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【発明の名称】 医療機器用殺菌洗浄剤
【発明者】 【氏名】朝守 勝彦
【住所又は居所】和歌山県和歌山市湊1334 花王株式会社研究所内

【氏名】中村 幹彦
【住所又は居所】和歌山県和歌山市湊1334 花王株式会社研究所内

【要約】 【課題】殺菌性に優れ、人工透析装置及びその周辺機器、器具等の医療機器に対して、カルシウム塩等の水不溶性塩を形成することなく油脂汚れなどを効率よく除去できる殺菌洗浄液を提供する。

【解決手段】次亜塩素酸ナトリウム等の塩素活性物質(A)と非イオン界面活性剤(B)とを含有する医療機器用殺菌洗浄剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 塩素活性物質(A)と非イオン界面活性剤(B)とを含有する医療機器用殺菌洗浄剤。
【請求項2】 塩素活性物質(A)が次亜塩素酸及びその塩である請求項1記載の医療機器用殺菌洗浄剤。
【請求項3】 非イオン界面活性剤(B)がポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステルである請求項1又は2記載の医療機器用殺菌洗浄剤。
【請求項4】 有効塩素濃度が1〜5,000ppm、非イオン界面活性剤(B)濃度が1〜200ppmである請求項1〜3の何れか1項記載の医療機器用殺菌洗浄剤。
【請求項5】 有効塩素濃度が1ppm以上30ppm未満、pH(25℃)が1以上3未満である請求項1〜4の何れか1項記載の医療機器用殺菌洗浄剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医療機器、特に人工透析装置及びその周辺機器、器具の消毒や洗浄に用いられる殺菌洗浄剤に関する。
【0002】
【従来の技術】食品製造工場、医療施設及び家庭などで、有害な微生物の殺菌剤として塩素活性物質と呼ばれる薬剤が広範に用いられている。この塩素活性物質には次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムそして塩化イソシアヌル酸ナトリウムなどが含まれる。
【0003】これら塩素活性物質を用いた系について、微生物を殺菌、滅菌する効果を向上させたり、殺菌と同時に無機性又は有機性の汚れを除去したりする目的で、いくつかの提案がなされている。
【0004】例えば特開平4−135559号や特開平7−233396号では、次亜塩素酸塩に、アニオン界面活性剤と特定の金属封鎖剤を併用することが提案されている。これら公報では、次亜塩素酸塩との共存下で比較的安定性が良好であることから、アニオン界面活性剤として、アルキルエーテル硫酸エステル塩やアルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が選択されている。アニオン界面活性剤は、カルシウムイオンとの接触により水不溶性塩を形成し沈殿を生じることで実用上不都合が起きることが判っている。例えば人工透析装置の流水回路の殺菌洗浄に用いる場合、透析液に含まれるカルシウムイオンにより不溶性塩を形成し、流水回路の途中に介装されたエンドトキシン除去フィルターを詰まらせる欠点がある。
【0005】しかし、前記公報の技術によっても、実際の使用までの期間や保存条件の変化により、安定した殺菌洗浄力を確保することは困難である。また、人工透析で使用されるエンドトキシン除去フィルターでは、洗浄と洗浄剤成分の残留抑制とを十分に達成することが望まれる。このような観点から、特開平9−31494号では、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする洗浄液に、別途用意した金属封鎖剤や界面活性剤を含有する配合剤を併用することを提案している。その際、界面活性剤としてパラトルエンスルホン酸塩やメタキシレンスルホン酸塩を使用することが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、人工透析装置やその周辺機器には多様な汚れが付着し、なかでも油脂汚れは上記特開平9−31494号によっても十分な除去はできない。また、特開平9−31494号では、次亜塩素酸ナトリウムを含有する溶液と、界面活性剤及び金属封鎖剤等を含有する配合剤とを別々に用意して順次使用するため、簡便性に劣る。
【0007】本発明の課題は、殺菌性に優れ、カルシウム塩等の水不溶性塩を形成することなく油脂汚れなどを効率よく除去できる、医療機器、特に人工透析装置及びその周辺機器、器具用の殺菌洗浄液を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、塩素活性物質(A)〔以下、(A)成分という〕と非イオン界面活性剤(B)〔以下、(B)成分という〕とを含有する医療機器用殺菌洗浄剤に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】(A)成分の塩素活性物質とは、酸化力を有する塩素化合物であり、水溶液中で塩素及び酸化力を有する塩素化合物を生成する物質を含み、次亜塩素酸とその塩、亜塩素酸とその塩、塩素化イソシアヌル酸とその塩、二酸化塩素が例示できる。塩はナトリウムが挙げられる。(A)成分としては、次亜塩素酸とその塩が好ましく、特に次亜塩素酸塩、更に次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。(A)成分は、殺菌洗浄剤中の有効塩素濃度が1〜10,000ppm、更に1〜5,000ppm、特に10〜1,000ppmとなるように用いられるのが好ましい。
【0010】(B)成分の非イオン界面活性剤は、グリフィンの方法によるHLBが12以上、更に14〜20のものが好ましい。(B)成分としては、脂肪酸ソルビタンエステル系界面活性剤が好ましく、特にポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステルが好ましい。脂肪酸部分には炭素数8〜24の飽和又は不飽和の脂肪酸を用いることができる。ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステルのエチレンオキサイド平均付加モル数(以下、EOpと表記する)は、HLBが12以上となるように調整されるのが好ましい。脂肪酸がオレイン酸でソルビタンモノエステルの場合、油脂除去性の点から、EOpは2〜100が好ましく、10〜100がより好ましく、10〜60が特に好ましい。(B)成分は、殺菌洗浄剤中1〜200ppm、更に1〜50ppm、特に1〜10ppm含有されることが、油脂汚れやたん白汚れの除去性から好ましい。
【0011】(A)成分と(B)成分の重量比は、油脂除去性と製剤の安定性の観点から、(A)/(B)=500〜0.5であることが好ましく、より好ましくは200〜2、更に好ましくは125〜5である。(B)成分として、高い油脂除去性を有する非イオン界面活性剤を選択することにより、少ない配合量で優れた油脂除去性を得ることができるため、このような(B)成分は(A)成分と共存させても安定性に悪影響を与えることなく配合することが可能である。
【0012】本発明の殺菌洗浄剤のpH(25℃)は1〜10が好ましい。特にpH(25℃)が1以上3未満の場合、本発明の殺菌洗浄剤の有効塩素濃度は1ppm以上30ppm未満であることが好ましい。次亜塩素酸は酸性領域において塩素ガスを発生するが、有効塩素濃度を低下させることで容易にこの問題を回避することが可能となる。pHは、塩酸等の無機酸や酢酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、フマル酸、マレイン酸等の有機酸により調整され、酢酸、クエン酸、コハク酸、塩酸が好ましく、特に酢酸が好ましい。
【0013】また、本発明の殺菌洗浄剤には、りん酸とその塩、オルソけい酸塩、メタけい酸塩、セスキけい酸塩及びこれらの遊離酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)とその塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸とその塩、硝酸塩、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)とその塩、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)とその塩等の金属腐蝕防止剤を併用してもよい。なお、本発明の殺菌洗浄剤の残部は水である。
【0014】
【実施例】実施例1表1に示す殺菌洗浄剤を調製し、以下の方法で油脂除去率と不溶性物質生成の有無を試験した。結果を表1に示す。なお、表1の殺菌洗浄剤のpHは酢酸で調整し、(A)成分として次亜塩素酸ナトリウムを表1の有効塩素濃度となるように用い、有効塩素濃度はJIS K−0101ヨウ素法により測定した。
【0015】(1)油脂除去率測定法長さ115mm、内径26mmのポリプロピレン製チューブ(重量Ag)の内壁全体にカプリル酸・カプリン酸混合酸のトリグリセライド(凝固点−20℃)約150mgを塗布する(重量Bg)。試験液である殺菌洗浄剤を充満させて、チューブ両端を密閉し横置きで静置する。16時間後内容液を捨て、水で1回すすぐ。乾燥後重量(重量Cg)を測定する。下式により油脂除去率を求める。
油脂除去率(%)=100−(C−A)×100/(B−A)。
【0016】(2)不溶性物質生成試験塩化カルシウム(CaCl2・2H2O)3.5重量%の水溶液50mLに殺菌洗浄剤50mLを加えて濁りが生じるか目視で判定する。濁ったものを不溶性物質の生成ありと判定した。
【0017】
【表1】

【0018】・非イオン界面活性剤(1):モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル(EOp=20、HLB=16.7、花王(株)製、レオドールTWL120)
・非イオン界面活性剤(2):モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル(EOp=20、HLB=15.0、花王(株)製、レオドールTWO120)
・陰イオン界面活性剤(1):ラウリルポリオキシエチレン硫酸エステルナトリウム(EOp=3、花王(株)製、エマール20C)
・陰イオン界面活性剤(2):ノニルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王(株)製、ペレックスSS−H)
・陰イオン界面活性剤(3):メタキシレンスルホン酸ナトリウム。
【0019】実施例2実施例1の本発明品3、4、5及び比較品1、3、4、5の殺菌洗浄剤について、以下の方法で殺菌性を試験した。結果を表2に示す。
【0020】(1)殺菌性被検液として、黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus IFO12732)、大腸菌(Eschelichia coli IFO3972)、セレウス菌(Bacillus cereus IFO13494)を用いた。
【0021】SCD寒天培地に前培養した菌を滅菌水に懸濁し、約107〜108cell/mLの菌液を調製した。セレウス菌は遠心分離洗浄後、65℃、30分の熱処理を加え、芽胞菌のみを試験に用いた。調製した菌液50μLを殺菌洗浄剤200μLに加え、25℃において表2に示す所定の接触時間後、SCD培地(不活化剤としてチオ硫酸ナトリウム3%添加)に20μLを移し、35℃で2日間培養して菌の生育を観察した。結果を表2に示す。表2中「−」は菌の生育なし、「+」は菌の生育あり、を意味する。
【0022】
【表2】
【0023】
【発明の効果】

【0024】本発明によれば、殺菌性に優れ、医療機器、特に人工透析装置及びその周辺機器、器具に付着した油脂汚れなどを、カルシウム塩等の水不溶性塩を形成することなく、効率よく除去できる医療機器用殺菌洗浄剤が得られる。
【出願人】 【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋茅場町1丁目14番10号
【出願日】 平成13年11月12日(2001.11.12)
【代理人】 【識別番号】100063897
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 馨 (外4名)
【公開番号】 特開2003−146816(P2003−146816A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−345839(P2001−345839)