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【発明の名称】 スライム剥離剤、スライム剥離剤組成物およびスライム剥離方法
【発明者】 【氏名】守田 聡
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿三丁目4番7号 栗田工業株式会社内

【氏名】常木 孝男
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿三丁目4番7号 栗田工業株式会社内

【氏名】永井 直宏
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿三丁目4番7号 栗田工業株式会社内

【要約】 【課題】水系において、スライムの剥離効果に優れ、しかも安全性が高く、かつ低腐食性であるスライム剥離剤およびスライム剥離方法を提供する。

【解決手段】塩素系酸化剤と、スルファミン酸および/またはその塩とを含有するスライム剥離剤を水系に添加し、スライムを剥離する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 塩素系酸化剤と、スルファミン酸および/またはその塩とを含有するスライム剥離剤。
【請求項2】 塩素系酸化剤が次亜塩素酸またはその塩である請求項1記載のスライム剥離剤。
【請求項3】 塩素系酸化剤が次亜塩素酸ナトリウムである請求項1記載のスライム剥離剤。
【請求項4】 塩素系酸化剤の有効塩素と、スルファミン酸および/またはその塩とのモル比が2:1〜1:5である請求項1ないし3のいずれかに記載のスライム剥離剤。
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載のスライム剥離剤を含むスライム剥離剤組成物。
【請求項6】 水系に、請求項1ないし5のいずれかに記載のスライム剥離剤またはスライム剥離剤組成物を添加して、スライムを剥離するスライム剥離方法。
【請求項7】 水系への塩素系酸化剤の添加量が、水系中の有効塩素濃度として0.1〜1000mg/Lである請求項6に記載のスライム剥離方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水系においてスライムを剥離するスライム剥離剤、スライム剥離剤組成物およびスライム剥離方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】各種工場のプラント冷却水系、紙パルプ水系、廃水処理水系、鉄鋼水系、切削油水系などでは、細菌、糸状菌、藻類などから構成されるスライムが系内に発生し、熱効率の低下、通水配管の閉塞、配管金属材質の腐食などのスライム障害を引き起こす原因となる。
【0003】このようなスライム障害を回避する方法として、薬剤を用いる方法が知られている。薬剤としては、付着したスライムを剥離ないし洗浄するスライム剥離剤または洗浄剤、あるいはスライムの付着を防止するスライムコントロール剤または殺菌剤などが使用されている。
【0004】これらの薬剤の中で、スライムコントロール剤または殺菌剤は、水中の微生物濃度を低く保つことにより、スライムの付着ポテンシャルを低減させている。一般的にはスライムコントロール剤は、菌の酵素反応の阻害、細胞膜の変性作用により、殺菌または細菌の増殖を抑制し、一方スライム剥離剤は、主に菌体外の粘着物質(一般的には多糖類)の粘性を低下させることにより、細菌の集合体を分散させ、付着面よりスライムを剥離する。従って、スライムコントロール剤として有効な薬剤であっても、スライム剥離剤としては有効で無いもの、またスライム剥離剤として有効であっても、スライムコントロール剤として有効でない場合がある。
【0005】従来、スライム剥離剤またはスライム洗浄剤としては、ヒドラジンが広く使用されている。しかし、ヒドラジンは有毒で発癌性などの問題があり、安全性の面から代替品の出現が望まれている。また、次亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素などの無機酸化剤についても、スライム剥離効果が認められるものの、スライム剥離効果が認められる濃度で使用すると、配管や熱交換器の金属材質の腐食を引き起こすため、実用上使用は困難である。
【0006】ところで、塩素系酸化剤、スルファミン酸および/またはその塩には水中生物に対する殺菌効果があることを示す報告(特公告41−15116号)は存在するが、スライム剥離効果があることは知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記従来の問題点を解決するため、スライム剥離効果に優れ、しかも安全性が高く、かつ低腐食性のスライム剥離剤およびスライム剥離剤組成物を提供することである。本発明の他の課題は、スライム剥離効果に優れ、しかも安全性が高く、かつ低腐食性のスライム剥離方法を提案することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を達成するために鋭意研究を進めた結果、菌体外の多糖類の粘性を低下させる作用を有し、スライム剥離効果を発揮するスライム剥離剤として、塩素系酸化剤と、スルファミン酸および/またはその塩との併用が、極めて有効であることを見出した。
【0009】すなわち本発明は、以下のスライム剥離剤、スライム剥離剤組成物およびスライム剥離方法である。
(1)塩素系酸化剤と、スルファミン酸および/またはその塩とを含有するスライム剥離剤。
(2)塩素系酸化剤が次亜塩素酸またはその塩である上記(1)記載のスライム剥離剤。
(3)塩素系酸化剤が次亜塩素酸ナトリウムである上記(1)記載のスライム剥離剤。
(4)塩素系酸化剤の有効塩素と、スルファミン酸および/またはその塩とのモル比が2:1〜1:5である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のスライム剥離剤。
(5)上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のスライム剥離剤を含むスライム剥離剤組成物。
(6)水系に、上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のスライム剥離剤またはスライム剥離剤組成物を添加して、スライムを剥離するスライム剥離方法。
(7)水系への塩素系酸化剤の添加量が、水系中の有効塩素濃度として0.1〜1000mg/Lである上記(6)に記載のスライム剥離方法。
【0010】本発明に用いられる塩素系酸化剤は、塩素系の酸化剤であれば特に限定されるものではないが、コスト、取扱性、安全性、水に対する溶解度などの面から、好ましくは次亜塩素酸またはその塩、さらに好ましくは次亜塩素酸ナトリウムである。次亜塩素酸ナトリウムは、工業薬品として一般に流通している12%次亜塩素酸ナトリウムを用いることができる。
【0011】本発明に用いられるスルファミン酸またはその塩は、特に限定されるものではない。例えば、スルファミン酸、スルファミン酸アンモニウム等を用いることができる。スルファミン酸はヒドラジンのように有毒ではなく、安全性が高い。
【0012】本発明のスライム剥離剤において、塩素系酸化剤の有効塩素と、スルファミン酸および/またはその塩の含有割合は、モル比で(塩素系酸化剤の有効塩素):(スルファミン酸および/またはその塩)が2:1〜1:5、好ましくは2:1〜1:2であるのが望ましい。ここで、塩素系酸化剤の有効塩素とはJIS K0101に準拠した残留塩素測定方法によって測定される塩素である。本発明のスライム剥離剤は予め塩素系酸化剤と、スルファミン酸および/またはその塩とを配合して一製剤として調製しておくこともできるし、使用する際に塩素系酸化剤と、スルファミン酸および/またはその塩とを別々に二製剤として添加することもできる。
【0013】本発明のスライム剥離剤組成物は、本発明のスライム剥離剤が配合されており、使用形態に応じて液剤、粒剤、紛剤、その他公知の形態としたスライム剥離剤組成物である。また、一製剤とする場合には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリを配合することにより、より保存安定性の良好なスライム剥離剤組成物とすることができる。さらに必要に応じて、殺生物剤、増殖抑制剤、腐食防止剤、銅用防食剤、スケール防止剤、消泡剤、界面活性剤などを配合することができる。
【0014】本発明のスライム剥離方法は、前記本発明のスライム剥離剤またはスライム剥離剤組成物を水系に添加してスライムを剥離する方法である。スライム剥離剤またはスライム剥離剤組成物は、予め全ての成分を混合したものを、処理対象となる水系に添加してもよいし、別々に水系に添加してもよい。処理対象となる水系としては、スライムが発生する水系であれば特に限定されず、例えば、各種工場のプラント冷却水系、スクラバー、紙パルプ水系、廃水処理水系、排水処理水系、鉄鋼水系、切削油水系などが挙げられ、これらの装置、通水配管などに付着したスライムを剥離することができる。
【0015】水系に使用する場合のスライム剥離剤またはスライム剥離剤組成物の添加量は、有効塩素濃度として0.1〜1000mg/L、好ましくは1〜200mg/Lであるのが望ましい。ここで、有効塩素濃度とはJIS K0101に準拠した残留塩素測定法によって測定される塩素濃度である。有効塩素濃度が前記範囲にある場合、水系のpHが3〜14程度の範囲で十分にスライムの剥離効果がある。
【0016】上記のようにしてスライム剥離処理を行うことにより、スライムを簡単に効率よく剥離することができる。
【0017】
【発明の効果】本発明のスライム剥離剤およびスライム剥離剤組成物は、塩素系酸化剤と、スルファミン酸および/またはその塩とを含有するため、スライム剥離効果に優れ、しかも安全性が高く、かつ低腐食性である。また、本発明のスライム剥離方法は、塩素系酸化剤とスルファミン酸および/またはその塩とを含有するスライム剥離剤またはスライム剥離剤組成物を使用してスライムの剥離を行うため、スライムの剥離効果に優れ、しかも安全性が高く、かつ低腐食性である。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】実施例1スライム剥離剤の剥離効果を検討した。厚木市水をバブリングして得られた脱塩素水1Lに、実際の工場の冷却水系から採取した汚れ成分(菌体)を、1w/w%となるように添加して、スライム懸濁液を作成した。これに、スライム剥離剤(スルファミン酸100gを水500mLに溶解し、それに50%NaOH溶液を100mLを加え、さらに11.6%次亜塩素酸ナトリウム溶液400mLを加えて調製したもの)をJIS K0101に準拠した残留塩素測定法によって測定された有効塩素濃度で20mg/Lとなるように添加して200rpmで5分間処理したものと、何も添加していないスライム懸濁液のみからなるのものを準備した。これらを4日間室温下に放置した後に沈渣を取り出し、電子顕微鏡観察を行った。
【0020】その結果、スライム剥離剤を添加していないものは、沈渣表面に角張った突起物や糸状物質が多数見られたが、スライム剥離剤を添加したものは、表面の突起物も丸みを帯びた状態に変わっており、さらに糸状物質も消失していた。以上のことから、スライム剥離剤はスライム剥離効果および表面改質効果に優れていることが確認された。
【0021】実施例2スライム剥離剤の濃度による剥離効果を検討した。上水5Lにポリペプトン25.2g、酵母エキス25.2g、NaCl12.6g、NaOH3.25gを溶解し、オートクレーブ殺菌(121℃×15分)してPY培地を調製した。このPY培地(5mg−BOD/L)で培養した混合菌培養液を準備した。それを温度30℃で、内径3mmのシリコンチューブに通水速度5.5m/secで通水し、48時間スライムを付着させた。その後、同条件で継続して通水しながら実施例1で調製したスライム剥離剤または過酸化水素(35w/w%)を表1の濃度で24時間連続添加した後、スライムの付着量を求めた。スライム付着量は、シリコンチューブ30cmを切り取った後、内面に付着したスライムを掻きとり、遠心分離して湿容量として求めた。この湿容量を基に、各濃度におけるスライム剥離率を算出した。結果を表1に示す。以上のことから、非常に低濃度においてもスライム剥離効果があることが確認された。
【0022】
【表1】

*1 添加濃度:有効塩素濃度(JIS K0101に準拠した残留塩素測定法によって測定された濃度)または過酸化水素濃度*2 スライム剥離率:薬剤無添加のものに対する剥離の割合【0023】実施例3100冷凍トンの実開放循環冷却水水系を対象として、適用試験を行った。試験は、実施例1で調製したスライム剥離剤を、水系への対ブロー濃度で次亜塩素酸ナトリウムが有効塩素濃度(JIS K0101に準拠した残留塩素測定法によって測定された濃度)として2mg/Lとなるように連続添加して行い、添加する前の1週間と添加後の1週間をモニタリングした。このとき、冷却塔ピットに軟鋼(SPCC)テストピースおよび銅(C1220T)テストピースを浸漬して、スライム剥離剤の添加前と添加後の腐食速度を求めた。また、ポリプロピレン製ラバーテストピースを浸漬して、スライム剥離剤の添加前3日間と添加後3日間のスライム付着量を求めた。
【0024】その結果、添加前1週間の期間は充填材の表面に茶褐色のスライムが付着していたが、スライム剥離材添加1週間後にはほとんどのスライムは剥離して認められなくなった。このとき、軟鋼(SPCC)テストピースおよび銅(C1220T)テストピースの平均腐食速度は、それぞれ5.2mdd(mg/dm2・day)、0.8mddであった。また、ポリプロピレン製ラバーテストピースに付着したスライムの付着量は、スライム剥離剤添加前の21.0mg/dm2から3.1mg/dm2に低下した。以上のことから、スライム剥離剤のスライム剥離効果および低腐食性が確認された。
【0025】実施例4100冷凍トンの実開放循環冷却水水系を対象として、適用試験を行った。試験は、対保有水量当たり、10%スルファミン酸水溶液を300mg/L、工業用次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度12%)を300mg/Lとを別々にバッチ添加して行い、添加する前の1週間と添加後の1週間をモニタリングした。このとき、冷却塔ピットに軟鋼(SPCC)テストピースおよび銅(C1220T)テストピースを浸漬して、スライム剥離剤の添加前と添加後の腐食速度を求めた。また、ポリプロピレン製ラバーテストピースを浸漬して、スライム剥離剤の添加前3日間と添加後3日間のスライム付着量を求めた。
【0026】その結果、添加前1週間の期間は充填材の表面に茶褐色のスライムが付着していたが、スライム剥離材添加1週間後にはほとんどのスライムは剥離して認められなくなった。このとき、軟鋼(SPCC)テストピースおよび銅(C1220T)テストピースの平均腐食速度は、それぞれ6.6mdd(mg/dm2・day)、0.7mddであった。また、ポリプロピレン製ラバーテストピースに付着したスライムの付着量は、スライム剥離剤添加前の16.9mg/dm2から2.2mg/dm2に低下した。以上のことから、スライム剥離剤のスライム剥離効果および低腐食性が確認された。
【出願人】 【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿3丁目4番7号
【出願日】 平成14年3月14日(2002.3.14)
【代理人】 【識別番号】100067839
【弁理士】
【氏名又は名称】柳原 成
【公開番号】 特開2003−267811(P2003−267811A)
【公開日】 平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願番号】 特願2002−70735(P2002−70735)