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【発明の名称】 消毒液及びそれを用いた排水の消毒方法並びに装置
【発明者】 【氏名】鳥海 弘

【氏名】高須 弘

【氏名】名川 忠志

【氏名】安斎 純雄

【氏名】小峯 純夫

【氏名】長谷川 和広

【氏名】吉田 秀潔

【氏名】新飯田 豊

【要約】 【課題】下水処理場、ポンプ所、雨水吐き口から公共水域に放流される大腸菌群等の細菌を含む未処理の雨天時下水、特に下水処理場における越流水を効率的且つ安価に消毒することのできる新規な消毒剤を提供する。

【解決手段】本発明は、臭素原子、塩素原子及びヨウ素原子から選択されるハロゲン原子を少なくとも1原子以上含み、且つハロゲン原子の少なくとも一つは臭素である化合物が、一部固形分が共存する状態で水媒体中に溶解していることを特徴とする消毒液を提供する。また、本発明は更にかかる消毒液を用いて排水を消毒するための方法及び装置も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 臭素原子、塩素原子及びヨウ素原子から選択されるハロゲン原子を少なくとも1原子以上含み、且つハロゲン原子の少なくとも一つは臭素である化合物が、一部固形分が共存する状態で水媒体中に溶解していることを特徴とする消毒液。
【請求項2】 前記化合物が、窒素原子又は硫黄原子を含む4〜10員複素環を含み、複素環が1〜4個のヘテロ原子を含み、式XXI:【化1】

(式中、Aは複素環であり、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてもよく、Xは臭素原子又はヨウ素原子である)で示される構造を有する化合物である請求項1に記載の消毒液。
【請求項3】 消毒液の固形分含有量が0.005〜10重量%の範囲である請求項1又は2に記載の消毒液。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の消毒液を排水中に投入することを特徴とする排水を消毒する方法。
【請求項5】 排水が雨水を含むものである請求項4に記載の方法。
【請求項6】 消毒剤化合物を一部固形分が共存する状態で水媒体中に溶解させて消毒液を形成する消毒液調製装置と、排水が流入する放流水路と、前記消毒液調製装置で形成された消毒液を放流水路中の排水に投入する消毒液投入装置とを具備することを特徴とする、排水を消毒する装置。
【請求項7】 消毒された排水の水質を検査するための計測器が更に設けられている請求項6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、排水処理、特に下水処理の分野に関し、より具体的には、大腸菌群数を含む雨天時下水の消毒に用いることができる消毒剤及びそれを用いた下水の消毒方法並びに装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】下水処理場は、家庭や工場から排出される汚水等を無害化して公共用水域に放流するための施設であるが、設計値を上回る降雨があった場合には、中継基地であるポンプ所や雨水吐き口から、雨水の交ざった汚水(以下、雨天時下水という)が、数十秒から数分で、無処理のままで公共用水域に放流される。この場合、粗大浮遊物やSS(suspended solids;浮遊物質)がそのまま公共用水域に放流されるために、美観上問題になることが多い。また雨天時下水中には大腸菌群が多く含まれており、それが公共用水域に放流されるため衛生上の問題もあった。これらは、特に合流式下水道にみられる現象であるが、分流式下水道においても、土壌性大腸菌群や粗大浮遊物質が流入するため、それらが越流して公共用水域に放流された場合には、合流式下水道と同様の問題が生じていた。
【0003】下水道施設計画・設計指針と解説(日本下水道協会発行、建設省都市局下水道部監修、1994年10月)によれば、放流水に対して、次亜塩素酸ナトリウム、液化塩素、塩素化イソシアヌル酸、次亜塩素酸カルシウムなどの塩素剤を用いて大腸菌群を消毒する方法が示されている。下水道施設計画・設計指針と解説には、オゾンや紫外線による消毒についても記載されている。その他に、貯留池を設けて雨天時下水を一次貯留し、貯留量以上の降雨量によって越流が起こった場合には、塩素剤を用いて消毒を行う方法が最近提案された。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記に示した、次亜塩素酸ナトリウム、液化塩素、塩素化イソシアヌル酸、次亜塩素酸カルシウムなどの塩素剤は、下水の性質、接触時間、混合度、温度及び塩素剤の注入率によって影響されるため、消毒効果をあげるためには、塩素剤と下水を混和池等で下水と十分に(15分以上)接触させる必要がある。しかし、降雨強度が大きく、ポンプ所や雨水吐き口等から短時間で公共用水域に放流される雨天時下水の場合には、塩素剤と下水との接触時間が十分にとれないため、水質汚濁防止法に定められた基準値である大腸菌群数3000(CFU/ml)以下を達成することが難しい。また、雨天時下水は、アンモニア性窒素含有量が大きいため、投入された塩素剤は、容易にアンモニア性窒素と反応して、消毒効果が低く残留性の高いクロラミンを形成する。消毒効果を高めるために塩素剤の投入量を多くすれば、大腸菌群の消毒は可能になるかもしれないが、公共用水域にクロラミン等の結合残留塩素が流出して環境に悪影響を与えるため、雨天時下水の消毒剤として用いるには問題があった。
【0005】上述の「下水道施設計画・設計指針と解説」には、オゾンや紫外線による消毒についても記載されている。オゾンを用いる場合、予想される最大越流水量に対して消毒可能なオゾン量を供給する設備を設置する必要がある。雨天時下水の越流は、地域や気象状況によって異なるが、通常1年について20〜50回程度であり、それ以外は降雨があっても汚水が公共用水域に放流されることはない。しかも大量の雨天時下水の越流は、数時間継続する場合もあるが、数十分で終了する場合も多い。また、大量に越流する雨天時下水を、大腸菌群数が3000(CFU/ml)以下にまで消毒するためには、巨大なオゾン注入設備を設ける必要があり、費用対効果を考慮した場合、賢明な方法とはいえない。また、オゾン注入後は気相中のオゾンを中和する必要があるが、暗渠が多い下水への適用は困難であり、廃オゾン処理装置の設置に伴う設備費用の上昇が懸念される。
【0006】ポンプ所に貯留池を設けて雨天時下水を一時貯留し、貯留量以上の降雨によって越流が起こった場合に、塩素剤を用いて消毒を行う方法も提案されている。この場合、貯留槽出口から公共用水域までの滞留時間が短く、短時間で消毒しなければならないため、塩素剤濃度を高くする必要が生じる。その結果、残留結合塩素が環境中へ放出される可能性があった。しかもこの方法は、設置場所に余裕のあるポンプ所等に限定され、都市部に設置された既存のポンプ所や雨水吐き口等には新たな貯留池を設ける場所がないことが多いため、必ずしも汎用的な方法ではない。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記のような課題を解消し、ポンプ所、雨水吐き口等から公共用水域に放流される大腸菌群等の細菌を含む未処理の雨天時下水を効率的且つ安価に消毒することのできる新規な消毒剤を提供することを目的とする。
【0008】本発明は、上記課題を解決するための手段として、臭素原子、塩素原子及びヨウ素原子から選択されるハロゲン原子を少なくとも1原子以上含み、且つハロゲン原子の少なくとも一つは臭素である化合物が、一部固形分が共存する状態で水媒体中に溶解していることを特徴とする消毒液を提供する。更に、本発明は、かかる消毒液を用いて排水を消毒する方法にも関する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の各種形態について説明する。本発明に係る消毒液は、臭素原子、塩素原子及びヨウ素原子から選択されるハロゲン原子を少なくとも1原子以上含み、且つハロゲン原子の少なくとも一つは臭素である化合物が、一部固形分が共存する状態で水媒体中に溶解していることを特徴とする。かかる消毒液を下水等の溶解水に溶解すると、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸及び/又は次亜塩素酸が生成し、これらが消毒作用を奏する。但し、次亜塩素酸は、上述したように、アンモニア等を含む下水に対する消毒効果が低く、クロラミンの生成等による残留性が大きいので、本発明に係る化合物は、次亜臭素酸を少なくとも1モル以上生成することができる化合物でなければならない。これは、次亜臭素酸は、大腸菌群等の細菌や有機物を分解して、自身は臭素イオンと水に分解されるが、臭素イオンが次亜塩素酸と反応して次亜臭素酸を生成するので、消毒効果の低下が小さく、残留塩素も少なくすることができるからである。
【0010】本発明において用いられる消毒液の有効成分として用いられる臭素原子、塩素原子及びヨウ素原子から選択されるハロゲン原子を少なくとも1原子以上含み、且つハロゲン原子の少なくとも一つは臭素である化合物の具体例としては、例えば、ヒダントイン類、イソシアヌル酸類、イソチアゾロン類、ε−カプロラクタム類、フタールイミド類、ピロリドン類、アクリドン類、ウラシル類、スクシンイミド類、バルビツール酸類、クレアチニン類、ジオキソピペラジン類、ウラゾール類、グリシン無水物類、ω−ヘプタラクタム類、マレイン酸ヒドラジド類、マレイン酸イミド類、オクタラクタム類、オキシインドール類などが挙げられる。
【0011】ヒダントイン類(hydantoins)は、例えば、下式IIで示される。
【0012】
【化2】

【0013】上式II中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは臭素原子であり;R1及びR2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、好ましくは、水素原子又は炭素数6以下の低級アルキル基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数3以下の低級アルキル基である。
【0014】ヒダントイン類としては、例えば、1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(上式Iで示される化合物)が挙げられる。ブロモクロロジメチルヒダントイン(BCDMH)は、高い安定性を有し、直射日光を避ければ数年間、活性を維持することができる。BCDMHは固体であり、加水分解することによって次亜臭素酸が生成し、高い消毒効果を発揮する。
【0015】イソシアヌル酸類(isocyanuric acids)は、例えば、上式IIIで示される。上式III中、R1、R2及びR3は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水酸基、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、但し、R1、R2及びR3の少なくとも一つは臭素原子である。低級アルキル基は、炭素数6以下が更に好ましく、炭素数3以下が更に好ましい。
【0016】イソチアゾロン類(isothiazolon)は、例えば、上式IVで示される。上式IV中、Xは臭素原子であり;R1及びR2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基である。低級アルキル基は、炭素数6以下が更に好ましく、炭素数3以下が更に好ましい。例えば、5−ブロモ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが好ましい。
【0017】
【化3】

【0018】ε−カプロラクタム類(ε-caprolactams)は、例えば、上式Vで示される。上式V中、Xは臭素原子である。フタールイミド類(phtalimides)は、例えば、上式VIで示される。上式VI中、Xは臭素原子である。
【0019】ピロリドン類(pyrrolidones)は、例えば、上式VIIで示される。上式VII中、Xは臭素原子である。アクリドン類(acrydones)は、例えば、上式VIIIで示される。上式VIII中、Xは臭素原子である。
【0020】
【化4】

【0021】ウラシル類(uracils)は、例えば、上式IXで示される。上式IX中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは臭素原子であり;R1は、水素原子、炭素数10以下の低級アルキル基、アミノ基又はニトロ基である。低級アルキル基は、炭素数6以下であることが好ましく、炭素数3以下であることが更に好ましい。R2及びR3は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、好ましくは、水素原子又は炭素数6以下の低級アルキル基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数3以下の低級アルキル基である。
【0022】スクシンイミド類(succinimides)は、例えば、上式Xで示される。上式X中、Xは臭素原子である。バルビツール酸類(barbituric acids)は、例えば、上式XIで示される。上式XI中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは臭素原子であり;R1及びR2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、好ましくは、水素原子又は炭素数6以下の低級アルキル基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数3以下の低級アルキル基である。
【0023】クレアチニン類(creatinines)は、例えば、上式XIIで示される。上式XII中、Xは臭素原子であり;Rは、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、好ましくは、水素原子又は炭素数6以下の低級アルキル基であり、更に好ましくは、水素原子又は炭素数3以下の低級アルキル基である。
【0024】
【化5】

【0025】ジオキソピペラジン類(dioxopiperazines)は、例えば、上式XIIIで示される。上式XIII中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは臭素原子である。
【0026】ウラゾール類(urazoles)は、例えば、上式XIVで示される。上式XIV中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは臭素原子であり;R1、R2及びR3は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、R1、R2及びR3の何れかは、臭素原子又はヨウ素原子である。低級アルキル基は、炭素数6以下が好ましく、炭素数3以下が更に好ましい。
【0027】グリシン無水物類(glycine anhydrides)は、例えば、上式XVで示される。上式XV中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、水素原子又は炭素数10以下の低級アルキル基であり、X1及びX2の何れかは臭素原子である。低級アルキル基は、炭素数6以下が好ましく、炭素数3以下が更に好ましい。
【0028】ω−ヘプタラクタム類(ω−heptalactams)は、例えば、上式XVIで示される。上式XVI中、Xは臭素原子である。
【0029】
【化6】

【0030】マレイン酸ヒドラジド類(maleic acid hydrazides)は、例えば、上式XVIIで示される。上式XVII中、X1及びX2は、それぞれ、同一又は異なって、独立して、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、ただし、X1及びX2の何れかは臭素原子である。
【0031】マレイン酸イミド類(maleimides)は、例えば、上式XVIIIで示される。上式XVIII中、Xは臭素原子である。オクタラクタム類(octalactams)は、例えば、上式XIXで示される。上式XIX中、Xは臭素原子である。
【0032】オキシインドール類(oxindoles)は、例えば、上式XXで示される。上式XX中、Xは臭素原子である。本発明で用いることができる消毒剤は、上記式I〜XXに示されるように、窒素原子又は硫黄原子を含む、4〜10員複素環を含むことが好ましく、5〜9員複素環を含むことが更に好ましい。複素環は、1〜4個のヘテロ原子を含むことが好ましく、1〜3個のヘテロ原子を含むことが更に好ましい。ヘテロ原子は、窒素原子又は硫黄原子である。
【0033】複素環の環骨格には、式−N(X)−で示される基(Xは、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、好ましくは、臭素原子又はヨウ素原子であり、更に好ましくは、臭素原子である。)を含むことが好ましい。
【0034】
【化7】

【0035】上式XXIで示されるように、複素環Aの環骨格には、式−N(X)−C(=O)−で示される基(上式XXI中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を含む。)を含むことが更に好ましい。この構造の場合には、特に、次亜ハロゲン酸を生成し易いからである。なお、上式XXI中、Aは複素環であり、窒素原子又は硫黄原子を有していてもよい。
【0036】複素環は、上記式VI、VIII、XXで示されるように、他の環、例えば、ベンゼン環のような芳香族環と縮合していてもよい。本発明に係る消毒液は、上記に示すような消毒成分の化合物が、一部固形分が共存する状態で水媒体中に溶解していることを特徴とする。従来の固形消毒剤は、溶解タンクで予め溶解してから下水中に投入するか、若しくは固形消毒剤の充填された充填層に溶解水を通して接触溶解させ、それを下水中に投入するという作業を行っていた。前者では消毒剤を完全に溶解して下水に投入するまで1分以上を要するため、その間に雨天時下水の一部が放流されてしまう。また、後者では、溶解時間は短縮できるが、溶解濃度を高くすることができず、消毒に必要な消毒剤濃度を確保することができなかった。また、臭素を含む消毒剤は、大腸菌群や有機物の酸化性が大きく、短時間で消毒を行えることを特徴とするが、越流管渠内に堆積した汚泥中に含まれる大腸菌群の消毒が十分には行えない場合がある。その結果、越流した雨天時下水そのものに含まれる大腸菌群は消毒されているにも拘わらず、公共用水域への放流口で採取した水中に基準値を大幅に上回る大腸菌群が検出されるという事態が報告されていた。本発明に係る消毒液においては、消毒成分の化合物が、一部固形分が共存する状態で水媒体中に溶解しているので、それが越流下水中で適切な速度で溶解し、管渠内に堆積した汚泥や河川放流口等の底泥などに含まれる大腸菌群等に対しても効果的な消毒剤として作用する。また、実際の雨天時越流の現場では、放流初期、即ちファーストフラッシュ時には、固形有機物が大量に流出して、濁度成分やBOD成分が高い下水が越流するが、従来の完全に溶解した消毒液では、これらの流出物によって消費されてしまうのに対して、本発明に係る消毒液では、一部固形分が共存した状態で存在しているので、これが投入後の下水中で溶解して、大腸菌群の消毒に利用できるという効果が発現する。
【0037】本発明に係る消毒液の固形分含有量は、0.005〜10重量%であることが好ましく、0.01〜5重量%であることがより好ましく、0.05〜1重量%の範囲であることが特に好ましい。消毒液の固形分含有量が0.005重量%よりも小さいと、越流下水中における消毒剤残留効果が十分に現れないために好ましくなく、また10重量%を超えると、越流下水中における消毒剤残留量が大きくなり過ぎ、公共用水域に放流された以後も有効ハロゲンが残留して環境を汚染するため好ましくない。消毒液の固形分含有量が上記に示す好ましい範囲内であると、ファーストフラッシュ時の高濁度、高BODの越流下水を短時間で消毒できるだけでなく、管渠内に消毒剤の固形分が少量残留して、管渠内に付着した汚泥中の細菌群を消毒する効果が期待できる。
【0038】本発明の消毒液は、消毒剤化合物を、上記に記載のように、一部固形分が共存する状態で水媒体中に溶解することによって形成することができる。ここで、本発明の消毒液を形成するのに用いることのできる水媒体としては、水道水、地下水、下水の一次処理水、二次処理水、三次処理水などの水を用いることができ、或いは処理すべき下水の一部を採取して、それで消毒剤化合物を溶解することによって本発明の消毒液を形成してもよい。
【0039】消毒液の添加率は、有効ハロゲン濃度(塩素換算値)として、下水量に対して0.005〜50mg/Lが好ましく、0.2〜30mg/Lがより好ましく、0.5〜20mg/Lが更に好ましい。消毒液の添加率が0.005mg/Lよりも少ない場合には、消毒剤の速効性が期待できず、消毒液添加率が50mg/Lを超えると消毒剤が残留するために好ましくない。
【0040】本発明に係る、消毒剤化合物が一部固形分が共存する状態で水媒体中に溶解している消毒液は、上記の量の消毒剤化合物を水媒体に投入して撹拌して溶解する際に所定の固形物分を残存させるのに必要な時間だけ撹拌したり、或いは消毒剤化合物を水媒体に投入して撹拌して溶解し、上澄液を連続的に抜き出して、それに消毒剤固形分を所定量添加することによって得ることができる。
【0041】本発明の消毒液は、排水、特に雨水を含む下水を消毒することを目的とする。ここで、雨水を大量に含まない汚水は、通常の処理経路で高級処理まで行うことが可能であるので、本発明の主目的とは異なる。即ち、雨天時下水(雨水を大量に含んだ汚水)は、未処理のままで海や河川等の公共用水域に放流されて環境を汚染するために、それを防止することが本発明の主たる目的である。雨天時下水中に含まれる雨水量は、降雨強度によって異なるが、本発明が主眼としているのは、降雨強度1mm/時以上、より好ましくは降雨強度2mm/時以上の降雨によってもたらされる雨水が含まれた下水である。雨天時下水の雨水含有率は、ポンプ所や雨水吐き口等の流域面積、流域環境等によって異なり、必ずしも厳密に定義できるものではないが、少なくとも10%以上、通常は30%以上の雨水が含まれていると予想される。
【0042】消毒の度合は、大腸菌群を指標細菌として用いて測定する。大腸菌群を指標として用いる理由は、消化器系由来の病原性細菌に比べて、水中で長時間生存できるためであり、大腸菌群が検出されれば消化器系由来の病原性細菌が存在する可能性が高いためである。
【0043】また、本発明は、上記に説明した消毒液を用いて排水を消毒するための装置をも提供する。即ち、本発明の他の態様は、消毒剤化合物を一部固形分が共存する状態で水媒体中に溶解させて消毒液を形成する消毒液調製装置と、排水が流入する放流水路と、前記消毒液調製装置で形成された消毒液を放流水路中の排水に投入する消毒液投入装置とを具備することを特徴とする、排水を消毒する装置に関する。
【0044】以下、本発明に係る排水を消毒する装置の一具体例について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る装置の一実施形態を説明する概略図である。
【0045】雨天時下水10は、まず沈殿池20に流入し、沈殿池20から処理水路21に送られる(初沈処理水:11)が、雨天時下水量が多い場合には、その一部は越流堰22を越えて放流水路23に越流して(12)、公共用水域に放流される。放流水路23には、ゲート24が設けられており、放流水路の水位の上昇若しくは雨天時下水流入量を検知して開放される。ゲートの先の水路25は、放流水路23と同じ高さか若しくはこれよりも低い位置にあり、消毒液と雨天時下水とが混合され易い構造になっている。
【0046】図1に示す装置においては、消毒液調製装置は、水道水及び/又は一次処理水及び/又は二次処理水及び/又は三次処理水の供給配管30或いは陸上ポンプ及び/又は水中ポンプ31から供給される雨天時下水供給配管32、消毒剤貯留槽16a〜b,及び消毒液化合物供給装置15から構成されており、消毒液投入装置は、消毒液供給配管33及び分枝配管41から構成されている。本発明に係る消毒液は、水道水及び/又は一次処理水及び/又は二次処理水及び/又は三次処理水の供給配管30によって運ばれた水媒体、或いは水中ポンプ31から供給される雨天時下水供給配管32によって運ばれた水媒体に、消毒剤化合物供給装置15によって消毒剤化合物を溶解させることによって得られる。消毒剤化合物供給装置15は、消毒剤貯留槽16a〜bと接続されていて、消毒剤化合物を水媒体に投入して、消毒剤化合物が一部固形分が共存する状態で水媒体中に溶解している消毒液が形成されるように構成されている。或いは、消毒剤化合物粉末供給装置36によって消毒液供給配管33に固形消毒剤を供給して、液体と固体とを共存させることもできる。形成された消毒液は、消毒液供給配管33によって移送され、ゲート24の上流側に分枝配管41によって分配され、放流水路23に均一に投入される。或いは、分枝配管41に代えて分配槽(図示せず)を配置して、これによって消毒液を雨天時下水中に投入してもよい。消毒液と雨天時下水は、放流水路内及びゲート24を出た後、放流口までの間に撹拌されて、大腸菌群等の細菌が消毒される。
【0047】消毒液は、ゲート24の下流の放流水路25内に、分配槽若しくは分枝配管によって分配して投入してもよい。この場合、ゲート24の直前に消毒液を投入する場合と比べて、消毒液と雨天時下水との接触効率が低下するので、ミキサー、堰、液循環ポンプ等を設置して、接触効率を高めることもできる。
【0048】図1に示すように、消毒剤貯留槽16を複数台設置することができる。これは、用いる消毒剤が固形消毒剤化合物の場合、長期間保管時に消毒剤の圧密が生じる可能性があるので、大容量の消毒剤貯留槽では、供給不良が生じる可能性があるためである。消毒剤は、消毒剤貯留槽16a内の固形消毒剤化合物の残量が所定量以下になれば貯留槽16bに接続された消毒剤化合物供給装置が起動し、次に、貯留槽16b内の消毒剤化合物の残量が所定量以下になれば再充填された貯留槽16aが再稼働するか若しくは別の貯留槽を稼動させる、というように自動制御することにより、長時間自動的に消毒剤化合物の連続投入を行うことができる。しかしながら、必ずしも複数の消毒剤貯留槽及び供給装置を自動運転する必要はなく、一台の消毒剤貯留槽内の固形消毒剤化合物の残量が少なくなれば、他の消毒剤貯留槽から固形消毒剤化合物を供給するように、バルブ操作を行えばよい。
【0049】消毒液の投入は、放流水路に対して上方から配管を通して供給する方法、放流水路に対して上流側から平行に配管を設置して供給する方法、放流水路に対して下流側から平行に配管を設置して向流式で供給する方法、放流水路に対して下方から配管を通して供給する方法などがあり、いずれの方法を採用してもよい。但し、放流水路に対して下流側から平行に配管を設置して向流式で供給する方法は、分配槽を設けた場合には、消毒液の圧送能力がないため、適用することができない。この場合には、ポンプ等を用いて消毒液を圧送する方法等が用いられる。配管は、消毒液で腐食されない材質であることが好ましく、例えば、チタン、ハステロイ等の金属材料、ライニングされた金属材料、ポリテトラフルオロエチレン、塩化ビニル等のプラスチック材料等を用いることができる。配管は剛性であることが好ましいが、剛性のないホース状のものが接続されていてもよい。これは、放流水路内でホースが動くことによって、消毒液と雨天時下水との接触効率が高くなることが期待されるからである。消毒液投入配管の出口は、放流水の水面下であることが好ましい。水面下であれば、消毒液のミスト等の飛散を防止することができ、消毒剤の消費量を少なくすることができるからである。もっとも、消毒液投入配管の出口が放流水の水面上にあっても差し支えはない。消毒液投入配管の出口の構造は、通常の切り出し配管であってもよく、消毒液を分散させて吐出圧を高くすることができるノズル構造であってもよい。
【0050】放流水路25のゲート24と公共用水域手前の間には、放流水質を測定することのできる測定装置50を設置することが望ましい。測定装置50は、大腸菌群数測定装置、残留ハロゲン測定装置、SS測定装置等の計測装置であり、放流水質を計測する。残留ハロゲン測定装置は、次亜臭素酸、次亜塩素酸、クロラミン等の活性ハロゲンの濃度を測定する。残留ハロゲン測定装置で検出した活性ハロゲン濃度が、水棲生物に影響を与える濃度の概ね1/2程度である0.2mg/L以上の場合には、それ以下になるように消毒液の投入量を減らすか、若しくは一時的に消毒液の投入を遮断する。これにより、公共用水域中の水棲生物に与える影響を軽減することができる。そして、これらの計測値及び大腸菌群数が所定の放流基準値を満たしていることを確認した後、雨天時下水を河川等の公共用水域に放流する。
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、従来無処理で公共用水域に放流されていた雨天時下水中の大腸菌群を効率的に消毒することができるだけでなく、放流管渠内に堆積した汚泥中に含まれる大腸菌群や、河川放流口等の底泥巻き上げの影響で現れる大腸菌群に対しても同時に効果的な消毒を行うことができる。また、放流初期、即ちファーストフラッシュ時の越流下水のように、固形有機物が大量に流出して濁度成分やBOD成分を高い濃度で含む下水に対しても、大腸菌群の消毒を有効に行うことができる。
【0052】
【実施例】以下の実施例により、本発明のより具体的な態様を示すが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例において、消毒液の添加率(mg/L)は、有効ハロゲン濃度(塩素換算値)としての値である。
【0053】実施例1〜4降雨強度5mm/時の降雨があったときの雨天時下水に、固形物をそれぞれ0.01%、0.7%、4%、9.8%含むように調製した消毒剤液を投入した。消毒後の雨天時下水を採取し、大腸菌群数を測定した。消毒剤は、ブロモクロロジメチルヒダントインを用い、溶解液添加率は4.6mg/Lとした。消毒試験結果を、表1に示した。
【0054】実施例5〜7降雨強度2mm/時の降雨があったときの雨天時下水に、固形物をそれぞれ0.02%、1.4%、8.9%含むように調製した消毒剤液を投入した。消毒後の雨天時下水を採取し、大腸菌群数を測定した。消毒剤はブロモクロロジメチルヒダントインを用い、溶解液添加率は12.6mg/Lとした。消毒試験結果を、表1に示した。
【0055】実施例8〜10降雨強度12mm/時の降雨があったときの雨天時下水に、固形物をそれぞれ0.04%、0.5%、1.2%、5%、8.1%含むように調製した消毒剤液を投入した。消毒後の雨天時下水を採取し、大腸菌群数を測定した。消毒剤として、ブロモクロロジメチルヒダントインとし、溶解液添加率は5.8mg/Lとした。試験結果を表1に示した。
【0056】実施例11〜13降雨強度6mm/時の降雨があったときの天時下水に、固形物をそれぞれ0.3%、4.3%、8.6%含むように調製した消毒剤液を投入した。消毒後の雨天時下水を採取し、大腸菌群数を測定した。消毒剤として、ブロモクロロジメチルヒダントインを用い、溶解液添加率を9.1mg/Lとした。試験結果を、表1に示した。
【0057】実施例14〜16降雨強度4mm/時の降雨があったときの雨天時下水に、固形物をそれぞれ0.03%、1.5%、2.8%、4.9%含むように調製した消毒剤液を投入した。消毒後の雨天時下水を採取し、大腸菌群数を測定した。消毒剤として、ブロモクロロジメチルヒダントインを用い、溶解液添加率として16.9mg/Lとした。試験結果を、表1に示した。
【0058】実施例17〜19降雨強度4mm/時の降雨があったときの雨天時下水に、固形物をそれぞれ0.02%、0.9%、5.8%含むように調製した消毒剤液を投入した。消毒後の雨天時下水を採取して大腸菌群数を測定した。消毒剤として、ブロモクロロジメチルヒダントインを用い、溶解液添加率として11.1mg/Lとした。試験結果を、表1に示した。
【0059】比較例1〜3降雨強度5mm/時の降雨があったときの雨天時下水に、固形物を含まないブロモクロロジメチルヒダントインを2.6〜18.3mg/Lになるように投入し、消毒後の雨天時下水を採取し、大腸菌群数を測定した。試験結果を、表2に示した。
【0060】比較例4〜6降雨強度7mm/時の降雨があったときの雨天時下水に、固形物を含まないブロモクロロジメチルヒダントインを3.4〜15.1mg/Lになるように投入し、消毒後の雨天時下水を採取し、大腸菌群数を測定した。試験結果を、表2に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】実施例20〜22降雨強度11mm/時の際の雨天時下水(高濁度ファーストスラッシュ水)に、本発明に係る消毒剤を投入した。消毒液としては、三次処理水を使用し、これに、消毒剤化合物としてブロモクロロジメチルヒダントインを、一部固形分が共存するようにして、固形分含有量がそれぞれ0.02重量%、0.1重量%0.5重量%になるように調製した消毒液を用いた。放流水を採取し、大腸菌群数を測定した。消毒剤化合物の添加率は下水に対して、3.6〜15.4mg/Lとした。消毒試験結果を、表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】比較例7〜9降雨強度9mm/時の際の雨天時下水(高濁度ファーストスラッシュ水)に、本発明に係る消毒剤を投入した。消毒液としては、三次処理水を使用し、これに、消毒剤化合物としてブロモクロロジメチルヒダントインを溶解することによって得た、固形分が完全に溶解した消毒液を用いた。放流口で試料を採取して大腸菌群数を測定した。消毒剤化合物の添加率は、下水に対して3.5〜16.3mg/Lとした。結果を表4に示す。
【0066】
【表4】

【0067】
【発明の効果】上記の結果をみれば明らかなように、本発明に係る消毒液を用いると、通常の雨水で希釈された雨天時下水だけでなく、汚濁負荷の高い高濁度水に対しても効果的な消毒を行うことができた。これは、消毒剤化合物が、消毒液中に一部固形分が共存する状態で溶解しているために、徐々に雨天時下水中に溶解するためであると考えられる。
【出願人】 【識別番号】591043581
【氏名又は名称】東京都
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
【出願日】 平成13年10月19日(2001.10.19)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫 (外5名)
【公開番号】 特開2003−128506(P2003−128506A)
【公開日】 平成15年5月8日(2003.5.8)
【出願番号】 特願2001−321778(P2001−321778)