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【発明の名称】 有用植物の胴枯性病防除剤及び胴枯性病害防除方法
【発明者】 【氏名】飯島 義彦
【住所又は居所】東京都中央区日本橋馬喰町1丁目7番6号 大日精化工業株式会社内

【氏名】林 孝三郎
【住所又は居所】東京都中央区日本橋馬喰町1丁目7番6号 大日精化工業株式会社内

【氏名】中村 忠光
【住所又は居所】東京都中央区日本橋馬喰町1丁目7番6号 大日精化工業株式会社内

【氏名】高野 保夫
【住所又は居所】東京都中央区日本橋馬喰町1丁目7番6号 大日精化工業株式会社内

【要約】 【課題】簡便で使い勝手が良く、胴枯性病に対し高い防除効果を有し、しかも安全性が高い有用植物の胴枯性病防除剤及び胴枯性病害の防除方法を提供する。

【解決手段】桂皮酸、桂皮酸誘導体又はこれらの塩の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする有用植物の胴枯性病防除剤、及び該防除剤を用いることを特徴とする植物病害の防除方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】桂皮酸、桂皮酸誘導体又はこれらの塩の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする有用植物の胴枯性病防除剤。
【請求項2】桂皮酸又は桂皮酸誘導体の少なくとも1種とシクロデキストリンとを含有してなる請求項1記載の有用植物の胴枯性病防除剤。
【請求項3】桂皮酸又は桂皮酸誘導体の少なくとも1種とシクロデキストリンとの包接化合物を含有してなる請求項1又は2に記載の有用植物の胴枯性病防除剤。
【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載の胴枯性病防除剤を用いることを特徴とする有用植物の胴枯性病害防除方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有用植物の胴枯性病防除剤及び胴枯性病害の防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】植物病害の中でもリンゴ腐らん病等の胴枯性病は、明治末期から大正期にかけて大発生し、寒冷地のリンゴ栽培に甚大な被害を及ぼした。その後、昭和40年代から再びこの病気の発生が目立ちはじめている。特に北海道や東北地方といった寒冷地ではこの病気の被害が深刻で、その防除及び治療に苦慮している。また近年では、リンゴのみならず、ナシ、セイヨウナシ、クワ、キリ等の他の有用植物にも胴枯性病害が多発し、その対策として抜本的な防除、治療方法の必要性が特に強調されている。
【0003】従来、リンゴ腐らん病に代表される胴枯性病害の治療には、病巣患部への薬剤(農園芸用殺菌剤)を塗布する方法や病斑を外科的に治療する方法、泥巻法等が知られている。しかしながら、従来の農園芸用殺菌剤は薬剤の樹体への浸透性が劣るために、胴枯性病に対して十分な防除効果が得られない場合があった。また、農園芸用殺菌剤の中には変異原性を持つものもあり、自然環境及び人体に対して必ずしも安全なものとは言えなかった。一方、病斑部を外科的に治療する方法や泥巻法では、ある程度の治療効果を得ることができるものの、全体の処置に多大な労力及び時間を要する問題がある。従って、簡便で使い勝手が良く、有用植物に発生する胴枯性病害に対して優れた防除効果を有し、しかも安全性が高い植物病害を防除できる薬剤の開発が望まれている。
【0004】本発明に関連して、特開平5−117125号公報には、桂皮アルデヒド、桂皮酸、桂皮アルコール等のリグニン分解物質を含む芝生生育保持剤が開示されている。そこでは、桂皮酸等が芝生の病害菌である病原性糸状菌の生育抑制効果を有する旨が記載されている。また、特開平8−259408号公報には、桂皮酸又は桂皮酸誘導体等のリグニン生合成経路中間物質を含有するセントポーリア用開花促進剤が記載されている。さらに、特開平10−273404号公報には、桂皮酸及び/又は桂皮酸誘導体とシクロデキストリンとの包接化合物を含有する開花促進剤が記載されている。しかしながら、これらの文献には、桂皮酸又は桂皮酸誘導体が植物の胴枯性病菌の生育抑制効果を有する旨は記載されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、簡便で使い勝手が良く、有用植物の胴枯性病に対し高い防除効果を有し、しかも安全性が高い有用植物の胴枯性病防除剤及び胴枯性病害の防除方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、桂皮酸、桂皮酸誘導体又はこれらの塩が胴枯性病菌の生育抑制に顕著な効果を示すことを見出した。そして、桂皮酸、桂皮酸誘導体又はこれらの塩を含む製剤を有用植物の胴枯性病菌の防除剤として使用することを着想し、本発明を完成するに到った。
【0007】かくして本発明の第1によれば、桂皮酸、桂皮酸誘導体又はこれらの塩の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする有用植物の胴枯性病防除剤が提供される。本発明の防除剤は、桂皮酸又は桂皮酸誘導体の少なくとも1種とシクロデキストリンとを含有してなるのが好ましく、桂皮酸又は桂皮酸誘導体の少なくとも1種とシクロデキストリンとの包接化合物を含有してなるのがより好ましい。本発明の第2によれば、本発明の胴枯性病防除剤を用いることを特徴とする有用植物の胴枯性病害の防除方法が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の胴枯性病防除剤及び胴枯性病害の防除方法について詳細に説明する。本発明の防除剤は、Valsa属やDiaporthe属等の腐らん病菌又は胴枯病菌に感染し、腐らん病や胴枯病等の胴枯性病の症状を示している有用植物の治療又は胴枯性病の感染予防に用いられる。
【0009】胴枯性病は、その病斑部分の形態が幹辺材腐れの様相を呈し、主に幹の靭皮部、辺材柔細胞そして形成層等が侵害される病気である。病原菌の植物体への進入原因としては、凍害・寒害による損傷、枯枝、樹体の衰弱、芽かき痕及び不適当な剪定等が挙げられる。一般に、胴枯性病による植物の材質腐朽は、根株心腐れ、幹心腐れ、幹辺材腐れの3タイプに分かれる。根株心腐れでは、腐朽菌が根系の傷口から進入して根株の心材を腐らせる。また、幹心腐れでは、腐朽菌が傷口又は枯枝から幹に侵入して心材を腐らせる。更に、幹辺材腐れでは、腐朽菌が枯枝や傷口から進入して辺材部を腐らせる。
【0010】胴枯性病としては、具体的には、Valsa ceratospermaTode ex Fr.Maire(リンゴ腐らん病菌、ナシ腐らん病菌)、Valsa paulowniae Miyabe et Hemmi(キリ腐らん病菌)、Diaporthe nomurai Hara(クワ胴枯病菌)、Diaporthe ambigua(Sacc.)Nits(セイヨウナシ胴枯病菌)、Valsa abietis Fr.(スギ胴枯病菌)、Diaporthe aucubae(Sacc)(アオキ胴枯病菌)、Endothiaparasitica(Murrill)PJ et H.W.Anderson(クリ胴枯病菌)、Valsa friesii(Duby)Fuckel(ハイイヌガヤ胴枯病菌)等の子のう菌とそれらの不完全世代である不完全菌等により引き起こされる病害が挙げられる。
【0011】本発明の防除剤が対象とする有用植物としては、胴枯性病害の防除が必要な有用植物であれば特に制約されない。例えば、リンゴ、ナシ、セイヨウナシ、モモ、クリ等の果樹類;クワ、キリ、アオキ、スギ、ハイイヌガヤ等の樹木類;バラ、ボタン等の花卉類;等が挙げられる。
【0012】本発明の胴枯性病菌の防除剤は、桂皮酸、桂皮酸誘導体又はこれらの塩の少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする。桂皮酸、桂皮酸誘導体又はこれらの塩は種々の植物病原菌に対して顕著な抗菌作用を有し、これらの少なくとも1種を含有する製剤は、胴枯性病菌に対し優れた生育抑制効果を発揮する。
【0013】桂皮酸は3−フェニル−2−プロペン酸のトランス異性体であり、常温で固体の物質である(融点133℃)。桂皮酸は、天然にはソゴウ香中に遊離又はエステルとして存在する。また桂皮酸は、桂皮アルデヒドを酸化する方法、又はベンズアルデヒド、無水酢酸及び酢酸カリウムの混合物を加熱する方法(Perkin反応)等により製造することができる。
【0014】桂皮酸は自然界の代謝過程の中に組み入られる天然物又はその誘導体であるので、既に農薬として用いられている合成殺菌剤に比べて環境汚染の可能性が著しく低い。また、桂皮酸は食品添加物として指定されており、変異原性は報告されておらず、人体に対する安全性についても他の殺菌剤に対して極めて優れた性能を有する。
【0015】桂皮酸誘導体は、桂皮酸から誘導可能な化学構造が桂皮酸と類似した物質である。例えば、桂皮酸のベンゼン核に水酸基、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子等の置換基が1個又は2個以上置換した化合物、桂皮酸のカルボキシル基がアルデヒド基やヒドロキシメチル基に変換された化合物、アミノ酸等が挙げられる。
【0016】桂皮酸誘導体の具体例としては、o−クマル酸、m−クマル酸、p−クマル酸、コーヒー酸、フェラル酸、シナピン酸、チロシン、フェニルアラニン、コニフェリールアルコール、シナピルアルコール、o−クマリルアルコール、m−クマリルアルコール、p−クマリルアルコール等が挙げられる。
【0017】桂皮酸又は桂皮酸誘導体は、これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、入手が容易なこと及び胴枯性病に対する優れた防除効果を発揮すること等から、桂皮酸、コーヒー酸又はp−クマル酸の使用が好ましい。
【0018】桂皮酸又は桂皮酸誘導体の塩は特に制限されず、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の塩;鉄、コバルト、銅、亜鉛、マンガン等の遷移金属の塩;アンモニウム塩;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類の塩;ピリジンの塩;等が使用できる。これらの塩は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】桂皮酸又は桂皮酸誘導体の塩は、例えば、(i)桂皮酸又は桂皮酸誘導体を適当な溶媒中で、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、水素化物、酢酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、トリポリリン酸塩、ポリリン酸塩、酢酸塩等と反応させる方法、(ii)桂皮酸又は桂皮酸誘導体のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を、遷移金属のハロゲン化物、酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩等と反応させる方法、(iii)桂皮酸又は桂皮酸誘導体を適当な溶媒中で、アンモニア(アンモニア水)、アミン類又はピリジンと反応させる方法等により製造することができる。
【0020】前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等を、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等を、炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等をそれぞれ例示することができる。また、水素化物としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム等を、酢酸塩としては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等を、リン酸塩としては、リン酸3ナトリウム、リン酸3カリウム等を、リン酸水素塩としては、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム等を、トリポリリン酸塩としては、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム等をそれぞれ例示することができる。これらの中でも、pH緩衝作用を有し、高濃度溶液を得ることができ、かつ、環境汚染のおそれが少ない弱酸と強塩基の塩の使用が好ましい。
【0021】また、本発明においては、桂皮酸又は桂皮酸誘導体を包接化合物の形で使用することもできる。包接化合物の形で使用する場合には、長期にわたり優れた生育抑制効果(防除効果)を得ることができ、臭気低減の効果を得ることができる。
【0022】包接化合物は分子錯体の1種であり、一方の化学種が1〜3次元の分子規模の空間を形成し、その空間に寸法と形状が適合することを第1の要件として、他方の化学種が取り込まれて(包接されて)生成する化合物である。空間を提供する化学種をホスト、包接される化学種をゲストという。
【0023】ホストとなる化合物としては、桂皮酸又は桂皮酸誘導体をゲストとする包接化合物を形成するものであれば特に制限されないが、例えばシクロデシストリンを使用することができる。
【0024】桂皮酸又は桂皮酸誘導体とシクロデキストリンとの包接化合物は、桂皮酸又は桂皮酸誘導体がゲストとして、シクロデキストリン(ホスト)の中空部分に入り込んで生成すると考えられる。
【0025】シクロデキストリンは、D−グルコースが1,4−結合で環状構造を形成した化合物であり、重合度6のα−シクロデキストリン、重合度7のβ−シクロデキストリン、重合度8のγ−デキストリン、重合度が9以上のδ−デキストリン及びε−デキストリン、これらをマルトシル化したマルトシル化シクロデキストリン等が知られている。これらの中でも、入手容易なα−デキストリン、β−デキストリン、α及びβ−マルトシル化シクロデキストリンの使用が好ましく、β−シクロデキストリンの使用が特に好ましい。
【0026】桂皮酸又は桂皮酸誘導体とシクロデキストリンとの包接化合物は、例えば、(i)桂皮酸又は桂皮酸誘導体とシクロデキストリンとをニートで混合し、所望により加熱する方法、(ii)桂皮酸又は桂皮酸誘導体の溶液又は懸濁液と、シクロデキストリンの溶液又は懸濁液とを所定割合で混合(又は混練)し、所望により加熱する方法等により容易に製造することができる。作業効率の観点からは、後者の方法が好ましい。
【0027】桂皮酸又は桂皮酸誘導体及びシクロデキストリンを溶解又は懸濁する溶媒としては、桂皮酸に対して安定なものであれば特に制限されない。例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジオキサン等が挙げられる。
【0028】包接化合物を製造する際の桂皮酸又は桂皮酸誘導体とシクロデキストリンの使用量は、包接化合物を形成する範囲内であれば特に制限されないが、通常、桂皮酸又は桂皮酸誘導体1モルに対して、シクロデキストリンが1〜10モル、好ましくは1〜5モルの範囲である。得られる包接化合物の桂皮酸又は桂皮酸誘導体の含有量は、通常1〜15重量%である。
【0029】包接化合物の生成は種々の分析化学的手法により確認することができる。例えば、桂皮酸とシクロデキストリンとの包接化合物の生成は、得られた試料(包接化合物)、桂皮酸、シクロデキストリン及び桂皮酸とシクロデキストリンの混合物のそれぞれを熱分析及びX線回折を行ない、それぞれの測定結果を比較することにより確認することができる。
【0030】本発明の有用植物の胴枯性病防除剤は、桂皮酸、桂皮酸誘導体、桂皮酸若しくは桂皮酸誘導体の塩、又は桂皮酸若しくは桂皮酸誘導体とシクロデキストリンとの包接化合物(以下、これらをまとめて「桂皮酸化合物」ともいう。)を有効成分とする通常の製剤形態で製剤化して得ることができる。
【0031】製剤の形態は特に制限されず、例えば、乳剤、水和剤、液剤、エマルジョン剤、懸濁液剤、粉剤、泡沫剤、ペースト、粒剤、エアゾール、マイクロカプセル等の公知の製剤形態が挙げられる。
【0032】これらの製剤は、公知の方法、例えば、前記桂皮酸化合物を添加剤、液体希釈剤、液化ガス希釈剤、固体希釈剤等の各種添加剤、所望により乳化剤、分散剤、泡沫形成剤等の界面活性剤と共に混合して、公知の方法により製造することができる。また水を用いる場合には、有機溶媒を補助溶剤として使用することができる。
【0033】液体希釈剤としては、例えば、芳香族炭化水素類(例えばキシレン、トルエン、アルキルナフタレン等)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(例えばクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば1,2−ジクロロエタン、塩化メチレン等)、脂肪族炭化水素類〔例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、パラフィン類(例えば鉱油留分等)〕、アルコール類(例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、グリコール等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等)、エステル類(例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、乳酸メチル等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、他の極性溶媒(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)、及び水等を用いることができる。
【0034】液化ガス希釈剤は常温常圧で気体の物質を液化させたもの、例えば、液化したブタン、プロパン、窒素ガス、二酸化炭素、ハロゲン化炭化水素類等をエアゾール噴射剤としたものを使用することができる。
【0035】固体希釈剤としては、土壌天然鉱物(例えばカオリン、クレー、タルク、チョーク、石英、アタパルガイド、モンモリロナイト、珪藻土等)、土壌合成鉱物(例えば高分散ケイ酸、アルミナ、ケイ酸塩等)等を使用できる。
【0036】乳化剤、泡沫剤、分散剤として用いられる界面活性剤としては特に限定されない。例えば、ポリオキシエチレンが付加したアルキルエーテル、ポリオキシエチレンが付加した高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加したトリスチリルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンが付加したアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩のホルムアルデヒド縮合物、イソブチレン−無水マレイン酸の共重合体等を使用することができる。
【0037】また本発明の防除剤には、所望により固着剤や着色剤を添加することもできる。固着剤としては、天然及び合成ポリマー(例えば、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート等)等が挙げられる。着色剤としては、例えば、酸化鉄、酸化チタン、プルシアンブルー等の無機顔料、アリザリン染料、アゾ染料又は金属フタロシアニン染料等の有機染料、更にそれらの鉄、マンガン、ホウ素、銅、コバルト、モリブデン、亜鉛等の塩等の微量添加物を使用することができる。
【0038】本発明の防除剤は、他の農薬活性成分、例えば農園芸用殺虫剤、毒餌、農園芸用殺菌剤、農園芸用殺ダニ剤、殺線虫剤、殺黴剤、植物生長調整剤あるいは除草剤との混合剤とすることができる。例えば、施用前に本発明の防除剤と他の農薬活性成分を含む農薬製剤とを混合して用いることもできるし、桂皮酸化合物とともに他の農薬活性成分を添加して製剤化することもできる。
【0039】本発明の防除剤は、他の共力剤との混合剤とすることができる。共力剤はそれ自体活性である必要はなく、活性化合物の使用を増幅する化合物である。また本発明の防除剤は、セルロース誘導体と併用することも好ましい。セルロース誘導体は、前記桂皮酸化合物と同様に胴枯性病菌の生育抑制効果を有する。
【0040】さらに本発明においては、本発明の目的が損なわれない範囲で所望により各種添加成分、例えば樹体活性成分、肥料、害虫忌避剤、他の殺菌剤、界面活性剤、等と混合して使用することができる。例えば、粉末状活性炭やカーボンブラック及びこれらの水性分散体、ペースト等と本発明品である胴枯性病菌抑制剤との混合物を有用植物の病巣患部に塗布することにより、病原菌の活動を効果的にしかも安全に抑制でき、更に樹体の治癒組織形成が促進されるので、速やかに病状を回復させることができる。
【0041】本発明の防除剤を製造する際においては、桂皮酸又は桂皮酸誘導体とともに炭酸塩、炭酸水素塩、水素化物、酢酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、脂肪酸塩、トリポリリン酸塩等の溶解助剤を添加することもできる。溶解助剤を使用する場合には、桂皮酸、桂皮酸誘導体又はこれらの塩の高濃度液剤を調製することができる。
【0042】本発明の胴枯性病菌の防除剤の使用法は任意であるが、病状により最適な使用法が適用される。例えば、1)病斑部において病巣患部の樹皮の削り取りを行わずに、病斑部分に本発明の防除剤を塗布する方法、2)病斑部における重症部分の樹皮のみを削り取り、然る後に病斑部全体に本発明の防除剤を塗布する方法、3)病巣患部の樹皮を完全に削り取り、然る後に本発明の防除剤を塗布する方法、4)胴枯性病害が発生する時期(又はその前)に、噴霧機を用いて本発明の防除剤の希釈液を散布する方法等が適用される。また、これらの方法は必要に応じて、塗布量(散布量)を増加したり、塗布(散布)処理を数回繰り返すと、本発明の防除剤の胴枯性病治癒効果を更に確実なものとすることができる。
【0043】以上の如き本発明の防除剤の使用量は任意であるが、桂皮酸又は桂皮酸誘導体の純分として0.01〜0.1重量%が好ましい。
【0044】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、下記実施例及び比較例において、部又は%とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0045】実施例1桂皮酸を0.05%になるようにパールコアポテトデキストロース寒天培地(栄研化学(株)製、商品名:E−MF21)中に添加し、この培地を直径90mmのシャーレに分注してプレートを作製した。更に、対照1として、無添加のパールコアポテトデキストロース寒天培地を、また、対照2として、市販の有用植物用殺菌剤(チオファネートメチル3%含有)の1.7%重量を、パールコアポテトデキストロース寒天培地に添加した培地をそれぞれ直径90mmのシャーレに分注してプレートを作製した。これらのプレートの中央に一白金耳量のリンゴ腐らん病菌(Valsa ceratospermaTode ex Fr.Maire)の菌糸を植え付け、24℃で培養した。成長したコロニーの直径を経時的に測定し、桂皮酸のリンゴ腐らん病菌に対する生育抑制効果を調べた。調査結果を第1表に示す。第1表中、(++)はコロニーの直径が90mm以上で合ったことを示し、(−−)はコロニーが生じなかったことを示す(以下の表にて同じ。)。
【0046】
【表1】

【0047】第1表から、桂皮酸はリンゴ腐らん病菌に対して抗菌効果を有することがわかった。
【0048】実施例2腐らん病の病状を呈するリンゴ樹の病巣患部から樹皮の一部(0.1g)を採取した。一方、10mlの滅菌水を入れた試験管(直径:17mm、長さ:180mm)を用意し、該滅菌水中に採取した樹皮を懸濁させた。この上澄み液から平板希釈法を用いて、リンゴ樹病巣由来の黴aから黴dまでの4株の黴を分離した。この4株のパールコアポテトデキストロース寒天培地スラント上におけるコロニーの形状と色調、及び顕微鏡観察による菌糸の形状はリンゴ腐らん病菌(Valsa ceratospermaTode ex Fr.Mair)と同様であった。
【0049】桂皮酸をパールコアポテトデキストロース寒天培地(栄研化学(株)製、E−MF21)中に0.05%の濃度になるように添加し、この培地を直径9cmのシャーレに分注しプレートを作製した。このプレートの中央に、一白金耳量の上記リンゴ樹病巣から分離した黴a〜黴dの4株の菌糸をそれぞれ植え付け、24℃で培養した。成長したコロニーの直径を経時的に測定し、この値と桂皮酸無添加培地上に成長したコロニーの直径(対照)とを比較することにより、桂皮酸のリンゴ樹分離菌株に対する生育抑制効果を調べた。第2表に調査結果を示す。
【0050】
【表2】

【0051】この結果から明らかなように、桂皮酸は腐らん病リンゴ樹由来分離菌株に対して抗菌効果を有する。
【0052】実施例3桂皮酸をパールコアポテトデキストロース寒天培地(栄研化学(株)製、商品名:E−MF21)中に0.05%の濃度になるように添加し、この培地を直径9cmのシャーレに分注してプレートを作製した。また、対照として無添加のパールコアポテトデキストロース寒天培地プレートを同様にして作製した。これらのプレートの中央に、一白金耳量のリンゴ腐らん病菌(Valsa ceratospermaTode ex Fr.aire)、クワ胴枯病菌(Diaporthe nomurai Hara)、及びナシ胴枯病菌(Diaporthe medusaea Nits)の菌糸をそれぞれ植え付け、24℃で培養した。成長したコロニーの直径を経時的に測定し、桂皮酸のリンゴ腐らん病菌、クワ胴枯病菌及びナシ胴枯病菌に対する生育抑制効果を調べた。調査結果を第3表に示す。
【0053】
【表3】

【0054】この結果から明らかなように、桂皮酸は各種胴枯性病菌に対して生育抑制効果を有する。
【0055】製造例1 (桂皮酸のシクロデキストリン包接化合物の製造)
β−シクロデキストリンの純分約15%の水懸濁液100部を約70℃に加温して、β−シクロデキストリンを完全に溶解させ、これに桂皮酸の10%エタノール溶液19.5部を撹拌しながら徐々に添加した。次いで加熱を止め、撹拌を続けながら室温になるまで放冷した。析出した沈殿を濾取し、60℃以下の温度で減圧乾燥した。得られた粉末は熱分析及びX線回折で桂皮酸、β−シクロデキストリン及びこれらの混合物と異なる回折結果を示し、包接化合物を形成したことが示された。包接化合物中の桂皮酸の含有量は11.3%であった。
【0056】実施例4 桂皮酸のシクロデキストリン包接化合物のリンゴ腐らん病菌及び腐らん病リンゴ樹由来分離菌株に対する生育抑制効果試験桂皮酸のシクロデキストリン包接化合物を0.5%になるようにパールコアポテトデキストロース寒天培地(栄研化学(株)製、商品名:E−MF21)中に添加し、この培地を直径90mmのシャーレに分注してプレートを作製した。
【0057】さらに対照1として、無添加のパールコアポテトデキストロース寒天培地を、また、対照2としてシクロデキストリンのみを4.0%になるようにパールコアポテトデキストロース寒天培地に添加した培地をそれぞれ直径90mmのシャーレに分注してプレートを作製した。これらのプレートの中央に、一白金耳量のリンゴ腐らん病菌(Valsa ceratospermaTode ex Fr.Maire)、及び実施例2で用いたリンゴ樹病巣由来の分離黴aの菌糸を植え付け、24℃で培養した。成長したコロニーの直径を経時的に測定し、桂皮酸のシクロデキストリン包接化合物のリンゴ腐らん病菌に対する生育抑制効果を調べた。調査結果を第4表に示す。
【0058】
【表4】

【0059】この結果から明らかなように、桂皮酸のシクロデキストリン包接化合物はリンゴ腐らん病菌及び腐らん病リンゴ樹由来分離菌株に対して優れた生育抑制効果を有する。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の胴枯性病防除剤は優れた胴枯性病菌の生育抑制効果を有し、環境及び人体に対しても優れた安全性を具備した防除剤である。また、本発明の防除方法によれば、簡便かつ確実に有用植物の胴枯性病に対して優れた治癒効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋馬喰町1丁目7番6号
【出願日】 平成14年2月14日(2002.2.14)
【代理人】 【識別番号】100108419
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 治仁
【公開番号】 特開2003−238313(P2003−238313A)
【公開日】 平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願番号】 特願2002−36317(P2002−36317)