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【発明の名称】 屠畜解体方法
【発明者】 【氏名】竹ノ内 敦
【住所又は居所】東京都江東区有明一丁目2番25号 東洋熱工業株式会社東京工場内

【氏名】菊地 礼一
【住所又は居所】千葉県千葉市中央区中央三丁目3番8号 東洋熱工業株式会社関東支店内

【氏名】大江 忠雄
【住所又は居所】東京都中央区京橋二丁目5番14号 ティー・ピー・ジー株式会社内

【要約】 【課題】背骨内の脊髄を切断あるいは露出させることなく背骨内で外部から完全に断絶された状態で処分する屠蓄解体方法を提供する。

【解決手段】頭部から検体を摘出してBSE検査を行なうとともに、脊髄を焼却処分するBSE検査を伴う屠畜解体方法において、牛体の背骨1に沿ってその両側を切断ライン6,8に沿って切断して牛体から分離し、この背骨1を内部の脊髄4とともに焼却処分する。これにより、周囲への脊髄の飛散及び周辺の食肉部分や作業員あるいは切断器具等への付着が防止され、牛海綿状脳症の危険部位である脊髄を完全に焼却処分することができ、牛海綿状脳症に対する安全性を高めることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】脊髄を背骨の中に残したまま牛体を解体し、この背骨を内部の脊髄とともに焼却処分または他の処分をすることを特徴とする屠畜解体方法。
【請求項2】前記背骨の両側を切断する前に、背骨の背面側の棘突起に沿って該棘突起とこれに結合する筋肉との間に背骨に達する隙間を形成することを特徴とする請求項1に記載の屠畜解体方法。
【請求項3】左右の取手を有する柄部と、前記取手と反対側の柄部の先端側に備わる左右一対の刃部とを備えた切込み器具を用いて前記棘突起の両側に隙間を形成することを特徴とする請求項2に記載の屠畜解体方法。
【請求項4】昇降可能な作業台上に、天井面側から前記切込み器具を作業台に合せて昇降動作可能に吊り下げるとともに、作業台の下降動作により該切込み器具が下降するように該切込み器具と作業台とが連動することを特徴とする請求項3に記載の屠畜解体方法。
【請求項5】解体された牛体に対し、解体部分ごとに管理データを書込んだバーコードを取付けることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の屠畜解体方法。
【請求項6】左右の取手を有する柄部と、前記取手と反対側の柄部の先端側に備わる左右一対の刃部とを備え、各刃部は、前記突起の側面に沿う第1の刃と、この第1の刃にほぼ垂直で前記第1の刃の先端部に設けた第2の刃と、背骨にそって推進ガイドをする第3の刃を有することを特徴とする請求項3または4に記載の屠畜解体方法を実施するための切込み器具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、屠畜解体方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば牛体を解体する場合、背骨内部の脊髄処理に関し、従来は、解体室内で下向きに吊下げられた牛体を、その背骨に沿って背骨とともに半分に切断し(背割り)、その背骨から脊髄を取り出して処理していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、背骨を縦に切断して背割りを行なう解体方法では、内部の脊髄も同時に切断され、これが飛散して周辺の食肉部分や作業員に付着するおそれがある。また、切断用のバンドソーや電動丸鋸等に脊髄が付着し、これが洗浄しきれずに残って次の牛体の解体時に再付着し交差汚染の原因となる場合がある。
【0004】これらに対処して、背割りを行なう前に、内部の脊髄を負圧で吸引して除去する方法あるいは逆に高圧空気を吹き込んで脊髄を押し出して除去する方法等が実施あるいは提案されている。しかしながら、これらの方法を用いても、背骨から完全に脊髄を除去することはできず、背骨内に残ったわずかな脊髄が背骨の切断時(背割り時)に周囲に飛散したり再付着するおそれがある。
【0005】本発明は上記従来技術を考慮したものであって、背骨内の脊髄を切断あるいは露出させることなく背骨内で外部から完全に断絶された状態で処分するBSE検査を伴う屠畜解体方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明では、脊髄を背骨の中に残したまま牛体を解体し、この背骨を内部の脊髄とともに焼却処分または他の処分をすることを特徴とする屠畜解体方法を提供する。
【0007】この構成によれば、背骨を切断(背割り)することなく、したがって内部の脊髄を露出させることなく背骨を牛体から分離し、脊髄を背骨とともに焼却処分する。このため、周囲への脊髄の飛散及び周辺の食肉部分や作業員あるいは切断器具等への付着が防止され、牛海綿状脳症の危険部位である脊髄を完全に焼却処分することができ、牛海綿状脳症に対する安全性を高めることができる。
【0008】この場合、焼却処分に代えて別の方法で脊髄を背骨とともに外部環境を汚染することなく処分してもよい。また、脊髄を含み牛体の安全性が検査により完全に確保された場合には、焼却処分をすることなく背骨等を市場に供給するための処理を施すことも可能である。なお、背骨とは頚椎に連なる胸椎及び腰椎からなる椎骨をいう。これらの頚椎、胸椎及び腰椎は、それぞれその背面側に頚椎棘、胸椎棘及び腰椎棘と称される突起を有している。
【0009】好ましい構成例では、前記背骨の両側を切断する前に、背骨の背面側の棘突起に沿って該棘突起とこれに結合する筋肉との間に背骨に達する隙間を形成することを特徴としている。
【0010】この構成によれば、背骨の背面側の棘突起(頚椎棘、胸椎棘及び腰椎棘)とこれに結合されている筋肉繊維層との間に例えば切込みを入れて分離し、冷却し品質を維持する。またこれにより、背骨の背面側の突起両側に隙間が形成される。これにより、背骨両側の切断作業がしやすくなるとともに、食用となる筋肉部分の無駄な処分を極力抑えることができる。
【0011】好ましい構成例では、左右の取手を有する柄部と、前記取手と反対側の柄部の先端側に備わる左右一対の刃部とを備えた切込み器具を用いて前記棘突起の両側に隙間を形成することを特徴としている。
【0012】この構成によれば、作業員が切込み器具左右の取手を手で持って、その先端の一対の刃部により背骨の棘突起に沿ってその両側の筋肉部を削ぎながらに容易に切込みを形成してそこから隙間を形成することができる。
【0013】さらに好ましい構成例では、昇降可能な作業台上に、天井面側から前記切込み器具を作業台に合せて昇降動作可能に吊り下げるとともに、作業台の下降動作により該切込み器具が下降するように該切込み器具と作業台とを連結したことを特徴としている。
【0014】この構成によれば、作業台上に切込み器具が吊下げられてその重量が支持されるため作業員の負担が軽減するとともに、作業台の下降とともに切込み器具が引張られて下降するため、作業員は背骨に倣って切込み器具を押し当てるだけで容易に背骨の突起の両側に切込みを形成することができる。
【0015】別の好ましい構成例では、解体室内に搬入された牛体に対し、解体部分ごとに管理データを書込んだバーコードを取付けることを特徴としている。
【0016】この構成によれば、解体部分ごとにバーコードを取付け、そのバーコードにその牛の産地や入荷経路及び出荷先や日付等の各種データを書込んでおくため、検査により万一異常が発見された場合、異常部の追跡が容易にでき、また入荷経路データ等により異常発生の原因究明が迅速にできるとともに出荷データ等により回収が容易にできる。また、安全な牛体の出荷先に対する誤った情報や不用な混乱を避けることができる。
【0017】さらに好ましい構成例では、前記棘突起両側に隙間を形成するための切込み器具は、左右の取手を有する柄部と、前記取手と反対側の柄部の先端に備わる左右一対の刃部とを備え、各刃部は、前記棘突起の側面に沿う第1の刃と、この第1の刃にほぼ垂直で前記第1の刃の先端部に設けた第2の刃と、背骨にそって推進ガイドをする第3の刃を有することを特徴としている。
【0018】この構成により、第1の刃で棘突起左右の筋肉を削ぎ、第2の刃で棘突起根元部の背骨背面の筋肉を削ぎ、第3の刃のガイドによって棘突起根元部の凹みに沿って推進することによって容易に効率よく背骨の突起部分の筋肉を骨から分離させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1(A)(B)は、本発明に係る牛体の解体方法の手順を示す牛体の断面図である。
【0020】背骨(椎骨)1の左右に肋骨2が結合し、その外側に脂肪を含む筋肉部3が結合する。背骨1内には脊髄4が収まっている。背骨1の背面側に棘突起5が形成されている。棘突起5の根元部には凹み5aが形成されている。(A)に示すように、まず背骨1の一方の側の肋骨2をこの背骨1に沿って切断する。この切断作業は、例えば後述のように作業台上の作業員が天井側から吊下げられた牛体をその背中側から切断ライン6に沿って電動帯鋸(バンドソー)で上から下に背骨に沿って縦に切断して行なう。なお、バンドソーは一例であって他の切断器具で切断してもよい。
【0021】次に(B)に示すように、背骨1の反対側を切断ライン8に沿って切断する。この切断作業は、上記(A)で片側の肋骨2が除去された牛体を吊下げた状態で反転させ、腹側から電動丸鋸等により切断して行なう。なお、電動丸鋸は一例であって他の切断器具で切断してもよい。これにより牛体が縦に3分割される。
【0022】この背骨1の両側を切断する前に、突起5の両側に隙間7を形成しておく。この隙間7は、後述のように、棘突起5とその両側の筋肉部3との間に切込みを形成して設ける。このような隙間7を形成することにより、背骨1の両側の切断作業がしやすくなるとともに、冷却効果をあげ、品質を維持する。また、食用となる筋肉部3が無駄に切除廃棄処分されることを極力抑えることができる。
【0023】左右両側の肋骨2が切断除去された背骨1は、内部の脊髄4を露出させることなく、焼却処分される。頭部もまた焼却処分される。
【0024】図2は、本発明の牛体の縦割り3分割による背骨除去作業を行なう解体処理部の構成例を示す平面図である。
【0025】この解体処理部9は、例えば所定温度に冷却された冷蔵庫(冷却室)内の床面を適当な高さの縁板10で囲ってこの冷蔵庫内に区画形成する。縁板10の高さは、処理した肉片や体液等が周囲に流れ出ない程度の高さとする。天井側にレール11が配設される。このレール11に吊下げられて、この冷蔵庫(冷却室)内の別の区画から牛体(不図示)が矢印Aのように解体処理部9に移送される。解体処理部9には昇降作業台12が備わり作業員(不図示)が天井から吊下げられたバンドソー13で前述の肋骨切断作業を行なう。昇降作業台12にはバンドソー13や電動丸鋸(不図示)等の切断器具の消毒槽14が備わる。昇降作業台12に対向する位置に切断片等の飛散を防止するための飛散防止板15が設けられる。この飛散防止板15に必要に応じバックサポータ16が設けられる。このバックサポータ16は、前述の背骨両側の切断時(特に腹側から電動丸鋸等で切断するとき)及び後述の隙間カット工程で本発明に係る切込み器具を牛体に押付けながら切断作業を行なうときに牛体を受けてバックアップするものである。解体処理部9を出たレール11は、分岐してその一方は焼却処理部へ向い(矢印B)、他方はこの解体処理部9が配設されている冷蔵庫(冷却室)とは別の冷蔵庫に向う(矢印C)。
【0026】図3は、前記処理室の昇降作業台部分のX−X方向の立面図ある。牛体17は、頭部を下にして下肢及び尾部の3ヵ所ををトロリーフック18でレール11から吊下げられて移送される。バンドソー13は天井側からワイヤ19で吊下げられ、その重量が支持される。前述のように3分割された牛体17の背骨は、吊下げられた状態で尾部及び頭部とともにレール11に沿って図2の矢印Bのように焼却処理部に移送され焼却処分される。
【0027】図4及び図5は、本発明に係る背骨棘突起の隙間カット工程を示す昇降作業台部分の側面図及び平面図である。また、図6(A)(B)は、この隙間カット工程で用いる切込み器具の側面図及び平面図である。
【0028】昇降作業台12上の作業員が切込み器具20の左右の取手21を握って先端の一対の刃部22で牛体17(頭部は図示省略してある)の背骨1の棘突起5の両側に切込みを形成する。この切込み器具20はワイヤ19により天井側から吊下げられその重量が支持される。
【0029】切込み器具20はさらにチェーン23により昇降作業台12に連結される。このチェーン23により、昇降作業台12の下降に伴って切込み器具20が下に引張られるため、作業員は取手21に手を添えて牛体側に切込み器具20を押し付けるだけで切込み器具20の先端の刃部22が背骨1に倣って棘突起5の両側の筋肉を削ぐように下降する。これにより、突起5の両側に背骨1に達する切込みが背骨1に沿って縦に形成される。
【0030】切込み器具20は、図6に示すように、Y字を形成する左右の取手21を結合して柄部24を構成し、その先端側に左右一対の刃部22を設けたものである。先端の刃部22で切込みを形成する場合、最初にナイフ等で、棘突起の両側に刃部22が侵入する開口を形成しておく。刃部22を開口に押込んでから昇降作業台とともに下降させることにより棘突起両側に同時に切込みが形成される。このとき、牛体17は必要に応じてバックサポータ16によりバックアップされ、切込み形成作業が円滑に行なわれる。
【0031】図7は、切込み器具20の刃部22の形状例を示す。(A)は刃先部分の平面図、(B)は背面側から見た立面図である。図示したように、刃部22は、棘突起5の側面に沿う第1の刃25と、この第1の刃25の先端側に設けた第1の刃にほぼ垂直な第2の刃26と先端の第3の刃を有する。第1の刃25で棘突起5の側面の筋肉を削ぎ、第2の刃26で背骨1の背面側の筋肉を削ぎ、第3の刃27で背骨にそわせて推進させる。このとき、第3の刃27は棘突起5の根元部の凹み5a内に向けて押付けられ、凹み5a内の肉を切り開くとともにこの凹み5aに沿って刃部22を下方にガイドする。
【0032】図8は、本発明の屠畜解体方法の一例を示すフローチャートである。
ステップS1〜S5の、屠畜(ステップS1)→放血(ステップS2)→前足、角、耳切除(ステップS3)→各部結さつはく皮処理(ステップS4)→内臓摘出(ステップS5)までは従来と同様に行なう。この内臓摘出の後、本発明の手順では、回腸遠位部を除去して焼却処分する(ステップS6)。
【0033】続いて、前述の図4〜図7で説明した切込み器具20を用いて、背骨背面の突起両側の隙間カットが行なわれる(ステップS7)。その後整形作業が従来と同様に行われる(ステップS8)。その後、従来と同様に牛体検査が行なわれる(ステップS9)。
【0034】次にBSE検査が行われ(ステップS10)、このBSE検査の結果待ち時間(約5時間)の間、牛体17は、背骨背面に隙間カットが施された状態で所定の低温の冷蔵庫(冷却室)内で吊下げられた状態で待機する(ステップS11)。この場合、前述のステップS7で隙間カットを施した解体処理部9(図2)において、そのまま検査結果が分かるまで待機させてもよいし、あるいは別の場所に移送して待機させてもよい。この待ち時間の間に牛体は冷却され、品質が維持される。また、前述の図1に示したように、突起5の両側には隙間7が形成されている。
【0035】所定時間経過してBSEの検査結果がわかったら、陽性か陰性かを判別する(ステップS12)。陽性であればその牛体は全て焼却処分する(ステップS13)。陰性であれば、前述の図1(A)に示したように、背骨1の片側の肋骨を例えばバンドソー13(図3参照)で切断する(ステップS14)。これにより、牛体17が図3に示したように縦にまず2分割される。続いて、前述の図1(B)に示したように、背骨1の他方の側を例えば電動丸鋸で切断する(ステップS15)。これにより、牛体17が縦に3分割される。
【0036】次に、この3分割された牛体17の背骨〈椎骨)部分を内部に脊髄を入れたまま分離し(ステップS16)、これを頭部とともに焼却処分する(ステップS17)。これにより、BSEの危険部位である脳、眼球および脊髄が外部に触れることなく焼却処分される。なお、検査のために頭部を切断した場合には、切断後の頭部をカバー等で覆って背骨とともに焼却処理部に移送する。また、頭部を切断することなくBSE検査及びその他の病理検査を行う場合には、その検査ステップはステップS1〜S8のいずれかの前または後に行うことができる。
【0037】3分割された牛体の各分割体及びその後さらに食肉部等を分割された場合にはそれらの各分割体について、入荷及び出荷のルートや日付等のデータをバーコードに書込んで付着させておく。これにより必要時に追跡調査等が容易に迅速に行われる。
【0038】頭部及び背骨部分を除去された正常な牛体は、前述の図2の矢印Cで示したように、所定の低温の冷蔵庫に搬送されて冷却され(ステップS20)、その後出荷される。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、牛体の背骨に沿ってその両側を切断して牛体から分離し、この背骨を内部の脊髄とともに焼却処分するため、従来のように背骨を切断(背割り)することなく、したがって内部の脊髄を露出させることなく背骨が牛体から分離され、その内部の脊髄が背骨とともに焼却処分される。このため、脊髄が周囲へ飛散して周辺の食肉部分や作業員あるいは切断器具等へ付着することが防止され、背骨内の牛海綿状脳症の危険部位である脊髄を完全に焼却処分することができ、牛海綿状脳症に対する安全性を高めることができる。
【出願人】 【識別番号】000222956
【氏名又は名称】東洋熱工業株式会社
【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目5番12号
【識別番号】501462675
【氏名又は名称】ティー・ピー・ジー株式会社
【住所又は居所】東京都中央区京橋二丁目5番14号
【出願日】 平成13年11月29日(2001.11.29)
【代理人】 【識別番号】100100284
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 潤
【公開番号】 特開2003−164253(P2003−164253A)
【公開日】 平成15年6月10日(2003.6.10)
【出願番号】 特願2001−365115(P2001−365115)