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【発明の名称】 イネ種子伝染性病害防除剤組成物およびイネ種子伝染性病害の防除方法
【発明者】 【氏名】前田 光紀
【住所又は居所】静岡県榛原郡榛原町坂部62−1 日本曹達株式会社小田原研究所榛原研究部内

【要約】 【課題】合成殺菌剤に対する耐性菌にも優れた防除効果を有し、効力にばらつきが少なく、かつ広い病害に対し高い効果を有するイネ種子伝染性病害の防除剤組成物及び防除方法を提供する。

【解決手段】イネに対して実質的に病原性を有しないフザリウム属に属する微生物の少なくとも1種とイネに対して実質的に病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物の少なくとも1種とを含有してなるイネ種子伝染性病害防除剤組成物および防除方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】イネに対して実質的に病原性を有しないフザリウム属に属する微生物の少なくとも1種とイネに対して実質的に病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物の少なくとも1種とを含有してなるイネ種子伝染性病害防除剤組成物。
【請求項2】更に0.1〜50重量%の無機塩を含有してなる請求項1記載のイネ種子伝染性病害防除剤組成物。
【請求項3】前記無機塩は、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載のイネ種子伝染性病害防除剤組成物。
【請求項4】前記イネに対して実質的に病原性を有しないフザリウム属に属する微生物は、フザリウム モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)、フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム ソラニ(Fusarium solani)、フザリウム アクミナタム(Fusarium acuminatum)、フザリウム アベナセアム(Fusarium avenaceum)、フザリウム カルモラム(Fusarium culmorum)、フザリウム グラミネアラム(Fusarium graminearum)及びフザリウムニバーレ(Fusarium nivale、別名Micronectriella nivalis)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1、2又は3記載のイネ種子伝染性病害防除剤組成物。
【請求項5】前記イネに対して実質的に病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物は、シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)CAB−02、シュードモナス オーレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens)、シュードモナス グラディオリ(Pseudomonas gladioli)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれかに記載のイネ種子伝染性病害防除剤組成物。
【請求項6】イネに対して実質的に病原性を有しないフザリウム属に属する微生物が、フザリウム モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)FERM P−18726であり、イネに対して実質的に病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物がシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)CAB−02である請求項1乃至5のいずれかに記載のイネ種子伝染性病害防除剤組成物。
【請求項7】イネに対して実質的に病原性を有しないフザリウム属に属する微生物の少なくとも1種とイネに対して実質的に病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物の少なくとも1種とを混用することを特徴とするイネ種子伝染性病害の防除方法。
【請求項8】イネに対して実質的に病原性を有しないフザリウム属に属する微生物の少なくとも1種を含有する製剤組成物とイネに対して実質的に病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物の少なくとも1種を含有する製剤組成物とを混用することを特徴とする請求項7記載のイネ種子伝染性病害の防除方法。
【請求項9】前記微生物製剤組成物の合計量に対して、0.1〜50重量%の無機塩をさらに混用する請求項8記載のイネ種子伝染性病害の防除方法。
【請求項10】前記無機塩は、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種である請求項8または9記載のイネ種子伝染性病害防除剤組成物。
【請求項11】前記イネに対して実質的に病原性を有しないフザリウム属に属する微生物は、フザリウム モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)、フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム ソラニ(Fusariumsolani)、フザリウム アクミナタム(Fusarium acuminatum)、フザリウムアベナセアム(Fusarium avenaceum)、フザリウム カルモラム(Fusarium culmorum)、フザリウム グラミネアラム(Fusarium graminearum)及びフザリウム ニバーレ(Fusarium nivale、別名Micronectriella nivalis)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7〜10のいずれかに記載のイネ種子伝染性病害の防除方法。
【請求項12】前記イネに対して実質的に病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物は、シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)CAB-02、シュードモナス オーレオファシエンス(pseudomonas aureofaciens)、シュードモナス グラディオリ(Pseudomonas gladioli)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7〜11のいずれかに記載のイネ種子伝染性病害の防除方法。
【請求項13】イネに対して実質的に病原性を有しないフザリウム属に属する微生物が、フザリウム モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)FERM P−18726であり、イネに対して実質的に病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物がシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)CAB−02である請求項7乃至12のいずれかに記載のイネ種子伝染性病害の防除方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イネに対して実質的に病原性を有しないフザリウム属に属する微生物とイネに対して実質的に病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物とを含有してなるイネ種子伝染性病害の防除剤組成物、及び前記両属の微生物を混用することを特徴とするイネ種子伝染性病害の防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、イネばか苗病、イネ苗いもち病及びイネごま葉枯病等の糸状菌病に対しては、トリフルミゾール、プロクロラズ及びプフラゾエート等のDMI剤が一般的に使用されている。また、イネもみ枯細菌病、イネ苗立枯細菌病及びイネ褐条病等の細菌病に対しては、オキソリニック酸等が一般的に使用されている。しかしながら、DMI剤全般に対する低感受性イネばか苗病菌や、オキソリニック酸に対して耐性のあるイネもみ枯細菌病菌等が出現し問題となっている。
【0003】一方、合成殺菌剤による防除に代わるべき、あるいは併用すべき手段として、環境汚染が極めて少なく、生態系に調和し、かつ防除効果の優れたものとして生物農薬が知られている。例えば、特開平5−65209号公報及び特開平11−89562号公報には、イネに対して実質的に病原性を有しないフザリウム属に属する微生物製剤が記載されている。また、特開平9−124427号公報および特開平9−255513号公報,特開平11−276166号公報,特開平11−302120号公報等には、イネに対して実質的に病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物および製剤方法ならびに防除方法が記載されている。しかしながら、これらの微生物製剤を用いてイネ種子を処理すると、効力にばらつきが見られ、実用上安定した高い効果が得られなかったり、防除できるイネ種子病害に偏りがあったりした。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる実状に鑑みてなされたものであり、DMI剤やオキソリニック酸等の合成殺菌剤に対する耐性菌にも優れた防除効果を有し、効力にばらつきが少なく、かつ広い病害に対し高い効果を有するイネ種子伝染性病害の防除剤組成物及び防除方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、イネに対して実質的に病原性を有しないフザリウム属に属する微生物(以下、「非病原性フザリウム属菌」という。)とイネに対して実質的に病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物(以下、「非病原性シュードモナス属菌」という。)とを混合して用いることにより、両者の持つ欠点を補い、効力にばらつきが小さく、かつ高く広い防除効果が得られることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0006】すなわち、本発明は第1に、非病原性フザリウム属菌の少なくとも1種と非病原性シュードモナス属菌の少なくとも1種とを含有してなるイネ種子伝染性病害防除剤組成物を提供する。
【0007】前記イネ種子伝染性病害防除剤組成物は、さらに0.1〜50重量%の無機塩を含有してなるのが好ましい。
【0008】本発明は第2に、非病原性フザリウム属菌の少なくとも1種と非病原性シュードモナス属菌とを混用することを特徴とするイネ種子伝染性病害の防除方法を提供する。
【0009】前記混用する際においては、前記微生物製剤組成物に対して、0.1〜50重量%の無機塩をさらに混用するのが好ましい。
【0010】前記第1及び第2の発明において、非病原性フザリウム属菌としては、フザリウム モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)、フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム ソラニ(Fusarium solani)、フザリウム アクミナタム(Fusarium acuminatum)、フザリウム アベナセアム(Fusarium avenaceum)、フザリウム カルモラム(Fusariumculmorum)、フザリウムグラミネアラム(Fusarium graminearum)及びフザリウム ニバーレ(Fusarium nivale、別名Micronectriella nivalis)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、非病原性シュードモナス属菌としては、シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)CAB−02、シュードモナス オーレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens)、シュードモナス グラディオリ(Pseudomonas gladioli)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について詳細に説明する。本発明は、非病原性フザリウム属菌と非病原性シュードモナス属菌とを含有してなるイネ種子伝染性病害防除剤組成物、及び非病原性フザリウム属菌と非病原性シュードモナス属菌とを混用することを特徴とするイネ種子伝染性病害の防除方法である。なお、本発明において、「混用」とは、各成分を同時に用いることを意味し、各成分の添加順序、添加方式等に特に制限はない。
【0012】本発明に用いられる非病原性フザリウム属菌としては、自然界から分離されるイネに対し実質的に病原性を有しないフザリウム属菌であれば特に限定されるものではないが、フザリウム モニリフォルメ、フザリウム オキシスポラム、フザリウム ソラニ、フザリウム アクミナタム、フザリウム アベナセアム、フザリウム カルモラム、フザリウム グラミネアラム及びフザリウム ニバーレからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、中でもフザリウム モニリフォルメ(FERM P−18726)が特に好ましい。
【0013】また、非病原性シュードモナス属菌としては、イネに対し病原性がなく、イネの細菌病防除効果を有する菌であれば特に限定されないが、シュードモナス エスピー CAB−02、シュードモナス オーレオファシエンス、シュードモナス グラディオリからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。本発明において特に好適に用いることのできる菌としては、シュードモナスエスピー(Pseudomonas sp.)CAB−02菌であり、非病原性シュードモナス属微生物製剤としては、モミゲンキ水和剤を例示することができる。本発明においては、これらの微生物および微生物製剤を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】これらの微生物は、液体培養等の公知の手段で増殖させたものを用いることができ、菌体が増殖するのであれば、特に培地の種類や培養条件等に制限されることはない。また、本発明においては、菌体自体の他、その懸濁液乃至培養液又はその処理物としての濃縮物、ペースト状物、乾燥物、希釈物等の形で用いることもできる。
【0015】本発明の組成物中の菌の濃度は、イネ種子への処理方法により異なるが、本発明の組成物を施用したとき、病害を防除するに十分な濃度となる量を目安とし、通常、例えば100倍に希釈した場合に、非病原性フザリウム属菌は分生胞子濃度に換算して、1×104〜1×1010cfu/ml、好ましくは1×105〜1×108cfu/mlとなる重量部、非病原性シュードモナス属菌は菌体濃度に換算して、1×103〜1×1010cfu/ml、好ましくは1×104〜1×108cfu/mlである。
【0016】本発明のイネ種子伝染性病害防除剤組成物は、上記非病原性フザリウム属菌の少なくとも1種と上記非病原性シュードモナス属菌の少なくとも1種とを所定割合で混合することにより製造することができる。
【0017】本発明のイネ種子伝染性病害防除剤組成物は、通常の農薬のとりうる形態、例えば、粉剤、水和剤、乳剤、フロアブル剤、粒剤等の形態に製剤化することができる。かかる製剤は、通常、担体、界面活性剤、分散剤、補助剤等を配合して常法により製造することができる。
【0018】前記担体としては、例えば、珪藻土、クレー、タルク、ベントナイト、ホワイトカーボン、カオリン、バーミキュライト、消石灰、珪砂、硫安、尿素等の固体担体が挙げられる。界面活性剤及び分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸の共重合体等が挙げられる。また、補助剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、澱粉、乳糖等が挙げられる。
【0019】乳剤は、例えば、凍結乾燥した非病原性フザリウム属菌胞子もしくは固体培地上で培養し、採取・乾燥した非病原性フザリウム分生胞子を界面活性剤を含有する有機溶剤中に混入させた懸濁液を調製することにより得ることができる。
【0020】かかる界面活性剤としては、菌胞子の発芽・生長を阻害しない性状のものであれば特に制限はない。その具体例としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等が挙げられるが、これらは1種単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。また、有機溶剤としては、例えば、大豆油、ナタネ油、ひまし油、綿実油、パーム油、サフラワー油等の植物油;スピンドル油、ヘビーホワイトオイル、ライトホワイトオイル、ミネラルスピリット、ミネラルターペン、ナフテン油、パラフィン油、農薬用マシン油等の鉱物油;シリコーンオイル等が挙げられる。これらは1種単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0021】非病原性フザリウム属菌等の微生物においては、周囲のpH値は微生物の生命活動に影響を与え、微生物の最も盛んに活動するいわゆる最適pH値が存在する。最適pH値は、非病原性フザリウム属菌の種類によって異なる。本発明の組成物においては、病害を効果的に防除すべく、非病原性フザリウム属菌の活動を活性化させるpH値となるようにするのが好ましい。
【0022】かかるpH値とする方法としては、組成物に無機塩を添加するのが好ましい。無機塩としては、例えば、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のリン酸塩;リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸ニ水素ナトリウム、リン酸ニ水素カリウム等リン酸水素塩;塩化カリウム、塩化ナトリウム等の塩化物;等が挙げられる。無機塩の最適な添加量は非病原性フザリウム属菌の種類に依存するが、前記組成物中に、通常0.1〜50重量%含有させるのが望ましい。
【0023】非病原性シュードモナス属菌の製剤方法としては、糖類とpH緩衝剤とを混合し、真空凍結乾燥もしくは真空乾燥することが長期間にわたって安定に保存することができる点から望ましい。
【0024】かかる糖類としては、例えば、サッカロース、フルクトース、グルコース、ソルビトール等が挙げられる。これらは1種単独あるいは2種以上を混合して用いてもよい。糖類の濃度としては、混合後の糖濃度が5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%となるように添加するのが望ましい。
【0025】pH緩衝剤としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどの弱酸性から弱アルカリ性付近のpHを維持するものであれば、いかなるものを使用してもかまわない。pH緩衝剤の濃度としては、0〜500mM、好ましくは50〜200mMとするのが望ましい。
【0026】得られるイネ種子伝染性病害防除剤組成物は、イネ種子に粉衣させる方法、浸漬させる方法、又は播種時あるいは発芽時に土壌、特に育苗土壌に処理する方法等により、イネ種子伝染性病害を効果的に防除することができる。
【0027】イネ種子に浸漬する場合には、本発明の組成物を適当量の水等で希釈して用いる。通常、非病原性フザリウム属菌の分生胞子濃度に換算して、通常1×103〜1×1010cfu/ml、好ましくは1×104〜1×108cfu/mlの範囲となるよう希釈する。
【0028】次に、本発明のイネ種子伝染性病害の防除方法について説明する。本発明の防除方法は、イネに対して病原性を有しないフザリウム属に属する微生物の少なくとも1種とイネに対して病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物とを混用することを特徴とする。
【0029】混用する方法としては、非病原性フザリウム属菌及び非病原性シュードモナスを混合することができる方法であれば特に制限はない。例えば、■非病原性フザリウム属菌と非病原性シュードモナス属菌とを含有する組成物を用いる方法、■非病原性フザリウム属菌(又は非病原性フザリウム属菌を含有する組成物)と非病原性シュードモナス属菌(又は非病原性シュードモナス属菌を含有する組成物)とを使用時に混合する方法等が挙げられる。■の方法においては、前述した本発明のイネ種子伝染性病害防除剤組成物を用いることができる。
【0030】用いられる非病原性フザリウム属菌及びその使用形態としては、前記本発明の組成物の説明で列記したものと同様なものを用いることができる。また、非病原性フザリウム属菌の濃度には特に制限はないが、非病原性フザリウム属菌の分生胞子濃度に換算して、通常1×104〜1×1010cfu/ml、好ましくは1×105〜1×108cfu/mlの範囲である。
【0031】用いられる非病原性シュードモナス属菌及びその使用形態としては、前記本発明の組成物の説明で列記したものと同様なものを用いることができる。また、非病原性シュードモナス属菌の濃度には特に制限はないが、非病原性シュードモナス属菌の菌体濃度に換算して、通常1×103〜1×1010cfu/ml、好ましくは1×104〜1×108cfu/mlの範囲である。
【0032】また、本発明においては、混用時のpH値を一定に維持し、安定した高い防除効果を得る観点から、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩をさらに混用するのが好ましい。
【0033】無機塩の添加の形式としては、例えば、■非病原性フザリウム属菌及び非病原性シュードモナス属菌を含有する組成物にさらに無機塩を含有させる方法、■非病原性フザリウム属菌及び無機塩を含有する組成物と、非病原性シュードモナス属菌(又は非病原性シュードモナス属菌を含有する組成物)とを使用時に混合する方法、■非病原性フザリウム属菌(又は非病原性フザリウム属菌を含有する組成物)に、非病原性シュードモナス属菌(又は非病原性シュードモナス属菌を含有する組成物)と無機塩を含有する組成物を使用時に混合する方法、■非病原性フザリウム属菌(又は非病原性フザリウム属菌を含有する組成物)、非病原性シュードモナス属菌(又は非病原性シュードモナス属菌を含有する組成物)及び無機塩を使用時に混合する方法等が挙げられる。■の方法においては、前述した本発明のイネ種子伝染性病害防除剤組成物を用いることができる。
【0034】無機塩の使用量は、混用する非病原性フザリウム属菌、非病原性シュードモナス属菌を含有する組成物の合計に対して、0.1〜50重量%になる量が好ましい。
【0035】本発明のイネ種子伝染性病害防除方法は、非病原性フザリウム属菌、非病原性シュードモナス属菌、所望により無機塩を含有する混合物をイネ種子に粉衣させる方法、非病原性フザリウム属菌、非病原性シュードモナス属菌、所望にとり無機塩を含有する混合物の溶液にイネ種子を浸漬させる方法、又はイネ種子の播種時あるいはイネの発芽時に、非病原性フザリウム属菌、非病原性シュードモナス属菌、所望により無機塩を含有する混合物を土壌、特に育苗土壌に処理する方法等により、イネ種子伝染性病害を効果的に防除することができる。
【0036】本発明のイネ種子伝染性病害防除剤組成物及びイネ種子伝染性病害の防除方法は、種々のイネ種子伝染性病害の防除に有効であるが、特に、イネもみ枯細菌病、イネ苗立枯細菌病、イネ褐条病等の細菌性病や、イネばか苗病、イネごま葉枯病、イネ苗いもち病等の病害に対して好適に用いることができる。
【0037】
【実施例】次に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、非病原性フザリウム属菌や非病原性シュードモナス属菌の種類、製剤の組成割合、剤型等を自由に変更することができる。また、以下の実施例では、非病原性フザリウム属菌としてフザリウム モニリフォルメ FARM P−18726を、非病原性シュードモナス属菌としてシュードモナス エスピー CAB02(モミゲンキ水和剤)を用いた。
【0038】イネ種子伝染性病害防除剤組成物の製造実施例1フザリウム モニリフォルメ FARM P−18726菌培養液(1×108cfu/ml)10mlの胞子ペレットとゼオライト1gを均一に混合した。得られた非病原性フザリウム属菌製剤1gとモミゲンキ水和剤1gを均一に混合して目的とする組成物を得た。本組成物中に、非病原性フザリウム属菌は5×107cfu/ml、非病原性シュードモナス属菌は 0.5×1010cfu/ml含まれていた。
実施例2モミゲンキ水和剤の添加量を10mgとするほかは実施例1と同様にして目的とする組成物を得た。
実施例3モミゲンキ水和剤の添加量を0.1mgとするほかは実施例1と同様にして目的とする組成物を得た。
実施例4非病原性フザリウム属菌培養液(1×108cfu/ml)10mlの胞子ペレットとゼオライト0.5gを均一に混合したのち、炭酸水素カリウム0.5gを均一に混合した。得られた非病原性フザリウム属菌製剤1gとモミゲンキ水和剤1gを均一に混合して目的とする組成物を得た。
【0039】
【発明の効果】A)イネ苗立枯細菌病防除剤組成物の防除効果試験(1)イネ苗立枯細菌病罹病もみの調製イネ苗立枯細菌病であるバークホルデリア プランタリー(Burkholderia plantarii)を標準寒天培地(酵母エキス0.25%、ペプトン0.5%、グルコース0.1%)で25℃、3日間の条件で培養し、生育してきたバークホルデリアプランタリーを滅菌水に懸濁した。該細菌懸濁液中の生菌数は、2.2×109cfu/mlであった。次いで、その細菌懸濁液中に25℃、24時間の条件でイネ種子(品種名:日本晴)を浸漬、接種した。その後風乾し、以下の試験に用いた。
【0040】(2)処理液の調製フザリウム モニリフォルメ FERM P−18726をポテトデキストロース液体培地(グルコース1%)に植菌し、25℃、7日間の条件で振盪培養した。その培養液を2重のガーゼで濾過し、分生胞子懸濁液を得た。その分生胞子懸濁液の生菌数は、2.0×107cfu/mlであった。この分生胞子懸濁液を水道水で2倍に希釈して処理液とした。別にモミゲンキ水和剤(1.0×1010cfu/g)を水道水で適宜希釈し、1.0×106cfu/mlおよび1.0×104cfu/mlを含有する処理液とした。実施例2および3で得られた組成物を水道水で50倍に希釈して処理液を調製した。
【0041】(3)薬剤処理方法(2)で調製した処理液に20℃で24時間前記罹病もみを浸漬した。なお、比較例(無処理)として、前記罹病もみを水道水に浸漬し、以下試験区と同様に処理した。
【0042】(4)イネの育苗積算温度100℃を目安に浸種したあと、30℃で1日間催芽処理を行なった。その後、170×120×35mmの育苗箱に粒状培土を用い、播種した。その後、出芽処理を30℃で2日間行なった後、温室内で育苗した。
【0043】(5)調査方法イネの苗が1〜2葉期になった時点で、下記の基準でイネ苗立枯細菌病の発病度を調査した。結果を第1表に示した。発病度を下記計算式で求め、以下の調査基準で評価を行った。
【0044】
調査基準 A:1〜2葉期で枯死苗 B:第2葉の異常抽出および重度白化苗 C:葉柄に褐変および軽度白化苗 D:健全苗発病度={(5×nA+3×nB+1×nC)/(5×調査苗数)}×100【0045】
【表1】

【0046】*:(コルビーの式) E=x+y− x×y/100 Eは、有効物質A及びBを濃度m及びnで使用した場合、無処理(対照)に対して、期待されるべき有効度(防除価)を%で表したものである。xは、有効成分Aを濃度mで使用した場合、期待されるべき有効度(防除価)を%で表したものである。また、yは、有効成分Bを濃度nで使用した場合、期待されるべき有効度(防除価)を%で表したものである。
【0047】第1表から明らかなように、フザリウム モニリフォルメ FERM P−18726)とシュードモナス エスピーCAB−02を混合使用したもののイネ苗立枯細菌病に対する防除結果はそれぞれの単剤使用の場合より高い防除価を示し、相乗効果が見られた。
【0048】b)イネばか苗病防除剤組成物の防除効果試験(1)イネばか苗病罹病もみの調製本田で栽培したイネの開花期にイネばか苗病菌(フザリウム モニリフォルメ)の胞子懸濁液を散布し、自然感染させた罹病籾を使用した。
【0049】(2)薬剤処理方法前記イネ苗立枯細菌病防除効果試験のときと同様にして各処理液を調製した。その処理液に20℃で24時間前記罹病もみを浸漬した。なお、比較例(無処理)として、前記罹病もみを水道水に浸漬し、以下試験区と同様に処理した。
【0050】(3)イネの育苗積算温度100℃を目安に浸種したあと、30℃で1日間催芽処理を行なった。その後、170×120×35mmの育苗箱に粒状培土を用い、播種した。その後、出芽処理を30℃で2日間行なった後、温室内で育苗した。
【0051】(4)調査方法イネの苗が2〜3葉期になった時点で、下記の基準でイネばか苗病の発病苗率を調査した。結果を第2表に示した。発病苗率は下記計算式で求めた。発病苗率=徒長苗数/(徒長苗数+健全苗数)×100【0052】
【表2】

【0053】第2表から明らかなように、フザリウム モニリフォルメ(FERM P−18726)とシュードモナス エスピー CAB−02 を混合使用した時のイネばか苗病に対する防除結果は、それぞれの単剤使用の場合より高い防除価を示し、相乗効果が見られた。
【0054】以上説明したように、本発明によれば、イネに対して病原性を有しないフザリウム属に属する微生物とイネに対して病原性を有しないシュードモナス属に属する微生物とを混用することにより、両者の持つ欠点を補い、効力にばらつきがなく、かつ高い効果が得られるイネ種子伝染性病害の防除剤組成物及び防除方法が提供される。
【出願人】 【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目2番1号
【出願日】 平成14年3月5日(2002.3.5)
【代理人】 【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
【公開番号】 特開2003−252715(P2003−252715A)
【公開日】 平成15年9月10日(2003.9.10)
【出願番号】 特願2002−58194(P2002−58194)