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【発明の名称】 油脂加工食品の安定化製造法
【発明者】 【氏名】吉田 哲哉
【住所又は居所】東京都江戸川区東葛西3丁目17番9号 月島食品工業株式会社内

【氏名】東海林 茂
【住所又は居所】東京都江戸川区東葛西3丁目17番9号 月島食品工業株式会社内

【氏名】荏原 紘
【住所又は居所】東京都江戸川区東葛西3丁目17番9号 月島食品工業株式会社内

【要約】 【課題】油脂加工食品において、口溶け、風味の発現性を良好にし、油脂の粗大結晶化を抑制し、長期間において油脂加工食品の安定性を向上させる製造方法を提供する。

【解決手段】油脂または油脂を含むエマルションを超微細化、微粒乳化、加圧処理後、冷却捏和することで粗大結晶化を抑制し、安定した油脂組成物を得る。熟成工程の簡略化が可能であり、生産効率が向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 油脂またはそのエマルションを超微細化、微粒乳化、加圧処理後、晶析することからなる油脂加工食品の製造方法。
【請求項2】 油脂またはそのエマルションを超微細化、微粒乳化、加圧処理後、晶析して得られたことを特徴とする油脂加工食品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油脂または油脂を含むエマルション等を冷却して油脂を晶析させることで、液状、ペースト状または塑性状の油脂加工食品を製造する方法に関し、更に詳しくはマーガリン、ショートニング、乳等を主原料とする食品などの油脂加工食品を製造する際の製造工程の短縮、効率化及び油脂結晶の粗大化が解消され、長期間にわたって物性の安定した油脂加工食品を得る製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】マーガリン、ショートニング等の油脂加工食品は、融解状態の油脂、あるいはそのエマルションを冷却捏和し、結晶化させる製造方法が用いられている。しかしながら、その製造工程に用いられている冷却捏和装置では、冷却時間が短く、晶析が充分終了するには至らず、その結果、製品化された後にもゆっくりと晶析が進んでいるのが現状である。この際に生じる結晶は、一般的には粗大結晶となりやすく、製品のキメを粗くしたりひび割れを生じさせたり、伸び易さを悪くしたりホイップ性を低下させたりして油脂加工食品における数々の商品性を著しく低下させる原因となっている。
【0003】これらの問題を解消するための一つの手段として、油脂加工食品の油脂結晶を析出させた後、これらの油脂加工食品を融点より2〜7℃程度低い温度で数時間から数日間保存させ結晶を安定化させるテンパリングと呼ばれる熟成工程をとることが必要なため、エネルギー的にも時間的にも大きなロスとなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述のように油脂加工食品において油脂を晶析させる際に、充分に結晶を析出させ、長期間にわたり安定化させるためには多大な時間を要する為、油脂加工食品の製造において、晶析を短時間で終了させ、なおかつ結晶を短時間で安定化させる技術の開発が待ち望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、融解した油脂またはその油脂を含むエマルションを冷却前に何らかの方法で強制的に超微細化、微粒乳化、加圧状態にすることで、晶析時間の短縮と油脂結晶が短時間で安定し、保存安定性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】即ち、本発明は油脂またはそのエマルションを超微細化、微粒乳化、加圧処理後、晶析する油脂加工食品の長期安定化法、及びこの方法により結晶の粗大化を防止して得られる長期安定化された油脂加工食品である。更に好ましい実施態様としては超微細化、微粒乳化、加圧処理時の圧力が10Mpa以上、経済効率を考慮すれば、望ましくは10〜150Mpaの範囲である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に本発明の詳細な実施形態を説明する。本発明で用いられる油脂は精製パーム油、パームステアリン、カカオバター等のチョコレート油脂、あるいはその代用脂、ラード等が挙げられ、本発明はこれらの結晶が粗大化し易い性質を持っている油脂に対してより効果的であるが、その他通常の油脂加工食品に用いられる食用油脂であっても特に限定されず、動物油脂、植物油脂、乳脂等の天然油、及びこれらの油脂の硬化油、分別油、エステル交換油等の単独あるいは混合油が使用でき、油脂のみ、あるいは水と乳化されたW/O型、O/W型エマルションとして用いられる。これらの油脂又はそのエマルションにはその他、通常、油脂加工食品に添加される呈味成分、香料、栄養成分、乳化剤、増粘剤、酸化防止剤が含まれていてもよい。
【0008】本発明の油脂加工食品は、油脂又はそのエマルションを、超微細化、微粒乳化、加圧処理後、晶析した後、油脂加工食品を所望の形状に成型することにより得ることができる。また超微細化、微粒乳化、加圧処理を施した後、冷却(捏和)を行ってもよい。
【0009】超微細化、微粒乳化、加圧処理の方法としては特に限定されないが、例えばナノマイザー、ハーモナイザー又はマイクロフルイダイザー等の商品名の分散装置を用いることができる。この装置は表面から裏面へ2個の孔を貫通させた円盤の表面上に、高い圧力の下に液体を押しつけて2個の孔から液体を流出させ、2個の液流を互いに衝突させてその衝撃により、その中に含まれている粒子を粉砕して微細化し、または微細乳化液を作ることを原理としている。
【0010】更に詳しく説明すれば、ナノマイザーと呼ばれる装置はその要部が図1に分解して示したような部分によって構成されている。図1において、フロントディスク1は表面から裏面に貫通する2個の貫通孔11と12とを備え、リアディスク2に向かう裏面上に孔11と12とを結ぶ溝13を備えている。リアディスク2もフロントディスク1と同様に2個の貫通孔21と22とを備え、フロントディスク1に向かう裏面上に孔21と22とを結ぶ溝23を備えている。フロントディスク1はフロント側押さえ3によってリアディスク2に向かって押しつけられ、リアディスク2はリア側押さえ4によってフロントディスク1に向かって押しつけられ、その結果フロントディスク1とリアディスク2とは裏面同士が互いに密接している。しかし、孔11と孔12とは何れも孔21と孔22とに重なるところに位置しないで、溝13と溝23とが互いに交わり垂直に延びるような関係に配置されている。
【0011】フロント側押さえ3内に融解油脂またはそのエマルションが流入され、これに10〜150Mpaの範囲内の圧力が加えられて、油脂またはエマルションはフロントディスク1の孔11と孔12とから2個の液流となって流出する。流出した液流はリアディスク2に衝突して向きを変え、溝13に沿って流れ、その中央で互いに衝突する。衝突した油脂またはエマルションは、リアディスク2側へ移り、リアディスク2の溝23の中央部に衝突してのち、2つに分かれて溝23の両端に向かって流れ、溝23の端に衝突して孔21と22とを通り、リア側押さえ4内へ入りここで合流して流れていく。このようにして油脂またはエマルションはフロントディスク1とリアディスク2とを通る間に衝突の衝撃により、超微細化、微粒乳化、加圧処理がなされる。
【0012】上記のようにして得られた油脂加工食品は原料油脂がパーム系、チョコレート又はその代用脂、ラード等の長期保存中に粗大化し易い結晶を有するものであっても、結晶の粗大化が見られず長期間にわたって安定である。
【0013】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれらによりなんら制限を受けるものではない。なお以下の記載中、特にことわらない限り、「部」は全て「重量部」を表す。
【0014】実施例1、2パーム系の配合油(精製パーム油:パームオレイン=50:50)を60℃に融解し、ナノマイザー処理(50Mpa、100Mpa)し、20℃まで冷却した油脂組成物を示差走査熱量計(DSC)分析して、結晶の安定性を評価した。実施例1は50Mpa処理、実施例2は100Mpa処理のものである。
【0015】比較例1、2実施例と同じ配合油を、ナノマイザーを通さずに、20℃まで冷却したものを比較例1とし、ナノマイザーを通さず、冷却捏和し熟成をとったものを比較例2として実施例と同様に示差走査熱量計(DSC)分析して、結晶の安定性を評価した。
【0016】実施例及び比較例の油脂結晶粒径を観察すると、実施例1、2では50μm程度であり、比較例1では500μm程度であり、ナノマイザー処理することにより、油脂の結晶が微細化されているのを確認することができた。
【0017】結晶安定化の評価実施例1、2及び比較例1、2の油脂をDSCで分析し、結晶の安定化を評価した。すなわち試料2mgをアルミニウム製開放パンに秤量し、−65℃まで冷却の後、5℃/分で昇温分析した。温度、熱量の標準には酸化アルミニウムを用いた。その結果を図2〜5に示した。また、各々の領域ピーク温度及び最終融点を表1に示した。
【0018】
【表1】

【0019】DSCでは安定した結晶ほど融点が高く、吸熱パターンは単一のシャープなピークを示す。逆に不安定な結晶では、吸熱パターンはブロードなピーク、または複数のピークを示すことから、結晶の安定化を判断できる。図2〜5から明らかなように、ナノマイザー処理を行っていない比較例1では、DSCの吸熱パターンがブロードで複数のピークからなり、結晶が安定していないことが判る。これに対してナノマイザー処理を行った実施例1、2は、従来の熟成工程を経た比較例2と同様に油脂結晶が安定化していた。
【0020】実施例3精製パーム油(上昇融点35℃)30部、精製紅花油70部、レシチン0.1部の混合油を65℃に融解して、これを混合油ベースとしたこの混合油ベース84部に水16部を65℃の温度で混合乳化させ、この乳化液をナノマイザー処理(50Mpa)し、20℃まで冷却して得られたマーガリンAを20℃に保存し、24時間毎に乳化安定性(分離の有無)を観察、確認した。その観察結果を表2に示した。
【0021】比較例3実施例3の乳化液をナノマイザー処理せず、20℃まで冷却して得られたマーガリンBを20℃に保存し、同様に24時間毎に乳化安定性を観察、確認した。その観察結果を表2に示した。
【0022】
【表2】

【0023】実施例4硬化大豆油(上昇融点32℃)20部、乳脂80部、レシチン0.2部、グリセリンモノ脂肪酸エステル0.1部の混合油を65℃に融解して油相とした。次いで水70部に脱脂粉乳20部を溶解して65℃に加温調製した水相に、油相10部を加えホモミキサーで予備乳化させ、この乳化液をナノマイザー処理(50Mpa)し、20℃まで冷却して得られたO/W型エマルションCを5℃に保存し、24時間毎に乳化安定性を観察した。その観察結果を表3に示した。
【0024】比較例4実施例4と同様の乳化液をナノマイザー処理せず、20℃まで冷却して得られたO/W型エマルションDを5℃に保存して実施例4と同様に24時間毎に乳化安定性を観察した。その観察結果を表3に示した。
【0025】
【表3】

【0026】
【発明の効果】本発明によれば、油脂加工食品の製造において超微細化、微粒乳化、分散を汚染物混入がなく、かつ多大なエネルギー、時間のロスをなくし、効率よく短時間で達成することができる。また、その油脂加工食品は結晶が長時間安定で、品質の向上を期待できるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】000165284
【氏名又は名称】月島食品工業株式会社
【住所又は居所】東京都江戸川区東葛西3丁目17番9号
【出願日】 平成13年12月25日(2001.12.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−189793(P2003−189793A)
【公開日】 平成15年7月8日(2003.7.8)
【出願番号】 特願2001−403284(P2001−403284)