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【発明の名称】 浴液用薬剤
【発明者】 【氏名】野浪 亨

【氏名】藤井 明

【氏名】松田 和也

【要約】 【課題】浴液中のレジオネラ属菌や大腸菌等の細菌に対して殺菌(抗菌)作用を発揮し、さらに浴液中の有機物等の汚れを分解除去(殺菌)し、浴液の清澄作用が期待できる浴液用薬剤を提供すること。

【解決手段】二酸化チタン系光触媒を含有する入浴剤等に好適な浴液用薬剤。二酸化チタン系光触媒とともに無機過酸化物を含有する。無機過酸化物は酸化チタン系光触媒を一時的に可視光化する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 二酸化チタン系光触媒を含有する浴液用薬剤であって、前記二酸化チタン系光触媒とともに無機過酸化物を含有することを特徴とする浴液用薬剤。
【請求項2】 前記ニ酸化チタン系光触媒を構成する二酸化チタン粒子がルチル系であることを特徴とする請求項1記載の浴液用薬剤。
【請求項3】 前記二酸化チタン系光触媒が二酸化チタンの粒子に多孔質りん酸カルシウムを結合(担持)させた複合酸化チタン粒子を主体とするものであることを特徴とする請求項1記載の浴液用薬剤。
【請求項4】 前記無機過酸化物が水難溶性であることを特徴とする請求項1記載の浴液用薬剤。
【請求項5】 さらに、浴液特性調節剤として、全体として浴液が塩基性を呈する無機塩類を含有することを特徴とする請求項1記載の浴液用薬剤。
【請求項6】 さらに、浴液特性調節剤として、キレート剤を含有し、必要によりpH調節剤としての酸を含有することを特徴とする請求項1記載の浴液用薬剤。
【請求項7】 前記、キレート剤がけい酸塩、りん酸塩、りん酸及びくえん酸の群から選択される1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項6記載の浴液用薬剤。
【請求項8】 さらに、塩素系除菌剤を含有することを特徴とする請求項1記載の浴液用薬剤。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれかに記載の浴液用薬剤を投入して使用する浴液の水質循環路において、前記光触媒粒体を活性化させる光照射器を配することを特徴とする浴液循環システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、入浴剤、浴液浄化剤、さらには浴液配管洗浄剤等として好適な浴液用薬剤に関する。より詳しくは、浴液の除菌、悪臭の除去、有機物の分解除去、さらには配管内生物膜除去等を行うことのできる浴液用薬剤に係る発明である。
【0002】
【背景技術】浴液の除菌(抗菌)方法としては、例えば、下記各種方法があり、それぞれが下記の短所、長所を有している。
【0003】■塩素消毒による除菌…安価で除菌効果が確実であるが、塩素臭が不快である。また、アトピー性皮膚炎の人の皮膚を刺激し、機器・配管の腐食を促進する。さらにトリハロメタン(発がん性物質)発生の可能性も指摘されている。
【0004】■紫外線照射…除菌効果は強力であるが、コストが高い。また、紫外線照射部位のみの局所的効果はあるが、残留効果(持続性)はない。
【0005】■オゾン除菌…除菌効果は強力であるが、紫外線照射と同様、コストが高い。また、局所的効果で残留効果(持続性)はない。さらに機器・配管の腐食を促進する。
【0006】■銀・銅イオン除菌…残留効果(持続性)があるが、水質により除菌効果の発現にむらがある。また、長期にわたる安全性データがない。
【0007】■各種抗菌剤による抗菌…例えばけい酸アルミニウムマグネシウム(特開2000−247893)、ヒノキチオール(特開平11−222455号)、カテキン(特開平11−43696号)、キトサン(特開平10−158305号)等の各種抗菌剤が知られているが、抗菌作用が不十分である。また、有機物分解効果はなく、湯の清澄効果も弱い。
【0008】
【発明の開示】本発明は、従来の除菌(抗菌)方法の短所を補うべく、入浴剤等の浴液薬剤自身に除菌力を付与することを目的とする。すなわち、浴液中のレジオネラ属菌や大腸菌等の細菌に対して除菌(抗菌)作用を発揮し、さらに浴液中の有機物等の汚れを分解除去し、浴液の清澄作用が期待できる浴液用薬剤を提供することを目的とする。
【0009】本発明の浴液用薬剤は、下記構成により上記目的を達成するものである。
【0010】二酸化チタン系光触媒を含有する浴液用薬剤であって、二酸化チタン系光触媒とともに無機過酸化物を含有することを特徴とする。
【0011】本発明者らは、二酸化チタン系光触媒を無機過酸化物と併用することにより、光触媒の紫外光活性を維持しながら可視光活性が可能であることを見出した。したがって、浴用薬剤として使用する場合、二酸化チタンの活性化に必要な紫外光源を常時照射しなくても、可視光でも二酸化チタンは活性化するため、常時、光触媒作用による除菌(抗菌)作用を発揮し、また、浴液中の有機物等の汚れを分解除去し、浴液の清澄作用が期待できる。さらに、無機過酸化物自体による除菌作用及び有機物分解作用・清澄作用(酸化作用による)も期待できる。
【0012】光触媒活性を維持できる理由は、下記の如くである。
【0013】二酸化チタンと過酸化物とが浴液中で反応して二酸化チタン表面の酸素を還元することにより二酸化チタンに酸素欠陥が一時的に形成される。この酸素欠陥により可視光で活性化(二酸化チタンの可視光化)が一時的に可能となる。この可視光化は一時的であり、生成した酸素欠陥はすぐに水中の酸素と結合して元へ戻り、紫外線(紫外光)で活性化可能な状態に戻るが、またすぐに過酸化物と二酸化チタンが反応して酸素欠陥を生じて可視光化される。すなわち、二酸化チタンは、無機過酸化物と接触していることにより酸素欠陥の発生/消失を繰り返し移動することにより、二酸化チタン粉体全体として可視光と紫外光の双方で活性となる。このため、全体として触媒活性が高い状態に維持される。
【0014】なお、従来の可視光活性触媒は、例えば、酸素を窒素で置換して可視光活性部(酸素欠陥)を永久的に作ってしまうため、同時に紫外光活性部が永久的に消失してしまい、紫外光活性が消失してしまうため、触媒活性が低下する。
【0015】上記構成において、二酸化チタン系光触媒を構成する二酸化チタン粒子はルチル型とすることが望ましい。ルチル型はアナターゼ型に比して可視光側での活性が高いためである。
【0016】また、二酸化チタン系光触媒は、二酸化チタンの粒子に多孔質りん酸カルシウムを結合(担持)させた複合酸化チタン粒子を主体とするものを使用することが望ましい。本発明の浴液用薬剤における前記除菌(抗菌)作用、有機物分解作用、浴液清澄作用をより確実に奏することできる。
【0017】りん酸カルシウムを被覆した複合酸化チタン粒子は過酸化物と接触したとき前述の酸素欠陥の発生/消失が理想的に制御される。
【0018】また、複合酸化チタン粒子は、雑菌吸着作用があるため光の存在に関係なく浄化効果をより期待できるとともに、入浴剤として使用した場合において身体に直接付着した場合の刺激低減作用がある。
【0019】上記無機過酸化物粉体として水難溶性のものを使用することが望ましい。無機過酸化物が水と接触したとき少しずつ溶解するため過酸化物と二酸化チタンとの反応が急激に進まず上記可視光化の作用が持続する、すなわち、本発明の上記作用が持続する。
【0020】上記浴液用薬剤には、さらに、浴液特性調節剤として、全体として浴液が塩基性を呈する無機塩類を含有させることが望ましい。入浴剤として、浴液に投入したとき、浴液をアルカリ側に調節し易く、入浴時の温泉感覚を楽しむことができる。
【0021】前記各構成の浴液用薬剤を浴液浄化用薬剤として使用する場合は、さらに、浴液特性調節剤として、キレート剤を含有させることが望ましく、通常、けい酸塩、りん酸塩、りん酸及びくえん酸の群から1種又は2種以上を含有させる。
【0022】キレート剤はキレート効果により、Ca、Mg等をキレート化することにより洗浄効果を促進させるためである。
【0023】また、上記構成の浴液浄化用薬剤は、さらに、塩素系除菌剤を含有させることが望ましい。光触媒作用及び過酸化物による除菌作用を相乗して、更なる除菌作用の増大が期待でき、相対的に塩素系除菌剤の使用量を低減できる。
【0024】また、上記各構成の浴液用薬剤を投入して使用する浴液の水質循環路においては、二酸化チタンを活性化させる光照射器を配することが望ましい。浴液の浄化を確実に行なうことが可能となる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書中に記載する配合量を示す「%」は、特に断らない限り質量%を意味するものである。
【0026】本発明の浴液用薬剤は、二酸化チタン系光触媒を含有する浴液用薬剤において、二酸化チタン系光触媒ともに無機過酸化物を含有するものである。
【0027】ここで、二酸化チタン系光触媒と無機過酸化物との混合比(質量比)は、前者(光触媒)/後者(過酸化物)=1/99〜99/1、望ましくは30/70〜95/5、さらに望ましくは40/60〜90/10とする。光触媒が過少でも過多でも、すなわち、過酸化物過多でも過少でも、本発明の光触媒と過酸化物との併用効果を奏し難い。
【0028】二酸化チタン粉体を無機過酸化物粉体との併用することにより、浴液に投入した場合、前述の如く、光触媒の紫外光活性を維持しながら可視光活性が可能である。したがって、浴用薬剤として使用する場合、二酸化チタンの活性化に必要な紫外光源を常時照射しなくても、可視光でも二酸化チタンは活性化するため、常時、光触媒作用による除菌(抗菌)作用を発揮し、また、浴液中の有機物等の汚れを分解除去し、浴液の清澄作用が期待できる。さらに、無機過酸化物自体による除菌作用及び有機物分解作用・清澄作用(酸化作用による)も期待できる。
【0029】ここで、二酸化チタン系光触媒と無機過酸化物とは、通常(過酸化水素はのぞく。)、当初から混合しておいて同時的に浴液に投入するが、別々に保存(包装)しておいて同時的に、又は、直前に混合して、若しくは、経時的に浴液に投入してもよい。
【0030】また、光触媒粒子として、二酸化チタンを選択する理由は、光触媒の中でも特に、光触媒活性が高くて除菌/除菌効果が顕著なためである。
【0031】二酸化チタンとしては、ルチル型、アナタ−ゼ型、ブルッカイト型、非晶質のいずれでもよいが、ルチル型がアナタ−ゼ型に比して可視光側での活性が高いため望ましい。
【0032】なお、二酸化チタン系光触媒とは、二酸化チタン粒子又は後述の酸化チタン複合粒子からなる又は主体とするものをいい、その他の光触媒を含んでいてもよい。他の光触媒としては、例えば酸化亜鉛(ZnO)、炭化けい素(SiC)、二硫化モリブデン(MoS2 )、酸化第二鉄(Fe23 )、酸化第二インジウム(In23 )、三酸化タングステン(WO3 )、等をあげることができ、これらの単独又は二種以上を二酸化チタン粉体と適宜併用して使用する。
【0033】さらに、上記二酸化チタン粒子には、適宜、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、金、銀、銅などの触媒作用(主として酸化・還元反応)を有する金属を担持させることにより、当該金属による触媒作用と二酸化チタンの上記光触媒作用とが相乗して、除菌作用の増大が期待できる。
【0034】この複合酸化チタン粒子による除菌等の機能発現のしくみは、以下のとおりである。
【0035】二酸化チタンに光を照射すると、強い還元作用を持つ電子と強い酸化作用を持つ正孔とが生成し、接触してくる分子種を酸化還元作用により分解する。二酸化チタンのこのような作用すなわち光触媒作用を利用することによって、浴液(湯)の細菌や有機物質、悪臭等を分解除去することができる。この方法は、二酸化チタンと光を利用するだけで繰り返し使用することができる。また、反応生成物は無害な炭酸ガスなどであり、温度、pHなどの反応条件の制約が少ないという長所を有する。
【0036】そして、二酸化チタン系光触媒としては、二酸化チタンの粒子に多孔質リン酸カルシウム(以下、単にリン酸カルシウムということがある。)を結合(担持)させた複合酸化チタン粒子を含有するものとすることが望ましい。
【0037】本発明の浴液用薬剤における前記除菌、除菌(抗菌)作用、有機物分解作用、浴液清澄作用をより確実に奏することができるとともに、前述の如く、過酸化物と接触したとき前述の酸素欠陥の発生/消失が理想的に制御される。特に、入浴剤として使用する場合においては、光触媒粒子が皮膚に直接触れることによる刺激性を低減させる。
【0038】なお、二酸化チタン粒子に、リン酸カルシウムを結合させる理由は下記の通りである。
【0039】単に二酸化チタン粒子からなる光触媒粒体をそのまま浴液用薬剤に含有させただけでは、浴液の除菌(除菌)効果がほとんど現れない。光触媒反応は、被分解物質が光触媒表面で、吸着→反応→脱離を繰り返すことにより行われるものであり、特に水中では光触媒と細菌との吸着性に問題があったためである。
【0040】また、入浴時に光触媒粒体が身体に直接付着すると刺激性があり、浴液用薬剤の構成原料としては望ましくないためである。皮膚に対して直接的な酸化分解反応に起因するものと推定される。りん酸カルシウムとの結合により、二酸化チタン粒子が皮膚に直接触れるのを阻止する。
【0041】リン酸カルシウムは、多孔質で細菌(雑菌)、アミノ酸、蛋白質等の吸着性が良好である。このため、本発明のリン酸カルシウムが結合した酸化チタン粒子である複合酸化チタン粒子は、細孔の底に光触媒が露出した状態となり、この部分において光触媒に光が照射され、吸着された雑菌等を有効に除菌することができる。
【0042】リン酸カルシウムとしては、リン酸イオン及びカルシウムイオンからなるもので有機物吸着性を有するものなら特に限定されない。特に、合成アパタイト又はオクタカルシウムホスフェート(リン酸八カルシウム)(OCP)、テトラカルシウムホスフェート(リン酸四カルシウム)(TCP)、リン酸三カルシウム等を好適に使用できる。合成アパタイトとしては、水酸アパタイト、炭酸アパタイト、ふっ化アパタイト等を好適に使用できる。
【0043】これらのリン酸カルシウムは、多孔質で吸着性の良好なものを得やすいためである。
【0044】なお、リン酸カルシウムのあるものは、紫外線、X線で蛍光・りん光を発し、熱ルミネセンスを示すものである。そのため、入浴剤として使用する場合、浴槽中の湯又は泡がルミネセンスを発することになり、視覚的に心身のリラックス感を高める効果の高い組成物とすることができる。
【0045】本発明で使用可能な二酸化チタン粒子の平均粒径は、約0.5nm〜5μm、好ましくは約5nm〜2μm、より好ましくは約5nm〜0.5μmとする。粒径が大きすぎると浴液中で良好に分散し難くて沈降してしまうため、吸着能が十分発揮されない。また、沈降してしまうと光も届きにくくなり、光触媒能を充分に発揮し難い。なお、一般に光触媒の粒径が小さいほど、光触媒の活性は増加する傾向を示す(微粒子効果)。
【0046】なお、ジェット風呂等のように、浴液が常に攪拌状態にあり、光触媒の分散性が良好に保たれた状態であれば、二酸化チタンの粒径は、上記より大きくても有効であると推測される。
【0047】また、二酸化チタンに対するリン酸カルシウムの結合比率は、前者/後者(質量比)=約99.999/0.001〜50/50、望ましくは、約99.9/0.1〜90/10、より好ましくは、約99/1〜95/5とする。リン酸カルシウムが過少であると、リン酸カルシウムの結合効果(雑菌吸着作用/皮膚刺激性の低減作用)を奏し難く、逆に過多であっても、当該結合効果の増大を期待できないばかりでなく、二酸化チタン上に形成されるリン酸カルシウムの膜厚が厚くなり、二酸化チタン(触媒作用成分)への光到達量が低減するおそれがある。
【0048】上記光触媒粒体としては、特開平10−244166号に記載されている製造法において二酸化チタンをルチル型として製造したものを好適に使用できる。
【0049】二酸化チタン粒子に対するリン酸カルシウムの結合(被覆)方法は、上記特開平10−244166号に開示された方法に準じて行うことができる。
【0050】すなわち、二酸化チタン粒子(光触媒粒子本体)を擬似体液に浸漬して、表面に多孔質で被分解物質を吸着し易いリン酸カルシウム膜を生成させ被覆する。
【0051】ここで、擬似体液の組成としては、例えば、NaCl、NaHCO3 、KCl、K2 HPO4 ・3H2 O、CaCl2 、Na2 SO4 あるいはNaFなどを、水に溶かすことで調製することができる。また、HClや(CH2 OH)3 CNH2等によりpHを7〜8、特に7.4に調製すると、リン酸カルシウムの結晶形成(通常、層状ないし膜状に形成される。)が良好となる。
【0052】本発明に用いられる擬似体液の組成は、Na+ 120〜160mMK+ 1〜 20mMCa2+ 0.5〜 50mMCl- 80〜200mMHCO3- 0.5〜 30mMHPO42- 1〜 20mMSO42- 0.1〜 20mMF- 0〜 5mMが望ましい。これより濃度が薄いと、リン酸カルシウムの生成に時間がかかり、これより濃度が高いとリン酸カルシウムの生成が急激に起こって、多孔質度や膜厚の制御が難しくなる。なお、上記擬似体液は、前述の公報のごとく、Mg2+を含まないが、Mg2+を含まない方が、菌や有機物の吸着能が高いためである。
【0053】二酸化チタン粒子を浸漬するときの擬似体液の温度は、約30〜100℃が望ましい。これより温度が低いとリン酸カルシウムの生成に時間がかかるし、これより温度が高いと擬似体液の蒸発により膜厚や多孔質度の制御ができなくなる。最も好ましくは約50〜80℃の温度である。
【0054】二酸化チタン粒子を擬似体液に浸漬するときの時間は、1min〜18dayが好ましく、より好ましくは10min〜3hである。これより時間が短いとリン酸カルシウムの生成が不十分であり、これより時間が長いと膜厚が厚くなりすぎる。
【0055】その後、約40〜600℃で乾燥することで、本発明の浴液用薬剤に適用可能な複合酸化チタン粒子(光触媒粒子)を得ることができる。なお、この浸漬・乾燥工程は複数回繰り返して目的の膜厚に調整することができる。
【0056】なお、リン酸カルシウムの膜厚は、約0.5nm以上で、二酸化チタン粒子の粒径の約1〜2倍程度が望ましい。また、リン酸カルシウムの結合(付着)の態様は、二酸化チタン粒子の全面であっても部分的であっても、また、疎であっても密であってもよい。
【0057】上記無機過酸化物としては、過酸化水素;ペルオキソほう酸(過ほう酸)、ペルオキソ炭酸(過炭酸)、ペルオキソリン酸(過りん酸)、ペルオキソ硫酸(過硫酸)のアルカリ金属・アルカリ土類金属塩;過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム等を挙げることができる。これらのうちで、粉末状のものが、特に、過ほう酸ナトリウム、過炭酸ナトリウムなどの難溶性塩が望ましい。前述の如く、過酸化物併用効果が持続し易いためである。
【0058】次に、本発明の浴液用薬剤を入浴剤として使用する場合の処方について説明をする。
【0059】入浴剤として使用する場合は、通常、全体として浴液が塩基性(アルカリ性)を呈する無機塩類を含有させる。
【0060】その場合における、浴液用薬剤(入浴剤)中の二酸化チタン系光触媒(通常、複合酸化チタン系粒子を使用することが望ましい。)の含有率は、約1〜90%、好ましくは約2〜80%、さらに好ましくは約2〜60%とする。光触媒の含有率が低すぎると、浴液における除菌/除菌効果を奏しがたい。逆に多すぎると、湯の白濁が強くなる。また、温浴効果が現れない。
【0061】なお、無機塩類の浴液用薬剤中の含有率は、上記光触媒の含有率の略残部となる。必要に応じて、別途、各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、通常、浴液用薬剤に使用されている各種成分、例えば、色素類、香料、ビタミン類、生薬、植物エキス、収斂剤、消炎剤、紫外線吸収剤、除菌剤、酵素類、油脂類、アルコール類、防腐剤、pH調整剤、色素安定化剤、香料保留剤、その他の保湿成分及び薬効成分等の添加物を用途に応じて、任意の割合で配合することが可能である。
【0062】上記無機塩類としては、ほう酸塩、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3 )、炭酸ナトリウム(Na2 CO3 )、炭酸カリウム(K2CO3 )、セスキ炭酸ナトリウム(Na2 CO3 ・NaHCO3 ・2H2 O)、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム(Na2 SiO4 )、オルトけい酸ナトリウム(Na4 SiO4)、オルトリン酸ナトリウム(Na3 PO4 )、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の水溶性の塩基性塩や、その他、硫酸ナトリウム(Na2SO4 :無水ボウショウ)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化マグネシウム(MgCl2 )、硫酸アルミニウム(Al2 (SO43 )、硫酸マグネシウム(MgSO4 )、硫酸アルミニウムカリウム(KAl(SO4 )・12H2 O:ミョウバン)、硝酸カリウム(KNO3 )、硝酸ナトリウム(NaNO3 )、塩化アンモニウム(NH4 Cl)、硫酸第一鉄(FeSO4 )等の中性・酸性無機塩等のなかから、1種又は2種以上を選択して全体として浴液が塩基性を呈する配合として使用する。ここで、浴液のpHを約8〜11程度に調節することが望ましい。入浴時の温泉感覚(入浴中の体を温め、かつ石けんを使わずに皮膚を清浄化する。)を楽しむことができるからである。水溶性の塩基性塩は、肌の皮脂や分泌物を乳化し、きれいに洗い流す作用がある。また、皮膚を軟化し、表面のケラチン層を落とすので、肌を清浄化し、且つ、つるつる(滑らか)にする効果もあり、浴液用薬剤の有効成分として多用されている。
【0063】そして、上記塩基性塩としては、特に、ほう酸塩とほう酸塩以外の塩基性塩とを併用することが望ましい。ほう酸塩が浴液の雑菌繁殖防止能(除菌性)を有し、光触媒の除菌効果と相乗するのに加え、その他の塩基性塩(特に炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムが好適である)のつるつる感増大作用が付加されるためである。この場合、無機塩類全体に対してほう酸塩を例えば約20〜70%、望ましくは約30〜60%程度配合することができる。
【0064】ここで、上記ほう酸塩としては、ほう砂(Na2 [ B45 (OH)4 ]・8H2 O))、ほう酸(H3 BO3 )、メタほう酸ナトリウム(NaBO2 )、過ほう酸ナトリウム、無水ほう砂(B23 )、等を挙げることができる。
【0065】光触媒に対して光を照射するための光源の種類としては、ブラックライト、UVランプ、水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプを使用すると、二酸化チタンの光触媒能の発現が好適となる。また、蛍光灯、白熱灯も使用することができる。すなわち、通常浴室内に備えられる光源であれば、十分に対応可能である。なお、光がなくても過酸化物の存在により、さらには、複合酸化チタン粒子を光触媒とした場合は、アパタイトの吸着による効果はあるため、入浴剤無添加の浴液よりも清澄化可能である。
【0066】通常、光触媒は、上記の如く光触媒成分を担持させた担体粒子を使用せずに、すなわち、担持させずにそのまま使用することが望ましい。担体に担持させて使用すると、粒径が大きくなり、光触媒の分散性・循環性が悪くなるとともに、相対的に下面側に光が当たりにくい。光触媒成分の有効利用率が低下する。
【0067】ただし、担体が小さければ担持させて使用してもよい。また、ジェットバス等浴液の流動が激しく、粒径が大きくても十分に水中への分散性が確保できるものであれば担体に担持させて使用してもよい。
【0068】なお、本発明における浴液用薬剤は、通常、粉末剤、顆粒剤、錠剤等固形状のものとするが、その他、光触媒及び過酸化物を分散させた液剤(液状)であっても、ゲル状であってもよい。なお、液剤の場合は、光触媒と無機過酸化物の反応が促進されるため、通常、別々の容器に保存する。
【0069】上記入浴剤としての浴液用薬剤は、公衆浴場、ホテル、保養施設、家庭における24時間風呂、長時間利用する浴場等、比較的雑菌が繁殖しやすい浴液に適用すると効果が顕著となる。
【0070】このときの浴液に対する浴液用薬剤の添加量は、通常、光触媒換算で0.1〜500ppm、望ましくは1〜100ppmとなる量、薬剤全体で、1〜1000ppm、望ましくは5〜500ppmとなる量とする。
【0071】次に本発明の浴液用薬剤を水質浄化剤や配管用洗浄剤(以下「水質浄化剤等」という。)して使用する場合の処方について説明をする。
【0072】使用する光触媒、無機過酸化物や、リン酸カルシウムの種類等は、上記浴液用薬剤と同様であるため、同一部分ついては、説明を省略する。
【0073】水質浄化剤等として使用する場合は、浴液特性調節剤として、キレート剤を含有させ、さらには、必要によりpH調節剤として酸を含有させる。また、除菌効果を確実にするためには、塩素系除菌剤を含有させる。
【0074】キレート剤により、Ca、Mg等をキレート化して洗浄効果を増大させる。この場合、酸洗浄を期待するときは、適宜pH調節剤としての酸を添加する。また、塩素系除菌剤を含有させる場合でも、相対的に環境上の塩素系薬剤の含有率(添加量)を少なくできる。
【0075】水質浄化剤における光触媒/過酸化物合計含有率は、通常、50〜100%、望ましくは60〜100%、さらに望ましくは70〜100%とする。
【0076】光触媒/過酸化物合計含有率が過少であると本発明の効果(除菌・洗浄作用)を奏し難い。
【0077】そして、キレート剤の含有率は、上記入浴剤における無機塩類と同様、光触媒/過酸化物合計含有率の残量とする。すなわち、通常50%未満、望ましくは40%未満、さらに望ましくは30%未満とする。
【0078】そして、キレート剤としては、けい酸塩、りん酸塩、りん酸及びくえん酸の群から1種又は2種以上を選択して使用する。これらの内で、けい酸塩が望ましい。
【0079】具体的には、けい酸塩としては、けい酸マグネシウム、けい酸マグネシウムナトリウム等を好適に使用できる。また、りん酸塩としては、オルトりん酸、りん酸、ピロりん酸、トリポリりん酸等のナトリウム塩やカリウム塩を好適に使用できる。さらに、配管洗浄剤として使用する場合は、浴液を汚れの種類に対応して、酸性側又はアルカリ性側に調節することが望ましい。
【0080】上記pH調節剤としては、下記各種、無機酸、有機酸を使用することができる。なお、上記キレート剤でpH調節剤を兼ねてもよい。
【0081】上記pH調節剤としては、くえん酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、蟻酸、グルコン酸、こはく酸、しゅう酸、ソルビン酸、乳酸、らく酸等の有機酸、及び、りん酸、ピロりん酸、トリポリりん酸、塩酸、硫酸等の無機酸のうちから適宜選択して使用する。
【0082】また、上記塩素系除菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、イソシアヌル酸系塩素、二酸化塩素、亜塩素酸ソーダ等を挙げることができる。
【0083】この塩素系除菌剤の含有率は、光触媒/過酸化物合計量と塩素系除菌剤の混合比率(質量比)は、前者/後者=100/0〜50/50、望ましくは、100/0〜80/20とする。例えば、80/20の組成の場合、塩素系除菌剤(例えば:次亜塩素酸カルシウム)の投入量は、塩素系除菌剤のみを使用する場合には、0.1〜1000ppmとなる量必要なのに対し、当該組成では、0.02〜200ppmとなる量で済む。
【0084】なお、前記浴液用薬剤を投入して使用する浴液の水質循環路において、光触媒粒体を活性化させる光照射器を配した浴液循環システムとすることが望ましい(図1参照)。積極的に光触媒粒体の活性化をより促進することができるためである。すなわち、浴場における光照射がなくても乃至弱くても、光を配置した装置内を通過するとき、浴液用薬剤中の光触媒粒体の光触媒活性が増大して、効果的に除菌及び有機物分解の作用を奏する。なお、光触媒粒体はろ過機を通過する際、ナノレベルの微粒子であり、ろ過機内のろ体に捕獲されることはない。
【0085】この場合使用する光照射器10の概念図の一例を図2に示す。
【0086】筒状のハウジング12内の中央部に水銀ランプ等の光源14が配設(内蔵)されたもので、ハウジング12は下方側に温水入口18、上方側に温水出口20を備えている。なお、水銀ランプ14は、通常、破損防止等の見地から透明保護カバー15を備えている。ここで透明保護カバー15は、例えば、無機ガラス(石英ガラス)や有機ガラス(例えばアクリル系樹脂)で形成したものを使用する。
【0087】光源としては、水銀ランプ(蛍光ランプ、ブラックライト、石英ランプ等を含む。)、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、キセノンランプ、冷陰極管(ネオンランプ)、グローランプ、等の放電ランプ、白熱電球、ハロゲン電球などの白熱電球等の電気光源を使用するが、場合によっては、ガス灯等などの燃焼光源であってもよい。また、光源の配設部位も中心部とは限られず、周囲に複数本、上下に複数本等任意である。又、温水入口/出口の位置も、上下逆や水平等、分岐導入、分岐導出等任意である。さらには、U字型流路を形成するように天井側又は底部側のみに一対の温水入口/出口を設けてもよい。
【0088】
【発明の効果】本発明の浴液用薬剤は、紫外光ばかりでなく可視光においても光触媒作用を奏し、さらには、過酸化物自体も除菌/除菌効果を奏するため、たとえ、ほとんど光が存在しない場合でも、低コスト・省エネルギー的でかつメンテナンスフリーで有効に除菌・悪臭等の除去が可能である。また、有機物等の分解も可能であって、従来の抗菌剤以上の清澄効果を期待できる。
【0089】従って、また、それぞれ、適宜、他の薬剤と併用することにより、入浴剤、浴槽やプールの水質浄化剤、さらには、浴槽やプール配管内の配管浄化剤として好適に使用できる。
【0090】
【試験例】以下、本発明の効果(水浄化作用)を確認するために行なった、試験例について説明をする。
【0091】<光触媒の調製>まず、擬似体液として、NaCl、NaHCO3 、KCl、K2 HPO4 ・3H2 O、CaCl2 、Na2 SO4 、HCl、(CH2 OH)3 CNH2 を用いて、Na+ 147mM、K+ 5mM、Ca2+7.5mM、Cl- 147mM、HCO3-0.2mM、HPO42- 15.0mM、SO42- 0.5mM組成で、pH7.4の水溶液を調製し、その中に平均粒径約0.5μmの二酸化チタン(ルチル型)を入れ、60℃で1日間放置し、複合酸化チタン粒子(二酸化チタン/リン酸カルシウム≒98/2)からなる複合光触媒を調製した。
【0092】<試験方法>■メチレンブルー分解効果試験メチレンブルー水溶液(終濃度10mg/L)と、上記複合光触媒(終濃度0.06%)あるいは過酸化水素(終濃度3.5%)、または両者の併用を各々石英セルに入れ、メタルハライドランプの光を照射し、0、1、3および5分後の665nmの吸光度を分光光度計により測定して、脱色状態により分解効果を見た。
【0093】■大腸菌除菌効果試験大腸菌(Escherichia coli IAM 12119)をLB液体培地で37℃、一晩培養後、20倍希釈となるようLB液体培地でさらに37℃、1.5時間培養して対数増殖期の菌体懸濁液を得た。この菌液を菌濃度が103個/mLとなるようにPBS(phosphate buffered saline;りん酸緩衝生理食塩水)中に加え、複合光触媒/過酸化水素合計の終濃度が8、80、800および8000ppmとなるように(複合光触媒/過酸化水素=50/50)を添加した。各々、ブラックライト照射下及び暗所におき、0、1、3、5、8および10時間後にサンプリングし、PBSで所定の濃度に希釈した液1mLをフィルム状培地(ペトリフィルムACプレート、3M製)に接種し、37℃、24時間培養後、菌数を測定した。
【0094】<試験結果および考察>■メチレンブルー分解効果複合光触媒(0.06%)および過酸化水素(3.5%)は、各々単独ではメチレンブルー水溶液の脱色を示さなかったが、両者の併用により顕著な脱色が認められ、5分後では89%の除去率であった(図3参照)。
【0095】光触媒による分解反応は、二酸化チタンに光が当たってできる正孔の酸化反応により生成するヒドロキシラジカルの強力な酸化力に起因するが、この系に過酸化物が存在すると、同時にできる電子との反応により、さらにヒドロキシラジカルが生成し、相乗効果により分解反応がより効率的に進行したものと思われる。
【0096】■大腸菌除菌効果複合光触媒/過酸化物併用により、ブラックライト照射下において8ppm以上で濃度依存的に大腸菌に対して除菌効果を示した(図4参照)。また、暗所においても800ppm以上で濃度依存的な除菌効果を示した(図5参照)。即ち、複合光触媒/過酸化物併用により光が当たらない条件下でも除菌効果を現し、ブラックライト照射下ではさらに強力な除菌効果を示したことは、光触媒の水浄化における可能性を大きく広げている。
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】592193410
【氏名又は名称】株式会社ヘルスケミカル
【出願日】 平成14年2月27日(2002.2.27)
【代理人】 【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫 (外1名)
【公開番号】 特開2003−252713(P2003−252713A)
【公開日】 平成15年9月10日(2003.9.10)
【出願番号】 特願2002−50737(P2002−50737)