| 【発明の名称】 |
マイクロカプセル |
| 【発明者】 |
【氏名】日野 憲一
【氏名】嶋村 三智也
【氏名】吉澤 秀和
【氏名】北村 吉朗
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| 【要約】 |
【課題】ダニ防除作用の持続性に優れたファルネシルアセトン製剤の提供、ファルネシルアセトンのダニ防除作用の持続化方法の提供。
【解決手段】ファルネシルアセトンを含有するマイクロカプセルであり、当該マイクロカプセルがポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーから形成されているマイクロカプセル。ファルネシルアセトンをポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーから形成されているマイクロカプセルに内包させることを特徴とするファルネシルアセトンのダニ防除作用の持続化方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ファルネシルアセトンを含有するマイクロカプセルであり、当該マイクロカプセルがポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーから形成されていることを特徴とするマイクロカプセル。 【請求項2】 空孔率が3〜60%である有孔構造を有し、かつファルネシルアセトンが空孔内に内包されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロカプセル。 【請求項3】 ダニ防除に使用される請求項1または2に記載のマイクロカプセル。 【請求項4】 ファルネシルアセトンをポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーから形成されているマイクロカプセルに内包させることを特徴とするファルネシルアセトンの活性持続化方法。 【請求項5】 マイクロカプセルが空孔率3〜60%である有孔構造を有し、かつファルネシルアセトンが空孔内に内包されていることを特徴とする請求項4記載の持続化方法。 【請求項6】 ダニ防除活性の持続化方法である請求項4または5に記載の持続化方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ファルネシルアセトンを含有するマイクロカプセルに関し、例えば、ダニに対する忌避作用を有するファルネシルアセトンを長期間にわたって住居内にその活性を持続させつつ、徐放させることにより、ダニの嫌う環境を作り、住居内のダニの屋外への退去を促すと同時に新たな侵入を防ぐために使用する、ファルネシルアセトンをダニ防除用成分として含有するマイクロカプセルに関する。また、本発明はファルネシルアセトンのダニ防除作用の持続化方法に関する。 【0002】 【従来の技術】害虫は人間に対して不快感を与えるのみでなく、日本脳炎、マラリア、赤痢、ペスト、ツツガムシ病などの重篤な病気を媒介することがよく知られており、現在、屋内の害虫駆除はペストコントロールと呼ばれている。近年、国内の衛生思想の普及と清潔度の向上に伴い、蚊や蝿、蚤に起因する病気は少なくなってきたが、その反面、アレルギー疾患の増加が見られ、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、鼻炎などの原因の一つは屋内のダニが原因と考えられている。屋内のダニの増加は、わが国の居住環境の向上によるところが大きく、高気密住宅の普及、冬季の室内暖房の性能向上、内装の洋風化に伴う繊維製品の増加など、ダニにとって好適な環境の増加が被害を拡大していると考えられ、これらの対策が強く求められている。 【0003】本発明者らは、ファルネシルアセトンがダニ忌避性を有することを見出し、ファルネシルアセトンを含有するダニ防除剤を提案した(特開平10−316507号公報参照)。このダニ防除剤は、従来公知の有機リン系、ピレスロイド系またはカルバメート系その他の殺ダニ剤と比較して、(1)ダニを殺さないため、薬剤耐性を有するダニ成虫を生き残らせ、耐性の高い子孫のみを繁栄させるような危険性がない点、(2)強力なアレルゲンであるダニの死骸を環境中に残すことなくダニを排除することができる点、(3)人や家畜に対する安全性も高い点などの利点を有するものである。また、本発明者らは、ファルネシルアセトンは害虫防除作用を有していることを見いだし、ファルネシルアセトンを含有する害虫防除剤を提案している(未公開)。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】一般的に殺虫剤やダニ防除剤は、その作用の持続性が短いので、定期的にそれらを交換したり、散布する必要がある。従って、その活性の持続性を高めることは大きな課題である。従って、本発明の目的は活性の持続性に優れたファルネシルアセトン製剤の提供である。また、本発明は、ファルネシルアセトンの活性持続化方法を提供することである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは作用の持続性に優れ、実用性の高いダニ防除剤、害虫防除剤を開発すべく種々検討を重ねてきた来たところ、ファルネシルアセトンの気化をコントロールする必要性があることに着目した。また、一連の研究の過程でファルネシルアセトンが酸化され易く、酸化によってその活性が低下することを見いだした。かかる観点に立脚して、本発明者らは鋭意検討の結果、上記課題の解決には、ファルネシルアセトンをマイクロカプセルに内包することが有効であり、かつポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーから形成されたマイクロカプセルが、本発明の目的の達成において、特に有用であることを見出し本発明に至った。 【0006】即ち、本発明は下記の通りである。 ■ファルネシルアセトンを含有するマイクロカプセルであり、当該マイクロカプセルがポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーから形成されていることを特徴とするマイクロカプセル。 ■ファルネシルアセトンをポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーから形成されているマイクロカプセルに内包させることを特徴とするファルネシルアセトンの活性持続化方法。 【0007】本発明のマイクロカプセルの好適な実施形態は次の通りである。 ■単一または複数、好ましくは複数の空孔を有する有孔構造を有し、その空孔率は3〜60%であること。 ■ファルネシルアセトンは主として当該空孔内に内包されていること。 ■常温で放置した際に、マイクロカプセル粒子の表面がべたつき粒子同士が凝集してしまう程、ファルネシルアセトンはマイクロカプセルから漏れ出ないこと。 ■ダニ防除剤または害虫防除剤(特に、ダニ防除剤)として使用されること。 本発明において、「空孔」とは、マイクロカプセルの壁材によって覆われている孔をいう。即ち、「空孔」はマイクロカプセルの外部とは連通していないものである。また、「ファルネシルアセトンは主として空孔内に内包される」とは、マイクロカプセルに含有されるファルネシルアセトンの70〜99.9重量%、好ましくは90〜99.9重量%、さらに好ましくは95〜99.9重量%が空孔内に内包され、残りのファルネシルアセトンはマイクロカプセルの壁を構成するポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーと相溶状態にあることをいう。 【0008】 【発明の実施の形態】本発明で使用されるファルネシルアセトンは、ダニ、害虫(特に、ダニ)に対して忌避作用を有する。ここに「ダニ」とは、節足動物門クモ綱ダニ目Acarinaに属する陸生動物を示し、例えば、ケナガコナダニやゴミコナダニなどのコナダニ科に属するダニ;コナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニなどヒョウヒダニ科に属するダニ;ミナミツメダニやクワガタツメダニなどのツメダニ科に属するダニ;イエニクダニなどのニクダニ科に属するダニ;ナミホコリダニなどのホコリダニ科に属するダニ;イエハリクチダニなどのハリクチダニ科に属するダニ;イエダニなどのオオサシダニ科に属するダニ;ヒゼンダニなどのヒゼンダニ科に属するダニ;フトゲツツガムシやタテツツガムシなどのツツガムシ科に属するダニ;アシノワハダニやナミハダニやスミスハダニなどのハダニ科に属するダニ;ブドウヒメハダニなどのヒメハダニ科に属するダニ;ブドウサビダニやブドウハモグリダニなどのフシダニ科に属するダニ;サトウダニなどのサトウダニ科に属するダニ;などがこれに含まれる。 【0009】また、害虫とは節足動物門の昆虫綱に属するものをいい、これには、例えば、ミゾガシラシロアリ科、シロアリ科などの等翅目に属する害虫;チャバネゴキブリ科、ゴキブリ科、バッタ科、キリギリス科、コオロギ科、ケラ科などの直翅目に属する害虫;アブラムシ科、ウンカ科、ヨコバイ科、ヒメヨコバイ科、カメムシ科、ツチカメムシ科、マルカメムシ科、ツノカメムシ科、ヘリカメムシ科、ナガカメムシ科、メクラカメムシ科、コナカイガラムシ科、カタカイガラムシ科、マルカイガラムシ科、コナジラミ科、キジラミ科などの半翅目に属する害虫;カツオブシムシ科、コガネムシ科、テントウムシ科、カミキリムシ科、ハムシ科、キクイムシ科、ゾウムシ科、オサゾウムシ科、マメゾウムシ科などの甲虫目に属する害虫;アリ科、ハバチ科、スズメバチ科、キバチ科、タマバチ科などの膜翅目に属する害虫;カ科、イエバエ科、タマバエ科、キモグリバエ科、ミバエ科、ハモグリバエ科、ユスリカ科、ハナバエ科などの双翅目に属する害虫;およびスガ科、ヤガ科、ヒロズコガ科、ハモグリガ科、ホソガ科、コハモグリ科、スズメガ科、スカシバガ科、ハマキガ科、メイガ科、ドクガ科、スズメガ科、アゲハチョウ科、シロチョウ科などの鱗翅目に属する害虫などが挙げられる。 【0010】より具体的に、例えば、ヤマトシロアリ、イエシロアリなどのミゾガシラシロアリ科に属する害虫;チャバネゴキブリ、ヒメチャバネゴキブリなどのチャバネゴキブリ科に属する害虫;クロゴキブリ、ワモンゴキブリなどのゴキブリ科に属する害虫;ツチバッタ、ツチイナゴなどのバッタ科に属する害虫;エンドウヒゲナガアブラムシ、リンゴアブラムシ、ダイコンアブラムシなどのアブラムシ科に属する害虫;ヒメトビウンカなどのウンカ科に属する害虫;イネマダラヨコバイ、リンゴマダラヨコバイなどのヨコバイ科に属する害虫;アオクサカメムシ、イネカメムシなどのカメムシ科に属する害虫;イネネコナカイガラムシ、ミカンコナカイガラムシなどのコナカイガラムシ科に属する害虫;イチゴコナジラミ、オンシツコナジラミなどのコナジラミ科に属する害虫;リンゴキジラミ、ナシキジラミなどのキジラミ科に属する害虫;ヒメマルカツオブシムシ、ヒメカツオブシムシなどのカツオブシムシ科に属する害虫;カナブン、クロコガネ、ハナムグリなどのコガネムシ科に属する害虫;ジュウニマダラテントウ、ニジュウヤホシテントウなどのテントウムシ科に属する害虫;ゴマダラカミキリ、リンゴカミキリ、ノコギリカミキリなどのカミキリムシ科に属する害虫;ウリハムシ、イチゴハムシ、イネネクイハムシなどのハムシ科に属する害虫;ニホンキクイムシ、マツノキクイムシ、ミカンノキクイムシなどのキクイムシ科に属する害虫;クロオオアリ、ミカドオオアリ、クロヤマアリなどのアリ科に属する害虫;イチゴハバチ、モモハバチなどのハバチ科に属する害虫;スズメバチ、キイロスズメバチなどのスズメバチ科に属する害虫;アカイエカ、コガタアカイエカなどのカ科に属する害虫;イエバエ、クロイエバエ、オオイエバエなどのイエバエ科に属する害虫;ミカンツボミタマバエ、リンゴツボミタマバエなどのタマバエ科に属する害虫;イネキモグリバエ、ムギキモグリバエなどのキモグリバエ科に属する害虫;ミカンバエ、ウリミバエ、カボチャミバエなどのミバエ科に属する害虫;イネハモグリバエ、アブラナハモグリバエなどのハモグリバエ科に属する害虫;イネユスリカなどのユスリカ科に属する害虫;コナガ、リンゴスガなどのスガ科に属する害虫;タマナキンウワバ、イネヨトウなどのヤガ科に属する害虫;コクガ、イガなどのヒロズコガ科に属する害虫;モモハモグリガなどのハモグリガ科に属する害虫;リンゴホソガ、ナシホソガなどのホソガ科に属する害虫;ミカンハモグリガ、ブドウハモグリガなどのコハモグリ科に属する害虫;ブドウスズメ、モモスズメなどのスズメガ科に属する害虫;コスカシバ、ブドウスカシバなどのスカシバガ科に属する害虫;リンゴモンハマキ、イチゴオオハマキなどのハマキガ科に属する害虫;モモノメイガ、ニカメイガなどのメイガ科に属する害虫;マイマイガ、リンゴドクガガなどのドクガ科に属する害虫;モモスズメなどのスズメガ科に属する害虫;モンシロチョウ、モンキチョウなどのシロチョウ科に属する害虫;アゲハ、クロアゲハなどのアゲハチョウ科に属する害虫などが挙げられる。 【0011】ファルネシルアセトンは、例えばビタミンEやビタミンK2の側鎖を合成するための原料として化学合成法により多量に製造されている化合物であり、4種の幾何異性体(シス−シス体、シス−トランス体、トランス−シス体およびトランス−トランス体)を有する。本発明において使用されるファルネシルアセトンは、いずれの幾何異性体であってもよく、それらの幾何異性体の2種以上の混合物であってもよく、それらの混合比率は特に制限されることはない。ファルネシルアセトンは、次のデータが示すとおり極めて安全性が高い。 【0012】試験対象:ファルネシルアセトン(混合比:シス−シス体/シス−トランス体およびトランス−シス体/トランス−トランス体=15/50/35) エイムス変異原性試験: 陰性ラット経口急性毒性試験: LD50>10,000mg/kg【0013】本発明のマイクロカプセルの壁材はポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーで構成される。ポリ乳酸系ポリマーとは、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体をいい、他のヒドロキシカルボン酸としては、例えばグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などが挙げられる。乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合比は100/0〜20/80の範囲から任意に選択できる。その共重合比は100/0〜30/70であるのが好ましく、100/0〜50/50であるのがより好ましい。本発明において、ポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーの数平均分子量は、2,000〜50万であるのが好ましく、1万〜20万であるのがより好ましく、3万〜15万であるのが更に好ましい。また、ポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーの重量平均分子量は、4,000〜90万であるのが好ましく、2万〜40万であるのがより好ましく、5万〜30万であるのが更に好ましい。かかる、平均分子量のものは熱的安定性がよく、生産再現性が良好であるので好ましい。 【0014】ポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーとしては、市販品を使用することができ、また乳酸または乳酸と他のヒドロキシカルボン酸から直接脱水重縮合することにより調製されたものを使用することもできる。乳酸の代りに乳酸の環状2量体であるラクタイドを、またヒドロキシカルボン酸の代りにヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えばグリコール酸の2量体であるグリコライド、6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンなどを使用してもよい。脱水重縮合反応は、乳酸または乳酸と他のヒドロキシカルボン酸を有機溶媒の存在下に共沸脱水縮合させ、共沸留出した溶媒を、それより水を除去後、反応系に戻す方法により行うのが好ましい。 【0015】原料として使用する乳酸としては、L体、D体またはそれらの混合物のいずれでもよいが、L体とD体の比率L/Dが75/25〜99/1の範囲である混合物が好ましく、該比率が80/20〜98/2の範囲である混合物がより好ましい。L体の比率が低い場合には、得られるポリマーの融点が低く、マイクロカプセルの調製がし易くなる。一方、L体の比率が高い場合には、得られるポリマーの融点が高くなることから、マイクロカプセルの融点が高く熱安定性がよくなる。 【0016】ファルネシルアセトンを含有するポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーからなるマイクロカプセルの調製は、液中乾燥法やスプレードライ法またはこれらの類似方法により行うのが好ましい。これらの方法によれば、ファルネシルアセトンに過度の熱を加える必要がなく、ファルネシルアセトンを変性させることなく、安定にマイクロカプセル化することができる。 【0017】液中乾燥法としては、例えば、ポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーとファルネシルアセトンを同時に水非混和性の有機溶媒に溶解させ、得られた溶液を、アニオン性界面活性剤(例えば、脂肪族石鹸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩など)または非イオン性界面活性剤(例えば、脂肪酸(ポリ)エチレングリコールエステルまたはエーテル、モノ脂肪酸グリセリンエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ソルビタンエステルポリオキシエチレン、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテルなど)とポリビニルアルコール、ゼラチンなどの分散安定剤を添加した水に加え、プロペラ型撹拌機、タービン型撹拌機、ホモジナイザー、超音波発生器などの装置を用いて攪拌して懸濁または乳化させ、得られた懸濁液または乳化液から減圧下に有機溶媒を除去する方法、ファルネシルアセトンおよびポリ乳酸を上記と同様の分散安定剤と上記と同様の界面活性剤を配合した少量の水に加えて分散させ、得られたエマルジョンを前記の分散安定剤と界面活性剤を配合した大量の水に加え、攪拌しながら減圧乾燥させる方法が挙げられる。水非混和性の有機溶媒としては、沸点が高過ぎないものが好ましく、例えばトルエン、ハロゲン化アルカン(例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素など)、酢酸エチルなどを使用するのが好ましい。 【0018】また、スプレードライ法としては、例えば、多重同心円型ノズルを備えたスプレードライ装置を用いて、ファルネシルアセトンとポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーを上記と同様の水非混和性の有機溶媒に溶解させて得られた溶液をスプレーし、急激に温度を低下させるか、急激に有機溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。 【0019】上記の方法によって調製されたマイクロカプセルは、内部に非常に多数の空孔(空孔率は3〜60%が好ましく、5〜50%がより好ましく、10〜40%が更に好ましい。)を有し、壁材に解け込まなかったファルネシルアセトン、即ち大部分のファルネシルアセトンは空孔内に収納される。これにより、ファルネシルアセトンは適度に空気との接触が妨げられて酸化が抑制され、また蒸発(気化)が制限されて、安定に長期間にわたって徐々に蒸散するようになり、ファルネシルアセトンのダニ防除効果の持続性が飛躍的に改善される。 【0020】マイクロカプセルの比較的内部の孔に収納されたファルネシルアセトンは、その外側に位置する独立した多数のファルネシルアセトンを内包する孔により十重二重に取り囲まれており、マイクロカプセルの表面から侵入する酸素はカプセル表面近傍の孔内のファルネシルアセトンにトラップされ、内部の孔内のファルネシルアセトンには影響が及ばず、酸化による活性の低下が少なく、そのダニ防除作用が持続される。 【0021】本発明のマイクロカプセルにおいては、ポリ乳酸またはポリ乳酸系ポリマーから形成される膜材(壁材)の強度は大きく、その強度がファルネシルアセトンの熱膨張や蒸気圧を上回る限り、マイクロカプセルの破壊によるファルネシルアセトンの気化は抑制される。したがって、本発明のマイクロカプセルを熱可塑性樹脂に練りこむ際にはファルネシルアセトンの気化による消失が殆どなく、また本発明のマイクロカプセルを練り込まれた熱可塑性樹脂からのファルネシルアセトンのブリードを効果的に抑制することが容易となり、広範な分野においてファルネシルアセトンの活性を発現することができる。 【0022】本発明のマイクロカプセルは、ファルネシルアセトンにより可塑化されることがなく、軟化したり、マイクロカプセル同士が付着することがなく、ファルネシルアセトンを内包した場合においても、マイクロカプセルは流動性を有する。したがって、本発明のマイクロカプセルを他の材料に配合する際、秤量や分散がしやすく、操作性に優れる。 【0023】また、本発明のマイクロカプセルにおいては、ファルネシルアセトンがマイクロカプセルにより保護されるため、液体のままの保存や使用に比べて過度の流動性が抑えられ、発火の危険性も低く、使用上の操作性と安全性が著しく向上する。 【0024】マイクロカプセルにおける空孔率が余りに高い場合には、機械的強度が弱く、マイクロカプセルの調製時や使用時に空孔が潰れることがあり、一方、空孔率が低過ぎる場合には、内包されるファルネシルアセトンの量が少なくなり、ファルネシルアセトンのマイクロカプセルの有効期間が短くなる。そのため、空孔率は3〜60%の範囲であるのが好ましく、5〜50%の範囲であるのがより好ましく、さらに好ましくは10〜40%の範囲である。本発明のマイクロカプセルの平均粒子径は特に限定されるものではないが、10μm〜1mmの範囲であるのが好ましく、20μm〜500μmの範囲であるのがより好ましい。その理由は、細か過ぎる場合には、短期間に内部のファルネシルアセトンが放出され、また酸化されて、マイクロカプセルの有効期間が短くなる。一方、余りに粗い場合には、成形品への練り込み等が困難になり、これを配合し得る物品の種類が限定される。例えば、繊維製品にバインターを用いてマイクロカプセルを接着させた場合、マイクロカプセルは明らかな異物と見なされて人為的に排除されたり、意図的に押し潰されて繊維製品を汚したりすることになる。 【0025】本発明のマイクロカプセルにおいて、ファルネシルアセトンの酸化を防止するために酸化防止剤を併用することもできる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンE類、ブチルヒドロキシトルエン、イルガノックス1010、イルガノックス1076などのフェノール型;タンニン酸、没食子酸などのポリフェノール型の酸化防止剤が使用される。その使用量は、ファルネシルアセトンに対して0.001〜10重量%の範囲であるのが好ましく、0.1〜5重量%の範囲であるのがより好ましい。 【0026】本発明のマイクロカプセルにおいては、ファルネシルアセトン以外の他のダニ・害虫忌避剤等を併用することができ、また必要に応じて他の成分、例えば、香料、着色料、溶剤などを加えることもできる。他のダニ・害虫忌避剤としては、例えばジエチルトルアミド、2,3,4,5−ビス(△2−ブチレン)−テトラヒドロフルフラール、ジ−n−プロピルイソシンコメロネート・ジ−n−ブチルサクシネート、2−ヒドロキシエチルオクチルサルファイド、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、1−エチニル−2−メチル−ペンテニル 2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート、N−ヘキシル−3,4−ジクロルマレイミドなどが使用される。 【0027】香料や着色料を配合する場合には、本発明のファルネシルアセトン含有マイクロカプセルの交換時期を知らせるようなインジケーター機能を持たせることが好ましい。例えば、ファルネシルアセトンよりも沸点が低く、ファルネシルアセトンが消失してしまう前に、当該マイクロカプセルの使用当初の香りが無くなるか、その変化が明らかに判別できるような香料を配合することが好ましい。さらに、ファルネシルアセトンを希釈したり、ファルネシルアセトンと他の成分との溶解性を改良するために配合する溶剤としては、例えばシリコーンオイル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ホホバオイル、スクアラン、流動パラフィン、菜種油、綿実油、桐油、椿油、その他の植物油(高沸点油)などが挙げられる。 【0028】本発明のマイクロカプセルを、例えば開口を有する容器に入れ、マイクロカプセルよりファルネシルアセトンを長期間にわたって住居内などのダニ、害虫の忌避を意図する空間に徐放させることにより、ダニ、害虫の嫌う環境を作り、該空間からのダニなどの退去を促すと同時に新たな該空間への侵入を防ぐことができる。忌避を意図する空間におけるファルネシルアセトンの濃度は、0.001〜20,000μg/Lであるのが好ましく、0.01〜2,000μg/Lであるのがより好ましく、0.01〜1,000μg/Lであるのが更に好ましい。かかる濃度を達成するためのマイクロカプセルの使用量は、室内などの忌避を意図する空間に、1平方m当たり3g以上であるのが好ましく、5g以上であるのがより好ましい。マイクロカプセルからのファルネシルアセトンの放出は非常に少なく制限されており、多量に使用する場合においても、生活環境的に問題は生じないが、経済的な理由、また非常に臭気に敏感でファルネシルアセトンの臭気を好まない人も居ることを考慮すれば、1平方m当り100g以下であるのが好ましく、50g以下であるのがより好ましい。通常ダニは、床、床近傍の高さに生息するので、例えば意図する空間(例えば室内)全体の濃度をダニ忌避効果を発揮する濃度にする必要はなく、ダニの生息する場所における濃度が重要であり、1平方m当りの使用量が重要である。 【0029】本発明のマイクロカプセルを熱可塑性樹脂に練り込んで成形することにより、ダニ防除性が付与されたテープ、フィルム、シート、繊維、その他成形品とすることができる。これらの成形品を加工することにより、ダニ防除性が付与された押入れ用敷材、配置材、衣装用敷材、家具裏用配置材、畳下敷材、床用敷材、絨毯用敷材、自動車用内装材、ベッドマット、マットレス、動物用ダニ駆除バンド(首輪)、ペット動物用衣料、ペット動物用敷材などとすることができる。また、本発明のマイクロカプセルをバインダーを用いて繊維製品に付着させることにより、広範な繊維製品にダニ防除性を付与することができ、ダニ防除性が付与された寝具やコタツ用布団などの繊維製品に加工することができる。本発明のマイクロカプセルは塗料、糊剤や噴霧剤に配合することができ、建材用塗料、接着材として用いたり、ペットや動物の小屋やその備品、または動物の体に吹きかけることにより、小屋や動物の体に付いたダニを追い出すことができる。 【0030】 【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。 【0031】参考例1ファルネシルアセトン(混合比:シス−シス体/シス−トランス体およびトランス−シス体/トランス−トランス体=15/50/35)の0.1916gをNo.5cの濾紙(アドバンテック東洋株式会社製)に染み込ませたものを、ガラス製の標本ビンの中にフタを閉めた状態で吊るして、21〜24℃に空調された室内に放置し、定期的にその重量を測定した。なお、放置中はフタを閉めているが、重量測定時にはフタを開けて空気を入れ替えた後、重量測定を行った。その結果を表1に示す。 【0032】 【表1】
【0033】表1より、時間の経過とともに重量増加が認められ、ファルネシルアセトンは空気酸化されることが分かる。 【0034】試験例1参考例1において、ファルネシルアセトンを濾紙に染込ませたものの代わりに実施例1で得られたファルネシルアセトンを内包するマイクロカプセル1gを用いた以外は同様にして、重量を測定した。その結果を表2に示す。 【0035】 【表2】
【0036】表2において、試験開始直後の重量減少は、マイクロカプセルに微量残存した水分の影響と推定される。マイクロカプセルに内包されたファルネシルアセトンの空気酸化による重量増加は大幅に軽減されている。 【0037】実施例1ファルネシルアセトン2gおよびポリ乳酸(カーギル社製、数平均分子量87,000、重量平均分子量163,300、D/L比8/92)10gをジクロロメタン100mLに溶かして得られた分散相と、4%のポリビニルアルコール水溶液1400mLおよび界面活性剤(Q12S)10.4gからなる連続相とを混合し、30℃でプロペラ型撹拌機を用いて100rpmの攪拌速度で30分間攪拌し、次いで段階的に反応器の減圧度を上げ、アスピレーターによる減圧下に6時間攪拌を続け、ジクロロメタンを蒸発させた。得られた懸濁液をガラスフィルターで濾過し、数回水洗した後、一昼夜凍結乾燥することにより、ファルネシルアセトンを内包したマイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルは、平均粒径0.4mmの略球状粒子であり、砂粒のようなサラサラした流動性を示した。マイクロカプセルの空孔率は17%であった。 【0038】実施例2実施例1で得られたマイクロカプセルについて、ヤケヒョウヒダニに対する忌避率を、ダニ忌避試験法(侵入阻止法:「加工技術」第33巻第2号、153−155頁(1998年発行)「題目:防ダニ加工製品忌避試験基本マニュアル」(アパレル製品等品質性能対策協議会))により求めたところ、99%であった。この試験法では60%以上の忌避率を示した場合に有効とみなされる。さらに、実施例1で得られたマイクロカプセルをフタのない容器に入れ、室温で2ケ月間または6ケ月間放置して同様の試験を行ったところ、2ケ月後には99%、6ケ月後には81%の忌避率を示し、非常に長期間効力を保ち続けていることが立証できた。 【0039】実施例3ファルネシルアセトン2gおよび乳酸とグリコール酸の共重合体(モル比75/25、数平均分子量10,000) 10gをジクロロメタン100mLに溶かして得られた分散相と、4%のポリビニルアルコール水溶液1400mLおよび界面活性剤(Q12S)10.4gからなる連続相とを混合し、30℃でプロペラ型撹拌機を用いて150rpmの攪拌速度で30分間攪拌し、次いで段階的に反応器の減圧度を上げ、アスピレーターによる減圧下に6時間攪拌を続け、ジクロロメタンを蒸発させた。得られた懸濁液をガラスフィルターで濾過し、数回水洗した後、一昼夜凍結乾燥することにより、ファルネシルアセトンを内包するマイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルは、平均粒径0.3mmの略球状粒子であり、砂のようにサラサラした流動性を示した。マイクロカプセルの空孔率は17%であった。 【0040】実施例4実施例3で得られたマイクロカプセルについて、ヤケヒョウヒダニに対する忌避率を、実施例2と同様にして求めたところ、99%であった。 【0041】実施例5実施例1で得られたマイクロカプセル30gを軟質アクリル系樹脂粉(商品名パラペットSA−N、株式会社クラレ製)100gに混合し、二本ロール混錬機により155℃で1分間溶融混錬し、160℃で50kg/cm2で1分間プレス成形した後、冷却してシートを得た。マイクロカプセルはシート内に均一に分散されており、成形過程で発煙などの異常は見られなかった。 【0042】比較例1ファルネシルアセトン10gを軟質アクリル系樹脂粉(商品名パラペットSA−N、株式会社クラレ製)100gに混合し、室温で15分間なじませた後、二本ロール混錬機により155℃で1分間溶融混錬し、160℃にて50kg/cm2で1分間プレス成形した後、冷却してシートを得た。成形過程でファルネシルアセトンの一部が気化することによる発煙が認められた。 【0043】 【発明の効果】本発明によれば、ファルネシルアセトンの優れたダニ忌避性を効果的に発現し得る、実用性の高いダニ防除用マイクロカプセルが提供される。本発明のマイクロカプセルにより、ファルネシルアセトンの使用上の操作性と安全性が著しく向上し、しかもダニ防除効果の持続性が飛躍的に改善される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001085 【氏名又は名称】株式会社クラレ
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| 【出願日】 |
平成14年2月8日(2002.2.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100080791 【弁理士】 【氏名又は名称】高島 一
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| 【公開番号】 |
特開2003−238305(P2003−238305A) |
| 【公開日】 |
平成15年8月27日(2003.8.27) |
| 【出願番号】 |
特願2002−33239(P2002−33239) |
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