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【発明の名称】 容器詰コーヒー飲料
【発明者】 【氏名】星野 栄一
【住所又は居所】東京都墨田区文花2−1−3 花王株式会社研究所内

【氏名】片岡 潔
【住所又は居所】東京都墨田区文花2−1−3 花王株式会社研究所内

【氏名】河南 俊郎
【住所又は居所】東京都墨田区文花2−1−3 花王株式会社研究所内

【氏名】小倉 義和
【住所又は居所】東京都墨田区文花2−1−3 花王株式会社研究所内

【要約】 【課題】

【解決手段】次のクロロゲン酸類中のモノ体成分(A)、モノ体成分(B)及びジ体成分(C):(A)モノカフェオイルキナ酸、(B)フェルラキナ酸、(C)ジカフェオイルキナ酸を含有し、(イ)それらの合計含有量が、容器詰された飲料当り、0.057重量%〜1.06重量%であり、かつ(ロ)成分(A)、(B)及び(C)の含有重量比率が次式、[(B)/(C)]<−0.55[(A)/{(A)+(B)+(C)}]×100]+50.9を満たすものであり、水80重量%以上を含有する殺菌処理を施した容器詰コーヒー飲料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 次のクロロゲン酸類中のモノ体成分(A)、モノ体成分(B)及びジ体成分(C):(A)モノカフェオイルキナ酸、(B)フェルラキナ酸、(C)ジカフェオイルキナ酸を含有し、(イ)それらの合計含有量が、容器詰された飲料当り、0.057重量%〜1.06重量%であり、かつ(ロ)成分(A)、(B)及び(C)の含有重量比率が次式、[(B)/(C)]<−0.55[[(A)/{(A)+(B)+(C)}]×100]+50.9を満たすものであり、水80重量%以上を含有する殺菌処理を施した容器詰コーヒー飲料。
【請求項2】 F値20分以上の殺菌処理を施したものである請求項1記載の容器詰コーヒー飲料。
【請求項3】 さらにカフェインを含み、カフェインに対するクロロゲン酸類[(A)+(B)+(C)]の重量比率が2.0〜30.0である請求項1または2記載の容器詰コーヒー飲料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は開封後の過酸化水素生成速度が低く、安全性に優れた容器詰コーヒー飲料に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】コーヒー飲料は嗜好性が高く、広く世界中で愛飲されている。そして、工業的に生産された容器詰コーヒー飲料もまた多数上市されており、広く愛飲されている。
【0003】しかし、特開平3−127950号に記載されているように、インスタントコーヒーを熱湯で溶解すると経時的に過酸化水素が生成することが知られている。そして、該公報では、当該過酸化水素の発生をカタラーゼを添加することにより解決しようとしている。
【0004】一方、容器詰コーヒー飲料中の過酸化水素濃度については全く報告されていない。そこで本発明者は容器詰コーヒー飲料中の過酸化水素濃度を測定したところ、開封後経時的に過酸化水素濃度は低いが、開封後速やかに高くなることが判明した。
【0005】ところが特開平3−127950号公報にも記載されているようにカタラーゼは溶液状態では不安定であることから、乾燥粉末の状態で冷暗所に保存する必要があり、容器詰コーヒー飲料にはこの技術は採用できなかった。
【0006】従って、本発明の目的は開封後の過酸化水素生成速度が低く、安全性の高い容器詰コーヒー飲料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者はカタラーゼのような不安定な成分を添加することなく、容器詰コーヒー飲料の開封後の過酸化水素生成を抑制すべく種々検討したところ、クロロゲン酸組成が一定の範囲になるように調整すれば、開封後の過酸化水素生成速度が低く、安全性の高い容器詰コーヒー飲料が得られることを見出した。
【0008】すなわち、本発明は、次のクロロゲン酸類中のモノ体成分(A)、モノ体成分(B)及びジ体成分(C):(A)モノカフェオイルキナ酸、(B)フェルラキナ酸、(C)ジカフェオイルキナ酸を含有し、(イ)それらの合計含有量が、容器詰された飲料当り、0.057重量%〜1.06重量%であり、かつ(ロ)成分(A)、(B)及び(C)の含有重量比率が次式、【0009】[(B)/(C)]<−0.55[[(A)/{(A)+(B)+(C)}]×100]+50.9【0010】を満たすものであり、水80重量%以上を含有する殺菌処理を施した容器詰コーヒー飲料を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の容器詰コーヒー飲料には、種々のクロロゲン酸類が含まれるが、当該クロロゲン酸類として次のモノカフェオイルキナ酸成分(A)、フェルラキナ酸成分(B)及びジカフェオイルキナ酸成分(C)の三種を含有する。成分(A)としては、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸及び5−カフェオイルキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。成分(B)としては、3−フェルラキナ酸、4−フェルラキナ酸及び5−フェルラキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。成分(C)としては、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び4,5−ジカフェオイルキナ酸から選ばれる1種以上が挙げられる。本発明において成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量は、容器詰された飲料当り0.057重量%〜1.06重量%である。0.057重量%未満では容器詰コーヒー飲料開封後の過酸化水素生成速度が0.55ppm/h以下の低値に抑えられない。また1.06重量%を超えるとクロロゲン酸特有の味から、飲みごこちがよくない。当該成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量は、開封後の過酸化水素生成速度抑制の点から0.106重量%〜1.06重量%、さらに0.159重量%〜1.06重量%、特に0.26重量%〜0.79重量%が好ましい。なお、これら成分(A)、(B)及び(C)の含有量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定できる。
【0012】また、開封後の過酸化水素生成速度抑制の点から、成分(A)、(B)及び(C)中の成分(C)含有量重量比率[(C)/[(A)+(B)+(C)]は0.05以上、さらに0.05〜0.3、特に0.05〜0.2が好ましい。また成分(A)、(B)及び(C)中の成分(A)の含有重量比率は0.5〜0.88、さらに0.5〜0.85、特に0.5〜0.80が好ましい。また同様に成分(B)の含有重量比率は0.05〜0.30、さらに0.05〜0.25、特に0.05〜0.20が好ましい。
【0013】また、本発明においては、前記の成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量に加えて、成分(A)、(B)及び(C)の含有重量比率が、次式、【0014】[(B)/(C)]<−0.55[[(A)/{(A)+(B)+(C)}]×100]+50.9【0015】を満たすことが必要である。この範囲外の場合には、開封後の過酸化水素生成速度が0.55ppm/h以下に抑制できない。好ましい含有重量比率は、次式、【0016】[(B)/(C)]<−0.533[[(A)/{(A)+(B)+(C)}]×100]+48.0【0017】を満たすものであり、より好ましくは次式、【0018】[(B)/(C)]<−0.545[[(A)/{(A)+(B)+(C)}]×100]+46.909、さらに好ましくは[(B)/(C)]<−0.575[[(A)/{(A)+(B)+(C)}]×100]+48.0、最も好ましくは[(B)/(C)]<−0.58[[(A)/{(A)+(B)+(C)}]×100]+47.020【0019】を満たすものである。
【0020】また本発明の容器詰コーヒー飲料においては、さらにカフェインを含むのが好ましく、当該カフェインに対するクロロゲン酸類[(A)+(B)+(C)]の重量比率[(A)+(B)+(C)]/カフェイン]が2.0〜30.0、さらに2.5〜20.0、特に2.5〜10.0、殊更2.5〜5.0であるのが、カフェイン由来の苦味を抑制する上で好ましい。
【0021】本発明の容器詰コーヒー飲料は水を80重量%以上、正確には80〜99.8重量%を含有するが、85〜99.8重量%含有するのが好ましい。
【0022】また、本発明の容器詰コーヒー飲料は、殺菌処理を施したものである。加熱による殺菌処理された容器詰コーヒー飲料を開封した場合に、急速に過酸化水素が生成するからである。当該殺菌処理はF値(250°F(121℃):日本防菌防黴学会編、防菌防黴ハンドブック、p642(技報堂出版)参照)が20分、さらに30分以上、特に40分以上となるようにするのが長期保存安定性向上の観点から好ましい。
【0023】本発明の容器詰コーヒー飲料は、常法に従い焙煎コーヒー豆及び又はその粉砕物から水〜熱水で抽出し、殺菌処理した後容器詰するか容器詰した後殺菌処理することによって得ることもできるが、かかる通常の方法では成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量及び含有重量比率が前記の範囲にならないので、当該焙煎コーヒー豆抽出液に、クロロゲン酸類を含有する植物の非焙煎植物抽出物を混合してクロロゲン酸類含有量を調整するのが好ましい。ここで非焙煎植物抽出物の調製に用いるクロロゲン酸類を含有する植物としては、コーヒー、サンザシ、ブドウ、センキュウ、トウキ、オウレン、ウコン、アギ、カンショ、モロヘイヤ等が挙げられるが、コーヒー飲料の風味の点からコーヒーが好ましい。従って、通常の焙煎コーヒー抽出液に生コーヒー豆抽出物を混合してクロロゲン酸類の組成を調整するのが好ましい。
【0024】用いるコーヒー豆の種類は、特に限定されないが、例えば、ブラジル、コロンビア、タンザニア、モカ等が挙げられる。豆の種類としては、アラビカ種、ロブスタ種が挙げられる。コーヒー豆は1種でもよいし、複数種をブレンドして用いてもよい。焙煎は通常の方法で行えばよく、焙煎の程度は所望する呈味により適宜調整すればよい。具体的には、焙煎を深くすると苦みが強くなり、焙煎が浅いと酸味が強くなる。コーヒー飲料のL値は、80以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは50以下であることが風味の点から好ましい。ここでL値とは、明度の指標となる値であり、コーヒー飲料を、色彩色差計CT−310(MINOLTA(株))を用いて、1cmセルで常法通り測定した。
【0025】生コーヒー豆抽出物は生コーヒー豆を必要に応じて粉砕し、エタノール、含水エタノール、メタノール等を用いて室温から100℃で抽出するのが好ましい。生コーヒー豆抽出物の市販品としてはフレーバーホルダーRC−30R、FH−1242等(長谷川香料(株))が挙げられる。
【0026】また本発明のコーヒー飲料には、所望により、ショ糖、グルコース、フルクトース、キシロース、果糖ブドウ糖液、糖アルコール等の糖分、乳成分、抗酸化剤、pH調整剤、乳化剤、香料等を添加することができる。乳成分としては、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、脱脂乳、部分脱脂乳、れん乳等が挙げられる。本発明のコーヒー飲料のpHとしては、3〜7、さらに4〜7、特に5〜7が飲料の安定性の面で好ましい。
【0027】抗酸化剤としては、アスコルビン酸又はその塩、エリソルビン酸又はその塩等が挙げられるが、このうちアスコルビン酸又はその塩等が特に好ましい。
【0028】乳化剤としてはショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、微結晶セルロース、レシチン類、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が好ましい。
【0029】本発明に用いる容器としては、PETボトル、缶(アルミニウム、スチール)、紙、レトルトパウチ、瓶(ガラス)等が挙げられる。
【0030】本発明における殺菌処理は、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で行われる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ食品衛生法に定められた条件と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器で高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻す等の操作も可能である。
【0031】本発明の容器詰コーヒー飲料は、カタラーゼ等の不安定物質を添加することなく、開封後の過酸化水素生成速度を0.55ppm/h以下に保つことができ、安全である。なお、過酸化水素生成速度は、過酸化水素分析計(例えばSUPER ORITECTOR MODEL 5(セントラル科学(株))を用いて、容器詰コーヒー飲料を開封後経時的に過酸化水素濃度を測定して求めることができる。
【0032】
【実施例】実施例1(a)表1の組成にて容器詰コーヒー飲料を製造した。コーヒー豆抽出液にフレーバーホルダー(FH−1242、長谷川香料(株))と水を加え、重曹にてpHを調整した。これを缶又はPETボトルに充填した。缶詰コーヒー飲料については、缶に充填してからレトルト殺菌(124℃、20分間)を行った。PET容器詰コーヒー飲料は、UHT殺菌(140℃、30秒間)を行った後、無菌充填を行った。いずれの殺菌処理によっもF値は約40分となった。比較品1はコーヒー豆抽出液に水を加え、かつpH調整を行い、加熱条件は、実施例と同様の条件で行った。比較品2及び3は市販コーヒー飲料A,Bを測定した。
【0033】(b)容器詰コーヒー飲料中の成分(A)、(B)及び(C)の分析法は次の通りである。
(1)クロロゲン酸類の分析<分析機器>HPLC(日立製作所(株))を使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通り。
プロッター:D−2500ディテクター:L−4200ポンプ:L−7100オートサンプラー:L−7200カラム:lnertsil ODS-2、内径2.1mm×長さ250mm<分析条件>サンプル注入量:10μL流量:0.3mL/min紫外線吸光光度計検出波長:325nm溶離液A:0.05M酢酸3%アセトニトリル溶液溶離液B:0.05M酢酸100%アセトニトリル溶液
<クロロゲン酸類のリテンションタイム>(単位:分)
(A)モノカフェオイルキナ酸 :19.7、22.4、23.5の計3点(C)ジカフェオイルキナ酸 :32.2、32.8、34.6の計3点(B)フェルラキナ酸 :26.4、27.1、24.4の計3点ここで求めたエリア%から5位のカフェオイルキナ酸を標準物質とし、重量%を求めた。
【0034】(3)カフェイン分析方法及び定義<分析機器>クロロゲン酸類の分析の場合と同じ機器を用いた。
<分析条件>サンプル注入量:10μL流量:1.0mL/min紫外線吸光光度計検出波長:280nm溶離液A:0.1M酢酸水溶液溶離液B:0.1M酢酸アセトニトリル溶液
<カフェインのリテンションタイム>(単位:分)
カフェイン :27.2の計1点ここで求めたエリア%から標準物質により、重量%を求めた。
【0035】(c)過酸化水素の測定過酸化水素分析計SUPER ORITECTOR MODEL 5(セントラル科学(株))を使用し、標準校正液(過酸化水素1ppm)で校正した後、分析計測定セル内に、0.5%臭素酸カリウム配合の0.2Mリン酸バッファー(pH7.0)を1mL入れる。窒素送付によりセル内の溶存酸素がゼロになった時点で30℃恒温槽に静置しておいた市販缶コーヒーならびに試験サンプルを開缶し1mLを速やかに抜き取り、測定セル内に加える。後は、装置の測定手順に従い、発生した酸素濃度をプリンターから読み取る。以後、15分毎に測定し、得られた1時間後までのデータを用いて最小二乗法で直線を引き、本発明での発生速度を求める。
【0036】(d)得られた結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】表1から明らかなように成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量及び含有比率の両者が本発明の範囲にある容器詰コーヒー飲料は開封後の過酸化水素生成速度が低く、安全性に優れていることがわかる。
【0039】実施例2実施例1の製造方法により、表2に示す実施品6〜10のミルクコーヒーを調製した。ミルクコーヒー系においても、過酸化水素の生成速度は、0.55ppm/h以下であった。
【0040】
【表2】

【0041】
【発明の効果】本発明の容器詰コーヒー飲料は、開封後過酸化水素の生成が少ないので安全である。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋茅場町1丁目14番10号
【出願日】 平成14年1月15日(2002.1.15)
【代理人】 【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸 (外6名)
【公開番号】 特開2003−204755(P2003−204755A)
【公開日】 平成15年7月22日(2003.7.22)
【出願番号】 特願2002−6727(P2002−6727)