| 【発明の名称】 |
製パン用クリーム状組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】亀尾 洋司 【住所又は居所】東京都墨田区文花2−1−3 花王株式会社研究所内
【氏名】伊藤 仁 【住所又は居所】東京都墨田区文花2−1−3 花王株式会社研究所内
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| 【要約】 |
【課題】SD製法で用いる、糖分、油脂類、乳化剤及び水を含むクリーム状組成物のクリームの安定性を向上させる。
【解決手段】ベーシック・スイート・ドウ方式によるパンの製造方法で用いられる、糖分0.5〜40重量%、油脂類15〜60重量%、乳化剤及び水15〜40重量%をホイップしたクリーム状組成物であって、乳化剤に、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種を合計で前記クリーム状組成物の0.5〜10重量%含有させる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベーシック・スイート・ドウ方式によるパンの製造方法で用いられる、糖分0.5〜40重量%、油脂類15〜60重量%、乳化剤及び水15〜40重量%をホイップしたクリーム状組成物であって、乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種を合計で前記クリーム状組成物の0.5〜10重量%含有する製パン用クリーム状組成物。 【請求項2】 糖分5〜40重量%、油脂類15〜60重量%、乳化剤0.5〜10重量%、水20〜40重量%を含有する請求項1記載のクリーム状組成物。 【請求項3】 ホイップ直後の比重が0.4〜0.9である請求項1又は2記載のクリーム状組成物。 【請求項4】 請求項1記載のクリーム状組成物を調製するために用いる、乳化剤と水からなる乳化剤組成物であって、乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種を合計で1〜60重量%、水を10〜90重量%含有する乳化剤組成物。 【請求項5】 ベーシック・スイート・ドウ方式によりパンを製造する方法において、請求項1〜3のいずれかに記載のクリーム状組成物を用いるパンの製造方法。 【請求項6】 小麦粉100重量部に対して、請求項1〜3のいずれかに記載のクリーム状組成物を10〜70重量部配合する請求項5記載のパンの製造方法。 【請求項7】 中種法でパンを製造する方法であって、中種生地に小麦粉と請求項1〜3のいずれかに記載のクリーム状組成物を混合し、本捏生地を作製する請求項5記載のパンの製造方法。 【請求項8】 直捏法でパンを製造する方法であって、小麦粉、イースト及び請求項1〜3のいずれかに記載のクリーム状組成物を混合してパン生地を作製する請求項5記載のパンの製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ベーシック・スイート・ドウ方式によるパンの製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】菓子パンには日本式と欧米式があるが、欧米式の代表的なものにスイートロール(スイート・ドウ)がある。通常、食パンのパン生地には小麦粉100重量部に対して砂糖2〜8重量部、油脂類2〜12重量部が配合されるのに対し、スイートロールのパン生地には小麦粉100重量部に対して砂糖10〜25重量部、油脂類10〜25重量部が配合される。そこで、スイートロールの製造工程においては多量の砂糖と油脂類をパン生地中に良好に分散させ、ソフトな食感を得られるようにすることが重要となり、ベーシック・スイート・ドウ方式(以下SD製法と略記する)等の特殊な製パン方法が用いられている。 【0003】SD製法は、砂糖等の糖分、ショートニング等の油脂類、液卵及び水を、予めミキサーでクリーム状にホイップし、得られたクリーム状組成物を小麦粉やイーストと混合してパン生地を作製する方法である。このSD製法を直捏法で行う場合、小麦粉やイーストと混合される糖分、油脂類、水等の副材料成分の全量がクリーム状組成物として添加される。また、SD製法を中種法で行う場合には、本捏工程において中種生地と混合される糖分、油脂類、水等の副材料成分の全量がクリーム状組成物として添加される。ここで、副材料成分の全量がクリーム状組成物として添加されるとは、直捏法で行う場合には、パン生地に含有させる糖分、油脂類等については、その全量がクリーム状組成物として添加されること、クリーム状組成物とは別個に糖分、油脂類等がパン生地に添加されることはないことを意味する。また、中種法で行う場合には、本捏工程において添加される糖分、油脂類等については、その全量がクリーム状組成物として添加されること、クリーム状組成物とは別個に糖分、油脂類等がパン生地に添加されることはないことを意味する。 【0004】SD製法によると、特に糖類及び油脂類を多く配合するスイートロールにおいて、糖類、油脂類及び水が予めホイップされていることによりそれらの分散性が高まるので、■生地吸水を充分に適確に行える、■無理のない生地混捏ができる、■油脂の多量使用を可能にし、ソフトなパンを作ることができる、という利点を得られる(雁瀬大二郎著「パン製法」,p332,沼田書店(1964))。これに対し、例えば、糖類を単独でパン生地に添加すると、その部分でパン生地の吸水性が局所的に高まり、パン生地が傷み易くなる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来、SD製法で用いるクリーム状組成物は泡沫安定性が低く、室温で放置した場合に短時間で離水が生じる。 【0006】そのため、SD製法を大量生産を前提とした連続生産ラインで実施する場合、クリーム状組成物を大量に作り置きすることができないので、その生産回数を増加させなければならず、生産性が低下するという問題が生じる。また、クリーム状組成物の泡沫安定性の低下は、パン生地にべたつきを生じさせるなど、パン生地の物性にも悪影響を及ぼす。パン生地のべたつきは、パン生地の機械耐性を低下させ、パン生地の製パン装置への付着をもたらし、ライントラブルを生じさせる。その結果、パン生地自身にダメージが生じ、パンの容積低下、内相悪化、食感低下といったパンの品質低下が生じる。 【0007】これに対し、本発明は、SD製法で用いるクリーム状組成物の安定性を向上させ、パン生地の物性の低下を防止し、特にパン生地のべたつきを抑制し、パン生地に良好な機械耐性を付与すると共に、SD製法により得られたパンの品質を向上させることを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、SD製法で用いるクリーム状組成物に特定の乳化剤を特定量配合することによりクリーム状組成物の泡沫安定性が向上し、それによりパン生地の機械耐性が高まり、パンの品質が向上することを見出した。 【0009】即ち、本発明は、ベーシック・スイート・ドウ方式によるパンの製造方法で用いられる、糖分0.5〜40重量%、油脂類15〜60重量%、乳化剤及び水15〜40重量%をホイップしたクリーム状組成物であって、乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種を合計で前記クリーム状組成物の0.5〜10重量%含有する製パン用クリーム状組成物を提供する。 【0010】また、本発明は、このクリーム状組成物を調製するために用いる、乳化剤と水からなる乳化剤組成物であって、乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種を合計で1〜60重量%、水を10〜90重量%含有する乳化剤組成物を提供する。 【0011】さらに、本発明は、ベーシック・スイート・ドウ方式によりパンを製造する方法において、上述のクリーム状組成物を用いるパンの製造方法を提供する。 【0012】 【発明の実施の形態】本発明のクリーム状組成物は、SD製法によるパンの製造方法で用いられるものであり、糖分、油脂類及び水の他に特定の乳化剤を含有する。従来のSD製法で用いられるクリーム状組成物では、液卵に含まれるレシチンが乳化剤として作用するが、その効果は十分ではない。そこで、本発明では、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルを使用する。これらは、1種もしくは2種以上の混合系で用いることができる。 【0013】ここで、グリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンと脂肪酸のエステル又はその誘導体をいい、グリセリン脂肪酸モノエステル(通常モノグリセリド)、グリセリン脂肪酸ジエステル、グリセリン有機酸脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン縮合脂肪酸エステル等をあげることができる。特に、グリセリン脂肪酸モノエステルが好ましい。 【0014】グリセリン脂肪酸エステルを形成する脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸等に由来する飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸があげられ、特に飽和脂肪酸が好適であり、更に炭素数が14〜22の飽和脂肪酸が好ましい。これら、脂肪酸は単一で構成されていても良いが、2種以上の混合系で構成されていても良い。 【0015】また、上記グリセリン有機酸脂肪酸モノエステルとは、グリセリン脂肪酸モノエステルの3位のOH基を有機酸でエステル化した化合物である。有機酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸等の低級脂肪酸で構成される脂肪族モノカルボン酸、シュウ酸、コハク酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、クエン酸等のオキシ酸、及びグリシン、アスパラギン酸等のアミノ酸が例示される。特に、クエン酸、コハク酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸が好適である。 【0016】なお、市販のグリセリン有機酸脂肪酸モノエステルは、未反応の有機酸やグリセリン脂肪酸モノエステルを一部含むが、本発明においてはこのような市販のグリセリン有機酸脂肪酸モノエステルを使用できる。 【0017】ポリグリセリン脂肪酸モノエステルを構成するポリグリセリンの具体例としては、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン等から選ばれる1種又は2種以上の化合物が挙げられる。特にグリセロールの重合度が1〜9のものが好ましい。 【0018】ポリグリセリン縮合脂肪酸エステルの具体例としては、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等をあげることができる。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、ポリグリセリンと縮合リシノレイン酸とのエステルであり、例えば、グリセリン重合度2〜3のポリグリセリンとリシノール酸の3〜5の縮合リシノレイン酸とのモノもしくはジエステルの混合物を用いることができる。 【0019】また、本発明で用いられるショ糖脂肪酸エステルとは、ショ糖と脂肪酸のエステルであり、モノ、ジ、トリ及びポリエステル等を用いることができる。この構成脂肪酸としては、炭素数12〜24の脂肪酸の単一又は2種以上の混合系が好ましい。又、HLBは5〜15のものが好適である。 【0020】ソルビタン脂肪酸エステルとは、ソルビタンと脂肪酸のエステルである。この構成脂肪酸としては、炭素数12〜24の脂肪酸の単一又は2種以上の混合系が好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルにはモノエステル型とトリエステル型のものがあるが、本発明ではモノエステル型のものが好適である。 【0021】プロピレングリコール脂肪酸エステルとは、プロピレングリコールと脂肪酸とのエステルである。モノエステル型又はジエステル型のものが用いられ、構成脂肪酸としては炭素数12〜24の脂肪酸の単一もしくは2種以上の混合系が好ましい。特に、モノエステル型が乳化剤の融点の観点から好ましい。 【0022】乳化剤を構成するグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルの合計の含有量はクリーム状組成物の0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。0.5重量%未満であるとクリーム状組成物の泡沫安定性の向上効果が充分では無く、10重量%を超えるとクリーム状組成物を用いて得られたパンの外観や口どけ感が低下する。 【0023】本発明のクリーム状組成物においては、乳化剤として、この他、必要に応じてレシチン、レシチン誘導体等を配合してもよい。 【0024】レシチンは、フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジン酸等よりなるリン脂質混合物であって、大豆あるいは卵黄等から得られるレシチンが代表的である。また、レシチン誘導体としては、リゾレシチン、リゾフォスファチジン酸などが挙げられる。 【0025】クリーム状組成物を調製する際の乳化剤の添加形態としては、乳化剤単体としてもよく、その分散性を向上させるために乳化剤を水分散性素材に担持させてもよく、クリーム状組成物を構成する糖分、油脂類、水と予め混合することにより乳化油脂組成物の形態としてもよい。特に、油中水型エマルジョンとして添加することが好ましい。これによりクリーム状組成物を所定比重までホイップするのに要する時間を短縮することができる。 【0026】乳化剤単体として添加する場合において、該乳化剤が常温で固体状態であるときは、乳化剤の分散性を高めるため、必要に応じて細かく粉砕し、粉末もしくは微粉末の形態で添加することが好ましい。 【0027】また、乳化剤を水分散性素材に担持させて添加する場合、水分散性素材としては、糖類、デキストリン、多糖類、澱粉分解物、蛋白質、蛋白質分解物等が挙げられる。乳化剤を水分散性素材に担持させる方法としては、水の存在下、加熱状態で乳化剤と水分散性素材を混合攪拌した後、スプレードライ等の方法により乾燥する方法が挙げられる。 【0028】乳化剤を乳化油脂組成物の形態として添加する場合、その乳化形態は特に限定されず、油中水型、水中油型、更に二重乳化型、D相乳化型等とすることができる。さらに、乳化剤の分散性向上を目的として、乳化剤が液晶状態もしくはα結晶ゲルの状態をとるようにしてもよい。 【0029】また、乳化油脂組成物には、乳化安定性の向上あるいは分散性の向上を目的として、糖分、油脂類、水の他に、保存料、pH調整剤、色素、香料等を適宜使用しても良い。 【0030】一方、クリーム状組成物を構成する糖分としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類、マルトース、ショ糖、麦芽糖、水飴、異性化糖、転化糖、サイクロデキストリン、分岐サイクロデキストリン、デキストリンなどの多糖類、澱粉加水分解物などの還元糖等を使用することができ、これらは1種又は2種以上の混合系で使用することができる。ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類は、風味が劣り、パン生地がねとつき易くなるので好ましくない。さらに、クリーム状組成物には、クリーム安定性の向上の観点から、増粘多糖類を添加することが好ましい。増粘多糖類としては、アラビアガム、カラギーナン、ローカストビンガム、キサンタンガム、グアーガム、タマリンド種子多糖類、タラカントガム等が挙げられる。 【0031】クリーム状組成物における糖分の含有量は、製造するパンの種類等に応じて適宜定めることができるが、通常は0.5〜40重量%が好ましく、クリーム状組成物の泡沫安定性の点から5〜40重量%がより好ましく、10〜35重量%がさらに好ましく、特に20〜35重量%が好ましい。糖分の含有量が少なすぎるとクリーム状組成物の泡沫安定性が低下し、多すぎるとパン生地がべたつくようになる。 【0032】油脂類としては、大豆油、ナタネ油、ヒマワリ油、オリーブ油、サフラワー油、カボック油、パーム油、コーン油、綿実油、ヤシ油、パーム核油等の植物油脂類、牛脂、ラード、魚油、鯨油、乳脂等の動物油脂類のいずれも使用することができ、これらを水添処理したもの、エステル交換したもの等も使用できるが融点が約42℃以上のものを用いるとクリーム状組成物のホイップ性が低下し、それを用いて得られるパンの食感が劣るので好ましくない。また、上述の油脂類は、単独もしくは2種類以上の混合系で使用することができる。油脂類の使用形態としては油脂そのものに加え、ショートニング、マーガリン及び乳化形態(油中水型、水中油型等)が挙げられる。 【0033】クリーム状組成物における油脂類の含有量は、製造するパンの種類等に応じて適宜定めることができるが、通常は15〜60重量%が好ましく、25〜50重量%がより好ましい。油脂類の含有量が少なすぎるとパンの品質において柔らかさとしっとり感が低下し、多すぎるとクリーム状組成物の泡沫安定性が低下する。 【0034】また、クリーム状組成物における水の含有量は、製造するパンの種類等に応じて適宜定めることができるが、通常は15〜40重量%が好ましく、20〜40重量%がより好ましく、20〜35重量%がさらに好ましい。水の含有量が少なすぎるとパンの品質において柔らかさとしっとり感が低下し、多すぎるとクリーム状組成物の泡沫安定性が低下する。 【0035】本発明のクリーム状組成物には、糖分、油脂類、乳化剤、水の他に、牛乳、脱脂粉乳、生クリーム、バター等の乳成分、食塩、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤、蛋白質、アミノ酸、pH調整剤、色素、香料等を配合することができる。 【0036】本発明のクリーム状組成物は、乳化剤、糖分、油脂類、水、その他必要に応じて配合される各成分をミキサー、プレッシャーミキサー、コンテニアスミキサー等で混合し、クリーム状にホイップすることにより得ることができる。この場合、ホイップ直後の比重が0.4〜0.9、品温30℃でホイップ1時間後の比重も0.4〜0.9、特に0.5〜0.8となるようにすることが好ましい。なお、製パンに使用する、水、油脂、糖類を含有する練り込み油脂としては、各成分を撹拌乳化するがホイップはしていないものが知られているが(特開平6−78672号公報等)、本発明のクリーム状組成物は、SD製法に用いるものであるため、ホイップを必須とする点が異なる。十分にホイップされておらず、比重が大き過ぎると、ベーシック・スイート・ドウ方式によるパン生地の改善効果が得られ難くなり、反対に比重が小さすぎるとパン生地に対するクリーム状組成物の混合分散性が劣るので好ましくない。 【0037】また、本発明のクリーム状組成物の調製方法としては、予め、クリーム状組成物の主原料である乳化剤と水の一部を混合して乳化剤組成物としておき、その乳化剤組成物と、油脂類、糖分、水の残部、その他の任意成分とを混合し、ホイップすることにより得てもよい。それにより、クリーム状組成物の調製時のミキシング時間を短縮し、また、クリーム状組成物の泡沫安定性を向上させることができる。この場合、乳化剤組成物には、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる乳化剤1〜60重量%、好ましくは2〜20重量%と、水10〜90重量%、好ましくは20〜50重量%を含有させる。 【0038】また、この乳化剤組成物には、クリーム状組成物を構成する糖分や油脂類の一部又は全部を含有させてもよい。糖分を含有させる場合、その含有量は15〜50重量%とすることが好ましい。 【0039】こうして得られる本発明のクリーム状組成物は、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョンのいずれの形態もとり得るが、安定性の点から、配合する油脂類の種類、界面活性剤の種類、その組合せ、成分比率等を適宜調製することにより、油中水型エマルジョンとすることが好ましい。 【0040】本発明のクリーム状組成物は、従来のSD製法で使用されていたクリーム状組成物に比して泡沫安定性が著しく高く、30℃で1時間放置しても離水しない。したがって、クリーム状組成物を大量に作り置きすることが可能となり、SD製法を、大量生産を前提とした連続生産ラインで生産効率高く実施することが可能となる。また、パン生地にべたつきが生じにくく、パン生地の機械耐性も向上し、パンの品質を向上させることができる。また、このような本発明のクリーム状組成物の効果は、特に、油脂類や糖分を多く配合するスイートロール等において有効となる。 【0041】本発明のパンの製造方法は、SD製法でパンを製造する方法において、糖分、油脂類、乳化剤及び水を含有するクリーム状組成物として、上述のように特定の配合の本発明のクリーム状組成物を用いることを特徴としている。このクリーム状組成物は、小麦粉100重量部に対して10〜70重量部配合することが好ましく、30〜60重量部配合することがより好ましい。 【0042】クリーム状組成物として、上述の本発明のクリーム状組成物を用いる以外、本発明のパンの製造方法は公知の手法によることができる。 【0043】したがって、パンの原材料としては、上述のクリーム状組成物の他に、小麦粉、イースト、イーストフード、化工澱粉、水、乳製品、食塩、糖類、調味料(グルタミン酸ソーダ類や核酸類)、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤、蛋白質、アミノ酸、化学膨張剤、フレーバー等を挙げることができ、パン生地におけるこれらの配合量は、従来のSD製法による場合と同様とすることができる。例えば、スイートロールを製造する場合、パン生地は、小麦粉100重量部に対して砂糖10〜25重量部、油脂類10〜25重量部から調製することができる。 【0044】本発明のパンの製造方法は、直捏法、中種法、液種法等の種々の製パン方法に適用することができる。例えば、中種法でパンを製造する場合、図1に示したように、中種工程では、小麦粉、イースト及び水を捏ねて中種生地を得、それを醗酵させることにより中種醗酵生地を調製し、本捏工程で、中種醗酵生地に小麦粉と本発明のクリーム状組成物を混合して本捏生地を得、それを醗酵させて本捏醗酵生地を作製する。直捏方法でパンを実施する場合には、図2に示すように、小麦粉とイーストと本発明のクリーム状組成物とを混合して醗酵させ、パン生地を作製する。 【0045】中種法は、安定した品質でパン生地を製造できる等の点から、工業的な連続生産ラインで多用されているところ、本発明のクリーム状組成物を使用すると、中種法でSD製法を生産効率よく実施することができる。したがって、ソフトな感触のパン、特に油脂類や糖分を多く含むパンを生産効率よく製造することが可能となる。 【0046】本発明のパンの製造方法により得られるパンの種類としては、食パンの他に、フィリングなどの詰め物をしたパンも含まれ、特殊パン、調理パン、菓子パンなどを挙げることができる。具体的には、食パンとしては白パン、黒パン、フランスパン、バラエティーブレッド、ロール(テーブルロール、バンズ、バターロールなど)が挙げられる。特殊パンとしては、マフィンなど、調理パンとしてはホットドッグ、ハンバーガーなど、菓子パンとしてはジャムパン、あんパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン、スイートロール、リッチグッズ(クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュペストリー)などが挙げられる。 【0047】 【実施例】乳化剤の添加形態として、粉末乳化剤1、乳化物1及び乳化物2を以下の参考例1〜3により調製した。 【0048】参考例1(粉末乳化剤1の調製) グリセリン脂肪酸モノエステル(商品名 エキセルT−95、花王社)90重量部を加熱溶融し、これにカゼインナトリウム5重量部、デキストリン(DE=10)5重量部を添加し、スプレードライ法により室温下に散布、冷却し、粉末乳化剤1を得た。 【0049】参考例2(乳化物1の調製) ナタネ白絞油18重量部、グリセリンオレイン酸ジエステル8重量部を加熱溶解し、これにグリセリン脂肪酸モノエステル(商品名 エキセルT−95、花王社)15重量部、大豆レシチン0.5重量部を添加し、加熱融解し油相部とした。 【0050】一方、ショ糖エステル(HLB11)2重量部を35重量%濃度のソルビトール水溶液56.5重量部に分散し、これを加熱し水相部とした。 【0051】ホモミキサーを用い、攪拌しながら油相部に水相部を加えて乳化混合し、水中油型乳化組成物(乳化物1)を得た。 【0052】参考例3(乳化物2の調製) グリセリンジ脂肪酸エステル(ナタネ油由来 上昇融点15℃以下)24.9重量部、グリセリンモノ脂肪酸エステル(ナタネ油由来)0.8重量部、グリセリントリ脂肪酸エステル(ナタネ油由来)13.9重量部、レシチン0.4重量部からなる均一混合物に、水58.8重量部及びペクチン1.4重量部からなる均一混合物を混合乳化し、油中水型乳化物(乳化物2)を得た。 【0053】実施例1〜3、比較例1〜4(クリーム状組成物の調製) 表1の成分を次のように調製して実施例1〜3、比較例1〜4のクリーム状組成物を得た。 【0054】まず、縦型ミキサー(10コート、関東ミキサー社)にビーターを用い、このミキサーに、表1の成分のうち水以外の成分を入れ、低速30秒、高速3分で混合し、それに水(実施例1〜3、比較例1、2、4)、又は全卵及び卵黄(比較例3)を3回又は4回に分けて加え、撹拌することによりホイップし、クリーム状組成物を得た。 【0055】各クリーム状組成物の乳化剤、油脂類、水、糖分(多糖類含む)の組成比率を表2に示す。なお、比較例3の乳化剤の組成比率は、全卵及び卵黄にそれぞれレシチンが3.67%、10.23%含まれるとして算出したものである。 【0056】 【表1】 (重量部) 実施例 比較例 1 2 3 1 2 3 4 粉末乳化剤1 − − − 0.05 3 − −乳化物1 5 10 5 − − − −乳化物2 − − 25 − − − −レシチン(*2) 0.1 0.1 0.1 − − − −ショートニンク゛(*1) 20 20 − 5 5 12 20バター − − − − − 12 −砂糖 15 20 20 5 5 25 20グァーガム − 0.1 0.05 − − − −脱脂粉乳 2 2 2 2 2 8 2食塩 1 1 1 1 1 2 1全卵 − − − − − 12 −卵黄 − − − − − 8 −水 17 6 6 7 10 − 6 クリーム状組成物比重(直後) 0.7 0.5 0.7 0.8 0.7 0.7 0.8比重(1時間) 0.7 0.5 0.7 −(*3)−(*3)−(*3)−(*3)(*1) ショートニング(商品名 ニューエコナV、花王社) (*2) レシチン(商品名 日清レシチンDX、日清精油社) (*3) 分離により比重測定不能【0057】 【表2】 (組成比率:重量%) 実施例 比較例 1 2 3 1 2 3 4 乳化剤 1.44 2.76 1.64 0.22 10.38 1.59 0.00油脂類 35.26 37.97 18.91 24.81 19.13 30.45 40.61水 31.33 15.98 38.43 35.04 38.56 19.47 12.45糖類 26.98 37.89 35.86 24.95 19.81 31.65 40.82クリーム安定性 ○ ◎ ◎ △ △ △ △ 【0058】評価1:クリーム安定性評価実施例1〜3及び比較例1〜4の各クリーム状組成物のホイップ直後の比重と、30℃にて1時間放置した後の比重を測定した。結果を表1に示す。 【0059】実施例1〜3及び比較例1〜4の各クリーム状組成物100gを500mLビーカーに秤量し、30℃にて1時間放置した後のクリーム状態を目視にて以下の基準で4段階に評価した。 ◎;クリーム全体において、離水が無く安定な状態○;クリームのごく一部に離水が見られるものの、クリーム容積の減少がほとんど無く安定な状態△;離水が大きく、クリーム容積の減少が十分目視にて確認できる状態×;離水及びクリーム容積の減少が著しい状態【0060】結果を表2に示す。表2から、グリセリンジ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル又はグリセリントリ脂肪酸エステルを乳化剤として0.5〜10重量%含有する各実施例のクリーム状組成物はクリーム安定性が優れていること、これに対してグリセリン脂肪酸モノエステルの組成比率が0.5重量%より低い場合(比較例1)や10重量%を超える場合(比較例2)はクリーム安定性が低く、また乳化剤の組成比率は1.72重量%であるが、乳化剤がレシチンのみからなり、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれも含まない場合(比較例3)にも乳化安定性が低いことがわかる。 【0061】評価2:製パン試験(1)製パン実施例1〜3及び比較例1〜4のクリーム状組成物を使用し、表3に示した配合によりSD製法で中種法により製パンした。この場合、中種工程、本捏工程及びパンの焼成工程はそれぞれ以下のように行った。 【0062】(i)中種工程まず、縦型ミキサー(10コート、関東ミキサー社、)にフックを用い、このミキサーに中種配合材料を入れ、低速3分、中高速2分で混捏(捏上温度23℃)し、中種生地とした。次に、これを発酵(中種発酵)させた。中種醗酵の条件を以下に示す。 中種発酵温度 26℃中種発酵相対湿度 75%中種発酵時間 4時間30分中種発酵終了温度 29.5℃【0063】(ii)本捏工程縦型ミキサー(10コート、関東ミキサー社)に中種発酵生地、本捏原材料(小麦粉)及びクリーム状組成物を入れ、低速3分、中低速7分、高速1分で混捏し、本捏生地とした。本捏生地の捏上温度は26.5℃である。 【0064】次に、混捏でダメージを受けた生地を回復させるために27.0℃にてフロアータイムを30分とり、この後に230gの生地に分割した。分割での生地ダメージを回復させるためにベンチタイムを27.0℃で20分とり、モルダーで成型した。成型物6個を角型の食パン型に入れ発酵(ホイロ)を行なった。ホイロの条件を以下に示す。 ホイロ温度 38℃相対湿度 80%RHホイロ時間 50分【0065】(iii)パンの焼成工程本捏工程で得られたパン生地を210℃のオーブンで40分間焼成した。焼成後、20℃において90分間冷却し、ビニール袋に入れて密閉し、更に20℃において24時間保存を行い、食パンサンプルとした。 【0066】 【表3】 (重量部) 実施例 比較例 中種配合材料 1 2 3 1 2 3 4 小麦粉 70 70 70 70 70 70 70イースト 2 2 2 2 2 2 2イーストフート゛ 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1乳化物1 0 0 2 0 0 0 0水 40 40 40 40 40 40 40本捏配合材料中種醗酵生地 112.1 112.1 114.1 112.1 112.1 112.1 112.1小麦粉 30 30 30 30 30 30 30クリーム状組成物 60.1 59.2 59.15 20.05 26.0 79.0 49.0【0067】各実施例及び比較例の製パン作業性評価及び食パンサンプルについて官能評価を行なった。 【0068】(2)製パン評価本捏工程における捏上直後の本捏生地の物性、分割時の生地物性 、モルダー成形時の生地物性、焼成後の食パンの品質について以下の基準で評価した。結果を表4に示す。 【0069】(i)本捏生地の物性、分割時の生地物性の評価基準◎ 生地のべたつきが無く、伸展性も良好○ 上記評価(◎)に比べて、べたつき、伸展性がやや劣るものの製パン作業性には問題は無い△ 生地のべたつきあり、伸展性も悪く、製パン作業困難なレベル× 生地のべたつきが大きく、伸展性も悪く、製パン作業が不可能なレベル【0070】(ii)モルダー成型時の生地物性の評価基準◎ 生地の肌切れも無く、伸展性が良好な状態○ 生地に若干の肌切れが発生するが、伸展性は問題無く、製パン作業性には問題の無いレベル△ 生地の肌切れが大きく、伸展性も悪く、製パン作業上問題のあるレベル× 生地の肌切れが非常に大きく、モルダーに生地の付着を生じ、製パン作業性が不可能なレベル【0071】(iii)食パンの品質10名のパネラーにより、外観(均一性、きめの細かさ、腰折れの程度、シワ)、食パン内相(均一性、きめの細かさ)、しっとり感、柔らかさ、口どけのそれぞれについて良否を官能評価し、その官能評価の結果から以下の基準により評価した。 ◎ 10名中8名以上が良好であると判断した○ 10名中5〜7名が良好であると判断した△ 10名中3〜4名が良好であると判断した× 10名中8名以上が良好ではないと判断した【0072】 【表4】 実施例 比較例 本捏工程の生地 1 2 3 1 2 3 4 捏上直後 ○ ◎ ◎ △ ○ △ △ 分割時 ○ ◎ ◎ △ ○ △ △ モルダー成型 ○ ◎ ◎ △ ○ △ △食パン 外観 ○ ◎ ◎ △ △ △ × 内相 ○ ◎ ◎ △ △ △ × しっとり感 ○ ◎ ◎ △ ◎ △ × 柔らかさ ○ ◎ ◎ △ ◎ △ × 口どけ ○ ○ ◎ △ × × △ 【0073】表4から、本発明のクリーム状組成物を用いた各実施例の製パン方法によれば、高品質の食パンを得られること、特に、実施例2、3の食パンは、クリーム状組成物に増粘多糖類(グアーガム)を添加しているのでクリーム状組成物の安定性が高まり、一層高品質の食パンとなっていること、これに対して本発明のクリーム状組成物を用いない比較例1〜4の製パン方法によれば、捏上直後、分割時、モルダー成型時のいずれにおいても生地物性が劣り、結果的に食パンの品位も劣っていることがわかる。 【0074】 【発明の効果】本発明のクリーム状組成物は、クリームの安定性が向上しているので、パン生地の物性の低下を防止し、特にパン生地のべたつきを抑制することができる。したがって、SD製法でパンを製造するにあたり、パン生地に良好な機械耐性を付与し、製パン作業性を向上させることができる。また、パンの品質についても、外観、食感の双方を向上させることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000918 【氏名又は名称】花王株式会社 【住所又は居所】東京都中央区日本橋茅場町1丁目14番10号
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| 【出願日】 |
平成14年7月2日(2002.7.2) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100095588 【弁理士】 【氏名又は名称】田治米 登 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−250445(P2003−250445A) |
| 【公開日】 |
平成15年9月9日(2003.9.9) |
| 【出願番号】 |
特願2002−193765(P2002−193765) |
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