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【発明の名称】 フロロタンニン類を主成分とする抗菌剤
【発明者】 【氏名】長山 公紀

【氏名】平山 泉

【氏名】中村 孝

【氏名】岩村 善利

【氏名】銀永 明弘

【要約】 【課題】新規な抗菌剤を提供する。

【解決手段】フロロタンニン類を主成分とする抗菌剤。さらに詳細には、当該フロロタンニン類が、フロログルシノール(phloroglucinol)、エコール(eckol)、フロロフコフロエコールA(phlorofucofuroeckol A)、ダイエコール(dieckol)、8,8'−バイエコール(bieckol)から選択される1つまたは2つ以上の組み合わせである抗菌剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フロロタンニン類を主成分とする抗菌剤。
【請求項2】 当該フロロタンニン類が、フロログルシノール(phloroglucinol)、エコール(eckol)、フロロフコフロエコールA(phlorofucofuroeckolA)、ダイエコール(dieckol)、8,8'−バイエコール(bieckol)から選択される1つまたは2つ以上の組み合わせである請求項1記載の抗菌剤。
【請求項3】 当該フロロタンニン類が海藻由来のフロロタンニンである請求項1または2に記載の抗菌剤。
【請求項4】 当該海藻由来のフロロタンニンが褐藻類のクロメ、アラメ、またはカジメから選択される海藻に由来するフロロタンニンである請求項3記載の抗菌剤。
【請求項5】 請求項1から4のいずれかに記載のフロロタンニン類を主成分とする水中における病害菌の抗菌剤。
【請求項6】 当該病害菌が魚介類に付着する病害菌である請求項5に記載の抗菌剤。
【請求項7】 魚介類に付着する病害菌がビブリオ菌である請求項6に記載の抗菌剤。
【請求項8】 当該病害菌が循環水や冷却水中に含まれる病害菌である請求項5に記載の抗菌剤。
【請求項9】 循環水や冷却水中に含まれる病害菌がレジオネラ菌である請求項8に記載の抗菌剤。
【請求項10】 請求項1から4のいずれかに記載のフロロタンニン類を主成分とする細菌感染予防または治療剤。
【請求項11】 当該細菌がビブリオ・バルニフィカス菌である請求項10に記載の細菌感染予防または治療剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フロロタンニン類を主成分とする抗菌剤に関する。さらに詳細には、フロログルシノール(phloroglucinol)、エコール(eckol)、フロロフコフロエコールA(phlorofucofuroeckol A)、ダイエコール(dieckol)、8,8'−バイエコール(bieckol)から選択される1つまたは2つ以上のフロロタンニン類を主成分とする抗菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】人間社会生活における有害微生物の制御を目的に今日では幅広い分野において抗菌剤・抗菌製品の応用が進んでいる。それらは、(i)公衆衛生管理分野、(ii)食品衛生管理分野、(iii)薬事衛生管理分野、および(iv)産業および公衆環境衛生管理分野など日常生活環境に大きく関わっているものである。これらの基本となる抗菌物質は、その組成・種類や、用途・目的によって多種多様な状態で多くの生活環境分野に浸透している。
【0003】しかしながら、上記の抗菌物質・抗菌製品の使用においては以下のような問題が提起され社会問題として増加しつつある:(1)抗菌製品においては、どのような化学物質がどのくらいの濃度で抗菌成分として使用されているのか、また、それらの安全性等について不明な点が多い;
(2)皮膚障害、呼吸器障害および神経系障害等の健康被害の多発;
(3)医療領域ではMRSA、VREのように抗生物質に対する耐性菌問題、抗菌スペクトラムの問題、予防・治療的使用の限界、新興細菌感染症に対する新たな問題;
(4)有機化学系抗菌剤の適用限界、廃液・環境汚染問題;および(5)社会生活への非効率的な適用法など。
このように現行の抗菌物質・抗菌製品は、多くの問題をひきおこしつつも、使用せざるを得ない状況がある。また、これらの問題は同時に環境負荷はもとより、特定の病害微生物制御の為には高額な施設整備や対策費を講じざるを得ない状況が各応用分野に起こっている。
【0004】より具体的な例としては、以下のような事例がある。
(I)腸炎ビブリオ菌毎年夏場に発生する腸炎ビブリオ菌による食中毒は後を絶たない。腸炎ビブリオ菌は生鮮魚介類に付着した菌がもとで引き起こす食中毒であり、対策として水産物の流通過程で生魚用生け簀のオゾン殺菌や紫外線殺菌海水等での対応が進められるところがある。しかし、オゾン臭の問題や施設経費・スペース・運用の問題があり、また水産物に付着している菌そのものの除菌効力においては不十分な問題を有している。また、ビブリオ・バルニフィカス菌では肝臓障害者にとっては致命的感染症に至ることが多く医療上の重大問題ともなっている。本症に対しては早急な予防・治療対策が求められている。
【0005】(II)サルモネラ菌サルモネラ菌による食中毒は、畜産業環境そのもののサルモネラ菌汚染問題や、生産された食肉・卵を介した食中毒として社会問題化しており、未だに十分な予防・衛生対策が進んでいない。また、近年、抗生物質等による耐性菌問題がクローズアップされつつある。
(III)日和見感染菌日和見感染菌は特に院内感染を引き起こす菌でもあるが、医療分野では依然として抗耐性菌問題、殺菌消毒薬による環境汚染、衛生環境、施設整備への経済的負荷の増大、特定菌への効力の持続性、抗菌スペクトルの問題など抱えている。
【0006】(IV)レジオネラ菌レジオネラ菌は肺炎を引き起こす感染症で、最近では、循環風呂、ビル等の冷却施設での繁殖が問題となり、対策に多大なコストが必要とされている。全国的に普及した循環浴槽等は本菌にとって繁殖し易い環境であり、高齢者などの抵抗力の弱い人が罹り易く致命的な場合も多い。これには循環水の紫外線・オゾン殺菌や浄化剤、膜濾過等が対応策として施されるものの、経済的負担も大きく、必ずしも十分な成果を得ていない。ビルの冷暖房施設として循環する冷却水(クーリング水)等は高率にレジオネラ菌が繁殖して公衆環境衛生上の社会的問題を生じている。既存の塩素系殺菌剤では施設の金属腐食、効果の持続性および有毒ガス発散等に難がある。最近ではそれらに対応した有機系抗菌剤が用いられるケースもあるが これらは何れにしてもレジオネラ菌対策でかなりの経費を要するものとなっている。そのため普及も十分ではなく、その分、全国的に公衆衛生上の身近な問題を投げかけている。
【0007】(V)シックハウス症候群シックハウス症候群は、建築材等に含まれるホルマリン等の抗菌成分により惹起される一種のアレルギー性疾患であり、このような化学物質からなる抗菌成分が安全性に問題があることを示している。このような例でも判るように、現行の抗菌剤ではその種類や使用領域、用途・用法において問題が多く、ケース毎に対応策が必要とされる部分が多く、その改善策が求められている。
【0008】一般に抗菌剤にはその組成から大別して無機系抗菌剤と有機系抗菌剤がある。そのうち有機系抗菌物質には、第4アンモニウム塩系、アミノ酸系、ビグアナイド系、フェノール系、アルデヒド系、有機ヒ素系、ピリジン系抗菌剤および天然系抗菌剤、さらには所謂医薬とされる抗生物質などがあり、特性に応じてさまざまな分野で使用されている。この中でも安全性の観点からは天然系抗菌剤が好ましい。天然系抗菌剤は、各種の精油、ハーブおよび樹木抽出物、漢方薬、カテキン、ヒノキチオールなどその特性を応用した実用例がある。しかしながら、従来の天然系抗菌剤はその有効性において実用的に不十分なものが多い。従って、実用的には各用途に対して十分な有効性および安全性を有するとともに、環境保全に配慮された抗菌剤の開発が強く望まれている。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、褐藻類のクロメ、アラメ、カジメ等からアルコール抽出により得られるフロロタンニン類が、種々の菌類に対して強い抗菌活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【発明の構成】本発明は、フロロタンニン類を主成分とする抗菌剤に関する。当該フロロタンニン類の具体例としては、フロログルシノール(phloroglucinol)、エコール(eckol)、フロロフコフロエコールA(phlorofucofuroeckol A)、ダイエコール(dieckol)、8,8'−バイエコール(bieckol)から選択される1つまたは2つ以上が挙げられ、単独もしくは適宜混合して使用することができる。これらの各フロロタンニン類の構造式を図1に示す。上記フロロタンニン類は、海藻類、特に、褐藻類のクロメ、アラメ、またはカジメ等からアルコール抽出により得ることができる。また、図1記載の構造式に基づき化学合成等により得ることもできる。
【0011】本発明により得られるフロロタンニン類が抗菌活性を示す菌の例として、表1に記載した食中毒菌、日和見感染病起因菌、魚病菌等、32種の菌が挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明により得られるフロロタンニン類は、水中における各種病害菌に対する殺菌剤として使用することができる。例えば、魚介類の表面に付着しているビブリオ菌の殺菌剤として有効である。ビブリオ菌は食中毒を惹き起こす起因菌であり、マダイやクルマエビの搬送中にその体表にビブリオ菌が付着していた場合、それを人が摂取すると食中毒症状が惹起される原因となっている。従って、マダイやクルマエビの搬送前・後に本発明のフロロタンニン類を含む海水中に当該魚介類を入れておくか、または搬送用の海水中にもフロロタンニン類を添加しておくことにより、当該魚介類からビブリオ菌を除去することが可能となる。フロロタンニン類のこのような用法は、同様な問題を抱える他の魚介類の流通過程にも適用できる。
【0012】また、循環水や冷却水中で繁殖し、公衆衛生環境に悪影響を及ぼす病害菌の制御や感染症予防策においても、本発明のフロロタンニン類は有効に作用しうる。例えば、レジオネラ菌を含む冷却水や浴槽水に本発明のフロロタンニン類を添加することにより、水棲のレジネオラ菌を効果的に殺菌することが可能となる。さらに本発明のフロロタンニン類は、マウスへの経口摂取試験の結果、体重増や一般症状にも何ら異常は観察されないことから、生体内への取り込みや接触のある飲食物、添加物、化粧品、洗浄除菌剤、消毒剤、医薬品、日常生活用品等のいずれにおいても安全に使用できるものである。また、本発明のフロロタンニン類は、細菌感染症に対する感染防御効果も有することから、細菌感染症に対する予防または治療薬としても有効である。
【0013】
【実施例】以下に本発明の実施例を示すが本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1:フロロタンニン抽出法・種類・性状・成分褐藻類のクロメ(Ecklonia kurome)は乾燥して粉砕した。クロメの粉末(水分約10%、800g)はメタノール(2,400mL)とともに5℃で48時間振とう(90revmin-1)して抽出した。抽出物は減圧下で濃縮し、メタノール(240mL)、クロロホルム(480mL)、水(180mL)を加え、上層と下層に分かれさせて、上層を酢酸エチル(300mL)で2回抽出した。酢酸エチル層を減圧下で濃縮したものを粗フロロタンニンとした。クロメ粉末からの粗フロロタンニンの収量は約3%である。
【0014】粗フロロタンニンはフロログルシノール(phloroglucinol:2%)、エコール(eckol:9%)、フロロフコフロエコールA(phlorofucofuroeckol A:28%)、ダイエコール(dieckol:24%)、8,8'-バイエコール(8,8'-biekcol:7%)、その他(30%)で構成され、ケイ酸カラムクロマト(15mm i.d.×150cm, Wakogel C-300HG, 和光純薬化学工業)で、クロロホルム:メタノール:水(80:20:2, v/v)によって分離した。分離した画分のTLCプレート上で単一スポットとなる部分をそれぞれ集めたものが、エコール、フロロフコフロエコールA、ダイエコール、8,8'-バイエコールとなった。フロログルシノール(水和物、純度98%以上)は和光純薬化学工業(株)製、茶葉に含まれるタンニンの一種であるカテキン(純度90%以上)およびエピガロカテキンガレート(EGCG;純度95%以上)は栗田工業(株)製のものを以下の試験に利用した。
【0015】実施例2:抗菌活性測定法最小殺菌濃度MBC(初菌数の99.9%を24時間以内に殺菌する濃度)は、液体培地法により、24ウェルマイクロプレートと感受性測定用ブイヨン(StB, Eiken chemical, Japan)を用いた。反応には各新鮮培養菌を104〜105 cfu/mLになるように浮遊させ、1mLずつウェルに入れた。単離フロロタンニン、粗フロロタンニン、またはカテキンを70%メタノールに溶解し、20μLをウェルに添加した後、好気条件下、37℃で24時間振とう(60 rev min-1)培養した。MBCの測定は、それぞれのウェルから20〜200μLを決められた時間にサンプリングし、BHIAで培養し、37℃で24時間好気培養後にコロニー数を数えた。なお、以下の菌については特殊な培養条件を要する為、以下の方法で行った。ビブリオ菌(V. parahaemoliticus, V. vulnificus, V. cholerae)は、培地にNaClを2.5%添加した。キャンピロバクターはスキロー寒天生培地(ベクトン・ディッキンソン社製)を使用し、Campy Pouch(ベクトン・ディッキンソン社製)を用いた微好気培養を72時間行なった。また、魚病菌であるP. piscicida, L. garvieae, V. anguillarum, S.iniae NIRA-2, A. hydrophilaは培養温度が25℃で48時間培養とし、前4菌種についてはNaClを培地に2.5%添加したものを用いた。A. salmonicidaは普通寒天培地を用いて18℃、48時間培養で行った。さらに、レジオネラ菌の培養においてはBCYE寒天培地(ベクトン・ディッキンソン社製)を用いて37℃で炭酸ガス培養4日間で行った。また、白鮮菌ではサブロー培地による37℃、3日間培養で行った。またヘリコバクター・ピロリ菌についてはブルセラブイヨン培地中での反応後、ABHK培地(日水製薬製)を用いて37℃での微好気培養5日間で行った。メタノール(培地中での最終濃度は1.4%)は菌の発育に影響を与えなかった。
【0016】実施例3:粗フロロタンニンの殺菌作用病原菌32種58株に対する粗フロロタンニンの殺菌作用を表1に示す。表1から明らかなように粗フロロタンニンは試験に用いた全菌株に対して殺菌作用を示した。供試した菌は食中毒菌、日和見感染症菌、動物魚類由来病原菌をはじめ公衆衛生や健康生活上問題となっている病害菌等である。その結果、粗フロロタンニンは我々の生活環境を脅かす病害菌に対して広く殺菌活性を有していることが示された。サルモネラや腸炎ビブリオ、キャンピロバクター、セレウス菌などの食中毒菌に対して、菌種、菌株によって感受性の程度に相違はあるものの、天然抽出物としてはかなり強い殺菌作用を有した。耐性菌として問題のMRSAにも強い殺菌活性を有した。また、各種日和見感染症起因菌や公衆衛生上問題となっているレジオネラ菌、さらに消化器系潰瘍や胃癌との関連性が指摘されているヘリコバクター・ピロリ菌、肝臓病の患者に対して致死率の高いビブリオ・バルニフィカスおよび皮膚病起因菌の白癬菌などにも強い殺菌作用が認められた。このような殺菌効果は人以外の生物(動物、魚介類等)に対する病害菌に対しても同様であった。
【0017】表1【表1】

【0018】表1(続き)【表2】

【0019】実施例4:単離フロロタンニンの殺菌作用5種の単離フロロタンニン(フロログルシノール、エコール、フロロフコフロエコールA、ダイエコール、および8,8'-バイエコール)、および茶葉に含まれるタンニンの一種であるカテキンおよびEGCGについて、5標準株および2臨床分離株に対するMBCを測定した(表2)。その結果、フロロタンニン類のうち、エコール、フロロフコフロエコールA、ダイエコールおよび8,8'-バイエコールの4種は、いずれの菌に対しても強い抗菌活性を示した。また、これら4種のフロロタンニンは、いずれも茶葉に含まれるタンニンであるカテキンおよびEGCGよりも強い抗菌活性を示した。フロロタンニン類の1つであるフロログルシノールは、本試験において使用された菌のうちレジネオラ菌に対してのみ抗菌活性を示した。
【0020】表2【表3】

【0021】次に、各種単離フロロタンニンおよびEGCGの腸炎ビブリオに対する抗菌活性の経時変化について図2に示した。MBCの2倍濃度において、エコール、フロロフコフロエコールA、およびダイエコールは、0.5時間で菌を死滅させ、8, 8'-バイエコールは2時間で死滅させることができたが、EGCGは4時間を経過してもほとんど殺菌効果は観察されなかった。このように粗フロロタンニンの場合と同様、単離フロロタンニンは、腸炎ビブリオを短時間で死滅させることができた。
【0022】実施例5:フロロタンニン類によるマダイ体表の殺菌効果実際に行われている活マダイの蓄養あるいは輸送において、フロロタンニン類の抗菌効果が期待できるか試験を行った。すなわち、活マダイをエアレーション下の腸炎ビブリオ菌液(5×10CFU/ml)に15分間浸漬して菌を付着させた後、0(対照区),25mg/L,50mg/L,および75mg/Lの粗フロロタンニン濃度に調整した海水で24時間飼育した。一定時間毎にマダイを取り出して、滅菌ガーゼで両側の体表を拭き取り、3%NaCl濃度に調整したPBS中で菌を洗い出し、TCBS寒天培地(日水製薬)を用いて腸炎ビブリオの菌数を数えた。その結果、図3に示すように、75mg/L区では、飼育6時間後にマダイ体表面から腸炎ビブリオは検出されず、明らかな菌数の減少が確認された。また50mg/L区でも、飼育12時間後には腸炎ビブリオはほとんど検出されなくなった。以上のように、粗フロロタンニン添加区のその殺菌力は対照区と比べて明らかであった。
【0023】実施例6:フロロタンニン類によるクルマエビ体表の殺菌効果実際に行われている活クルマエビの出荷形態で、フロロタンニン類の抗菌効果が期待できるか試験を行った。すなわち、活クルマエビをエアレーション下のビブリオ・バルニフィカス菌液(3×10CFU/ml)に10分間浸漬して菌を付着させた後、0(対照区),100mg/L,400mg/Lの粗フロロタンニン濃度に調整した海水中にエアレーション下で5分間おいた。その後クルマエビを取り出して、従来行われているようにオガクズとともに箱に詰めて15℃の恒温器に入れた。
【0024】箱詰めから1時間後、1日後、2日後にエビを取り出し、滅菌生理食塩水で湿らせた滅菌ガーゼで体表を拭き取り、3%NaCl濃度に調整したPBS中で菌を洗い出し、TCBS寒天培地(日水製薬)を用いてビブリオ・バルニフィカスの菌数を数えた。その結果、図4に示すように、400mg/L区では、箱詰め1時間後に菌数は対照区の1%以下になっており、明らかな菌数の減少が確認された。箱詰め1日後になると、対照区でも菌数の減少が確認されたが、菌は10CFU/エビ程度残存していた。一方、400mg/L区では菌は全く検出されず、その殺菌力は対照区と比べて明らかであった。
【0025】実施例7:レジオネラ菌に対するフロロタンニン類の抗菌効果(1)
水圏における公衆衛生環境に病害菌の制御、感染症予防策において、フロロタンニン類の抗菌効果が有効であるかについて確認試験を行った。BCYE培地で前培養したレジオネラ菌を用いて、レジオネラ菌に対する本発明の殺菌効果をフロロタンニン混合物(粗フロロタンニン)および単離フロロタンニン(ダイエコール)を用いて、生理的食塩液中での添加後の生菌数の推移により検討した。経時的な生菌数はBCYE培地表面に塗布後4日間培養したものを指標とした。その結果、図5および図6に示すように、フロロタンニン類は単品およびそれらの混合物であっても同様に、6.3ppm濃度では24時間後には1cc当たり約50万個の生菌数がその約1%に、12.5ppmでは約0.02%に減少した。その後も殺菌活性は持続し、96時間後では0.8ppmでも当初の0.1%以下の生菌数であり、対照が依然として数十万個の生菌数レベルに比較して、フロロタンニン添加群は明らかな殺菌効果を長時間に亘って持続した。
【0026】実施例8:レジオネラ菌に対するフロロタンニン類の抗菌効果(2)
フロロタンニンのクーリング水や浴槽水における添加効果をみるために、実際の使用水を用いて、環境水温を15〜40℃域での粗フロロタンニンによるレジオネラ殺菌効果を検討した。レジオネラ菌の調製および生菌数評価のための培養方法は実施例1に準じた。その結果、図6、図7および図8(クーリング水)および図10および図11(浴槽水)に示すように、フロロタンニンの使用濃度当たりの殺菌効果は、環境水温が高い方が早く強く進む傾向があり、それより低温環境でも徐々に殺菌効果が進行した。このようにフロロタンニンの適用により水棲のレジオネラ菌を殺菌し、その効果は持続することが判った。これらの水系では粗フロロタンニンが12.5mg/L程度あればレジオネラ菌の殺菌・制御を容易に行うことができる。このことは、現況のレジオネラ菌対策が高コストで、かつ効力、環境保全に問題を有するのに対して、本発明のフロロタンニン類の適用が画期的な改善策となることを示している。
【0027】実施例9:フロロタンニン類の安全性フロロタンニンを生体に接触もしくは取り込み利用するには様々な形態が考えられる。例えば、飲食物、添加物、化粧品、洗浄除菌剤、消毒剤、医薬、日常生活用品等が考えられるが、先ず、生体における安全性について小動物を用いて試験を行った。ICR系雌雄マウス(4週齢)を用いて飼育用水に添加し、14日間の自由飲水、および経口投与(単回大量投与)して、その後の健康状態を体重の推移により検討した。その結果、図12に示すように、雌雄を問わず、高濃度のフロロタンニン添加水を飲用し続けても、あるいは一時に大量に呑み込んでも、何れの場合も増体重に異常はなかった。また、一般状態においても何ら異常は示さなかった。
【0028】本実施例で体内に取り込まれたフロロタンニン混合物は14日間の飲水投与では、雄1500mg/kg/day,雌1286mg/kg/day、単回投与では168.2mg/kg/day,雌193.7mg/kg/dayに相当し、この摂取量は通常の生活では得られない大量のものであり、生体への実際の応用域において安全性が高いことが示された。このことはフロロタンニン類を、病害菌による健康阻害や、病気に対する予防および治療目的に生体内に取り込むことに支障が少ないことを示すものであり、フロロタンニン類の有効な使用法の一つの態様として、医薬品や飲食品などへの応用が可能であることを示唆するものである。
【0029】実施例10:ビブリオ・バルニフィカス菌に対するフロロタンニン類の感染防御効果ビブリオ・バルニフィカス症は人においては急性の敗血症状を伴う重篤な感染症である。特に夏場において生鮮魚介類や海辺での創傷がもとで感染する例が多く、特に肝臓疾患者において重篤で致命率が高いものとなる。ここでは上記の患者から分離されたビブリオ・バルニフィカス菌によるマウス実験感染症モデルを用いて、フロロタンニン類の感染防御効果を検討した。マウスは5週齢のddy系雄(SPF)を用いた。肝障害を人為的に惹起させるためにD―ガラクトサミン塩酸塩を予め1mg/マウス体重1gを腹腔内投与した。その後1時間以内にビブリオ・バルニフィカス菌の新鮮培養菌(2.5%NaCl加BHIブイヨン培地,37℃、18時間培養)の致死量(2×105CFU)をマウスの腹腔内に投与し、その5分後に粗フロロタンニン(400mg/L)を0.2mlマウスの腹腔内に投与し、その後の経時的な生残率により感染防御効果を検討した。
【0030】その結果、図13に示すように、対照群ではビブリオ・バルニフィカス菌感染後3日目に生残率が20%であるのに対して、フロロタンニン投与群では3日後も80%の高い生残率を示した。このようにフロロタンニン類は肝障害マウスを用いたビブリオ・バルニフィカス菌感染試験において感染防御作用を有することが示された。表1、表2および上記の結果より、フロロタンニン類は、生体内外で病害菌に作用させることで感染防御対策に有用であることが示された。このようにフロロタンニン類は、その安全性の許容範囲の大きさを示した成績(実施例9)も含めて考慮すれば、各種感染症起因菌に対する医薬や種々の病害菌に伴う健康阻害の予防や治療等を目的とした健康食品や保健飲料の素材として、さらに抗菌加工品やサニタイズ用途としても応用することができる。
【0031】
【発明の効果】本発明のフロロタンニン類を主成分とする抗菌剤は、(1)一剤で広い抗菌スペクトルを必要とする分野、(2)特定の菌種を除菌・殺菌を必要とする用途、(3)既存の抗菌剤が効かない、または使えない場合、(4)経済的に大きな効果が得られる場合、(5)環境汚染を重視した対策での使用分野、(6)人・動物に対する安全性を重視した場合の適用分野、(7)抗生物質耐性菌を作らない用途、(8)新規の用途・用法を要する適用分野、(9)持続的効果を期待したい分野などの用途に応じて、目的ごとに本剤を提供し、既存抗菌剤が有する使用上の問題を解決できる極めて有用な天然の抗菌物質を提供することが出来た。本発明の抗菌活性の適用範囲は特に限定されるものではないが、医療・公衆衛生分野、動物生産・養殖分野、環境衛生分野、生活用品、産業資材、食飲料品、飼料、医動物薬、化粧品等の社会活動で抗菌活性を必要とする様々の分野において使用することが出来る。
【出願人】 【識別番号】591202155
【氏名又は名称】熊本県
【識別番号】000173555
【氏名又は名称】財団法人化学及血清療法研究所
【出願日】 平成14年3月25日(2002.3.25)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外3名)
【公開番号】 特開2003−277203(P2003−277203A)
【公開日】 平成15年10月2日(2003.10.2)
【出願番号】 特願2002−83316(P2002−83316)