| 【発明の名称】 |
毒素産生菌類の殺菌方法および生成毒素の不活性化方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】鈴木 鐵也
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| 【要約】 |
【課題】毒素産生菌類の殺菌、および、当該毒素産生菌類が産生する生成毒素の不活性化を、特殊な装置を要することなく、少ないエネルギーの消費で効率よく行うことができる処理方法を提供する。
【解決手段】毒素産生菌類を殺菌する処理液として、また、当該毒素産生菌類が産生する生成毒素の不活性化する処理液として、無機塩の希薄水溶液を被電解水する有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水を採用し、電解生成酸性水が有する高水準の有効塩素および溶存酸素の作用にて、殺菌しかつ不活性化する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】毒素産生菌類を殺菌する方法であり、殺菌処理液として、無機塩の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水を採用することを特徴とする毒素産生菌類の殺菌方法。 【請求項2】請求項1に記載の毒素産生菌類の殺菌方法において、前記殺菌処理液は、塩化ナトリウムまたは塩化ナトリウムを主要成分とする希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水であって、pHが2.0〜3.5の範囲で、有効塩素濃度が20ppm〜50ppmの範囲で、かつ、溶存酸素濃度が10mg/L〜20mg/Lの範囲にあることを特徴とする毒素産生菌類の殺菌方法。 【請求項3】請求項1に記載の毒素産生菌類の殺菌方法において、殺菌処理の対象とする毒素産生菌類は、真菌類、ブドウ球菌類または桿菌類であることを特徴とする毒素産生菌類の殺菌方法。 【請求項4】毒素産生菌類が産生する生成毒素を不活性化する方法であり、不活性化処理液として、無機塩の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水を採用することを特徴とする毒素産生菌類が産生する生成毒素の不活性化方法。 【請求項5】請求項4に記載の生成毒素の不活性化方法において、前記不活性化処理液は、塩化ナトリウムまたは塩化ナトリウムを主要成分とする希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水であって、pHが2.0〜3.5の範囲で、有効塩素濃度が20ppm〜50ppmの範囲で、かつ、溶存酸素濃度が10mg/L〜20mg/Lの範囲にあることを特徴とする毒素産生菌類が産生する生成毒素の不活性化方法。 【請求項6】請求項4に記載の生成毒素の不活性化方法において、不活性化処理の対象とする生成毒素は、真菌類、ブドウ球菌類または桿菌類が産生する生成毒素であることを特徴とする毒素産生菌類が産生する生成毒素の不活性化方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、毒素を産生する菌類(本発明ではこれを毒素産生菌類と称する)の殺菌方法、および、当該毒素産生菌類により産生された毒素(本発明ではこれを生成毒素と称する)の不活性化方法に関する。 【0002】 【従来の技術】食品や飼料等の安全性を確保することは、ヒトや家畜等にとって極めて重要な要素の一つである。有毒な菌類(毒素産生菌類)およびその生成物(生成毒素)により汚染された食品や飼料等は、ヒトや家畜等の健康を害する原因となることから、食品や飼料等を汚染している毒素産生菌類を殺菌し、かつ、毒素産生菌類が産生する生成毒素を不活性化することは、食品や飼料等の安全性を確保するための重要な手段である。食品や飼料等を汚染して食中毒の原因となる微生物は多く存在するが、その代表例としては、真菌類、ブドウ球菌類、桿菌類等を挙げることができる。 【0003】食品の安全管理については、大規模な食中毒の発生を防ぐため、食中毒の原因となる病原性菌類の防除、増殖の抑制、殺菌等を重要視して、食品業界では、危害分析重要管理点という評価基準を設けて、この評価基準に適合する技術の開発を要請している。食品業界では、この要請に基づいて、食品のオゾン処理、電子ビーム放射処理等の技術が提案されている。また、特定された菌類である真菌およびその生成毒素であるアフラトキシンに対しては、高温によるアンモニアガス処理等が提案されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】すでに提案されているこれらの安全対策は、いずれの手段も、毒素産生菌類の殺菌を主たる目的としているもので、毒素産生菌類が産生する生成毒素の不活性化が不十分であったり、また、生成毒素の不活性化に十分な効果が認められる手段にあっては、食品の品質を損なうおそれがあるものであって、必ずしも実用的であるとは認められない。その上、これらのいずれの手段においても、処理に要するエネルギーの消費量が大きく、かつ、特殊な処理装置を必要とすることから、コスト的にも問題がある。このため、近年では、食品や飼料等の汚染防止の対策として、効果的で、かつ、省エネルギーを意図した技術のさらなる開発が要請されている。 【0005】本発明者は、電解生成酸性水の殺菌作用に着目してかかる問題に対処しようとするもので、その主たる目的は、毒素産生菌類の殺菌、および、当該毒素産生菌類が産生する生成毒素の不活性化を、特殊な装置を要することなく、少ないエネルギーの消費で効率よく行うことができる処理方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、毒素産生菌類の殺菌方法、および、毒素産生菌類が産生する生成毒素の不活性化方法に関するものであり、本発明に係る毒素産生菌類の殺菌方法にあっては、殺菌処理液として、無機塩の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水を採用することを特徴とするものである。また、本発明に係る生成毒素の不活性化方法にあっては、不活性化処理液として、無機塩の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水を採用することを特徴とするものである。 【0007】本発明に係る殺菌方法および不活性化方法で採用する殺菌処理液および不活性化処理液としては、塩化ナトリウムまたは塩化ナトリウムを主要成分とする希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水であることが好ましく、さらには、pHが2.0〜3.5の範囲で、有効塩素濃度が20ppm〜50ppmの範囲で、かつ、溶存酸素濃度が10mg/L〜20mg/Lの範囲にある強酸性の電解生成酸性水であることがより好ましい。 【0008】本発明に係る毒素産生菌類の殺菌方法、および、生成毒素の不活性化方法は、特に、真菌類、ブドウ球菌、桿菌等の殺菌処理に、また、これらの菌類が産生する生成毒素、すなわち、アフラトキシン、ブドウ球菌腸管毒素A(黄色ブドウ球菌エンテロトキシンA…SEA)、バチルスセレウス毒素等の不活性化処理に好適に採用できる。 【0009】 【発明の作用・効果】本発明に係る毒素産生菌類の殺菌方法においては、殺菌処理液として、無機塩の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水を採用しているものであり、当該電解生成酸性水が含有する高水準の有効塩素および溶存酸素の作用により、毒素産生菌類を迅速かつ効果的に殺菌することができるものである。また、当該電解生成酸性水が含有する殺菌能を有する有効塩素および溶存酸素は、殺菌処理中にまたはその後に速やかに消失して食品、飼料等の被処理物に残留することがなく、被処理物の処理後の安全性も十分に確保されるものである。 【0010】また、本発明に係る生成毒素の不活性化方法においては、不活性化処理液として、無機塩の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水を採用しているものであり、当該電解生成酸性水が含有する高水準の有効塩素および溶存酸素の作用により、毒素産生菌類が産生する生成毒素を迅速かつ効果的に不活性化することができるものである。また、当該電解生成酸性水が含有する不活性化能を有する有効塩素および溶存酸素は、不活性化処理中にまたはその後に速やかに消失して食品、飼料等の被処理物に残留することがなく、被処理物の処理後の安全性も十分に確保されるものである。 【0011】本発明に係る殺菌方法および不活性化方法においては、殺菌処理液および不活性化処理液として、塩化ナトリウムまたは塩化ナトリウムを主要成分とする希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水を採用することが好ましく、さらには、pHが2.0〜3.5の範囲で、有効塩素濃度が20ppm〜50ppmの範囲で、かつ、溶存酸素濃度が10mg/L〜20mg/Lの範囲にある強酸性の電解生成酸性水を採用することが好ましい。当該電解生成酸性水を採用すれば、毒素産生菌類を迅速かつ効果的に殺菌でき、また、生成毒素を迅速かつ効果的に不活性化することができることは勿論であるが、被電解水が塩化ナトリウムまたは塩化ナトリウムを主要成分とする希薄水溶液であることから、被処理物の処理後の安全性は一層確実に確保される。 【0012】本発明に係る毒素産生菌類の殺菌方法、および、生成毒素の不活性化方法は、特に、急性の肝臓障害や肝臓癌を惹起する真菌類、および、真菌類が産生する生成毒素に対して極めて有効な方法であり、また、大規模な食中毒を発生させるブドウ球菌類、および、ブドウ球菌類が産生する生成毒素、なかでも、黄色ブドウ球菌腸管毒素Aに対しても極めて有効な方法である。 【0013】なお、本発明に係る毒素産生菌類の殺菌方法、および、生成毒素の不活性化方法においては、桿菌等の殺菌処理や、桿菌類が産生するバチルスセレウス毒素の不活性化にも有効である。 【0014】 【発明の実施の形態】本発明は、毒素産生菌類の殺菌方法、および、毒素産生菌類が産生する生成毒素の不活性化方法に関するものである。毒素産生菌類の殺菌処理および生成毒素の不活性化処理においては、殺菌処理液および不活性化処理液として、無機塩の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水を採用するものである。殺菌処理液および不活性化処理液の好適な態様としては、塩化ナトリウムまたは塩化ナトリウムを主要成分とする無機塩、特に、食塩の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解により、電解槽の陽極側の電解室にて生成される強酸性の電解生成酸性水であって、pHが2.0〜3.5の範囲で、有効塩素濃度が20ppm〜50ppmで、かつ、溶存酸素濃度が10mg/L〜20mg/Lの範囲にあるものである。 【0015】本発明が殺菌処理の対象とする菌類は、毒素を産生する能力を有する菌類、すなわち毒素産生菌類であって、その菌類タイプには何等限定されるもではなく、各種タイプの毒素産生菌類を殺菌処理の対象とするものである。また、本発明が不活性化処理の対象とする生成毒素は、殺菌処理の対象とする毒素産生菌類が産生する生成毒素である。本発明が殺菌処理の対象とする菌類を例示すれば、アスペルギルスフラバス、アスペルギルスパラチティカスや、スタフィロコッカス(黄色ブドウ球菌)、ビブリオ、ウイルス、サルモネラ、バチラス等の食中毒を惹起する菌類等を挙げることができる。 【0016】これらの毒素産生菌のうち、その代表例の一つであるアスペルギルスフラバス、アスペルギルスパラチティカス等の真菌によっては、真菌毒素(マイコトキシン)のうちの最も強力なアフラトキシンが生成され、アフラトキシンは急性の肝臓障害や肝臓癌を惹起する。また、代表例の他の一つであるスタフィロコッカス(黄色ブドウ球菌)によっては、8種類のスタフィロコッカス・エンテロトキシン(ブドウ球菌腸毒素)A,B,C1,C2,C3,D,E,Fが生成される。スタフィロコッカス・エンテロトキシンのうちでは、スタフィロコッカスエンテロトキシンA(ブドウ球菌腸毒素A…SEA)が最も強力なもので、わずかな量で数時間のうちに食中毒を惹起する。 【0017】本発明は、NaCl等の無機塩の希薄水溶液を被電解水とする有隔膜電解にて生成される強酸性の電解生成酸性水を殺菌処理液としてこれらの毒素産生菌類を殺菌し、また、当該電解生成酸性水を不活性処理液として、これらの毒素産生菌類が産生する生成毒素を不活性化するものである。当該電解生成酸性水は、有隔膜電解槽を有する公知の電解水生成装置を電解運転することによって生成されるもので、電解槽を構成する陽極側の電解室にて生成される。当該電解運転では、同時に陰極側の電解室にて電解生成アルカリ水が生成される。 【0018】当該電解水生成装置の電解運転では、各種の運転条件によって特性の異なる電解生成水が生成されるが、NaClの0.1〜0.5重量%の希薄水溶液を被電解水として、区画された各電解室に配設されている各電極に直流電圧を印加することにより、陽極側の電解室にて、pHが2.0〜3.5の範囲で、有効塩素濃度が20ppm〜50ppmの範囲で、かつ、10mg/L〜20mg/Lの範囲にある強酸性の電解生成酸性水が生成される。各電極に対する印加電圧は、被電解水を連続して流動しつつ電解する連続式電解と、被電解水を各電解室に停滞させて電解するバッチ式電解とでは異なるが、数V〜数十Vの範囲で適宜設定することにより、殺菌処理液おび不活性化処理液に好適な電解生成酸性水を得ることができる。 【0019】表1には、特定された電解水生成装置を使用して生成された電解生成水の物理化学パラメーターを示しており、また、表2には、電解時間の電解生成酸性水の物理化学パラメーターに及ぼす影響を示している。表1および表2に示す電解生成水は、塩化白金を電極とし、イオン交換膜で区画された有隔膜電解槽を有する二室大容量型電解装置(葵電気株式会社製Superoxseed Labo JED−020 静岡市函南)を使用して、バッチ式の電解方法で生成されたものであり、表1に示す電解生成水は、超純水とNaClで調製された17.1mMのNaCl希釈水溶液を被電解水とし、室温(25℃)にて、電解電圧DC9〜12Vで10分間電解して生成されたものである。また、表2に示す電解生成酸性水は、超純水とNaClで調製された0.1重量%のNaClの希釈水溶液を被電解水とし、室温(25℃)にて、電解電圧DC9〜11Vで30分までの間電解して生成されたものである。 【0020】 【表1】
【0021】 【表2】
電解生成酸性水、電解生成アルカリ水、および、被電解水の調製に使用した超純水の物理化学パラメーターには、大きな相違が認められる。表1に示す電解生成水の物理化学パラメータは、17mMのNaCl水溶液を被電解水として10分間有隔膜電解して生成されたものであるが、電解生成酸性水は強酸性で、有効塩素濃度および溶存酸素濃度共に高く、ORP(酸化還元電位)も高い。これに対して、電解生成アルカリ水は強アルカリ性で、溶存酸素の濃度は低く、有効塩素は皆無に近く、ORPは極端に低い。また、これらの電解生成水は、超純水とは物理化学パラメーターを明らかに異にし、電解生成酸性水は酸化率が高く、電解生成アルカリ水は還元率が高いことが確認される。なお、有効塩素濃度は、セントラル化学株式会社(東京都)製の「有効塩素計」により電量滴定法に基づいて測定したものである。 【0022】強酸性の電解生成酸性水においては、酸化性成分として作用する有効塩素は、表2に示すように電解時間の長短により異なるものであって、有効塩素は経時的に漸次増大する。本発明においては、表1に示す物理化学パラメーターまたはこれに近似する物理化学パラメーターの電解生成酸性水を、殺菌処理液および不活性化処理液として採用するものである。 【0023】強酸性の電解生成酸性水は、毒素産生菌類を殺菌する殺菌能を有する有効塩素および溶存酸素を大量に含有していることから、当該電解生成酸性水を毒素産生菌類を殺菌するための殺菌処理液として採用することにより、毒素産生菌類を迅速かつ効果的に殺菌することができる。また、当該電解生成酸性水が大量に含有する有効塩素および溶存酸素は、毒素産生菌類が産生する生成毒素を不活性化するための不活性化能を有することから、当該電解生成酸性水を不活性化処理液として採用することにより、生成毒素を迅速かつ効果的に不活性化することができる。 【0024】当該電解生成酸性水では、含有する有効塩素および溶存酸素は、殺菌処理や不活性化処理中に、また、その処理後に速やかに消失して、食品、飼料等の被処理物に残留することがなく、被処理物の処理後の安全性を十分に確保されるが、特に、当該電解生成酸性水を生成するための被電解水として、塩化ナトリウムまたは塩化ナトリウムを主要成分とする食塩等の希薄水溶液を採用する場合には、殺菌処理や不活性化処理後の食品、飼料等の被処理物には、健康に有害となるおそれがある物質が残留することは全くなく、被処理物の処理後の安全性は一層十分に確保される利点がある。 【0025】 【実施例1】本実施例においては、食中毒の原因となり急性の肝臓障害や肝臓癌を惹起する真菌類の一種であるアスペルギルスパラチティカス、アスペルギルスパラチティカスが産生する真菌毒素の一種であるアフラトキシンを採用して、これらを殺菌および不活性化するための実験を行った。本実験では、殺菌処理液および不活性化処理液として、電解生成酸性水および電解生成アルカリ水を採用して処理し、処理の効果を、アフラトキシンの高性能薄層クロマトグラフイー分析(HPTLC)、高性能液体クロマトグラフイー分析(HPLC)、ヒスチジン要求性サルモネラ菌変異株TA−98、および、同TA−100菌株に対する突然変異誘発性試験によって評価した。結論的に云えば、アスペルギルスパラチティカスの殺菌およびアフラトキシンの不活性化には、強酸性の電解生成酸性水が極めて有効であり、電解生成アルカリ水ではその有効性は認められない。これは、強酸性の電解生成酸性水が高水準で含有する有効塩素と溶存酸素に起因するものと推測される。 【0026】例えば、0.01mL中103胞子の濃度のアスペルギルスパラチティカスは、50倍量(0.5mL)の強酸性の電解生成酸性水の下では、その増殖が完全に抑制できた。ヒスチジン要求性サルモネラ菌変異株TA−98および同TA−100菌株に対するアフラトキシンB1(AFB1)の突然変異誘発性は、AFB1を強酸性の電解生成酸性水で処理したものでは著しく弱くなることが確認された。また、AFB1を強酸性の電解生成酸性水で処理した場合には、HPLC分析でのAFB1に相当するピークは認められず、AFB1は強酸性の電解生成酸性水での処理によって分解されたことを確認した。これに対して、電解生成アルカリ水には、アスペルギルスパラチティカスの増殖抑制効果も、AFB1の突然変異誘発性の低下も認められなかった。 【0027】本実験の結果からすれば、強酸性の電解生成酸性水は、真菌類に対して強力な殺菌作用を有すること、真菌毒素(マイコトキシン)に対して強力な不活性化作用を有することが確認され、食品および飼料の処理に極めて有効であることが確認された。以下には、本実験の詳細な条件と結果を示す。 (1)アスペルギルス寄生菌の殺菌実験:大阪発酵研究所(大阪市道修町)から購入したアスペルギルスパラチティカスIFO−30179(ATCC15517相当)を用いて、真菌毒素産生菌類に対する電解生成水の抗菌作用を確認する実験を行った。凍結乾燥した菌類の胞子を、滅菌した蒸留水中に105(10万個)胞子/mLの濃度となるように懸濁させた後、アスペルギルスフラビンおよびアスペルギルスパラチティカス用に特定された液状媒体(AFAP媒体)に接種した。菌類を2〜10時間増殖させた後、細胞数の概算のため部分標本を採り、培養菌を希釈して105(10万個)cfu/mL濃度の菌株細胞懸濁液を調製した。 【0028】殺菌実験のため、103(1000個)cfuを含む菌株細胞懸濁液10μLを多数用意し、これらに、NaClの希薄水溶液を被電解水とする電解により生成された電解生成水を、0.01mL、0.02mL、0.1mL、0.2mL、0.5mLを別々に混ぜ、室温で12時間(一晩)培養した。次いで、各懸濁液に滅菌した蒸留水を1.01mLの量になるまで加え、その後、希釈されたサンプル液各0.5mLをAFPA寒天培地に接種して、25℃で5日間培養した。殺菌効果の評価は、寒天プレート上の細菌コロニーの発生状態により評価した。なお、当該殺菌実験では、生物障害防止のため、全ての実験工程を隔離された安全ボックス内で行った。 (2)アフラトキシンの不活性化実験:殺菌実験で採用したアスペルギルスパラチティカスの二次代謝物であるアフラトキシンの不活性化実験を行った。高性能薄層クロマトグラフィー(HPTLC)で分析したアフラトキシンB1,B2,G1,G2を10ngずつ混合した計40ng、および、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したアフラトキシンB1(AFB1)のみの10ngに電解生成水を加え、突然変異誘発性を調べるために、これらの液をクロロホルムに浸した。クロロホルムを、窒素ガスを流しながら慎重にアフラトキシンから蒸発させ、異なった量の電解生成水を10分間加えて、アフラトキシンの分解を確認した。AFB1の不活性化実験では、0℃、20℃、30℃、45℃の温度で、異なる処理時間で繰り返し行い、処理温度および処理時間の2つのパラメーターがアフラトキシンの電解生成水による分解に及ぼす影響を確認した。 【0029】なお、アフラトキシンは、毒性が強くて肝癌誘発性であるため、その取り扱いは安全キャビネット内で行い、体内に摂取しないように、ゴム手袋と保護マスクを着用して行った。実験後は、余剰の電解生成酸性水でアフラトキシンを分解処理し、密閉した試験管に入れて、120℃で15分間オートクレーブによる消毒を行ってから廃棄した。 【0030】電解生成水の反応性化学種は完全には特定されていないが、電解生成酸性水中の主要な反応化学種は次亜塩素酸(HOCl)である。しかしながら、アフラトキシン溶液の電解生成酸性水に対するモル濃度混合比は、有効塩素濃度および/または次亜塩素酸濃度のnmol値を元に算出したため、1:1〜1:200までの幅がある。一方、電解生成アルカリ水の反応性化学種は、NaOHと溶解水素以外は知られていないため、10倍量の電解生成アルカリ水をAFB1に混合した。電解生成水のいずれの実験でも、10分間培養した後に無水エタノールを最終的に1mlの量となるように加えた。 【0031】比較例として、現在食材の殺菌に使用されているNaOClの、HPTLによるCAFB1斑点の消失に対する効果を確認するため、AFB1にNaOCl水溶液を8:1の比率(有効塩素のAFB1に対するモル濃度比)で室温で10分間、アルカリ性および酸性の両方の条件で混合した。NaOClはそれ自体、強アルカリ性(pH11.5)であるため、NaOClに0.01NのHCl水溶液を慎重に加えてpH3.0まで下げて弱酸性の処理液を調製して、この処理液にAFB1を混合した。 【0032】本実験では、AFB1の分解状態を、先ず、HPTLCおよびHPLCによるクロマトグラフィーのパターン上の変化に基づいて評価し、その後、ヒスチジン要求性サルモネラ菌変異株TA−98および同TA−100の菌株に対する突然変異誘発性に基づいて評価した。 (3)ラジカル・スカベンジャーの効果:HOClから発生したOH基および/またはCl基等の反応性化学種が殺菌処理に関与していると仮定して、AFB1の処理前に、OH基スカベンジャーと看なされているマンニトールとチオ尿素で電解生成酸性水の前処理を行った場合の効果を確認した。マンニトールは1:10の比率(AFB1の有効塩素に対するモル濃度比)で、また、チオ尿素は0.1:1の比率(チオ尿素の有効塩素に対するモル濃度比)で電解生成酸性水に加えた。この場合、有効塩素はHOClのモル濃度に相当する。マンニトールおよびチオ尿素をそれぞれ含む各電解生成酸性水によるAFB1の処理は、室温で10分間行い、CHCl3(クロロホルム)で反応生成物を抽出し、HPLCで分離して、AFB1中の変化を確認した。 (4)処理されたアフラトキシンのクロマトグラフィー分析:(4a)高性能薄層クロマトグラフィー(HPTLC):アフラトキシンを異なったモル濃度比の電解生成水で処理した後、エチルアルコールを1.0mLまで加えるとともにエチルアセテートを0.5mL加えてよく振り、アフラトキシンと反応生成物を有機溶媒相に抽出した。エチルアセテートをN2ガスを流しながら慎重に蒸発させてから、新たにエチルアセテートを0.01mL加えた。(アフラトキシン/電解生成水)反応混合液から抽出したエチルアセテート20μLと、AFB1溶液またはアフラトキシン混合液のいずれか20μLを、電解生成水による処理の有無で、HPTLCプレート(10×10cmのシリカゲル60コーティング済みプレート)に載せ、CHCl3:アセトン=9:1(v/v)の比率で7cm顕色した。アフラトキシンは、UV−A(365nm)の照明で、青白い斑点として検出される。 (4b)高性能液体クロマトグラフィー(HPLC):HPLC分析は、誘導体化の有無の条件で行った。初めに、AFB1と電解生成酸性水に反応させたAFB1とを、CH3CN:H2O=35:65(v/v)の混合液で、室温中、流量1.0mL/minにて溶出した逆相オクタデシル・コラム(Zorbax ODS…4.6×250mm、DuPont Co製)を用いて、HPLCによる分析を行った。アフラトキシンは、ヘウレットパカードHP1046A(Hewlett Packard HP1046A)プログラム可能蛍光検知器で365nmで励起し、412nmで放射する蛍光光度法にて検出した。HPLCによる分析前に、AFB1と、電解生成酸性水に反応させたAFB1をトリフルオロアセチル誘導体に変換した。 【0033】コントロールとして、エタノール10μLに10ngのAFB1を入れ、無水トリフルオロアセチル酸(TFA−アンヒドリン)20μLを瓶に入れて密閉した状態でよく振り、トリフルオロアセチル化させた後、室温の暗所で15分間培養した。その後、アセトン:水=1:9(v/v)の混合液180μLを加え、溶液をよく振って混ぜてから、HPLCにかけた。同様に、反応させたAFB1溶液を真空状態で蒸発させて、上記した手順でトリフルオロアセチル化させた。 【0034】次に、逆相コラムODS−80TM(4.6×150mm:TOSO社製 TSK−Gel)で、化学的に誘導化せずに分析した。段階的溶出法を用いて、0分〜40分後までは、1.0mL/minの流量で水中に30%のアセトニトリルを流し、その後40分〜70分後まではアセトニトリルを30%〜100%に線形上昇させた。溶出物は上記した蛍光光度法にて測定した。ラジカル・スカベンジャー実験では、溶出のピークは365nmで測定した。 (5)ヒスチジン要求性サルモネラ菌変異株TA−98および同TA−100に対する突然変異誘発性実験:AFB1の突然変異誘発性は、ヒスチジン要求性サルモネラ菌変異株TA−98および同TA−100を用いて行い、従来のエームズ試験法に基づいて評価した。ヒスチジン・フレームシフト突然変異菌を含むヒスチジン要求性サルモネラ菌変異株TA−98、および、ヒスチジン・ミスセンス突然変異菌を含むヒスチジン要求性サルモネラ菌変異株TA−100の培養菌は、大阪発酵研究所(大阪市北区道修町)から購入したものである。 【0035】200ngのAFB1(0.64nmol)に、0.76nmol等量のHOClを含む電解生成酸性水100μL、または、電解生成アルカリ水100μLを混ぜた後、20μLの部分標本を、S9混合液(pH7.5)またはリン酸塩緩衝液500μLに加え、次いで、107cfu/mLを含むヒスチジン要求性サルモネラ菌変異株TA−98または同TA−100を100μL加えた。コントロールとしては、電解生成水に代えて、ジメチルスルホキシド100μLを加えた。 【0036】混合液を十分に振って、37℃で20分間培養した後、ソフト寒天2mLを加えてから、Vogel−Bonner E 寒天培地に接種して、37℃で48時間放置した。突然変異誘発性は、S9混合液が存在するときに発生する復帰変異体のコロニー数で評価した。その他の実験条件は、Swenson他によるAFB1−2,3−ジクロライド(二塩化物)の突然変異誘発性分析と同様にした。 (6)ESRによるラジカル種の特定:電解生成酸性水をESR分光鏡検査法にて分析し、水酸基(OH)が殺菌作用に関与しているか否かを確認した。電解生成酸性水200μLに、スピン拘束剤DMPO(5,5−ジメチル−1−ピロリン−酸化物)の890mM溶液10μLを混ぜてスピン付加物を作り、JES−RE3X/ESR データシステムESPRIT330(JEOL)および上記した実験条件にてESR分光鏡検査法による分析を行った。 (7)結果および考察:(7a)電解生成水によるアスペルギルスパラチティカスの殺菌効果:表3には、電解生成酸性水および電解生成アルカリ水を処理液として、アスペルギルスパラチティカスを殺菌処理した場合の結果を示している。当該殺菌処理では、10μLの細胞懸濁液(103cfu)を、各処理液に種々の混合比に添加し、その後、AFAP寒天プレート上に接種して25℃で5日間培養している。表3に示すコントロールとは、処理液を加えない場合を意味する。菌類の増殖については、cfuでは正確に測定できないので、増殖結果を半定量状態で表示している。 【0037】 【表3】
すなわち、+++印は菌類がプレート上で完全に増殖している状態を示し、±印はわずかにコロニーを形成している状態を示し、−印は菌類の増殖が認められない状態を示している。処理液として強酸性の電解生成酸性水を採用する場合には、細胞懸濁液(103cfu)の50倍量でほぼ完全に殺菌することができる。一方、処理液として強アルカリ性の電解生成アルカリ水を採用する場合には、アスペルギルスパラチティカスを殺菌することはできない。 【0038】また、図1は、上記した条件にて30℃で5日間培養した状態の複数個のペトリ皿の表面を示す写真であり、これらの写真中、左下の写真(Control)はコントロール処理後のペトリ皿の表面上の菌類培養状態、右下の写真(×10vol)は電解生成酸性水の10倍量での処理後のペトリ皿の表面上の菌類培養状態、左上の写真(×20vol)は電解生成酸性水の20倍量での処理後のペトリ皿の表面上の菌類培養状態、上中央の写真(×50vol)は電解生成酸性水の50倍量での処理後のペトリ皿の表面上の菌類培養状態、右上の写真(×100vol)は電解生成酸性水の100倍量での処理後のペトリ皿の表面上の菌類培養状態を示している。 【0039】これらの写真中、コントロール処理後のペトリ皿の表面を示す左下の写真(Control)、電解生成酸性水の10倍量での処理後のペトリ皿の表面を示す右下の写真(×10vol)、電解生成酸性水の20倍量での処理後のペトリ皿の表面を示す左上の写真(×20vol)では、ペトリ皿の表面に白い綿毛状の菌糸体が認めらる。これに対して、電解生成酸性水の50倍量での処理後のペトリ皿の表面を示す上中央の写真(×50vol)、電解生成酸性水の100倍量での処理後のペトリ皿の表面を示す右上の写真(×100vol)では、菌糸体の存在は全く認められない。 【0040】以上の結果は、モデル実験で得られたもであり、実際に黒コショウとターメリックの表面に付着した真菌類を電解生成酸性水で殺菌処理した結果では、アスペルギルスパラチティカスを完全に殺菌するには、モデル実験で得た結果より大量の電解生成酸性水を要した。この場合、電解生成酸性水による処理後に電解生成アルカリ水で同様に処理すると、アスペルギルスパラチティカスを極めて効果的に殺菌除去することができることを確認した。アスペルギルスパラチティカスの殺菌処理において、互いに特性の異なる電解生成酸性水と電解生成アルカリ水を併用することは、有効な手段であるものと推測される。 (7b)アフラトキシン分解のHPTLC評価:アフラトキシンを異なったモル濃度比の電解生成水で処理した後、溶液のHPTLC分析を行った。その結果を、HPTLCの分析状態の写真として、図2の(a)〜(d)に示す。 【0041】図2の(a)は、電解生成酸性水による処理の有無における、アフラトキシンB1,B2,G1,G2(各10ng)の個別のHPTLCと、これらの全ての混合物(アフラトキシンB1,B2,G1,G2Mix)の処理無しのHPTLCとを示すものである。数字は、アフラトキシン混合物の電解生成酸性水に対するモル濃度混合比を示す。すなわち、(1)は1:1、(2)は1:4、(3)は1:6、(4)は1:8、(5)は1:10、(6)は1:20、(7)は1:40、(8)は1:60のモル濃度混合比を示している。 【0042】図2の(b)は、電解生成水による処理後のAFB1のHPTLCの分析状態をを示す写真である。10ngのAFB1を、(1:1)〜(1:10)モル等量の有効塩素を含有する電解生成酸性水に混合し、また、電解生成アルカリ水については有効塩素を含有していないため、AFB1溶液に1〜10倍量の電解生成アルカリ水を混合した。数字1はコントロールAFB1(10ng)、数字2〜5は、1倍、3倍、5倍、10倍モル等量の有効塩素を含有する電解生成酸性水で処理したAFB1を示し、数字6〜9は、1倍、3倍、5倍、10倍量の電解生成アルカリ水で処理したAFB1を示す。なお、矢印はAFB1の斑点を示す。 【0043】図2の(c)は、pH11.5のNaOCl水溶液による処理後のAFB1のHPTLCの分析状態を示す写真である。10ngのAFB1を、(1:1)〜(1:8)モル等量の有効塩素を含有するpH11.5のNaOCl水溶液に混合した。符号CはコントロールAFB1を示し、数字1〜8は、1倍〜8モル等量の有効塩素を含有するNaOCl水溶液で処理したAFB1を示す。なお、矢印はAFB1の斑点を示す。 【0044】図2の(d)は、pH3のNaOCl水溶液による処理後のAFB1のHPTLCの分析状態を示す写真である。10ngのAFB1を、(1:1)〜(1:8)モル等量の有効塩素を含有するpH3のNaOCl水溶液に混合した。符号CはコントロールAFB1を示し、数字1〜8は、1倍〜8モル等量の有効塩素を含有するNaOCl水溶液で処理したAFB1を示す。なお、矢印はAFB1の斑点を示す。 【0045】これらの各図を参照すれば明らかなように、HPTLCプレート上のAFB1の蛍光斑点とアフラトキシンB1,B2,G1,G2混合物の蛍光斑点は、モル濃度の7倍の有効塩素を含有する電解生成酸性水で処理することにより消滅した(図2のaを参照)。強酸性の電解生成酸性水による処理では、AFB1の蛍光斑点を完全に消滅させることができるが、強アルカリ性の電解生成アルカリ水の処理では、AFB1の蛍光斑点を消滅させることはできず、AFB1に対する効果がないことが確認される(図2のbを参照)。AFB1をモル濃度の8倍のpH11.5のNaOCl水溶液で処理しても、AFB1の蛍光斑点は消滅しなかった(図2のcを参照)。NaOCl水溶液をpH3.0に調製したNaOCl水溶液でAFB1を処理した場合には、AFB1の蛍光斑点は消滅した(図2のdを参照)。 【0046】以上に結果から、アフラトキシンの破壊に関与している化学種は、ClO-イオンではなく、反応性の酸素と作用するものと推測されるHClO、および、HOClから発生する化学種であるものと推定される。 (7c)アフラトキシン分解のHPLC評価:アフラトキシンを異なったモル濃度比の電解生成酸性水で処理した後、溶液のHPLC分析を行った。図3は、38.4ngのAFB1のクロマトグラムを示すもので、図3のチャート(a)はコントロール、同図のチャート(b)はモル濃度比3倍の電解生成酸性水で処理した場合、同図のチャート(c)はモル濃度比7倍の電解生成酸性水で処理した場合の、経時的なAFB1ピークのチャートである。図3に示すAFB1ピークのチャートを参照すると、5.1分後に溶出したAFB1ピークは電解生成酸性水のモル濃度比(有効塩素に基づく)が増加するに従って減少し、モル濃度の7倍の有効塩素を有する電解生成酸性水で処理した場合には、AFB1ピークは完全に消滅することが確認される。なお、3.1分後と8.3分後に溶出するピークについては、未だ特定されていないが、8.3分後のピークは、電解生成酸性水で処理した後に形成されるAFB1に関連する生成物であるものと推測される。 【0047】なお、図4は、AFB1減少量と電解生成酸性水の量との関係を示すグラフであり、AFB1に対する電解生成酸性水の混合量を、HOClモル濃度を基準にして増大させると、混合量の増大に応じてAFB1減量が減少することが確認される。 (7d)反応時間、温度、有効塩素濃度の影響:AFB1およびその反応物に対する電解生成酸性水による処理時間の影響の実験を行って、HPLCで評価した。AFB1(72.4μM)を、pH2.0で、Cl-濃度20mMの電解生成酸性水(有効塩素72.4μM)にて、0℃で5分間および60分間処理した。その結果(クロマトグラム)を図5に示す。この結果は、HPLCによる分析に基づくものであるが、反応生成物を誘導体化しない条件下のもので、図3に示すクロマトグラムとは異なるものである。図5のチャートaを参照すると、AFB1は12.5分後に単独のピークとして溶出するが、このピークは、0℃の電解生成酸性水による5分後および60分後の処理では、8分後の大ピークと35分後の小ピークに置換することが認められる。 【0048】図6に示すグラフ(a),(b)は、AFB1の分解、および、8分後に溶出する反応生成物の出現に対する温度と処理時間の関係を示すもので、これらのグラフのうち、グラフ(a)はTR=12.5min後に出現するピーク(AFB1)であり、グラフ(b)はTR=8min後に出現するピーク(反応生成物)のものである。各グラフにおける縦軸は蛍光光度のピーク面積比を示し、横軸は処理時間を示す。各グラフを参照すると、AFB1(ピークTR=12.5min)の量が減少すると、反応物質(ピークTR=8min)の量が増大することが認められる。また、低温による処理では、AFB1の消滅は多少遅れるが、0℃での5分間の処理によっても、AFB1はそのほぼ40%が消滅していることが確認される。8min後に溶出するるピークは、AFB1の反応生成物や電解生成酸性水が含有する次亜塩素酸であるものと推測される。この反応は、AFB1が0℃での処理によって大幅に消滅していることから、遊離基によって惹起されていることが推測される。 【0049】図7は、AFB1の分解に対する有効塩素濃度の影響を示すクロマトグラムであり、下記の実験で得た結果である。すなわち、AFB1(0.8nmol)を、2〜200倍のモル濃度比の有効塩素(1.6〜160nmol)の電解生成酸性水に、Cl-イオン濃度を20mMに保持した状態で混合して、30℃で10分間処理し、その後、HPLC分析を行った結果である。なお、コントロール、モル濃度比2倍(×2)、モル濃度比10倍(×10)のクロマトグラムは、元のサイズの1/8倍で表示している。 【0050】AFB1を電解生成酸性水中の等モル濃度のHOClで5分間処理すると、AFB1は40%減少する。電解生成酸性水中の有効塩素を増加すると、2倍量の有効塩素では、AFB1を30℃で10分間処理した場合には、AFB1は完全に消滅している。AFB1を10倍量の有効塩素を含有する電解生成酸性水で処理すると、4分後のピーク、8分後のピーク、32分後のピークが減少している。一方、13分後に溶出するピークは、有効塩素が増加するのに応じて増加している。AFB1を200倍量の有効塩素を含有する電解生成酸性水で処理した場合には、クロマトグラフ上の全てのピークが大幅に減少している。 (7e)ラジカル・スカベンジャーによるAFB1分解抑制の影響:AFB1(0.128mM)を電解生成酸性水により処理するに当たって、電解生成酸性水にマンニトールまたはチオ尿素のいすれかを、有効塩素(0.640mM)に対するモル濃度比を増やしながら加えた。これらの各電解生成酸性水でAFB1(0.128mM)を30℃で10分間処理して、ラジカル・スカベンジャーによるAFB1分解抑制の影響を評価した。得られた結果を、図8および図9のグラフに示す。 【0051】図8は、マンニトールを有効塩素の2〜10倍のモル濃度に加えた場合の影響を示すグラフであり、図9は、チオ尿素を有効塩素の0.1〜1.0倍のモル濃度に加えた場合の影響を示すグラフであって、縦軸は365nmで観察したコントロールAFB1の全ピーク範囲の合計に対する%として算出したAFB1のHPLCピークの強さ(残存AFB1)を示し、横軸はラジカル・スカベンジャーの有効塩素に対するモル濃度比を示す。 【0052】電解生成酸性水が含有する有効塩素に対するマンニトールのモル濃度比が高くなると、破壊されたAFB1の割合が低くなり、ラジカル・スカベンジャーがチオ尿素である場合も同様である。但し、ラジカル・スカベンジャーがチオ尿素である場合は、有効塩素に対するチオ尿素が1/10の量の電解生成酸性水では、25%のAFB1しか分解されず、チオ尿素を有効塩素と同じ割合にした場合には、AFB1の分解は全く認められない。本実験の結果では、マンニトールおよびチオ尿素、特に、チオ尿素のラジカル・スカベンジャーとしての効果は、AFB1の消滅が遊離基を媒介とする反応によるものであることを明確に示している。マンニトールについては、マンニトールがAFB1を電解生成酸性水から完全に保護し得なかったのは、本実験で使用したマンニトールの濃度が十分でなかったためと推測される。従って、マンニトールにOH基スカベンジャーとしての効果を発揮させるためには、飽和状態に近い濃度が必要であるものと推測される。 (7f)電解生成酸性水のアフラトキシン突然変異誘発性に及ぼす影響:アフラトキシンの突然変異誘発性実験を、マロン・アメズ法(Maron and Ames 1983)に則って、His−ヒスチジン要求性サルモネラ菌変異株TA−98および同TA−100で行った。3nmolのAFB1を、40ppmの有効塩素を含有する電解生成酸性水の異なった量で、室温下、10分間処理した。次いで、これらの溶液にS−9混合液を入れて20分間予備培養した後、ヒスチジン要求性サルモネラ菌変異株を入れて、37℃で48時間培養した。結果を表4に示す。なお、表4に示すデータは、〔(サンプルのcfu−ブランクのcfu)/(ブランクのcfu)〕×100で算出し、相対突然誘発性パーセントで表示している。NGは、マイナス成長(コントロールを下回るcfu)を意味する。また、電解生成酸性水の量は、HOClのnmol値を表示している。 【0053】 【表4】
表4を参照すると明らかなように、3nmolのAFB1は、ヒスチジン要求性サルモネラ菌変異株TA−98および同TA−100のいずれに対しても、高い突然変異誘発性を示すが、AFB1を電解生成酸性水で10分間処理すると、AFB1の突然変異誘発性は、電解生成酸性水のHOCl濃度の増大に応じて低下することが認められる。AFB1の突然変異誘発性は、電解生成酸性水中の有効塩素量を173nmolのHOClに相当する58倍にして処理すると著しく低下する。電解生成酸性水中の有効塩素量をさらに増大すれば、AFB1の突然変異誘発性を消滅させることができる。 (7g)電解生成酸性水中の化学種のESR分析:ラジカル種を特定するため、スピン拘束剤DMPO(5,5’−ジメチル−1−ピロリン−N−オキサイド)を用いて、電解生成酸性水のESR分析を行った。先ず、OH基の形成を示す弱いスペクトルが得られ、次いで、このスペクトルを強化するため、1mMのFeSO4と10mLのDMPOを電解生成酸性水に加えた。Fe2+イオンが存在する場合、図10に示すように、OH基に対するDMOPの典型的な反応(Fenton反応)を示すESRスペクトルが得られ、電解生成酸性水には、H2O2も含まれることがわかる。以上の結果は、電解生成酸性水中には、OH基とH2O2が存在していることを示している。また、酸性のpHでは、電解生成酸性水中にHOClが存在することも、分光光度法にて確認している。 (8)考察のまとめ:強酸性の電解生成酸性水は、アスペルギルスパラチティカスを殺菌し、アフラトキシンAFB1の突然変異誘発性を消失させることが確認された。また、アフラトキシンAFB1は、電解生成酸性水で処理することにより分解されることがHPLC分析で確認された。但し、電解生成酸性水の処理によって、生成される反応生成物の化学式については、LC−MS法およびNMR法により特定している。 【0054】 【実施例2】本実施例においては、食中毒を惹起する代表的なブドウ球菌が産生するブドウ球菌腸毒素A(SEA)を不活性化するための実験を試みた。食中毒の原因となる病原菌を殺菌することは一般に行われていることであるが、病原菌を殺菌しても、病原菌が産生する生成毒素が活性を完全に失っていない場合があるため、本実験を試みた。 【0055】本実験で不活性化処理の対象とした毒素は、腸毒素型疾患の原因となるブドウ球菌腸毒素中の最強のブドウ球菌腸毒素A(SEA)であり、SEAは、シグマ社(Sigma社,米国ミズリー州セントルイス)より購入したものである。SEAは、わずか0.4ng/mL〜0.8ng/mLの濃度でも、3時間〜5時間以内にヒトに食中毒を惹起するもので、熱的には極めて安定していて、その毒性は100℃で30分処理しても残存し、強酸および強アルカリに対して大きい抵抗力を有する強力な毒性を持っている。 【0056】また、本実験で不活性化処理液として採用した電解生成水は、塩化白金を電極としイオン交換膜で区画された有隔膜電解室を有する二室大容量型電解装置(葵電気株式会社製Superoxseed Labo JED−020 静岡市函南)を使用して、バッチ式の電解方法で生成されたものである。被電解水としては、脱イオン水にNaClを溶解して調製された0.1%濃度の希薄水溶液を採用し、室温(25℃)にて、電解電圧DC9〜11Vで12分間電解して生成されたものである。当該電解によれば、電解槽の陽極側の電解室では、有効塩素濃度が約36.3ppm、酸化還元電位(ORP)が+1180mV、pH2.5〜2.8の強酸性の電解生成酸性水が生成され、また、電解槽の陰極側の電解室では、ORPが−880mV、pHが11.6〜12.0の強アルカリ性の電解生成アルカリ水が得られる。 【0057】本実験では、ブドウ球菌腸毒素A(以下これをSEAという)を一定量含む溶液に、異なった量の強酸性の電解生成酸性水(実施例)、強アルカリ性の電解生成アルカリ水(比較例)を添加して30分間撹拌してSEAの不活性化処理を行い、SEAに対する不活性化処理の効果を、RPLA法、免疫検定法、天然ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動法(PAGE)、アミノ酸分析法によって評価した。 【0058】得られた結果から結論すれば、SEAを大量(10倍量以上)の強酸性の電解生成酸性水で処理すると、SEAおよび特定の抗SEA抗体間の免疫反応性が消失し、SEA蛋白質が分裂し、アミノ酸、特にメチオニン(Met)、チロシン(Tyr)、イソロイシン(Ile)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)の含有量が減少することが判明した。これらの現象は、SEAが不活性化されたことを意味する。ブドウ球菌によって培養菌ブロス中に排出されるSEAも、大量の強酸性の電解生成酸性水で処理することにより、不活性化できることが判明した。以下には、本実験の詳細な条件と結果を示す。 (1)ブドウ球菌腸毒素A(SEA)の不活性化実験:有機物無しの媒体でのモデル実験では、2.8μg/mLのリン酸緩衝食塩水溶液(PBS:pH7.4)を基礎溶液として、これに、シグマ社(Sigma社,米国ミズリー州セントルイス)から購入したSEAを懸濁させた。PBS25μL中にSEAを70ng含有するサンプル溶液を、0μL、75μL、125mL、250mLの電解生成酸性水または電解生成アルカリ水に混合し、室温で30分間培養した。次いで、1%のマンニトールをそれぞれ400μL、325μL、275μL、150μL加えて反応を停止して、25μLの部分標本を、メーカーの取扱説明書に従ってRPLA法に基づいて分析した。SEA含有量の半定量分析を、標準のSEA溶液を37℃で24時間培養した場合の結果と比較して行った。 【0059】70ngのSEAを含有する懸濁液のサンプル溶液を、HOClのSEAに対するモル濃度比の約230、380、760にそれぞれ相当する3倍、5倍、10倍の量の電解生成酸性水に混合して、室温で30分間放置した。同様に、100ngのSEAを含有する懸濁液のサンプル溶液を、同じ体積比の電解生成アルカリ水に混合して、室温で30分間放置した。サンプル溶液の分析では、SEAについてはRPLA法およびELISA法で、タンパク質については天然PAGE法で、アミノ酸混合物についてはHPLC法で行った。 (2)SEAを含有する液体培養ブロスの不活性化実験:黄色ブドウ球菌によって産生されるSEAを含有するブロスを使用して、有機媒体に細胞外放出されたSEAの、電解生成酸性水による不活性化実験を行った。脳−心臓注入液体媒体に懸濁させたSEA(100ng/mL)を、培養ブロス(25μL)に細胞外放出されたSEAと看なして、これを、5倍、10倍、25倍、50倍、75倍、100倍、125倍の量の電解生成酸性水(有効塩素36.3ppm、pH2.31、ORP1158mV)に混合して5分間放置し、その後にRPLA法で分析した。コントロールとして、70ngのSEAを含有する上澄み液(25μL)を、電解生成酸性水ではなくて、10倍量のPBSに混合した。細胞上澄み液から出たSEAと、ラテックスのビード(珠)に結合した抗SEAとの反応後の凝結を、37℃で24時間培養した後で評価し、これをコントロールの場合と比較した。 (3)SEA凝縮の酵素結合免疫吸着剤検定法(ELISA):RPLA法は半定量測定法にすぎないため、SEAの変性を、ELISA法によっても確認した。電解生成酸性水150μLとSEA150μLを、複数容器微量滴定プレート(ファルコン マイクロテストIII フレキシブル検定プレート、Becton Dickinson and Co製、米国ニュージャージー州)に加えて37℃で2時間培養し、SEAを凝固させた。次いで、電解生成酸性水と未凝固のSEAを捨てて、凝固したSEAを2%のウシ血清アルブミン(BSA)/PBSで室温下、30分間ブロッキング(粘着)させた。BSA/PBS溶液は捨て、容器中のPBSに0.05%のTween−20を150μL入れて3回洗浄した。 【0060】次いで、抗SEA抗体150μL(Sigma Chemical社製、米国ミズーリ州セントルイス)を、一次抗体の20,000倍に希釈して加え、プレートを37℃で1時間培養した。その後、この溶液を捨てて、PBSにTween−20を入れて容器を洗浄した。続いて、各容器に、1,000倍に希釈したラビットIgGに対する過酸化酵素親和標識純化抗体(Kirkegaard& Perry Laboratories製、米国メリーランド州ゲテルズバーグ)150μLを加え、37℃で1時間培養した。さらに、この溶液を捨てて、PBSにTween−20を入れて容器を洗浄した。続いて、各容器に0.03%の2,2’−アジノジ−3−スルホン酸エチルベンズチアゾリンと0.1%の過酸化水素の混合物150μLを加え、37℃で1時間培養した。各容器の吸収は、マイクロプレート・リーダー(Corona Electric Co製MTP−120、東京)により415nmにて確認した。 (4)不活性化後のSEAとその反応生成物の天然PAGE分析:電解生成酸性水により処理したSEAの変性を確認した。電解生成酸性水による処理の前後のSEA溶液を、7.5%のポリアクリルアミド・ゲルと25mMトリス−190mMグリシン電気泳動緩衝液(pH8.3)を用いて、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動法(PAGE)で確認した。タンパク質の帯は、Commassie Brilliant Blue染色で視覚化した。 (5)電解生成酸性水の処理の有無のSEAアミノ酸構成分析:電解生成酸性水の処理後のSEAのアミノ酸の構成を、処理なしのSEAの場合と比較した。SEAを、1%のフェノールを含有する6NのHClを用いて、110℃で24時間加水分解した。加水分解によってSEAから放出された遊離アミノ酸を、イソチオシアン酸フェニル(PTC)で誘導体化した後、逆相PICO−TAGコラム(3.9×150mm、Waters Associates社製)を用いて、254nmで紫外線吸収を観察して、HPLC法で分析した。PTCアミノ酸誘導体は、プログラミングされた勾配で、溶液Aと溶液Bから溶出させた。溶液Aは、0.2%(v/v)トリエチルアミンを50:3の割合(v/v)で含むアセトニトリルで、0.14M酢酸ナトリウムでpH6.8に調製したもの、溶液Bは60%のアセトニトリルである。 (6)結果および考察:(6a)電解生成水によるブドウ球菌毒素A(SEA)の不活性化効果(RPLA法による):70ngのSEAを、異なった量の電解生成酸性水と電解生成アルカリ水で30分間処理した場合(有機物なしのモデル試験)のRPLA法による分析結果を図11のグラフに示す。同グラフにおいては、縦軸が残存するSEAの量(ng/mL)を示し、横軸は電解生成水のSEAに対する混合比を示している。 【0061】SEAの不活性化に使用する電解生成酸性水の量は、実験結果に大きな影響を及ぼすことが確認された。有機物なしのモデル試験では、SEAを等量の電解生成酸性水で処理した場合には、SEAの不活性化の効果はほとんど認められないが、3倍量の電解生成酸性水で処理した場合には、SEAの量は約25%減少した。SEAの不活性化の効果は、電解生成酸性水を増加するに伴い増大するが、SEAを10倍量の電解生成酸性水で処理した場合には、SEAの抗SEA抗体ラテックスとの凝結は認められなかった。一方、SEAの電解生成アルカリ水による処理では、SEAに対する不活性化の効果は認められない。 【0062】図12のグラフは、SEAを栄養ブロスの条件で異なった量の電解生成酸性水で処理した場合のRPLA法による分析結果を示す。同グラフにおいては、縦軸が残存するSEAの量(ng/mL)を示し、横軸は電解生成酸性水のSEAに対する混合比を示している。 【0063】培養液に懸濁させたSEAの処理については、160ng/mLのSEAを、脳−心臓注入液体媒体によって増殖させた細胞の上澄み液に加えると凝縮が明に認められたが、SEAを100倍量の電解生成酸性水で処理すると、凝縮は認められなかった。この結果は、電解生成酸性水を大量に使用すれば、有機物が存在する場合でも、SEAタンパク質の免疫反応部位の変性が可能であるを示唆しているものである。 (6b)電解生成水によるブドウ球菌毒素A(SEA)の不活性化効果(ELISA法による):RPLA法は、半定量測定法であって、感度が必ずしも十分であるとはいえないことから、SEAの電解生成水による処理の結果をELISA法(酵素結合免疫吸着剤検定法)で確認した。図13のグラフは、SEAを電解生成酸性水で処理した結果を示している。同グラフにおいては、縦軸は415nmでの吸光度を示し、横軸はSEAの量(ng)を示している。また、各グラフ中、プロット□印のグラフ1はコントロール、プロット◇印のグラフ2は(1:5v/v)比の電解生成酸性水で処理した場合、プロット○印のグラフ3は(1:10v/v)比の電解生成酸性水で処理した場合である。 【0064】SEAを電解生成酸性水で処理しないコントロール実験(グラフ1)では、415nmでの吸収により測定したSEAの検出限度は、3ngであることがわかった。しかし、SEAを5倍量の電解生成酸性水で処理した場合(グラフ2)、および、SEAを10倍量の電解生成酸性水で処理した場合(グラフ3)には、SEAの元の量を100nmに増やしても、ELISA法によってSEAは検出できなかった。 【0065】以上の結果は、SEAを電解生成酸性水で処理することにより、SEAの抗原性を決定する部位が変性されるか、または、SEAの三次元タンパク質構造が改造されて、SEAの抗SEA抗体に対する免疫反応性が失われていることを示唆している。 (6c)天然PAGE法による分析:SEAを電解生成水で処理した場合と処理しない場合の天然ポリアクリルアミド・ゲル電気永動のパターンを図14に示す。図14は、天然PAGEのパターンを示す写真であって、当該天然PAGEのパターンにおいては、矢印1はSEAの位置を示し、矢印2はウシ血清アルブミン(BSA)を示しており、レーン1は標準SEA、レーン2〜4は3倍、5倍、10倍の量の電解生成酸性水で処理したもの、レーン5〜7は3倍、5倍、10倍の量の電解生成アルカリ水で処理したものである。 【0066】天然のSEAタンパク質は、約30kDaで観察できたが、電解生成酸性水で処理したSEAは、30kDa領域の下とその周辺にかすんだ帯が見えるだけで、電解生成酸性水がタンパク質分子の分解と分裂を惹起したことを示している(レーン2〜4)。電解生成アルカリ水で処理したSEAの電気永動パターンには、変化は見られなかった(レーン5〜7)。以上に結果は、電解生成酸性水がSEAタンパク質を細かく分解することを示している。 (6d)アミノ酸分析法による分析:SEAを電解生成酸性水で処理した場合と処理しなかった場合の、アミノ酸の構成の比較を表5に示す。表中、(Asx)はアスパラギン酸+アスパラギンを、(Glx)はグルタミン酸+グルタミンを示す。また、表中の参考値の欄の数値は、未処理の完全なSEA中の残留アミノ酸を、SEA1Molに対するmol値で示している数値(Huang 他 1987)であり、また、処理無しの欄の数値は、HPLCによるアミノ酸分析から得た数値である。 【0067】 【表5】
SEAを10倍量の電解生成酸性水で処理すると、SEAが含有するアミノ酸は明らかに減少しているのが認められる。但し、本実験でのアミノ酸分析では、加水分解のために、トリプトファンとシステインについてのデータが正確ではない点に注意する必要がある。処理なしの場合のSEAのアミノ酸の構成は、参考値とよく一致しているが、電解生成酸性水で処理した場合のSEAでは、ほとんどのアミノ酸の含有量は減少している。特に、メチオニン、イソロイシン、チロシン、アスパラギン、アスパラギン酸の含有量の減少が顕著である。メチオニンとイソロイシンは極めて酸化し易く、特に、メチオニンはHOClに敏感である。しかし、酸化し易いことで知られているヒスチジンの含有量は、メチオニンほどの減少は認められない。 (7)考察のまとめ:SEAは、電解生成酸性水で処理することにより、不活性化することができる。特に、脳−心臓注入液体媒体によって増殖させた黄色ブドウ球菌の細胞から細胞外媒体に分泌されたSEAは、電解生成酸性水にて処置することによって不活性化することができる。電解生成酸性水は、SEAを、OH基と反応性塩素による酸化化学反応によって変性させる。酸化化学反応は、一般に、硫黄を含むアミノ酸等の有機物が存在すると効果が抑制されるもので、電解生成酸性水のこの作用は注目に値するものである。 【0068】病原菌の毒性を消失させまたは弱体化させる電解生成酸性水による処理は、食品や飼料の衛生管理に応用することができる。病原菌の完全な殺菌が困難な場合でも、病原菌が産生する生成毒素を減少させることで病原性を低下させて、食中毒の発生を防止することができる。 【0069】なお、次亜塩素酸イオン(有効塩素500ppm)による殺菌処理では、クロイツフェルド−ヤコブ症候群の原因であるプリオンの不活性化に有効であるとの報告があり、電解生成酸性水は、ウシ海綿状脳炎の予防に有効であるものと推測される。また、次亜塩素酸ナトリウムがA型肝炎ウイルスを99.9%減少させるとの報告があり、電解生成酸性水は、A型肝炎ウイルスに対する殺菌に有効であるものと推測される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】500543627 【氏名又は名称】鈴木 鐵也
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| 【出願日】 |
平成14年1月4日(2002.1.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100064724 【弁理士】 【氏名又は名称】長谷 照一 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−206209(P2003−206209A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月22日(2003.7.22) |
| 【出願番号】 |
特願2002−64(P2002−64) |
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