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【発明の名称】 作物育成促進剤及び作物育成促進方法
【発明者】 【氏名】渋谷 政夫

【氏名】小田 範男

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水溶性チタンを含有することを特徴とする作物育成促進剤。
【請求項2】 水溶性チタンを含有する水溶液からなる請求項1に記載の作物育成促進剤。
【請求項3】 葉緑素生成を増進する請求項1に記載の作物育成促進剤。
【請求項4】 作物体内の硝酸含量を減少させる請求項1に記載の作物育成促進剤。
【請求項5】 作物の糖度を増大させる請求項1に記載の作物育成促進剤。
【請求項6】 作物が野菜、果樹、工芸作物、花卉類、穀類、いも類及び豆類から選択される請求項1に記載の作物育成促進剤。
【請求項7】 野菜が、葉菜、果菜及び根菜から選択されるものである請求項1記載の作物の作物育成促進剤。
【請求項8】 果実が常緑果樹及び落葉果樹から選択されるものである請求項1記載の作物育成促進剤。
【請求項9】 水溶性チタン及び/または化学的処理された水溶性チタンを水に溶解しチタン濃度0.1〜100ppmにして使用される作物育成促進剤組成物。
【請求項10】 水で稀釈してチタン濃度0.1〜100ppmにして使用される作物育成促進剤組成物。
【請求項11】 チタンを濃度0.1〜100ppm含有する溶液を作物に施すことを特徴とする作物育成促進方法。
【請求項12】 チタンを濃度0.1〜100ppm含有する溶液を作物の葉面散布(葉面吸収)及び/または培地施用(経根吸収)する請求項11に記載の作物育成促進方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水溶性チタンを含有する作物育成促進剤に関する。さらに詳しく言えば、特に葉緑素生成の増進、作物体内の硝酸含量の減少および作物の糖度の増大に効果を示す水溶性チタンおよび化学的処理された水溶性チタンを含有する作物育成促進剤及び作物育成促進方法に関する。
【0002】
【背景技術】作物の光合成反応は農業による食料生産の基本原理である。光合成反応のエネルギー源は太陽光線であり、クロロフィル(葉緑素)は太陽光エネルギーを作物の成長に利用する大切な役目を果たしている。
【0003】従来、光合成に関与する微量元素として、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)及び鉄(Fe)が必須のものとして知られている(マルク・ヤーコヴレヴィッチ・シュコーリニク著,藤原彰夫監修,原田竹治訳,「植物の生命と微量元素」,社団法人農山漁村文化協会発行(昭和57年4月10日))。
【0004】また、チタン(Ti)については、(1)Tiの葉緑素の形成への関与、(2)光合成の過程におけるTiの働きが推論されること、(3)強烈な還元剤としてのTiは作物における窒素化合物と炭水化物の還元過程に大きな働きをしていると推定されること、また、(4)Ti−アスコルビンが作物の生育を促進することが報告されているが(前記マルク・ヤーコヴレヴィッチ・シュコーリニク著の書籍参照)、チタンが作物の成育に具体的にどのように関与しているのかを定量的に示した文献はこれまで無く、また実際に作物育成の分野で、Tiを施用して収穫量に結び付く業績を報告した例もない。
【0005】また、現今、国際的に発ガン物質のニトロソアミンが問題になっているが、このニトロソアミンの生成に大きく関与するのが作物中の硝酸含量であると言われている。作物類の硝酸濃度についてWHOは指導基準を設け、ドイツ、オランダ、スイス、オーストリア、ロシア等では基準値または上限値が設定されている。
【0006】我国では、(社)日本フードサービス協会(JF)で1998年5月に作物の硝酸含量の基準値(例えば、レタス,ホウレンソウ:3000ppm、トマト,キュウリ:1500ppm、タマネギ,ニンジン:2000ppm)を示している。この問題における我国の対応策として、窒素肥料の減肥や有機質肥料の使用が提唱されている。しかし、窒素肥料の減肥は収量低下となるので現場では実施され難く、また、有機質肥料は有機質の種類、施用量によっては、化学肥料(窒素)よりも野菜中の硝酸含量が多くなることがあり、有機栽培野菜だからといって安全とはいえない。
【0007】
【発明の開示】本発明者らは、近年、酸化チタンが光触媒の分野で注目されていることに鑑みて、チタンが太陽光線を利用する作物の成育に関係しているのではないかと考え、チタンの作物成育に及ぼす影響について鋭意検討した。すなわち、チタンを作物が吸収し易い水溶性チタン化合物の水溶液として、作物の葉あるいは根から吸収させて、作物中の葉緑素生成、作物体内の硝酸含量および作物の糖度との関係を研究した。その結果、微量の水溶性チタン化合物を作物に施用することにより、作物の葉緑素生成量が増大して光合成反応が旺盛となり、発癌性物質と考えられる作物体内の硝酸含量が低下し、糖度(Brix)値が増加する。また、作物の糖度(Brix)が増大し日持ちも向上して良品質増収となることを確認して本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は以下の作物育成促進剤及び作物育成促進方法を提供する。
1.水溶性チタンを含有することを特徴とする作物育成促進剤作物の葉緑素生成。
2.水溶性チタンを含有する水溶液からなる前項1に記載の作物育成促進剤。
3.葉緑素生成を増進する前項1に記載の作物育成促進剤。
4.作物体内の硝酸含量を減少させる前項1に記載の作物育成促進剤。
5.作物の糖度を増大させる前項1に記載の作物育成促進剤。
6.作物が野菜、果樹、工芸作物、花卉類、穀類、いも類及び豆類から選択される前項1に記載の作物育成促進剤。
7.野菜が、葉菜、果菜及び根菜から選択されるものである前項1記載の作物育成促進剤。
8.果実が常緑果樹及び落葉果樹から選択されるものである前項1記載の作物育成促進剤。
9.水溶性チタン及び/または化学的処理された水溶性チタンを水に溶解しチタン濃度0.1〜100ppmにして使用される作物育成促進剤組成物。
10.水で稀釈してチタン濃度0.1〜100ppmにして使用される作物育成促進剤組成物。
11.水溶性チタンを濃度0.1〜100ppm含有する溶液を作物に施用することを特徴とする作物育成促進方法。
12.チタンを濃度0.1〜100ppm含有する溶液を作物の葉面散布(葉面吸収)及び/または培地施用(経根吸収)する前項11に記載の作物育成促進方法。
【0009】本発明の水溶性チタンを含有する作物育成促進剤によれば、葉緑素生成が増進(光合成反応が活性化)され、作物体内における還元同化作用が促進されて作物が吸収した硝酸含量の減少が図られ苦味の解消した低硝酸濃度野菜(例えば、キュウリ、ホウレンソウ等)が生産でき、作物においては糖度(Brix)と日持ちの向上が達成される。本発明に係る作物育成促進剤は、土壌の種類、作物、品種、気候、施肥法などに関係なく、効果が発現する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明においては、水溶性の形態のチタン化合物を作物の葉や茎に水溶液として直接散布するか、あるいは水溶性の形態のチタン化合物を担体中に含む固体組成物として、あるいは水溶液として培地(土壌)に施用する。
【0011】ここで、使用する水溶性チタンは、水溶性チタン塩及び化学処理により水溶化したチタン化合物であり、水溶性であって作物に害のないものであればよい。例えば、硫酸塩、塩酸塩等が挙げられる。作物に施すチタン水溶液中のチタン濃度は、0.1〜100質量ppm、好ましくは0.1〜20ppm、特に好ましくは0.3〜10ppmである。濃度が高すぎると過剰の結果、生育障害がでる場合がある。濃度が低すぎると作物育成の効果が見られない。
【0012】チタンは、チタンを濃度0.1〜100ppmにして使用される作物育成促進剤組成物として、あるいはチタンを適用に際して水で稀釈してチタン濃度0.1〜100ppmにして使用される作物育成促進剤組成物として取り扱うのが好都合である。キャリヤ(担体)としては、ヌカ、木粉、魚粕等の有機物質、粘土、珪藻土等の無機物質で作物に害のないものを用いて混合使用する。
【0013】本発明の作物育成促進剤が施用される作物、品種は特に限定されず、広く一般の野菜、果樹、工芸作物、花卉類、穀類、いも類及び豆類などの作物に適用できる。例えば、野菜としては、ハクサイ、キャベツ、ホウレンソウ、シュンギク、ネギ、コマツナ等の葉菜、ナス、トマト、スイカ、イチゴ等の果菜、及びゴボウ、大根、ニンジン等の根菜が挙げら、果樹としては、例えば、リンゴ、ナシ、ミカン等が挙げら、工芸作物としては茶樹、藍等が挙げられ、花卉類としてはキク、バラ、シクラメン等が挙げられ、穀類としては、水稲、大麦、小麦、蕎麦等が挙げられ、いも類としては、サツマイモ、バレイショ等が挙げられ、豆類としては、大豆、小豆等が挙げられる。その他牧草、芝類等にも適用できる。本発明の作物育成促進剤は、一般的に培地(土壌)に肥料(窒素、リン、カリウム、マグネシウム,カルシウムその他必須微量元素肥料)を施す際に、基肥として施用(経根吸収)するが、葉面散布(葉面吸収)を併用することによって、効果を高めることができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を挙げて本発明を説明する。
実施例1:ホウレンソウに対するチタンの葉面散布(葉緑素値と硝酸(NO3-)濃度及び糖度(Brix))
下記の条件にてホウレンソウにチタンを葉面散布した。神奈川県嘉山農園露地圃場で、栽培中のホウレンソウに対して、硫酸チタン水溶液を用い、チタン濃度0.3ppm、1.0ppm及び3.3ppmで、毎回300ml/m2の散布量で3回(初日、4日後及び11日後)散布し、最終散布の4日後に1平方メートル(m2)当り12〜20株について、以下の方法により葉緑素値、硝酸(NO3-)濃度及び糖度(Brix)を測定した。その結果を、チタンを散布しない対照区の結果と共に表1に示す(表1中、括弧内は対照区100に対する比)。
【0015】葉緑素値:ミノルタ葉緑素計SPAD−501(ミノルタ株式会社製)を用いて直接葉に接触して葉の色を読み葉緑素値とした。
硝酸(NO3-)濃度:(株)堀場製作所製コンパクト硝酸イオンメーターC−14−1を用いて葉身、葉柄をそれぞれ手動式簡易しぼり器でしぼった汁液の硝酸イオン濃度(ppm)を測定した。
糖度(Brix):葉身、葉柄を手動式簡易しぼり器でしぼり、その汁液を試料として、(株)アタゴ社製の「自動温度補正式屈折計ATC−UE(Brix0.0〜32.0%)」を使用してBrix糖度を測定した。なお、ここでBrix糖度とは、可溶性固形物の量を指す単位で、その溶液の屈折率と等しい屈折率を持つ20℃のショ糖溶液の質量%を意味する。
【0016】
【表1】

【0017】表1から、処理区の葉緑素値は対照区に対して何れの場合も増加し、中でも1.0、3.3ppm区が0.3ppm区より高いこと、葉身部位に分けて測定した硝酸(NO3-)濃度は、いずれの処理区も葉柄部位より高く、減硝酸化が低いこと(一般に葉身より葉柄が高いのが普通である)、減硝酸化はTi濃度の高い方が大きいこと、糖度はTi散布処理のうち葉身についてはいずれも向上している葉柄部位では葉身の糖度向上より少ないことが分かる。従来の研究からは、吸収された硝酸(NO3-)が光合成によって還元同化すればアミン、アミノ酸など水溶性のブリックス(Brix)値(糖度で表す)が高まることが明らかにされている。葉柄は硝酸(その他の養分)の吸収通路であり、葉緑素も極めて少ないので硝酸(NO3-)濃度の減少も低く、したがって葉柄部位では糖度向上も低いと考えられる。
【0018】実施例2:アジミナに対するチタンの経根施用(水耕試験によるアジミナの葉緑素値)
下記の条件で栽培中のアジミナ(商品名、コマツナとチンゲンサイの交配種、タキイ種苗株式会社)の水耕培地に対してチタンを硫酸チタン水溶液としてチタン濃度1.0ppm及び3.3ppmにて施用した。施用経過日数4日、6日後は外葉から1、2葉位、14日のものは外葉から3,4葉位の葉身部を1ポットについて2葉、計4ポット8枚の葉について測定採取し実施例1と同様にして葉緑素値を測定した。その結果を、チタンを散布しない対照区の結果と共に表2に示す(表2中の括弧内は対照区100に対する比)。
【0019】
【表2】

【0020】表2から、Ti濃度1.0ppm区では処理して6日後までは葉緑素値は対照区と変わりがなかったが、14日後に10%増加が認められること、Ti濃度の高い3.3ppm区では4日後から6%増となり14日後には12%増加となることが分かる。Ti濃度1.0ppm区と3.3ppm区との4日、6日後の反応の違いは、アジミナのTi吸収の多少によるものと考えられる。1.0ppmでも時間をかけて吸収することにより葉緑素値は増加するものと考えられる。
【0021】実施例3:ホウレンソウ、アジミナ、シュンギクに対するチタンの葉面散布ハウス土耕試験(葉緑素値、葉中硝酸)
下記の条件にてハウス土耕栽培のホウレンソウ、アジミナ、シュンギク(育成段階はいずれも収穫中後期)の葉菜類を供試し、3作物ともに1区1m2で2連制でTi濃度1.0ppm及び3.3ppmにて、各濃度とも300ml/m2の割合で、1回目葉面散布処理後、3日目に2回目葉面散布処理した。1m2当り8〜14株、特に葉位を定めず展開葉をランダムに採取し、実施例1と同様にして葉緑素値及び葉中硝酸(NO3-)濃度を測定した。その結果をチタンを散布しない対照区の結果と共に表3に示す(表3中の括弧内は対照区100に対する比)。
【0022】
【表3】

【0023】表3から、3作物共チタンの葉面散布処理は葉緑素値を増加させ、葉中の硝酸(NO3-)濃度が減少すること、1回散布と2回散布処理では、葉緑素値の増加に一定の傾向はみられないが、硝酸(NO3-)濃度では明らかに2回散布の方が低く減硝酸化が著しいことが分かる。葉緑素値の2回散布と1回散布間に一定の傾向がみられないのは、供試野菜が収穫中後期で生育低下時期のためと推定される。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、水溶性チタンは葉緑素生成増進に、従来のモリブデン(Mo)に匹敵する効果を発揮することが初めて明らかにされた。本発明による作物育成促進剤は、発ガン物質ニトロソアミンに関与する野菜類の低硝酸化に優れた農業資材として、また硝酸含量減少による作物の健全な生育により減農薬栽培、アミノ酸、糖度の増加による食品品質・収量の向上への助援効果など広範な用途が期待される。
【出願人】 【識別番号】500140334
【氏名又は名称】渋谷 政夫
【識別番号】301080415
【氏名又は名称】株式会社微量元素研究所
【出願日】 平成13年12月27日(2001.12.27)
【代理人】 【識別番号】100081086
【弁理士】
【氏名又は名称】大家 邦久
【公開番号】 特開2003−192513(P2003−192513A)
【公開日】 平成15年7月9日(2003.7.9)
【出願番号】 特願2001−396189(P2001−396189)