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【発明の名称】 抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物
【発明者】 【氏名】西川 茂雄
【住所又は居所】千葉県袖ヶ浦市長浦580−32 三井化学株式会社内

【氏名】竹立 昌弘
【住所又は居所】千葉県袖ヶ浦市長浦580−32 三井化学株式会社内

【要約】 【課題】近年、需要が高まってきているガス環境制御法による抗菌・殺虫を目的とし、従来困難であるとされてきたガス濃度制御を、長期間、精度良く、無駄無く、効率的に制御することを可能にする抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物を提供する。

【解決手段】抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)は、重合体(b)100質量部に対し、臨界温度が0℃〜150℃、臨界圧力が3MPa〜10MPaの値を有する少なくとも1種の抗菌・殺虫用物質(a)の当初含有率が2質量部〜70質量部である重合体組成物であって、大気圧下、25℃における抗菌・殺虫用物質(a)の放出継続時間が少なくとも100時間であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 重合体(b)100質量部に対し、臨界温度が0℃〜150℃、臨界圧力が3MPa〜10MPaの値を有する少なくとも1種の抗菌・殺虫用物質(a)の当初含有率が2質量部〜70質量部である重合体組成物であって、大気圧下、25℃における抗菌・殺虫用物質(a)の放出継続時間が少なくとも100時間であることを特徴とする抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【請求項2】 前記抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)からの、大気圧下、25℃における前記物質(a)の平均放出速度が、1.0×10-5g/hr・m2〜1.0×103g/hr・m2であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【請求項3】 前記物質(a)が、二酸化炭素であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【請求項4】 前記重合体(b)が、繰り返し構造単位当たり、少なくとも一つの酸素原子または窒素原子を有する少なくとも1種の繰り返し構造単位を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【請求項5】 前記重合体(b)が、脂肪族エステル系重合体(b1)、アクリル酸系重合体(b2)、ビニルニトリル系重合体(b3)およびアミド系重合体(b4)からなる群から選択される少なくとも1種の重合体であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【請求項6】 前記脂肪族エステル系重合体(b1)が、乳酸(共)重合体、グリコール酸(共)重合体から選択される少なくとも1種の重合体であることを特徴とする請求項5に記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【請求項7】 前記重合体組成物(A)が、1×10-3〜1×103cm3/m2・day・atmの範囲の二酸化炭素透過率を有する重合体(d)を含有することを特徴とする請求項3に記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【請求項8】 前記重合体(d)が、アクリロニトリル系重合体(d1)、ビニルアルコール系重合体(d2)から選択される少なくとも1種の重合体であることを特徴とする請求項7に記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【請求項9】 通気性包装体の中に、請求項1ないし8のいずれかに記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)からなる成形体が包装されている抗菌・殺虫剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌・殺虫等に効果のある物質を放出し続ける重合体組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、二酸化炭素等のガス濃度を上げることにより、抗菌・殺虫を行う試みがなされている。例えば、二酸化炭素濃度を高くした雰囲気下に玉子を曝しておくと、サルモネラ菌等の雑菌の増殖を抑え、玉子の鮮度を保持したり、米、麦、たばこ、生花等につく害虫を二酸化炭素による薫蒸を行うことで、殺虫を行うことが例として挙げられる。これらの方法は、二酸化炭素ボンベから直接、大気中にパージさせる方法を採用している。しかしながら、該方法では使用量の割には非効率で、効果が低いという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、近年、需要が高まってきているガス環境制御法による抗菌・殺虫を目的とし、従来困難であるとされてきたガス濃度制御を、長期間、精度良く、無駄無く、効率的に制御することを可能にする抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物を提供するためになされたものである。
【0004】
【課題を解決する手段】本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、重合体組成物に抗菌・殺虫用物質を多量に吸収させる製造方法、および該方法にて抗菌・殺虫用物質を多量に吸収し、大気圧下で該物質の放出速度を制御できる重合体組成物を見出し、本発明に至った。
【0005】すなわち、本発明は、以下の発明、および実施態様を包含する。
(1)重合体(b)100質量部に対し、臨界温度が0℃〜150℃、臨界圧力が3MPa〜10MPaの値を有する少なくとも1種の抗菌・殺虫用物質(a)の当初含有率が2質量部〜70質量部である重合体組成物であって、大気圧下、25℃における抗菌・殺虫用物質(a)の放出継続時間が少なくとも100時間であることを特徴とする抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【0006】(2)前記抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)からの、大気圧下、25℃における前記物質(a)の平均放出速度が、1.0×10-5g/hr・m2〜1.0×103g/hr・m2であることを特徴とする前記(1)に記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【0007】(3)前記物質(a)が、二酸化炭素であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【0008】(4)前記重合体(b)が、繰り返し構造単位当たり、少なくとも一つの酸素原子または窒素原子を有する少なくとも1種の繰り返し構造単位を含むことを特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【0009】(5)前記重合体(b)が、脂肪族エステル系重合体(b1)、アクリル酸系重合体(b2)、ビニルニトリル系重合体(b3)およびアミド系重合体(b4)からなる群から選択される少なくとも1種の重合体であることを特徴とする前記(1)ないし(4)のいずれかに記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【0010】(6)前記脂肪族エステル系重合体(b1)が、乳酸(共)重合体、グリコール酸(共)重合体から選択される少なくとも1種の重合体であることを特徴とする前記(5)に記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【0011】(7)前記重合体組成物(A)が、1×10-3〜1×103cm3/m2・day・atmの範囲の二酸化炭素透過率を有する重合体(d)を含有することを特徴とする前記(3)に記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【0012】(8)前記重合体(d)が、アクリロニトリル系重合体(d1)、ビニルアルコール系重合体(d2)から選択される少なくとも1種の重合体であることを特徴とする前記(7)に記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)。
【0013】(9)通気性包装体の中に、前記(1)ないし(8)のいずれかに記載の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)からなる成形体が包装されている抗菌・殺虫剤。なお、本発明における「大気圧下」とは、「1気圧(0.1013MPa)の通常の組成の大気において」の意味である。
【0014】
【発明の実施の形態】[抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)]本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)は、重合体(b)100質量部に対し、臨界温度が0℃〜150℃、臨界圧力が3〜10MPaの値を有する少なくとも1種の抗菌・殺虫用物質(a)を当初含有率として2〜70質量部、好ましくは2〜50質量部、更に好ましくは2〜30質量部含有する重合体組成物であって、大気圧下、25℃における抗菌・殺虫用物質(a)の放出継続時間が少なくとも100時間であることを特徴とする抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物である。
【0015】本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)は、前記放出継続時間が200時間以上であるものがより好ましく、前記放出継続時間が300時間以上であるものが更に好ましい。また、本発明の重合体組成物(A)は、通常は、1年以下の放出継続時間を有するが、1年を超え5年以下の放出継続時間を有するものがより好ましく、5年を超え10年以下の放出継続時間を有するものが更に好ましい。
【0016】また、本発明の重合体組成物(A)は、大気圧下、25℃、における前記物質(a)の平均放出速度が好ましくは1.0×10-5〜1.0×103g/h・m2、より好ましくは1.0×10-4〜1.0×102g/h・m2であることを特徴とする。
【0017】すなわち、物質(a)を、抗菌・殺虫に必要な場面に、必要量に応じた放出速度をもって放出する機能を持った抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を使用すれば、精度良く、無駄なく、効率的にガス環境を制御することが可能となる。
【0018】上記の物質(a)の当初含有率、放出継続時間が前記の範囲であって、上記の物質(a)の平均放出速度を有していれば、抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)は、低温または高温においても物質(a)を放出する抗菌・殺虫剤としての機能を発揮することができる。
【0019】また抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)に含有されている物質(a)が2種以上の場合、それぞれの物質(a)の平均放出速度が異なることがあるが、上記条件を満足すれば、十分な機能を発揮する。
【0020】また、本発明の重合体組成物(A)においては、物質(a)の平均放出速度を制御する目的で、物質(a)の透過率が低い重合体、例えば物質(a)が二酸化炭素である場合、JIS K7126のA法(差圧法)に準じて23±2℃で測定した二酸化炭素透過率が、好ましくは1×10-3〜1×103cm3/m2・day・atm、更に好ましくは、3×10-3〜10cm3/m2・day・atmである重合体(d)を、重合体(b)と組み合わせて使用することが好ましい。
【0021】更に、本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)には、本発明の目的を損ねない範囲で必要に応じて、一般に重合体に用いられる各種の添加剤を添加することができる。
【0022】なお、本発明の重合体組成物(A)における物質(a)の含有および放出のメカニズムは必ずしも定かではないが、物質(a)の重合体(b)における溶解性と拡散性が大きく起因していると推定される。
【0023】物質(a)の重合体(b)における溶解性を決める因子としては、溶解度パラメーター、化学構造、重合体(b)のガラス転移温度等が挙げられる。また、物質(a)の重合体(b)における拡散性としては、化学構造、重合体(b)の自由体積等が挙げられる。これらの因子がそれぞれ複雑に影響しあって本発明の重合体組成物(A)の特異的な機能が発現されると推定される。例えば、物質(a)が二酸化炭素であり重合体(b)がエステル結合を有する重合体である場合には、本発明の重合体組成物(A)が、二酸化炭素を含有し易く放出しにくいのは、二酸化炭素と重合体(b)とのエステル結合部の相互作用に起因しているのではなかろうかと推定される。
【0024】[抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)の物質(a)含有率]本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を構成する重合体(b)100質量部に対し、同じく本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を構成する物質(a)がSa質量部含有されている(以下、Saを物質(a)の含有率と表すことがある。)重合体組成物(A)の場合の、物質(a)の含有率(Sa)は、次に述べる方法で評価することができる。
【0025】物質(a)を除く本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を構成する成分を混合し組成物(原料組成物と表すことがある。)を調製し、押出機で加熱溶融して原料組成物ペレットとし、これを用いて、長さ70mm、幅25mm、厚み1mmの短冊形の形状を有する試験片を作成する。この試験片の質量(Wと表すことがある。)を測定した後、圧力容器中に置き密閉し、圧力容器を所定の温度まで加熱し、圧力容器内の空気を物質(a)で置換する。次いで、定量ポンプを用いて物質(a)を導入し所定の圧力まで昇圧し、物質(a)を適宜圧力容器に導入することにより所定時間圧力を維持し、物質(a)を重合体(b)に含有させる。
【0026】物質(a)の重合体(b)への含有が実質的に終了した後に、圧力容器の温度を下げ、圧力容器内温度が所定の温度に達したときに、圧力容器中の物質(a)をパージし、圧力容器内の圧力を1気圧へ戻す。物質(a)を含有した試験片を取り出し、直ちに、天秤(測定限界0.1mg)に移し試験片の質量の測定を開始する。圧力を1気圧に戻した時点を物質(a)の放出が開始された時点とみなし、これを基準にして、所定の時間(以下、測定時間もしくは時間あるいはtと表すことがある)における試験片の質量(Wtと表すことがある。)を測定する。次に示す計算式(1)によって定義される値を求め、これを時間tにおける物質(a)の含有率(Sa)とする。
Sa=100×(Wt−W)/W・R (1)
但し、計算式(1)中のRは、試験片中に含まれる重合体(b)の質量分率を表し、試験片中に含まれる重合体(b)の質量をwbと表すと、R=wb/Wで与えられる。
【0027】重合体組成物(A)の物質(a)の当初含有率は、試験片を天秤に移した直後(測定時間6分以内)に測定される試験片の質量(WSと表すことがある。)を上記計算式のWtに代入し求める。
【0028】[抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)の物質(a)放出継続時間]一方、本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体樹脂組成物(A)の物質(a)の放出継続時間は、物質(a)を含有させた試験片の質量(Wt)が、物質(a)を含有させる前の試験片の質量(W)と誤差範囲内で一致するようになるまでに要した時間を放出継続時間(Tdと表すことがある。)とし、上記の測定に基きこれを求めることができる。
【0029】[物質(a)の平均放出速度]本発明における物質(a)の平均放出速度は次の方法によって評価することができる。物質(a)を含有させる前の上記試験片の表面積(以下、Sと表すことがある。)、測定時間100時間および200時間における上記の試験片の質量の測定値(以下、これらの各々の値をW100、W200と表すことがある。)を用い、次に示す計算式(2)によって定義される値を求め、これを物質(a)の平均放出速度(以下、Grと表すことがある。)とする。
Gr=(W100−W200)/100・S (2)
【0030】[物質(a)]本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を構成する抗菌・殺虫用物質(a)としては、臨界温度が0〜150℃、好ましくは5〜100℃、更に好ましくは9〜50℃であって、且つ、臨界圧力が3〜10MPa、好ましくは4〜9MPa、更に好ましくは5〜8MPaである物質である。
【0031】上記範囲の臨界温度および臨界圧力を有する物質(a)は、物質(a)を加圧して(必要に応じて加熱して)物質(a)を含む高圧気相、液相、または臨界もしくは超臨界状態の流体とすることにより、比較的速い速度で重合体(b)中に溶解または拡散させることができる。これにより、物質(a)を、容易に重合体(b)中に含有させることができる。
【0032】抗菌・殺虫用物質(a)の具体例としては、例えば、臨界温度0〜150℃、臨界圧力3〜10MPaの値を有する、アセチレン(C22)、エチレン(C24)、エタン(C26)、プロペン(C36)、プロパン(C36)、イソブタン(i−C410)、塩化メタン(CH3Cl)、フレオン13(CClF3)、フレオン12(CCl22)、塩素(Cl2)、塩化水素(HCl)、二酸化炭素(CO2)、酸化二窒素(N2O)、アンモニア(NH3)、硫化水素(H2S)等を挙げることができ、より好ましい物質(a)としては、例えば、臨界温度5〜100℃、臨界圧力4〜9MPaの値を有する、アセチレン(C22)、エチレン(C24)、エタン(C26)、プロペン(C36)、プロパン(C36)、塩化水素(HCl)、二酸化炭素(CO2)、酸化二窒素(N2O)等を挙げることができ、更に好ましい物質(a)として、臨界温度9〜50℃、臨界圧力5〜8MPaの値を有する、アセチレン(C22)、エチレン(C24)、二酸化炭素(CO2)、酸化二窒素(N2O)等を挙げることができる。特に好ましい物質(a)として、二酸化炭素(CO2)を挙げることができる。
【0033】本発明では、前記物質(a)の2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の目的を達成することができる限度において、前記物質(a)と前記物質(a)以外の物質、すなわち、臨界温度0℃〜150℃の範囲をはずれる物質であって、且つ、臨界圧力が3MPa〜10MPaの範囲をはずれる物質とを組み合わせて用いることもできる。
【0034】[重合体(b)]本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を構成する重合体(b)としては、重合体100質量部に対し、前記物質(a)を当初含有率で2質量部〜70質量部、好ましくは3質量部〜70質量部、更に好ましくは5質量部〜70質量部含有させることが可能であり、かつ大気圧下、25℃における物質(a)の放出継続時間が少なくとも100時間、好ましくは200時間以上、更に好ましくは300時間以上である重合体であれば、特に制限なく使用することができる。
【0035】また、本発明に用いられる重合体(b)は、非晶性、結晶性を問わないが、一般的には、結晶性の低い重合体が良く、結晶化度として0〜50%の重合体が好ましく、更に結晶化度が0〜30%の重合体が好ましい。
【0036】重合体(b)と組み合わせる物質(a)の種類によって、上記条件に合致する重合体(b)は異なる。本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を構成する物質(a)と重合体(b)との組み合わせは、前述した方法によって物質(a)の重合体(b)への当初含有率、および、重合体(b)に含有させた物質(a)の放出継続時間を測定することによって容易に選択することができる。
【0037】例えば、物質(a)が二酸化炭素の場合、重合体(b)としては、重合体(b)を構成する繰返し構造単位の少なくとも1種が、繰返し構造単位当たり少なくとも1個の酸素原子または窒素原子を含むものが好ましく、2個の酸素原子を含むものがより好ましく、エステル結合を含むものが更に好ましい。また、重合体(b)はその他の極性基を含んでいてもよい。
【0038】好ましい重合体(b)の具体例としては、例えば、脂肪族エステル系重合体(b1)、アクリル酸系重合体(b2)、ビニルニトリル系重合体(b3)およびアミド系重合体(b4)等を挙げることができる。脂肪族エステル系重合体(b1)としては、例えば、乳酸(共)重合体、グリコール酸(共)重合体を挙げることができ、これらのなかでは、乳酸重合体、グリコール酸重合体、乳酸−グリコール酸共重合体が好ましい。アクリル酸系重合体(b2)としては、例えば、アクリル酸メチル(共)重合体、メタクリル酸メチル(共)重合体等を挙げることができる。ビニルニトリル系重合体(b3)としては、例えば、アクリロニトリル(共)重合体を挙げることができる。これらのなかでは、アクリロニトリル−アクリル酸メチル共重合体が好ましい。アミド系重合体(b4)としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、芳香族ポリアミド、変性ポリアミド6T等を挙げることができる。
【0039】本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を構成する重合体(b)としては、1種または2種以上の重合体を組み合わせて用いることができる。
【0040】なお、本発明において、上記「(共)重合体」のような表現は、当該単量体の単独重合体または当該単量体と当該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を表す。
【0041】[物質(a)の重合体(b)への溶解性および放出継続時間]本発明において、物質(a)の重合体(b)への溶解性は、原料組成物の代わりに重合体(b)を用いて、前記[抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)の物質(a)含有率]および[抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)の物質(a)放出継続時間]の項で述べたのと同様にして評価することができる。
【0042】[重合体(d)]本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を構成する重合体(b)と組み合わせて用いることのできる前記二酸化炭素透過率の低い重合体(d)の具体例としては、ビニルアルコール(共)重合体、塩化ビニリデン(共)重合体、アクリロニトリル(共)重合体、ナイロン(共)重合体、塩化ビニル(共)重合体、酢酸ビニル(共)重合体等が挙げられる。これらのなかでは、ビニルアルコール(共)重合体、アクリロニトリル(共)重合体が好ましく、特にビニルアルコール−エチレン共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸メチル共重合体が好ましい。
【0043】重合体(d)は、あらかじめ、重合体(b)と混合またはアロイ化して重合体組成物(A)の製造に使用することができ、また、あらかじめ抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を調製したのち、これに重合体(d)を添加して混合またはアロイ化することもできる。アロイ化する方法としては、溶融ブレンド、溶液ブレンド、その他公知の方法であれば、特に限定されず採用できる。
【0044】[各種添加剤]本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)には、本発明の目的を損ねない範囲で必要に応じて、各種の添加剤を使用することができる。本発明に使用することのできる添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、染料、難燃剤、抗菌剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
【0045】[抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)の製造方法]本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)の製造方法の実施態様の一例を図1に基づき説明する。ここでは、物質(a)として、二酸化炭素を例に説明する。ただし、本発明はこの実施態様例に限定されるものではない。
【0046】物質(a)を除く本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を構成する全成分を混合し原料組成物を調製し、押出機で加熱溶融して原料組成物ペレットを調製する(図示しない)。原料組成物ペレットの調製方法は、特に限定されず、公知の方法の中から適切な方法を採用すればよい。
【0047】上記原料組成物ペレットを、圧力容器(2)中に置き密閉し、圧力容器(2)内の空気を二酸化炭素で置換する。次いで、圧力容器を所定の温度まで加熱し、定量ポンプ(3)を用いて二酸化炭素を導入し所定の圧力まで昇圧し、二酸化炭素を適宜圧力容器(2)に導入することにより所定時間圧力を維持し、二酸化炭素を原料組成物ペレットに含有させる。
【0048】ペレットの二酸化炭素の含有率が所定量に達した時点で、圧力容器(2)の温度を下げ、容器内温度が所定温度に達したときに、圧力容器(2)中の二酸化炭素をパージし、圧力容器(2)内の圧力を1気圧へ戻すことにより、二酸化炭素を所定量含有する重合体組成物(A)ペレットを得ることができる。
【0049】上記の方法による場合、重合体組成物(A)中の二酸化炭素の含有量は、二酸化炭素を含有させる際の圧力、温度、時間や抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を構成する二酸化炭素以外の成分の種類、抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を構成する成分の結晶化度、形状等によって変化する。
【0050】したがって、二酸化炭素を含有させる際の圧力、温度、時間などの条件は、重合体組成物(A)に含有させる二酸化炭素(物質(a))の量、原料組成物の特性や形状に応じて、適切な条件を選定すればよい。
【0051】あらかじめ、原料組成物を成形(ペレット状、粉末状等の形状、場合によってはその他の成形体)した後に物質(a)を導入し、重合体組成物(A)を調製する上記の方法による場合、物質(a)の圧力は、通常、1〜100MPaが好ましく、3〜50MPaが更に好ましい。、圧力が、100MPa以下であると、圧力容器も大掛かりとはならず、圧力容器の気密保持も容易である。一方、圧力が1MPa以上であると、物質(a)を容易に重合体(b)に含有させることができる。
【0052】また、物質(a)を含有させる際の温度は、通常、−30〜300℃が好ましく、10〜200℃が更に好ましい。温度が300℃以下であると、重合体組成物(A)が変形したり、分解したりするのを防止することができるし、加熱のためのエネルギーを削減することができる。温度が−30℃以上であると、物質(a)の拡散速度が大きくなり、溶解速度が増大し、短時間で物質(a)を導入できるため、生産性を向上することができる。
【0053】更に、物質(a)を導入する時間については、通常、0.1〜500時間とするのが好ましく、0.5〜100時間とするのがより好ましい。0.1時間以上にすることで、過酷な温度、圧力条件を避け、適切な温度、圧力条件のもとで物質(a)を含有させることができ、また、500時間以下とすることで、生産性を向上させることができる。
【0054】[抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を含有する成形体]抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を含有する本発明の成形体は、本発明の重合体組成物(A)を用いて、公知の成形方法、例えば、射出成形法、押出成形法などの成形方法によって製造することができる。
【0055】本発明の成形体を製造するにあたり、本発明の効果を損なわない限り、本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)と他の重合体とを組み合わせて用いてもよい。
【0056】また、本発明の成形体は、原料組成物を用いてあらかじめ成形体を作成した後に、前記抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)の製造方法と同様にして、該成形体に物質(a)を含有させて製造することもできる。
【0057】本発明の成形体は、その製品形状においても特に限定されるものではない。たとえば、粉状、ビーズ状、ペレット状、フィルム状、シート状、フィラメント状、ストランド状、ブロック状、チューブ状、パイプ状、円柱状、箱状等、形状は特に制限されない。
【0058】また、本発明の成形体においては、成形体の形状を調整することにより物質(a)の放出速度を制御することができる。例えば、単位体積当たりの成形体の表面積(比表面積)が大きい薄いフィルム形状の成形体とすることにより物質(a)の放出速度を大きくすることができるし、比表面積の小さいブロック状の成形体とすることにより物質(a)の放出速度を小さくすることができる。
【0059】更に、本発明の成形体は、例えば、成形体の表面を前記物質(a)の透過率が低い重合体(d)で部分的にまたは全面を被覆することにより、物質(a)の放出速度を制御することができる。本発明の成形体の表面を被覆する方法としては、公知の被覆方法を用いることができる。例えば、押出ラミネート法、湿式法、乾式法、ホットメルト法、共押出法等が挙げられ、被覆方法については、特に限定されず、成形体の形状に適した被覆方法を採用すればよい。例えば、シート状の成形体においては、その両面を前記重合体(d)のフィルムでラミネートすることが挙げられる。ラミネートする方法としては、押出ラミネート法、湿式法、乾式法、ホットメルト法、共押出法等が挙げられるが、その他公知の方法でラミネートしてもよい。その場合、一般的には、本発明のシート状の成形体の厚みは0.1〜100mmの範囲が好ましく、重合体(d)のフィルムの厚みは、0.01〜10mmの範囲が好ましい。
【0060】また、成形体形状がペレット状、ビーズ状の場合、通気性の大きい材料で包装することが好ましい。例えば、通気性の大きい材料としては、不織布等が挙げられる。また、包装形態としては、ティーバック形状等が挙げられる。このような包装体は抗菌・殺虫剤として好適に用いられる。
【0061】本発明で得られる抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)は、抗菌・殺虫機能によって、野菜、果実、米、麦等の穀類、玉子、たばこ、生花、鮮魚、精肉、豆腐、惣菜等、鮮度保持を目的とする用途に好適に使用することができる。
【0062】
【発明の効果】本発明の抗菌・殺虫用物質放出性重合体組成物(A)を用いることにより、近年、抗菌・殺虫用途で需要が高まってきているガス環境制御を、長期間、精度良く、無駄無く、効率的に制御することが可能となり、新たな製品分野への応用展開ができる。
【出願人】 【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区霞が関三丁目2番5号
【出願日】 平成14年2月25日(2002.2.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−246702(P2003−246702A)
【公開日】 平成15年9月2日(2003.9.2)
【出願番号】 特願2002−48169(P2002−48169)