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【発明の名称】 シュードモナス属細菌による植物病害防除剤およびその防除方法
【発明者】 【氏名】稲見 俊一
【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内

【氏名】西田 誠
【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内

【氏名】安楽城 夏子
【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内

【氏名】江崎 竜太郎
【住所又は居所】千葉県茂原市東郷1144 三井化学株式会社内

【氏名】貴志 淳郎
【住所又は居所】東京都千代田区霞が関三丁目2番5号 三井化学株式会社内

【要約】 【課題】簡易且つ効率的に植物病原菌から植物の地上部を保護することができる防除剤とこれを用いた防除法を提供する。

【解決手段】シュードモナス属細菌の菌体又は培養物を含む防除剤を、植物の地上部に処理することにより、微生物に起因する植物の地上部病害を簡易且つ効率的に防除する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シュードモナス・プチダ種細菌の菌体又は培養物を含むことを特徴とするムギ類以外の植物の地上部病害防除剤。
【請求項2】 シュードモナス・プチダ種細菌がMCIB−182(FERMP−18725)、MCIB−4(FERM P−18721)、MCIB−3(FERM P−18720)、MCIB−1(FERM P−18719)である請求項1に記載の植物の地上部病害防除剤。
【請求項3】 シュードモナス・プチダ細菌の菌体が1×10の7乗個/g濃度以上、好ましくは1×10の8乗個/g〜1×10の12乗個/g含まれる請求項1〜2記載の植物の地上部病害防除剤。
【請求項4】 植物が野菜(果菜を含む)、又は果樹である請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。
【請求項5】 植物がイモ類、豆類、又は特用作物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。
【請求項6】 植物が花卉である請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。
【請求項7】 植物が芝である請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。
【請求項8】 地上部病害がうどんこ病である請求項4〜6のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。
【請求項9】 地上部病害が灰色かび病である請求項4〜6のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。
【請求項10】 請求項1〜9のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤を植物地上部、特に茎葉部や花部に処理する、植物の地上部病害の防除方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は植物の地上部に処理することにより、微生物に起因する植物の地上部病害を簡易且つ効率的に防除する防除剤および防除方法に関するものである。防除対象植物は作物にとどまらず、食用及び鑑賞用の花卉、産業用の林木、街路樹や生垣に利用されるかん木や芝生等のアメニティ植物を含む。
【0002】
【従来の技術】植物病害の主たる防除方法として、従来から数多くの化学薬剤が使用されて来ている。しかしながら、類似骨格を有する同作用系の化学薬剤の同種病害防除への頻繁な使用や過剰投与、撲滅効果の無い化学薬剤の中途半端な使用、多作用点を有する化学薬剤の欠如等、により化学薬剤に対する植物病原菌の耐性化問題が、話題にのぼらないことは過去20年にはなかった。
【0003】一方では昨今、化学薬剤の環境ホルモン的作用がにわかに疑問視され出し、消費者からの減又は無化学農薬作物へのニーズが高まり、有機農産物認証制度もその運用が正確化しかつ基準自体も厳格化してきている。このような状況下、以前から存在し続けたIPM(総合的病虫害防除)、すなわち化学薬剤による防除以外にも、物理化学的防除(太陽熱土壌消毒、紫外線カットフィルム、熱水土壌消毒、養液栽培での病原菌ろ過等)や、耕種的防除(輪作や病原菌クリーニングクロップや病害抵抗性品種の栽培、混植栽培等)や生物的防除(生物源天然物、天敵、拮抗微生物)等の組み合わせによる総合的病虫害管理への期待が再度高まりを見せている。なかでも生物的防除に対する期待度は大きくなってきている。
【0004】近年、農園芸植物を各種病害から保護する方法として、安全性、効果の持続性を考慮して、各種病害を引き起こす病原菌と拮抗する微生物を用いる病害防除方法が広く用いられている。
【0005】この様に農園芸植物の病害を防除するのに用いられてきた微生物として、トリコデルマ属、グリオクラディウム属、アンペロマイセス属、コニンシリュウム属、フザリウム属、ピシウム属、タラロマイセス属、カンディダ属等のカビ、ストレプトマイセス属の放線菌、バチルス属、シュウドモナス属、アグロバクテリウム属、エルビニア属に属する細菌等が挙げられ、これまでに、これらの微生物を含有する農園芸用殺菌剤組成物も数多く研究されて来ている。
【0006】しかしながら、その多くは化学農薬でも難防除の土壌病害対象であり、その処理方法は土壌混和、土壌かん注、土壌散布等の土壌処理や、種子粉衣、種子浸漬、種子コーティング等の種子処理、移植前の植物根のディッピング処理(バクテリゼーション)が多く、いわゆる作物地下部への処理が殆どであった。
【0007】このうち国内でシュードモナス属に属する細菌については、例えば、特開昭60−186230号公報では、シュードモナス・ソラナセアルム種(M4S菌株)によるナス科植物青枯れ病防除例、特開昭63−190806号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種(SCBNoの3菌株)によるウリ科野菜の苗立枯病防除例、特開昭63−246306号公報では、シュードモナス・グルメ種菌株によるナス科野菜の土壌病害防除例、特開平1−42410号公報では、シュードモナス・グラディオリ種(M−2196菌株)による土壌病害防除例、特開平1−193203号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種(MD−4f菌株)によるバレイショそうか病防除例、特開平2−59504号公報では、シュードモナス・グルメ種菌株によるフザリウム病の防除例、特開平3−220108号公報では、シュードモナス・バンディー種(VA−1316菌株)によるフザリウム病の防除例、特開平7−25716号公報では、シュードモナス・セパシア種(AGF−158菌株)によるイネ苗床病害の防除例、特開平9−37771号公報では、シュードモナス・オーレオファシエンス種(TB−57菌株)による黒根病防除例、特開平9−37772号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種(H−3982菌株)による黒根病防除例、特開平9−124427号公報では、シュードモナス属・エスピー(CAB02菌株)によるイネ苗立枯れ性病害、特開平9−124427号公報では、シュードモナス属エスピー(CAB02菌株)によるイネ苗立枯れ性病害、特開平9−255513号公報では、シュードモナス属エスピー(CGF−72菌株)によるフザリウム病、バーティシリウム病防除例等が報告されている。
【0008】地上部処理による地上部病害防除例は特開平2−149507号公報では、シュードモナス・フロレッセンス種とシーウドモナス・プチダ種の菌株による小麦の茎葉汚染病害の防除例、特開平10−007515号公報では、キチン分解能力のあるシュードモナス属の4種の細菌によるセントポーリアのうどんこ病防除例が報告されているが、土壌病害防除微生物資材に比べると圧倒的に少ない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】さらに、実際の農業場面を含む使用場面において、使用者が満足のゆく高い効果を発揮できる微生物による植物病害防除剤はいまだ乏しく、現在もなお化学薬剤防除に頼らなければならないのが実状である。一方、化学薬剤の環境への影響や、化学薬剤耐性菌出現頻度の増加の危惧も払拭されていない。環境負荷の少ない総合的防除(前記載)に貢献でき、且つ防除活性の高い微生物による植物病害防除剤の不足は否定できない。またこの不足は、化学薬剤耐性菌出現頻度の高い地上部病害分野においてなおさら顕著である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このような状況を鑑み、化学薬剤耐性菌の出現頻度の高い地上部病害分野に、使用者が満足のゆく、より高活性な未利用の微生物素材を提供すべく、鋭意検討を重ねた。その結果、シュードモナス・プチダ種に属する細菌の菌体又は培養物を含む防除剤を、植物の地上部に処理することにより、植物の地上部病害を簡易且つ効率的に防除することを見出し、本発明を完成した。
【0011】すなわち、本発明は、以下に示す植物病害防除剤及びその防除方法である。
(1)シュードモナス・プチダ種細菌の菌体又は培養物を含むことを特徴とするムギ類以外の植物の地上部病害防除剤。(2)シュードモナス・プチダ種細菌がMCIB−182(FERM P−18725)、MCIB−4(FERM P−18721)、MCIB−3(FERM P−18720)、MCIB−1(FERM P−18719)である(1)記載の植物の地上部病害防除剤。(3)シュードモナス・プチダ細菌の菌体が1×10の7乗個/g濃度以上、好ましくは1×10の8乗個/g〜1×10の12乗個/g含まれる(1)〜(2)記載の植物の地上部病害防除剤。(4)植物が野菜(果菜を含む)、又は果樹である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。(5)植物がイモ類、豆類、又は特用作物である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。(6)植物が花卉である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。(7)植物が芝である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。(8)地上部病害がうどんこ病である(4)〜(6)のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。(9)地上部病害が灰色かび病である(4)〜(6)のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤。(10)(1)〜(9)のいずれか一項に記載の植物の地上部病害防除剤を植物地上部、特に茎葉部や花部に処理する、植物の地上部病害の防除方法。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
<1>本発明に用いる微生物先ず本発明に用い微生物であるシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)種の菌株の例としては、好ましくは、MCIB−182菌株、MCIB−4菌株、MCIB−3菌株、MCIB−1菌株が挙げられ、これらの菌株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番1 中央第6)に、各々FERM P−18725、FERM P−18721、FERM P−18720、FERM P−18719、の受託番号で受託されているものが挙げられる。これら菌株の同定の際の分類学的諸性質を第1表、第2表に示す。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【0015】<2>本発明の微生物の培養方法本発明の細菌の培養は、例えば、往復式振盪培養、ロータリー培養、ジャーファメンター培養、培養タンク培養等の液体培養や固体培養等、バチルス属に属する細菌の通常の培養方法に準じて行うことができる。
【0016】培養に用いる培地は、生育しやすい培地であれば何でもよく、例えば炭素源としてグルコース、デンプン、デキストリン、シュークロース、糖蜜等の糖類、窒素源としては酵母エキス、コーン・スティープ・リーカー、肉エキス、小麦胚芽、ペプトン類、バレイショエキス、大豆粉等の有機窒素源が好ましいが、塩安,硝安、硫安等の無機塩も利用できる。また、無機塩としてリン酸、カリウム、カルシウム、マンガン、マグネシウム、鉄等の塩類、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マンガン、硫酸第一鉄などを配合することができる。また、必要に応じて消泡剤等の種々の添加剤を用いることも可能である。
【0017】培養の条件は特に限定されるものではないが、培養は、固体培養あるいは、液体培養では通気撹拌や振盪培養等の好気的条件下で行うことが好ましく、温度は15〜35℃、好ましくは20〜30℃、pHは5〜8、より好ましくは6〜8の範囲で行う。
【0018】<3>本発明の植物の地上部病害防除剤本発明のシュードモナス・プチダ種細菌の「菌体又は培養物」の「培養物」とは、上記で説明したような培養で得られた菌体を含む全てのものを意味する。すなわち「菌体又は培養物」を含む防除剤は、「菌体又は培養物」をそのまま使用することができるし、培養物から菌体を除いた培養液を使用することもできるし、菌体のみでも使用できる。この培養物(又は培養液)は、適宜希釈または濃縮して使用することができる。ここで培養物には、菌体およびその培養液の両方が含まれる。菌体を液体培地で培養して得た培養物は、溶液の状態で植物の葉や茎に散布することができるため、植物の葉や茎や花等の地上部処理に好ましい。
【0019】植物の地上部に直接散布する際には、長期的に防除効果を得るためには、菌体を含む培養液を散布するのが好ましい。また含まれる菌体濃度は1×10の7乗個/g濃度以上で、好ましくは1×10の8乗個/g〜1×10の12乗個/g含まれる防除剤である。
【0020】本発明の植物病害防除剤は、通常の化学農薬製剤や微生物製剤で一般的に利用されて来た製造方法に従って、上記シュードモナス・プチダ種に属する細菌の菌体又は培養物を必要に応じて各種任意成分と共に、粉剤、水和剤、顆粒水和剤、乳剤、液剤、フロアブル、塗布剤等として使用できる。
【0021】上記任意成分としては、固体担体として、ベントナイト、モンモリロナイト、珪藻土、酸性白土、タルク類、パーライト、バーミキュライト等の鉱物質微粉末、硫酸塩、尿素、塩化塩、硝酸塩等の無機塩、フスマ、キチン、多糖類、米糠、小麦粉等の有機物微粉末等を、また、補助剤として、カゼイン、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸、糖類、合成高分子(ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸類等)、ベントナイト等の固着剤や分散剤、その他の成分として、プロピレングリコール、エチレングリコール等の凍結防止剤、キサンタンガム等の天然多糖類、ポリアクリル酸類等の増粘剤、また展着剤、乳化剤、着色剤等を添加することができる。
【0022】この様にして得られる本発明の地上部病害防除剤が適応される「地上部病害」とは、主に胞子をつくるカビによる空気伝染性病害を意味するが、植物同士の接触や雨水による地上で伝染蔓延する病害をも含む意味で使用した。すなわち地上部での伝染が主の病害であり、地上部(茎部や葉部や花部)への薬剤処理という簡便な処理で効果的にその蔓延を防除されうる病害という意味である。、以下に好ましくはムギ類以外である、本発明が対象とする、具体的病害およびその病原菌例を示す。
【0023】<イネ>イネのいもち病菌ピリキュラリア・ オリゼー(Pyricularia oryzae)、ごま葉枯れ病菌コクリオボラス・ミヤベアヌス(Cochliovolus miyabeanus)、<野菜>野菜類、例えば、ナス科野菜、ウリ科野菜、イチゴ、レタス、タマネギ等の灰色かび病菌ボトリチス・ シネレア(Botrytis cinerea)や菌核病菌スクレロチニア・ スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)、トマトの葉かび病菌クラドスポリウム・フラバム(Cladosporium fulvum)、輪紋病菌アルタナリア・ソラニ(Alternaria salani)、festans)、ウリ科野菜の炭そ病菌コレトトリカム・ラゲナリウム(Colletotrichum lagenarium)、つる枯れ病菌ミコスフェレラ・メロニス(Mycosphaerella melonis)、うどんこ病菌スフェロテカ・フリジネア(Sphaerotheca fuliginea)、ウリ科野菜べと病菌シュードペロノスポラ・キュベンシス(Pseudoperonospora cubensis)、ハクサイの黒斑病菌アルタナリア・ブラッシセア(Alternaria brassicae)、ニンジンの黒葉枯病菌アルタナリア・ダウシ(Alternaria dauci)、イチゴのうどんこ病菌スファエロテカ・フムリ(Sphaerotheca humuli)、炭そ病菌コレトトリカム・フラガリア(Colletotrichum fragariae)、キャベツの黒すす病菌アルタナリア・ブラッシコーラ(Alternaria brassicicola)、蔬菜類、ダイコンのべと病菌ペロノスポラ・ブラシケ(Peronospora brassicae)、ホウレンソウのべと病菌ペロノスポラ・スピナシエ(Peronospora spinaciae)、タバコのべと病菌ペロノスポラ・タバシナ(Peronospora tabacina)、セリ科植物のべと病菌プラズモパーラ・ニベア(Plasmopala nivea)、<果樹>カンキツ類の青かび病菌ペニシリウム・イタリカム(Penicillium italicum)、黒点病菌ディアポルセ・シトリ(Diaporthe citri)、緑かび病菌ペニシリウム・ディジタツム(Penicillium digitatum)、青かび病菌ペニシリウム・イタリクム(Penicillium italicum)、ナシの赤星病菌ジムノスポランジウム・アシアチカム(Gymnosporangium asiaticum)、黒斑病菌アルタナリア・キクチアナ(Alternaria kikuchiana)、黒星病菌ベンチュリア・ナシコーラ(Venturia nashicola)、リンゴの黒星病菌ベンチュリア・イネクアリス(Venturia inaequalis)、斑点落葉病菌アルタナリア・マリ(Alternaria mali)、モモの灰星病菌モニリニア・フルクチコーラ(Monilinia fructicola)、フ゛ト゛ウの灰色かび病菌ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)、晩腐病菌グロメレラ・シンギュラータ(Glomerella cingulata)、<豆類>ラッカセイの褐斑病菌サーコスポーラ・アラキディコーラ(Cercospora arachidicola)、ダイズの紫斑病菌サーコスポーラ・キクチ(Cercospora kikuchii)、エンドウの褐斑病菌アスコキタ・ピシ(Ascochyta pisi)、ソラマメの赤色斑点病菌ボトリチス・ファバエ(Botrytis fabae)、豆類の灰色かび病菌ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)や菌核病菌スクレロチニア・スクレロチオラム(Sclerotinia sclerotiorum)、<イモ類と特用作物>夏疫病菌アルタナリア・ソラニ(Alternaria salani)、テンサイの褐斑病菌サーコスポーラ・ベティコーラ(Cercospora beticola)、<花卉類>花卉類、例えば、シクラメン、キク、バラ、スターチス、アスター、スミレ等の灰色かび病菌ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)、バラのうどんこ病菌スファエロテカ・パンノーサ(Sphaerotheca pannosa)等が挙げられる。
【0024】<4>本発明の植物の地上部病害防除方法本発明の病害防除法においては、上記の様な各種栽培植物の地上部の各種病害を防除する目的で、上記本発明の病害防除剤を栽培植物に施用する。
【0025】施用の方法としては、剤型等の使用形態、作物や病害によって適宜選択され、例えば、地上液剤散布、地上固形散布、空中液剤散布、空中固形散布、施設内施用等の茎葉散布処理や、その他の単花処理、栽培植物の傷口箇所、剪定部への塗布処理等の方法を挙げることができる。
【0026】また、栽培植物への施用に際して、殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤、植物生長調節剤、肥料、土壌改良資材(泥炭、腐植酸資材、ポリビニルアルコール系資材等)等を混合施用、あるいは混合せずに交互施用、または同時施用することも可能である。
【0027】本発明の防除剤施用量は、病害の種類、適用植物の種類、防除剤の剤型等によって異なるため一概には規定できないが、例えば、水和性の液剤を地上散布する場合には、その施用の菌体濃度は、通常約1×10の4乗個/mL〜1×10の10乗個/mLであり、好ましくは約1×10の7乗個/mL〜1×10の10乗個/mLであり、施用量は、0.5〜50L/aである。また粉剤等はなんら希釈することなく製剤のままで施用することも可能であり、地上散布する場合、菌体の施用量が、1×10の12乗個〜1×10の14乗個/a程度となるように散布することが好ましい。
【0028】
【実施例】以下実施例により、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
<培養製造例>(培養製造例1)イーストエキス(DIFCO社)5gとポリペプトン(日本製薬社)10gと塩化ナトリウム10gを蒸留水1Lに添加し、水酸化ナトリウム液でPH7.0に調整したイーストペプトンブロスを、試験管に5mlずつ入れ滅菌後、供試微生物菌株を無菌的に移植し、30℃、200rpmの条件で3日間往復振とう培養した。試験管の培養本数は適宜増やした。
【0029】(培養製造例2)イーストエキス(DIFCO社)5gとポリペプトン(日本製薬社)10gと塩化ナトリウム10gを蒸留水1Lに添加し、水酸化ナトリウム液でPH7.0に調整したイーストペプトン培養液を、500mlの振とう用フラスコに100ml入れ滅菌後、供試微生物菌株を無菌的に移植し、30℃、120rpmの条件で3日間往復振とう培養した。フラスコの培養本数は適宜増やした。
【0030】(培養製造例3)イーストエキス(DIFCO社)5gとポリペプトン(日本製薬社)10gと塩化ナトリウム10gを蒸留水1Lに添加し、水酸化ナトリウム液でPH7.0に調整したイーストペプトン培養液を、500mlの振とう用フラスコに200ml入れ滅菌後、供試微生物菌株を無菌的に移植し、30℃、120rpmの条件で3日間往復振とう培養した。得られた培養物200mLを前記同培地10Lの入った30L容の発酵槽に植菌し、好気的条件下で30℃で72時間培養して培養液を得た。得られた約10Lの培養液を常法に従って遠心分離(5000rpm、20分間)濃縮して菌体培養物の濃縮物(約500g)を得た。この菌体培養濃縮物を減圧下で乾燥して粉砕すれば菌体培養濃縮物の乾燥物とすることができる。得られた菌体培養濃縮物の一部を製剤に使用した。
【0031】<製剤例>(製剤例1)吸光度と希釈平板法にて予め作成した懸量線に基づき、前記(培養製造例1)で培養して得られた菌体含有培養物を、水希釈にて菌体濃度が、1×10の8乗個/ml、になるように調整し、処理直前に展着剤グラミンS(三共株式会社)が5000倍希釈になるように添加した菌体含有培養物そのままの懸濁状液体製剤。
【0032】(製剤例2)吸光度と希釈平板法にて予め作成した懸量線に基づき、前記(培養製造例2)で培養して得られた菌体含有培養物に、水希釈にて菌体濃度が、1×10の8乗個/ml、になるように調整し、キャリアーとしてラジオライト(焼成ケイソウ土)を1%添加し、処理直前に展着剤グラミンS(三共株式会社)が5000倍希釈になるように添加した簡易水和剤。
【0033】(製剤例3)前記(培養製造例3)で得られた菌体培養濃縮物40部、ラジオライト(焼成ケイソウ土)57部、リグニンスルホン酸ナトリウム1部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部ホワイトカーボン10部を混合粉砕し、水和剤100部を得た。得られた剤中の菌体濃度を測定したところ1×10の10乗個/gであった。
【0034】<病害防除試験例>(試験例1)インゲン灰色かび病防除試験(病原菌:RS菌とRR菌2種)
温室内にて直径7.5cmのプラスチックポットに子葉の展開まで生育させたインゲン(品種:つるなしトップクロップ)に製剤例1に準じて調整した懸濁状液体製剤を、6ポットあたり30mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が乾いた後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性、RS菌)及び(MBC耐性・ジカルボキシイミド系薬剤耐性:RR菌)2種から各々調整した培養液含有分生胞子懸濁液(1×10の5乗個/ml)を各々3ポットづつ噴霧接種し、20〜23℃、湿度95%以上の人工気象室内に7日間保った後、調査を実施した。調査はインゲン1葉当りに病斑が占める面積を次の指標に従って行った。なお、比較菌株例として製剤例1に準じて同様に調整したシュードモナス属他種の菌株例についても同じ試験を実施した。さらに比較市販剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)についても、同濃度に希釈し、同じ試験を実施した。結果を第3表に示した。表中の各菌株の防除効果は下記の防除価に基づきS、A、B,Cで表示した。

各処理区および無処理区の平均値を発病度とした。防除価は以下の様に算出した。
防除価=(1−処理区の発病度/無処理区の発度病)×100防除効果=S:防除価80以上、A:防除価80未満〜60以上、B:防除価60未満〜40以上、C:防除価40未満【0035】
【表3】

【0036】(試験例2)キュウリ灰色かび病防除試験(病原菌:RS菌)
温室内にて直径7.5cmのプラスチックポットに2葉期まで生育させたキュウリ(品種:相模半白)に製剤例1に準じて調整した懸濁状液体製剤を、3ポットあたり20mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が乾いた後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性、RS菌)から調整した培養液含有分生胞子懸濁液(1×10の5乗個/ml)を子葉上に噴霧接種し、20〜23℃、湿度95%以上の人工気象室内に7日間保った後、調査を実施した。調査はキュウリ1葉当りに病斑が占める面積を次の指標に従って行った。なお、比較菌株例として製剤例1に準じて同様に調整したシュードモナス属他種の菌株例についても同じ試験を実施した。さらに比較市販剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)についても、同濃度に希釈し、同じ試験を実施した。調査は試験例1と同様の方法で行い、結果を第4表に示した。表中の各菌株の防除効果についても試験例1と同様に表示した。
【0037】(試験例3)キュウリうどんこ病防除試験温室内にて直径7.5cmのプラスチックポットに1.5葉期まで生育させたキュウリ(品種:相模半白)に製剤例1に準じて調整した懸濁状液体製剤を、3ポットあたり15mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が乾いた後に、少量の展着剤を加えた水にキュウリうどんこ病菌を懸濁して調整した分生胞子懸濁液(1×10の6乗個/ml)を子葉上に噴霧接種し、温室内に7日間保った後、調査を実施した。調査はキュウリ1葉当りに病斑が占める面積を次の指標に従って行った。なお、比較菌株例として製剤例1に準じて同様に調整したシュードモナス属他種の菌株例についても同様の試験を実施した。さらに比較市販剤例として、うどんこ病防除剤として登録されている市販微生物農薬(BI剤)についても、遠心操作で同濃度に調整し、同じ試験を実施した。結果を試験例2の結果と共にまとめて第4表に示した。表中の各菌株の防除効果は試験例1と同様に算出し、同様に表示した。
【0038】
【表4】

【0039】(試験例4)インゲン開花期灰色かび病防除試験(灰色かび病菌:RR菌)
温室内にて1/5000aのワグネルポットに開花期まで生育させたインゲン(品種:つるなしトップクロップ)に、製剤例3に準じて調整した水和剤を所定濃度(1×10の8乗個/ml)に希釈して、4ポットあたり150mlづつスプレーガンにて1週間間隔で2回散布した。薬剤処理4日後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性・ジカルボキシイミド系薬剤耐性:RR菌)から調整した培養液含有分生胞子懸濁液(5×10の5乗個/ml)を、花部を中心に1週間間隔で2回噴霧接種し、18〜27℃、湿度90%以上の温室内湿室に最終接種後14日間保った後、調査を実施した。調査は各ポットの発病莢率(インゲン莢総数に占めるインゲン発病莢数)を調査し、各処理区の平均発病莢率を求め、以下の様に防除価を算出して、防除価の結果を第5表に示した。比較剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)の同濃度処理と市販ジカルボキシイミド系化学薬剤(S剤)の結果も第5表に示した。
防除価=(1−処理区の発病莢率/無処理区の発病莢率)×100【0040】
【表5】

【0041】(試験例5)ナス開花期灰色かび病防除試験(灰色かび病菌:RR菌)
温室内にて1/5000aのワグネルポットに開花期まで生育させたナス(品種:千両)に、製剤例3に準じて調整した水和剤を所定濃度(1×10の9乗個/ml)に希釈して、4ポットあたり150mlづつスプレーガンにて1週間間隔で2回散布した。薬剤処理3日後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性・ジカルボキシイミド系薬剤耐性:RR菌)から調整した培養液含有分生胞子懸濁液(5×10の5乗個/ml)を、花部を中心に1週間間隔で2回噴霧接種し、18〜27℃、湿度90%以上の温室内湿室に最終接種後14日間保った後、調査を実施した。調査は各ポットの発病果花率(ナス果花総数に占める発病果花率)を調査し、各処理区の平均発病果花率を求め、以下の様に防除価を算出して、防除価の結果を第6表に示した。比較剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)の同濃度処理と市販ジカルボキシイミド系化学薬剤(S剤)の結果も第6表に示した。
防除価=(1−処理区の発病果花率/無処理区の発病果花率)×100【0042】
【表6】

【0043】(試験例6)イネいもち病防除試験温室内にて直径7.5cmのプラスチックポットに2葉期まで生育させたイネ(品種:ツキミモチ)に製剤例2に準じて調整した簡易水和剤を3ポット(50株/各ポット)あたり10mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が乾いた後に、予めイネ葉添加PDSA培地上で培養したいもち病菌から調整した分生胞子懸濁液(1×105個/ml)をイネ葉上に噴霧接種し、22〜25℃、湿度95%以上の人工気象室内に7日間保った後、調査を実施した。調査はイネ50株当りの病斑数を次の指標に従って行った。なお、比較菌株例として製剤例2に準じて同様に調整したシュードモナス属他種の菌株例についても同様の試験を実施した。結果を第7表に示した。

各処理区および無処理区の平均値を発病度とした。防除価は試験例1と同様に算出し、同様に表示した。
【0044】
【表7】

【0045】(試験例7)シクラメン灰色かび病防除試験(灰色かび病菌:RS菌)
温室内にて4寸鉢に開花期まで生育させたシクラメン(品種:ボレロ)に製剤例2に準じて調整した簡易水和剤を、3ポットあたり30mlづつスプレーガンにて散布した。薬液が乾いた後に、予めPDA培地上で培養した灰色かび病菌(MBC耐性:RS菌)から調整した培養液含有分生胞子懸濁液(5×10の5乗個/ml)を花部中心に噴霧接種し、20〜23℃、湿度95%以上の人工気象室内に7日間保った後、調査を実施した。調査は花弁部一花当りに病斑が占める面積を次の指標に従って行った。比較菌株例として製剤例2に準じて同様に調整したシュードモナス属他種の菌株例についても同様の試験を実施した。比較剤例として灰色かび病剤として登録されている市販微生物農薬(B剤)についても、同濃度に希釈し同様の試験を実施した。結果を第8表に示した。表中の各菌株の防除効果は試験例1と同様に算出し、同様に表示した。
【0046】
【表8】

【0047】
【発明の効果】本発明の、シュードモナス・プチダ種に属する細菌の菌体又は培養物を含む防除剤は、植物の地上部、特に茎葉部や花に処理することにより、化学薬剤耐性菌の出現頻度の高い植物地上部病害を、簡易且つ効率的に防除することができ、化学薬剤耐性菌をも防除することができる。
【出願人】 【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区霞が関三丁目2番5号
【出願日】 平成14年3月22日(2002.3.22)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−277211(P2003−277211A)
【公開日】 平成15年10月2日(2003.10.2)
【出願番号】 特願2002−80034(P2002−80034)