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【発明の名称】 麺類用乾燥卵及び麺類用乾燥卵を用いた麺類
【発明者】 【氏名】平松 肇
【住所又は居所】東京都府中市住吉町5丁目13番地の1キユーピー株式会社研究所内

【氏名】佐藤 稔秀
【住所又は居所】東京都府中市住吉町5丁目13番地の1キユーピー株式会社研究所内

【要約】 【課題】麺類に添加するとほぐれ性がよく、かつ表面が滑らかとなる麺類用乾燥卵及び麺類用乾燥卵を用いた麺類を提供する。

【解決手段】卵液をホスホリパーゼAで酵素処理し乾燥してなり、その分解率が10%以上である麺類用乾燥卵。そして、前記、麺類用乾燥卵が、麺類の粉体原料に対して0.1%以上、5.0%以下添加してある麺類。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 卵液をホスホリパーゼAで酵素処理し乾燥してなる麺類用乾燥卵。
【請求項2】 ホスホリパーゼAによる分解率が10%以上である請求項1記載の麺類用乾燥卵。
【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の麺類用乾燥卵が添加してある麺類。
【請求項4】 麺類用乾燥卵が麺類の粉体原料に対して0.1%以上、5.0%以下添加してあることを特徴とする請求項3記載の麺類。
【発明の詳細な説明】【0001】本発明は、卵液をホスホリパーゼAで酵素処理し乾燥してなる麺類用乾燥卵及び前記麺類用乾燥卵を用いた麺類に関する。
【0002】
【従来の技術】麺類を製造するにあたって、麺線同士(餃子であれば皮同士)が付着してしまうと、製造工程中では取り扱い難く作業効率が落ちる。また、流通過程では商品として並んだときの見栄えが悪くなり商品価値が損なわれてしまうことがある。特に近年、予め茹で上げてあり、麺汁をかける、流水で洗う、お湯をかける、あるいは、電子レンジ等で温めるだけで食することのできる、いわゆる調理麺が好まれつつあるが、このような調理麺は、茹で上げられ、α化した状態で長時間、流通・保管されることが多いため、麺同士の付着が非常に起こりやすく、麺の表面の滑らかさもなくなり食するときに食べ難く商品価値が損なわれることが多くある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、麺類のほぐれ性が良好であり、麺類(麺線一本一本、餃子の皮一枚一枚)の表面が滑らかになる麺類用乾燥卵及び前記麺類用乾燥卵を用いた麺類を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)卵液をホスホリパーゼAで酵素処理し乾燥してなる麺類用乾燥卵、(2)ホスホリパーゼAによる分解率が10%以上である(1)記載の麺類用乾燥卵、(3)(1)又は(2)記載の麺類用乾燥卵が添加してある麺類、(4)麺類用乾燥卵が麺類の粉体原料に対して0.1%以上、5.0%以下添加してあることを特徴とする(3)記載の麺類、を提供することである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明を説明する。なお、本発明において質量%を意味する。本発明の麺類とは、小麦粉、そば粉等の穀類を主体として、水分とともに練り上げ、引き伸ばしたり切り出したりして、麺状又は皮状に仕上げたものである。具体的には、例えば、中華麺、パスタ、うどん、そば、餃子の皮、ワンタンの皮等が含まれるものである。これらの中でも特に、中華麺は、卵風味や卵色が好まれることが多いので、本発明の麺類用乾燥卵の使用に適している。また、本発明の麺類は、生麺、乾麺、冷凍麺あるいは、茹で上げたり蒸し上げたものでもよい。
【0006】本発明で用いる卵液とは、卵黄を含む液卵である。例えば、卵黄液、全卵液、あるいは、卵黄液や全卵液と、卵白液を適宜の比率で混合したものを用いることができる。また、卵液は、必要に応じて、殺菌液卵、冷凍卵、乾燥卵を水戻ししたもの、あるいは、糖類や塩類を添加したもの等を用いることができる。
【0007】本発明で用いるホスホリパーゼAとは、リン脂質を加水分解する酵素で、リン脂質の1位又は2位のエステル結合を加水分解するホスホリパーゼA、ホスホリパーゼA等である。ホスホリパーゼAを用いた酵素処理は、卵液にホスホリパーゼAを作用させて、卵液に含まれるリン脂質を加水分解し、リン脂質をリゾリン脂質に分解するものである。この酵素処理により生じるリゾリン脂質は、リポ蛋白質中でリゾリン脂質に分解された、いわゆるリゾホスホリポ蛋白の状態で存在しており、リゾホスホリポ蛋白からエタノール等の溶剤で抽出されたリゾリン脂質とはその存在状態が異なる。
【0008】本発明のホスホリパーゼAによる分解率とは、酵素処理後におけるリン脂質とリゾリン脂質の合計質量に対する、リゾリン脂質の質量の割合をいう。分解率は、イヤトロスキャン法(TLC−FID法)で分析して、算出する。本発明の麺類用乾燥卵は、ホスホリパーゼAによりリン脂質がリゾリン脂質へ分解されていれば麺類のほぐれ性がよくなる。後で詳細に述べるが、分解率が大きいほど麺類のほぐれ性がよくなるので分解率としては、望ましくは10%以上、さらには30%以上であるとより望ましい。
【0009】酵素処理した卵液の乾燥は、常法に従い行なえばよく、スプレードライ、パンドライ、フリーズドライ等をあげることができる。乾燥卵は、水分10%程度以下となるように乾燥してあればよい。
【0010】本発明の麺類用乾燥卵は、麺類に添加してあれば、ほぐれ性がよくなるが、添加量が多いほど麺類のほぐれ性がよくなり、添加量が多すぎると麺類の食感が硬くなる傾向となるため、麺類の粉体原料に対して0.1%以上、5.0%以下添加してあると望ましく、さらには1.0%以上3.0%以下であるとより望ましい。ここでいう麺類の粉体原料とは、麺類の原材料中の水分10%程度以下の粉体であって、例えば、小麦粉、そば粉等の穀類、澱粉、乾燥卵白、粉末かんすい等である。
【0011】本発明の麺類用乾燥卵を添加した麺類が如何なる理由によりほぐれ性がよく、しかも麺線一本一本あるいは皮一枚一枚の表面が滑らかになるのか定かではない。麺類の生地は、グルテン分子が水和しながら絡み合い層状のグルテンシートを形成している。本発明のリゾホスホリポ蛋白からなる麺類用乾燥卵が、潤滑材として麺類中のグルテンシートの間に保持される構造となるために、ほぐれ性がよく、滑らかとなるのではないかと推察される。さらに、リポ蛋白質中のリン脂質部分がリゾリン脂質となっているため、リポ蛋白質の耐熱性が向上し、茹でた後もグルテンシートの構造を維持しつづけ、茹で上げられた調理麺においても麺表面からの澱粉の溶出を防ぐからではないかと推察される。
【0012】以下、本発明の代表的な製造方法を説明するが、特にこの方法に限定するものではない。まず、卵液を用意し、卵液のpHが中性付近でない場合には、水酸化ナトリウム溶液を加える等してpH7の中性付近に調整し、ホスホリパーゼA又はホスホリパーゼAを添加して酵素処理を行なう。添加量は酵素処理の条件によっても異なるが、通常、卵液1kgに対して300〜30000ユニット程度である。また、この酵素処理の条件は、卵液の量あるいは種類によって多少変動するが、45℃〜55℃で1時間〜10時間程度反応させればよい。また、必要に応じて、酵素処理した卵液は、0.5〜5.0倍量程度の清水を加えて、70℃〜90℃程度加熱する等により、酵素失活を行なってもよい。次に、酵素処理を終えた卵液は、乾燥し、本発明の麺類用乾燥卵となる。このときの乾燥方法は、水分が10%以下程度となるように乾燥すればよく、スプレードライ、フリーズドライ等適宜常法によればよい。
【0013】得られた麺類用乾燥卵は麺類に添加して用いる。添加方法は、小麦粉等とともに均一に成るように粉体混合を行なう、あるいは、使用する清水に予め分散しておいて小麦粉等に添加、混合等を行なえばよく、特に制限はない。添加した後は、常法にしたがって、中華麺、パスタ、うどん、そば、餃子の皮、ワンタンの皮等を調製すればよい。
【0014】次に実施例と試験例に基づき、さらに詳細に説明する。
実施例1麺類用乾燥卵の調製生卵黄に10%の水酸化ナトリウム溶液を加えてpH7.0に調整したものに、ホスホリパーゼA(ノボ社製Lecitase 10L)を2000ユニット/卵黄1kg添加し、50℃で5時間酵素処理を行なった。酵素処理された生卵黄に4倍量の清水を加えて混合した後、80℃で90分間加熱して酵素失活を行い、スプレードライヤー(吸気温度130〜150℃、排気温度50〜75℃)で乾燥し、麺類用乾燥卵を調製した。このときの麺類用乾燥卵のホスホリパーゼAによる分解率は72%であった。
【0015】実施例2麺類用乾燥卵の調製液全卵を60℃まで加温して殺菌した後、50℃まで冷却したものに、ホスホリパーゼA(ノボ社製Lecitase 10L)を2500ユニット/全卵1kg添加し、50℃で5時間の酵素処理を行なった。酵素処理された液全卵をスプレードライヤー(吸気温度130〜150℃、排気温度50〜75℃)で乾燥し、麺類用乾燥卵を調製した。このときの麺類用乾燥卵のホスホリパーゼAによる分解率は80%であった。
【0016】実施例3実施例2で得られた麺類用乾燥卵を用いて中華麺を調製した。麺用ミキサー(尾久葉鉄工所社製VO−25)に準強力粉(日清製粉社製、(特)ナンバーワン)800g、澱粉(松谷化学工業製、松谷ゆり)200g、実施例2で得られた麺類用乾燥卵30gを投入し、75rpmで5分間撹拌した。そのまま撹拌を続けながら、予め清水380gに食塩10gとかんすい(オリエンタル酵母製、粉末かんすいH)10gを溶解しておいたものを少しずつ添加し、全量添加後、さらに12分間撹拌した。その後、製麺機(尾久葉鉄工所社製RC‐60BS)を用いて、常法通りに整型、複合、圧延、切り出し(切刃♯22角、麺の厚み1.2mm)を行い、中華麺を調製した。中華麺を沸とう水中で90秒茹で、直ちに氷水中で60秒冷却し、十分水を切った後、10℃で24時間保存した後、冷やし中華のスープをかけて麺をほぐして試食した。
【0017】麺類用乾燥卵を添加した中華麺は、麺線同士の付着がほとんどないので非常にほぐれやすく、麺の表面がなめらかな状態であり、つるりとして喉越しがよく、おいしい麺であった。
【0018】実施例4実施例1で得られた麺類用乾燥卵を用いてうどんを調製した。麺用ミキサー(尾久葉鉄工所社製VO−25)に中力粉(昭和産業社製、星空)800g、澱粉(松谷化学工業製、松谷ゆり)200g、乾燥卵白(キユーピー社製、乾燥卵白Mタイプ)5g、実施例1で得られた麺類用乾燥卵20gを投入し、75rpmで5分間撹拌した。そのまま撹拌を続けながら、予め清水380gに食塩10gを溶解しておいたものを少しずつ添加し、全量添加後、さらに12分間撹拌した。その後、製麺機(尾久葉鉄工所社製RC−60BS)を用いて、常法通りに整型、複合、圧延、切り出し(切刃♯10角、麺の厚み2.5mm)を行い、うどんを調製した。うどんを沸とう水中で6分間茹で、直ちに氷水中で2分間冷却し、十分水を切った後、10℃で24時間保存した後、めんつゆをかけて麺をほぐして試食した。
【0019】麺類用乾燥卵を添加したうどんは、麺線同士の付着がほとんどないので非常にほぐれやすく、麺の表面がなめらかな状態であり、弾力がありおいしいうどんであった。
【0020】試験例1実施例1で調製した麺類用乾燥卵を用いて、中華麺を調製した。麺用ミキサー(尾久葉鉄工所社製VO‐25)に準強力粉(日清製粉社製、(特)ナンバーワン)800g、澱粉(松谷化学工業社製、松谷ゆり)200g、乾燥卵白(キユーピー社製、乾燥卵白Mタイプ)10g、実施例1で得られた麺類用乾燥卵20gを投入し、75rpmで5分間撹拌した。そのまま撹拌を続けながら、予め清水380gに食塩10gとかんすい(オリエンタル酵母社製、粉末かんすいH)10gを溶解しておいたものを少しずつ添加し、全量添加後、さらに12分間撹拌した。その後、製麺機(尾久葉鉄工所社製RC‐60BS)を用いて、常法通りに整型、複合、圧延、切り出し(切刃♯22角、麺の厚み1.2mm)を行い、中華麺を調製した。また、比較のために、麺類用乾燥卵の代わりに、酵素処理していない乾燥卵黄を添加した中華麺と、実施例1で調製した麺類用乾燥卵からエタノールで抽出したリゾリン脂質を含有する卵黄油(以下「リゾレシチン」という)を添加した中華麺を調製した。リゾレシチンは、ペースト状であるので、予め清水に分散して添加した。なお、リゾレシチンは、実施例1で得られた麺類用乾燥卵100gにエタノール500mlを加え、充分攪拌した後、ろ紙(アドバンテック東洋社製 No.2)で吸引ろ過し、得られたろ液からロータリーエバポレーターでエタノールを除去して得たものである。
【0021】それぞれ調製した中華麺を100gずつ小分けにし、沸騰水中で90秒間茹でて湯切りした後、冷水で60秒間冷却した。十分水切りした後、4℃の冷蔵庫に2日間保管した。保管後の中華麺に冷やし中華のスープを加えて、試食試験を行なった。試験方法は、10名の訓練されたパネラーに試食してもらい、評価基準にもとづいて点数をつけてもらったものである。なお、表中の数値は10名のパネラーの平均値である。
【0022】
【表1】

【0023】表1より、本発明の麺類用乾燥卵を用いた麺は、乾燥卵黄を用いた麺またはリゾレシチンを用いた麺よりも、ほぐれ性、滑らかさともに良好であり、扱いやすくおいしいことが理解できる。なお、リゾレシチンを用いた麺よりも乾燥卵黄または本発明の麺類用乾燥卵を用いた麺のほうが、卵の風味が強くおいしいと感じた人が多く、卵風味の好まれる中華麺に適しているといえる。
【0024】試験例2生卵黄に10%の水酸化ナトリウム溶液を加えてpH7.0と調整したものに、ホスホリパーゼA(ノボ社製Lecitase L10)を添加量を変えてそれぞれ添加し、攪拌しながら、50℃で5時間反応させた。それぞれ酵素処理した生卵黄に4倍量の清水を加えて80℃で90分間加熱して酵素失活を行なった後、スプレードライヤー(吸気温度130〜150℃、排気温度50〜75℃)で乾燥し、分解率が5%、10%、30%、60%、100%である麺類用乾燥卵を得た。
【0025】得られた麺類用乾燥卵を用いて、試験例1と同様の方法にて中華麺を調製した。得られた中華麺はそれぞれ100gずつ小分けにし、沸騰水中で90秒間茹でて湯切りした後、冷水で60秒間冷却し、十分水切りした後、4℃の冷蔵庫に2日間保管した。保管後の中華麺に冷やし中華のスープをかけて、ほぐれ性について試食試験を行なった。試験方法は、10名の訓練されたパネラーに試食してもらい、評価基準にもとづいて点数をつけてもらったものである。なお、表中の数値は10名のパネラーの平均値である。
【0026】
【表2】

【0027】表2より、本発明の麺類用乾燥卵を用いた麺は、分解されていればほぐれ性がよく、滑らかになり、分解率が10%以上の麺類用乾燥卵を用いた麺は、よりほぐれ性がよく、麺線の表面がより滑らかになる。さらに、分解率が30%以上になると、ほぐれ性が特に良好になることが理解できる。
【0028】試験例3実施例1で調製した麺類用乾燥卵の添加量を表3のとおり変化させて、試験例1と同様に中華麺を調製した。得られた中華麺はそれぞれ100gずつ小分けにし、沸騰水中で90秒茹でて湯切りした後、冷水で60秒間冷却し、水切りした後、4℃の冷蔵庫に2日間保管した。保管後の中華麺に冷やし中華のスープを加えて、ほぐれ性について試食試験を行なった。試験方法は、10名の訓練されたパネラーに試食してもらい、評価基準にもとづいて点数をつけてもらったものである。なお、表中の数値は10名のパネラーの平均値である。
【0029】
【表3】

【0030】表3より、本発明の麺類用乾燥卵は、麺に添加してあれば、麺のほぐれ性、滑らかさ、食感のいずれもが改善されていることが理解できる。さらに、麺類用乾燥卵の添加量が0.1%以上であると麺のほぐれ性と滑らかさが特に良好となり、添加量が5.0%以上であると麺が固くなる傾向にあるため、添加量は、0.1%以上、5.0%以下であるとより望ましいことが理解できる。
【0031】
【発明の効果】本発明の麺類用乾燥卵は、麺類に添加するとほぐれ性が良好となり、かつ表面が滑らかとなる麺類を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
【住所又は居所】東京都渋谷区渋谷1丁目4番13号
【出願日】 平成14年2月26日(2002.2.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−250437(P2003−250437A)
【公開日】 平成15年9月9日(2003.9.9)
【出願番号】 特願2002−50409(P2002−50409)