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【発明の名称】 切り実状干柿の製造方法
【発明者】 【氏名】松本 良治

【要約】 【課題】渋柿の傷の部分など不良箇所を除去して切り実にしたものを、あんぽ柿ところ柿の中間程度の柔らかでしかも渋味のない干柿に仕上げる。

【解決手段】渋柿の切り実を剥皮した状態で乾燥させ、次いでプラスチックフイルムで密封する。切り実は、皮を一部残した状態で剥皮し、該残った皮の内側の果肉部分に引掛け具を取り付けて乾燥機内に吊るして半乾燥するか、或いは全体に剥皮した切り実を、乾燥機内の棚に並べて乾燥し、次いでフイルムで密封包装して完全に脱渋する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 渋柿の切り実を剥皮した状態で乾燥させ、次いでプラスチックフイルムで密封することを特徴とする、切り実状干柿の製造方法。
【請求項2】 切り実は皮を一部残した状態で剥皮し、該残った皮の内側の果肉部分に引掛け具の先端を挿通し、乾燥機内に吊るして乾燥するものである、請求項1記載の切り実状干柿の製造方法。
【請求項3】 切り実は、剥皮後乾燥機内の棚に並べて乾燥するものである、請求項1記載の切り実状干柿の製造方法。
【請求項4】 渋柿を輪切り、縦輪切り或いは縦に4〜8分割した切り実であって剥皮したものを、乾燥機内に吊支し或いは棚置きし、3〜4日間30〜40℃に加温して水分が30〜40%程度になるまで乾燥し、次いでフイルムで密封包装するものである、請求項1、請求項2又は請求項3記載の切り実状干柿の製造方法。
【請求項5】 乾燥状態を見て、更に自然乾燥を1〜2日間行うものである、請求項4記載の切り実状干柿の製造方法。
【請求項6】 渋柿を輪切り、縦輪切り或いは縦に4〜8分割した切り実であって剥皮したものを、20〜25日間自然乾燥し、次いでフイルムで密封包装するものである、請求項1記載の切り実状干柿の製造方法。
【請求項7】 包装内部に、脱酸素剤を封入するものである、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6記載の切り実状干柿の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、渋柿の切り実を渋味のない干柿にする新規な方法に関する。
【0002】
【従来の技術】西条柿や愛宕柿、平核無などの渋柿は、脱渋(渋抜き)してから市場に出荷される。渋柿は、その組織中にあるタンニン細胞中のタンニンが水に可溶な状態にあり、脱渋とはこのタンニンを何等かの手段で不溶化させることを言う。
【0003】この不溶化方法の内、最も古くから行われているのは、渋柿を剥皮後風や日光に当てて干柿にするものである。これには、柿を縄や糸に吊るして干すつるし柿(ころ柿)と串にさして干す串柿とがあるが、いずれにしても、日干しによるタンニン細胞の変化で渋みが直接舌に触れなくなり、且つ糖分が高まるため極めて甘くなる特徴がある。
【0004】一方、この干す時間を短くして、水分が多く柔らかな仕上げにした「あんぽ柿」と言われるものが、ここ十数年来市販されている。これは、保存性は本来の干柿に比べると劣るが、柔らかくトロッとした舌触りや鮮やかなオレンジ色をしている点が好まれ、高級加工果物として広く販売されるようになってきている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、あんぽ柿は水分が多いため腐敗やカビの発生が生じやすく、賞味期限もころ柿よりも短い。また一般に、ころ柿に比べて大きいので一口では食べ辛いし、かといって柔らかくべとべとするので、手でわけたり食い千切ったりしにくい難点もある。
【0006】一口に食べにくいと言うことは、柔らかくべとべとすること以上に、種子やへたの存在がある。このことは、固いころ柿の場合にはより一層問題となる。そのため、次第に干柿の需要が減少し、特に若い人や女性に干柿離れが見られるのが現状である。
【0007】更に、ころ柿にしてもあんぽ柿にしても、その原料となる渋柿は、傷や未熟な部分があると商品にはならない。特に、柿は先端部分から柔化していくが、柔らかくなれば良質な干柿にはならないので、部分的に軟化した渋柿も商品にはならない。そのため、かなりの割合の渋柿が木になったまま放置されたり、廃棄処分されている。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者は、傷んだ柿の有効利用の面と、食べやすさを考慮して、更に、目先を変えて消費の増大にも期待を込めて、渋柿を一口で食べられる大きさに輪切りにしたものを、乾燥して干柿を製造して見た。
【0009】乾燥の程度は、あんぽ柿ところ柿の間程度で、やや柔らかな乾燥乃至半乾燥状態とした。ところが、この切り実状の干柿は外観はあんぽ柿に似て綺麗な外観を示すが、食べた後舌に渋味が残り、とても商品にはならないことが判明した。乾燥時間を延ばしてころ柿程度の固さにしてみても、幾分ましにはなるがやはり渋味が残ってたべられたものではない。
【0010】この理由は明らかではないが、輪切りにすると渋柿内部で生じる炭酸ガス(脱渋作用があると推測されている)などの気体成分が内部に止まりにくいとか、その他脱渋反応が十分に行われなくなる何等かの原因があるものと推察される。このことは、輪切りに限らず、縦輪切りや縦に4〜8分割して得られた渋柿の切り実の全てに言えることである。
【0011】本発明者は、この切り実半乾燥品の渋味を抜くために種々試行錯誤を繰り返し、本発明を完成するに至ったものである。そして、その特徴は、この半乾燥した渋柿切り実を、プラスチックフイルムで密封包装するところにある。この密封包装により、脱渋に係わるガスの発散が防がれ、完全な脱渋がはかられるのではないかと思われる。また、包装内には、品質保持の点から脱酸素剤を封入してみたが、この脱酸素剤の影響も考えられる。
【0012】本発明の切り実状干柿は、まず、渋柿を輪切り、縦輪切り或いは縦に4〜8分割して得られた渋柿の切り実を乾燥乃至半乾燥する。輪切りや縦輪切りの場合、厚みは1〜3cm程度で、最も好ましいのは2cm前後である。また、縦に分割する場合、分割数が多いほど一片中の厚薄の差は小さくなるが全体が小さくなりすぎるので、4〜8分割程度が好ましい。
【0013】本発明者は、地元(島根県)特産の西条柿で実験を行ったが、この西条柿の場合、幾分細長いので、輪切りにすると径の大きさが揃う。また、輪切りにした場合、種子を除去した跡が綺麗に揃う利点もある。この場合、除去跡が乾燥後星のように見えて美的感覚の優れたものができる。もっとも、切り実は輪切りに限らず、縦輪切りや縦4乃至8分割などで、渋柿の形状に応じて工夫するとよい。
【0014】切り方は上記したものに限定はされない。特に、傷や部分的な変色その他不良箇所を除去する必要があるので、その除去箇所に応じて、切り方を変えることも必要である。
【0015】次に、切り実の乾燥について説明する。一般に、干柿の場合は30日程度も日光や風にあてて乾燥する(自然乾燥)が、最近では乾燥機内で加温して乾燥することも行われている。特に、あんぽ柿の場合は乾燥の程度が少なく半乾燥とでも言えるものであるため、腐敗や変色を防ぐために乾燥機内で人工的に乾燥することが多く行われている。また、あんぽ柿でもころ柿でも、鮮やかな色仕上げをするために硫黄燻蒸をされることが最近多いが、乾燥機内であれば、硫黄燻蒸も容易に行える利点がある。本発明の干柿は、小さく切り実にすることや鮮やかな発色が好ましいことから、やはり乾燥機内で乾燥することが望ましい。ただ、硫黄燻蒸を行うと渋がぬけにくい傾向がある。特に、本発明の場合は乾燥による脱渋がしにくいので、できうれば、硫黄燻蒸は避けたほうがよい。尚、乾燥時間を短くすれば、あんぽ柿に近い柔らかなものが得られるし、幾分時間をかければ、あんぽ柿ところ柿の中間程度のものが得られる。もっとも、本発明は日光にあてたりする自然乾燥のみによる乾燥を否定するものではない。自然乾燥のみの場合は20〜25日程度が好ましい状態になるが、乾燥機による乾燥にくらべて時間がかかるので、その分だけ出荷が遅れる。従って、収穫期の初期では望ましくないが、終期では出荷時期の延長になるので好ましいことになるとも思われる。
【0016】尚、乾燥に先立って、切り実の剥皮が必要になる。剥皮は、切り実にする前或いは後のいずれでもよい。ただ、切り実を乾燥機内に吊るして乾燥する場合は、完全に剥皮すると吊るした箇所が切れることから、吊るす場合には一部皮を残しておき、その残した皮の内側の果肉部分に引掛け具を挿通して乾燥機内に吊るすようにすることが望ましい。そのため、剥皮は切り実にした後一つずつ行うか、或いは一条皮をのこした後剥皮し次いで切り実にする。乾燥機内に金網や簀の子などを置き、その上に並べて乾燥させる場合には、全体を剥皮すればよいので、剥皮したのち裁断するほうが能率的である。
【0017】乾燥の程度は、商品の日持ちや消費者の好みに応じて、あんぽ柿ところ柿の中間程度或いはそれよりも幾分乾燥させる。一般に、乾燥機内で乾燥を行う場合、あんぽ柿は水分(含水率)40〜45%程度、ころ柿の場合は30〜35%の場合品質の良いものが得られる。本発明の切り実干柿では、あんぽ柿よりも幾分乾燥させることが望ましいので、水分は約30〜40%程度とする。この程度に乾燥するには、30〜40℃の乾燥機内に3〜4日間置けばよい。この乾燥時間は、乾燥状態やその時の気象条件を見て、調節するとよい。更に、1〜2日程度の自然乾燥(日光や風に当てる)を追加すこともある。自然乾燥のみによる場合も乾燥時間をころ柿の場合よりも短くして、水分が約30〜40%程度になるようにする。
【0018】次いで、得られた乾燥切り実を、プラスチックフイルムで密封する。使用するフイルムは特に限定はないが、ガス透過性、特に炭酸ガスや酸素及び水蒸気透過率の少ないものが好ましい。塩化ビニルや塩化ビニリデン系のものは安価でしかも優れたガスバリヤ−性を示すが、環境上使用が制限されつつある。これに代わるものとして、ポリエチレンとポリアミドの複合体、ポリエチレンとポリビニルアルコールの複合体、などが好ましく用いられる。また、高密度ポリエチレンは厚みを大きくすれば、それなりに使用できる。更に、品質保持のために、脱酸素剤を封入しておいてもよい。この状態で出荷するが、乾燥程度の少ないもので1ケ月以上、よく乾燥したもので3ケ月以上は保存が可能である。
【0019】
【実施例】(実施例 1)以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。まず、図1に示すように、島根県産の西条柿1を、厚さ2cm程度に輪切りし、へたの部分2aを除いて3個の切り実2を得る。各切り実2は、約1〜2cm程度の幅で皮21を残して剥皮する。符号22は種子を除いた空隙、符号23は種子が消滅した部分である。図では切り実の1個の正面と2個の側面、及びへたの部分の正面を示す。
【0020】次に、図2に示すように、この皮21の下の部分に、引掛け具3の先端33、33を挿入する。引掛け具3は、例えば図3に示すよう基部31と押圧部32及び先端部33からなり、同図(a)のように押圧部32を押して2つの先端部33を拡げ、その間に切り実2を入れ、続いて同図(b)のように押圧部32を離して先端部33を狭めて切り実に挿入する。
【0021】このように、引掛け具3を取り付けた切り実2を多数準備し、図4に示す吊るし枠4の金具41に引っ掛ける。乾燥機内には、このような吊るし枠4を多数収納する。図5に示す乾燥機5は、簡易型のもので、木製支柱枠体51に多数の桟52を取り付け、この桟52に前記吊るし枠4を多数引っかけて並べる。木製支柱枠体51の外周は内部が見えるように、ビニールシート53で覆う。そして、下から電熱ファン54により温風を送り込む。符号55は排気口である。
【0022】このタイプの乾燥機5は、加温(加熱)空気が下から上に流れるので、柿の切り実は縦状態に吊支したほうが良く乾燥する。横方向に多段に並べた網棚等に柿の切り実を並べて乾燥するには、図示は省略するが、一方の横方向から加温(加熱)空気を送り込み、他方の横方向へ排気するタイプの乾燥機が好ましく用いられる。
【0023】図6は、図5に示す乾燥機5を用いて得られた切り実状干柿6である。これは、吊るした箇所が伸びて全体が丁度無花果を縦割りにした形状をしている。そして、切り実2の種子を除いた空隙22や種子が消滅した部分23が赤味を帯びた星型61となり、他が橙色を帯びた黄色に発色し、非常に美観の優れたものが得られた。
【0024】この切り実状干柿6は、食べた直後はあまり渋味は感じられないが、その後舌に渋味が感じられる。完全にタンニンが非水溶性になっていない証拠である。尚このことは、タンニンプリント法でも確認できた。尚、タンニンプリント法とは、濾紙を塩化第二鉄の30%溶液に浸漬して乾燥させた白色の試験紙(タンニンプリント)に、柿の切断面を載置しておくもので、柿に渋味が残っておれば試験紙に暗青色の跡が付くことで判断するものである。本発明の場合、被験体は切り実干柿であるので、切り実に水を含ませたのち実験を行った。
【0025】次に、図7に示すように、この切り実状干柿6を1個ずつ厚手(40〜50μm)のポリエチレンフイルム製の袋71に収納した包装切り実状干柿7を多数製造した。符号72は脱酸素剤(商品名:エイジレス、三菱ガス化学製)の小袋である。このままの状態で、3日目、5日目、10日目に5個ずつ開封して味を調べたところ、5日目以降は渋味が感じられなくなった。その後、30日経っても味に変化はなく、変色や腐敗は見られなかった。パックは、1個ずつ(個装)でもよいし、数個程度をまとめて包装してもよい。
【0026】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の干柿の製造方法は、渋柿の切り実を剥皮した状態で乾燥させ、次いで包装資材で密封するものである。
【0027】従って、以下のように優れた利点を有する。
(1)渋柿の傷や未熟な部分、或いは特に、軟化し易い先端部分を除去した残りの健全な部分のみを切り実にして使用できるので、従来捨てたり木にそのまま残しておいた不良品の有効利用が図られる。
(2)あんぽ柿の場合は、水分が多いためころ柿に比べて大きいものが多くしかも柔らかいので、一口では食べ辛いものであるが、本発明の切り実状干柿は子供でも一口で食べられる利点がある。
(3)前記に加えて、本発明の切り実状干柿は種子が除去してあるので、非常に食べやすい利点を有する。また、特に輪切りの場合には乾燥物が非常に綺麗な形をしており、購買者の食指を誘うものである。
(4)不良品が利用でき、また乾燥する期間も短くて製造コストが低いため、あんぽ柿ところ柿の中間の軟らかさと従来の干柿と同様の甘さを有する干柿を、安価且つ大量に提供できるなど、多くの利点を有するものである。
【出願人】 【識別番号】300007349
【氏名又は名称】いずも農業協同組合
【出願日】 平成14年4月2日(2002.4.2)
【代理人】 【識別番号】100080724
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 久喜
【公開番号】 特開2003−289794(P2003−289794A)
【公開日】 平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願番号】 特願2002−99680(P2002−99680)