| 【発明の名称】 |
油中水型乳化油脂組成物及びそれを用いたパンの製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】仙崎 賢明
【氏名】石井 重信
【氏名】伊勢崎 哲生
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| 【要約】 |
【課題】パンの製造時に、パン生地に折り込み使用することにより、パン生地及びパンに悪影響を与えることなく、配合した呈味材の呈味効果を一層効果的にし、従来にない優れた風味のパンを提供する油脂組成物、及びそれを用いたパンの製造方法を提供すること。
【解決手段】呈味材を溶解させた水相と油脂からなる油中水型乳化油脂組成物であって、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする油中水型乳化油脂組成物をパン生地に折り込むこと。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 呈味材を含有してなる水相と油脂からなる油中水型乳化油脂組成物であって、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする油中水型乳化油脂組成物。 【請求項2】 油脂:20〜90重量%、水相:5〜75重量%、乳化剤:0.2〜5重量%であって、それらの合計が100重量%になるように含有する請求項1に記載の油中水型乳化油脂組成物。 【請求項3】 主として小麦粉、水、イーストからなるパン生地に対して請求項1又は2に記載の油中水型乳化油脂組成物を折り込んで、これを発酵、焼成することを特徴とするパンの製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、呈味材を配合した油中水型乳化油脂組成物及びこの油中水型乳化油脂組成物を用いたパンの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、パンの製造時にパン生地に折り込んで使用することにより、配合した呈味材の呈味効果を一層効果的にし、従来にない優れた風味のパンを提供する油中水型乳化油脂組成物及びそれを用いたパンの製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 近年、食生活の洋風化に伴いパン類の消費が増大する中で、焼成後のパンにおける天然の味付け素材の風味をもっと出そうとしたパンが増えつつある。特に、砂糖をたくさん使った甘いパン類が数多くの消費者向けに製造販売されている。 【0003】砂糖は、パン生地に甘さを付与することができる反面、同時に生地が軟化する、焼き色が濃くなるという問題も与える。さらに、もともと砂糖は、イーストのエネルギー源として活用、消費されるために、パン生地に添加されるものの焼成後の製品であるパンにおいてその量はかなり減ってしまい、いずれにしても、砂糖を使うにあたっては量的な制約があった。 【0004】このような中で、最近、パンの甘さをもっと出したいという要望が強くなり、従来から甘いパンあるいはパンの製造方法が求められ、数多くの検討がなされてきている。 【0005】その中で代表的なものとして、特殊練り込み油脂を用いて、糖が直接イースト含有生地に接触しないようにして作る製パン法(特開昭47−23555)や、特定割合の糖を水溶液とし、特定割合の油脂中に油中水型に乳化させ、パン生地と交互に層状に配し層状パンとすることで、高含糖の層状パンを得る製造方法(特公昭61−35805)や、固体脂含有指数が特定値の油脂を一定割合で含む油相、糖濃度が一定量以上である水相の両相の油中水型乳化物からなるロ−ルイン用油脂組成物(特開平04−248948)の提案がなされている。これらの方法は、パン生地中に配合すべき糖類の一部をあらかじめ油中水型に乳化した油脂組成物の水相部に配合することにより、従来に比べ最終パン製品中の糖量を多くすることができるというものである。 【0006】しかしながら、いずれの方法も、乳化状態は、本質的には不安定な系であり、特に油相を連続相とする乳化油脂組成物が融解、あるいは半融解状態の場合、すなわちその乳化油脂組成物の連続相である油相の粘度が低い条件下では乳化粒子が急速に凝集、合一し、強い攪拌を加えていない限り油相と水相とに分離してしまう。したがって、ホイロ条件下では油相は半融解状態になるため、油相より水相の糖が分離し露出するため、生地が軟化し、焼き色が濃くなる。またそれとは別に糖がイ−ストに消費されるため糖が残りにくいという問題が解決されずに残っている。更に、糖以外のたとえば果汁、塩類等の呈味材については、油中水型乳化油脂組成物の水相部中に溶解し配合することが従来から行われてきている。しかしながらこの場合にも、製パン工程時の生地物性、発酵等に影響が出るため量的な制約があるという問題は解決されずに残っている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は上述の状況に鑑みなされたものであって、パンの製造時にパン生地に折り込み使用することにより、パン生地及びパンに悪影響を与えることなく、配合した呈味材の呈味効果を一層効果的にし、従来にない優れた風味のパンを提供する油脂組成物、及びそれを用いたパンの製造方法を提供することにある。 【0008】以下に本発明を詳しく説明する。 【0009】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、上述の実状に鑑み有効な組成物を見出すべく鋭意研究の結果、特定の乳化剤を使用し、呈味材を水相部に含有させた油中水型乳化油脂組成物を得て、更にそれをパン生地に折り込み使用することで上記課題を解決できることを見出し、次の発明を完成するに至った。すなわち、本発明の第一は呈味材を含有してなる水相と油脂からなる油中水型乳化油脂組成物であって、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする油中水型乳化油脂組成物に関する。また、上記に記載の油中水型乳化油脂組成物において、油脂:20〜90重量%、水相:5〜75重量%、乳化剤:0.2〜5重量%であって、それらの合計が100重量%になるように含有することが好ましい。 【0010】本発明の第二は、主として、小麦粉、水、イ−ストからなるパン生地に対して上記記載の油中水型乳化油脂組成物を折り込んで、これを発酵、焼成することを特徴とするパンの製造方法に関する。 【0011】 【発明の実施の形態】 本発明において、乳化剤として用いられるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、主にひまし油を原料とする縮合リシノレイン酸とポリグリセリンとのエステル化により得られる。このポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの添加量は、油中水型乳化油脂組成物全体中、好ましくは0.1〜4.0重量%である。0.1%重量未満では安定な油中水型乳化油脂組成物とならない場合があり、また4.0重量%を超えると乳化剤により風味が損なわれたりする場合がある。【0012】また、本発明において上記エステルと併用されるグリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルは、油中水型乳化油脂組成物全体中0.1〜1.0重量%が好ましい。0.1重量%未満では、油中水型乳化油脂組成物がもろい物性になりやすく、また1.0重量%を超えると逆に硬い物性になりやすく、いずれにしてもロールイン作業時の作業性が悪くなる場合がある。更に上記乳化剤の好ましい範囲は、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとグリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルを併せて最大5.0重量%になるが、それを超えると乳化剤の量が多すぎて乳化が壊れる場合がある。 【0013】また、油脂成分は油中水型乳化油脂組成物全体中20〜90重量%が好ましく、更に55〜80重量%の範囲で含まれるのが好ましい。20重量%未満では、安定な油中水型乳化油脂組成物とならない場合がある。また、90重量%を超えると水相部が少なく、呈味材の含量が少なくなる為、目的とする呈味効果が得られなくなる。油脂の種類は特に限定はなく、油脂組成物が可塑性であれば何でも良く、コーン油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油、パーム油等などの植物油脂、魚油、牛油、豚油などの動物油脂及びそれらの硬化油・エステル交換油が単独またもしくは2種以上を組み合わせて任意に用いられる。 【0014】一方水相は、油中水型乳化油脂組成物全体中5〜75重量%が好ましい。5重量%より少ないと呈味材の含量が少なくなる為、目的とする呈味効果が得られない場合があり、75重量%より多いと安定な油中水型乳化組成物とならない場合がある。上記の水相に含有させる呈味材は、ショ糖をはじめとして果糖、ぶどう糖、乳糖などの糖類、米酢、りんご酢などの食酢、酢酸、クエン酸、リンゴ酸などの酸物質、オレンジ、リンゴなどの果汁、グルタミン酸ナトリウム、食塩、醤油などの調味材料を配合してもよい。 【0015】また糖類をはじめとして、パン生地に直接加えると発酵力などの生地物性、焼き色、味などの製品性にダメージを与えるものを呈味材として率先して効果的に使用することができる。本発明の油中水型乳化油脂組成物を構成する成分としてはこの他必要に応じて、香料、着色料等が用いられる。 【0016】本発明の油中水型乳化油脂組成物およびそれを用いたパンを製造する方法は下記に示す方法などを挙げることができるが特にこれらの製造方法に限定されるものではない。 【0017】まず、乳化剤及び必要に応じて他の油溶性成分を加え所定の温度で完全に油脂中に溶解することにより油相を調製し、これと呈味材を溶解させた水相とを混合し予備乳化する。乳化温度は油脂が完全に溶解し得る温度であれば良いが好ましくは40〜70℃の範囲である。 【0018】次に上記のようにして得られた予備乳化物は、均一に混合攪拌を行いながら、急冷・捏和機を用いて製造される。急冷・捏和機とは、熱処理された油中水型乳化油脂組成物を密封連続的に急冷すると同時に捏和し、均一な組成物を得る装置をいい、急冷可塑化を行うAユニット、練捏可塑化を行うBユニットから構成される。急冷・捏和機の種類としてはたとえば「ボテーター[ガードラー社(米国)の登録商標]」、「パーフェクター[ゲルステンベルク社(ドイツ)の登録商標]」、「コンビネーター[シュレーダー社(ドイツ)の登録商標]」、「オンレーター[櫻製作所(日本)の登録商標]」などがあり(中澤君敏著、「マーガリン、ショートニング ラード」、昭和54年、光琳)、いずれも好適に用いることができる。急冷・捏和機の出口の形状は任意であるが、必要に応じて断面の形状が矩形のものを用いればシート状、ブロック状あるいはチップ状に成型された油中水型乳化油脂組成物を得ることができる。 【0019】上記で得た、シート状油中水型乳化油脂組成物を、別に用意したパン生地に任意の回数折り込んだ後、所定の温度で所定の時間寝かせる。その後、更に折り込みを行ってから任意の形状に成型し、ホイロ後、所定の条件で焼成を行い、パン製品を得ることができる。ここで本発明においてパンとは、小麦粉を主原料とし、これにイ−スト、水などを加え、さらに必要に応じて他の原料を添加し発酵工程を経て、あるいは経ずして得られた生地を焼成したものを言い、さらに上記原料のほかに小麦粉以外の穀物、たとえば、ライ麦などの粉を混入したものも含まれる。 【0020】 【実施例】以下に実施例を示し本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 (実施例1〜7)表1に示すように、油脂に乳化剤等を添加し、攪拌しつつ70℃まで加熱し、油相部とした。一方、水に、糖類、果汁、等を溶解させた後攪拌しつつ70℃まで加熱し、水相部とした。油相部に水相部を徐々に添加し70℃で30分間攪拌を続けながら混合し予備乳化液を調製した。得られた予備乳化液を、コンビネーターを用いて急冷捏和し安定化させた後、シート状に成型した油中水型乳化油脂組成物を得た。 【0021】 【表1】
(比較例1〜5)表2に示すように、油脂に乳化剤等を添加し、攪拌しつつ70℃まで加熱し、油相部とした。一方、水に、糖類、果汁、等を溶解させた後攪拌しつつ70℃まで加熱し、水相部とした。油相部に水相部を徐々に添加し70℃で30分間攪拌を続けながら混合し予備乳化液を調製した。得られた予備乳化液を、コンビネーターを用いて急冷捏和し安定化させた後、シート状に成型した油中水型乳化油脂組成物を得た。 【0022】 【表2】
[製パン試験(デニッシュ)]実施例1〜7及び比較例1〜5で得られるシート状油中水型油脂組成物を用いて、表3の配合にしたがって製パン試験を実施した。 【0023】 【表3】
まず、20コートのミキサーボールにショートニング及びロールイン用油脂以外の材料を入れ、フックを用いて低速4分、中速4分ミキシングした。これにショートニングを加え低速3分、中速3分ミキシングした。生地の捏ね上げ温度は25℃であった。 【0024】フロアータイムを30分とった後、0℃の恒温槽に生地を入れ、5時間リタードを取った。ロールイン用油脂を加えて、三つ折りを2回行い、0℃恒温槽で一晩寝かせて中間リタードを取った。中間リタード後、3つ折りを一回行い、シーターで伸ばしてスネーク状(50g)に成型した。 【0025】35℃のホイロに60分間入れた後、200℃のオーブンで14分間焼成した。表4に示す結果を得た。 【0026】 【表4】
[パン中の糖の分別定量]実施例4と比較例2のパン10gに、80%エタノールを30ml加え、12000r.p.m.で2分間ホモジナイズすることにより糖を含む抽出液を得た。得られた抽出液を遠心分離(3500r.p.m.で10分間)してから、上澄みをフィルターでろ過し、高速液体クロマトグラフィー用サンプルとした。 【0027】移動相としてアセトニトリル/水(80/20)を使い、上記サンプルを10μl注入し、糖分析用のカラム(昭和電工社製 SUGAR SZ5532)を用いて、示差屈折率検出器にて糖を検出し、あらかじめ作成しておいた検量線により定量を行なった。その結果を表5にまとめる。 【0028】 【表5】
表4に示す結果から明らかなように呈味材を溶解させた水相と油脂からなる油中水型乳化油脂組成物において、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、およびプロピレングリコール脂肪酸エステルを使用した実施例1〜7の油脂組成物は、比較例1〜5に比べて製パン時の作業性が良好で呈味材の風味の出方も良かった。ただし、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルの添加量が好ましい範囲をはずれている実施例7は、製パン時の作業性がやや悪かった。 【0029】また、表5に示した実施例4と比較例2ではパン中の糖の分別定量結果から明らかなように、実施例4の方が比較例2よりも最終のパン製品中でショ糖をより多く残すことができるというものであった。 【0030】 【発明の効果】以上のように本発明によれば、パン生地及び焼成後のパンに悪影響を与えることなく配合した呈味材の呈味効果を一層効果的にし、従来にない優れた風味のパンを提供する油脂組成物、及びそれを用いたパンの製造方法を世の中に提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000941 【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成14年4月2日(2002.4.2) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2003−289801(P2003−289801A) |
| 【公開日】 |
平成15年10月14日(2003.10.14) |
| 【出願番号】 |
特願2002−99747(P2002−99747) |
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