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【発明の名称】 キノコの保存方法
【発明者】 【氏名】関谷 宏

【氏名】▲高▼橋 恭司

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】キノコを生煮え状態になるまでボイルし吸水させた後、送風乾燥により水分を除去し、密封袋にキノコを入れて袋口を真空密封した後、100℃以下で第1の殺菌工程を行い、常温で放置した後、100℃以下で第2の殺菌工程を行い、上記常温放置時間が、すべての芽胞菌が発芽し、しかも次世代の芽胞菌を形成する以前であることを特徴とするキノコの保存方法。
【請求項2】上記除去する水分は、ボイルによりキノコが吸収した水の量をWとすると、W±0.5Wであることを特徴とする請求項1記載のキノコの保存方法。
【請求項3】第1の殺菌工程と第2の殺菌工程との間に、常温で16ないし39時間放置することを特徴とする請求項1又は2記載のキノコの保存方法。
【請求項4】ボイル手段が、容器の底に水を入れて加熱し、水と直接接触しないようにキノコを配置する方法、加湿器で加熱する方法、加圧手段を装着したレトルト機を用いる方法或いは沸騰水中に短時間浸漬し、取出すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載するキノコの保存方法。
【請求項5】ボイルして生煮えになった状態が、水分吸収率が原料キノコの重量の15〜35重量%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載するキノコの保存方法。
【請求項6】水分を除去するに際し、乾燥機内に装入し、冷風ないし温風を送って乾燥するか、或いは扇風機による送風乾燥であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載するキノコの保存方法。
【請求項7】水分を除去する際に、送風する空気の温度が5〜35℃であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載するキノコの保存方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、水煮キノコの保存方法に関し、より詳しくは、レトルト滅菌方法を使用せず、生煮えの水煮キノコを滅菌密封包装して100℃以下で殺菌し、うま味と香りを増した主として業務用に使用されるキノコの保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近時、各種キノコの人工栽培が可能になったため、1年中一定量のキノコが生産される。一方、天然のキノコは秋のものであるため、消費量は秋から冬にかけて多く季節により大きく変動する。このため、消費量の少ない時期に生産されたキノコを消費量の多い時期まで保存する必要が生じた。その第1は乾燥する方法であり、乾燥キノコは味もこく、香りも強いが、戻すのに手間がかかると共に、価格も高い。第2に、冷凍する方法があるが、解凍後に変色することと、調理後の水っぽさのため好ましい方法ではない。第3に水煮状態でレトルト滅菌して保存する方法がある。これは褐変やいたみが早く、この変質を防止するために添加剤が不可欠である。添加剤により味が変わり、歯ごたえも悪くなり、生キノコに劣るものであるが、簡便さから多く使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】水煮キノコの味が低下する理由は、芽胞菌を滅菌するために125℃という高温を加える必要上、キノコ自体が変質するためである。更に、キノコの自己消化を防止し保存性を確保する必要上、クエン酸やアスコルビン酸等の保存料を添加しているためである。このような添加物を加えることなく、100℃以下の滅菌処理で芽胞菌のない完全殺菌された水煮キノコが求められていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決することを目的とし、その構成は、キノコを生煮え状態になるまでボイルして水分を原料キノコの15〜35重量%吸水させた後、5〜35℃で送風乾燥することにより水分を除去し、密封袋にキノコを入れて袋口を真空密封した後、100℃以下で第1の殺菌工程を行い、常温で放置した後、100℃以下で第2の殺菌工程を行い、上記常温放置時間が、すべての芽胞菌が発芽し、しかも次世代の芽胞菌を形成する以前であり、或いは16〜39時間であり、上記除去する水分は、吸収した水の量をWとすると、W±0.5Wであることを特徴とする。
【0005】すなわち、本発明者はキノコを生煮え状態にボイルし、ボイルの際に吸収した水分を再放出させると、キノコ自体に含まれる空気を放出し、子実体自体に何らかの変化が生じ、乾燥キノコのように味が向上し、香りも強くなる事実を見出した。更に、キノコは多くの細菌が付着し、平均で100gあたり300万個程度であるが、ボイル操作により一般生菌数も大幅に減少する。このキノコを袋に密封し、100℃以下で滅菌し、常温に放置する。放置時間はすべての芽胞菌が発芽するに充分であって、最初に発芽した芽胞菌が次世代の芽胞菌を形成する前であり、16〜39時間である。このように、本発明は3回の殺菌を繰返すが最初のボイル、送風乾燥工程を通過することによりキノコの味と香りが増し、しかも滅菌効果が増強される。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明に使用するキノコは通常市販されている栽培キノコであり、しいたけ、まいたけ、しめじ、えのき、エリンギ、マッシュルーム、きくらげ等を挙げることができる。本発明方法のフローシートを図1に示した。以下、図1にしたがって順次説明する。
【0007】先ず、原料キノコの前処理を行う。すなわち、石ずき及び付着している異物を除去し、洗浄する工程である。次いで、ボイルを行う。ボイルは古来行われてきた、釜の湯を沸騰させ、湯の上に簀の子等を敷いて茸を並べることを原理とする古典的方法がある。近時、スチーマーと呼ばれる加湿器が普及しているが、これを用いることもできる。更にレトルト滅菌機を100℃以下に温度設定してボイルすることもできる。これらは例示であり、水蒸気でキノコを加温加湿する方法は全て使用できる。更に、沸騰水中にキノコを短時間浸漬させて引き上げる方法も、本発明におけるボイルの範疇に属する。
【0008】ボイルはキノコが生煮え状態になるまで行う。ボイルが不足すると香味の放出が不十分であり、殺菌が充分に行われない。一方、ボイルが過剰であると最終製品の歯ごたえが劣化し、香味も不十分になる。生煮え状態をキノコの吸水率でみると、キノコの種類によっても多少異なるが、原料キノコの15〜35重量%、好ましくは20〜30重量%である。ボイル時間は、キノコの中心部の温度70〜95℃、ボイル時間9分〜16分であり、温度が高い程ボイル時間は短い。レトルト滅菌機を使用した場合には、圧力が加わるため他のボイル方法より2ないし3分程度ボイル時間が短い。
【0009】ボイル工程が終了したキノコは直ちに送風乾燥し、ボイル前のキノコの水分含有量に戻す。すなわち、吸収した水の量をWとすると、W±0.5W、好ましくはW±0.4Wの水を送風除去する。この送風乾燥工程を経ることにより、完全に殺菌した後もキノコ本来の歯ごたえ、香味が増強されている。
【0010】乾燥方法としては、キノコを広げて扇風機で送風する単純な方法もある。乾燥機内に装入し冷風又は温風を送る方法は温度管理が容易であって好ましい。温風を送ることも冷風を送ることも可能であるが、送風機内温度は5〜35℃、より好ましくは15〜30℃である。5℃未満では乾燥に時間を要し、35℃を越えると水煮キノコ製品にかすかなロースト臭が残り、より高温では着色する。実験によれば、送風機内温度が5〜10℃の場合には10時間、10〜20℃の場合には8時間、20〜25℃の場合には7時間、25〜30℃の場合には6時間、30〜35℃の場合には5時間であった。
【0011】本発明においてはボイル工程と乾燥工程が重要であり、ボイル工程で組織内に本来含まれている空気が放出し、キノコの組織が強化されるものと考えられる。すなわち、生煮えになるまでボイルし、ボイルの間に吸収した水分の重量と同量±10重量%、好ましくは同量±5重量%の水分を送風して乾燥させる工程である。この間にキノコの繊維が強化される。この後、2回にわたる通常の殺菌工程を経るにもかかわらず、生煮え状態にボイルして吸水した水分を放出させることにより、歯ごたえの低下がなく、長期保存する場合にも酸化防止剤等の添加物を加えなくとも、キノコの自己消化による変質や褐変がない。香りは増強される。
【0012】ボイル後、元の水分含有量になるまで乾燥した生煮えのキノコは香りが強くなっており、一般生菌数も100gあたり10000程度に減少している。このキノコを計量して耐熱性プラスチック袋に充填し袋口を密封する。この密封袋を100℃以下で第1の殺菌工程を行う。殺菌温度は75℃以上、好ましくは99℃で、70分〜180分である。殺菌時間を短くするためには100℃以下であって可及的高温が好ましい。殺菌方法には煮沸水や熱湯に浸漬する方法、レトルト滅菌機を用い温度を100℃以下に設定して殺菌することもできる。この段階でキノコは完全に水煮され、一般生菌数は平均して4500/100gに減少している。
【0013】第1の殺菌工程を終了した密封袋を常温下に放置する。放置時間は第1の殺菌工程で殺菌されずに残った芽胞菌の全てが発芽し、次世代の芽胞菌を形成しない時間である。すなわち、最初に発芽した芽胞菌が成長し新しい芽胞菌を形成する以前でなければならない。一般に、16〜39時間であるが、安全を期せば20〜30時間である。
【0014】芽胞菌が発芽した後、第2の殺菌工程を行う。第2の殺菌工程は第1の殺菌工程とほぼ同様である。第2の殺菌工程終了後、密封袋内の水煮キノコの一般生菌数は0になっている。本発明の水煮キノコを料理に使用すると、添加物による味の変化がなく、高温加熱による歯ごたえの低下もなく、香味は増強され、新鮮な生キノコよりすぐれた味覚である。この茸密封袋は6月貯蔵しても菌が増殖しないことは勿論、品質も変化しない。
【0015】
【実施例】実施例1石づきを取り、付着している異物を除去し、水洗して付着水を除去したシメジ2kgを蒸し器に入れ、90℃前後の熱湯で蒸した。9分後に生煮え状態になった。この時の総重量は2.24kgであり、水分吸収量は240gであった。ボイルしたシメジを直ちに乾燥機に装入した。乾燥機内の温度は26℃に設定し、送風乾燥した。6時間後に乾燥機から取出したが、この時の総重量は2.23kgであった。シメジの破片を取り、一般生菌数を測定したところ110個/gであった。
【0016】このシメジを約200gづつ耐熱性のプラスチック袋に充填し、空気を吸引しながら真空包装し、ボイル、送風乾燥後のシメジ入りプラスチック袋を10個製造した。10個の真空袋について第1の殺菌工程を行った。95℃の熱湯に80分浸漬した。この工程で芽胞菌以外は耐熱菌も死滅しているものと推測した。袋2個を取出し、それぞれの一般生菌数を測定したところ43個/gと45個/gであった。シメジは第1の殺菌工程で完全な水煮状態になり、歯ごたえも味も生シメジの水煮に勝るとも劣らない状態であった。
【0017】第1の殺菌工程後、8袋を直ちに常温下に24時間放置し、第2の殺菌工程を行った。第2の殺菌工程は第1の殺菌工程とほぼ同様の条件で行った。得られた滅菌シメジの一般生菌数を測定したが、全く検出できず、0であった。得られたシメジは歯ごたえもあり、味にコクがつき、香気が増強していた。この製品は6月冷蔵保管した後、開封して使用したが製造直後の製品に遜色がなかった。この製品は開封して料理の具材として使用できる他、そのままサラダや吸い物、トッピング用食材としても使用できる。このことは他のキノコについても同様である。
【0018】実施例1より、生煮え状態にボイルし、ボイルにより吸水した水分を送風乾燥する工程を通過することにより、2回の間欠的100℃以下の滅菌で無菌状態になることが判明した。又この前処理により、レトルト滅菌の際に使用しているクエン酸やアスコルビン酸等の添加物を加える必要がなくなり、以後の加熱殺菌工程を経てもキノコの歯ごたえや香気、味が向上していることが判明した。
【0019】
【比較例1】実施例1と同様にボイルし、乾燥工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして真空密封シメジを製造した。第2の殺菌工程後の一般生菌数は0であった。しかしながら、味は水っぽく、コシがなく歯ごたえも悪く、香りも減少していた。これを保存すると、7日ないし10日でキノコの形状が崩れ、子実体自身の自己消化が始まって、いたみが激しかった。
【0020】
【比較例2】石づきを取り、付着している異物を除去し、水洗して付着水を除去したシメジを耐熱性プラスチック袋に装入し真空密封した。この真空密封袋をボイル、送風乾燥工程を行わない以外は実施例1と同様にして、第1の殺菌工程、常温放置、第2の殺菌工程を行った。製品キノコは香味もよく歯ごたえもよかったが、キノコ繊維間に存在する空気が気泡となって残り、保存後、10日前後で気泡の周囲からキノコ子実体が自己消化を始め、糸を引くようにぬるぬるして保存不可能であった。一般生菌数は45個/gであった。第2の殺菌工程の後、実施例1の条件で常温放置、第3の殺菌工程を行ったところ一般生菌数は0であった。しかしながら、気泡の周囲から自己消化が始まり形状が崩れ、ぬるぬるして10日以上の保存が不可能であった。
【0021】
【発明の効果】本発明により、添加物を加えることなく、100℃以下で滅菌しながら、キノコの味、香気、歯ごたえを向上させて、キノコを水煮状態で保存することが可能になった。
【出願人】 【識別番号】502080232
【氏名又は名称】横浜佃煮製造株式会社
【識別番号】502239298
【氏名又は名称】▲高▼橋 恭司
【出願日】 平成14年3月5日(2002.3.5)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−250439(P2003−250439A)
【公開日】 平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願番号】 特願2002−59401(P2002−59401)