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【発明の名称】 水系における微生物の生育抑制及び殺微生物方法
【発明者】 【氏名】野畑 靖浩
【住所又は居所】三重県四日市市別名六丁目6番9号 伯東株式会社四日市研究所内

【氏名】山口 善治
【住所又は居所】三重県四日市市別名六丁目6番9号 伯東株式会社四日市研究所内

【要約】 【課題】各種工業用工程水、冷却水、洗浄水などの水系において、水中に浮遊した微生物及び固体表面へのスライム付着を引き起こすスライム形成微生物、さらにスライムに囲まれた微生物に対して、スライムの付着を抑制するための微生物の生育抑制及び殺微生物方法を提供する。

【解決手段】A)一般式(1)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)一般式(1)〔式中、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、少なくとも一方は塩素原子または臭素原子であり、他方は塩素原子、臭素原子、水素原子のいずれかを表わし、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す〕で表されるハロゲン化ヒダントイン類と、【化1】

(B)一般式(2)〔式中、R、Rは、それぞれ直鎖又は分岐の炭素数12〜22のアルキル基、アルケニル基を表す〕で表されるアルキルケテンダイマー類および/又はその加水分解物、とを組み合わせて用いることを特徴とする水系における微生物の生育抑制及び殺微生物方法。
【化2】

【請求項2】 ハロゲン化ヒダントイン類が、1,3−ジクロル−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、1−ブロム−3−クロル−5,5−ジメチルヒダントイン、1−ブロム−3−クロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、3−ブロム−1−クロル−5,5−ジメチルヒダントイン、3−ブロム−1−クロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、3,3−ジブロム−5,5−ジメチルヒダントイン、3,3−ジブロム−5−エチル−5−メチルヒダントインのなかの1種以上である請求項1記載の水系における微生物の生育抑制及び殺微生物方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種工業用工程水、冷却水、洗浄水などの水系における微生物障害及びスライム障害を防止する微生物の生育抑制及び殺微生物方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】工程水、製品処理水、冷却水系、洗浄水、温調用水等各種工業用水系では微生物に由来する障害が煩雑に発生する。特に微生物が分泌した粘性物質が水中の土砂、鉄錆、その他の有機物等と混合してスライムと呼ばれる泥状物を生成し、運転上あるいは製品の品質上多くの障害を招くことがある。
【0003】近年、冷却水系においては、用水の使用量を低減するために水の循環再利用が盛んになってきた。冷却水の循環系では、水を冷水塔で一部気化させることにより冷却させているため、冷却水系の溶解分は濃縮され、増加する。その結果、水中微生物の活動に好都合な状況となり、スライムの形成が増大することとなる。スライムの付着は、水系内のストレーナーの通水不良、熱交換器の熱伝導の低下、配管流量の減少及び配管閉塞、金属腐食などの弊害をもたらす。
【0004】紙パルプ製造業では大量の水を使用し排水していたが、排水処理費の増大対策と周辺環境の保全意識の高まりにより、紙パルプ製造工程水の再使用化が進められている。また、製紙工程では、多種多様な薬品、例えばデンプン、サイズ剤、歩留向上剤、紙力剤、ラッテクス樹脂等を使用するために用水の循環再使用は、工程水中の使用薬品の濃縮を招き、微生物の生育に好ましい環境となっている。
【0005】微生物により形成されたスライムが、抄紙工程内の壁面に付着し、ある程度成長した後、壁面から剥がれてパルプスラリー中に混ざり成紙中に抄き込まれると、紙力が低下してプレス工程、乾燥工程で紙切れを起こしたり、成紙の着色、斑点、目玉等の発生となり、製品価値を著しく低下させることとなる。
【0006】近年、酸性抄紙から中性抄紙、弱アルカリ抄紙への移行が進み、微生物に好都合な生育条件となり、従来の殺微生物剤では十分、満足できる効果が期待できなくなってきた。
【0007】従来用いられている殺微生物剤は、多くの場合、水系中の微生物の静菌数を指標にして開発されてきた。しかし、実際の水系では、微生物は自身が分泌した粘質性物質を基にしたスライムを作りその中に生息しているものが多い。このような場合、殺微生物剤により水系中の微生物数が減少しても、スライムに囲まれて生育している微生物には十分な殺菌効果を発揮しておらず、スライム内の微生物が増加してスライム障害が発生することが多々生じている〔参照:「微生物の生態16」学会出版センター、37頁;「Combating biocide−tolerant populations in caoting systems」TAPPI JOURNAL may、p32(2001)〕。そのために、殺微生物剤は水中に浮遊している微生物に対してのみならず、スライムに囲まれて生育する微生物対しても作用する必要がある。
【0008】このような考えに基づき、固体面に形成したスライムを防除するのにグルカナーゼを利用して微生物の分泌した多糖類を分解することにより殺微生物力を補う方法(特開平3−193号公報)、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタンと、1,4−ビスブロモアセトキシ−2−ブテン、1,3−ビスブロモアセトキシプロパン、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドを併用し相乗効果により壁面のスライム内の微生物に対して殺微生物効果を発揮させる方法(特開平11−302105)、2−(p−ヒドロオキシフェニル)グリオキシヒドロキシモイルクロライドとメチレンビスシアネートを併用し相乗効果により壁面のスライム内の微生物に対して殺微生物効果を発揮させる方法(特開平10−113669)、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドと2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、1,4−ビスブロモアセトキシ−2−エタン、1,3−ビスブロモアセトキシプロパン、1,4−ビスブロモアセトキシ−2−ブテンを併用し相乗効果により壁面のスライム内の微生物に対して殺微生物効果を発揮させる方法(特開平11−322510)、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミドと2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールと3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロキシチオフェン−1,1−ジオキシドを併用し相乗効果により壁面のスライムに対しての効果を発揮させる方法(特開平11−335207)等が提案された。
【0009】しかし、これらの方法は従来から使用されていた殺微生物剤を組み合わせたものが多く、スライムに囲まれた微生物に対しての効果は依然不充分であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、各種工業用工程水、冷却水、洗浄水などの水系において、水中に浮遊した微生物及び固体表面へのスライム付着を引き起こすスライム形成微生物、さらにスライムに囲まれた微生物に対して、スライムの付着を抑制するための微生物の生育抑制及び殺微生物方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、殺微生物剤により水系中の微生物数が減少しても、スライム内で生育している微生物には十分な殺菌効果を発揮できないためにスライム内の微生物が増加してスライム障害が発生することが多々生じていること、そして、殺微生物剤は水中に浮遊している微生物に対してのみならず、スライムに囲まれて生育する微生物対しても作用する必要があることを考慮して、水中に浮遊した微生物や固体面に付着してスライムを形成し生育する微生物に対して、効果的な生育抑制および殺菌方法を鋭意検討を重ねた。
【0012】その結果、スライムを形成する微生物の増加とスライム付着量が相関することが知られているスライム付着センサーを用い、特定のハロゲン化ヒダントイン類と特定のアルキルケテンダイマー類を組合せて同時に使用することにより、水中浮遊微生物やスライムに囲まれた微生物に対しても優れた微生物生育抑制効果及び殺菌効果を示し、スライム付着を抑制することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】すなわち、請求項1に係る発明は、(A)一般式(1)〔式中、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、少なくとも一方は塩素原子または臭素原子であり、他方は塩素原子、臭素原子、水素原子のいずれかを表わし、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す〕で表されるハロゲン化ヒダントイン類と【0014】
【化3】

【0015】(B)一般式(2)〔式中、R、Rは、それぞれ直鎖又は分岐の炭素数12〜22のアルキル基、アルケニル基を表わす〕で表されるアルキルケテンダイマー類および/またはその加水分解物、とを組み合わせて用いることを特徴とする水系における微生物の生育抑制及び殺微生物方法である。
【0016】
【化4】

【0017】請求項2に係る発明は、請求項1記載の水系における微生物の生育抑制及び殺微生物方法において、ハロゲン化ヒダントイン類が、1,3−ジクロル−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、1−ブロム−3−クロル−5,5−ジメチルヒダントイン、1−ブロム−3−クロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、3−ブロム−1−クロル−5,5−ジメチルヒダントイン、3−ブロム−1−クロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロム−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロム−5−エチル−5−メチルヒダントインのなかの1種以上であることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
【0019】本発明は、各種工業用工程水、冷却水、洗浄水などの水系において、特定の(A)ハロゲン化ヒダントイン類と特定の(B)アルキルケテンダイマー類および/またはその加水分解物、とを組合せて同時に使用することで、水中に浮遊した微生物及び固体表面へのスライム付着を引き起こすスライム形成微生物、さらにスライムに囲まれた微生物に作用して、スライムの発生および付着を防止する水系の微生物の生育抑制及び殺微生物方法である。
【0020】本発明のA成分は、下記一般式(1)で表されるハロゲン化ヒダントイン類であり、一般式(1)において、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、少なくとも一方は塩素原子または臭素原子であり、他方は塩素原子、臭素原子、水素原子のいずれかを表わす。また、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜12のアルキル基を表す。例えば、1,3−ジクロル−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジクロル−5,5−ジエチルヒダントイン、1,3−ジクロル−5−メチル−5−プロピルヒダントイン、1,3−ジクロル−5−ブチル−5−メチルヒダントイン、1−ブロム−3−クロル−5,5−ジメチルヒダントイン、1−ブロム−3−クロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、1−ブロム−3−クロル−5,5−ジエチルヒダントイン、1−ブロム−3−クロル−5−メチル−5−プロピルヒダントイン、1−ブロム−3−クロル−5−ブチル−5−メチルヒダントイン、3−ブロム−1−クロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、3−ブロム−1−クロル−5,5−ジエチルヒダントイン、3−ブロム−1−クロル−5−メチル−5−プロピルヒダントイン、3−ブロム−1−クロル−5−ブチル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロム−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロム−5−エチル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロム−5,5−ジエチルヒダントイン、1,3−ジブロム−5−メチル−5−プロピルヒダントイン、1,3−ジブロム−5−ブチル−5−メチルヒダントイン等があり、好ましくは1,3−ジクロル−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、1−ブロム−3−クロル−5,5−ジメチルヒダントイン、1−ブロム−3−クロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、3−ブロム−1−クロル−5,5−ジメチルヒダントイン、3−ブロム−1−クロル−5−エチル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロム−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロム−5−エチル−5−メチルヒダントインであり、より好ましくは1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、3−ブロモ−1−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントインであり、これらを2種以上混合して用いてもよい。
【0021】
【化5】

【0022】本発明のハロゲン化ヒダントイン類の水系への添加方法は、特に限定されるものではなく、現場で固体のハロゲン化ヒダントイン類を水に溶解して添加する方法、水や有機溶媒に溶解した液状品で添加する方法、あるいはスラリーの状態で添加する方法等の何れでも良い。
【0023】現場で固体のハロゲン化ヒダントイン類を水に溶解して添加する方法では、通常、粉体、顆粒、錠剤の形態にしたハロゲン化ヒダントイン類を容器内に詰め、水を容器内に通水し、容器内に滞留している間にハロゲン化ヒダントイン類の一定濃度範囲の水溶液が調製され、容器外に出て、添加される。
【0024】水や有機溶媒に溶解した液状品で添加する方法、あるいはスラリーの状態で添加する方法では、通常、20〜60重量%(以下、「重量%」を「%」とする)濃度で調製され、薬品注入ポンプを用いて添加される。
【0025】本発明のハロゲン化ヒダントイン類の水系への添加は、スライム障害の発生状況により考慮して決定されるもので一律に決めることはできないが、通常、スライム障害が発生している工程、箇所およびその上流の工程、箇所に添加される。
【0026】本発明のB成分のアルキルケテンダイマー類およびその加水分解物(以下、「本発明のAKD類」とする)は、下記一般式(2)で表されるアルキルケテンダイマー類およびその加水分解物である。
【0027】
【化6】

【0028】一般式(2)において、R、Rは、それぞれ直鎖あるいは分岐の炭素数が12〜22のアルキル基及びアルケニル基であり、例えば、ドデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、ベヘニル基、オレイル基、イソドデシル基、イソパルミチル基、イソミリスチル基、イソステアリル基などがある。具体的には、ドデシルジケテン、ヤシアルキル(炭素数12〜14)ジケテン、テトラデシルジケテン、硬化牛脂アルキル(炭素数16〜20)ジケテン、ステアリルパルミチルジケテン、ステアリルジケテン、オレイルステアリルジケテン、オレイルジケテン、ステアリルベヘニルジケテン、ベヘニルジケテン、イソドデシルジケテン、イソパルミチルジケテン、イソミリスチルジケテン、イソステアリルジケテンなどがあり、好ましくはドデシルジケテン、テトラデシルジケテン、ステアリルジケテン、ベヘニルジケテン、イソステアリルジケテンであり、これらの1種以上が用いられる。
【0029】本発明のAKD類の製造は、特に限定されたものではなく、通常の方法、例えば、AKDに相当するカルボン酸塩化物と3級アミンとの反応で、脱塩化水素により得られる。あるいは、製紙用合成サイズ剤として市販されているアルキルテケンダイマー(AKD)として入手することができる。
【0030】本発明のAKDの使用形態は、通常、界面活性剤を用いて乳化・分散液を調製して使用する方法や高分子系分散剤を用いて懸濁液を調製して使用する方法がある。界面活性剤を用いて乳化・分散液を調製して使用する方法では、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤、テトラアルキルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤等を適宜組み合わせ、ホモミキサー、ホモジナイザー等の乳化装置を用いて乳化・分散液を調製する。界面活性剤の添加量は、通常、AKD類に対して0.5〜20%、好ましくは1〜10%である。
【0031】高分子系分散剤を用いて懸濁液を調製して使用する方法では、カゼイン、レシチン、ポリビニルアルコール、カチオン化澱粉、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、カチオン性ポリ(メタ)アクリルアミド重合体、ポリアミノポリアミド─エピクロルヒドリン樹脂などの高分子系分散剤等を適宜組み合わせ、ホモミキサー、ホモジナイザー等の乳化装置を用いて懸濁液を調製する。高分子系分散剤の添加量は、通常、AKDに対して30〜500%、好ましくは100〜300%である。
【0032】本発明のAKD類の乳化分散液および懸濁液の平均粒径は、通常、平均粒子径約0.1〜0.3μmを目安に調製される。また、その固形分は、通常、20〜60%である。
【0033】その他に水溶性有機溶剤に溶解して使用する方法もあり、AKD類の種類により、親水性有機溶剤のブチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、グリコール類、アルコール類、プロピレンカーボネートなどのエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類などを適宜組み合わせて使用しても構わない。
【0034】本発明のハロゲン化ヒダントイン類の添加量は、水中の菌数、水質、温度、水系の運転条件などに依り異なるが、一般的には、系内の保有水量に対して水中の有効ハロゲン(塩素、臭素)濃度が0.01〜10mg/L、好ましくは0.1〜5.0mg/L、より好ましくは0.2〜2.0mg/Lとなるような添加量である。水中の有効ハロゲン(塩素、臭素)濃度が0.01mg/Lよりも少なくなるハロゲン化ヒダントイン類の添加量では、その効果が十分得られないことがあり、水中の有効ハロゲン(塩素、臭素)濃度が10mg/Lを越えるハロゲン化ヒダントイン類の添加量では、殺菌効果及び生育抑制効果は充分高いが、ハロゲン化ヒダントイン類の添加量の割には得られる効果の向上が小さく、不経済となることや腐食を発生させることもある。
【0035】本発明のAKD類の添加量は、系内の保有水量に対して0.1〜300mg/L、好ましくは0.5〜200mg/L、1〜100mg/Lである。AKD類の添加量が0.1mg/L未満では本発明の効果が得られない場合があり、200mg/Lを越える添加量ではそれなりの効果はあるが、添加量の割に効果の向上がなく、経済的ではないうえに汚れの原因となることがある。
【0036】本発明のハロゲン化ヒダントイン類とAKD類の添加方法は、それぞれ別々に水系に添加してもよいが、予め所定の割合で混合しておき添加することもできる。予め混合する場合には、水や前記の親水性有機溶剤もしくはその混合物中に分散させて用いるのがよい。
【0037】本発明のハロゲン化ヒダントイン類とAKD類の併用による微生物の生育抑制効果および殺微生物効果は、以下のように推定される。
【0038】本発明のAKD類は、水中で加水分解されて、アルキル−β−ケトカルボン酸になり、親水性のカルボン酸部分と炭化水素鎖の疎水性部分を持ち、疎水性表面と親水性表面の両方に親和性を有する。一般に疎水性表面には汚れが付着し易く、スライムが発生しやすいことが知られており、本発明のAKD類は、その疎水性の炭化水素鎖部分が疎水性表面に吸着する一方、親水性のカルボン酸部分は、殺菌作用を有するハロゲン化ヒダントイン中のN基と結びつき、疎水性表面の微生物に生育抑制作用および殺微生物作用を発揮し、スライム抑制をもたらすと推定される。この様な効果は、全く予想し得なかった。
【0039】本発明の微生物の生育抑制及び殺微生物方法において、本発明の方法の実施及び本発明の効果に支障がない範囲で、その他の殺微生物剤、腐食防止剤、スケール抑制剤等を加えることには何ら制限を加えるものではない。
【0040】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
[A成分化合物]
A−1:ブロムクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(1−ブロム−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントインと3−ブロム−1−クロロ−5,5−ジメチルヒダントインの混合物)(グレート・レイクス・ケミカルズ社製)
A−2:1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(関東化学(株)製)
A−3:1,3−ジブロム−5,5−ジメチルヒダントイン(関東化学(株)製)
[B成分化合物]
B−1:アルキルケテンダイマー(エマルション)「サイズパインK−910(有効分15%)」〔商品名、荒川化学工業(株)製〕
[試験に用いたスラムを形成する微生物]
(細菌)
微生物−1:シュードモナス エルギノーサ (Pseudomonas aeruginosa :IFO−12689)
微生物−2:キサントモナスカンペストリス(Xanthmonas campestris:IFO−13551 )
微生物−3:アルカリゲネス レイタス B−l6(Alcallgeneslatus B−l6:FERM BP−2015)
(カビ)
微生物−4:コレトトリウム フラガリエ(Colletotrichum fragriae :FERM P−12625)
(酵母)
微生物−5:リポマイセス・スタアケイ(Lipomyces starkeyi :IAM−4753)
[試験に用いた試薬]
グルコース〔関東化学社製試薬〕
イーストエキストラクト〔極東製薬工業株式会社製、試薬〕
ペプトン〔極東製薬工業株式会社製,試薬〕
[培地組成]
(前培地(平板培地))グルコース1.0g、ペプトン5.0g、イーストエキストラクト2.5g、寒天18gを蒸留水に溶解し、全量を1L(pH:6.8)として調製した。
(スライム形成培地)グルコース1.0g、ペプトン1.0g、イーストエキストラクト1.0g、蒸留水に溶解し、全量を1L(pH:6.8)として調製した。
〔スライム付着試験方法〕図1参照。
【0041】試験に用いる菌株を予め平板培地にて対数増殖期になるように25℃にて1〜4日間培養を行なって試験用菌株とした。
【0042】300mlの三角フラスコ7にスライム形成培地9を100mL、マグネティックスターラーバー10を入れ、オートクレーブで121℃、15分間、滅菌し、冷却した。0.2μのメンブランフイルター1(および2)を取り付けた送気管4と排気管5及び水晶振動子電極接続端子を付けたゴム栓6に水晶振動子電極8を接続し、水晶振動子電極8の金電極部分がスライム形成培地内に完全に浸漬するように300mL三角フラスコにつけた。300mL三角フラスコを所定の温度に設定した恒温槽11に浸け、マグネチックスターラー12を攪拌させながら、所定量の空気を0.2μのメンブランフイルター1を通して送気管4からスライム形成培地9に送り込み、所定期間での水晶振動子電極8へのスライム付着試験を行った。
〔スライム付着量測定方法〕図2参照。
【0043】水晶振動子の共振周波数は、振動する水晶振動子表面にかかる荷重に比例して変化する〔(田口 寛他)アグリカルチャル アンド バイオロジカル ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)、55巻(1991年)、5号、1239〜1245頁〕。これを利用して、薄い円盤状(厚さ:0.2mm、直径:9mm)の水晶振動子の表裏面を金メッキで覆って金電極とし、この金電極面からリード線を出して水晶振動子電極を作り、これを発信器−周波数カウンター4に接続することにより、水晶振動子電極の振動周波数を測定した。
【0044】容器に供試液3を入れ、マグネチックスターラ7とマグネット6で緩く撹拌しながら水晶振動子電極1を供試液3に完全に浸漬した。所定時間後に水晶振動子電極を供試液3から取り出し、スライムの付着した水晶振動子電極2をパーソナルコンピュータ5に接続した発信器−周波数カウンタ4に接続し、水晶振動子電極表面のスライム付着量に応じた水晶振動子電極の周波数変化量が測定され、周波数変化量からスライム付着量を算出した。この水晶振動子電極の場合、1ngの重量変化で約1Hzの周波数変化がある(測定下限は10ng)。
(水晶振動子電極の仕様)
・形式:RWHC−49/Uベース(スリットサポート型)
・共振周波数帯:9MHz帯(ATカット)
・電極面:電極表面積は0.3925mm、金蒸着。
(発信器−周波数カウンタの仕様)
・ユニバーサルカウンターSC−7202(岩崎通信工業(株)製)
[スライム付着抑制試験1]シュードモナス エルギノーサ、キサントモナスカンペストリス、アルカリゲネス レイタス B−l6、コレトトリウム フラガリエ、リポマイセス・スタアケイの各菌株をそれぞれの平板培地にて対数増殖期になるように25℃にて1〜4日間培養を行ない、試験用菌株とした。
【0045】1500mlの三角フラスコにスライム形成培地500mL、マグネット攪拌子を入れ、オートクレーブにて121℃、15分間で滅菌し、冷却した。水晶振動子電極の金電極部分が、1500mL三角フラスコ内のスライム形成培地内に完全に浸漬するようににつけ、マグネチックスターラーを攪拌させた。次いでスライム形成培地内の有効ハロゲン(塩素、臭素)濃度が1mg/L量になるように予めブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(A−1)の添加量を確認した後、0.1%のブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(A−1)水溶液を1.25g添加した。同時にAKDエマルション(B−1)0.17gを加えて10秒間攪拌した後、一度、撹拌を止めて水晶振動子電極をスライム形成培地から取り出して、水晶振動子に付着したスライム形成培地を取り除き、余分の水分を濾紙で吸収して取り除き、水晶振動子電極の周波数測定を行った。次いで、対数増殖期にあるそれぞれの菌株をl白金耳入れ、30℃にて攪拌を一定期間継続し、1時間おきに水晶振動子電極の周波数を測定した。水晶振動子電極の周波数の測定時は、攪拌を止め、測定終了後、再び水晶振動子電極をフラスコ内のスライム形成培地に浸漬させ、攪拌して培養を継続した。水晶振動子電極の周波数が、初発より1kHz(単位面積当たりの付着量は約0.3g/dm)低下した時をスライム発生時と判断し、要した時間をスライム抑制時間とした。本試験では、スライム付着抑制時間が長いほど、ハロゲン化ヒダントイン類とコハク酸類を併用した生育抑制・殺微生物効果が高いことを示し、好ましい。
【0046】同様にして、表1記載のA成分化合物とB成分化合物とからなる殺微生物剤にてスライム付着抑制試験を行なった。その結果を表1に示した。
【0047】
【表1】

【0048】比較例1〜3では、供試する菌株により効果の度合いは異なるが、A成分化合物であるハロゲン化ヒダントイン類がいずれも微生物の生育抑制・殺微生物効果を発揮して、スライム抑制時間が長くなっている。しかし、B成分化合物のAKD類の単独添加では、微生物の生育抑制・殺微生物効果が無いためにスライム抑制時間は変化しない。
【0049】本発明のハロゲン化ヒダントイン類とAKD類の併用は、何れの菌株においても、A成分化合物単独及びB成分化合物単独に比べて微生物の生育抑制・殺微生物効果が高くなった結果、より一層スライム抑制時間が長くなったことがわかる。
[実施例2]シュードモナス エルギノーサ、コレトトリウム フラガリエ、リポマイセス・スタアケイの各菌株をそれぞれの平板培地にて対数増殖期になるように25℃にて1〜4日間培養を行なった。1000mlの三角フラスコにスライム形成培地300mLと、マグネット攪拌子を入れた後、121℃、15分間にて滅菌を行った。培地が冷却した後、水晶振動子を入れマグネチックスターラーにて攪拌を開始した。予め有効ハロゲン(塩素、臭素)濃度として0.1〜0.2mg/L、0.5〜0.6mg/L、0.9〜1.1mg/L、1.7〜2.0mg/L量となるような0.1%のブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン(A−1)水溶液の添加量を確認し、各0.4mg/L、1.2mg/L、2.3mg/L、4.4mg/Lとして添加した。同時にAKDエマルション(B−1)の所定量を添加して10秒攪拌した後、攪拌を一度止め、周波数を測定した。そしてさらに対数増殖期にあるそれぞれの菌株をl白金耳入れ30℃にて攪拌を一定期間継続した。周波数の測定は1時間おきに攪拌を止め行ない、測定後は再度攪拌し培養を継続した。周波数が初発より1kHz(単位面積当たりの付着量は約0.3g/dm)低下するまでの時間で比較した。結果を表2に示した。
【0050】
【表2】

【0051】ハロゲン化ヒダントイン類の添加及び添加量の増加によりスライム抑制時間は長くなり、AKD類の単独添加では添加量を増加してもスライム抑制時間は無添加と同程度で変化しない。一方、本発明の方法により、何れの菌株においても、ハロゲン化ヒダントイン類単独及びAKD類単独に比べて、スライム抑制時間が長くなり、本発明のハロゲン化ヒダントイン類とAKD類の併用によりスライム発生を抑制する効果が大きくなることがわかる。
[実施例3]300mlの三角フラスコにスライム形成培地100mLとマグネット攪拌子を入れ、121℃にて15分間滅菌を行った。培地を冷却した後、水晶振動子を入れマグネチックスターラーにて攪拌を開始した。有効ハロゲン(塩素、臭素)濃度が1mg/Lとなるように0.1%ハロゲン化ヒダントイン類(A−1〜A−3)水溶液の添加量を予め確認し、0.1%ハロゲン化ヒダントイン類(A−1〜A−3)水溶液を0.50g添加した。同時にAKDエマルション(B−1)分散液0.07gをマイクロシリンジで添加し10秒攪拌した後、攪拌を一度止めて周波数を測定した。この中に実機製紙工程より入手した2種類の白水(pH:5.5およびpH:7.8)および実機冷水塔循環水(pH:8.2)の3種類の水を1mlずつ入れ、30℃にて攪拌を一定期間継続した。1時間おきに攪拌を止め周波数測定を行い、測定後は再度攪拌し培養を継続した。周波数が初発より1kHz(単位面積当たりの付着量は約0.3g/dm)低下するまでの時間で比較した。2種の白水及び冷水塔循環水の菌数は表3の通りであった。結果を表4に示した。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】多くの微生物が混在している実働の工場で採取した各種工程水においても、ハロゲン化ヒダントイン類とAKD類を同時に作用することにより、それぞれ単独よりも微生物の生育抑制・殺微生物効果が高くなり、スライム抑制時間の増加となって示された。
【0055】
【発明の効果】本発明の水系における微生物の生育抑制及び殺微生物方法により、各種工業用工程水、冷却水、洗浄水などの水中に浮遊する微生物や壁面に付着したスライム中の微生物対しても発育の生育抑制効果及び殺微生物効果を発揮し、広範囲に渡りスライムの発生及び付着を抑制する。これは、工業用水系の長期安定運転とともに、関連する工程のスライム障害の防止に大きく寄与し、工程の安定化、さらには製品の品質の安定化に寄与するところが大きい。
【出願人】 【識別番号】000234166
【氏名又は名称】伯東株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区新宿1丁目1番13号
【出願日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−104806(P2003−104806A)
【公開日】 平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願番号】 特願2001−302799(P2001−302799)