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【発明の名称】 パン類及びその製造方法
【発明者】 【氏名】中島 嘉彦

【要約】 【課題】茶類の成分を含有し、食感や風味が良好なパン類及びその製造方法を提供する。

【解決手段】パン類の原料に茶抽出液を添加してパン生地を調製し、このパン生地を加熱処理することにより、パン類を製造する。前記茶抽出液は、茶材に酒類及び酸発酵乳を混和し、熟成して得られる熟成茶材から、水系溶媒によって抽出されたものであることが好ましい。この場合、前記茶材としては、緑茶類、中国茶類、紅茶類、麦茶から選ばれた1種又は2種以上が好ましく、前記酒類としては、日本酒、ワイン、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、紹興酒、焼酎から選ばれた1種又は2種以上が好ましく、前記酸発酵乳としては、ヨーグルト、酸乳飲料、又は乳酸菌飲料が好ましい。更に、パン類の原料として小麦全粒粉を用いることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 茶抽出液を含有するパン生地を用いて製造されたものであることを特徴とするパン類。
【請求項2】 前記茶抽出液が、茶材に酒類及び酸発酵乳を混和し、熟成して得られる熟成茶材から、水系溶媒によって抽出されたものである請求項1記載のパン類。
【請求項3】 前記茶材が、緑茶類、中国茶類、紅茶類、麦茶から選ばれた1種又は2種以上である請求項2記載のパン類。
【請求項4】 前記酒類が、日本酒、ワイン、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、紹興酒、焼酎から選ばれた1種又は2種以上である請求項2又は3記載のパン類。
【請求項5】 前記酸発酵乳が、ヨーグルト、酸乳飲料、又は乳酸菌飲料である請求項2〜4のいずれか1つに記載のパン類。
【請求項6】 小麦全粒粉を原料として得られた請求項1〜5のいずれか1つに記載のパン類。
【請求項7】 パン類の原料に茶抽出液を添加してパン生地を調製し、このパン生地を加熱処理することを特徴とするパン類の製造方法。
【請求項8】 前記茶抽出液が、茶材に酒類及び酸発酵乳を混和し、熟成して得られる熟成茶材から、水系溶媒によって抽出されたものである請求項7記載のパン類の製造方法。
【請求項9】 前記茶材が、緑茶類、中国茶類、紅茶類、麦茶から選ばれた1種又は2種以上である請求項8記載のパン類の製造方法。
【請求項10】 前記酒類が、日本酒、ワイン、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、紹興酒、焼酎から選ばれた1種又は2種以上である請求項8又は9記載のパン類の製造方法。
【請求項11】 前記酸発酵乳が、ヨーグルト、酸乳飲料、又は乳酸菌飲料である請求項8〜10のいずれか1つに記載のパン類の製造方法。
【請求項12】 前記原料が小麦全粒粉を含有するものである請求項7〜11のいずれか1つに記載のパン類の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食感や風味が良好なパン類及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、パンの食感や風味を改善するための様々な技術が提案されている。例えば、原料中に特定の澱粉、食物繊維、乳化剤などを添加して、焼き上がりのボリュームや食感を改善することが知られている。
【0003】また、近年の健康指向から、小麦粉として全粒粉を使用したものが市販されるようになってきた。小麦全粒粉は、胚芽等のビタミン、ミネラル、食物繊維に富む成分を含有するので、栄養効果が高く、整腸作用なども期待できる。
【0004】一方、緑茶類、中国茶類、紅茶類、麦茶等の茶類は、カテキン、豊富なビタミン類などを含有し、成人病の予防など、健康の維持、回復に効果があることが知られている。
【0005】このような茶類の健康維持、回復効果に着眼して、例えば特開2001−161271号には、生茶葉を洗浄、脱水したのち、特定の常圧高温加湿熱風で熱処理し、乾燥して得られる緑茶の微粉末をパン等の食品に添加することが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、パンの食感や風味を改善するための従来の技術は、それなりに効果を有するものではあったが、未だ十分に満足できるものとは言えなかった。
【0007】また、小麦全粒粉を配合したパンは、栄養効果は高まるものの、通常の小麦粉を原料としたパンに比べて、食感や風味が劣る傾向があった。
【0008】更に、特開2001−161271号に示されるように、茶類をパンに添加することも提案されているが、茶類の粉末をそのまま添加するものであるため、食感のざらつきが生じたり、外観が悪くなったりする虞れがあった。
【0009】したがって、本発明の目的は、茶類の成分を含有し、食感や風味が良好なパン類及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明によるパン類は、茶抽出液を含有するパン生地を用いて製造されたものであることを特徴とする。
【0011】また、本発明によるパン類の製造方法は、パン類の原料に茶抽出液を添加してパン生地を調製し、このパン生地を加熱処理することを特徴とする。
【0012】本発明によれば、茶抽出液を添加したパン生地を用いることにより、パンのボリューム感が増大し、食感、風味の良好なパンを得ることができる。
【0013】また、加熱処理を焼成によって行った場合には、パンのクラストがクリスピーでかつ香ばしいものとなる。
【0014】本発明においては、前記茶抽出液が、茶材に酒類及び酸発酵乳を混和し、熟成して得られる熟成茶材から、水系溶媒によって抽出されたものであることが好ましい。このような茶抽出液を用いることにより、食感、風味増強効果を高めることができる。
【0015】また、その場合、前記茶材が、緑茶類、中国茶類、紅茶類、麦茶から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。更に、前記酒類が、日本酒、ワイン、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、紹興酒、焼酎から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。更にまた、前記酸発酵乳が、ヨーグルト、酸乳飲料、又は乳酸菌飲料であることが好ましい。これらによって食感、風味増強効果がより高い茶抽出液を得ることができる。
【0016】更にまた、パンの原料として小麦全粒粉を用いることが好ましく、それによって栄養効果を高め、整腸作用も付与できると共に、茶抽出液の添加によって食感や風味も良好に保つことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明について、更に詳細に説明する。
【0018】本発明の対象とするパン類とは、小麦粉、ライ麦粉、米粉などの穀粉を主原料とする生地を、必要に応じて発酵させ、成形し、焼成、蒸煮等の手段によって加熱処理して得られるものであり、例えば、食パン、コッペパン、ロールパン、フランスパン等のパンの他、あんパン、ジャムパン、クリームパン等の菓子パン、カレーパン、ドーナツ等の揚げパン、更には中華饅頭等の蒸パン等を含むものである。
【0019】パン類の原料としては、小麦粉、ライ麦粉、米粉等の穀粉と、食塩と、水とを基本原料とするが、必要に応じて副原料として、砂糖、ブドウ糖、異性化糖等の糖類、バター、マーガリン、ラード、ショートニング等の油脂、全乳、全粉乳、加糖練乳、無糖練乳、ホエイなどの乳原料を添加してもよい。
【0020】なお、健康指向のパン製品を得るため、本発明においては、前記穀粉として胚芽等を含む全粒粉、特には小麦全粒粉を用いることが好ましい。
【0021】また、膨化手段として、イースト、イーストフード等の発酵原料や、膨脹剤等を添加してもよい。本発明の対象とするパンは、イーストにより発酵をさせたパンだけでなく、膨脹剤による膨脹パンであってもよい。
【0022】本発明においては、上記パン類の原料に水を添加して生地を調製する際に、茶抽出液を添加することを特徴とする。この茶抽出液としては、茶材に水系溶媒を添加して抽出した液が用いられる。
【0023】この場合、本発明では、茶材に酒類及び酸発酵乳を混和し、熟成して得られる熟成茶材から、水系溶媒によって抽出された抽出液を用いることが好ましい。以下、上記茶抽出液について更に詳しく説明する。
【0024】茶材としては、特に限定されないが、例えば、抹茶、玉露、煎茶、窯煎り茶、番茶、ほうじ茶などの緑茶類、ウーロン茶、鉄観音茶、プウアル茶、ホワシャン茶、ロンジン茶、パオチュン茶などの中国茶類、ダージリンティ、アッサムティなどの紅茶類、更には、麦茶、ハーブティ、ジャスミンティ等が挙げられる。また、これらの茶材を2種以上混合して使用することもでき、その場合は、上記した飲料用茶材のうち、玉露、煎茶、番茶、ウーロン茶、鉄観音茶、ダージリンティ、アッサムティ、麦茶等が特に好ましい。
【0025】また、酒類としては、日本酒、ワイン、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、紹興酒、焼酎等が挙げられる。
【0026】更に、本発明において、酸発酵乳とは、乳酸菌で発酵した半ゲル状ないし液状の乳製品である発酵乳のうち、乳酸発酵だけによるものを意味し、例えば、ヨーグルト、酸乳飲料、乳酸菌飲料等が挙げられる。これらのうち乳酸菌飲料には、乳製品乳酸飲料(厚生省令での成分規格により無脂乳固形分3.0〜8.0%)と非乳製品乳酸飲料(厚生省令での成分規格により無脂乳固形分3.0%以下)とがあり、この乳製品乳酸飲料には、更に生菌乳酸菌飲料と殺菌乳酸菌飲料とがある。生菌乳酸菌飲料としては、例えば「ヤクルト」(商品名、株式会社ヤクルト本社製)等が知られており、また、殺菌乳酸菌飲料としては、例えば「カルピス」(商品名、カルピス食品工業株式会社製)等が知られている。
【0027】本発明で使用する水系溶媒としては、熟成茶材から水溶性成分を抽出できる溶媒であれば特に限定されないが、例えば水、熱湯、含水アルコール、アルコール等が挙げられ、特に熱湯が好ましい。
【0028】本発明で使用する茶抽出液の好ましい製造法について説明すると、まず、茶材として上記したものから選ばれた1種又は二種以上を容器、好ましくはプラスチックやステンレス製の密封可能な容器にとる。これは、酒類中のアルコールが揮発して、アルコールによる熟成の効果が損なわれるのを防止するためである。
【0029】次に、酒類として上記したものから選ばれた1種又は二種以上と、更に、酸発酵乳として上記したものから選ばれた1種又は二種以上とを、茶材1に対する重量比で、酒類0.3〜2、好ましくは0.5〜1、酸発酵乳0.05〜0.5、好ましくは0.05〜0.2の割合で添加し、混和させて、茶材を膨潤させる。この場合、酒類、酸発酵乳は、含水物としての重量を意味する。なお、容器内において茶材が、酒類及び酸発酵乳の液状物で浸漬した状態にならず、茶材が湿る程度の状態であることが好ましい。
【0030】膨潤後、密封容器の蓋をして、例えば恒温庫に入れて、0〜100℃、好ましくは30〜70℃での一定温度下で、好ましくは4時間から7日間熟成させる。ただし、熟成温度が5℃付近だと、熟成時間が30〜40日間を要することもある。しかし、熟成時間が40日間を越えると熟成異臭を生じ、また、4時間より短いと、出来上がった熟成茶材の風味がバラバラでまとまりのないものになってしまうため好ましくない。
【0031】こうして熟成が終了した後、密封容器から取出すことにより、湿った状態の本発明の熟成茶材が得られる。この熟成茶材は、そのまま無菌包装して製品化したり、あるいは冷蔵又は冷凍保存することもでき、更には乾燥して通常の茶葉のように保存することもできる。
【0032】本発明の好ましい態様では、上記のようにして得られた熟成茶材に前記水系溶媒、好ましくは熱湯を加え、熟成茶材に含まれる水溶性成分を抽出する。こうして得られた抽出液を、必要に応じて濃縮又は希釈し、ペットボトル、缶、瓶等の容器に殺菌・充填して、パンの製造に用いる。この抽出液の濃度は、特に限定されないが、通常、ブリックス0.15〜2.4であることが好ましい。
【0033】なお、熟成茶材に熱湯を加えて抽出したお茶の飲料は、例えば「発酵茶」(商品名、長崎飲料株式会社製)として市販されており、本発明では、上記のような市販の飲料を用いることもできる。
【0034】本発明では、前述したパン類の原料に、上記のような方法で調製した茶抽出液を含む水を添加し、常法により混捏して、パン生地を調製する。この場合、パン生地中に、ブリックス0.15〜2.4に調製された上記茶抽出液が5〜40質量%となるように添加することが好ましい。
【0035】イーストを含有するパン生地の場合は、上記のようにして調製したパン生地を直捏法又は中種法によって発酵させ、分割、丸目、ねかし、整形、型詰、焙炉、焼成などの工程を経てパンを製造する。これらのパン製造工程は、常法に従って行えばよく、本発明において特に限定されるものではない。
【0036】また、膨脹剤を使用し、イーストを含有しないパン生地の場合は、適宜形状に成形し、焼成、油ちょう、蒸煮などの加熱処理を行うことにより、パン類を製造することができる。
【0037】こうして得られた本発明のパン類は、焼成したパンの場合には、パンのクラストがクリスピーで香ばしく、小麦等の全粒粉を用いたパンの場合には、全粒粉の臭みがマスキングされて風味が改善され、パンの老化がしにくいなどの優れた特性を有している。
【0038】また、前記熟成茶材に熱湯を加えて抽出した抽出液は、脂質代謝改善効果、血圧上昇抑制効果、腎機能改善効果を有することがわかっており(特願2001−345379号、特願2001−345380号、特願2001−345381号参照)、この抽出液を添加した本発明のパンにおいても、同様な生理活性効果がもたらされると考えられる。
【0039】
【実施例】実施例煎茶100g、ウーロン茶100g、麦茶100g、紅茶100g、ウィスキー150g、白ワイン50g、吟醸酒50g、カルピス(商品名、カルピス食品工業株式会社製)120gの混和物を、ステンレス製の密封容器に入れ、80℃の温度下で72時間熟成した後、煎茶を密封容器から取出し、この煎茶に85℃の熱湯50Lを加え、水溶性成分を抽出して水抽出液を得た。以下、この水抽出液を「発酵茶」とする。
【0040】上記発酵茶を用い、表1に示す原材料及び工程条件で、常法によりパンを製造した。なお、比較のため、発酵茶を全て純水で置き換えた他は、上記と同様にしてパンを製造した。以下の説明においては、上記発酵茶を使用したパンを「実施例品」とし、上記発酵茶を使用せず、全て純水で製造したパンを「比較例品」とする。
【0041】
【表1】

【0042】また、上記発酵茶を使用したパン生地の一般分析、ファリノグラフ、エクステンソグラフ、ビスコグラフの結果を表2に示す。同様に、上記発酵茶を使用せず、全て純水を使用したパン生地の一般分析、ファリノグラフ、エクステンソグラフ、ビスコグラフの結果を表3に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】表2、3の結果から、発酵茶を使用したパン生地においては、発酵茶を使用せず、全て純水を使用したパン生地に比べて、ファリノグラフ(Farinograph)における強力度が高く、エクステンソグラフ(Extensograph)における抗張力が高く、かつ、伸長度が低く、パン生地として、より適した特性を有していることがわかる。
【0046】こうして得られた実施例品及び比較例品のパンを経験豊富な10名のパネラーにより試食させて、食感、風味を評価させた。評価は、5…非常によい、4…よい、3…普通、2…悪い、1…非常に悪いとして、10名の平均点で表した。その結果を表4に示す。
【0047】
【表4】

【0048】表4の結果から、発酵茶を添加したパン生地を用いて製造した実施例品は、純粋のみを添加したパン生地を用いて製造した比較例品に比べて、食感及び風味のいずれにおいても優れていると評価された。
【0049】なお、各パネラーの総合した意見として、実施例品は、比較例品と比べて、パンのボリューム感があり、パンのクラストがクリスピーで香ばしく、小麦全粒粉の臭みが少なく、複雑でかつマイルドにバランスした味を有し、パンの老化もやや遅くなるということが指摘された。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、茶抽出液を添加したパン生地を用いることにより、パンのボリューム感が増大し、食感、風味の良好なパンを得ることができる。
【出願人】 【識別番号】500465488
【氏名又は名称】株式会社有明のり
【出願日】 平成14年4月3日(2002.4.3)
【代理人】 【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
【公開番号】 特開2003−289790(P2003−289790A)
【公開日】 平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願番号】 特願2002−101190(P2002−101190)