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【発明の名称】 浮き身用チーズとその製造方法
【発明者】 【氏名】田村 勝彦
【住所又は居所】埼玉県川越市的場754−4 三協食品工業株式会社内

【氏名】飯野 清人
【住所又は居所】埼玉県川越市的場754−4 三協食品工業株式会社内

【氏名】松本 久実子
【住所又は居所】埼玉県川越市的場754−4 三協食品工業株式会社内

【氏名】川口 崇
【住所又は居所】埼玉県川越市的場754−4 三協食品工業株式会社内

【氏名】中村 保
【住所又は居所】埼玉県川越市的場754−4 三協食品工業株式会社内

【要約】 【課題】例えば、熱いスープの上からふりかけたとき、スープの表面に浮き上がる浮き身用チーズとその製造方法を提供する。

【解決手段】原料チーズとしてモザレラチーズを用い、この原料チーズを噴霧乾燥で粉末化した。次に、この粉末チーズを流動層造粒法で造粒した。上記のような方法によって、粒径が250μm以上で、しかも、気孔率が17.36%以上の造粒物を得た。この造粒物を浮き身用チーズとして用いることによって、スープなどの上にトロリと浮かぶチーズの浮き身を実現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 粉末チーズを原料として造粒物を形成し、この造粒物の粒子径が250μm以上であり、気孔率が(1−1.00/原料の固形密度)×100で求めた値以上である浮き身用チーズ。
【請求項2】 粉末チーズはモザレラチーズあるいはモザレラチーズ含有物である請求項1記載の浮き身用チーズ。
【請求項3】 原料チーズを粉末化して粉末チーズを形成し、この粉末チーズを流動層造粒法で造粒する浮き身用チーズの製造方法。
【請求項4】 原料チーズの粉末化は噴霧乾燥でおこなう請求項3記載の浮き身用チーズの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、スープなどに浮かせる浮き身として用いるのに適した浮き身用チーズとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、熱いスープにクルトンなどの浮き身を浮かせて、スープをおいしそうに見せるということが従来からおこなわれている。上記クルトンのほかにも、チーズを浮き身として使用することも考えられる。チーズはクルトンよりも味が濃厚なので、チーズを浮き身とすることで、見た目がおいしそうなだけでなく、スープの味にこくを出すこともできる。しかし、チーズをクルトンのように立方体に切って、これをスープに入れても、チーズはその比重が重いので、スープの中に沈んでしまう。そこで、パルメザンチーズをスープの上からふりかけることも考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このようにパルメザンチーズを熱いスープの上からふりかけると、一瞬は浮くが、時間が経つと沈んでしまう。また、このパルメザンチーズをふりかけてから、これをかき混ぜると、パルメザンチーズが溶解してしまう。したがって、浮き身としての見た目のおいしさを演出することができなくなるという問題があった。しかも、パルメザンチーズが溶解してしまうと、スープが濁ってしまって、スープ本来の見た目までも損ねてしまう。この発明の目的は、例えば、熱いスープの上からふりかけたとき、スープの表面に浮き上がる浮き身用チーズとその製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、粉末チーズを原料として造粒物を形成し、この造粒物の粒子径が250μm以上であり、気孔率が式(1−1.00/原料の固形密度)×100で求めた値以上であることを特徴とする。ここでいうチーズとは、プロセスチーズ、ナチュラルチーズのほか、チーズ類似品を含むものである。また、上記チーズを単一で用いても、混合して用いてもよい。第2の発明は、上記第1の発明を前提として、粉末チーズがモザレラチーズあるいはモザレラチーズ含有物であることを特徴とする。
【0005】第3の発明は、原料チーズを粉末化して粉末チーズを形成し、この粉末チーズを流動層造粒法で造粒することを特徴とする。ここでいう原料チーズとは、プロセスチーズ、ナチュラルチーズのほか、チーズ類似品を含むものである。また、上記チーズを単一で用いても、混合して用いてもよい。第4の発明は、第3の発明を前提として、原料チーズの粉末化は噴霧乾燥でおこなうことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】本出願人は、粉末チーズを熱いスープに入れたとき、そのチーズをスープの表面に浮き上がらせるためには、粉末の粒子径とその気孔率とが関係しているものと考え以下の実験を実施した。
【0007】(実験1)この実験1を実施するための試料は、流動層造粒法を用いて得たものであり、その気孔率は、昭和50年日刊工業新聞社出版、粉体工学研究会編「粒度測定技術」第27ページ〜30ページおよび1979年槇書店出版、川北公夫ら編「粉体工学(基礎編)」第93ページ〜97ページに記載された方法によって測定した。その測定方法の詳細を以下に説明する。
【0008】■四塩化炭素とエタノールの混合率を変えた、各種の密度の異なる混合液を作り、混合液の密度(S)を測定した。
■目盛付遠沈管に■の混合液を15ml入れ、さらにその中に各粒子径の粉体チーズを500mg投入し、よく攪拌した。上記攪拌した後、300rpmで5分間遠心分離をおこない、沈殿容量(V)を測定した。
■混合液の密度(S)と沈殿容量(V)とから、試料の沈降曲線を作図し、そこから試料の全重量を算出した。
■ピクノメーター法を用いて、試料を溶解した液の比重の測定値と固形分率から資料の真密度を算出した。なお、真密度とは粒子内の空洞を含めない固形密度である。このようにして得られた値を次の式に当てはめて、平均粒子密度および気孔率を求めた。
平均粒子密度(g/cm)=試料の全重量/試料の完全沈殿時の容量気孔率(%)=(1−平均粒子密度/真密度)×100【0009】また、各試料を温水に混入したときの浮き身の浮上量を次のようにして測定した。
■200ml容のビーカーに各試料を2.5g入れ、これに80℃の温水100mlをそそぎ入れた。
■ガラス棒で15秒間攪拌し、液温が30℃になるまで水冷した。
■水面上に浮かんだペースト上の浮き身を薬さじですくい取り、含水のままの重量を測定した。
このような測定方法によって測定した結果、粒子径、気孔率および浮上量の関係は、表1の通りであった。
【0010】
【表1】

【0011】上記表1から、試料No.1の場合、粒子径が125μm以上250μm未満であり、この場合の浮き身の浮上量は1.0gにとどまった。これは他の試料と比較して浮き身の浮上量は極端に少なく、そのほとんどが溶解してしまった。また、このとき気孔率は17.4%であったが、試料No.1の浮上量が極端に少なかったのは、この気孔率の影響よりも、粒子径が小さかったことの影響の方が大きかったものと推測される。
【0012】また、試料No.2ではその粒子径が250μm以上500μm未満、気孔率が21.0%、浮上量4.4gであった。試料No.3では粒子径が500μm以上850μm未満、気孔率が25.3%、浮上量4.8gであった。試料No.4では粒子径が850μm以上1180μm未満、気孔率が24.2%、浮上量5.4gであった。
【0013】上記のように、試料の粒子径が250μm以上1180μm未満の場合には、気孔率も高く、浮上量も多くなった。一方、試料の粒子径が1180μm以上になると、非常にもろく崩れやすくなる。上記1180μm以上の粒子径のものを作成しても、これがすぐに崩れてしまうので、実質的に試料として1180μm以上のものを得ることができなかった。以上の結果から、浮上量が多い浮き身用チーズを得るには、試料である造粒物の粒子径が250μm以上であることが判明した。
【0014】また、上記浮き身チーズの原料として用いたモザレラチーズの場合、その固形密度は1.21g/cm(20℃)であった。上記固形密度から、このモザレラチーズが浮上するために必要な気孔率の理論値を以下の式により算出した。
気孔率の理論値(%)=(1−1.00/1.21)×100【0015】上記計算の結果、気孔率の理論値は17.36%であった。したがって、理論上、気孔率が17.36%以上であれば、このモザレラチーズを原料とした浮き身チーズは浮上することになる。また、表1の結果から、気孔率が21%以上で良好な浮上量が得られる。しかし、先に説明したとおり、試料No.1の試料では、その粒径が小さいために、浮上量が少なくなったものと考えられる。したがって、粒径が大きければ、気孔率が17.4%であったとしても、浮上すると考えられる。上記のことから、気孔率の下限値は上記理論値である17.36%に設定することとした。なお、上記固形密度はチーズの種類や、産地、季節などで変化するので、原料が異なる場合には、その都度理論値による気孔率の下限値を算出することが望ましい。
【0016】上記のようにして求めた、250μm以上でかつ気孔率17.36%以上の造粒物を試料として用い、これを温水に入れてかき混ぜると、造粒物同士が結着し、トロリと溶けた状態で浮上する。これは、以下のような現象が起こっていると考えられる。
【0017】すなわち、温水の熱と水分により造粒物の表面が溶融し、この表面が粘着性を有するようになる。そして、この表面に粘着性を有した状態でかき混ぜると、この造粒物同士が結着し、より大きなかたまりとなる。このとき、造粒物の粒子がある程度大きいので、熱と水分とによって溶融するのはその表面だけである。このように表面が溶融することによって、この表面の気孔が壊れるが、造粒物の内部は溶融せず、その気孔が保たれる。したがって、上記造粒物のかたまりの内部に気泡が閉じこめられた状態となる。
【0018】上記造粒物同士が結着して大きなかたまりとなるが、その内部には気泡が閉じこめられているので、この造粒物のかたまりは水面に浮上するようになる。また、この造粒物のかたまりは、その表面が熱と水分とによって溶融しているので、全体的にはトロリとした状態になっている。上記のような理由により、試料である造粒物が浮上するとともに、トロリとしたおいしそうな状態になると考えられる。
【0019】(実験2)粘着性の測定原料チーズとしては、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、あるいは、チーズ類似品を用いることができるが、この実験2では、原料チーズとしてナチュラルチーズであるモザレラチーズ、チェダーチーズ、ゴーダチーズを用い、このときの浮き身チーズの粘着性を比較した。粘着性の測定は以下のようにしておこなった。
【0020】■各原料チーズを実験1と同様の方法で造粒物の試料を得て、この試料を200ml容のビーカーに2.5g入れ、このビーカーにさらに80℃の温水100mlをそそぎ入れる。そして、ガラス棒で15秒間攪拌し、液温が30℃となるまで水冷した。
■水面に浮かんでいるペースト上の浮き身を薬さじですくい取り、このすくい取った浮き身0.5gを30℃に保温した2枚のガラス板(5×5cm、厚さ3mm)の間に挟んだ。そして、このガラス板の上に1kgのおもりをのせ、1分間静置した。
■おもりを取り外し、2枚のガラス板の一方にバネ秤を取り付け、もう一方を固定した。
■取り付けたバネ秤を引き上げ、2枚のガラス板が離れたときのバネ秤の値を比較した。
この実験2の結果を表2に示している。
【0021】
【表2】

【0022】表2に示したように、原料チーズとしてモザレラチーズを用いた場合の粘着性が550gで最も粘りが強く、次いでチェダーチーズが400gであり、ゴーダチーズが350gであった。上記のように、モザレラチーズが最も粘着性が高いことから、このモザレラチーズを用いることにより、よりトロリとしたテクスチャーの浮き身チーズを得ることができる。
【0023】また、上記各チーズを組み合わせることにより、様々な粘着性を有する浮き身を得ることができるようになる。例えば、粘着性を低くしたい場合にはゴーダチーズを多くして、粘着性を高くしたい場合にはモザレラチーズを多くすればよい。上記のように、浮き身チーズの粘着性を用途や目的に応じて容易に調節することができる。このように粘着性を調節することによって、この浮き身チーズの利用範囲を広げることができる。
【0024】次にこの発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)この第1実施形態では、温水2.5リットルに溶融塩としてポリリン酸ナトリウム45gを溶かし、これに細断したニュージーランド産モザレラチーズ1.5kgを投入して、60℃に保持し攪拌しながら溶融した。その後、溶融物を乳化機に通して均質化処理し、この均質化処理したものを噴霧乾燥機により噴霧乾燥して、粉末チーズを得た。上記噴霧乾燥機としては、NIRO社製SD−6.3N/Rドライヤーを用い、送風温度140℃、排風温度80℃の条件下で噴霧乾燥をおこなった。
【0025】上記噴霧乾燥によって得られた粉末チーズを流動層造粒法により造粒した。この流動層造粒機としては、(株)大川原製作所社製FL−MINIを用いた。また、送風温度70℃、排風温度30〜35℃、バインダー供給量2.4ml/minの条件下で流動層造粒をおこなった。上記造粒後、標準ふるい(14〜60Mesh)を用いてふるい分けし、粒子径250μm以上1180μm未満の造粒物を得た。この造粒物の気孔率は22.3%であった。
【0026】上記のような造粒物2〜5gと、市販の乾燥スープ粉末(一人分20g前後)とを混合し、この混合物にお湯を注いで攪拌した。このようにお湯を注いで攪拌すると、造粒物は凝集し、かたまりとなってスープ表面に浮き上がり、浮き身チーズとなった。この浮き身チーズはその表面がトロリと溶けて、非常に高い粘着性を有していた。一方、乾燥スープ粉末は溶解して通常のスープとなった。すなわち、上記造粒物がスープに溶解し、このスープを濁らせるということはなかった。上記のような浮き身チーズが浮いたスープは見た目が非常においしそうで食欲をそそるものであった。また、実際にこの浮き身チーズを食べてみると、トロリとした食感でとてもおいしかった。さらに、スープにもチーズのこくが加わり、スープ自体がおいしくなるとともに、チーズの栄養価が加わり、栄養に富んだ新しいタイプのスープとなった。
【0027】(第2実施形態)この第2実施形態では、温水2リットルに溶融塩としてポリリン酸ナトリウム38gを溶かし、これに細断したニュージーランド産チェダーチーズ1.3kgを投入して、60℃に保持し攪拌しながら溶融した。その後、溶融物を乳化機に通して均質化処理し、この均質化処理したものを噴霧乾燥機により噴霧乾燥して、粉末チーズを得た。この噴霧乾燥機は上記第1実施形態と同じものを用い、その条件も同じにしている。この粉末チーズを流動層造粒機により造粒した後、標準ふるい(14〜60Mesh)を用いてふるい分けし、粒子径250μm以上1180μm未満の造粒物を得た。この造粒物の気孔率は22.3%であった。上記流動層造粒機は第1実施形態と同じものを用い、その条件も同じにしている。
【0028】上記のような造粒物2〜5gと、市販の乾燥スープ粉末(一人分20g前後)とを混合し、この混合物にお湯を注いで攪拌することは、上記第1実施形態と同様である。このとき造粒物は凝集し、かたまりとなってスープ表面に浮き上がり、浮き身チーズとなった。この浮き身チーズはその表面がトロリと溶けて、比較的低い粘着性を有していた。上記のような浮き身チーズの味等の効果は第1実施形態と同様であった。
【0029】(第3実施形態)この第3実施形態では、温水1.5リットルに溶融塩としてポリリン酸ナトリウム38gを溶かし、これに細断したニュージーランド産ゴーダチーズ1.3kgを投入して、60℃に保持し攪拌しながら溶融した。その後、溶融物を乳化機に通して均質化処理し、この均質化処理したものを噴霧乾燥機により噴霧乾燥して、粉末チーズを得た。噴霧乾燥機としては第1実施形態と同じものを用いた。この粉末チーズを流動層造粒機により造粒した後、標準ふるい(14〜60Mesh)を用いてふるい分けし、粒子径250μm以上1180μm未満の造粒物を得た。この造粒物の気孔率は21.6%であった。上記流動層造粒機は、第1実施形態と同じものを用いた。
【0030】上記のような造粒物2〜5gと、市販の乾燥スープ粉末(一人分20g前後)とを混合し、この混合物にお湯を注いで攪拌することは、上記第1実施形態と同様である。このとき造粒物は凝集し、かたまりとなってスープ表面に浮き上がり、浮き身チーズとなった。この浮き身チーズはその表面がトロリと溶けて、低い粘着性を有していた。上記のような浮き身チーズの味等の効果は第1実施形態と同様であった。
【0031】(第4実施形態)この第4実施形態では、温水1000リットルに溶融塩としてリン酸水素2ナトリウム24kgを溶かし、これに細断したニュージーランド産モザレラチーズ1000kgを投入して、60℃に保持し攪拌しながら溶融した。その後、溶融物を70℃で20分間加熱殺菌し、60℃に冷却した。上記加熱殺菌した溶融物を乳化機に通して均質化処理し、この均質化処理したものを噴霧乾燥機により噴霧乾燥して、粉末チーズを得た。上記噴霧乾燥機としては、森永エンジニアリング(株)社製MDドライヤーを用い、送風温度165℃、排風温度70℃の条件下で噴霧乾燥をおこなった。
【0032】上記噴霧乾燥によって得られた粉末チーズを流動層造粒法により造粒した。この流動層造粒機としては、(株)大川原製作所社製FLOW COATER FLO−300を用いた。上記流動層造粒機は、流動層に粉体を入れ、この流動層の下方から送風機を用いて送風する。上記下方から送風することによって、粉末が舞って、この粉末同士が造粒する。さらに、上記流動層の上方から複数本のノズルによってバインダーを噴霧するようにしている。バインダーとしてグァーガム溶液を用いている。さらに、このバインダーの噴霧液量はノズル1本当たり0.55リットル/minとしている。
【0033】上記のような流動層造粒機において、以下のような条件で造粒をおこなった。すなわち、送風温度60℃、排気温度30〜35℃で10分間送風する。次に、送風・排気温度は上記設定のままで送風を続け、さらにこの送風中に、バインダーを3分間噴霧する。3分間噴霧したら、噴霧を止めて、送風だけを2分間おこない、粉体の乾燥をおこなう。そして、上記3分間の噴霧と、2分間の乾燥を5回繰り返す。上記繰り返しが終わったら、送風温度85℃、排気温度60℃に設定を変更して、30分間送風をおこない、仕上げ乾燥をして、造粒を終了する。上記のように造粒した後、標準ふるい(14〜60Mesh)を用いてふるい分けし、粒子径250μm以上1180μm未満の造粒物を得た。この造粒物の気孔率は24.0%であった。
【0034】上記のような造粒物2〜5gと、市販の乾燥スープ粉末(一人分20g前後)とを混合し、この混合物にお湯を注いで攪拌することは、上記第1実施形態と同様である。このとき造粒物は凝集し、かたまりとなってスープ表面に浮き上がり、浮き身チーズとなった。この浮き身チーズはその表面がトロリと溶けて、低い粘着性を有していた。上記のような浮き身チーズの味等の効果は第1実施形態と同様であった。
【0035】なお、噴霧乾燥機や流動層造粒機は、上記第1〜第4実施形態で挙げたものに限ったものではない。原料の量などによって、それに適した機械を使うことができる。また、上記噴霧乾燥機や流動層造粒機の条件は、上記第1〜第4実施形態のものに限らない。例えば、外気湿度や外気温度によって、その条件設定を変えるようにしている。このように、湿度や温度によって、条件設定を調整することによって、噴霧乾燥の場合には、よりサラサラした粉体を得ることができるし、流動層造粒の場合には、望ましい粒径および気孔率の造粒物を得ることができる。さらに、上記流動層造粒において、原料となる粉体の量が多い場合には、造粒時間を調整することによって、より望ましい粒径および気孔率の造粒物を得ることができる。
【0036】なお、上記第1〜第4実施形態では、流動層造粒法を用いたが、造粒方法には、高速攪拌造粒法あるいは押し出し造粒法とがある。そこで、本出願人は、高速攪拌造粒法および押し出し造粒法でも、浮き身チーズを製造してみた。そして、同一の粒子径のものを対比したのが表3である。
【表3】

【0037】表3に示した結果から、試料No.6の高速攪拌造粒法を用いた場合には、気孔率21.0%で、浮上量が4.2gと試料No.5の流動層造粒法と比較して、ほとんど同レベルの浮き身チーズを得ることができた。しかし、この浮き身チーズのテクスチャーは、流動層造粒法で得られた浮き身チーズよりも硬く、トロリとした柔らかさに欠けるものであった。さらに、この高速攪拌造粒法では、浮き身チーズの内部に芯が確認された。
【0038】これは、高速攪拌造粒法では、粒子に圧力や熱が加わり、この圧力や熱によって造粒物の油脂分が溶出することが要因であると考えられる。上記油脂分が溶出すると、造粒物の表面および内部に皮膜が形成され、この皮膜によって水分が造粒物内に浸透しなくなる。水分が造粒物内に浸透しないと、その表面がトロリとした柔らかさにならない。しかも、上記圧力によってその内部が硬くなり、その内部に芯ができると推測される。
【0039】また、上記高速攪拌造粒法を用いた場合、上記したように油脂分が溶出し、この溶出した油脂分が造粒機内に付着してしまう。このように油脂分が付着したところに新たに粉末チーズを入れると、新たに入れた粉末チーズは上記油脂が付着した造粒機内にくっついてしまう。したがって、一度造粒が終わったら、上記油脂分を除去してからでないと、新たに粉末チーズを入れて造粒作業を行うことができない。したがって、非常に効率が悪くなってしまう。以上のようなことから、テクスチャーがよい浮き身用チーズを得ることができ、しかもこれを効率的に生産するためには、流動層造粒法を用いることが好ましい。
【0040】また、試料No.7の押し出し造粒法を用いた場合には、気孔率が0.5%と非常に低く、しかも、浮上量は0という結果であった。この押し出し造粒法では、造粒物の内部に空気がほとんど含まれないので、この造粒物はすべて沈んでしまったと推測できる。以上のことから、浮き身用チーズを得るための造粒法としては、流動層造粒法および高速攪拌造粒法を用いることが可能であり、中でも流動層造粒法を用いる方が好ましいということがいえる。
【0041】また、上記第1〜第3実施形態では、原料チーズに溶融塩としてポリリン酸ナトリウムを添加し、第4実施形態では、リン酸水素2ナトリウムを添加している。しかし、溶融塩としては、上記ポリリン酸ナトリウムあるいはリン酸水素2ナトリウムのほか、クエン酸塩、オルソリン酸塩、ピロリン酸塩などの公知の溶融塩を用いることができる。また、この溶融塩の代わりにペクチンを用い、上記原料チーズを溶融するようにしてもよい。このペクチンを用いた溶融方法については、本願出願人が特開平11−18676号で開示している。
【0042】なお、原料としてプロセスチーズを用いた場合には、溶融塩がもともと含まれているので、再び溶融塩を添加しなくてもよいこともある。また、ナチュラルチーズであっても、この原料として用いたチーズが溶融すれば、上記溶融塩は必要ない。しかし、溶融塩を添加した方が、溶融時間を短縮することができる。
【0043】また、粉末チーズにバインダーを添加し、これを造粒機で造粒するが、上記バインダーとしてグァーガム等の多糖類やデキストリン等の糖類を添加するようにしてもよい。このようにバインダーを添加することによって、造粒したときに粉体同士の結着を促進することができる。なお、上記バインダーを必ずしも添加しなくてもよいが、これを添加することによって、造粒時間を短くすることができる。
【0044】
【発明の効果】第1の発明によれば、造粒物の粒子径が250μm以上であり、気孔率が式(1−1.00/原料の固形密度)×100で求めた値以上であることとしたので、この造粒物を温水に入れて攪拌したとき、この造粒物が凝集してかたまりとなり、温水表面に浮上するようになる。このような造粒物をスープ等に入れることによって、浮き身として用いることができる。
【0045】第2の発明によれば、粉末チーズはモザレラチーズあるいはモザレラチーズ含有物であることとしたので、浮き身にしたとき粘着性の高い造粒物を得ることができる。
【0046】第3の発明によれば、粉末チーズの造粒を流動層造粒でおこなうこととしたので、気孔率が高い造粒物を得ることができる。しかも、粒子径250μm以上の造粒物を使用することで、テクスチャーがよい浮き身用チーズを得ることができる。
【0047】第4の発明のよれば、原料チーズの粉末化を噴霧乾燥でおこなうこととしたので、サラサラとした粉末チーズを得ることができ、造粒したときに造粒し易くすることができる。
【出願人】 【識別番号】591136997
【氏名又は名称】三協食品工業株式会社
【住所又は居所】埼玉県川越市的場754−4
【出願日】 平成14年4月10日(2002.4.10)
【代理人】 【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
【公開番号】 特開2003−299439(P2003−299439A)
【公開日】 平成15年10月21日(2003.10.21)
【出願番号】 特願2002−107982(P2002−107982)