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【発明の名称】 トリテルペン配糖体を含有する害虫防除剤
【発明者】 【氏名】手林 慎一

【氏名】金 哲史

【氏名】堀池 道郎

【要約】 【課題】トリテルペン配糖体を含有する安全性の高いハモグリバエ類又は吸汁性害虫の防除剤の提供。

【解決手段】下記式(1)で示されるトリテルペン配糖体から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするハモグリバエ類又はダニ類の防除剤。ハモグリバエ類又は吸汁性害虫に対して産卵抑制や殺卵、孵化阻害作用、幼虫・成虫の発生抑制作用などの防除効果を有する。特に食用植物由来のトリテルペン配糖体を含有する害虫防除剤はより安全性が高く好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】下記式(1)で示されるトリテルペン配糖体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするハモグリバエ類又は吸汁性害虫の防除剤【化1】

[ 式中R1、R2、およびR3は各々独立して水素原子又はグリコシル基を表す。ただし、R1、R2、R3の少なくとも1つはグリコシル基を表す。]
【請求項2】トリテルペン配糖体がモモルジシンII(R1及びR2が水素原子、R3がグルコシル基)である請求項1のハモグリバエ類又は吸汁性害虫の防除剤【請求項3】トリテルペン配糖体がニガウリ由来のものである請求項1又は請求項2のハモグリバエ類又は吸汁性害虫の防除剤
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明はトリテルペン配糖体を含有するハモグリバエ類又は吸汁性害虫の防除剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ハモグリバエ類は葉に産卵し、孵化した幼虫は葉のなかに潜りこんだ状態で成長する。幼虫による葉の食害痕が白い線状となって残るうえに、成虫の食痕や産卵痕も白い斑点となるため、花き類では著しく商品価値が低下する。また食害により光合成が阻害されて発育不良になり作物が減収する。特にマメハモグリバエは日本では1990年に発見された帰化害虫であるが寄主植物の範囲が極めてひろく、かつ耐薬品性が強いので瞬く間に全国に広がり多くの作物に被害を与えている。また吸汁性害虫は葉や花に寄生して汁液を吸収したり、葉緑素を破壊するので被害株は生育が衰えたり、葉や花に小斑点を生じたり変色したりするので商品価値を著しく低下させる。 これらの防除剤として多数の合成有機化合物が使用されているが大部分のものは有機リン系、有機含塩素化合物、有機含窒素系あるいはピレスロイド系化合物に属している。しかしこれらの化合物は防除能力は高いものの毒性が強く、残留性も大きいものであり、より安全で効果のある防除剤がのぞまれていた。またトリテルペン配糖体の害虫防除に関する研究はYASUI等J.Chem.Ecology,24(5),803(1998)になされているが、鱗翅目昆虫であるアワヨトウ、ハスモンヨトウの摂食阻害作用を見いだしているに過ぎず、双翅目昆虫であるハモグリバエ類や吸汁性害虫に関する防除の知見はまったくないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】 本発明は、安全性の高いハモグリバエ類又は吸汁性害虫の防除剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記式(1)で示されるトリテルペン配糖体がハモグリバエ類又は吸汁性害虫に対する産卵抑制作用や殺卵、孵化阻害作用、幼虫・成虫の発生抑制作用に優れることを見いだし、本発明を完成した。
【化2】

[式中R1、R2、およびR3は各々独立して水素原子又はグリコシル基を表す。ただし、R1、R2、R3の少なくとも1つはグリコシル基を表す。 ]
すなわち、式(1)で示されるトリテルペン配糖体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とするハモグリバエ類又は吸汁性害虫の防除剤を提供する発明である。
【発明の実施の形態】
【0005】本発明の式(1)のトリテルペン配糖体のR1、R2、およびR3は各々独立して水素原子又はグリコシル基であるが、R1、R2、R3の少なくとも1つはグリコシル基である。グリコシル基としては五炭糖残基のキシロシル基、アラビノシル基、リボシル基など、六炭糖残基としてはグルコシル基、フルクトシル基、マンノシル基、ガラクトシル基など、二糖類残基としてはルチノシル基、マルトシル基、セロビオシル基、ラクトシル基、マルトトリオシル基などを例示できる。このうちR1、R2が水素原子、R3がグルコシル基であるモモルジシンIIが好ましい。
【0006】式(1)で表される化合物は糖類とアグリコンから常法により化学合成することもできるが、それらを含有する植物などの天然物から得ることもでき、しかも数種類の混合物として抽出、分離精製されることが多い。特にニガウリからのものは食用植物からのものであり、安全性が高く好ましい。
【0007】ニガウリの葉、果実、根などにモモルジシンIIは含まれており、常法により抽出精製することができる。例えば、ニガウリの葉をそのまま、または乾燥したものを水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンなどの親水性溶媒やヘキサン、ヘプタン、トルエン、ジエチルエーテル、酢酸エチルなどの親油性溶媒との混合溶媒などを用いて常温乃至溶媒の沸点温度程度にて抽出することにより得られる。これらの抽出物はこのまま使用することもできるが、さらに液液抽出、イオン交換樹脂、シリカゲル、活性炭などによる吸着精製やカラムクロマト、再結晶などにより精製したものも使用できる。
【0008】製剤に於いてはトリテルペン配糖体を単独で使用することも可能であるが、防除剤として使いやすくするために担体を配合して製剤化して使用するのが一般的である。
【0009】防除剤の製剤化に際しては、何らの特別の条件を必要とせず、一般的方法によって乳剤、水和剤、粉剤、粒剤、微粒剤、水溶剤、フロアブル剤、マイクロカプセル剤、油剤、エアゾール、薫蒸剤等の任意の剤型に調製することができ、それらをそれぞれの目的に応じた各種用途に供しうる。
【0010】担体としては固体担体としてカオリン、ベントナイト、タルク、白土、バーミキュライト、石膏、炭酸カルシウム、シリカゲル、活性炭等の無機物質、デンプン粉、鋸屑、小麦粉、シクロデキストリン、ペクチン、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の有機物質などを使用することができる。液体担体として水、アルコール類(例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、脂肪族炭化水素類(例えばケロシン、灯油、燃料油、機械油等)、芳香族炭化水素類(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、メチルナフタレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等)、酸アミド類(例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、エステル類(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、脂肪酸グリセリンエステル等)、ニトリル類(例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等)等の溶媒が適当であり、これらは一種または二種以上を適当な割合で混合して適宜使用することができる【0011】さらに、乳化、分散、安定化などの使用目的に応じて界面活性剤、水溶性高分子、滑沢剤、酸化防止剤、防腐剤などを助剤とすることができる。
【0012】界面活性剤としてはジアルキルスルホコハク酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、アシルN−メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩等の陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルソルビタン脂肪酸部分エステル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリグリコシド等の非イオン界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、短鎖ポリオキシエチレンアルキルアミン及びその塩または四級塩、塩化ベンザルコニウム等の陽イオン性界面活性剤;レシチン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体、トラガントガム、アクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体等の高分子界面活性剤;等を例示することができる。
【0013】水溶性高分子としてはグアーガム、クインスシードガム、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタアクリル酸エステル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを例示することができる。
【0014】滑沢剤としてはステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレングリコール、などを例示することができる。
【0015】酸化防止剤としては、BHT、BHA、没食子酸プロピル、トコフェロールおよび/またはその誘導体、アスコルビン酸および/またはその誘導体等を例示することができる。
【0016】防腐剤としてはフェノール類、安息香酸及びその塩類、ハロゲン化ビスフェノール類、酸アミド類、四級アンモニウム塩類等を例示することができる。
【0017】さらに本発明の防除剤には肥料、植物成長調整剤、殺虫剤、昆虫フェロモンなどの植物保護剤や害虫防除を助けるものを混合してさらに効力のある多目的な防除剤を作ることができる。
【0018】本発明の化合物(1)を含有する製剤の防除害虫としては、双翅目昆虫のハモグリバエ類としてナスハモグリバエ、イネハモグリバエ、ムギスジハモグリバエ、マメハモグリバエなどを挙げることができる。吸汁性害虫としてはダニ目のダニ類、アザミウマ目のアザミウマ類、半翅目のアブラムシ類、コナジラミ類などを挙げることができる。ダニ類としてはナミハダニ、ニセナミハダニ、チャノヒメハダニ、カンザワハダニ、チャノホコリダニなどを、アザミウマ類としてはミナミキイロアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ネギアザミウマなどを、アブラムシ類としてワタアブラムシ、イバラヒゲナガアブラムシ、エンドウヒゲナガアブラムシ、ナシアブラムシなどを、コナジラミ類としてはオンシツコナジラミ、タバココナジラミなどを挙げることができる。このうち、特にマメハモグリバエには好適に用いられる。
【0019】本発明の防除剤の施用量は、施用時期、施用場所、施用方法等により広範囲に変えられるが一般的には化合物1のトリテルペン配糖体として100m2あたり0.01g〜1000g好ましくは1g〜500gになるようにすることが望ましい。本発明の防除剤が水和剤である場合には本発明の有効成分として0.001〜10%好ましくは0.001〜1%に希釈して使用すればよい。
【0020】
【実施例】以下本発明を実施例にてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】実施例1ニガウリの葉300gをメタノール1000mlに浸漬し、72時間抽出を行った。これを二回繰り返し抽出液を濾過後、メタノールを留去し、水500mlに希釈した。これにヘキサン、エーテル、酢酸ブチル、ブタノールにて順次液/液抽出しブタノール相を得た。ブタノール相をシリカゲルクロマトにて20%メタノール/酢酸エチル留分を分画した。さらにこの分画部をシリカゲルカラムクロマトにて精製をしてモモルディシンIIの結晶を得た。HPLC分析から98%の純度であった。得られた結晶のNMRを図1に示す。この結晶を1000PPM濃度に水で希釈して防除剤を得た。
【0022】試験例1実施例1の防除剤をインゲンマメの苗の上葉に1ml塗布し風乾させた。その苗を温度25℃、幅40cm奥行き35cm高さ35cmの飼育器に置き、マメハモグリバエの成虫(雌)20匹を入れて、24時間産卵させ葉につけられた産卵痕の数および孵化した幼虫の数・さなぎ数・成虫数を測定した。結果(n=5回の平均値)を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】表1から実施例1の防除剤はきわめて大きな産卵抑制や殺卵、孵化阻害作用、幼虫・成虫の発生抑制作用がある。
【0025】
【発明の効果】以上の結果から明らかなように、本発明はハモグリバエ類又は吸汁性害虫の産卵抑制作用や殺卵、孵化阻害作用、幼虫・成虫の発生抑制作用などに優れた、安全性の高い防除剤を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000231497
【氏名又は名称】日本精化株式会社
【出願日】 平成14年7月25日(2002.7.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−104812(P2003−104812A)
【公開日】 平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願番号】 特願2002−216474(P2002−216474)