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【発明の名称】 風味油脂およびその製造方法
【発明者】 【氏名】辻中 卓弥

【氏名】河島 武志

【要約】 【課題】従来の風味油脂では得られない、乳の風味やコク味に優れた風味油脂およびその製造方法を提供する。

【解決手段】(a)油脂、(b)脂質と蛋白質の複合体、(c)乳固形分及び(d)水を含有してなる混合物を80〜180℃で加熱処理した後、固化しない範囲で冷却してから分離手段を用いて処理液の不溶分を除去して得られ、好ましくは、水分残存量が0.3〜3.0重量%である風味油脂。さらには、加熱処理を連続式の熱交換機を用いておこなう上記油脂の製造方法により達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)油脂、(b)脂質と蛋白質の複合体、(c)乳固形分及び(d)水を含有してなる混合物を80〜180℃で加熱処理した後、固化しない範囲で冷却してから分離手段を用いて処理液の不溶分を除去して得られる風味油脂。
【請求項2】水分残存量が0.3〜3.0重量%である請求項1記載の風味油脂。
【請求項3】(b)脂質と蛋白質の複合体が、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体である請求項1又は2記載の風味油脂。
【請求項4】有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体中における有機酸モノグリセリドが、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、酢酸モノグリセリド、及び乳酸モノグリセリドからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の風味油脂。
【請求項5】有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体の乳蛋白質が、非ミセル状態の分子構造をもつカゼインを含有する乳蛋白質である請求項3又は4記載の風味油脂。
【請求項6】(a)油脂中に乳脂肪を5重量%以上含有することを特徴とする請求項1〜5何れかに記載の風味油脂。
【請求項7】加熱処理する前に、脂肪酸分解酵素で(a)油脂を分解することを特徴とする請求項1〜6何れかに記載の風味油脂。
【請求項8】脂肪酸分解酵素による(a)油脂の分解度が5%以下である請求項7記載の風味油脂。
【請求項9】脂肪酸分解酵素で(a)油脂を分解した後に、乳酸発酵及び/又は酵母発酵することを特徴とする請求項7又は8何れかに記載の風味油脂。
【請求項10】請求項1〜9何れかに記載の風味油脂の製造方法。
【請求項11】加熱処理を連続式の熱交換機を用いておこなう請求項10記載の風味油脂の製造方法。
【請求項12】 請求項1〜9何れかに記載の風味油脂を含んでなる食品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乳風味とコク味が付与された食用油脂及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】乳脂肪は天然の好ましい乳風味とコク味を有しており、マーガリンやクリームなどの製菓・製パン・調理用、アイスクリームなどの冷菓用、コーヒーホワイトナーなどの飲料用に幅広く使用されている。しかしながら、乳脂肪の原料となる生クリームやバターは高価であり、風味の面でも季節により不安定であるため、使用上制約されるなど問題が多々ある。
【0003】そこで、食品の乳風味、コク味を増強させるためには、一般的にフレーバー類や酵素分解物などの呈味材が使用されており、例えば、特定割合の油脂、無脂乳固形分、水を配合し、脂肪酸分解酵素と蛋白質分解酵素および/又は乳糖分解酵素を添加して分解するバターフレーバーの製造方法(特許文献1)、油脂に脂肪酸分解酵素を添加して分解した後、さらにリポキシゲナーゼを添加して分解するバターフレーバーの製造方法(特許文献2)、食用油脂のリパーゼ処理物、乳蛋白質、糖類およびアミノ酸を水の存在下で加熱処理して成るミルク様フレーバー(特許文献3)、油脂または油脂含有食品に、特定のアミノ酸とカルボニル化合物を添加して加熱して得られるミルク様呈味剤(特許文献4)などが提案されているが、いずれも人工的で深味がなく、又、固形分と水分を含有するため用途が限定される。
【0004】一方、香味物質を直接食用油と激しく攪拌接触して香味物質中の香気成分を該食用油中に移行させたのち食用油のみを分離回収する、いわゆる香味油と呼ばれる油脂の製造方法が知られている。しかしながらこれら香味油の多くは、野菜、肉類、魚介類、スパイス、穀類などを香味成分とした調味用油脂である。乳固形分を使用した香味油としては、乳固形分、糖と水を加熱処理したものを、油脂中で加熱処理して得られる風味油脂(特許文献5,6)が提案されているが、これらの方法では、乳固形分と糖を処理したものを油脂に添加して香味油を得るため、得られる香味油に風味を付与することは可能であるが、その風味は乳風味やコク味を有するものではない。
【0005】
【特許文献1】特公昭57−41898号公報【0006】
【特許文献2】特公昭57−59743号公報【0007】
【特許文献3】特開昭58−43755号公報【0008】
【特許文献4】特公昭60−55100号公報【0009】
【特許文献5】特開平6−22691号公報【0010】
【特許文献6】特開平7−46961号公報【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の如く、従来の風味油脂では得られない、乳の風味やコク味に優れた風味油脂およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、(a)油脂、(b)脂質と乳蛋白質との複合体、(c)乳固形分及び(d)水を含有してなる混合物を80〜180℃で加熱処理した後、固化しない範囲で冷却してから処理液の不溶分を除去することで、乳風味とコク味の強い油脂が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】即ち、本発明の第1は、(a)油脂、(b)脂質と蛋白質の複合体、(c)乳固形分及び(d)水を含有してなる混合物を80〜180℃で加熱処理した後、固化しない範囲で冷却してから分離手段を用いて不溶分を除去して得られる風味油脂に関する。好ましい実施態様としては、(1)水分残存量が0.3〜3.0重量%である、(2)脂質と蛋白質の複合体が、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体である、(3)有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体の有機酸モノグリセリドが、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、酢酸モノグリセリド、及び乳酸モノグリセリドからなる群から選ばれる少なくとも1種である、(4)有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体の乳蛋白質が、非ミセル状態の分子構造をもつカゼインを含有する乳蛋白質である、(5)(a)油脂中に乳脂肪を5重量%以上含有することを特徴とする、(6)加熱処理する前に、脂肪酸分解酵素で(a)油脂を分解することを特徴とする、(7)脂肪酸分解酵素による(a)油脂の分解度が5%以下である、(8)脂肪酸分解酵素で(a)油脂を分解した後に、乳酸発酵及び/又は酵母発酵することを特徴とする、上記記載の風味油脂に関する。
【0014】本発明の第2は、上記記載の風味油脂の製造方法に関し、好ましい実施態様としては、加熱処理を連続式の熱交換機を用いておこなう上記記載の風味油脂の製造方法に関する。本発明の第3は、上記記載の風味油脂を含んでなる食品に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明で得られる風味油脂を製造する際に使用する(a)油脂としては、通常食用として用いられているものであれば植物油脂、動物油脂のいずれでもよく、例えば牛脂、豚脂、大豆油、綿実油、米油、コーン油、ヤシ油、パーム油、カカオ脂等が挙げられ、これらを単独或いは混合、硬化、分別、エステル交換したものを単独或いは2種以上を混合して用いることが出来る。特に、本発明においては、風味の点から(a1)乳脂肪を油脂中に5重量%以上使用することが望ましい。
【0016】本発明で得られる風味油脂を製造する際に使用する(c)乳固形分としては、生乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳清、生クリーム、チーズ類、ヨーグルト類、バター、バターミルク又はこれらを濃縮加工したものが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いる。これら乳固形分の配合割合は、油脂100重量%に対して1〜10重量%が好ましく、さらに望ましくは2〜5重量%の範囲である。配合割合が1重量%未満では十分な風味が得られない場合があり、10重量%を越えて配合しても効果は頭打ちとなる。
【0017】本発明で得られる風味油脂を製造する際に使用する(b)脂質と蛋白質の複合体は、天然由来のもの、合成物のいずれでも利用でき、天然由来の脂質と蛋白質の複合体としてはヒト、牛、馬、山羊などの広く哺乳動物の乳、血清やスケトウダラ、サケ、マス、コイなどの水産動物の卵や鶏、ウズラ、キジなどの鳥類の卵もしくは生体膜に含まれるものが挙げられる。合成物としては、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、リン脂質などの脂質と、水溶性蛋白質である乳蛋白質、植物性蛋白質、動物性蛋白質などの蛋白質との結合体が挙げられる。中でも合成物である脂質と蛋白質の複合体の方が加熱等による変性を受けにくいものが多いため好ましく、更に有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体を用いることが望ましい。本発明で使用することが出来る有機酸モノグリセリドとしては、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、酢酸モノグリセリド、及び乳酸モノグリセリド等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられる。また、これら有機酸モノグリセリドの構成脂肪酸は、飽和脂肪酸であることが立体構造的に有効に結合させることができるので好ましい。
【0018】本発明で使用する有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体に用いられる乳蛋白質としては、カゼインが好ましく、特に非ミセル状態の分子構造を持つカゼインを含有することが好ましい。これらの非ミセル状態のカゼインとしては、例えばナトリウムカゼイン、カリウムカゼインなどのカゼインアルカリや酸カゼイン等の他、生乳、還元全脂粉乳液、脱脂乳、還元脱粉液、バターミルク、還元バターミルクパウダー液等にリン酸塩等のカルシウム封鎖剤を添加したり、pHを4.4〜4.6に調整した沈殿物を回収して得られるもの等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて用いられる。カゼインがミセルの状態をとっているか否かを知る手段としては、カゼインがミセル状態である場合、それは約0.1〜0.5μmの直径を有するリン酸カルシウム−カゼインの複合体の蛋白質微粒子として存在することが知られている。そこで本発明者らは、カゼインのミセル状態の構造を簡易に定量化する手法として平均粒度分布により調べることに着目した。即ち、レーザー回折式平均粒度分布測定装置(LA−500P、堀場製作所製)により蛋白質の粒度分布を調べ、0.1〜0.5μmの直径を有する分布区分をカゼインのミセル状態とみなし、これより大きな粒度分布のものを非ミセル状態のカゼインと判断することにした。この方法によると、本発明においては非ミセル状態のカゼイン含量が乳蛋白質のうち好ましくは15%以上、更に好ましくは30%以上である。
【0019】次に、本発明で使用する有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体の製造方法を説明する。まず、乳蛋白質を1〜50重量%濃度、好ましくは5〜25重量%濃度の水溶液を調製する。この際、乳蛋白質水溶液のpHを通常6〜7の範囲に調整することが有機酸モノグリセリドと有効に結合させる上で好ましい。次に、このようにして調製した蛋白質溶液を、通常50〜70℃の有機酸モノグリセリドの融点よりもわずかに高い温度になるように加温する。そして、この蛋白質水溶液に蛋白質の1/100〜2/1(重量比)の有機酸モノグリセリドを添加し、混合溶解をおこない、次いで超音波均質機、ホモジナイザー、ホモミキサー、マイコロイダー等の均質化手段により、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体を調製する。本発明で使用する有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体は、こうして得られた水溶液そのままの形態で使用する場合は、保存上の点からUHT等の殺菌処理を施すことが好ましい。また水溶液の形態でもかまわないが、取り扱い、保存上の点から噴霧乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の手段により乾燥処理を施しても良い。
【0020】本発明で得られる風味油脂を製造する際に使用する(b)脂質と蛋白質との複合体の割合は固形分換算で、油脂100重量%に対して好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の範囲で添加すればよい。添加量が、0.05重量%未満では発明の効果は得られない場合があり、5%を越えて添加しても効果は頭打ちとなる場合がある。
【0021】本発明で得られる風味油脂を製造する際に使用する(d)水の割合は、油脂100重量%に対して、5〜30重量%の範囲が好ましい。配合割合が5重量%未満では乳固形分の溶解性が悪くなる場合があり、また、30重量%を越えて添加すると風味が弱くなる場合がある。
【0022】本発明の風味油脂は上記(a)油脂、(b)脂質と蛋白質の複合体、(c)乳固形分及び(d)水を含有してなる混合物を加熱処理することにより、(c)乳固形分の風味成分が(a)油脂に移行すると考えられ、その後、固化しない範囲で冷却してから、濾過、遠心分離、デカンテーション等の分離手段により、処理液に不溶な物を除去して得られるが、加熱処理を行う前に脂肪酸分解酵素で油脂を分解することが好ましい。
【0023】本発明に使用することが出来る脂肪酸分解酵素は、動物、植物、微生物から分離した酵素があり、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、リゾープス(Rhizopus)属等の糸状菌、キャンディダ(Candida)属等の酵母、小山羊、小羊、小牛の口頭分泌線から採取されるオーラル・リパーゼ(Oral lipase)等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の脂肪酸分解酵素による(a)油脂の分解は、(a)油脂、(b)脂質と蛋白質の複合体、(c)乳固形分及び(d)水を含有してなる混合物に、脂肪酸分解酵素を混合物に対して、好ましくは0.01〜0.5重量%添加して行う。特に、脂肪酸分解酵素で分解する(a)油脂として乳脂肪を一部或いは全量使用する場合は、(a1)乳脂肪、(b)脂質と蛋白質の複合体、(c)乳固形分及び(d)水を含有してなる混合物を、まず初めに脂肪酸分解酵素で分解した後、(a1)乳脂肪以外の油脂((a)油脂から(a1)乳脂肪を除いたもの)を添加して、加熱処理等を行えばより風味の強いものが得られる為、好ましい。脂肪酸分解酵素による(a)油脂の分解は、一般に用いられている条件によって行うことができる。即ち、反応温度は15〜70℃、好ましくは30〜50℃で約0.5〜72時間の範囲で分解を行うことが出来る。脂肪酸分解酵素による(a)油脂の分解度は、5%以下が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3%の範囲である。分解度が5%を越えると異味が付与される場合があり好ましくない。尚、分解度とは〔{(酸価)/(けん化価)}×100〕によって求められる値を言う。
【0024】また、本発明においては、脂肪酸分解酵素で(a)油脂を分解した後、加熱処理する前に乳酸発酵及び/又は酵母発酵することがより好ましい。
【0025】本発明の乳酸発酵に使用することの出来る乳酸菌は、乳製品の主要な風味および香気成分であるジアセチルおよび乳酸の生産能が高いものが好ましく、例えば、ストレプトコッカス・ジアセチラクチス、ストレプトコッカス・クレモリス、ロイコノストック・デキストラニクム、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・ヘルベティカスおよびラクトバチルス・ブレビス等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】本発明の風味油脂の製造における乳酸発酵は、(a)油脂、(b)脂質と蛋白質の複合体、(c)乳固形分及び(d)水を含有してなる混合物に、脂肪酸分解酵素を添加して(a)油脂の分解を行った後、酵素を失活させたものに、スターターとして調製した乳酸菌を混合物に対して、好ましくは0.01〜1重量%添加して行う。酵素を失活させるためには、一般に酵素が失活するような条件である70℃以上の温度で5分以上保持すればよい。また本発明の乳酸発酵は、一般に用いられている条件によって行うことができる。即ち、発酵条件としては、好気条件下或いは嫌気条件下のいずれでもよいが、好気条件下での静置発酵が好ましい。混合物の初発pHは6〜8、特に7付近が望ましく、発酵温度は各乳酸菌株に適した温度を選択することが出来るが、20〜40℃で行うのが好ましい。さらには、乳酸発酵は酸度が0.05〜5.0%の範囲に達するまで、上記条件にて発酵することが好ましい。酸度が0.05%未満では十分な風味向上効果は得られない場合があり、また5.0%を越えると酸味、酸味臭が強くなり風味的に好ましくない場合がある。
【0027】本発明の酵母発酵に使用することの出来る酵母は、アルコール発酵乳に使用されるアルコール発酵性の酵母であるサッカロマイセス・シェルビシエ、キャンディダ・シュードトロピカリス、キャンディダ・ケフィアや、通常製パンに使用する酵母等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の風味油脂の製造における酵母発酵は、(a)油脂、(b)脂質と蛋白質の複合体、(c)乳固形分及び(d)水を含有してなる混合物に、脂肪酸分解酵素を添加して(a)油脂の分解を行ったもの或いは、混合物を脂肪酸で分解後、酵素を失活させたところに乳酸菌を添加し乳酸発酵を行ったものに、スターターとして調製した酵母もしくは、市販の生酵母等製パンに使用する酵母の場合はこのものを水に懸濁したものを、混合物に対して好ましくは0.01〜2重量%添加して行う。なお、酵母の栄養源として砂糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖などの糖質を混合物に対して0.1〜10重量%添加することが望ましい。発酵条件としては、好気条件下および嫌気条件下のいずれでもよいが、好気条件下での静置培養が好ましい。発酵温度は各酵母に適した温度を選択することが出来るが、20〜40℃で行うのが好ましい。さらには、酵母発酵はアルコール濃度が0.05〜3.0%の範囲に達するまで、上記条件にて発酵することが好ましい。酸度が0.05%未満では十分な風味向上効果は得られない場合があり、また3.0%を越えるとアルコール臭が強くなりすぎて風味的に好ましくない場合がある。
【0028】本発明の風味油脂の製造方法としては、(a)油脂と(d)水に(b)脂質と蛋白質との複合体、(c)乳固形分を溶解したものの混合物を80〜180℃で数十秒〜数十分間加熱処理する。好ましくは80〜140℃、より好ましくは80〜120℃で加熱処理をする。80℃未満では効果が得難く、逆に180℃を越えると焦げ臭を感じるようになり好ましくない。なお、風味増強のために加熱処理する前に、混合物を脂肪酸分解酵素で分解したり、さらには乳酸発酵及び/又は酵母発酵することもできる。加熱装置は、攪拌羽根を有する加熱攪拌装置もしくは連続式の熱交換機を使用すればよい。加熱攪拌機としては、煮練機、ニーダー、クッキングミキサーなどが挙げられ、連続式の熱交換機としては、コンビネーター、コンサーム、間接式のUHT殺菌機などが挙げられる。特に、生産性の面からは連続式の熱交換機を使用することが好ましい。
【0029】加熱処理終了後、この混合物を固化しない範囲で、好ましくは80℃未満まで冷却して、濾過、遠心分離、デカンテーション等の分離手段により混合物である処理液の不溶分を除去して風味油脂を得る。なお、本発明の風味油脂においては、風味油脂中の水分残存量を0.3〜3.0重量%に、さらに望ましくは0.5〜2.0重量%に分離条件(遠心分離回転数、濾布の目など)により調整することで、固形分及び/又は水分を除去する前のものに比べ、苦味などの異味がなくなるととともに、耐熱性に優れたものが得られ望ましい。尚、水分残存量とは、105℃で3時間加熱による常圧直接乾燥法により得られる値を意味する。
【0030】このようにして得られた風味油脂は、(a)油脂が常温で固形脂を含む場合は必要に応じて冷却可塑化装置を通して可塑化油脂状の風味油脂を得ることもできる。
【0031】本発明の風味油脂が適用できる食品としては、例えばソーセージ、ハンバーグ、肉ダンゴ、スープ、乳製品、アイスクリーム、ソース、ルー、カレールー、グラタン、シチュー、パン、焼き菓子、ケーキ、スポンジ、クッキー、カスタード、ドーナッツ、マヨネーズ、ドレッシング、コロッケ、マーガリン、ショートニング、ホイップクリーム、濃縮乳、調味料などが挙げられる。
【0032】本発明の風味油脂の添加量は、適用できる食品によって異なり限定できないが、概ね適用食品に対して0.05〜50重量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜20重量%添加することで本発明の風味油脂の効果を十分に得ることができる。
【0033】
【実施例】次に、実施例および応用例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】(実施例1)大豆油85重量%に脱脂粉乳5重量%、バターミルクを限外濾過して得た牛乳脂肪球被膜0.2重量%を水9.8重量%に溶解したのもを添加し、90℃で30分間加熱処理した後、約60℃まで冷却し、遠心分離して水分含量1.0重量%の風味油脂を得た。
【0035】(比較例1)実施例1において、牛乳脂肪球被膜を添加しない以外は同様の方法にて水分含量1.0重量%の風味油脂を得た。
【0036】(比較例2)実施例1において、牛乳脂肪球被膜の代わりにバターミルクパウダーを使用した以外は同様の方法にて水分含量1.0重量%の風味油脂を得た。実施例1と比較例1、2の風味油脂で、10名のパネラーによる官能評価を行った結果を表1に示す。表1から明らかなように、実施例1の風味油脂が乳風味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は10名であり、比較例1、2の風味油脂に比べ風味評価合計得点からも圧倒的に良好であるとされた。
【0037】
【表1】

【0038】(実施例2)綿実油90重量%に、ホエーパウダー3重量%、鶏卵黄由来の脂質と蛋白質の複合体(商品名:卵黄レシチンLPL−20、キューピー(株)製)0.3重量%を水6.7重量%に溶解したものを添加し、80℃で90分間加熱処理した後、約60℃まで冷却し、遠心分離して風味油脂を得た。この風味油脂中の水分は0.5重量%であった。
【0039】(実施例3)実施例2において遠心分離を2回行い、水分が0.25重量%の風味油脂を得た。
【0040】(実施例4)実施例2において、遠心分離する代わりに濾布にて固形分だけを取り除き風味油脂を得た。この風味油脂中の水分は4.8重量%であった。実施例2、3、4の風味油脂で、10名のパネラーによる官能評価を行った結果を表2に示す。表2から明らかなように、水分量の比較において、実施例2の風味油脂が乳風味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は6名であった。実施例3を最も好ましいとした者は1名であり、実施例2の風味油脂に比べ乳のコク味の残りが弱いとする者が多かった。また実施例4を最も好ましいとした者は3名であり、乳風味とコク味が強く感じられるものの、実施例2の風味油脂に比べると若干、苦味や焦げ臭が感じられる、と答えた者がいた。
【0041】
【表2】

【0042】(比較例3)実施例2において、鶏卵黄由来の脂質と蛋白質の複合体の代わりに鶏卵黄を使用した以外は同様の方法にて水分量0.5重量%の風味油脂を得た。実施例2と比較例3の風味油脂で、10名のパネラーによる官能評価を行った結果を表3に示す。表3から明らかなように、実施例2の風味油脂が乳風味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は9名と圧倒的に多かった。また、表中には記載していないが、比較例3の風味油脂では、卵焼きのような風味が感じられるとした者が6名いた。
【0043】
【表3】

【0044】(製造例1) 〔有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)の調製〕
表4に示す配合にて、ナトリウムカゼイン(商品名:ハプロ、新日本製薬(株)製)7重量%を92重量%の水に分散、溶解させ65℃まで加熱後、コハク酸モノグリセリド(商品名:ポエムB−10、理研ビタミン(株)製)1重量%を添加し溶解後、超音波均質機(500W)にて均質化(5分)し、コハク酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体溶液を得た。得られた水溶液を0.1hPaで減圧脱水し、固形分中の水分を6.0重量%とした。この物を粉砕し、20メッシュ篩で、篩過して粉末状のコハク酸モノグリセリドと乳蛋白質の複合体(以下、MP−1と言う)を得た。
【0045】
【表4】

【0046】(製造例2および3) 〔有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−2、3)の調製〕
表4に示す配合にて、脱脂粉乳、ヘキサメタリン酸ナトリウムを水に分散溶解させ60℃まで加熱後、ジアセチル酒石酸モノグリセリド(商品名:ポエムW−10、理研ビタミン(株)製)を添加し、バルブ式ホモジナイザーにて6MPaで均質化後、140℃で4秒間UHT殺菌して、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質の複合体(MP−2および3)を得た。
【0047】上記複合体の製造に用いた乳蛋白質中の非ミセル状態のカゼイン含有率(%)を調べた結果を表5に示す。また、上記の各試料中の複合体の割合を定量化するために、100ml容の密栓付き三角フラスコに試料30ml(MP−1は固形分が10重量%となるように水を添加し水溶液とした)とn−ヘキサン30mlを入れ、20℃で15分間振とう後、遠心分離により上層(ヘキサン層)を20ml分取り出し、ヘキサンを留去後、固形物量を精秤し、試料中の脂質重量に対する割合を求め、これを複合体に関与しなかった遊離脂肪率(%)として表5に示す。表5から明らかなように、乳蛋白質のうち非ミセル状態のカゼイン含量が高い程、複合体の遊離脂肪酸率は小さく、複合体を形成しやすいことがわかる。
【0048】
【表5】

【0049】(実施例5)硬化コーン油(融点32℃)90重量%に、全脂粉乳3重量%、製造例1で調整した有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)0.4重量%を水6.6重量%に溶解したものを添加し、95℃で60分間加熱処理した後、約60℃まで冷却し、遠心分離して風味油脂を得た。この風味油脂中の水分は0.5重量%であった。
【0050】(実施例6)実施例5において、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)と水の代わりにMP−2を使用した以外は同様の方法にて水分量0.5重量%の風味油脂を得た。
【0051】(実施例7)実施例5において、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)と水の代わりにMP−3を使用した以外は同様の方法にて水分量0.5重量%の風味油脂を得た。
【0052】(比較例4)実施例5において、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)を添加しない以外は同様の方法にて水分量0.5重量%の風味油脂を得た。
【0053】(比較例5)実施例5において、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)の代わりに、ナトリウムカゼイン0.35重量%とコハク酸モノグリセリド0.05重量%を添加した以外は同様の方法にて水分量0.5重量%の風味油脂を得た。実施例5および比較例4、5の風味油脂で、10名のパネラーによる官能評価を表6に示す。表6から明らかなように、複合体形を使用した実施例5の風味油脂が乳風味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は9名と圧倒的に多かった。
【0054】
【表6】

【0055】実施例5、6および7の風味油脂で、10名のパネラーによる官能評価を表7に示す。表7から明らかなように、複合体形成率の最も高いMP−1を使用した実施例5の風味油脂が乳風味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は6名と多く、ついで非ミセル状態のカゼイン複合体を使用した実施例6を最も好ましいとした者は1名であり、実施例7を最も好ましいとした者は3名であった。
【0056】
【表7】

【0057】(実施例8)実施例5において、硬化コーン油の5重量%を乳脂肪に代えた以外は同様の方法にて水分量0.5重量%の風味油脂を得た。
【0058】(実施例9)実施例5において、硬化コーン油の30重量%を乳脂肪に代えた以外は同様の方法にて水分量0.5重量%の風味油脂を得た。
【0059】(比較例6)実施例9において、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)を添加しない以外は同様の方法にて水分量0.5重量%の風味油脂を得た。
【0060】実施例5、8および9の風味油で、10名のパネラーによる官能評価を表8に示す。表8から明らかなように、乳脂肪の含有量を多く使用した風味油脂ほど乳風味とコク味が強く感じられ最も好ましいと答えた者が多かった。
【0061】
【表8】

【0062】実施例9および比較例6の風味油脂で、10名のパネラーによる官能評価を表9に示す。表9から明らかなように、複合体形を使用した実施例9の風味油脂が乳風味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は10名と圧倒的に比較例6の風味油脂よりも評価は高かった。
【0063】
【表9】

【0064】(実施例10)実施例9と同じ原料の硬化コーン油60重量%、乳脂肪30重量%に、全脂粉乳3重量%、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)0.4重量%を水6.6重量%に溶解したものを50℃に温調後、リパーゼ(商品名:リパーゼAY「アマノ」、天野製薬(株)製)0.05重量%を水1重量%に溶解して添加し、緩やかに撹拌しながら60分間保持した後、95℃で60分間加熱処理した。その後直ちに約60℃まで冷却し、遠心分離して風味油脂を得た。この風味油脂中の水分は0.5重量%、油脂の分解度は1.5%であった。
【0065】(実施例11)実施例10において、リパーゼ処理時間を150分とした以外は同様の方法に風味油脂を得た。この風味油脂中の水分は0.5重量%、油脂の分解度は3.0%であった。
【0066】(実施例12)実施例11において、リパーゼの添加量を0.1重量%、処理時間を180分とした以外は同様の方法に風味油脂を得た。この風味油脂中の水分は0.5重量%、油脂の分解度は5.5%であった。
【0067】(比較例7)実施例11において、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)を添加しない以外は同様の方法にて水分量0.5重量%、油脂の分解度は1.5%の風味油脂を得た。
【0068】(比較例8)実施例11において、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)の代わりに、ナトリウムカゼイン0.35重量%とコハク酸モノグリセリド0.05重量%を添加した以外は同様の方法にて水分量0.5重量%、油脂の分解度は1.5%の風味油脂を得た。実施例9、10、11、12の風味油脂で、10名のパネラーによる官能評価を10に示す。表10から明らかなように、油脂の分解度が高くなるほど乳風味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者が多かった。また、実施例12の分解度が5.5%では遊離脂肪酸の苦味や異味が感じられるとするものがいた。
【0069】
【表10】

【0070】実施例11および比較例7、8の風味油脂で、10名のパネラーによる官能評価を表11に示す。表11から明らかなように、複合体形を使用した実施例11の風味油脂が、乳風味とコク味が強く感じられ好ましいと答えた者は9名と圧倒的に評価は高かった。
【0071】
【表11】

【0072】(実施例13)大豆硬化油(融点32℃)55重量%に、生クリーム(乳脂肪分45%)40重量%と脱脂粉乳2重量%、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−1)0.4重量%を水2.6重量%に溶解したものを45℃に温調後、リパーゼ(商品名:タリパーゼ、田辺製薬(株)製)0.05重量%を水1重量%に溶解したものを添加し、緩やかに撹拌しながら60分間保持した後、95℃で60分間加熱処理した。その後直ちに約60℃まで冷却し、遠心分離して風味油脂を得た。この風味油脂中の水分は0.5重量%、油脂の分解度は1.3%であった。
【0073】(実施例14)実施例13において、大豆硬化油(融点32℃)を除く原料を先にリパーゼで分解したところに、大豆硬化油を添加して加熱処理と遠心分離した以外は同様の方法にて水分量0.5重量%、油脂の分解度は1.3%の風味油脂を得た。
【0074】(実施例15)実施例14において、リパーゼ処理後、大豆硬化油を添加したものを、80℃で15分間殺菌してリパーゼを失活させた後、34℃まで冷却したところに、マザースターター(10%脱脂粉乳培地に乳酸菌として、ストレプトコッカス・ジアセチラクチス(クリスチャン・ハンセンス社製)を0.7重量%、ストレプトコッカス・クレモリス(Streptococus cremoris JDTA H-61)を0.3重量%接種後、34℃で24時間前培養したもの)を1重量%接種して、34℃での酸度が0.65%になるまで培養した。その後95℃で60分間加熱処理し、約60℃まで冷却してから、遠心分離して水分は0.5重量%の風味油脂を得た。
【0075】(実施例16)実施例14において、リパーゼ処理後、大豆硬化油を添加したものを、80℃で15分間殺菌してリパーゼを失活させた後、30℃まで冷却したところに、上白糖1重量%とイースト(商品名:レッドイースト、鐘淵化学工業(株)製)0.2重量%を水1重量%に懸濁したものを添加し、全体が均一になるように撹拌した後、30℃で12時間静置してアルコール濃度0.8%まで発酵させた。その後95℃で60分間加熱処理し、約60℃まで冷却してから、遠心分離して水分は0.5重量%の風味油脂を得た。
【0076】(実施例17)実施例15において、リパーゼ処理後に乳酸発酵したところに、上白糖1重量%とイースト(商品名:レッドイースト、鐘淵化学工業(株)製)0.2重量%を水1重量%に懸濁したものを添加し、全体が均一になるように撹拌した後、30℃で12時間静置してアルコール濃度0.8%まで発酵させた。その後95℃で60分間加熱処理し、約60℃まで冷却してから、遠心分離して水分は0.5重量%の風味油脂を得た。
【0077】(実施例18)実施例15において、リパーゼ処理をしない以外は同様の方法にて、水分0.5重量%の風味油脂を得た。
【0078】(実施例19)実施例15において、リパーゼ処理と乳酸発酵の処理の順番を逆にした以外は同様の方法にて、水分0.5重量%の風味油脂を得た。
【0079】実施例13、14、15、16および17の風味油脂で、10名のパネラーによる官能評価を表12に示す。表12から明らかなように、実施例13と14の大豆硬化油をリパーゼ処理の前もしくは後で添加することの比較では、実施例14のリパーゼ処理後に大豆硬化油を添加した方が好ましいとする者が多かった。また、リパーゼ処理の後に、乳酸発酵やイースト発酵処理したものが好ましいとする者が多かった。
【0080】
【表12】

【0081】実施例15、18および19の風味油脂で、10名のパネラーによる官能評価を表13に示す。表13から明らかなように、リパーゼ処理後に乳酸発酵処理した実施例15が、乳酸発酵のみ(実施例18)や乳酸発酵後にリパーゼ処理したもの(実施例19)よりも乳風味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は7名と圧倒的に評価は高かった。
【0082】
【表13】

【0083】(実施例20)大豆硬化油(融点32℃)65重量%に、バター20重量%とホエーチーズ2重量%、有機酸モノグリセリドと乳蛋白質との複合体(MP−3)2.0重量%を水11.0重量%に溶解したものを40℃に温調後、リパーゼ(商品名:リパーゼM「アマノ」、天野製薬(株)製)0.05重量%を水1重量%に溶解したものを添加し、緩やかに撹拌しながら60分間保持して油脂の分解度を1.0%とした。その後80℃で10分間殺菌してリパーゼを失活させた後、34℃まで冷却したところに、マザースターター(10%脱脂粉乳培地に乳酸菌として、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus JDTA B-5b)を0.1重量%接種後、34℃で24時間前培養したもの)を1重量%接種して、34℃での酸度が0.2%になるまで培養した。このものを分離しないようによく攪拌しながら、掻き取り式殺菌機に通し、135℃に上昇させホールディングチューブで5分間保持して加熱処理した後、更に掻き取り式冷却機に通して約60℃まで冷却し、遠心分離して水分は0.5重量%の風味油脂を得た。
【0084】(比較例9)実施例20において、掻き取り式殺菌機による加熱処理条件を75℃で5分間とする以外は同様の方法にて、水分0.5重量%の風味油脂を得た。実施例20および実施例21の風味油脂で、10名のパネラーによる官能評価を表14に示す。表14から明らかなように、135℃で加熱処理した実施例20の風味油脂が乳風味とコク味が強く感じられ、比較例9の風味油脂よりも評価は高かった。
【0085】
【表14】

【0086】(実施例21)〔マーガリンの製造〕
大豆硬化油(融点36℃)67重量%、ナタネ油10重量%、実施例1の風味油脂5重量%を加熱溶解し、グリセリン脂肪酸エステル0.2重量%、レシチン0.2重量%、β―カロチン0.001重量%を加えて油相を調製した。一方、脱脂粉乳1.5重量%、食塩2.0重量%を水14.099重量%に溶解し水相を調製した。65℃にて水相を油相に徐々に添加して乳化したものを、掻き取り式の冷却機で急冷し、捏和機を通して安定化し、パン用の付けマーガリンを製造した。
【0087】(比較例10)〔マーガリンの製造〕
実施例21で使用した実施例1の風味油脂に代えて比較例2の風味油脂を添加した以外は同様の方法にてパン用の付けマーガリンを製造した。
【0088】食パン用付けマーガリンとして、10名のパネラーによる官能評価の結果を表15に示す。実施例21のマーガリン(実施例1の風味油脂を使用)は乳風味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は9名と多かった。
【0089】
【表15】

【0090】(実施例22)〔ホイップクリームの製造〕
ナタネ硬化油(融点32℃)30重量%、ヤシ硬化油(融点36℃)7重量%、実施例2の風味油脂3重量%を加熱溶解し、レシチン0.3重量%を加えて油相を調製した。一方、脱脂粉乳4重量%、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.1重量%、蔗糖脂肪酸エステル(HLB11)0.2重量%を水55.4重量%に溶解して水相を調製した。60℃にて油相を水相に添加し、予備乳化後5MPaで均質化後、140℃で4秒間UHT殺菌した後、再度10MPaで均質化し、5℃まで冷却してクリームを製造した。このクリームを5℃で一晩エージングしたもの100重量%に、グラニュー糖8重量%を混合し、ミキサーにてホイップをおこないホイップクリームを得た。
【0091】(比較例11)〔ホイップクリームの製造〕
実施例22で使用した実施例2の風味油脂に代えて比較例3の風味油脂を添加した以外は同様の方法にてクリームを製造し、同様にホイップしてホイップクリームを得た。
【0092】8名のパネラーによる官能評価の結果を表16に示す。実施例22のホイップクリーム(実施例2の風味油脂を使用)は乳らしい風味、呈味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は6名と多かった。
【0093】
【表16】

【0094】(実施例23および比較例12)〔クッキーの製造〕
表17に示す配合にて、クッキーを製造した。
【0095】
【表17】

【0096】上白糖、ショートニング、風味油脂、加糖練乳、食塩、バニラオイルを混ぜ合わせた後、水に炭酸アンモニウムを溶解したものを添加した。これに卵、薄力粉を加えて捏ね、薄く延ばして冷蔵庫で成形しやすい硬さになるまで冷やした後、生地を5mmの厚さに延ばし、型抜きをして220℃で12分間焼成してクッキーを得た。
【0097】8名のパネラーによる官能評価の結果を表18に示す。実施例23のクッキー(実施例5の風味油脂を使用)は乳らしい風味、呈味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は7名と多く、比較例12(比較例5の風味油脂)のクッキーよりも評価は高かった。
【0098】
【表18】

【0099】(実施例24および比較例13)〔食パンの製造〕
表19に示す配合にて、食パンを製造した。
【0100】
【表19】

【0101】強力粉にイースト、イーストフード、水を加えて軽く混ぜ合わせ、生地(中種)をつくり、30℃で4.5時間発酵させた。これに強力粉、食塩、砂糖、脱脂粉乳、水、ショートニングと風味油脂を加え、本捏を十分に行った後、生地を分割し、まるめて中間ホイロに入れ、30℃で20分間保持した。次いで成形し、型詰めして40℃で45分間発酵させ、最後に210℃で30分間焼成して、食パンを得た。
【0102】10名のパネラーによる官能評価の結果を表20に示す。実施例24の食パン(実施例9の風味油脂を使用)は乳らしい風味、呈味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は9名と圧倒的に多かった。また、これらの食パンをビニール袋にいれ20℃で3日間したところ、実施例24の食パンでは焼成直後と変わらぬ好ましい乳風味を有しており、比較例13(比較例6の風味油脂を使用)の食パンとの風味の差は、トーストすることでより明確となった。
【0103】
【表20】

【0104】(実施例25および比較例14)〔アイスクリームコーンの製造〕
表21に示す配合にて、アイスクリームコーンを製造した。
【0105】
【表21】

【0106】全卵、水、上白糖を混ぜ合わせたところに、薄力粉を少量ずつ加え、さらに滑らかになるまで混ぜ合わせた。これに溶解したショートニングと風味油脂を添加して生地を調製し、冷蔵庫で30分間ねかせた後、生地をプレートに流し込み170℃で25分間焼成してアイスクリームコーンを得た。
【0107】10名のパネラーによる官能評価の結果を表22に示す。実施例25のアイスクリームコーン(実施例11の風味油脂を使用)は粉っぽい風味が消失し、乳のコク味が感じられ、最も好ましいと答えた者は9名と圧倒的に多かった。特に、ラクトアイス(無脂乳固形分8.0%、植物性脂肪分13.0%)と一緒に食するとでよりアイスクリームの美味しさが際立った。
【0108】
【表22】

【0109】(実施例26および比較例15)〔ホワイトソースの製造〕
表23に示す配合にて、ホワイトソースを製造した。
【0110】
【表23】

【0111】ナタネ油と風味油脂を60℃に加熱したところに、薄力粉を数回に分けて投入、混合し、120℃に達温後加熱をやめ、そのまま15分間均一に練り上げていきルーを製造した。次いで80℃になったルーに牛乳を徐々に加えて、攪拌を30分間続けた後、食塩とコショウで味を調えホワイトソースを得た。
【0112】10名のパネラーによる官能評価の結果を表24に示す。実施例26のホワイトソース(実施例11の風味油脂を使用)は粉っぽい風味が消失し、乳の風味とコク味が強く感じられ、最も好ましいと答えた者は9名と圧倒的に多かった。
【0113】
【表24】

【0114】
【発明の効果】本発明の、油脂、脂質と乳蛋白質との複合体、乳固形分及び水を含有してなる混合物を80〜180℃で加熱処理した後、固化しない範囲で冷却してから処理液の不溶分を除去することで得られる風味油脂は、従来の風味油脂では得ることのできない乳の風味やコク味に優れたものであり、各種食品に使用することで風味を著しく向上することができる。
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】鐘淵化学工業株式会社
【出願日】 平成14年9月18日(2002.9.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−164258(P2003−164258A)
【公開日】 平成15年6月10日(2003.6.10)
【出願番号】 特願2002−271857(P2002−271857)