| 【発明の名称】 |
植物病害防除剤および防除方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】竪石 秀明
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| 【要約】 |
【課題】イネ科植物育苗中に発生する細菌性病害に対する微生物農薬の提供。
【解決手段】イネ科植物育苗時に発生する糸状菌性または細菌性病害に対して防除能を有するトリコデルマ(Trichoderma)属、フザリウム(Fusarium)属、ペニシリウム(Penicillium)属、サッカロミセス(Saccharomyces)、またはグリオクラディウム(Gliocladium)属のいずれかに属する少なくとも一つの糸状菌と、イネ科植物育苗中に発生する細菌性病原菌に対して防除能を有するシュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属またはエンテロバクター(Enterobacter)属のいずれかに属する少なくとも一つの細菌を有効成分として含有する植物病害防除剤。また、これら防除剤を用いる植物病害防除方法。さらに、本発明はこれら植物病害防除剤により処理したイネ種子、イネ育苗培養土。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 イネ科植物育苗時に発生する糸状菌性ならびに細菌性病害に対して防除能を有するトリコデルマ(Trichoderma)属、フザリウム(Fusarium)属、ペニシリウム(Penicillium)属、サッカロミセス(Saccharomyces)、またはグリオクラディウム(Gliocladium)属のいずれかに属する少なくとも一つの糸状菌と、イネ科植物育苗中に発生する細菌性病原菌に対して拮抗作用を有するシュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属またはエンテロバクター(Enterobacter)属のいずれかに属する少なくとも一つの細菌を有効成分として含有することを特徴とする植物病害防除剤。 【請求項2】 シュードモナス(Pseudomonas)属細菌が、シュードモナス・オーレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens)B5(FERM BP−6067)である請求項1に記載の植物病害防除剤。 【請求項3】 バチルス(Bacillus)属細菌が、バチルス・ポリミキサ(Bacillus polymyxa)B36 (FERM BP−6068)である請求項1に記載の植物病害防除剤。 【請求項4】 エンテロバクター(Enterobacter)属細菌が、エンテロバクター・クロアーカ(Enterobacter cloacae)B51 (FERM BP−6069)である請求項1に記載の植物病害防除剤。 【請求項5】 請求項1〜4の少なくともいずれか1項に記載の植物病害防除剤を植物に茎葉処理することを特徴とする植物病害防除方法。 【請求項6】 請求項1〜4の少なくともいずれか1項に記載の植物病害防除剤を植物種子あるいは植物根に浸漬、噴霧、塗布または粉衣処理することを特徴とする植物病害防除方法。 【請求項7】 請求項1〜4の少なくともいずれか1項に記載の植物病害防除剤を土壌に潅注または混和処理することを特徴とする植物病害防除方法。 【請求項8】 請求項1〜4の少なくともいずれか1項に記載の植物病害防除剤で処理してなる病害防除性イネ種子。 【請求項9】 請求項1〜4の少なくともいずれか1項に記載の植物病害防除剤で処理してなる病害防除性イネ育苗培養土。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、イネ科植物種子伝染性病害に対し、微生物を用いる防除剤および防除方法に関する。詳しくは、イネ科植物の育苗時に発生する糸状菌性および細菌性病害に対して防除能を有する糸状菌および細菌を有効成分とする植物病害防除剤および防除方法に関する。 【0002】 【従来の技術】イネ科植物育苗中に発生する病害としては、糸状菌によって起こるイネばか苗病、ごま葉枯病、いもち病など、また細菌によって起こるイネもみ枯細菌病、苗立枯細菌病、褐条病など細菌病が挙げられる。これら病害の防除には種子消毒剤、土壌混和剤、土壌潅注剤、緑化後の茎葉散布剤などが有効であるとされ、化学薬剤が単独あるいは組み合わせによって使用されている。糸状菌による病害については効果の高いEBI剤、細菌に対してはオキソリニック酸剤や水酸化第二銅剤などが使用されている。しかし、一部にはこれら薬剤に対する感受性の低下した耐性菌の出現により安定した効果が期待できない場面も生じている。また、化学農薬は使用済み廃液に適切な処理が必要であり、作業者の負担となっている。 【0003】このようなことから、近年、化学農薬からより環境への負荷が低いと想定される微生物を利用した生物防除の研究が進み、一部は実用化されるに到っている。上述のイネ種子伝染性病害の防除においても、特開平4−295407号公報にはイネもみ枯細菌病に有効な非病原性のシュードモナス・グルメが、特開平6−87716号公報には病原性を欠失したエルビニア・カルトボーラーがイネ苗立枯細菌病の防除に有効なことが開示されている。また、イネもみ枯細菌病、苗立枯細菌病、イネばか苗病に有効なシュードモナス属菌が特開平9−124427号公報に、イネもみ枯細菌病、苗立枯細菌病に有効なシュードモナス・オーレオファシエンスが「平成11年度生物農薬連絡試験成績」(日本植物防疫協会、平成12年1月)に記載されている。一方、糸状菌性病害であるイネばか苗病、いもち病などに有効なトリコデルマ属に属する微生物が特開平11−225745号公報に、また、細菌性病害である苗立枯細菌病に有効なトリコデルマ属に属する微生物が特開平11−253151号公報に開示されている。しかし、一般に微生物を利用した生物防除が具体化する中で、これらの微生物を利用した生物農薬にも化学農薬に匹敵する安定した効果や、低投下量で有効な、環境に対する負荷の軽い防除剤が望まれているが、それぞれ単独ではこれらの要求を安定して満足させることは難しかった。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上述のような現状に鑑み、イネ種子伝染性病害の防除において、耐性菌出現の恐れのない、環境に対してより安全性の高い安定した防除技術を確立することを課題として研究した結果、イネ科植物育苗時に発生する糸状菌性および細菌性病害に対して防除能を有する特定の糸状菌と、イネ科植物育苗中に発生する細菌性病原菌に対して防除能を有する特定の細菌を有効成分として同時に施用することにより、細菌性病害および糸状菌性病害に対する防除効果を安定化させるとともに、有効成分の使用濃度を大幅に低減できることを見出し本発明に到った。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、イネ科植物育苗時に発生する糸状菌性および細菌性病害に対して防除能を有するトリコデルマ(Trichoderma)属、フザリウム(Fusarium)属、ペニシリウム(Penicillum)属、サッカロミセス(Saccaromyces)、またはグリオクラディウム(Gliocladium)属のいずれかに属する少なくとも一つの糸状菌と、イネ科植物育苗中に発生する細菌性病原菌に対して防除能を有するシュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属またはエンテロバクター(Enterobacter)属のいずれかに属する少なくとも一つの細菌を有効成分として含有する植物病害防除剤に関する。また、これら防除剤を用いる植物病害防除方法に関する。さらに、本は発明はこれら植物病害防除剤により処理したイネ種子、イネ育苗培養土に関する。上記の糸状菌と細菌とを同時に施用することによって、イネ種子伝染性細菌病、糸状菌性病害に対して、安定的な高い効果が得られる。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明において用いるイネ科植物育苗時に発生する糸状菌性または細菌性病害に対して防除能を有する糸状菌は、トリコデルマ(Trichoderma)属、フザリウム(Fusarium)属、ペニシリウム(Penicillium)属、サッカロミセス(Saccharomyces)、またはグリオクラディウム(Gliocladium)属のいずれかに属する糸状菌であり、トリコデルマ(Trichoderma)属に属する微生物として、好ましくはトリコデルマ ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ オーレオビリデ(Trichoderma aureoviride)、トリコデルマ アトロビリデ(Trichoderma atroviride)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ コニンギー(Trichoderma konigii)、トリコデルマ シュードコニンギー(Trichoderma pseudokonigii)、トリコデルマ ロンギブラキアタム(Trichoderma lomgibrachiatum)、トリコデルマ ハマタム(Trichoderma hamatum)が挙げられる。また、フザリウム(Fusarium)属に属する微生物として、好ましくはフザリウム アベナセウム(Fusarium avwnaceum)、フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム モニリフォルメ(Fusarium moniliforme)、フザリウム スポロトリコイデ(Fusarium sporotrichoide)、フザリウム クルモルム(Fusarium clumorum)が挙げられる。また、ペニシリウム(Penicillium)属に属する微生物として、好ましくはペニシリウム シンプリシシマム(Penicillium simprisisimum)が挙げられる。また、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する微生物として、好ましくはサッカロミセス セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)が挙げられる。またグリオクラディウム(Gliocladium)属に属する微生物として、好ましくはグリオクラディウム ビレンス(Gliocladium virens)、グリオクラディウム ベルモエセニ(Gliocladium vermoeseni)、グリオクラディウム オーレウム(Gliocladiumaureum)が挙げられる。 【0007】また、本発明において用いるイネ科植物育苗時に発生する糸状菌性または細菌性病原菌に防除能を有する細菌は、シュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属またはエンテロバクター(Enterobacter)属に属する細菌であり、シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物として、好ましくはシュードモナス・オーレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens)に属する微生物で、シュードモナス オーレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens)B−5株が例示される。この細菌は独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにシュードモナス・オーレオファシエンス(Pseudomonas aureofaciens)B−5株、FERM BP−6067として寄託されている。 【0008】また、バチルス(Bacillus)属に属する微生物として、好ましくはバチルス ポリミキサ(Bacillus polymyxa)に属するで、そのうち特に好ましい菌株としては、バチルス ポリミキサ(Bacillus polymyxa)B−36株が例示される。この細菌は独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにバチルス ポリミキサ(Bacillus polymyxa)B−36株、FERM BP−6068として寄託されている。 【0009】また、エンテロバクター(Enterobacter)属に属する微生物として、好ましくはエンテロバクター クロアーカ(Enterobacter cloacae)に属する微生物で、そのうち特に好ましい菌株としてはエンテロバクター クロアーカ(Enterobacter cloacae)B−51株が例示される。この細菌は独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにエンテロバクター クロアーカ(Enterobacter cloacae)B−51株、FERM BP−6067として寄託されている。これらの微生物は、ふすまなどの資材での培養、固体培地での静置培養、液体培養等の公知の手段で増殖させたものを用いればよく、特に培地の種類、培養条件などに制限されるものではない。 【0010】本発明においては、イネに病原性を示さない上記の糸状菌と細菌を組み合わせて用いる。上記の糸状菌と細菌の使用量は製剤の剤型、適用方法、適用作物や場所、適用すべき病害の種類などに応じて適宜選定されるが、糸状菌の胞子濃度が1×102〜109/ml程度、好ましくは1×104〜108/mlの範囲で使用するのが望ましい。また、当該細菌はその濃度が1×102〜1011cfu/ml程度、好ましくは1×105〜109cfu/ml程度の範囲で使用することが好ましい。 【0011】本発明の植物病害防除剤は、これら微生物の培養液あついは懸濁液をそのまま用いてもよく、あるいは微生物を例えば固体または液体の担体と混合し、必要に応じて通常用いられる添加剤、その他助剤を加えて製剤として調製する。この場合、糸状菌と細菌を混合した製剤としてもよく、あるいは糸状菌を含む製剤と細菌を含む製剤を別個に調製し、施用時に所望の比率で混合してもよい。 【0012】本発明の植物病害防除剤の施用は、イネ科植物種子に粉衣、塗沫、あるいは吹付けすることにより行うことができる。また、イネ科植物の種子をこれら微生物の懸濁液に浸漬すること、あるいはこれらの微生物を含む懸濁液あるいは菌体を土壌に潅注、混和すること、または圃場においてイネ科植物自体に散布し茎葉処理することにより施用することができる。 【0013】また、本発明の植物病害防除剤は、他の植物病害防除剤との混用を妨げない。例えば、殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、植物生長促進剤、共力剤などと混合し、または混合せず同時に併用することもできる。 【0014】本発明の植物病害防除剤は、イネ科植物に発生する病害に対して有効であり、その有効な病害としてイネ苗立枯細菌病(Burkholderia plantarii)、イネもみ枯細菌病(Burkholderia glumae)、イネ褐条病(Acidodovorax avenae)、イネ内頴褐変病(Erwinia herboicola )、イネ葉鞘褐変病(Pseudomonas fuscovaginae)、およびイネ白葉枯病(Xanthomonas campestris pv. oryzae)、また、イネいもち病(Pyricularia oryzae)、イネばか苗病(Gibberella fujikuroi)、イネごま葉枯病等(Cochliobolus miyabeanus)を例示することが出来るが、これらイネ科植物病害に限定されるものではない。以下、本発明を製剤例及び実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。 【0015】 【製剤例1】Pseudomonas aureofaciens B5の水和剤の調製Pseudomonas aureofaciens B5をPPG培地で30℃24時間振盪培養し、遠心分離を行なって集菌した。これに適度な保護剤を加えた液に再懸濁後凍結乾燥後した。得られた固形物を粉砕し、これに鉱物質担体を添加し均一に混合して菌体乾燥物5%、担体70%、保護剤25%を含む水和剤を得た。 【0016】 【製剤例2】Trichoderma harzianumの懸濁剤の調製Trichoderma harzianumをPDA培地で25℃2週間培養し、蒸留水中に胞子を懸濁させた。これに鉱物質担体を添加し均一に混合して胞子重量3%、担体20%、水77%を含む懸濁剤を得た。施用においては、上記水和剤と懸濁剤を併用することができる。 【0017】 【実施例1:イネ苗立枯細菌病防除効果試験】イネ苗立枯細菌病菌(Burkholderia plantarii)を開花期接種したイネの種籾(品種:日本晴)を調製した。この接種籾を健全籾に重量で5%となるようによく混合し、防除効果試験に供試した。この籾15gに対して所定濃度に希釈した上記の水和剤、懸濁剤を単独および混合して24時間浸漬処理を行ない(浴比1:1)、15℃4日間浸種、32℃24時間催芽後、市販育苗培土に播種し、32℃2日間出芽させ、以降ガラス温室内で育苗した。播種21日後に各処理区の全苗数、枯死苗数、白化・部分枯死苗数を計測し、発病度から防除価を求めた。結果を表1に示す。Pseudomonas aureofaciens単剤の処理においてイネ苗立枯細菌病に対する防除効果が低下する希薄な濃度においても、両者を混合すると防除効果の向上が見られ、相乗的効果が見られた。 【0018】 【表1】
【0019】 【発明の効果】本発明の微生物防除剤および防除方法は、優れた相乗効果を示し、使用濃度を大幅に低減することを可能とし、一層の省資源、省力化、また環境保全促進につながるものである。 例えば、実施例1表1によればPseudomonas aureofaciens B5の濃度を1/100に低減できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001100 【氏名又は名称】呉羽化学工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年12月27日(2001.12.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100090941 【弁理士】 【氏名又は名称】藤野 清也 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−192515(P2003−192515A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月9日(2003.7.9) |
| 【出願番号】 |
特願2001−396511(P2001−396511) |
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