| 【発明の名称】 |
香気成分を回収する濃縮コーヒー液の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】柏井 治 【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区港島中町7丁目7番7 ユーシーシー上島珈琲株式会社グループ総合企画室内
【氏名】久守 博 【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区港島中町7丁目7番7 ユーシーシー上島珈琲株式会社グループ総合企画室内
【氏名】北島 義之 【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区港島中町7丁目7番7 ユーシーシー上島珈琲株式会社グループ総合企画室内
|
| 【要約】 |
【課題】コーヒー抽出液の濃縮工程で損失する香気成分を効率良く回収して、風味の良い濃縮コーヒー液を製造する方法を提供すること。
【解決手段】下記工程:(A)焙煎し、粉砕したコーヒー豆から抽出したコーヒー液を濃縮し、濃縮液と濃縮除去液とを分別する工程、(B)前記(A)工程で得られた濃縮除去液を逆浸透膜(NaCl阻止率99%以上)で0.98MPa以下の操作圧力で濃縮し、濃縮除去液に含まれる香気成分を濃縮して濃縮香気液を得る工程、および(C)前記(A)工程で得られた濃縮液と前記(B)工程で得られた濃縮香気液とを混合して濃縮コーヒー液を調製する工程を含む濃縮コーヒー液の製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記工程:(A)焙煎し、粉砕したコーヒー豆から抽出したコーヒー液を濃縮し、濃縮液と濃縮除去液とを分別する工程、(B)前記(A)工程で得られた濃縮除去液を逆浸透膜(NaCl阻止率99%以上)で0.98MPa以下の操作圧力で濃縮し、濃縮除去液に含まれる香気成分を濃縮して濃縮香気液を得る工程、および(C)前記(A)工程で得られた濃縮液と前記(B)工程で得られた濃縮香気液とを混合して濃縮コーヒー液を調製する工程を含む濃縮コーヒー液の製造方法。 【請求項2】 前記(A)工程の濃縮方法が膜濃縮、減圧濃縮または凍結濃縮である請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】 前記(A)工程の濃縮方法が膜濃縮であり、逆浸透膜(NaCl阻止率99%以上)を用いて1.9〜5.9MPaの操作圧力で濃縮する請求項1に記載の製造方法。 【請求項4】 前記操作圧力が2.9〜5.0MPaである請求項3に記載の製造方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、コーヒー抽出液の濃縮工程において損失する香気成分を回収して、香気量の多い濃縮コーヒー液を製造する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】コーヒー抽出液から濃縮コーヒーを製造する過程において、コーヒーの香気成分が損失し、得られた濃縮コーヒーは、風味の点で劣るという問題がある。 【0003】逆浸透膜を用いてコーヒーを濃縮する方法は、コーヒー液に対する加熱履歴を抑制し、風味の高い濃縮コーヒーを製造することができる方法として知られている。例えば、特開昭56−29954号公報では、2段階の逆浸透膜による濃縮方法が記載されている。また、香気成分の回収については、特開平4−88948号公報では、2段階処理にて固形分と共に香気成分を回収しているが、この方法は2段目の濃縮圧が3.9MPa以上であり、この圧力では膜面への透過圧が高く固形分は濃縮できるが、香気成分は透過水側に溶出する。この際に、コーヒー液から損失する香気成分は30〜60%となり、コーヒーの風味減少に大きな影響を与える。 【0004】また、膜濃縮における透過水への香気成分溶出防止方法としては、特開昭63−237739号公報において、サイクロデキストリンなどの香保持物質を添加する方法が報告されているが、この物質の添加は、濃縮液を原料とした最終製品への用途開発において、制限を生じるため適切ではない。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、コーヒー抽出液の濃縮工程で損失する香気成分を効率良く回収して、風味の良い濃縮コーヒー液を製造する方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、逆浸透膜による濾過時の操作圧力を調整することにより、香気成分を好適に回収・濃縮できることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0007】即ち、本発明の濃縮コーヒー液の製造方法は、下記工程:(A)焙煎し、粉砕したコーヒー豆から抽出したコーヒー液を濃縮し、濃縮液と濃縮除去液とを分別する工程、(B)前記(A)工程で得られた濃縮除去液を逆浸透膜(NaCl阻止率99%以上)で0.98MPa以下の操作圧力で濃縮し、濃縮除去液に含まれる香気成分を濃縮して濃縮香気液を得る工程、および(C)前記(A)工程で得られた濃縮液と前記(B)工程で得られた濃縮香気液とを混合して濃縮コーヒー液を調製する工程を含むことを特徴とする。 【0008】前記(A)工程の濃縮方法は、膜濃縮、減圧濃縮または凍結濃縮であることが好ましい。 【0009】また、前記(A)工程の濃縮方法が膜濃縮であり、逆浸透膜(NaCl阻止率99%以上)を用いて1.9〜5.9MPaの操作圧力で濃縮することが好ましい。 【0010】さらに、前記膜濃縮時の操作圧力は、2.9〜5.0MPaであることが好ましい。 【0011】[作用効果]本発明の濃縮コーヒー液の製造方法によると、濃縮除去液を分離能力の高い逆浸透膜で極低圧力で濃縮する事により濃縮除去液に溶出した香気成分を有効に回収し、濃縮液に還元することで風味の高い濃縮コーヒー液を提供することができる。 【0012】また、本発明の(B)工程で得られた濃縮香気液の香気成分は、ガスクロマトグラフィーでの中・高沸点エリアの成分の割合が逆浸透膜処理前より増えている。このような成分を多く含む濃縮香気液は、コーヒーの風味を改善するので、本発明の方法は、濃縮コーヒー液の香の品質向上にも有効である。 【0013】また、本発明において、(A)工程の濃縮方法を、膜濃縮、減圧濃縮または凍結濃縮から選択し、とりわけ、逆浸透膜を用いた膜濃縮とすることにより、濃縮効率が良く、かつ、風味の高い濃縮コーヒー液を得ることができる。 【0014】さらに、前記逆浸透膜を用いた膜濃縮の操作圧力を所定の範囲にすることにより、(A)工程でのコーヒー固形分の回収率が良く、かつ、風味の高い濃縮コーヒー液を得ることができる。 【0015】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、説明する。 【0016】本発明に使用するコーヒー生豆の種類は、特に制限されるものではなく、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種等のものが挙げられる。複数の種類をブレンドした豆を用いてもよい。 【0017】コーヒー生豆の焙煎は、公知の方法および装置で行えばよく、焙煎の程度は、目的とするコーヒー飲料に応じて適宜選択することができる。 【0018】焙煎コーヒー豆の粉砕は、公知の方法および装置で行えばよく、粉砕の程度も特に制限されるものではない。 【0019】粉砕したコーヒー豆は、抽出機に装填される。抽出方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法および装置で行えばよい。なお、コーヒーの抽出に用いる水は、風味の良いコーヒーを得るため、イオン交換水、蒸留水等が好ましい。 【0020】まず、(A)抽出したコーヒー液を濃縮し、濃縮液と濃縮除去液とを分別する工程を行う。 【0021】前記濃縮液とは、抽出したコーヒー液から水分を除去し、固形分濃度が高くなったコーヒー液をいう。濃縮液の固形分濃度は、最終製品である濃縮コーヒー液の用途にもよるが、通常、5〜60重量%程度である。前記固形分濃度は、コーヒー液を減圧乾燥して水分を蒸発させた後に残った固形分の重量を測定して求めた値である。 【0022】前記濃縮除去液とは、抽出したコーヒー液を濃縮する際に除去される水分を液体としたものであり、濃縮液から失われるコーヒーの香気成分を含有する。 【0023】濃縮方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法および装置で行えばよく、膜濃縮、減圧濃縮、凍結濃縮等が好ましい。なかでも、コーヒー液に対する加熱履歴が少なく、濃縮効率のよい膜濃縮がより好ましい。 【0024】前記膜濃縮方法としては、限外濾過膜または逆浸透膜等を用いた方法が挙げられ、それぞれ市販の膜を使用し、固形分の回収率のよい条件下で行えばよい。コーヒー抽出液を所定の条件下で前記膜を通過させ、濃縮液と透過液が得られる。ここでは、透過液が香気成分を含有する濃縮除去液として、以下の(B)工程に供せれられる。 【0025】前記減圧濃縮方法は、公知の方法および装置で行えばよく、特に制限されるものではないが、通常、6.6〜80.0kPaの減圧下、30〜90℃の温度でコーヒー抽出液から水分を蒸発させ、濃縮液を得る。減圧濃縮における濃縮では香気成分の95%が飛散するといわれており、蒸発した水分を冷却し、香気成分を水分と共に凝縮・捕集し、濃縮除去液として、以下の(B)工程に供する。 【0026】前記凍結濃縮方法は、公知の方法および装置で行えばよく、特に制限されるものではないが、通常、コーヒー抽出液を−5℃以下で水分を凍結させ、凍結した氷を分離除去し、濃縮液を得る。分離した氷を溶解して凍結濃縮機から排出された液体には香気成分が溶存しており、これを濃縮除去液として、以下の(B)工程に供する。 【0027】本発明においては、コーヒー固形分の高回収率および得られる濃縮液の品質の良さの観点から、前記膜濃縮方法のうち、逆浸透膜(NaCl阻止率99%以上)を用いて1.9〜5.9MPaの操作圧力で濃縮することが好ましい。 【0028】本発明の工程(A)においては、逆浸透膜は、NaCl阻止率99%以上の逆浸透膜であれば特に制限されることなく、市販品を好適に使用することができる。前記NaCl阻止率は、コーヒー固形分の回収率を高くするためには好ましくは95%以上、より好ましくは99.90%以上である。 【0029】前記逆浸透膜による濃縮時の操作圧力は、コーヒー固形分の回収率を上げるためには1.9〜5.9MPaが好ましく、2.9〜4.9MPaがより好ましい。 【0030】次に、(B)前記(A)工程で得られた濃縮除去液を、逆浸透膜(NaCl阻止率99%以上)を用いて0.98MPa以下の操作圧力で濃縮し、濃縮除去液に含まれる香気成分を濃縮して濃縮香気液を得る工程を行う。 【0031】本発明の工程(B)で使用する逆浸透膜は、香気成分を濃縮するためのものであるが、前記工程(A)において記載された逆浸透膜を使用することができる。工程(A)と工程(B)の逆浸透膜は、同一の種類であっても異なる種類であってもよい。 【0032】本工程(B)において、前記逆浸透膜による濃縮時の操作圧力は、香気成分の損失を抑制するためには、0.98MPa以下であり、0.98〜0.01MPaが好ましく、0.8〜0.01MPaがより好ましい。 【0033】本工程により、濃縮除去液は、通常、1/2〜1/10程度に濃縮され、濃縮香気液を得る。 【0034】本工程で得られた濃縮香気液は、質・量ともに優れた香気成分を含み、以下の工程(C)に供せられるとともに、コーヒーの風味を添加する目的で他の食品に香料としても使用することができる。 【0035】最後に、(C)前記(A)工程で得られた濃縮液と前記(B)工程で得られた濃縮香気液とを混合して濃縮コーヒー液を調製する工程を行う。 【0036】前記濃縮液と前記濃縮香気液は、所望の固形分と香気を併せ持つように任意の割合で混合することができる。 【0037】このようにして得られた本発明の濃縮コーヒー液は、濃縮時に損失した香気成分が良好に回収されており、工業用原料や希釈飲料等に好適に使用することができる。 【0038】 【実施例】以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。 【0039】(実施例1)定法で得られた工業用コーヒー抽出液(固形分1.8重量%)を、活性層がポリアミド系重合体、支持層がポリスルフォンの逆浸透膜(ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製、品番 DRA9910、NaCl阻止率99.90%)にて3.9MPaの操作圧力で濃縮した。得られた濃縮液は、固形分17.2重量%であり、濃縮除去液(透過液)の固形分濃度は、0.0重量%であり、コーヒー固形分の損失はなかった。濃縮途中の段階におけるコーヒー液および透過液の固形分濃度を表1に示す。 【0040】 【表1】
つぎに、前記透過液を、活性層がポリアミド系重合体、支持層がポリスルフォンの逆浸透膜(ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製、品番 DRA9910、Nacl阻止率99.90%)にて0.01MPaの操作圧力で液量が1/5になるまで濃縮し、濃縮香気液を得た。濃縮途中の段階における透過液の香気量について、ガスクロマトグラフィーにより測定した。 【0041】[ガスクロマトグラフィーによる香気量の測定]透過液10mlを、22mlのバイアル瓶に採取し、密栓した。密栓したバイアル瓶を、Tekmar社製ガスクロマトグラフィー用オートサンプラにて80℃で20分間加温した後サンプリングし、ガスクロマトグラフィーで分析した。 【0042】測定条件測定装置:日立製ガスクロマトグラフィーG−3000カラム:ジーエルサイエンス(株)製TC−WAX 0.53mm×30mキャリヤーガス:ヘリウムキャリヤーガス流量:1ml/分カラム温度:40℃(5分)→220℃(5℃/分で昇温) 検出器:FID。 【0043】ガスクロマトグラフィー分析によるピークの総面積を、総香気量として算出し、濃縮前の値を100%として比較した。また、各ピークを分析時のカラム温度を基に下記のように3つのエリアに分類し、各エリア別のピーク面積を算出し、濃縮前の値を100%として比較した。 【0044】高沸点エリア:カラム温度101℃〜200℃中沸点エリア:カラム温度41℃〜100℃低沸点エリア:カラム温度40℃。 【0045】結果を表2に示す。 【0046】 【表2】
表2より、液量が1/5になるまで濃縮された濃縮香気液は、総香気量が4.2倍に上昇していることがわかる。また、逆浸透膜による香気成分の濃縮は、減圧濃縮などで損失の大きい中・高沸点部の香気成分が6〜8倍に濃縮されており、コーヒーの風味回収に有効な方法である。 【0047】(比較例1)実施例1において、濃縮除去液(透過液)を、3.9MPaの操作圧力で液量が1/5になるまで濃縮すること以外は実施例1と同様にして、濃縮香気液を得た。得られた濃縮香気液について、ガスクロマトグラフィーにより香気量を測定した。結果を表3に示す。 【0048】 【表3】
表3より、液量が1/5になるまで濃縮された濃縮香気液は、総香気量が約3倍に上昇し、中・高沸点部の香気成分が4倍前後に濃縮されていることがわかる。しかし、実施例1と比較すると、比較例1の方法は香気成分の回収率が劣っている。 【0049】(参考例1) 逆浸透膜濃縮における香気成分の損失定法で得られた工業用コーヒー抽出液(固形分2.2重量%)を、活性層がポリアミド系重合体、支持層がポリスルフォンの逆浸透膜(ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製、品番 DRA9910、NaCl阻止率99.90%)にて3.9MPaの操作圧力で固形分16.8重量%まで濃縮した。濃縮途中の段階における抽出液および透過液について、実施例1と同様にガスクロマトグラフィーにより総香気量を測定し、その結果を表4に示す。 【0050】 【表4】
表4より、コーヒー液を濃縮するにつれて透過水側には香気成分が溶出し、コーヒー液中の香気量は40%損失したことがわかる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】390006600 【氏名又は名称】ユーシーシー上島珈琲株式会社 【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区多聞通5丁目1番6号
|
| 【出願日】 |
平成14年1月15日(2002.1.15) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100092266 【弁理士】 【氏名又は名称】鈴木 崇生 (外3名)
|
| 【公開番号】 |
特開2003−204757(P2003−204757A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月22日(2003.7.22) |
| 【出願番号】 |
特願2002−6239(P2002−6239) |
|