| 【発明の名称】 |
ヨウ化アルキル燻蒸剤による木材の燻蒸方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】高橋 誠
【氏名】田口 信洋
【氏名】有田 彰
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| 【要約】 |
【課題】ヨウ化アルキル燻蒸剤による木材の燻蒸方法を提供する。
【解決手段】木材の燻蒸方法であって、該木材を湿潤させること、かつ燻蒸剤がヨウ化アルキル燻蒸剤であることを特徴とする。散水、降雨等によって木材を湿潤状態にでき簡便である。湿潤した木材はヨウ化アルキル燻蒸剤がその内部に浸透し易くなり、燻蒸効果が増強され、燻蒸時間を短縮することができる。特にヨウ化アルキルのなかでも、ヨウ化メチルが好ましい。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 木材の燻蒸方法であって、燻蒸剤がヨウ化アルキル燻蒸剤であることを特徴とする、木材の燻蒸方法。 【請求項2】 散水または貯水槽への浸漬によって該木材を湿潤させたことを特徴とする、請求項1記載の燻蒸方法。 【請求項3】 該木材が、水分量10〜50質量%であることを特徴とする請求項1または2記載の燻蒸方法。 【請求項4】 該燻蒸雰囲気におけるヨウ化アルキルの濃度が、0.05〜1.5mM/Lである請求項1〜3のいずれかに記載の燻蒸方法。 【請求項5】 前記ヨウ化アルキルが、炭素数1から4のアルキルモノヨードである請求項1〜4のいずれかに記載の燻蒸方法。 【請求項6】 前記ヨウ化アルキル燻蒸剤に加えて、さらに殺虫剤または殺菌剤を併用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の燻蒸方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ヨウ化アルキル燻蒸剤による木材の燻蒸方法に関し、より詳細には水で湿潤した木材をヨウ化アルキル燻蒸剤により燻蒸する、殺虫効果に優れる燻蒸方法に関する。 【0002】 【従来の技術】常温で殺虫剤の蒸気を揮散させ、それによって害虫を殺す製剤を燻蒸剤といい、密閉度の高い部屋や空間内のハエやカ、その他の害虫や殺菌などに用いられている。被燻蒸対象物には、防虫、防菌、防黴による長期保存を目的になされる文化財の他、更に、害虫や菌類、黴類の拡散を防止する等の目的で、穀類、生花、野菜類、木材などにも広範囲に燻蒸処理が行われている。 【0003】この中で、商取引の対象となる木材にはスギ,ヒノキ,アカマツ,クロマツ,カラマツ,ヒバ,ツガなどの針葉樹と、ケヤキ,カエデ,ナラ,サクラ,トチノキ,クリなどの広葉樹とがある。また、輸入材には、ラワン、ベイマツ、各種の唐木などがある。木材は、セルロース、リグニン、ペントサンが主成分で、比重に比べ圧縮強さ、引張強さ、曲げ強さが大きいという特質を有し、材軸と繊維の角度により物理的・機械的性質が影響され、これらの相違によって耐久性も変動する。この耐久性を確保するためには、防腐・防虫処理は必須事項である。輸入木材では、害虫や病原菌等の国内防御の観点からも、燻蒸処理は必須である。 【0004】従来から、燻蒸剤としては、被燻蒸対象物に薬害を及ぼさず、被燻蒸対象物に吸着されず、拡散浸透性に優れ、引火爆発性が少く、害虫の成虫、蛹、幼虫、卵への効果が強く、かつ人畜に対し低毒性であること等の要件を満たすものとして臭化メチル・エチレンオキシド合剤が特に広く使用されてきた。しかしながら、臭化メチルによるオゾン層破壊の問題に鑑み、その使用が制限されている。 【0005】一方、特開2000−212006号公報には、ヨウ化アルキルを含有する燻蒸剤で燻蒸する文化財の燻蒸方法が開示されている。該方法によれば、ヨウ化アルキル単独、またはこれにクロルピクリン、二硫化炭素、フッ化スルフリル、臭化メチル、青酸などの殺虫剤や、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、メタアクロレイン、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、アリルアルコール、ブチルアルコールおよび過酸化水素などの殺菌剤を併用して、文化財への汚染などを発生させずに、有効に防虫、妨菌効果が得られるとしている。該方法の対象は、文化財保護法第2条第1号に規定する有形文化財や第3号に規定する民俗文化財であり、特に文化財保護の観点から至適な燻蒸条件が規定されている。上記公報では、ヨウ化アルキルの一つであるヨウ化メチルを用いた燻蒸条件として、温度0〜40℃、投薬量0.05〜1.5mM/Lという燻蒸条件が採用されている。 【0006】また、特開平10−152408号公報には、メチルイソチオシアネートを液化高圧ガスに溶解してなる木材害虫殺虫用くん蒸剤が開示されている。常温で固体であり気温が低い場合はガス化しにくいMITC(融点:35〜36℃、沸点119℃)を炭酸ガスなどの液化高圧ガスに溶解させ、この溶解液を液化高圧ガスの圧力を利用し、高圧容器(ガスボンベ)から燻蒸被覆内に噴霧し、輸入木材等の燻蒸剤として使用するものである。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】一般に、被燻蒸対象物が小型の場合には、被燻蒸対象物の内部にも燻蒸雰囲気が容易に行き渡るが、大型の場合には被燻蒸対象物の内部に燻蒸雰囲気を導入することは容易でない。特開平10−152408号公報記載の方法では、炭酸ガスなどの液化高圧ガスに燻蒸薬剤を溶解させ、液化高圧ガスの圧力を利用して燻蒸被覆内に噴霧しているが、液化高圧ガスの使用は煩雑である。 【0008】また、一般に、被燻蒸対象物が小型の場合には燻蒸庫への搬入が容易であり、燻蒸庫の容積もこれに見合った程度の小型のものが使用できる。しかしながら、被燻蒸対象物が大型の場合には、燻蒸設備の大型化に伴い燻蒸スペースを有効に活用するためにも、燻蒸効率の向上、短期間での効率的な燻蒸方法が要求される。 【0009】一方、燻蒸期間を短くするために薬液量を増加する方法がある。しかしながら、ヨウ化アルキルの製造原料のヨウ素は貴重な地下資源であり、その採集地域も限定され、その供給量は全世界でも年間16,000トン程である。現に、ヨウ化メチルは化学合成時のメチル化試薬として僅かに市場に流通しているにすぎず、燻蒸剤として使用するには価格が高い。普及に関しては、製造量の問題と有効性を高めるための手段を検討し、いかに少量で効果を発揮できるかの技術の確立が不可欠である。特に、使用量を低減できれば燻蒸処理後の燻蒸成分の残存も少なく、燻蒸処理取扱者その他への薬剤の影響も少なく有利である。 【0010】また、燻蒸効果を増すために燻蒸温度を上昇させる方法がある。ヨウ化アルキルも高温処理ほど殺生物性が高いが、高温条件では燻蒸剤の有無にかかわらず被燻蒸対象物の破損や劣化などを招く虞がある。したがって、現状の燻蒸温度でも処理時間を短縮することができればコスト、濃度維持への労力低減等の経済性のみならず人や燻蒸物への安全性向上等でもその効用は計り知れない。 【0011】なお、我国に輸入される農林産物は植物防疫の観点から必ず検査され、必要に応じて燻蒸等により有害な動植物を駆除することが義務付けられ、日本国内に生息しない有害動植物の侵入繁殖の防止が図られている。未知の病害虫の殺菌、黴類の殺黴を目的とする場合には、より強力な燻蒸処理が必要であり、このような場合においても燻蒸剤の使用量を削減し、しかも短時間で大規模の処理ができることが好ましい。 【0012】 【課題を解決するための手段】一般的に伐採後、保管された原木や製材での含水率は通常10質量%未満であることが多い。しかしながら木材内部に侵入した害虫や樹皮下に生息する害虫駆除の為のヨウ化アルキルによる燻蒸では、含水率10質量%未満の木質内部への燻蒸ガス浸透性はあまり速やかではない。よって効果的な燻蒸を行うには、燻蒸時間を延長したり多量の投薬が必要となる。本発明者らは、木材への燻蒸剤浸透性について検討したところ、単に木材を湿潤させその後に燻蒸処理をするだけで、従来よりも燻蒸薬剤の木材への浸透を向上させることができることを見出し本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下の発明を提供するものである。 【0013】本発明は、木材の燻蒸方法であって、かつ燻蒸剤がヨウ化アルキル燻蒸剤であることを特徴とする、木材の燻蒸方法を提供するものである。従来との相違点は、木材を湿潤させるだけであるため操作が簡便であり、該湿潤した表層部を介して薬剤が被燻蒸対象物の内部に浸透するため、燻蒸効果を増強させることができる。 【0014】また本発明は、散水または貯水槽への浸漬によって該木材を湿潤させたことを特徴とする、上記燻蒸方法を提供するものである。湿潤方法として、散水などによれば、湿潤処理が簡便である。 【0015】また本発明は、該木材が、水分量10〜50質量%であることを特徴とする上記燻蒸方法を提供するものである。特に、木材の湿潤状態として、上記範囲の水分量を含有する場合に、燻蒸効果に優れる。 【0016】また本発明は、該燻蒸雰囲気におけるヨウ化アルキルの濃度が、0.05〜1.5mM/Lである上記燻蒸方法を提供するものである。従来の薬液量でも十分に木材への燻蒸剤の浸透性を向上させることができる。 【0017】また本発明は、前記ヨウ化アルキルが、炭素数1から4のアルキルモノヨードである上記燻蒸方法を提供するものである。この中でも、特にヨウ化メチルの効果が優れる。 【0018】また本発明は、前記ヨウ化アルキル燻蒸剤に加えて、さらに殺虫剤または殺菌剤を併用することを特徴とする上記燻蒸方法を提供するものである。併用によって、燻蒸効果を増強することができる。 【0019】 【発明の実施の形態】本発明は、木材の燻蒸方法であって、該木材が湿潤する表層部を有し、かつ燻蒸剤がヨウ化アルキル燻蒸剤であることを特徴とする木材の燻蒸方法である。ヨウ化アルキル自体は、アルキル化剤として使用されるほど反応性の高い化合物であるが、燻蒸条件によって有効かつ効果的に防黴、防虫効果を奏することが確認されている。さらに、ヨウ化アルキルを燻蒸剤として用いて殺生物性、環境への影響など詳細にわたり調査したところ、木材を燻蒸する場合には、その表面を水で濡らしてからヨウ化アルキルで燻蒸処理を行うと、被燻蒸対象物の変色や変質などを及ぼさず、従来よりも短期間で防虫・防黴作用を奏することが判明した。防虫・防黴効果を短時間で達成するには薬液量の増加が簡便であるが、本発明によればこのような薬液量の増加なしに単に木材を水で濡らし、湿潤状態にした後に燻蒸処理をするだけで燻蒸効果を増大できる。これにより貴重な資源であるヨウ素含有化合物の使用量を減少させつつ燻蒸処理ができる。なお、被燻蒸対象物が木材の場合には、その後の加工処理が予定されることが一般的であり、その表層部の損傷等はあまり問題とされず、大型の被燻蒸対象物の内部に生息する生物を、効果的に燻蒸できるか否かが優先される。この点からも、本発明によれば、木材への薬剤の浸透性を向上させて木材内部に生息する害虫の卵、幼虫、成虫の防虫、防菌、防カビ効果を増強できる。 【0020】本発明ではヨウ化アルキル燻蒸剤を使用する。ヨウ化アルキルとしては、炭素数1から4のアルキルモノヨード、例えばヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ノルマルプロピルが好ましい。これらは、木材を含む被燻蒸対象物に用いられる素材全般にわたって腐蝕等の作用が比較的少く、殺生物効果が確実であり、沸点以下でも揮発性が高く効果が確実な濃度で揮発し液化せず、優れた防虫性や抗菌性に優れる。特に好ましくはヨウ化メチルである。凝固点−66.45℃、沸点42.50℃で気化しやすく、燻蒸に適しているからである。ヨウ化アルキル燻蒸剤としては、ヨウ化アルキルをそのまま燻蒸剤としてもよく、一般にはヨウ化アルキルを5〜100質量%含有するもの、より好ましくは10〜90質量%、とくには15〜85質量%含有するものである。燻蒸雰囲気内のヨウ化アルキル濃度が後記する所定範囲内にあれば有効な燻蒸が達成できるため、ヨウ化アルキル燻蒸剤に含まれるヨウ化アルキルの濃度には特に制限はないが、ヨウ化アルキル燻蒸剤に含まれるヨウ化アルキル濃度が上記範囲内にあれば、一般の気化器によって簡便にヨウ化アルキルを気化できるため好ましい。 【0021】本発明の木材の燻蒸方法の特徴は、被燻蒸対象物である木材の表層部が湿潤していることである。木材の一部が湿潤している場合であっても有効であるが、好ましくは木材含水率が10〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%である。 【0022】本発明では木材が湿潤していればよく、例えば、肉眼による観察で木材表面に水が付着し、その木材の表面に触れると水が手に付くような状態が該当する。また、木材表面に水の付着は観察されないが、その木材の表面に触れると木材表面の水分が感じられる状態であってもよい。さらに、貯木用水などの水槽に数日間浸漬した木材を引き上げ大気下で放置した木材のように、木材表面には水が付着しておらず乾いた印象を受けるが、木材内部には未だ十分量の水分が保持されている状態などがある。 【0023】本発明では、木材を湿潤させる方法には制限がないが、木材に上部または側面から水を散水したり、貯木用水に木材を浸漬させたり、または天然水による散水として霧散、霧氷、降雨や降雪によるものであってもよい。燻蒸場所で木材を散水した場合には、その後にその場所で燻蒸処理ができる点で有利であり、貯水槽への浸漬によって該木材を湿潤させると、貯水槽からの引き上げ後にただちに燻蒸処理ができるため簡便である。 【0024】このような湿潤状態としては、木材の上記表層部の水分量が10〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%とする。10質量%を下回るとヨウ化アルキル燻蒸剤の木材内部への浸透が十分でない場合がある。一方、50質量%を超える水分量を保持させることは一般に困難であり、また該水分に燻蒸剤が吸収されて損失となる場合がある。 【0025】該木材が湿潤した場合にヨウ化アルキル燻蒸剤による効果が増強される理由については定かでないが、木材表層部に水分子が多く存在するため、該水分子の被燻蒸対象物への付着または移動に伴ってヨウ化アルキルが移動し被燻蒸対象物への浸透性が増加したためと考えられる。しかしながら詳細は不明である。なお、ヨウ化アルキルを燻蒸剤とした場合、被燻蒸対象物に水が付着している場合の燻蒸効果の増強作用については従来全く知られておらず、水分に関しては、被燻蒸対象物の保存性の観点で燻蒸雰囲気の相対湿度が考慮されるに過ぎなかった。すなわち、燻蒸の目的は、被燻蒸対象物の変質を防止し、長期保存を可能にするために行われ、一般には、被燻蒸対象物の保存状態に至適な条件が燻蒸雰囲気の条件として選択される。例えば、被燻蒸対象物が美術品の場合には、水分量は保存環境の相対湿度条件として厳しく規定され、およそ50RH%といわれている。一方、保存性を低下させる害虫の多くは20〜30℃、60〜80RH%が良好な生育条件であり、カビの繁殖しやすい条件は20℃で70〜90RH%である。このため燻蒸条件としては、カビや病害虫の発生の少ない22〜25℃、55RH%に設定され、55RH%を超える湿度に制御されることは稀である。 【0026】しかしながら、被燻蒸対象物が木材などのようにその後の加工が予定されているものの場合には、燻蒸雰囲気の相対湿度を広範囲に調製できるばかりでなく、被燻蒸対象物自体の水分量の増減も可能である。そこで、被燻蒸対象物の水分量と燻蒸剤の浸透性との関係を評価したところ、後記する実施例に示すように水分含有量の増加に伴って燻蒸剤の浸透性が向上した。これによって、燻蒸時間を短縮することができ、燻蒸剤の使用量を減少することも可能となる。 【0027】本発明の対象となる木材は、従来から燻蒸が必要とされる商取引の対象となる木材であり、スギ,ヒノキ,アカマツ,クロマツ,カラマツ,ヒバ,ツガ、モミなどの針葉樹、ケヤキ,カエデ,ナラ,サクラ,トチノキ,クリ、カシ・キリなどの広葉樹とがある。また、輸入材も燻蒸の対象となり、ラワン、ベイマツ、各種の唐木などがある。これらは木材の種類、原木であるか加工品であるか、商取引の対象となっているか否か等を問うものでなく、広く被燻蒸対象物とすることができる。 【0028】一般にこれらの被燻蒸対象物は、木材運搬船などによって河口や湾口に接岸し、陸上への搬入や保存、燻蒸処理が行われる。また、貯木用水に保存された木材は必要時に該用水から引き上げられ、燻蒸、保存、運搬などの対象となる。 【0029】本発明では、被燻蒸対象物である木材が水で湿潤していればよく、すでに湿潤している木材はそのまま燻蒸処理の対象とすることができ、湿潤していない場合には木材に散水などによって湿潤処理を施せばよい。例えば、木材輸送船で湾口に搬入された場合には、波止場に荷降ろしした木材にその場で散水して湿潤状態にすればよい。この際、木材の多少は問わない。 【0030】このような場合、木材を他の燻蒸設備内に搬入することは重労働である。本発明では、湿潤処理を行った木材の全体を覆うことができる被覆物を用いれば、簡便な燻蒸設備とすることができる。なお、燻蒸処理は、被燻蒸対象物を収納する隔離容器、隔離部屋など、燻蒸剤の遺漏を防止できる程度の気密性を有する燻蒸設備内で行うことが一般的である。本発明においても、木材をこれら燻蒸設備に搬入して燻蒸してもよい。なお、山積みした木材全体をビニールシートなどで覆った場合には、燻蒸雰囲気が外部に流出しないように目張りするとよい。ビニールシートなどを用いて燻蒸設備とした場合には、貯木場が燻蒸場所となるため、特に効率的である。 【0031】また、燻蒸設備等の使用のいかんを問わず、燻蒸雰囲気の相対湿度は、50〜100RH%であることが好ましく、より好ましくは70〜98RH%、特に好ましくは90〜95RH%である。ヨウ化アルキルを燻蒸した場合に、燻蒸条件、特に燻蒸雰囲気について詳細に検討したところ、燻蒸雰囲気内の相対湿度の増加に伴い燻蒸効果が強く発揮されること、およびこの傾向が燻蒸雰囲気の温度の如何にかかわらず一様に観察されることが判明した。一般的な燻蒸条件である常圧下では相対湿度が100RH%を超えることはないが、本発明においては、100RH%を超えるほどの湿度を燻蒸雰囲気に供給して過飽和状態であってもよい。また、湿潤処理で使用した水分が燻蒸処理中に燻蒸雰囲気に揮散する場合があり、燻蒸剤の殺カビ性能には、むしろ有利である。一方、湿度50RH%を下回ると、殺虫、殺菌の増大効果が急速に低下し不利である。なお、本願における相対湿度は、常圧における相対湿度である。 【0032】本発明において、燻蒸雰囲気の温度は、0〜60℃であることが好ましく、より好ましくは10〜50℃、特に好ましくは20〜40℃である。本願において該温度は、常圧における温度である。60℃を超えると被燻蒸対象物が大型である場合には、温度維持のための設備が必要となる。その一方、0℃を下回ると水の凍結が起こり、木材のヒビ割れ等の原因となる場合がある。なお、燻蒸雰囲気の温度は燻蒸の目的、被燻蒸対象物の特性、被燻蒸対象物の状態等に鑑みて選択可能であり、むしろ被燻蒸対象物の特性などによって至適な範囲で行うべきである。たとえば、輸入原木などのようにその後の加工が予定されているものや温度による変質や変形が少ないものは20〜40℃で処理すれば、燻蒸時間を短縮できて有利である。一方、未知の微生物が存在する可能性のある被燻蒸対象物など、特に微生物による汚染を防止する必要性の高い場合にはより高温、たとえば30〜50℃で燻蒸処理することもできる。 【0033】このような温度調整方法としては、滅菌域内のガス成分の引火性等に注意しつつ、好ましくは燻蒸設備内に配設された空調設備を使用して至適な温度に調整し、または燻蒸装置自体を予め上記範囲の温度に調整した保温庫などに収納して行い、または上記範囲に温度調整された燻蒸ガスを燻蒸装置内に導入する方法など、その他の方法で調整できる。 【0034】ヨウ化アルキルの燻蒸には、気化器を使用して燻蒸することが好ましい。簡便に燻蒸できて燻蒸時間の短縮に効果的だからである。このような気化器としては従来公知の気化器を使用する事ができ、気化器の加熱温度や、投薬速度などは使用するヨウ化アルキルの種類に応じて適宜選択することができる。このような気化器を使用すれば、ヨウ化アルキルが液体の場合にもヨウ化アルキルが直接被燻蒸対象物に接触せず、汚染を回避できるため好ましい。なお、燻蒸時間は、被燻蒸対象物の種類や燻蒸剤の種類により適宜選択できるが、一般には、12〜96時間、より好ましくは12〜72時間、特に好ましくは24〜48時間である。 【0035】燻蒸雰囲気内のヨウ化アルキル濃度は、0.05〜1.5mM/Lであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.3mM/L、特には0.2〜1.0mM/Lである。0.05mM/Lを下回ると燻蒸処理時間が長くなり、1.5mM/Lを超えると燻蒸後の薬剤の回収に時間と手間が係り不利である。なお、燻蒸雰囲気内のヨウ化アルキル濃度は、被燻蒸対象物の材質などを考慮して適宜上記範囲内で選択することができる。 【0036】本発明では、燻蒸剤としてヨウ化アルキル単独使用の他に、他の殺菌剤や殺虫剤をヨウ化アルキルと共に使用することができる。使用できる殺菌剤としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、メタアクロレイン、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、アリルアルコール、ブチルアルコール、過酸化水素がある。これらはヨウ化アルキルとの併用が可能であると共に、併用においても他の殺菌効果が損なわれない。本発明では、これら殺菌剤の1種を併用する場合の他2種以上を併用してもよい。 【0037】さらに本発明では、殺虫剤をヨウ化アルキルと共に燻蒸することができる。殺虫剤としては、クロルピクリン、二硫化炭素、フッ化スルフリル、臭化メチルおよび青酸が例示され、本発明では、これらの1種を併用する場合の他、2種以上を併用することもできる。本発明では、これら殺虫剤のなかでもフッ化スルフリル、臭化メチルを使用することが好ましい。これらは、被燻蒸対象物への影響が比較的少ないからである。なお、本発明では、ヨウ化アルキルと共に、上記殺菌剤の1種以上にさらに上記殺虫剤の1種以上を併用することもできる。これにより、環境保全に留意しつつ殺虫および殺菌効果に優れる燻蒸が可能だからである。 【0038】殺菌剤を併用する場合には、殺菌剤の濃度は、0.01〜5.0mM/Lであることが好ましく、より好ましくは0.02〜1.5mM/L、特には0.5〜1.0mM/Lである。また、殺虫剤を併用する場合には、その濃度は0.01〜5.0mM/Lであることが好ましく、より好ましくは0.02〜1.5mM/L、特には0.5〜1.0mM/Lである。この範囲で十分な殺生物性が得られると共に、被燻蒸対象物の変質、腐食などが少ないからである。 【0039】本発明の燻蒸方法が適用できる害虫としては、例えば、サツマイモネコブセンチュウ、土壌センチュウ、メセンチュウ、ネグサレセンチュウ、マツノザイセンチュウ等の線虫類;コクゾウ虫等の長ゾウ虫類の害虫;シロイチモジヨトウ、コブノメイガ、ハスモンヨトウ、カブラヤガ、ヨトウガ、タマナギンウワバ、ニカメイガ、サンカメイガ、ナシオオシンクイ、ハイマダラメイガ、マメノメイガ、イネツトムシ、ワタアカミムシ、ジャガイモガ、モンシロチョウ、ノシメマダラメイガ、チャノコカクモンハマキ、キンモンホソガ、ミカンハモグリガ、ブドウホソハマキ、ナシヒメシンクイ、マメシンクイガ、モモシンクイガ、ブドウスカシバ、チャノホソガ、コナガ、イガ等の鱗し目の害虫;タバココナジラミ、オンシツコナジラミ、ミカントゲコナジラミ、ワタアブラムシ、ユキヤナギアブラムシ、リンゴワタムシ、モモアカアブラムシ、ダイコンアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、マメアブラムシ、コミカンアブラムシ、ミカンクロアブラムシ、ブドウネアブラムシ、ムギミドリアブラムシ、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、チャノミドリヒメヨコバイ、フタテンヒメヨコバイ、ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ、ツマグロヨコバイ、タイワンツマグロヨコバイ、シロオオヨコバイ、ルビーロウムシ、オリーブカタカイガラムシ、サンホーゼカイガラムシ、リンゴカキカイガラムシ、アカマルカイガラムシ、アカホシマルカイガラムシ、ヤノネカイガラムシ、クワコナカイガラムシ、ミカンコナカイガラムシ、イセリアカイガラムシ、リンゴキジラミ、ミナミアオカメムシ、ホソヘリカメムシ、ナシグンバイ等の半し目害虫;イネミズゾウムシ、イネドロオイムシ、キスジノミハムシ、コロラドハムシ、テンサイトビハムシ、コクゾウムシ、クリヤケシキスイ、ニジュウヤホシテントウ、インゲンマメゾウムシ、アズキゾウムシ、ヨツモンマメゾウムシ、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ、マメコガネ、ゴマダラカミキリ、タバコシバンムシ、ヒメマルカツオブシムシ、コクヌストモドキ、ヒラタキクイムシ等の鞘し目害虫;アカイエカ、チカイエカ、シナハマダラカ、ヒトスジシマカ、イネハモグリバエ、ダイズサヤタマバエ、イネカラバエ、イネミギワバエ、イエバエ、クロキンバエ、タマネギバエ、ウリミバエ、ミカンコミバエ等の双し目害虫;ネギアザミウマ、カキクダアザミウマ、ミナミキロアザミウマ、イネアザミウマ、チャノキイロアザミウマ等のアザミウマ目昆虫;クロゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ、チャバネゴキブリ、コバネイナゴ、トノサマバッタ等の直し目害虫;カブラハバチ等の膜し目害虫;ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ、チャノホコリダニ、ミカンサビダニ、ニセナシサビダニ、イエダニ、ツツガムシ類、ケナガコナダニ等のダニ目害虫;その他、イヌノミ、アタマジラミ、ヤマトシロアリ、ヤケヤスデ、ゲジ等が例示できる。 【0040】本発明の燻蒸方法が有効な殺菌、殺カビの対象としては、黒コウジカビ、サツマイモの立枯れ病、つる割れ病、紫紋羽病、黒あざ病;ジャガイモのそうか病、黒あざ病;ウリ類の苗立枯れ病、つる割れ病、疫病;メロンの黒点根腐れ病;ナスの半身萎凋病、青枯れ病;トマトの白絹病、萎凋病、半身萎凋病、青枯れ病;イチゴの疫病、萎黄病;ホウレンソウの立枯れ病、萎凋病、根腐れ病;アブラナ科野菜の根こぶ病、根くびれ病、萎黄病、黄化病;ニンジンの根腐れ病、乾腐病;エンドウの根腐れ病;インゲンの白絹病;セルリーの萎黄病、黄化病;パセリの萎凋病;タバコの立枯れ病、疫病、黒根病、矮化病;カーネーションの立枯れ病、萎凋病等の糸状菌、細菌によって起こる病害があり、さらには各種のウィルス病、センチュウ類、ハリガネムシ、ネキリムシ、ケラ等がある。 【0041】本発明の燻蒸方法では、単に木材を湿潤させるだけでヨウ化アルキルの燻蒸効果を増大させることができるため、被燻蒸対象物としてはヨウ化アルキルによる燻蒸が好ましいとされる従来からの被燻蒸対象物のすべてに適用できる。したがって、たとえば輸入木材、家屋その他の建築物、野菜、果物、切花、除草等の燻蒸にも適する。さらに、樹木、竹材、洞窟、コンテナ、船舶、航空機、自動車、動物舎などに適用できる。 【0042】さらに、被燻蒸対象物の中には、未知の微生物を付着する場合があり、しかもその拡散を防止する必要性の高いものもある。たとえば、長期埋蔵されていた木片などで未知の菌類、カビ類が付着する虞がある場合には、その表層部を湿潤させてから、ヨウ化アルキル燻蒸剤によって燻蒸すれば、より高い燻蒸効果が得られる。 【0043】 【実施例】以下、本発明の実施例により具体的に説明する。 【0044】(実施例1)被燻蒸対象物としてヒバ角材を用い、ヨウ化メチル燻蒸剤の浸透性を評価した。 【0045】表1に示す■、■または■の処理を行なったサイズ11×11×16cmのヒバを用いて、この表面より2cmの穴を長軸方向から中心まで空け、木質内部に空洞を設けた。次いで、木質内の空洞にヒラタコクヌストモドキ(成虫30匹)を入れ、開口部をシリコン栓で蓋をした。この木片を燻蒸雰囲気(ヨウ化メチル濃度40g/m3投与、温度20℃)の燻蒸庫内で24時間の燻蒸処理を行い、24時間後の燻蒸庫開放前に燻蒸庫内ヨウ化メチル濃度及び開放直後に木材中心部のヨウ化メチル濃度を測定し、および殺虫効果の確認も併せて行った。結果を表1に示す。なお、表1に示す処理方法は、■通常に保管されていたヒバ角材(スタンダード)、■通常の角材を一旦水に浸したもの(一時含浸処理)、■通常の角材を一昼夜水に浸したもの(一昼夜含浸処理)である。 【0046】 【表1】
【0047】 【発明の効果】本発明の燻蒸方法は、木材を湿潤させるだけでヨウ化アルキル燻蒸剤による燻蒸効果を増強させることができる。木材を湿潤させるには木材に散水したり天候を使用して降雨後の木材を使用し、または貯木用水槽に保存した木材を使用すればよいため簡便である。しかも、24時間の燻蒸で木材内部の薬剤濃度は2倍近くにも達し防虫、防菌、防カビ効果に優れる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000227652 【氏名又は名称】日宝化学株式会社 【識別番号】000215888 【氏名又は名称】帝人化成株式会社
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| 【出願日】 |
平成14年5月8日(2002.5.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100072349 【弁理士】 【氏名又は名称】八田 幹雄 (外4名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−321306(P2003−321306A) |
| 【公開日】 |
平成15年11月11日(2003.11.11) |
| 【出願番号】 |
特願2002−133233(P2002−133233) |
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