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【発明の名称】 油脂組成物及びこれを用いてなる加工食品
【発明者】 【氏名】藤村 昌樹

【氏名】中原 良三

【要約】 【課題】食品添加物成分の作用時期を制御することで、食品成分との反応抑制、或いは工程中での効果発現制御を行うこと。それにより、食品添加物成分の有効利用及び使用量の削減、ひいては良好な加工食品を提供すること。

【解決手段】食品添加物成分を水相部に含有させ、油中水型に乳化することによって、食品添加物成分を主として水相部に保持し、油相部により保護する。更に、解乳化を制御することで食品添加物成分の放散を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 主として水相部に食品添加物成分を含有し、油中水型に乳化してなることを特徴とする油脂組成物。
【請求項2】 該食品添加物成分の含有量が1重量%以上、40重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の油脂組成物。
【請求項3】 油中水型に乳化するための乳化剤として、グリセリン飽和脂肪酸モノエステル0.02重量%以上、0.5重量%以下、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル0.1重量%以上、1重量%以下を使用することを特徴とする請求項1または2記載の油脂組成物。
【請求項4】 食品添加物成分が保存料・防かび剤、酸味料、日持向上剤、生地改良剤、酵素、食用色素類からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の油脂組成物。
【請求項5】 請求項1〜4いずれかに記載の油脂組成物を用いてなる加工食品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水相部に食品添加物成分を含有する、油中水型に乳化した油脂組成物の解乳化を制御することにより、食品添加物成分の効果発現のタイミングや食品添加物成分と食品成分との反応のコントロールを可能とした食品添加物成分を含有する油脂組成物及びこれを用いてなる加工食品に関する。
【0002】
【従来の技術】食品添加物成分は、食品の品質向上、保存性向上、加工適性向上、コストダウンなどの目的で加工食品に幅広く使われていることは、周知の通りである。また、食品添加物成分は、微量でも反応性に富む成分であったり、それ自身が不安定である事が多いため、食品添加物成分の本来の目的とする効果を最大限発揮させたり、意図しない食品成分との反応などにより、生地物性が変わったり、食品添加物成分の効果が減殺されることが起こる。更に、食用色素等のように食品使用時のpH,光、熱などによる変質を起こすものや、食品添加物成分の意図しない時期に放散することによる効果の減殺などが起こるものがある。以上の種々の課題を解決するために、食品添加物成分を保護したり、効果発揮をタイミング良く抑えることなどを目的とした工夫が種々行われてきた。具体的には、食品添加物成分をコーティングしたり、添加時期を調整する、マスキング剤などとの併用などの方法が挙げられる。代表的な方法であるコーティングについては、デキストリン、高融点油脂、蛋白質、食塩などによるコーティング、ゼラチンカプセルへの封入、β―サイクロデキストリンによる包接等が実施されてきた。例えば、ビタミンCを10%の油脂でコーティングした武田薬品工業株式会社製の「コーテッドビタミンC」が挙げられる。
【0003】しかしながら、従来の方法では、コーティング剤による被覆がひび割れなどにより完全でなかったり、コーティング剤自身が食品に好ましくない風味を与える、コストが高い、などの問題を有していた。叉、コーティングの崩壊による食品添加物成分の作用時期の制御を目指しても精度を高くすることは困難である。更に、醸造酢やアルコールのようにコーティング自体が不可能な液体の食品添加物成分も存在している。
【0004】一方、マーガリンやバターなどの油中水型の乳化油脂に酸化防止剤や食用色素類、ビタミン類などの添加物を配合することは行なわれているが、目的は乳化油脂自体の品質向上であり、食品添加物成分の効果を食品中で発揮させるに充分な量を配合したものは存在しない。又、酵素を配合した油中水型乳化油脂として、例えば鐘淵化学工業株式会社製の「マイルドソフト」が作られているが、食品への酵素の均一添加の容易化が目的なので、乳化剤としてグリセリン飽和脂肪酸モノエステル、グリセリン飽和脂肪酸コハク酸エステル及びレシチンを使用しており、食品への添加と同時に乳化が壊れようになっており、従って解乳化の制御が出来ず、本発明の目的に使用できる油脂組成物とは言えない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような現状に鑑み、安定にコーティングでき、しかも作用時期の制御が容易で、且つ安価であり、更に対象とする食品添加物成分の種類を拡大することが可能な技術手段と、それを用いた食品添加物成分を含有した油脂組成物及びこれを用いた加工食品を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、食品添加物成分を水相部に含有させ、油中水型に乳化することにより、食品添加物成分を主として水相部に保持し、油相部により保護するという、いわゆる油脂による疑似マイクロカプセル化方法を着想した。 即ち、食品添加物成分を、油中水型に乳化してなる油脂組成物、好ましくは特定の乳化剤、特定の配合を用いて油中水型に乳化してなる油脂組成物とすることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】即ち、本発明の第1は、食品添加物成分を含有し、油中水型に乳化してなることを特徴とする油脂組成物に関する。好ましい実施態様としては、食品添加物成分の含有量が1重量%以上、40重量%以下であることを特徴とする、上記記載の油脂組成物に関する。更に好ましい実施態様としては、油中水型に乳化するための乳化剤として、グリセリン飽和脂肪酸モノエステル0.02重量%以上、0.5重量%以下、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル0.1重量%以上、1重量%以下使用することを特徴とする、上記記載の油脂組成物に関する。別の更に好ましい実施態様としては、食品添加物成分が保存料・防かび剤、酸味料、日持向上剤、生地改良剤、酵素、食用色素類からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする上記記載の油脂組成物に関する。
【0008】本発明の第2は、上記記載の油脂組成物を用いてなる加工食品に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明につき、詳細に説明する。
【0010】本発明でいう食品添加物成分とは、主として食品の保存性向上、物性改良を目的として使用される食品衛生法にて指定されている全ての食品添加物、及び食品衛生法にて指定されていないが、食品添加物成分と同様の目的で使用される食品を含む。食品添加物成分を更に具体的に例示すれば以下の通りである。保存料・防かび剤に分類されるものとして、亜硫酸ナトリウム、安息香酸、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、グリシン、しらこたん白抽出物、ポリリジン、エタノールなどが挙げられ、pH調整剤として用いられる酸味料に分類されるものとして、アジピン酸、クエン酸、乳酸、酢酸、フマル酸、DL−リンゴ酸、イタコン酸、フィチン酸、醸造酢などの有機酸、及びそれらの塩が挙げられる。又、日持向上剤として分類されるものとして、オレガノ抽出物、グレープフルーツ抽出物、シソ抽出物、ショウガ抽出物、ニンニク抽出物、ブドウ果皮抽出物、ワサビ抽出物などが挙げられる。生地改良剤に分類されるものとしては、焼ミョウバン、グルコノデルタラクトン、重炭酸ソーダ(重曹)、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酒石酸水素カリウム、アンモニウムミョウバン等の膨張剤、イーストフード、ビタミンC,グルタチオン、L−システイン、グルタチオン酵母粉末、グルテン、グリアジン、グルテニン、ブロム酸カリウムなどが挙げられる。酵素としては、α―アミラーゼ、β―アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラーゼ、リポキシゲナーゼ、リパーゼ、トランスグルタミナーゼ、などが挙げられる。食用色素類としては、赤色3号、赤キャベツ色素、ベニバナ黄色素、クチナシ青色素、紅麹色素、クチナシ黄色素、パプリカ、イチゴ果汁、紅茶エキスなどが挙げられる。上記食品添加物成分は、単独で配合することも複数のものを組合わせて配合することも可能である。
【0011】上記の食品添加物成分の配合量は、油脂組成物中、1重量%以上、40重量%以下が好ましく、更に好ましい範囲は2重量%以上、25重量%以下である。配合量が1重量%以上であれば、目的とする食品添加物成分を油中水型の乳化により保護した後、加工食品へ添加することで、乳化が熱などにより壊れることにより、食品添加物成分として保存性向上、制菌性向上、ガス発生による生地改良などの効果が発揮される。又、食用色素の場合は、最後まで乳化が壊れない様になる為、pHの影響を受けることなく、色流れも防止できて、本来の着色が安定的に達成される。一方、配合量が40重量%以下であれば、食品添加物成分を油中水型乳化に安定的により保護することが出来る。
【0012】本発明における油脂組成物に用いられる油脂は、食用に適するものであれば特に限定されないが、例えば、コーン油、あまに油、桐油、サフラワー油、かや油、胡桃油、芥子油、向日葵油、綿実油、菜種油、大豆油、辛子油、カポック油、米糠油、胡麻油、玉蜀黍油、落花生油、オリーブ油、椿油、茶油、ひまし油、椰子油、パーム油、パーム核油、カカオ脂、シア脂、ボルネオ脂等の植物油脂や、魚油、鯨油、牛脂、豚脂、乳脂、羊脂等の動物油脂が挙げられ、また、それらの硬化油、エステル交換油、分別油等から目的に応じて適宜選択し、これを単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。かかる油脂の配合量は油脂組成物中、30重量%以上、90重量%以下が好ましく、更に好ましい範囲は50重量%以上、80重量%以下である。使用量が30重量%以上及び90重量%以下であれば、油中水型の乳化が満足に得られ、油脂組成物自体が安定となり、水相中の食品添加物成分が油脂中に保護され、工程中での食品添加物成分の放散やグルテン、澱粉などの食品成分との反応を制御することが可能となる。
【0013】本発明における油脂組成物に用いられる乳化剤は、油中水型に乳化できるものであれば、特に種類は問わない。即ち、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、CSL、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が例示できる。実際の乳化剤の選択は、食品の加工工程での混練によるストレスの程度、加熱条件、食品全体のpH、食塩の含有量、などの条件、及び本発明でいう水相中の食品添加物成分の種類や量を考慮した上で、望ましい解乳化のタイミングを考慮して実施する。特に強い乳化が必要な場合には、グリセリン脂肪酸エステルの中でも、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン飽和脂肪酸モノエステルを用いることが好ましい。更に、それらを併用することが好ましい。
【0014】ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルについては、ポリグリセリン系の乳化剤であって、主としてヒマシ油を原料とする縮合リシノレイン酸とポリグリセリンとのエステル化により得ることができる。かかるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの使用量は、油脂組成物中、0.1重量%以上、1重量%以下が好ましく、更に好ましい範囲は0.2重量%以上、0.8重量%以下である。使用量が0.1重量%以上であれば、油中水型の乳化がほぼ満足に得られ、油脂組成物自体が安定となる。一方、1重量%以下であれば、乳化と解乳化の制御が満足に行われやすく、食品添加物成分の効果を加工食品中に狙い通りに発現することができるし、且つ乳化剤特有の悪い風味が加工食品に影響する恐れもない。
【0015】かかるグリセリン飽和脂肪酸モノエステルの使用量は、油脂組成物中、0.02重量%以上、0.5重量%以下が好ましく、更に好ましい範囲は0.05重量%以上、0.2重量%以下である。使用量が0.02重量%以上であれば油脂組成物の解乳化の制御を満足に行うことができ、加工食品中に食品添加物成分の効果を狙い通りに発現することができる。一方、0.5重量%以下であれば、食品添加物成分を含有する油脂組成物自体の乳化安定性を高く保持することでき、且つ、乳化剤特有の悪い風味が加工食品に影響する恐れがない。またグリセリン飽和脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸は炭素数16〜22の飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0016】本発明における油脂組成物に用いる乳化剤の内、更に好ましくは、グリセリン不飽和脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖不飽和脂肪酸ポリエステルを併用することである。グリセリン不飽和脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖不飽和脂肪酸ポリエステルについては、構成する脂肪酸は特に限定されず、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エルカ酸等が挙げられ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、グリセリン不飽和脂肪酸モノエステルはグリセリン飽和脂肪酸エステルと混合しても用いられる。かかるグリセリン不飽和脂肪酸モノエステルの使用量は、油脂組成物中、0.1重量%以上、0.5重量%以下が好ましく、更に好ましい範囲は0.1重量%以上、0.3重量%以下である。使用量が0.1重量%以上であれば、油中水型乳化の解乳化制御を満足に行うことができる。一方、0.5重量%以下であれば、食品添加物成分を含有する油脂組成物自体の乳化安定性を高く保持することでき、且つ、乳化剤特有の悪い風味が加工食品に影響する恐れがない。ポリグリセリン脂肪酸エステルあるいは蔗糖不飽和脂肪酸ポリエステルの使用量は、それぞれ、油脂組成物中、0.05重量%以上、0.3重量%以下が好ましく、更に好ましい範囲は0.05重量%以上、0.2重量%以下である。使用量が0.05重量%以上であれば、油脂組成物の解乳化制御が満足に行うことができる。一方、0.3重量%以下であれば、食品添加物成分を含有する油脂組成物自体の乳化安定性を高く保持することでき、且つ、乳化剤特有の悪い風味が加工食品に影響する恐れがない。
【0017】なお、本発明に用いる食品添加物成分を含有する油脂組成物中には、該油脂組成物を安定化させるためのデキストリン類、澱粉類、キサンタンガム、グアーガム等の増粘多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリデキストロース、小麦ふすま、大豆繊維等の食物繊維も使用できる。また、商品性を向上するための香料、着色料、酸化防止剤、保存料等も適宜使用することができる。
【0018】本発明の食品添加物成分を含有する油脂組成物が添加される加工食品としては、パン、ドーナツ、ケーキ、マフィン、麺類、パスタなどの小麦粉加工品類、ハム、ソーセージ、ミートボール、ハンバーグなどの畜肉加工品、かまぼこ、ちくわなどの水産練り製品、餃子、焼売、卵焼きなどの惣菜類、その他にカレー・ソース、ドレッシング・マヨネーズ類、味噌、醤油、ミックス粉、調理済み加工食品などが例示できる。
【0019】本発明の油脂組成物は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、油脂中に乳化剤を加え、70℃に加熱、溶解したものを油相とする。一方、水にグルコノデルタラクトンを加え、必要に応じてデキストリン、キサンタンガムを加え、十分混合した後に70℃に加熱して殺菌したものを水相とする。油相中に水相を徐々に加えて油中水型に乳化した後、冷却して本発明の食品添加物成分を含有する油脂組成物を得る。このようにして得られた油脂組成物は、食品添加物成分を含有する油脂組成物における食品添加物成分の配合量、加工食品における食品添加物成分の必要量、食品の原材料や加工条件、などによっても様々であるが、本発明にいう食品添加物成分を添加する前の加工食品100重量部に対して、好ましくは0.05重量部以上、10重量部以下、更に好ましくは0.2重量部以上、5重量部以下の割合で添加して使用することができる。食品添加物成分を含有する油脂組成物の配合量が0.05重量部以上であると食品添加物成分の本来の機能が発揮されその効果が発現される。また、10重量部以下であると食品の風味を損なうこと無く経済的に効果を得ることが出来る。
【0020】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」「%」は断りのない限り重量基準である。
【0021】(実施例1)表1に示す配合に従い、水相部にグルコノデルタラクトンを含有する油中水型に乳化してなる油脂組成物を、約70℃で解乳化するに設計して常法にて作製した。
【0022】(実施例2)表1に示す配合に従い、水相部にグルコノデルタラクトンを含有する油中水型に乳化してなる油脂組成物を、約50℃で解乳化するに設計して常法で作製した。
【0023】
【表1】

【0024】(実施例3,4、比較例1,2) マフィンの製造実施例1、2で作製した油脂組成物を用いて、表2に示す配合で、マフィンバッターを調製し、生地調製後15分放置後、180℃のオーブンで焼成した(実施例3,4)。
【0025】比較例として、実施例1,2の油脂組成物に替えて、焼ミョウバンを配合した市販のベーキングパウダー(奥野製薬工業株式会社製、商品名「O印」)(比較例1)、グルコノデルタラクトンを配合した市販のベーキングパウダー(奥野製薬工業株式会社製、商品名「デラックス」)(比較例2)を使用して同様にマフィンを作製した。出来たマフィンのボリュウム及び外観を比較した。その結果を表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】表2の結果から、コーティングされていないグルコノデルタラクトンを含む比較例2に比べ、実施例1、2で作製した油脂組成物を用いた実施例3、4のマフィンは、ボリュウム及び形状ともに優れ、特にオーブン中で解乳化が起こり重曹と反応してガス発生を起こした実施例1の油脂組成物を用いたものが優れていることが分かる。また、マフィンに好適とされる比較例1と較べても同等かそれ以上のマフィンを作ることが出来た。また比較例1で用いた焼ミョウバンは、近年アルミニウムの安全性の面から避けられる傾向に有り、実施例1、実施例2の油脂組成物は、その面からも優れた生地改良剤であることが分かる。
【0028】又、調製したマフィンバッターのpHの変化を測定した結果を表3に示す。
【0029】
【表3】

【0030】表3の結果から、コーティングされていないグルコノデルタラクトンを含む比較例2に比べ、実施例1で作製した油脂組成物に含まれるグルコノデルタラクトンは、重曹との反応が遅れることでオーブン中での品温である70℃を超えてからpHの上昇を示すことから、重曹との反応が望ましいタイミングに制御されていることが分かる。
【0031】(実施例5)生地調製中に、生地中のグルテンに影響を与えず、焼成時に酸が放出して制菌効果を発揮する油脂組成物の試作試験を行うため、表4に示す配合で、醸造酢を水相部に含有する油中水型に乳化してなる油脂組成物を作製した。
【0032】
【表4】

【0033】(実施例6、比較例3,4) 食パンの製造(1)
実施例5で作製した油脂組成物を用いて、食パンの系で製パン性と保存性を評価した(実施例6)。その際、実施例5で作製した油脂組成物配合量は、パンにおける制菌効果が期待出来る量として、生地重量に対し1重量部となるようにした。比較例として、実施例5の油脂組成物に替えて、醸造酢をそのまま用いた油脂との混合物(比較例3)、及び醸造酢を配合しない他は実施例5と同様に作製した油脂組成物(比較例4)を用いて同様に食パンを製造した。それらの結果を表5に示す。
【0034】
【表5】

【0035】結果から、実施例5で作製した油脂組成物を用いたパンでは、醸造酢を配合していない油脂組成物(比較例4)を用いたパン並みにボリュウム、外観とも良好なパンが得られた。醸造酢をそのまま用いた油脂との混合物(比較例3)を用いた場合は、酸の影響でグルテンの状態が最適にならず、イーストの醗酵も抑制されたため、パンのボリュウムも外観も悪いものになった。
【0036】保存性評価結果から、実施例5で作製した油脂組成物を用いたパン(実施例6)は、醸造酢を配合していない油脂組成物(比較例4)を用いたパンに比べて顕著にカビの増殖が抑えられ、醸造酢をそのまま用いた油脂との混合物(比較例3)を用いたパンに比べても酸の放散が抑えられたため、良い保存性向上効果を示した。この事から、実施例5のような油脂組成物を用いれば、制菌目的での醸造酢の添加量を下げられる可能性も示唆された。
【0037】(実施例7)酵素の発現タイミングを制御し、酵素の効果の発現を評価するために、表6に示す配合で、β―アミラーゼ(長瀬産業株式会社製、商品名「β―アミラーゼ#1500S」)を水相部に含有する油中水型に乳化してなる油脂組成物を作製した。
【0038】
【表6】

【0039】(実施例8、比較例5,6) パンの製造(2)
実施例7で作製した油脂組成物を用いて、常法で食パンを作り、製パン性と老化防止効果を比較した(実施例8)。比較例として、実施例7の油脂組成物に替えて、乳化することなくβ―アミラーゼを含有する油脂との混合物(比較例5)、β―アミラーゼを配合しない他は実施例4と同様に作製した油脂組成物(比較例6)を用いてパンを作製した。それらの結果を表7に示す。
【0040】
【表7】

【0041】表7の結果から、乳化することなくβ―アミラーゼを含有する油脂との混合物(比較例5)を用いたパンやβ―アミラーゼを配合しない油脂組成物(比較例6)を用いたパンに較べて、優れたボリュウムと老化防止効果が得られることがわかった。
【0042】(実施例9)食用色素の安定性に対する効果を確認するために、以下の試作試験を実施した。表8に示す配合で、赤キャベツ色素を水相部に含有する油中水型に乳化してなる油脂組成物を作製した。その際水相部は、赤キャベツ色素の色調発現のために、pHをクエン酸で3.1に調整した。
【0043】
【表8】

【0044】(実施例10、比較例7) カマボコの製造実施例9で作製した油脂組成物を用いて、表9に示す配合に従って、常法でカマボコを作製し、それらの色調の発現の仕方をパネラー10人で比較評価した。比較例として、実施例9の油脂組成物に替えて、乳化することなく赤キャベツ色素を含有する油脂との混合物(比較例7)を用いて同様にカマボコを作製し、評価を行った。それらの結果、10人中10人が実施例10のカマボコの方が実際の色素に近い色を保持しており、色目が鮮やかで良いと答えた。これより、乳化することなく赤キャベツ色素を含有する油脂との混合物(比較例7)を用いたカマボコが、赤キャベツ色素本来の色調でなく暗紫色になっているのに対し、実施例9で作製した油脂組成物を用いたカマボコは、鮮明な赤紫色を保持していることが分かる。
【0045】
【表9】

【0046】
【発明の効果】以上の結果からも明らかなように、本発明による油脂組成物は、食品添加物成分を水相部に含有させ、油中水型に乳化することによって、食品添加物成分を主として水相部に保持し、油相部により保護される。更に、解乳化を制御することで食品添加物成分の放散を制御する。これにより、食品成分との反応抑制、或いは工程中での効果発現制御が出来るため、食品添加物成分の有効利用及び使用量の削減が可能となり、ひいては良好な加工食品の供給が出来る。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
【出願日】 平成13年12月26日(2001.12.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−189792(P2003−189792A)
【公開日】 平成15年7月8日(2003.7.8)
【出願番号】 特願2001−393650(P2001−393650)