トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 抗菌材
【発明者】 【氏名】宇留賀 謙一
【住所又は居所】東京都江東区木場1丁目5番1号 株式会社フジクラ内

【要約】 【課題】短時間で十分な抗菌効果を得ることができ、しかも、柔軟性に優れ、簡単に貼り付け、交換が可能な、テープ状またはシート状の抗菌材を提供する。

【解決手段】本発明の抗菌テープ1は、テープ状の基体となる純度99.99%のAl巻き取り箔2の表面側を、陽極酸化処理等を施してなる多孔質のアルマイト被膜11と、このアルマイト被膜11の表面に形成された微細な孔12に含浸されたヨウ素またはヨウ素化合物13とにより構成される抗菌被膜3とし、裏面に両面テープを貼着した構成である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 テープ状またはシート状の基体の表面の少なくとも一部に抗菌性材料を形成してなることを特徴とする抗菌材。
【請求項2】 前記抗菌性材料は、前記基体の表面の微細な孔または微細な凹凸にヨウ素またはヨウ素化合物を含浸させてなることを特徴とする請求項1記載の抗菌材。
【請求項3】 前記基体は、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Os、Rh、Ni、Cu、Zn、Al、Pbのいずれかを主成分とする金属または合金であることを特徴とする請求項1または2記載の抗菌材。
【請求項4】 前記ヨウ素化合物は、鎖式飽和炭化水素、鎖式不飽和炭化水素、環式化合物、芳香族化合物の群から選択された有機化合物にヨウ素(I)の特性基を化合してなる有機化合物であることを特徴とする請求項2または3記載の抗菌材。
【請求項5】 前記ヨウ素化合物は、金属にヨウ素(I)の特性基を化合してなる無機化合物であることを特徴とする請求項2または3記載の抗菌材。
【請求項6】 前記基体の裏面の少なくとも一部に接着層を形成してなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の抗菌材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌材に関し、更に詳しくは、食品、薬品、医療、農業等の塵埃、微生物等の汚染の無い環境が必要な分野、あるいは、昨今の衛生意識の向上に伴い一般家庭にて使用される建材、家具、家庭電器機器、文房具、日用雑貨等の分野において好適に用いられ抗菌性・抗カビ性を有するテープ状またはシート状の抗菌材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、食品、薬品、医療、農業等の塵埃、微生物等の汚染の無い環境が必要な分野においては、銀ゼオライト、酸化チタン、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等のセラミックスに、銀イオン、銅イオン等を含有させた抗菌材が用いられている。これらの抗菌材の材質や形状は様々で、例えば、粉末状の抗菌材を樹脂に混錬し、その後所定の形状に成形した抗菌性樹脂、タイル等のように粉末状の抗菌材を磁器材料に混錬し、その後所定の形状に成形し焼成した抗菌性磁器、抗菌材を溶媒中に分散させた抗菌性塗料等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従来の抗菌材においては、いずれの材質や形状のものにおいても、付着した菌が完全に死滅するまでにはある程度の時間が必要となるために、短時間で十分な抗菌効果を得ることが難しいという問題点があった。例えば、リン酸カルシウムに銀イオンを含有させた抗菌性セラミックスの場合、早いものでも真菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌等が死滅するまでに24時間程度の時間が必要であるから、ドアのノブや取っ手等においては、次々と付着する菌を速やかに死滅させることは難しい。特に、病院内に設置した抗菌材を用いた手すり等では、菌が増殖した例さえある。
【0004】近年、金属酸化膜にヨウ素化合物を含浸させた抗菌材が提案され、実用に供されるようになってきているが、この抗菌材は、短時間で優れた抗菌性を示すものではあるが、金属材料を表面処理したものであるから、柔軟性に乏しく、簡単に貼り付けたり、交換したり等ができないという欠点がある。
【0005】本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、短時間で十分な抗菌効果を得ることができ、しかも、柔軟性に優れ、簡単に貼り付け、交換が可能な抗菌材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は次の様な抗菌材を採用した。すなわち、本発明の請求項1記載の抗菌材は、テープ状またはシート状の基体の表面の少なくとも一部に抗菌性材料を形成してなることを特徴とする。
【0007】請求項2記載の抗菌材は、請求項1記載の抗菌材において、前記抗菌性材料は、前記基体の表面の微細な孔または微細な凹凸にヨウ素またはヨウ素化合物を含浸させてなることを特徴とする。
【0008】請求項3記載の抗菌材は、請求項1または2記載の抗菌材において、前記基体は、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Os、Rh、Ni、Cu、Zn、Al、Pbのいずれかを主成分とする金属または合金であることを特徴とする。
【0009】請求項4記載の抗菌材は、請求項2または3記載の抗菌材において、前記ヨウ素化合物は、鎖式飽和炭化水素、鎖式不飽和炭化水素、環式化合物、芳香族化合物の群から選択された有機化合物にヨウ素(I)の特性基を化合してなる有機化合物であることを特徴とする。
【0010】請求項5記載の抗菌材は、請求項2または3記載の抗菌材において、前記ヨウ素化合物は、金属にヨウ素(I)の特性基を化合してなる無機化合物であることを特徴とする。
【0011】請求項6記載の抗菌材は、請求項1ないし5のいずれか1項記載の抗菌材において、前記基体の裏面の少なくとも一部に接着層を形成してなることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の抗菌材の一実施形態について図面に基づき説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0013】図1は、本発明の一実施形態の抗菌テープ(抗菌材)を示す断面図、図2は同拡大断面図であり、この抗菌テープ1は、テープ状の基体となる純度99.99%のアルミニウム(Al)巻き取り箔2の表面側が抗菌被膜(抗菌性材料)3とされ、裏面に接着層として公知の両面テープ4が貼着されている。この抗菌被膜3は、Al巻き取り箔2の表面側に陽極酸化処理等を施してなる多孔質のアルマイト被膜(金属酸化被膜)11と、このアルマイト被膜11の表面に形成された微細な孔12(または微細な凹凸)に電気泳動電着等により含浸されたヨウ素またはヨウ素化合物13とにより構成されている。
【0014】Al巻き取り箔2は、陽極酸化処理等を施すことにより多孔質の金属酸化被膜となる金属材料であればよく、Alの他、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Os、Rh、Ni、Cu、Zn、Al、Pbのいずれかを主成分とする金属箔または合金箔が好適に用いられる。アルマイト被膜11は、上記のAl巻き取り箔2の表面に陽極酸化処理等を施して得られるもので、多孔質の厚い酸化被膜である。
【0015】ヨウ素化合物13としては、鎖式飽和炭化水素、鎖式不飽和炭化水素、環式化合物、芳香族化合物の群から選択された有機化合物にヨウ素(I)の特性基を化合してなる有機化合物、あるいは金属にヨウ素(I)の特性基を化合してなる無機化合物、のいずれかが好適に用いられる。
【0016】ここで、鎖式飽和炭化水素のヨウ素化合物としては、モノ結合体として、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化イソブチル、ヨウ化アミル、ヨウ化ヘキシル、ヨウ化ヘプチル、ヨウ化オクチル、ヨウ化セチル、ヨウ化オクタデシルが挙げられ、ジ結合体として、ヨウ化メチレン、ヨウ化エチレン、ヨウ化エチリデン、ヨウ化トリメチレン、ヨウ化テトラメチレン、ヨウ化ペンタメチレン、ヨウ化ヘキサメチレン、ヨウ化イソプロペニル、ヨウ化アセトアミド、ヨウ化アセチル、ヨウ化琥珀酸、ヨウ化テトラエチル系化合物、ヨウ化テトラメチル系化合物が挙げられる。
【0017】また、鎖式不飽和炭化水素のヨウ素化合物としては、ヨウ化ビニル、ヨウ化アリル、ヨウ化クロチル、ヨウ化プロパルギル、ヨウ化フェニルアセチレンが挙げられる。また、芳香族炭化水素およびその誘導体のヨウ素化合物としては、ヨウ化ベンゼン、ヨウ化ベンジル、ヨウ化ベンゾイル、ヨウ化フェナシル、ヨウ化キシリレン、ヨウ化フタレイン、ヨウ化ヒドロキノンが挙げられる。
【0018】また、複素化合物としては、ヨウ化トリメチルスルホニウム、ヨウ化トリフェニルスルホニウム、ヨウ化メチルトリフェニルアルソニウムが挙げられる。また、複素化合物ポリマーとしては、ポリビニルピロリドンヨード、ポリビニルフタルイミドヨード、ポリビニルブチラールヨード、ポリビニルホルマールヨードが挙げられる。
【0019】環式化合物については例示していないが、勿論、鎖式飽和炭化水素、鎖式不飽和炭化水素あるいは芳香族炭化水素と同様に用いることができる。その他の化合物としては、ヨウ化ヒドロキシルアンモニウム、ヨウ化ピラセト、ヨウ化デカトニウムが挙げられる。また、金属にヨウ素(I)の特性基を化合した無機化合物としては、KI、ZnI2、SnI2、CdI2、FeI2、NiI2、CrI3等が挙げられる。
【0020】次に、抗菌被膜3の製造方法について説明する。まず、Alの純度が99.99%のAl巻き取り箔2を用意した。このAl巻き取り箔2の形状は、幅20〜300mm、長さ1〜20m、厚み0.05〜0.2mmで、有機溶剤を用いて脱脂処理したものを用いた。
【0021】次いで、このAl巻き取り箔2に陽極酸化処理を施した。まず、このAl巻き取り箔2を、25±1℃に温度管理された25%硫酸溶液中に浸漬し、電流密度3A/dm2で3分間直流電気分解を行い、表面に微細な孔12(または微細な凹凸)を多数有する厚みが3μmの陽極酸化皮膜であるアルマイト被膜11を形成した。次いで、電気泳動電着等により、このアルマイト被膜11の微細な孔12(または微細な凹凸)にヨウ素またはヨウ素化合物13を含浸させた。
【0022】ヨウ素化合物13としては、例えば、ポリビニルピロリドンヨードが含浸性が良く好適である。このポリビニルピロリドンヨードは、単体であるヨウ素をポリビニルピロリドンと反応させることで得られる赤褐色の微粉末状のものである。このポリビニルピロリドンヨードを純水に溶解し、濃度が0.05〜5重量%の水溶液とし、この水溶液にアルマイト被膜11が形成されたAl巻き取り箔2を浸漬し、このアルマイト被膜11を陽極、アルミニウム、ステンレススチール、白金等の電極材料を陰極として、これらの電極間に直流電圧100Vを印加し、微細な孔12(または微細な凹凸)にポリビニルピロリドンヨードを含浸させた。
【0023】例えば、0.5重量%のポリビニルピロリドンヨード水溶液中で電気泳動電着(300Vで3分)を行った。以上により、アルマイト被膜11の微細な孔12(または微細な凹凸)にヨウ素化合物13の一種であるポリビニルピロリドンヨードを含浸させた抗菌テープ1を得ることができた。
【0024】この抗菌テープ1では、Al巻き取り箔2の表面に形成されたアルマイト被膜11の微細な孔12(または微細な凹凸)に、ヨウ素またはポリビニルピロリドンヨード等のヨウ素化合物13を含浸させたので、柔軟性に富むAl巻き取り箔2の表面がヨウ素またはヨウ素化合物13により短時間で優れた抗菌性を有するものとなった。
【0025】また、Al巻き取り箔2の裏面に接着層である両面テープ4を貼着したことにより、両面テープ4の貼着面を保護するシートを剥離するだけで、この抗菌テープ1を菌の付着する可能性のある箇所に必要に応じて簡単に貼り付けることが可能になった。また、両面テープ4は貼着及び取り外しが容易であるから、破損した場合等の交換が容易になり、また不要になった場合の撤去も容易になった。
【0026】次に、この抗菌テープ1の抗菌効果を確認するために、抗菌性試験を行った。ここでは、実施例として、上記により得られた抗菌テープ1を50×50mmの大きさに切り出して試験用テープとし、この試験用テープの上に、真菌、緑膿菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌を約20万個ずつ付着させ、その後30℃中に放置し、1時間後、6時間後、24時間後における生菌数を調べた。また、比較例として、市販の抗菌剤を用いた抗菌テープを作製し、抗菌性試験を行った。ここでは、新東Vセラックス製の銀イオン担持リン酸カルシウム抗菌剤(商品名:セラパウダー)をポリプロピレン樹脂に混錬し、テープ状に加工し、試験用テープとした。
【0027】表1に、実施例及び比較例それぞれにおける抗菌性試験結果を示してある。
【表1】

【0028】この試験結果によれば、実施例の試験用テープでは、1時間後、6時間後、24時間後のいずれにおいても生菌数は検出限界(DL)以下であり、菌はほとんど死滅していることが分かった。一方、比較例の試験用テープでは、1時間後の生菌数は試験開始時とほとんど変わらず,6時間後で生菌数の減少が認められ、24時間後において生菌数が検出限界(DL)以下になることが分かった。
【0029】図3は、本実施形態の抗菌テープ1の第1の応用例を示す斜視図であり、菌の付着する可能性のあるドア21のレバーハンドル22に、本実施形態の抗菌テープ1を巻回したものである。このレバーハンドル22においても、その表面を短時間で優れた抗菌性を有するものとすることができる。
【0030】また、両面テープ4により、この抗菌テープ1をレバーハンドル22に簡単に貼り付けることができる。また、この抗菌テープ1が破損した場合等においても、この抗菌テープ1を容易に交換することができる。また、抗菌テープ1が不要になった場合の撤去も容易である。
【0031】図4は、本実施形態の抗菌テープの第2の応用例を示す斜視図であり、本実施形態の抗菌テープ1の形状を幅広の抗菌シートに変更し、この抗菌シート31を菌の付着する可能性のある押板32の手押部33に貼着したものである。この押板32においても、手押部33の表面を短時間で優れた抗菌性を有するものとすることができる。
【0032】また、両面テープ4により、この抗菌シート31を押板32の手押部33に簡単に貼り付けることができる。また、この抗菌シート31が破損した場合等においても、この抗菌シート31を容易に交換することができる。また、抗菌シート31が不要になった場合の撤去も容易である。
【0033】図5は、本実施形態の抗菌テープ1の第3の応用例を示す斜視図であり、菌の付着する可能性のある手すり41に、本実施形態の抗菌テープ1を巻回したものである。この手すり41においても、その表面を短時間で優れた抗菌性を有するものとすることができ、抗菌テープ1の貼り付け、交換、撤去を容易に行うことができる。
【0034】図6は、本実施形態の抗菌テープ1の第4の応用例を示す斜視図であり、手すり41に、本実施形態の抗菌テープ1を該手すり41の長手方向に沿って貼着したものである。この手すり41においても、その表面を短時間で優れた抗菌性を有するものとすることができ、抗菌テープ1の貼り付け、交換、撤去を容易に行うことができる。
【0035】以上説明したように、本実施形態の抗菌テープ1によれば、Al巻き取り箔2の表面側を抗菌被膜3とし、この抗菌被膜3を多孔質のアルマイト被膜11と、このアルマイト被膜11の表面に形成された微細な孔12に電気泳動電着等により含浸されたヨウ素化合物13とにより構成したので、柔軟性に富むAl巻き取り箔2の表面がヨウ素化合物13により短時間で優れた抗菌性を有するものとなり、柔軟性に優れるとともに、短時間で十分な抗菌効果を得ることができる。
【0036】また、Al巻き取り箔2の裏面に接着層である両面テープ4を貼着したので、両面テープ4の貼着面を保護するシートを剥離するだけで、この抗菌テープ1を菌の付着する可能性のある箇所に必要に応じて簡単に貼り付けることができる。また、両面テープ4は貼着及び取り外しが容易であるので、破損した場合等の交換を容易に行うことができ、不要になった場合の撤去も容易である。また、この抗菌テープ1を幅広の抗菌シートとした場合においても、抗菌テープ1と同様の効果を奏することができる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の抗菌材によれば、テープ状またはシート状の基体の表面の少なくとも一部に抗菌性材料を形成したので、短時間で十分な抗菌効果を得ることができ、しかも、柔軟性に優れ、簡単に貼り付け、交換を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
【住所又は居所】東京都江東区木場1丁目5番1号
【出願日】 平成13年8月29日(2001.8.29)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外3名)
【公開番号】 特開2003−73207(P2003−73207A)
【公開日】 平成15年3月12日(2003.3.12)
【出願番号】 特願2001−260238(P2001−260238)