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【発明の名称】 抗菌組成物、その製造方法及び該抗菌組成物を含有する抗菌剤
【発明者】 【氏名】ヒッシャム ラドワン イブラヒム

【氏名】東口 伸二

【氏名】アダハム モハメド アブドゥ

【氏名】金 武祚

【要約】 【課題】安全性が高く、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して高い抗菌活性を有し、加熱による抗菌活性の低下のない抗菌組成物及びそれを含有する抗菌剤を提供する。

【解決手段】抗菌組成物の有効成分としてリゾチームを加水分解して得られるペプチドを含有させる。前記ペプチドの平均アミノ酸鎖長は3〜20であることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 リゾチームを加水分解して得られるペプチドを有効成分として含有することを特徴とする抗菌組成物。
【請求項2】 前記ペプチドの平均アミノ酸鎖長が3〜20である、請求項1に記載の抗菌組成物。
【請求項3】 リゾチームを、酸濃度0.01〜0.1N、90〜140℃で15分間〜3時間加水分解を行うことを特徴とする抗菌組成物の製造方法。
【請求項4】 リゾチーム濃度が0.3質量%から20質量%である水溶液にタンパク質加水分解酵素を添加し、25〜45℃で1〜3時間加水分解を行うことを特徴とする抗菌組成物の製造方法。
【請求項5】 前記タンパク質加水分解酵素がプロテアーゼ活性またはカルボキシペプチダーゼ活性を持つ、パパイン、ペプシン、レニン、カルボキシペプチダーゼ、アスペルギルス属麹菌由来プロテアーゼのいずれか、またはその組み合わせであることを特徴とする請求項4に記載の抗菌組成物の製造方法。
【請求項6】 請求項1から5のいずれかに記載の抗菌組成物を有効成分として含有する抗菌剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リゾチームの抗菌活性よりも強い抗菌活性と広い抗菌スペクトルを有するリゾチーム加水分解物を有効成分として含有する抗菌組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】リゾチームは、ムラミダーゼ又はムコペプチドヒドロラーゼとも呼ばれ、細菌の細胞壁のペプチドグリカン層等に存在するN−アセチルムラミン酸とN−アセチルグルコサミン間のβ−1,4−ムラミド結合を加水分解する酵素活性を有する分子量約14,300〜14,600、等電点10.7のタンパク質である。
【0003】リゾチームは動植物界に広く分布しており、哺乳動物の涙、唾液、尿、乳、鳥類の卵中の卵白、魚類の体表粘液、微生物、バクテリオファージT4等に由来するリゾチームが知られている。中でも鶏卵卵白リゾチームは、鶏卵卵白乾燥質量の3%以上を占めるほど多量に含まれており、大量調製もが容易であることから、タンパク質研究の歴史を振り返っても古くから広く研究が行われている。
【0004】リゾチームは、例えば球菌(黄色ブドウ球菌等のスタフィロコッカス属、ミクロコッカス属、ストレプトコッカス属等)、胞子形成桿菌(バチルス属、クロストリジウム属等)、無芽胞桿菌(リステリア菌等)、乳酸菌(ラクトバチルス属等)、コリネフォーム細菌(コリネバクテリウム属、ノカルディア属等)、放線菌(ストレプトマイセス属等)等のグラム陽性菌に対して強い活性を示すことから、その抗菌活性を利用して医薬、化粧品、食品、飼料分野等において、抗炎症剤、防腐剤、保存料、鮮度保持剤、抗菌剤、殺菌剤等として利用されている。
【0005】グラム陽性菌は、その細胞壁が20〜80nmの厚いペプチドグリカン層から構成されているのでリゾチームに対する感受性が高く、リゾチームはその酵素活性により容易にペプチドグリカン層を加水分解して、溶菌させる作用を示す。
【0006】しかし、リゾチームは、例えば光合成細菌(ロドシュードモナス属等)、シュードモナス属細菌、腸内細菌群(大腸菌等のエシェリヒア属、サルモネラ属等)、化学無機栄養細菌(ニトロバクター属、チオバチルス属等)、メタン生成細菌、及び一部の球菌(ニセリア属等)等のグラム陰性菌に対してはほとんど抗菌活性を示さないことが知られている。また、カビや酵母等の真菌類の多くに対しても抗菌活性を示さないことが知られている。
【0007】グラム陰性菌は、細胞膜(内膜)の外側に2〜3nm程度の薄いペプチドグリカン層を有するものの、さらにその外側にリポ多糖を含む外膜があるため、エチレンジアミン四酢酸等を用いて外膜に損傷を与えない限りリゾチーム感受性にはならない。
【0008】上記のようにリゾチームは、グラム陽性菌に対しては強い抗菌活性を示すものの、グラム陰性菌や真菌類に対しては抗菌活性が低いため、その用途はグラム陽性菌の増殖抑制を目的とした食品の日持ち向上剤、化粧品の防腐剤、抗炎症医薬品等に限定されている。しかし、これらの用途においては、グラム陽性菌よりもむしろ人や動物の生活や健康により悪影響を及ぼす大腸菌、サルモネラ菌などのグラム陰性菌の増殖を抑制することの方がより重要であると言われている。
【0009】そのため、リゾチームの有する抗菌活性を、グラム陽性菌のみならずグラム陰性菌にも作用するようにリゾチームの抗菌スペクトルを拡大する試みがいくつか報告されている。例えば、メイラード反応を利用してデキストラン等の多糖類を結合させたリゾチームが、50℃の加熱処理でグラム陰性菌に対する抗菌活性を持つことが報告されている(Agric. Biol. Chem., 54, 3057-3059, 1990年)。また、パルミチン酸(J. Agric. FoodChem., 39, 2077-2082, 1991年)、ステアリン酸、ミリスチン酸(J. Agric. Food Chem., 41, 1164-1168,1993年)等の脂肪酸を結合させたリゾチームや、ペリルアルデヒド等の抗菌性化合物を結合させたリゾチーム(特開平7−236479号公報)、遺伝子操作技術によりリゾチームのC末端に疎水性ペプタイドを導入し得られたリゾチーム(Biosci.Biotech. Biochem., 56, 1361-1363, 1992年)等が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のリゾチームの誘導体は、(1)溶解性が著しく低下する、(2)加熱によって変性や凝集して抗菌活性を失いやすく、加熱殺菌処理と併用できない、(3)化学反応や遺伝子操作等煩雑な操作を必要とするため大量生産に向かない等の、多くの問題点を有していた。また、安全性の点についても充分検討されておらず、実際の使用には問題があった。
【0011】また、近年、合成保存料等は消費者から敬遠されがちであり、より安全な天然由来の抗菌剤が求められていた。
【0012】従って、本発明の目的は、安全性が高く、グラム陽性菌、グラム陰性菌および真菌類に対して高い抗菌活性を有し、加熱による抗菌活性の低下のない抗菌組成物及びそれを含有する抗菌剤を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、リゾチームの加水分解物がリゾチームとしての酵素活性を失っているにもかかわらず、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に対して、さらにカビや酵母等の真菌類にも強い抗菌活性を示すことを見出し、この事実に基いて本発明を完成するに至った。
【0014】即ち、本発明の一つは、リゾチームを加水分解して得られるペプチドを有効成分として含有することを特徴とする抗菌組成物である。
【0015】本発明の抗菌組成物は、リゾチームの加水分解物であるペプチドを有効成分として含有させることにより、加熱殺菌処理しても抗菌活性を失うことがなく、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方、及び真菌類に強い抗菌活性を示す抗菌組成物を提供できる。
【0016】上記抗菌組成物においては、前記ペプチドの平均アミノ酸鎖長が3〜20であることが好ましい。
【0017】また、本発明のもう一つは、リゾチームを、酸濃度0.01〜0.1N、90〜140℃で15分間〜3時間加水分解を行うことを特徴とする抗菌組成物の製造方法である。
【0018】また、本発明のもう一つは、リゾチーム濃度が0.3質量%から20質量%である水溶液にタンパク質加水分解酵素を添加し、25〜45℃で1〜3時間加水分解を行うことを特徴とする抗菌組成物の製造方法である。
【0019】上記製造方法においては、タンパク質加水分解酵素がプロテアーゼ活性またはカルボキシペプチダーゼ活性を持つ、パパイン、ペプシン、レニン、カルボキシペプチダーゼ、アスペルギルス属麹菌由来プロテアーゼのいずれか、またはその組み合わせであることが好ましい。
【0020】上記の製造方法によれば、過度の加水分解を防ぎ、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方と真菌類に強い抗菌活性を示すリゾチーム加水分解物を得ることができる。
【0021】また、本発明のもう一つは、上記抗菌組成物を含有することを特徴とする抗菌剤である。
【0022】本発明の抗菌剤は、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方そして真菌類に強い抗菌活性を示し、加熱殺菌処理との併用も可能であり、食品、医薬、化粧品、飼料分野などで広く安全に利用できる。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明におけるリゾチームとは、N−アセチルムラミン酸とN−アセチルグルコサミン間のβ−1,4−ムラミド結合を加水分解する酵素タンパク質を指す。
【0024】本発明の抗菌組成物の原料として用いられるリゾチームの起源は特に限定されないが、大量調製が容易な卵白リゾチームが好ましい。卵白リゾチームは、鳥類の卵に含まれる卵白由来であればよく、例えば、ニワトリ、ウズラ、アヒル、ガチョウ等の卵の卵白リゾチームが挙げられる。本発明においては、凍結卵白液や卵白粉末等として、容易に大量入手できる鶏卵の卵白リゾチームが特に好ましい。
【0025】本発明の抗菌組成物は、リゾチームを酸加水分解又は酵素分解することにより調製することができる。
【0026】例えば、酸加水分解する場合は、リゾチーム1〜80質量部を、1000質量部の水に溶解し、酸濃度0.1N以下、90〜140℃で15分間〜3時間加水分解することが好ましい。なお、過度の加水分解は抗菌性の低下や消失を招くことから、少なくとも100℃以上の加熱が3時間以下となるようにする必要がある。上記酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、クエン酸等を用いることができる。なお、リゾチームは、卵白から陽イオンクロマトグラフィー法又は界面移動電気泳動法、塩析法等で分離精製された卵白リゾチームを用いてもよく、リゾチームを含有する卵白をそのまま加水分解してもよい。
【0027】また、酵素分解する場合、水溶液中のリゾチーム濃度は0.3質量%から20質量%が好ましく、生産性を考慮すれば5質量%から15質量%がより好ましい。
【0028】使用するタンパク質加水分解酵素としては、プロテアーゼ活性またはカルボキシペプチダーゼ活性を持ち食品製造に使用可能な、パパイン(EC.3.4.22.2)、ペプシン(EC.3.4.23.1)、レニン(EC.3.4.23.15)、レニンを含むチーズ用途のレンネット、カルボキシペプチダーゼA(EC.3.4.17.1)、アスペルギルス属麹菌由来プロテアーゼ(商品名「オリエンターゼONS」阪急バイオインダストリー株式会社製や商品名「フレバザイム」ノボノルディスク社製等)などが挙げられる。これらのいずれか、またはその組み合わせで使用することができる。タンパク質加水分解酵素の濃度は、使用する酵素に応じて適宜変動するが、酵素とリゾチームの質量比が1対20から1対100が好ましい。酵素反応温度や反応時間は使用する酵素により若干異なるが、25〜45℃で1〜3時間加水分解を行うことが好ましい。反応時間は長すぎても短すぎても、できた加水分解物の抗菌活性に悪影響を及ぼす。
【0029】本発明においては、適切な制御を行えば酸加水分解法よりも酵素加水分解法の方が、得られる加水分解物の抗菌活性が高いことから、酵素加水分解することが好ましい。
【0030】上記のようにして得られたリゾチーム加水分解物の平均アミノ酸鎖長は3〜20であることが好ましい。更に、分子量分布は分子量5000以下であることが好ましい。平均アミノ酸鎖長が上記範囲外であると、抗菌性の低下や消失が起こったり、加熱による変性や凝集などが起こりやすくなる。
【0031】上記のリゾチーム加水分解物は、適宜脱塩してそのまま本発明の抗菌組成物として用いることができる。また、限外ろ過膜、ゲルろ過や各種カラムクロマトグラフィー、メンブレンフィルターなどで精製や分画して用いてもよい。
【0032】上記のリゾチーム加水分解物は、後述する実施例に示されるように、グラム陽性菌に対してリゾチームよりも抗菌活性が10倍以上に増強されており、さらにグラム陰性菌に対しても強い抗菌活性を示す。例えば、グラム陽性菌としてはスタフィロコッカス属菌、ストレプトコッカス属菌、バチルス属菌、リステリア菌等に対して、また、グラム陰性菌としては、大腸菌、プロテウス属菌、サルモネラ属菌、シュードモナス属菌等に対して、さらに真菌類としてはサッカロミセス属酵母やカンジダ属酵母、アスペルギルス属カビ、ペニシリウム属カビ等に対して顕著な抗菌活性が認められる。
【0033】このようにリゾチーム加水分解物がグラム陽性菌とグラム陰性菌の両方に対して優れた抗菌活性を示すメカニズムの詳細については明らかではないが、リゾチーム加水分解物に含まれるペプチドが、静電相互作用によって細菌の細胞膜に結合し、膜貫通型のポア(孔)を形成して細胞膜の破壊や細胞膜透過性を亢進させることにより、引き起こされるものであると推定される。
【0034】本発明の抗菌剤は、上記リゾチーム加水分解物を有効成分として含有するものである。抗菌剤の形態は特に制限はなく、用途に応じて溶液、粉末等を選択できる。粉末化の方法としては、熱風乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等、通常の公知の粉末化方法を採用できる。
【0035】本発明の抗菌剤は、リゾチーム加水分解物以外に、例えば、天然型リゾチーム、グリシン、アルコール類、キトサン、ポリリジン、プロタミン、有機酸類、中鎖脂肪酸、多価アルコールの脂肪酸エステル、植物性揮発油、合成抗菌剤、抗生物質など通常用いられる抗菌・殺菌成分を含むことができる。これらと併用することにより、抗菌、殺菌効果を増強することが可能である。
【0036】本発明の抗菌剤におけるリゾチーム加水分解物の配合量は、特に限定されるものではないが、リゾチーム加水分解物を0.01質量%以上含むことが好ましく、0.05質量%以上含むことがより好ましい。
【0037】本発明の抗菌剤は、食品、医薬、化粧品、飼料等に添加して抗菌、防腐等を目的として使用することができる。例えば、抗炎症や抗菌を目的とした医薬品、虫歯の原因菌の抑制を目的とした洗口液や歯磨き剤等の医薬部外品、フケの原因菌の抑制を目的としたシャンプーやリンス等の化粧品、腐敗防止や殺菌を目的とした生鮮野菜、鮮魚、蒲鉾、カスタードクリーム、漬物、ソーセージ、ハム、炊飯米、鶏卵加工品等の食品の日持ち向上剤、家畜や水産動物の疾病予防を目的とした飼料添加剤や動物医薬品等としての利用が可能である。
【0038】また、食品用の機械、器具、包丁、まな板などの調理器具の殺菌及び手指の消毒、室内殺菌などに使用することができる。
【0039】さらにエアコンや空調機用の抗菌フィルターに用いることもできる。
【0040】本発明の抗菌剤の使用量は、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜設定できるが、例えば医薬品や化粧品に配合する場合は、製品100g当たりリゾチーム加水分解物を0.2mg以上配合することが好ましく、1mg以上配合することが好ましい。また、飲食品などに配合する場合は、製品100g当たりリゾチーム加水分解物を0.1mg以上配合することが好ましく、0.5mg以上配合することが好ましい。
【0041】
【実施例】以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって特に限定されるものではない。
【0042】実施例1(塩酸加水分解)
鶏卵の卵白リゾチーム(イノバテック社製)1gを200mLの水に溶解し、濃塩酸(10N)1mLを加え、耐熱密閉容器に入れ、乾熱器内にて115℃に1時間保った。その後、氷水で速やかに冷却して、2N水酸化カリウム水溶液でpH6±1となるよう中和し、3000rpm、15分間の遠心分離にて不溶物を除去した。そして凍結乾燥で粉末化してリゾチーム加水分解物1.2gを得た。
【0043】このリゾチーム加水分解物(ペプチド)の平均アミノ酸鎖長を、TNBS(トリニトロベンゼンスルホン酸)を用いた遊離アミノ基の定量法により測定したところ、6.3であった。
【0044】実施例2(酵素加水分解)
pH3の塩酸水溶液1Lに鶏卵の卵白リゾチーム100gを徐々に溶解させる。溶解後、ペプシン(シグマアルドリッチ社製)2gを添加して、37℃にて100分間酵素反応を行った。その後、沸騰湯浴15分の加熱処理を行い、酵素を失活させ、ろ紙にて濾過し、凍結乾燥してリゾチーム加水分解物94gを得た。
【0045】このリゾチーム加水分解物の平均アミノ酸鎖長を実施例1と同様にして測定したところ、15であった。
【0046】また、実施例1、2で得られたリゾチーム加水分解物を高速液体クロマトグラフィーにて、以下の条件で分子量の分析を行った。
カラム:YMC-Pack Diol200(6.0×300mm)(商品名、ワイエムシイ社製)
溶出液:0.2Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.7)流速:0.7ml/分検出波長:215nmその結果、実施例1、2のリゾチーム加水分解物は、5,000〜100の間にピークが見られた。なお、卵白リゾチームの分子量を同様にして測定したところ、分子量14,000付近に一本のピークが見られた。
【0047】試験例(リゾチーム加水分解物の抗菌活性、酵素活性の測定)
実施例1、2で得られたリゾチーム加水分解物、及び鶏卵卵白リゾチームのグラム陰性菌に対する抗菌活性を以下のようにして測定した。グラム陰性菌としては大腸菌(Escherichia coli NBRC3301株)を用いた。
【0048】対数増殖期の大腸菌を遠心分離により集菌し、10細胞/mlとなるように10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に懸濁した。この大腸菌懸濁液に各実施例で得たリゾチーム加水分解物又は卵白リゾチームを最終濃度が400μg/mlとなるように添加して37℃で2時間静置した後、懸濁液を各段階に希釈した。各希釈液1mLをトリプトン−ソイ寒天培地に植菌し、37℃で24時間培養後、コロニー数を測定した。生菌数は1ml当たりのCFU(コロニー形成単位)で表した。それぞれの生菌数を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】表1から、実施例1、2で調製したリゾチーム加水分解物は、卵白リゾチームよりもグラム陰性菌である大腸菌に対してより高い抗菌活性を示すことが分かる。
【0051】実施例1、2により得られたリゾチーム加水分解物、及び卵白リゾチームのグラム陽性菌に対する抗菌活性を上記と同様にして測定した。グラム陽性菌としては黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC12732株)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis NBRC3134株)を用いた。その結果を表2に示す。
【0052】
【表2】

【0053】表2から、実施例1、2で調製したリゾチーム加水分解物は、グラム陽性菌に対して、卵白リゾチームと同等かそれ以上の抗菌活性を示すことが分かる。
【0054】実施例1、2により得られたリゾチーム加水分解物、及び卵白リゾチームの酵母に対する抗菌活性をトリプトン−ソイ寒天培地の代わりに麦芽寒天培地を用いて上記と同様にして測定した。酵母としてはサッカロミセス セレビシャ NBRC0210株を用いた。その結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】表3から、実施例1、2で調製したリゾチーム加水分解物は、酵母に対して、卵白リゾチームと同等かそれ以上の抗菌活性を示すことが分かる。
【0057】また、実施例1、2で得られたリゾチーム加水分解物、及び卵白リゾチームの酵素活性を以下のようにして測定した。なお、リゾチームの酵素活性はミクロコッカス・リゾデイクティカス(M.lysodeikticus)菌体に対する溶菌活性で比較した。
【0058】リゾチーム加水分解物又は卵白リゾチームを最終濃度が1μg/mlとなるように50mMのリン酸緩衝液(pH6.2)に懸濁した菌体液(初期濁度A600nm=0.75〜0.80)に添加し、25℃でその濁度変化を測定した。卵白リゾチームの濁度変化量を100%とした場合、実施例1、2で得られたリゾチーム加水分解物のそれは、いずれも1%以下であった。
【0059】以上の結果から、リゾチーム加水分解物は卵白リゾチームと比較して、抗菌活性が上昇していることが分かる。また、リゾチーム加水分解物は、その酵素活性が消失しているにもかかわらず、グラム陽性菌に対してリゾチームが本来有するのと同等以上の抗菌活性を示し、さらには、リゾチームには見られなかったグラム陰性菌に対する強い抗菌活性も有しており、その抗菌スペクトルが広くなっていることが分かる。
【0060】実施例3卵白リゾチーム5kgをpH3の塩酸水溶液100Lに徐々に溶解し、チーズ用レンネット200gを含む水溶液1Lを加え、30℃に保ちながら1時間撹拌し、反応させた。その後、80℃で30分間加熱殺菌し、圧搾ろ過機にて不溶物を除去した。そして、減圧濃縮機にて30Lまで濃縮後、スプレードライヤーで粉末化し、リゾチーム加水分解物4.2kgを得た。
【0061】実施例4鶏卵の凍結卵白液100kgに水200Lを加えホモミキサーで攪拌しながら溶解し、アスペルギルス属麹菌由来プロテアーゼ(商品名「フレバザイム」ノボノルディスク社製)200gを含む水溶液1Lを加え、30℃に保ちながら1時間撹拌し、反応させた。その後、80℃で30分間加熱殺菌し、圧搾ろ過機にて不溶物を除去した。そして、スプレードライヤーで粉末化し、卵白加水分解物8.9kgを得た。
【0062】実施例5(抗菌剤配合飲料の調製)
果糖ぶどう糖液糖15.0%、クエン酸0.2%、香料、着色料適量と、実施例3で得られたリゾチーム加水分解物を0.005%配合し、常法により飲料を調製した。また、比較例として、上記と同様の処方にて、卵白リゾチームを0.005%配合したもの、対照として、リゾチーム加水分解物を配合しないものも調製した。
【0063】各飲料を、瓶に詰めてオートクレーブ(121℃15分間)で加熱処理したところ、リゾチーム加水分解物を配合した飲料と対照飲料は白濁や沈澱はみられなかったのに対し、卵白リゾチームを配合した飲料は白濁し、沈澱が生じた。
【0064】また、リゾチーム加水分解物を配合した飲料及び対照飲料を用いてグラム陰性菌に対する抗菌活性を測定した。すなわち、リゾチーム加水分解物を配合した配合飲料又は対照飲料100mLに、上記試験例と同様に調製した大腸菌懸濁液(1×10CFU/mL)1mLを添加して37℃で3日間静置した後、各飲料を各段階に希釈し、その希釈液1mLをトリプトンーソイ寒天培地に植菌し、37℃で18時間培養後、それぞれの生菌数を比較した。その結果、対照飲料の生菌数は1×10CFU/mL以上まで増加したのに対し、リゾチーム加水分解物を配合した飲料の生菌数は1×10CFU/mL以下まで減少していた。
【0065】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、リゾチームの加水分解物であるペプチドを有効成分として含有させることにより、加熱殺菌処理しても抗菌活性を失うことがなく、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方と真菌類に強い抗菌活性を示す抗菌組成物を提供できる。そして、上記抗菌組成物を有効成分とする本発明の抗菌剤は、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方と真菌類に強い抗菌活性を示し、加熱殺菌処理との併用も可能であり、食品、医薬、化粧品、飼料分野などで広く安全に利用できる。
【出願人】 【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ研究所
【出願日】 平成15年2月27日(2003.2.27)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−321314(P2003−321314A)
【公開日】 平成15年11月11日(2003.11.11)
【出願番号】 特願2003−52081(P2003−52081)