| 【発明の名称】 |
アブラナ科植物病害の防除剤および防除方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】高原 吉幸 【住所又は居所】埼玉県川越市今福中台2805番地 セントラル硝子株式会社化学研究所内
【氏名】長井 克将 【住所又は居所】埼玉県川越市今福中台2805番地 セントラル硝子株式会社化学研究所内
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| 【要約】 |
【課題】アブラナ科植物病害である根こぶ病に対して防除効果が高く、環境汚染のないアブラナ科病害の防除剤および防除方法を提供する。
【解決手段】アブラナ科植物根こぶ病に対して拮抗能を有するアシドボラックス属デラフィールデイを有効成分として含む防除剤を用いる。特に、新規の微生物であるCGF4241を有効成分として含む防除剤を用いる。本発明によって、環境汚染の問題もなく、アブラナ科植物根こぶ病の病害に対して発病を強く抑制することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アブラナ科植物病害に対して拮抗能を有するアシドボラックス属(Acidovorax)細菌を有効成分として含む防除剤。 【請求項2】 アブラナ科植物病害に対して拮抗能を有するアシドボラックス属(Acidovorax)細菌がアシドボラックス属デラフィールデイ(Acidovorax delafieldii)である請求項1記載の防除剤。 【請求項3】 アブラナ科植物病害に対して拮抗能を有するアシドボラックス属デラフィールデイ(Acidovorax delafieldii)細菌がCGF4241菌株である請求項2記載の防除剤。 【請求項4】 アブラナ科植物病害が根こぶ病であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の防除剤。 【請求項5】 請求項1乃至請求項4の何れかに記載の防除剤を用いることからなるアブラナ科植物病害の防除方法。 【請求項6】 CGF4241菌株(FERM P−18854)。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、学名アシドボラックス属デラフィールデイ(Acidovorax delafieldii)に属する細菌を用いたアブラナ科植物病害の防除剤および防除方法に関する。 【0002】 【従来の技術】アブラナ科植物病害の主要な土壌病害であるである根こぶ病は、ハクサイ、キャベツ、カリフラワーなどアブラナ科植物300種以上の植物に発生する土壌糸状菌病害である。根こぶ病は、これらアブラナ科作物の安定した生産に支障をきたしている。病徴としては、植付け後20日位から根にこぶが生成し、初期から感染した場合にはハクサイやキャベツでは結球せず、後半以降に感染した場合でも収穫物が大きくならず、全く収穫が得られないことも見られる。 【0003】現在これらの病害の防除には、土壌消毒剤としていくつかの化学薬剤が使用されている。しかし、これらの化学薬剤には、環境上の問題や使用者及び近隣住民への安全性の問題、さらに近年の消費者の減農薬・無農薬指向に合致しないという問題がある。更には、病原菌の菌密度が高い場合には、効果が劣ることも稀ではない。 【0004】そこで、この病害の防除には、防除効果が高く、水質汚染などの環境汚染及び安全性を満足する防除剤の開発が望まれている。 【0005】これまでにアブラナ科植物根こぶ病に対しての生物防除法は、糸状菌(日植病報62、p.281,1996)やバチルス属細菌(特開平11−335217)による防除例はあるもののアシドボラックス属細菌による報告例はない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、アブラナ科植物病害であるハクサイ根こぶ病、キャベツ根こぶ病等に対して防除効果が高く、環境汚染のないアブラナ科植物病害の防除剤および防除方法を提供することである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、アシドボラックス属デラフィールデイ(Acidovorax delafieldii)に属する微生物がアブラナ科植物の病害に対して高い防除効果を有する見いだした。また特に、この種に属する新規微生物CGF4241菌株を見いだし、本発明を完成するに至った。 【0008】すなわち本発明は、アブラナ科植物病害に対して拮抗能を有するアシドボラックス属(Acidovorax)細菌を有効成分として含む防除剤を提供する。また、アブラナ科植物病害に対して拮抗能を有するアシドボラックス属(Acidovorax)細菌がアシドボラックス属デラフィールデイ(Acidovorax delafieldii)である上記防除剤を提供する。また本発明は、アブラナ科植物病害に対して拮抗能を有するアシドボラックス属デラフィールデイ(Acidovorax delafieldii)細菌がCGF4241菌株である、上記防除剤を提供する。さらに本発明は、アブラナ科植物病害が根こぶ病であることを特徴とする、上記の防除剤を提供する。 【0009】さらに本発明はこれらの防除剤を用いることからなるアブラナ科植物病害の防除方法を提供する。さらに本発明は、新規の微生物であるCGF4241菌株(FERM P−18854)を提供する。 【0010】以下に本発明を詳細に説明する。 【0011】本発明の微生物は、アブラナ科植物根こぶ病害に対して高い防除効果を有するアシドボラックス属デラフィールデイ(Acidovorax delafieldii)であり、特にこの種に属するCGF4241菌株である。 【0012】アシドボラックス属デラフィールデイ(Acidovorax delafieldii)CGF4241菌株は、イネや野菜から分離・収集した約7000菌株の細菌から、糸状菌に対する抗菌活性、さらにポット栽培ハクサイによる病害防除検定試験による選抜の結果得られた菌株である。 【0013】アシドボラックス属デラフィールデイ(Acidovorax delafieldii)CGF4241は、光学顕微鏡および電子顕微鏡での形態観察の結果、細胞の大きさは、1〜3μmの桿菌であり、細胞の多形性はなく、いずれも運動性を有していた。グラム反応は、陰性で、内胞子は形成しなかった。 【0014】その他の細菌学的性質について、以下に示す。 1.培養的性質CGF4241の栄養寒天培地における生育状態を以下に示す。観察は、30℃、3日間培養後に行った。 【0015】CGF4241のコロニー形態は、クリーム色、円形、全縁滑らか、低凸状、光沢ありである。 2.一般的性質【0016】 【表1】
【0017】以上の細菌学的性質により、CGF4241は、運動性を有するグラム陰性の桿菌で、カタラーゼ活性陽性、オキシダーゼ活性陽性、内胞子を形成しないことにより、シュードモナスグループに属する細菌であり、資化性からアシドボラックス属デラフィールデイに属する細菌に分類された。 【0018】本発明の該当菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託され、以下の寄託番号を得ている。 【0019】Acidovorax delafieldii CGF4241:FERM P−18854次に、これらの菌の培養および防除剤としての製剤は、慣用の手法で行うことができるが、以下に例をもって説明する。ここで使用する培地は菌が増殖するものであれば特に限定するものではない。生育に可能な炭素源、窒素源、無機物を適当に含有している培地であれば、天然培地、合成培地のいずれも用いることができる。培地としては802培地、ブイヨン培地、キングB培地、PS培地、PDB培地などが例示できる。以上のような培地で15〜42℃好ましくは28℃〜35℃で10〜35時間培養し増殖させたのちに遠心分離機もしくは膜濃縮機により濃縮して集菌を行い培地成分を取り除く。この操作により菌体の濃度は通常1〜50×1010cfu/ml[cfu:colony forming unit]程度に濃縮される。ついで、湿菌体に糖類とグルタミン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム緩衝液からなる保護剤を加え、真空乾燥するものである。真空乾燥する前に保護剤と混合した菌体を予備凍結し、凍結したまま真空乾燥することが菌の生存率を維持するためには好ましい。なお、保護剤は水溶液の状態で菌体と混合してもよく、個体のまま混合してもよい。 【0020】本発明の菌体の固定化は、保護剤としてサッカロース、フルクトース、グルコースおよびソルビトールの一種または二種以上からなる糖類を用いることで行い、菌体と混合し、真空乾燥もしくは凍結真空などの方法で乾燥することによって行うことができる。 【0021】さらに、製剤の担体としては、タルク、カオリン、ケイソウ土、炭酸カルシウムなどが糖類と共にまたは単独で使用できる。 【0022】一般にハクサイの生産は育苗トレイに播種し、3〜5週間育苗した後に、畑に定植を行う。本発明の防除剤は、薬害の問題もなく使用できる。本発明の防除剤は、播種時の育苗培土に混合したり、定植前の苗をその希釈液に浸漬したり、もしくは、その両方の処理を組み合わせたりして使用する。 【0023】本発明の防除剤を上記方法で使用する場合、育苗培土への混合処理の場合は、土壌1L当りに1g以上混合し。均一になるように撹拌する。培土中の菌濃度は106cfu/ml以上、好ましくは107cfu/ml以上になるように調整する。 【0024】また、育苗された苗を定植前に本防除剤希釈液に浸漬処理する場合の希釈液の菌濃度は106cfu/ml以上、好ましくは107cfu/ml以上になるように調整する。 【0025】本発明の防除剤は、培養後の生菌をそのまま使用しても良いが、一般には農薬として使用可能な固体または液体の製剤として使用される。 【0026】ここで培養したアシドボラックス属デラフィールデイCGF4241は、しかるべき担体と混合し、粉剤もしくは粒剤とすることもできる。この場合の担体には、タルク、クレー、炭酸カルシウム、ケイソウ土等の鉱物性粉末や、ピートモス、さらには、ポリビニルアルコールなどの高分子化合物、ザンサンゴムやアルギン酸などの天然高分子化合物などがある。菌体の濃度は、液剤の場合は、106cfu/ml以上、好ましくは107cfu/ml以上とするのが好ましい。固体(水和剤、粉剤)の場合は、105cfu/g以上、好ましくは107cfu/g以上とする。 【0027】次に、アシドボラックス属デラフィールデイCGF4241の選抜について詳しく記載する。CGF4241は、イネや野菜から分離・収集した約7000菌株の細菌から、糸状菌であるトマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum)およびハクサイ黄化病菌(Verticillium daliae)に対する抗菌活性、さらにハクサイ苗を用いたポット検定試験による選抜の結果、アシドボラックス属デラフィールデイCGF4241菌株を選抜した。具体的には、圃場から採取した植物の根を水道水で洗浄した後、根を細かく裁断し滅菌水に入れ、ミキサーで潰した。その潰した液を、適当に希釈し、ブイヨン寒天培地に塗布し、培養を行った。そこで出現したコロニーを単離、保存し、供試菌株とした。 【0028】トマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum)およびハクサイ黄化病菌(Verticilliumdaliae)に対する抗菌活性の測定は、トマト萎凋病菌(Fusarium oxysporum)およびハクサイ黄化病菌(Verticillium daliae)と供試菌株をPDA培地(ポテトデキストロース培地)上で対峙培養を行うことにより測定した。培養は、25℃で1週間または3週間行った。 【0029】さらに、対峙培養で得られた抗菌活性を有する菌株について、ハクサイ根こぶ病に対して防除試験を行った。方法は、供試菌株の108cfu/ml希釈液にハクサイ苗の根を植付け時に24時間浸漬処理を行い、汚染土壌に植え付けた後、4〜5週間目に発病調査を行った。その結果、ハクサイ根こぶ病を抑制する菌株が得られた。 【0030】 【実施例】次に実施例を示すが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例に用いた培地の組成を次に示す。 ブイヨン培地:肉エキス 3g、ペプトン 10g、NaCl 15g、水1L、pH7.0PDA培地(ポテトデキストロース培地):ポテト滲出液200g、ブドウ糖20g、水1L、pH5.6) 〔実施例1〕 ハクサイ根こぶ病への防除試験ハクサイ黄化病菌(84013)及びハクサイ黄化病菌(MAFF-103056)とシュードモナス属ベトナミエンシスをPDA培地上で対峙培養を行い、供試菌によって産生される抗菌性物質によるハクサイ黄化病菌の生育阻止帯の有無を観察することにより測定した。培養は、25℃で3週間行った。 【0031】その結果を表2に示す。アシドボラックス属デラフィールデイCGF4241がPDA培地上で、トマト萎凋病菌、ハクサイ黄化病菌の生育を強く阻止をした。 【0032】 【表2】
【0033】〔実施例2〕 ハクサイ根こぶ病に対する防除試験アシドボラックス属デラフィールデイCGF4241株をブイヨン液体培地で24時間培養し、得られた菌体を遠心により分離し、供試菌の懸濁液を調整した。この懸濁液に、ハクサイ苗(品種:としこし)を浸漬し、懸濁液に浸漬したまま24時間置いた。その後、汚染土壌に植え付けた。汚染土壌は、ハクサイ根こぶ菌に罹病したハクサイ根(根こぶ付き)をホモジナイズし混和した畑土壌を使用した。35日間後に発病の有無を調査し、防除効果の判定を行った。その結果を表3に示す。 【0034】アシドボラックス属デラフィールデイCGF4241株の懸濁液の菌濃度は、1×108cfu/mlで行った。その結果、アシドボラックス属デラフィールデイCGF4241に高い防除効果が認められた。ハクサイ根こぶ病の検定は根部の根こぶの生成程度から発病度を算出し、評価した。 根部発病指数0;健全、1;根の10%以下に根こぶの付着を認める、2;根の10%から50%に根こぶの付着を認める、3;根の50%以上に根こぶの付着を認める。 発病度=100×{Σ(指数の値)×(各指数に該当する個体数)} ÷{3×(供試株数)}。 【0035】 【表3】
【0036】〔実施例3〕 キャベツ根こぶ病に対する防除試験アシドボラックス属デラフィールデイCGF4241株をブイヨン液体培地で24時間培養し、得られた菌体を遠心により分離し、供試菌の懸濁液を調整した。この懸濁液に、キャベツ苗(品種:湖水)を浸漬し、懸濁液に浸漬したまま24時間置いた。その後、ハクサイ根こぶ病の罹病根の破砕液を混和した汚染土壌を詰めた10.5cmのポリポットに移植した。約35日間後に発病の有無を調査し、防除効果の判定を行った。その結果を表4に示す。アシドボラックス属デラフィールデイCGF4241株の懸濁液の菌濃度は、108cfu/mlで行った。その結果、アシドボラックス属デラフィールデイCGF4241に高い防除効果が認められた。 【0037】 【表4】
【0038】 【発明の効果】本発明におけるアブラナ科植物根こぶ病の防除剤または防除方法を用いれば、アブラナ科植物根こぶ病の病害に対して発病を強く抑制することができ、現在使用されている化学薬剤と同等以上の効果を奏する。 【0039】また、本発明の防除剤の使用は既存の化学薬剤のように農薬による環境汚染を引き起こすことはない。さらに、本発明の防除剤は市場において安定な状態で流通させることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002200 【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社 【住所又は居所】山口県宇部市大字沖宇部5253番地
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| 【出願日】 |
平成14年5月31日(2002.5.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100108671 【弁理士】 【氏名又は名称】西 義之
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| 【公開番号】 |
特開2003−342109(P2003−342109A) |
| 【公開日】 |
平成15年12月3日(2003.12.3) |
| 【出願番号】 |
特願2002−158565(P2002−158565) |
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