| 【発明の名称】 |
油脂乳化組成物およびこれを用いたパン類の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】辻中 卓弥
【氏名】上田 実
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| 【要約】 |
【課題】従来の風味改良剤では得られない、パン類に良好な風味を付与し且つその風味を持続することができる油脂乳化組成物およびこれを用いたパン類の製造方法を提供すること。
【解決手段】油脂、脂質と蛋白質の複合体、糖類及び水を含有してなる乳化物にイースト及び/又は乳酸菌を添加して発酵させた、イースト及び/又は乳酸菌の発酵風味を有する油脂乳化組成物およびその製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 油脂、脂質と蛋白質の複合体、糖類及び水を含有する乳化物にイースト及び/又は乳酸菌を添加して発酵させた油脂乳化組成物。 【請求項2】 イースト及び/又は乳酸菌添加前の油脂、脂質と蛋白質の複合体、糖類及び水を含有する乳化物が水中油型である請求項1記載の油脂乳化組成物。 【請求項3】 脂質と蛋白質の複合体が、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体である請求項1又は2記載の油脂乳化組成物。 【請求項4】 有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体の有機酸モノグリセリドが、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項3記載の油脂乳化組成物。 【請求項5】 有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体の乳蛋白質が、非ミセル状態の分子構造をもつカゼインを含有する乳蛋白質である請求項3又は4記載の油脂乳化組成物。 【請求項6】 油脂乳化組成物中のイースト及び/又は乳酸菌が生菌である請求項1〜5いずれかに記載の油脂乳化組成物。 【請求項7】 油脂乳化組成物の性状が粉末である請求項1〜6いずれかに記載の油脂乳化組成物。 【請求項8】 油脂に、請求項1〜7いずれかに記載の油脂乳化組成物を配合してなる油中水型油脂乳化組成物。 【請求項9】 請求項1〜8いずれかに記載の油脂乳化組成物をパン生地に添加することを特徴とするパン類の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、パン類を製造する際にパン生地に添加することで、パン類に良好な風味を付与し且つその風味を持続することができる油脂乳化組成物およびこれを用いたパン類の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】パン類を製造するにあたって、パン類に良好な風味を付与するため、従来より様々な研究がなされている。例えば、有胞子乳酸菌を用いてカードから作製した発酵種と海洋酵母を用いる方法(特開平10−28517号公報)、特定量の油分と蛋白質を含むpH4.5〜5の水中油型エマルションを用いる方法(特開平5−153896号公報)、スターターとして乳酸菌、酵母と酢酸菌を混合接種して得られる風味改良剤(特開平1−256337号公報)などが知られている。しかしながら、これらの風味改良剤では生地の発酵工程あるいは焼成工程中に添加成分が分解、減少、消失することによって期待するほどの風味改良効果を得ることができておらず、しかも風味の持続性についての効果を目的としたものではない。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の如く、パン類に良好なイースト及び/又は乳酸菌の発酵風味を付与し、且つその風味を持続することができる油脂乳化組成物およびこれを用いたパン類の製造方法を提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、油脂、脂質と乳蛋白質との複合体、糖類及び水を含有してなる乳化物にイースト及び/又は乳酸菌を添加して発酵させた油脂乳化組成物がパン類に良好な風味を付与し、且つその風味を持続できることを見出し本発明を完成するに至った。 【0005】即ち、本発明の第1は、油脂、脂質と蛋白質の複合体、糖類及び水を含有する乳化物にイースト及び/又は乳酸菌を添加して発酵させた油脂乳化組成物に関する。好ましい実施態様としては、(1)イースト及び/又は乳酸菌を添加する前の乳化物が水中油型である、(2)脂質と蛋白質の複合体が、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体である、(3)有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体の有機酸モノグリセリドが、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリドからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、(4)有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体の乳蛋白質が、非ミセル状態の分子構造をもつカゼインを含有する乳蛋白質である、(5)油脂乳化組成物中のイースト及び/又は乳酸菌が生菌である、(6)油脂乳化組成物の性状が粉末である、ことを特徴とする、上記記載の油脂乳化組成物に関する。 【0006】本発明の第2は、油脂に上記記載の油脂乳化組成物を配合してなる油中水型油脂乳化組成物に関する。本発明の第3は、上記記載の油脂乳化組成物をパン生地に添加することを特徴とするパン類の製造方法に関する。 【0007】 【発明の実施の形態】本発明の油脂乳化組成物を製造する際に使用することができる油脂としては、通常食用として用いられているものであれば植物油脂、動物油脂のいずれでもよく、例えば牛脂、豚脂、大豆油、綿実油、米油、コーン油、ヤシ油、パーム油、カカオ脂等が挙げられ、これらを単独或いは混合、硬化、分別、エステル交換したものを単独或いは2種以上を混合して用いることができる。特に、本発明においては使用する油脂の融点が、イースト及び/又は乳酸発酵時の温度より低いことが、風味の持続性の点で望ましい。これら油脂の配合割合は油脂乳化組成物中5〜80重量%が望ましく、油脂の割合がこの範囲を外れると目的とする風味付与効果は得られない場合がある。なお本発明のイースト及び/又は乳酸菌添加前の乳化物の形態としては、水中油型であることがより風味増強効果がある為好ましく、この場合の油脂割合は本発明で得られる油脂乳化組成物中5〜50重量%であることが望ましい。 【0008】本発明の油脂乳化組成物を製造する際に使用する脂質と蛋白質の複合体は、天然由来のもの、合成物のいずれでも利用でき、天然由来の脂質と蛋白質の複合体としてはヒト、牛、馬、山羊などの広く哺乳動物の乳、血清やスケトウダラ、サケ、マス、コイなどの水産動物の卵や鶏、ウズラ、キジなどの鳥類の卵もしくは生体膜に含まれるもの等が挙げられる。合成物としては、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、リン脂質などの脂質と、水溶性蛋白質である乳蛋白質、植物性蛋白質、動物性蛋白質などの蛋白質との結合体が挙げられる。中でも合成物である脂質と蛋白質の複合体の方が加熱やpH等による変性を受けにくいものが多いため好ましく、更に有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体を用いることがより好ましい。本発明で使用することが出来る有機酸モノグリセリドとしては、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、酢酸モノグリセリド、及び乳酸モノグリセリド等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられる。また、これら有機酸モノグリセリドの構成脂肪酸は、飽和脂肪酸であることが立体構造的に有効に結合させることができるので好ましい。 【0009】本発明で使用する有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体に用いることができる乳蛋白質としてはホエータンパクやカゼインが挙げられるが、特に非ミセル状態の分子構造を持つカゼインを含有することが好ましい。これらの非ミセル状態のカゼインとしては、例えばナトリウムカゼイン、カリウムカゼインなどのアルカリカゼインや酸カゼイン等の他、生乳、還元全脂粉乳液、脱脂乳、還元脱粉液、バターミルク、還元バターミルクパウダー液等にリン酸塩等のカルシウム封鎖剤を添加したり、pHを4.4〜4.6に調整した沈殿物を回収して得られるもの等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられる。カゼインがミセルの状態をとっているか否かを知る手段としては、カゼインがミセル状態である場合、それは約0.1〜0.5μmの直径を有するリン酸カルシウム−カゼインの複合体の蛋白質微粒子として存在することが知られている。そこで本発明者らは、カゼインのミセル状態の構造を簡易に定量化する手法として平均粒度分布により調べることに着目した。即ち、レーザー回折式平均粒度分布測定装置(LA−500P、堀場製作所製)により蛋白質の粒度分布を調べ、0.1〜0.5μmの直径を有する分布区分をカゼインのミセル状態とみなし、これより大きな粒度分布のものを非ミセル状態のカゼインと判断することにした。この方法によると、本発明においては非ミセル状態のカゼイン含量は乳蛋白質のうち好ましくは15重量%以上、更に好ましくは30重量%以上である。 【0010】次に、本発明で使用する有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体の製造方法を説明する。まず、乳蛋白質が1〜50重量%濃度、好ましくは5〜25重量%濃度の水溶液を調製する。この際、乳蛋白質水溶液のpHを通常6〜7の範囲に調整することが有機酸モノグリセリドと有効に結合させる上で好ましい。次に、このようにして調製した蛋白質溶液を、通常50〜70℃の有機酸モノグリセリドの融点よりもわずかに高い温度になるように加温する。そして、この蛋白質水溶液に蛋白質の1/100〜2/1(重量比)の有機酸モノグリセリドを添加し、混合溶解をおこない、次いで超音波均質機、ホモジナイザー、ホモミキサー、マイコロイダー等の均質化手段により、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体を調製する。本発明で使用する有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体は、こうして得られた水溶液をそのままの形態で使用する場合は、保存上の点からUHT等の殺菌処理を施すことが好ましい。また水溶液の形態でもかまわないが、取り扱い、保存上の点から噴霧乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の手段により乾燥処理を施しても良い。本発明で得られる油脂乳化組成物を製造する際に使用する脂質と蛋白質との複合体の割合は固形分換算で、油脂乳化組成物中0.05〜10重量%が望ましく、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲で添加すればよい。添加量が、0.05重量%未満では風味の増強やその持続といった発明した効果が充分に得られない場合があり、10重量%を越えて添加しても効果は頭打ちとなる場合がある。 【0011】本発明の油脂乳化組成物を製造する際に使用する糖類としては、イースト及び/又は乳酸菌が資化できるものであれば特に制約はなく、砂糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖、乳糖などが挙げられる。本発明で得られる油脂乳化組成物中の糖類の割合は、油脂乳化組成物中好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%の範囲である。配合割合が1重量%未満では適切な発酵が行われない場合があり、30重量%を越えて配合すると発酵障害を生ずる場合があり望ましくない。 【0012】また、本発明の油脂乳化組成物を製造する際に使用する水の割合は、油脂乳化組成物中好ましくは5〜80重量%、更に好ましくは10〜50重量%である。水の配合割合が5重量%未満では適切な発酵が行われない場合があり、80重量%を越えて配合すると風味持続の効果は弱くなる場合があり望ましくない。 【0013】本発明の油脂乳化組成物を製造する際に使用することができるイーストは、発酵性があれば特に制約はないが、サッカロミセス・セレビシエ、サッカロミセス・エクシギュース、クルイベロマイセス・ラクティス、トルラスポラ・デルブルッキー、キャンディダ・ユティリス、キャンディダ・ケフィアや、通常製パンに使用する酵母等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのイーストは乳化物に対して、乾燥重量換算で0.05〜5重量%添加することが好ましく、更に好ましくは0.3〜2重量%である。添加量が0.05重量%未満では、イースト副産物の生成が少なく十分な効果が得られない場合があり、逆に5重量%を越えて添加するとイースト菌自体の好ましくない風味が付与される場合がある。またイーストを添加する際、懸濁液である方が生地への分散を考えると好ましい。 【0014】本発明の油脂乳化組成物を製造する際に使用することができる乳酸菌は、乳酸菌全般を広く指すものであるが、特に乳製品の主要な風味および香気成分であるジアセチルおよび乳酸の生産能が高いものが好ましく、例えば、ストレプトコッカス・ジアセチラクチス、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ロイコノストック・デキストラニクム、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・ヘルベティカスおよびラクトバチルス・ブレビス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 【0015】また本発明の油脂乳化組成物にはその他、必要に応じて乳固形分、小麦粉などの穀粉、乳化剤、増粘剤等の安定剤、食塩等の塩類、調味料、香料、香辛料等を配合することもできる。乳固形分としては、生乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳清、生クリーム、チーズ類、ヨーグルト類、バター、バターミルク又はこれらを濃縮加工したものが挙げられる。特に、乳固形分や穀粉を配合することで、本発明の油脂乳化組成物により深みのある風味を付与することができる。 【0016】本発明の油脂乳化組成物の製造方法としては、脂質と乳蛋白質との複合体、乳固形分と水を混合し溶解したものと、別に溶解した油脂を混合し、加熱殺菌した後、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コンビネータ、パーフェクター等の均質化装置を用いて均質化し、冷却して乳化物を得る。なお、得られる乳化物の形態は、水中油型であることが風味の増強とその持続性向上に大きな効果があり好ましい。次いで、この乳化物にイースト及び/又は乳酸菌を添加し発酵を行う。 【0017】イーストの発酵条件としては、好気条件下および嫌気条件下のいずれでもよいが、好気条件下での静置培養が好ましい。発酵温度は各酵母に適した温度を選択することが出来るが、20〜40℃で行うのが好ましい。さらには、イースト発酵はアルコール濃度が0.05重量%以上、5.0重量%以下の範囲に達するまで、上記条件にて発酵することが好ましい。アルコール濃度が0.05重量%未満では十分な風味向上効果は得られない場合があり、また5.0重量%を越えるとアルコール臭が強くなりすぎて風味的に好ましくない場合がある。なお、アルコール濃度はガスクロマトグラフィー法にて測定し、エタノール含量をアルコール濃度とした。 【0018】乳酸発酵は、スターターとして調製した乳酸菌を乳化物に対して、好ましくは0.01重量%以上、1重量%以下を添加して行う。発酵条件としては、一般に用いられている条件によって行うことができる。好気条件下或いは嫌気条件下のいずれでもよいが、好気条件下での静置発酵が好ましい。混合物の初発pHは6〜8、特に7付近が望ましく、発酵温度は各乳酸菌株に適した温度を選択することが出来るが、20〜40℃で行うのが好ましい。さらには、乳酸発酵は酸度が0.05%以上、5.0%以下の範囲に達するまで、上記条件にて発酵することが好ましい。酸度が0.05%未満では十分な風味向上効果は得られない場合があり、また5.0%を越えると酸味、酸味臭が強くなり風味的に好ましくない場合がある。なお、酸度は滴定法にて測定し、乳酸酸度として表した。 【0019】本発明の油脂乳化組成物の製造方法において、乳酸発酵とイースト発酵の両方を行う場合は、乳酸発酵後にイースト発酵を行うことが風味の点から望ましい。なおこの場合、栄養源となる糖類を、それぞれの発酵前に2回に分けて添加することもできる。さらにイースト発酵はpHが5.0以下では、発酵が遅くなるため、乳酸発酵後に水酸化ナトリウム溶液や重曹などでpHを6.0〜7.0に調製後にイーストの懸濁液を添加して発酵を行えばよい。 【0020】イースト及び/又は乳酸菌発酵後の油脂乳化組成物は、イースト及び/又は乳酸菌が生きたままの生菌でも、70〜150℃で30分〜3秒間殺菌処理をしてもかまわない。なお油脂乳化組成物中のイースト及び/又は乳酸菌は生きたままの生菌である方が、生地の発酵工程中にこれらの菌が作用し、より風味的に好ましいものとなる。 【0021】また油脂乳化組成物の性状としては、そのままの液状、ペースト状やプラスチック状でもかまわないが、取り扱い、保存上の点から噴霧乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の手段により乾燥処理を施して得られる粉末状が好ましい。特に凍結乾燥が、風味とイースト及び/又は乳酸菌が生きたままの生菌で存在できる点で好ましい。 【0022】さらに油脂に本発明の油脂乳化組成物を配合し、パーフェクター、コンビネーター、ボテーター等の連続式熱交換機を用いて急冷捏和し、油中水型油脂乳化組成物とすることができる。なおこの場合、油脂100重量%に対して、本発明の油脂乳化組成物を好ましくは0.5重量%以上、50重量%以下、更に好ましくは1.0重量%以上、25重量%以下を配合すればよい。 【0023】本発明においてパン生地とは、小麦粉を主原料とし、これに水などを加え更に油脂、糖類、卵、乳製品、イーストフード、各種酵素類、各種乳化剤等の原料を必要に応じて添加し、パン酵母の添加の有無にかかわらず混捏工程を経て得られた一般的な生地を意味し、饅頭生地やドーナツ生地、パイ生地、ピザ生地、ホットケーキ生地、スポンジ生地、クレープ生地等も包含する。更に上記原料の他に小麦粉以外の穀物、例えばライ麦、オーツ麦、大麦等の1種又は2種以上を混入したものも包含する。また前記パン生地としては、通常のパン生地の他、冷凍あるいは冷蔵されたのち使用されるパン生地も含むものとする。 【0024】以上の如く本発明によって得られる油脂乳化組成物は、パン類の製造時に対粉0.1重量%以上、20重量%以下、好ましくは0.3重量%以上、10重量%以下の範囲で添加することで、パン類に良好な発酵風味を付与し且つその風味を持続することができる。 【0025】 【実施例】次に、実施例および応用例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、「部」、「%」は特に断りのない限り重量基準である。 【0026】(実施例1)精製菜種油15重量部、大豆硬化油(融点36℃)50重量部を配合した油相(発酵温度である30℃で液体)に、バターミルクを限外濾過して得た牛乳脂肪球被膜0.2重量部と砂糖1重量部を水32.6重量部に溶解した水相を徐々に添加し予備乳化した。このものを80℃で10分間殺菌後、コンビネータにて40℃まで冷却可塑化し油中水型油脂乳化物とし、イースト(商品名:カネカイーストレッド、鐘淵化学工業(株)製)0.2重量部を水1重量部に懸濁したものを添加した。30℃で緩やかに撹拌しながら発酵させた後、80℃で10分間殺菌し、コンビネータにて急冷可塑化して油中水型油脂乳化組成物を得た。なお、得られた油中水型油脂乳化組成物中のアルコール濃度は1重量%であった。 【0027】(比較例1)実施例1において、牛乳脂肪球被膜を添加しない以外は同様の方法にて、アルコール濃度は1重量%の油中水型油脂乳化組成物を得ようとしたが、水分分離がおこり安定な油中水型油脂乳化組成物は得られなかった。 【0028】(比較例2)実施例1において、牛乳脂肪球被膜の代わりにバターミルクパウダーを使用した以外は同様の方法にて、アルコール濃度は1重量%の油中水型油脂乳化組成物を得たが、水分離がわずかに見られた。 【0029】(比較例3)実施例1において、イーストを水に懸濁したものを添加する代わりに、エタノールが1重量%になるように添加した以外は同様の方法にて、油中水型油脂乳化組成物を得た。 【0030】次に、上記のようにして得た実施例1および比較例1〜3の油中水型油脂乳化組成物を用い、表1に示す配合および表2に示す製造工程にて、食パンを製造した。 【0031】 【表1】
【0032】 【表2】
10名のパネラーによる官能評価の結果を表3に示す。実施例1の食パンは、イースト発酵のまろやかな風味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は7名と圧倒的に多かった。また、これらの食パンをナイロン袋にいれ20℃で3日間保存したところ、実施例1の食パンは焼成直後と変わらぬ好ましいイースト発酵風味を有しており、比較例1〜3の食パンとの風味の差は、トーストすることでより明確となった。 【0033】 【表3】
(製造例1) 〔有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)の調製〕 ナトリウムカゼイン(商品名:ハプロ、新日本製薬(株)製)7重量%を92重量%の水に分散、溶解させ65℃まで加熱後、コハク酸モノグリセリド(商品名:ポエムB−10、理研ビタミン(株)製)1重量%を添加し溶解後、超音波均質機(500W)にて均質化(5分)し、コハク酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体溶液を得た。得られた水溶液を0.1hPaで減圧脱水し、固形分中の水分を6.0重量%とした。この物を粉砕し、20メッシュ篩で、篩過して粉末状のコハク酸モノグリセリドと乳蛋白質の複合体(以下、MP−1と言う)を得た。 【0034】(製造例2および3) 〔有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−2、3)の調製〕 表4に示す配合にて、脱脂粉乳、ヘキサメタリン酸ナトリウムを水に分散溶解させ60℃まで加熱後、ジアセチル酒石酸モノグリセリド(商品名:ポエムW−10、理研ビタミン(株)製)を添加し、バルブ式ホモジナイザーにて6MPaで均質化後、140℃で4秒間UHT殺菌して、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質の複合体(MP−2および3)を得た。 【0035】 【表4】
上記複合体の製造に用いた乳蛋白質中の非ミセル状態のカゼイン含有率(%)を調べた結果を表5に示す。また、上記の各試料中の複合体の割合を定量化するために、100ml容の密栓付き三角フラスコに試料30ml(MP−1は固形分が10重量%となるように水を添加し水溶液とした)とn−ヘキサン30mlを入れ、20℃で15分間振とう後、遠心分離により上層(ヘキサン層)を20ml分取り出し、ヘキサンを留去後、固形物量を精秤し、試料中の脂質重量に対する割合を求め、これを複合体に関与しなかった遊離脂肪率(%)として表5に示す。表5から明らかなように、乳蛋白質のうち非ミセル状態のカゼイン含量が高い程、複合体の遊離脂肪率は小さく、複合体を形成しやすいことがわかる。 【0036】 【表5】
(実施例2)精製菜種油10重量部、大豆硬化油(融点32℃)20重量部を配合した油相(発酵温度である30℃で液体)を調製した。一方、鶏卵黄由来の脂質と蛋白質の複合体(商品名:卵黄レシチンLPL−20、キューピー(株)製)1.0重量部、脱脂粉乳5重量部を水63.0重量部に溶解して水相を調製した。60℃にて油相を水相に添加し、予備乳化後5MPaで均質化後、90℃で30秒間殺菌した後、34℃まで冷却して水中油型油脂乳化組成物とした。このものにストレプトコッカス・ジアセチラクチス(クリスチャン・ハンセンス社製)0.7重量部、ストレプトコッカス・クレモリス(Streptococus cremoris JDTA H-61)0.3重量部を接種して、34℃での酸度が1.5%になるまで発酵した。発酵終了後、5MPaで均質化後、90℃で30秒間殺菌した後、10℃まで冷却してpH4.8の水中油型油脂乳化組成物を得た。 【0037】(実施例3)実施例2において、鶏卵黄由来の脂質と蛋白質の複合体の代わりに有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)を使用した以外は同様の方法にてpH4.8の水中油型油脂乳化組成物を得た。 【0038】(実施例4)実施例2において、鶏卵黄由来の脂質と蛋白質の複合体の代わりに有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−2)を使用(固形分換算量を同じにするため、6.0重量部添加)した以外は同様の方法にてpH4.8の水中油型油脂乳化組成物を得た。 【0039】(実施例5)実施例2において、鶏卵黄由来の脂質と蛋白質の複合体の代わりに有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−3)を使用(固形分換算量を同じにするため、6.0重量部添加)した以外は同様の方法にてpH4.8の水中油型油脂乳化組成物を得た。 【0040】(比較例4)実施例3において、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)を添加しない以外は同様の方法にてpH4.8の水中油型油脂乳化組成物を調製しようとしたが、油分離がおこり安定な水中油型油脂乳化組成物は得られなかった。 【0041】(比較例5)実施例3において、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)の代わりに、ナトリウムカゼイン0.9重量部とコハク酸モノグリセリド0.1重量部を添加した以外は同様の方法にてpH4.8の水中油型油脂乳化組成物を得た。 【0042】(比較例6)実施例3において、スターターを添加し乳酸発酵を行う代わりに50重量%乳酸水溶液を添加することでpH4.8に調製した水中油型油脂乳化組成物を得た。 【0043】実施例2〜5および比較例4〜6の水中油型油脂乳化組成物を使用し、表1の配合および表2の製造工程にて食パンを作製した。 【0044】10名のパネラーによる官能評価を表6に示す。実施例3と比較例4(脂質と蛋白質の複合体を添加していないもの)、比較例5(脂質と蛋白質を複合体にせずに添加したもの)、比較例6(乳酸発酵せずに、乳酸を添加したもの)の比較では、明らかに実施例3の風味が良いとするパネラーが多かった。また、実施例2〜5の脂質と蛋白質の複合体を添加したもので比較すると、鶏卵黄由来の脂質と蛋白質の複合体を使用したもの(実施例2)よりも有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体を使用したもの(実施例3〜5)の方が、好ましいとするパネラーが多かった。脂質と蛋白質の複合体のうちでも、非ミセル状態のカゼイン含量の多い複合体ほど評価が高かった。さらに、これらの食パンをナイロン袋にいれ20℃で3日間保存したところ、脂質と蛋白質の複合体を使用した実施例2〜5の食パンでは、焼成直後とほとんど変わらない良好な風味を有していた。 【0045】 【表6】
(実施例6)有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)3重量部、ラクトース5重量部を水58.5重量部に溶解して水相を調製したところに、精製菜種油25重量部を添加し、予備乳化後5MPaで均質化後、90℃で30秒間殺菌した後、37℃まで冷却して水中油型乳化物とした。このものにラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus JDTA B-5b)0.2重量部、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococus thermophilus 510)0.3重量部を接種して、34℃での酸度が1.5%になるまで培養した。発酵終了後、30重量%水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.5に調製し、砂糖5重量部を添加したところに、イースト(商品名:カネカイーストレッド、鐘淵化学工業(株)製)1.0重量部を水2.0重量部に懸濁したものを添加した。25℃で24時間緩やかに攪拌しながら発酵させた後、5MPaで均質化し、85℃で30秒間殺菌した後、10℃まで冷却して水中油型油脂乳化組成物を得た。 【0046】(実施例7)実施例6において、イースト発酵終了後、均質化し、殺菌処理しない以外は同様の方法にて、乳酸菌およびイースト菌をそれぞれ約1×107個/g含有する水中油型油脂乳化組成物を得た。 【0047】(実施例8)実施例6の水中油型油脂乳化組成物100重量部に対し、デキストリン(商品名:パインデクッス#2、松谷化学(株)製)25重量部を添加し、スプレードライして粉末品を得た。 【0048】(実施例9)大豆硬化油(融点36℃)67重量部、ナタネ油10重量部を加熱溶解し、グリセリン脂肪酸エステル0.2重量部、レシチン0.2重量部、β―カロチン0.001重量部を加えて油相を調製した。一方、実施例6の水中油型油脂乳化組成物20重量部と水2.599重量部を混合した水相を調製した。65℃にて水相を油相に徐々に添加して乳化したものを、掻き取り式の冷却機で急冷し、捏和機を通して安定化し、パン練り込み用の油中水型油脂乳化組成物を得た。 【0049】(比較例7)実施例6において、乳酸菌スターターとイースト懸濁液を添加しない以外は同様の方法にて水中油型油脂乳化組成物を得た。 【0050】(比較例8)実施例6において、精製菜種油を添加しない以外は同様の方法にて水中油型油脂乳化組成物は得た。 【0051】実施例6〜9および比較例7、8の油脂乳化組成物を使用し、表1の配合および表2の製造工程にて食パンを作製した。ただし、実施例8の粉末品は配合量を15g、実施例9のパン練り込み用の油中水型油脂乳化組成物は配合量を125g(ショートニングは配合せず)とした。 【0052】10名のパネラーによる官能評価を表7に示す。実施例6と比較例7(実施例6の発酵処理なし)や比較例8(実施例6の油脂なし)では、明らかに実施例6の風味が良いとするパネラーが多かった。実施例7の生菌タイプは実施例6に比べ、より風味が豊かで良好であるとの評価結果であった。また、実施例8(実施例6の粉末品)や実施例9(実施例6の乳化物を練り込んだマーガリン)は、実施例6と大差のない良好な風味を有していた。さらに、これらの食パンをナイロン袋にいれ20℃で3日間保存したところ、実施例の食パンは、焼成直後とほとんど変わらない良好な風味を有していた。特に、比較例8(油脂を添加しなかった油脂乳化組成物を使用)の食パンは、保存後の風味の劣化が著しいとの評価結果であった。 【0053】 【表7】
【0054】 【発明の効果】本発明の、油脂、脂質と蛋白質の複合体、糖類及び水を含有してなる乳化物にイースト及び/又は乳酸菌を添加して発酵させた、イースト及び/又は乳酸菌の発酵風味を有する油脂乳化組成物を、パン類を製造する際に、パン生地に添加することで、パン類に良好な風味を増強し且つその風味を持続することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000941 【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年12月27日(2001.12.27) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2003−189791(P2003−189791A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月8日(2003.7.8) |
| 【出願番号】 |
特願2001−396107(P2001−396107) |
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