表1中FG1)又は市販乳酸菌剤SN1(商品名:SnowLact L、雪印種苗(株)社製、表1中SN1)を用い、糖として市販のグルコースを用いて、糖と乳酸菌添加溶液を調製した。糖と乳酸菌添加溶液は乳酸菌:糖が105菌数:10mgの割合となるように配合量を調整した。 【0040】飲料工場より排出された麦茶残渣(試料番号1〜3、大麦を250〜300℃で焙煎後、約90℃の熱水で30分抽出した残渣、水分含量:約65重量%、pH5.0)を放冷により温度を40℃以下に低下させ、放冷後の麦茶残渣100gを取り出して、麦茶残渣1g当り乳酸菌数が105レベルで接種されるように上記で調製した糖と乳酸菌添加溶液を噴霧器で均一に添加し、混合した。これを寸法180×260mmのポリエチレン、ナイロン及びビニリデンの積層フィルム製袋(飛竜KNタイプ、旭化成社製)内に詰込んで、真空包装機(BH−950、松下電気社製)を用いて脱気・密封し、常温で貯蔵した。 【0041】60日間の貯蔵後、袋サイロを開封し、通風乾燥前後の重量測定法、内容物のHPLC分析法および水蒸気蒸留法などにより、乾物率[重量%](=(乾燥後重量/乾燥前重量)×100)、有機酸含量[%FM、対乾燥前重量%]及びアンモニア態窒素含量[%DM、対乾燥後重量%]を測定し麦茶残渣サイレージの品質を分析した。この結果を表1に示す。 【0042】 【表1】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−試料 添加物 麦茶残渣サイレージ番号 乾物率 pH 有機酸 [%FM] NH3 [%] 乳酸 酢酸 酪酸 プロピ 態窒素 オン酸 [%DM]−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−1 − 38.04 4.21 0.32 0.08 N.D. N.D. 0.062 FG1 38.21 3.84 1.31 0.15 N.D. N.D. 0.07 グルコース3 SN1 37.65 3.82 1.32 0.18 N.D. N.D. 0.06 グルコース−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−上記結果から明らかなように、麦茶残渣のみの場合(試料番号1)には、わずかに乳酸の検出及びpHの変化が認められるが、これは、野生株の乳酸菌による変化と考えられる。 【0043】これに対し、糖と乳酸菌とを添加した場合(試料番号2、3)には、pHが低下し、検出される乳酸の値が高い。また、酢酸やプロピオン酸を含まず、アンモニア態窒素の含有量も増加しないばかりか、極めて低い。従って、麦茶残渣から高品質のサイレージが得られる。 【0044】(実施例2) 乳酸菌及び植物繊維分解酵素の併用による効果乳酸菌として飼料作物から分離・選抜された優良菌株ラクトバチルス・プランタラムFG1(Lactobacillus plantarum FG1、表2中FG1)、ペディオコッカス・アシディラクティシCA25(Pediococcus acidilactici CA25、表2中CA25)を用い、セルラーゼとしてアクレモニウム(Acremonium)属菌由来のアクレモニウムセルラーゼ(表2中AUS)を用いて、乳酸菌溶液及びセルラーゼ添加乳酸菌溶液を調製した。乳酸菌溶液は、菌数が麦茶残渣1g当り105レベルになるように乳酸菌培養液を用いて調製した。セルラーゼ添加乳酸菌溶液は、1ml当りのセルラーゼが0.02gとなるように乳酸菌溶液にセルラーゼを添加して調製した。 【0045】飲料工場より排出された麦茶残渣(試料番号4〜15、大麦を250〜300℃で焙煎後、約90℃の熱水で30分抽出した残渣、水分含量:約70重量%、pH5.0)を放冷により温度を40℃以下に低下させ、試料10〜15については脱水処理(水分含量:約66重量%)を施した後、表2に示すように、試料5〜9及び11〜15について、麦茶残渣1kg当り1mlの乳酸菌溶液又はセルラーゼ添加乳酸菌溶液あるいは0.02gのセルラーゼを噴霧器で均一に添加して混合した。各試料の麦茶残渣100kgを、各々、容積100Lのポリドラムサイロ(株式会社前田製作所(千葉県市原市)製)に詰め込み、密封して屋外(平均温度:19.35℃)に放置した。 【0046】60日間の放置後、ポリドラムサイロを開封し、発酵品質を分析した。この結果を表2に示す。 【0047】 【表2】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−試料 添加物 麦茶残渣サイレージ番号 乾物率 pH 有機酸 [%FM] NH3 [%] 乳酸 酢酸 酪酸 プロピ 態窒素 オン酸 [%DM]−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−4 − 31.21 4.56 0.21 0.04 N.D. N.D. 0.055 AUS 29.84 4.43 0.41 0.04 N.D. N.D. 0.056 FG1 31.87 3.99 0.43 0.02 N.D. N.D. 0.047 CA25 31.44 4.41 0.47 0.06 N.D. N.D. 0.038 FG1, AUS 29.83 3.56 1.05 0.05 N.D. N.D. 0.049 CA25, AUS 29.84 3.52 1.11 0.08 N.D. N.D. 0.0310 − 33.33 4.38 0.27 0.05 N.D. N.D. 0.0311 AUS 32.59 4.25 0.52 0.05 N.D. N.D. 0.0312 FG1 33.42 3.67 0.61 0.14 N.D. N.D. 0.0313 CA25 33.22 4.30 0.62 0.06 N.D. N.D. 0.0314 FG1, AUS 32.06 3.47 1.07 0.14 N.D. N.D. 0.0315 CA25, AUS 32.52 3.50 0.94 0.12 N.D. N.D. 0.02−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−表2の結果から、野生株乳酸菌による麦茶残渣の自然発酵は植物繊維分解酵素の添加によって改善され、乳酸菌の単独接種でも乳酸発酵を進行させることが解るが、植物繊維分解酵素を添加し乳酸菌を接種した場合ほど際だった進行ではない。 【0048】(実施例3) サイレージの化学成分実施例2において用いた麦茶残渣および試料4、8、10、14のサイレージの化学成分(OCW:細胞壁物質、OCC:有機細胞内容物、ADF:酸性デタージェント繊維、Ob: 低消化性繊維)を分析した結果を表3に示す。 【0049】 【表3】 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−試料 乾物率 化学成分 [%DM]番号 [%] 有機物 粗蛋 粗脂肪 OCW OCC ADF Ob 白質−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−麦茶残渣 30.4 97.0 15.7 3.3 34.1 62.8 23.6 31.74 31.2 97.4 14.9 3.1 33.4. 62.5 23.3 32.28 29.8 97.2 16.0 3.0 30.1 63.2 21.9 29.5麦茶残渣 34.1 97.2 16.1 2.9 35.6 61.6 24.6 33.4(脱水) 10 33.3 97.3 14.5 2.5 32.8 59.8 22.3 31.014 32.1 97.3 15.3 2.7 31.7 61.0 21.2 30.1−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−表3から、麦茶残渣及びそのサイレージは、59〜63%の有機細胞内容物や14〜16%の粗蛋白質を含み、家畜飼料として栄養価値が高いことが解る。 【0050】また、乳酸菌及び植物繊維分解酵素を添加した場合のサイレージは、自然発酵させた場合よりも細胞壁物質及び低消化性繊維が減少し、粗蛋白質の含量が高くその貯蔵特性が優れている。 【0051】上記の麦茶残渣(脱水処理していないもの)及び試料8のサイレージを、各々、75℃で48時間乾燥した後に2mmに粉砕し、5gずつナイロンバック(190×90mm、250メッシュ)に詰め込んで、3頭の去勢雄牛(チモシー75%及び配合飼料25%からなる飼料を1日2回ほぼTDN維持量を給与した)のフィステル内に投入し、所定培養時間にナイロンバックを取り出して洗浄し、乾物量及び粗蛋白質量を測定することにより、これらの第一胃内消化率の経時変化を求めた。その結果、図1に示すように、乾物及び粗蛋白質の消失率のいずれにおいても、麦茶残渣及びサイレージは同様の推移を示し、消失率は概ね6時間まで増加した後、12時間以降はほぼ横ばいで、72時間後の乾物の消化率は約70%、粗蛋白質の消化率は約50%であった。このことから、麦茶残渣の栄養成分はサイレージ発酵・貯蔵工程中にほとんど失われず、サイレージの第一胃内消化率への影響もないことやその飼料価値が高いことが明らかである。 【0052】 【発明の効果】本発明によれば、麦茶飲料抽出後の残渣を乾燥させることなく、長期間保存可能で簡便且つ安価なサイレージを調製する技術を創出すると共に、麦茶残渣を食品産業廃棄物から家畜の貴重な飼料資源に転換させ、飼料自給率の向上及び環境保全にも貢献できる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】501203344 【氏名又は名称】独立行政法人農業技術研究機構 【識別番号】591014972 【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
|
| 【出願日】 |
平成14年2月1日(2002.2.1) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083806 【弁理士】 【氏名又は名称】三好 秀和 (外7名)
|
| 【公開番号】 |
特開2003−225056(P2003−225056A) |
| 【公開日】 |
平成15年8月12日(2003.8.12) |
| 【出願番号】 |
特願2002−25930(P2002−25930) |
|