| 【発明の名称】 |
簡易脳神経障害実験モデル作製器及び脳神経障害実験モデルの作製方法、記憶測定用迷路装置並びに抗脳神経障害薬及び抗記憶障害薬の薬効評価方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】桑原 正人
【氏名】フォン フー ワー
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| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 円筒管と、当該円筒管内を重錘落下する分銅と、前記円筒管内に挿入された前記分銅を管端面からの所定高さに一時的に保持する分銅保持機構とから構成されたことを特徴とする簡易脳神経障害実験モデル作製器。 【請求項2】 前記分銅は複数の高さに段階的に保持されうることを特徴とする請求項1に記載の簡易脳神経障害実験モデル作製器。 【請求項3】 前記分銅保持機構は、前記円筒管の管壁所定位置に開設された少なくとも1以上の保持穴と、当該保持穴に抜き差し自由に挿通される保持ピンとからなることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の簡易脳神経障害実験モデル作製器。 【請求項4】 脳神経障害を有する実験動物を作製する方法であって、円筒管の管端面を実験動物の片側前頭部の開頭により硬膜を切除しないで露出した脳露出部に接触させた状態で、前記円筒管の管内を所定高さより分銅を重錘落下することを特徴とする脳神経障害実験モデルの作製方法。 【請求項5】 前記脳神経障害は、脳振盪、脳損傷若しくは二次的脳損傷のいずれかであることを特徴とする請求項4記載の脳神経障害実験モデルの作製方法。 【請求項6】 前記実験動物は小動物であって、底面が直径3〜6mmの円筒状の分銅を、10〜200cm・gとなる衝撃力で重錘落下することを特徴とする請求項4又は5の何れかに記載の脳神経障害実験モデルの作製方法。 【請求項7】 前記実験動物は小動物であって、底面が直径3〜6mmの円筒状の分銅を、45〜55cm・gとなる衝撃力で重錘落下して二次的脳損傷を発現させることを特徴とする請求項4又は5の何れかに記載の脳神経障害実験モデルの作製方法。 【請求項8】 前記実験動物は中型動物であって、底面が直径3〜8mmの円筒状の分銅を、10〜480cm・gとなる衝撃力で重錘落下することを特徴とする請求項4又は5の何れかに記載の脳神経障害実験モデルの作製方法。 【請求項9】 前記実験動物は中型動物であって、底面が直径3〜8mmの円筒状の分銅を、200〜280cm・gとなる衝撃力で重錘落下して二次的脳損傷を発現させることを特徴とする請求項4又は5の何れかに記載の脳神経障害実験モデルの作製方法。 【請求項10】 実験動物が自由に移動できる平面視で略矩形状をした移動空間と、当該移動空間に望む開放端と当該開放端と反対側にある閉塞端とを有すると共に実験動物の視界に食餌が入らないように前記閉塞端に設置された給餌所を有するほぼ直線状の通路部が複数並列された迷路部とからなることを特徴とする記憶測定用迷路装置。 【請求項11】 被験薬物を実験動物に投与した後、円筒管の管端面を実験動物の片側前頭部の開頭により硬膜を切除しないで露出した脳露出部に接触させた状態で、前記円筒管の管内を所定高さより分銅を重錘落下し、落下後の脳障害度をMRIにより経時的に診断することを特徴とする抗脳神経障害薬の薬効評価方法。 【請求項12】 被験薬物を実験動物に投与した後、円筒管の管端面を実験動物の片側前頭部の開頭により硬膜を切除しないで露出した脳露出部に接触させた状態で、前記円筒管の管内を所定高さより分銅を重錘落下し、落下後の記憶を請求項10に記載の記憶測定用迷路装置を用いて経時的に測定することを特徴とする抗記憶障害薬の薬効評価方法。 【請求項13】 円筒管の管端面を実験動物の片側前頭部の開頭により硬膜を切除しないで露出した脳露出部に接触させた状態で、前記円筒管の管内を所定高さより分銅を重錘落下した後、被験薬物を実験動物に投与して、落下後の脳障害度をMRIにより経時的に診断することを特徴とする抗脳神経障害薬の薬効評価方法。 【請求項14】 円筒管の管端面を実験動物の片側前頭部の開頭により硬膜を切除しないで露出した脳露出部に接触させた状態で、前記円筒管の管内を所定高さより分銅を重錘落下した後、被験薬物を実験動物に投与して、落下後の記憶を請求項10に記載の記憶測定用迷路装置を用いて経時的に測定することを特徴とする抗記憶障害薬の薬効評価方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は簡易脳神経障害実験モデル作製器及び脳神経障害実験モデルの作製方法、記憶測定用迷路装置並びに抗脳神経障害薬及び抗記憶障害薬の薬効評価方法に関する。具体的には、ラットやイヌ、ネコなどの実験動物に、至極簡単な方法によって、脳神経障害を確実に引き起こすことができる装置及び当該装置の使用方法並びに当該装置の利用方法に関する。 【0002】 【従来の技術】外傷性脳損傷後の虚血や浮腫、頭蓋内圧亢進等の病態は二次的脳損傷とされる組織損傷悪化を導くと言われており、外傷性脳損傷に対する治療は主として二次的脳損傷を予防することと考えられている。この二次的脳損傷を予防する治療方法や治療薬剤、予防薬剤の開発には、二次的脳損傷を始めとして、脳外傷に起因する各種の脳神経障害を有する実験モデル(実験動物)を要するのは論を待たない。従来、このような実験モデルを得るには、総頚動脈の閉鎖解放の繰り返しにより脳内血流に異常を与えることや実際に対象動物の頭部に外部から衝撃を与えることが行われていた。 【0003】しかしながら、前者の方法では、実際に脳神経障害を生じるまで総頚動脈の閉鎖解放を繰り返さなければならず、非常に面倒な作業であった。また、発現した脳神経障害に対するメカニズムの解明や発現した脳神経障害に対する薬効評価には有効な方法ではなかった。 【0004】一方、後者の方法は外部からの衝撃により後発的な脳障害をそのまま発現させることができる。当該方法には、従来、圧縮空気を利用した実験モデル作製器が用いられていた。この実験モデル作製器は、実験動物に衝撃を与える玉と玉を標的(実験動物)に向けて発射する発射管及び圧縮空気を送り出すコンプレッサーを備える。コンプレッサーから送り出された圧縮空気が玉を発射し、発射された玉が実験動物に衝撃を与える。この実験モデル作製器は、装置自体が大がかりなものとなり、非常に高価なものであった。 【0005】しかも、頭部外傷による二次的脳損傷は、外傷を負うと同時に発現されず数時間経過後にその症状が現れる。従って、上記装置によって外傷を与えたとしても、妥当な障害の発生時期の判断は即断できなかった。さらに、その再現性は低く、同じような衝撃を与えたとしても必ずしも二次的脳損傷が発現するとは限らない。この結果、二次的脳損傷治療(予防)や記憶に対する薬効評価をほとんど行えないという状況であった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、非常に簡単な装置でもって、実験動物に対して脳外傷に伴う脳神経障害、特に二次的脳損傷を確実に発現させ、脳外傷による二次的脳損傷と記憶障害に対する薬効評価を的確かつ短期間に行うことを目的とする。 【0007】 【課題を解決するめの手段】本発明に係る簡易脳神経障害実験モデル作製器は、円筒管と、当該円筒管内を重錘落下する分銅と、前記円筒管内に挿入された前記分銅を管端面からの所定高さに一時的に保持する分銅保持機構とから構成されたことを特徴としている。 【0008】この作製器においては、前記分銅を複数の高さに段階的に保持できるようにするのが好ましく、例えば、前記円筒管の管壁所定位置に開設された少なくとも1以上の保持穴と、当該保持穴に抜き差し自由に挿通される保持ピンとから分銅保持機構を構成できる。 【0009】本発明に係る脳神経障害実験モデルの作製方法は、脳神経障害を有する実験動物を作製する方法であって、円筒管の管端面を実験動物の片側前頭部の開頭により硬膜を切除しないで露出した脳露出部に接触させた状態で、前記円筒管の管内を所定高さより分銅を重錘落下することを特徴としている。 【0010】当該方法においては、脳振盪、脳損傷若しくは二次的脳損傷などの障害を作り出すことができる。 【0011】この場合、ラットやマウスなどの小型動物に対しては、底面が直径3〜6mmの円筒状の分銅を、10〜200cm・gとなる衝撃力で重錘落下することで上記の各種の脳神経障害を作りだせる。特に、45〜55cm・gとなる衝撃力で前記分銅を重錘落下することにより、二次的脳損傷を発現させられる。 【0012】また、イヌやネコなどの中型動物に対しては、底面が直径3〜8mmの円筒状の分銅を、10〜480cm・gとなる衝撃力で重錘落下することで上記の脳神経障害を作り出せる。特に、200〜280cm・gとなる衝撃力で前記分銅を重錘落下することにより、二次的脳損傷を発現させられる。 【0013】本発明に係る記憶測定用迷路装置は、実験動物が自由に移動できる平面視で略矩形状をした移動空間と、当該移動空間に望む開放端と当該開放端と反対側にある閉塞端とを有すると共に実験動物の視界に食餌が入らないように前記閉塞端に設置された給餌所を有するほぼ直線状の通路部が複数並列された迷路部とからなることを特徴としている。 【0014】本発明に係る第1の抗脳神経障害薬の薬効評価方法は、被験薬物を実験動物に投与した後、円筒管の管端面を実験動物の片側前頭部の開頭により硬膜を切除しないで露出した脳露出部に接触させた状態で、前記円筒管の管内を所定高さより分銅を重錘落下し、落下後の脳障害度をMRIにより経時的に診断することを特徴としている。 【0015】また、本発明に係る第1の抗記憶障害薬の薬効評価方法は、被験薬物を実験動物に投与した後、円筒管の管端面を実験動物の片側前頭部の開頭により硬膜を切除しないで露出した脳露出部に接触させた状態で、前記円筒管の管内を所定高さより分銅を重錘落下し、落下後の記憶を請求項10に記載の記憶測定用迷路装置を用いて経時的に測定することを特徴としている。 【0016】さらに、本発明に係る第2の抗脳神経障害薬の薬効評価方法は、円筒管の管端面を実験動物の片側前頭部の開頭により硬膜を切除しないで露出した脳露出部に接触させた状態で、前記円筒管の管内を所定高さより分銅を重錘落下した後、被験薬物を実験動物に投与して、落下後の脳障害度をMRI画像診断法により経時的に診断することを特徴としている。 【0017】また、本発明に係る第2の抗記憶障害薬の薬効評価方法は、円筒管の管端面を実験動物の片側前頭部の開頭により硬膜を切除しないで露出した脳露出部に接触させた状態で、前記円筒管の管内を所定高さより分銅を重錘落下した後、被験薬物を実験動物に投与して、落下後の記憶を請求項10に記載の記憶測定用迷路装置を用いて経時的に測定することを特徴としている。 【0018】 【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施形態である簡易脳神経障害実験モデル作製器(以下、「実験モデル作製器」と称する。)の斜視図である。当該実験モデル作製器は、円筒管10と、当該円筒管10内を重錘落下する分銅20と、前記円筒管10内に挿入された前記分銅20を所定高さに一時的に保持する分銅保持機構とを有する。円筒管10や分銅20はステンレス鋼や鉄、銅、鋼などの各種金属から作製されるが、耐蝕性の観点からステンレス鋼が好ましく用いられる。分銅20は好ましくは脳に対して点接触する球状あるいは楕円球状とするよりは、面接触する円筒状に形成するのがよい。円筒管10の内径は、分銅20が円筒管10内を、抵抗(円筒管10との接触抵抗)を受けることなく重錘落下できる程度の大きさに定められる。また、分銅20と円筒管10の隙間が大きくなれば、目標とする位置から落下位置がずれる可能性が大きくなるので、当該位置ずれの許容誤差が考慮されて、内径が決められる。 【0019】本発明の実験モデル作製器は、一定の質量の分銅20を一定の高さから重錘落下して、実験モデルの脳に衝撃を加えることにより、所定の脳障害を発現させるものである。従って、実験モデルの動物種に応じて分銅20の質量及びその大きさが決定される。また、実験モデルは、いかなる動物をも対象とできるが、特に小型動物としてのラットやマウス、中型動物としてのイヌやネコが好適に用いられる。もちろん、これらの動物に限定されるものではない。円筒管10の長さも対象動物によって適宜決定されるが、概ね25〜35cmとされる。 【0020】円筒管10の管壁は、保持ピン30が抜き差しされる複数の保持穴11を有する。保持穴11は、いずれか一方の円筒管10の端面(図面では下側に現れる。以下、こちら側を「基準端」とする。)から所定間隔で備えられる。保持ピン30は、分銅20を円筒管10内で一時的に保持するものである。本発明においては、この高さを実施例に示すように、実験モデルの動物種と分銅20の重さに応じて決定することが重要になる。分銅20は、保持ピン30が挿入された円筒管10にその上端から挿入される。挿入された分銅20は保持ピン30によって一時的に円筒管10内で所定高さに保持される。このように、円筒管10の管壁に備えられた保持穴11と保持ピン30とによって、分銅保持機構が構成される。この分銅保持機構は、円筒管10内で分銅20を一時的に保持でき、その後重錘落下させることができればいずれの構成でもよい。図示例以外には、例えば、分銅に取り付けられた一定長さを有する糸や紐等と当該紐等を吊り下げるスタンドとから構成された分銅保持機構が挙げられる。この構成では、基準端を実験動物に接触させた後、分銅を管内に吊り下げる必要があり、作業が困難になる。一方、本実施形態の構成では管内に分銅を挿入してから脳露出部に接触させることができるため、作業は非常に容易であり、好ましい実施形態である。また、段階的に保持するのではなく、円筒管10内を上下にスライドするスライド式の保持機構を用いて、任意の高さに保持できるものであっても差し支えない。 【0021】次に、実験モデルの作製方法について説明する。まず、所定位置の保持穴11に保持ピン30を挿通した後、分銅20を円筒管10内に挿入する。そして、円筒管10を直立してその円筒管10の基準端を実験動物(脳露出部)に接触させ、例えば実験用の保持スタンド(図示せず)などに保持する。実験動物への接触は、実験モデルの動物種によって異なるものではなくいずれも同じである。この接触は、片側前頭骨開頭術によりアプローチし、硬膜を切除しないで露出した脳露出部に円筒管10の基準端を接触することにより行われる。分銅20は保持ピン30によって所定高さに一時的に保持される。もちろん、円筒管10を保持スタンドに保持した後、分銅20を円筒管10内に挿入してもよい。なお、本発明の作製方法においては基準端が完全に脳露出部に接触している必要はなく、基準端の一部が脳露出部と離れていても差し支えなく、分銅の20の落下高さを一定に担保でき、また、落下目標位置に落下させうる限りにおいて脳露出部とわずかに隙間があってもよいものである。すなわち、基準端を接触させるとは、物理的に完全に接触していることを要するものではなく、分銅の落下高さを一定に担保するものであり、また、目標位置に分銅を確実に落下することができる程度にという意味で用いられ、完全に脳露出部と接触していることが望ましいのは言うまでもない。 【0022】次いで、保持ピン30を円筒管10より引き抜くと、分銅20は所定高さから重錘落下して実験動物の脳に衝撃を与える。この結果、実験動物には、落下高さや分銅20の重さに応じた脳障害、例えば脳振盪や脳損傷、二次的脳損傷が引き起こされる。この装置に加えられる衝撃は、分銅20の重さと落下高さが同じであれば常に同じにできる。従って、確実に同一の脳障害が発生する。しかも、硬膜に直接衝撃が加えられるから、二次的障害などの脳障害がそのMRIにより確実に発現する条件を設定できる。また、当該作製器は非常に簡単な装置でもある。 【0023】当該装置においては、分銅20の質量が大きくなればなるほど脳に与える衝撃が大きくなり、落下高さが高くなるほど衝撃は大きくなる。また、ラットやイヌ、ネコでは脳の大きさなどが異なり同じ衝撃強さでも発現する症状が異なる。これらのことから、本発明では、頭に与える衝撃力を分銅20の質量(g)と基準端からの高さ(cm)を掛け合わせた値(cm・g)で表わすことにする。本発明の実験モデル作製器においては、直径が3〜10mmの底面を有する分銅を落下した場合、次の条件で脳震盪、脳損傷、二次的脳損傷が引き起こされる。すなわち、その衝撃力は、ラットなどの小型動物に対して、3〜6mmの底面を有する分銅を落下するものとして、10〜250cm・g、好ましくは15〜200cm・g、さらに望ましくは20〜150cm・gの範囲とされる。特に、45〜55cm・gの範囲内の衝撃力は、二次的損傷を引き起こすのに好適である。また、イヌやネコなどの中型動物に対して、3〜8mmの底面を有する分銅を落下するものとして、その衝撃力は、10〜480cm・g、好ましくは100〜360cm・g、さらに好ましくは20〜300cm・gの範囲とされる。特に、220〜260cm・gの範囲内の衝撃力は、二次的損傷を引き起こすのに好適である。また、分銅20の底面も適宜選択、変更できるのはいうまでもない。 【0024】こうして得られた実験モデルは、各種の脳神経障害、特に頭部外傷に対する抗脳神経障害改善薬や記憶障害改善薬の薬効評価方法に用いられる。例えば、実験動物に上記方法により頭部に障害を与えた後、被験物質を投与する。その後、脳障害度の改善度を評価し、投与群の改善度と非投与群の改善度を比較する。これにより、被験物質の薬効が評価される。評価方法としては、脳障害度を評価できるものであれば特に限定されるものではないが、MRIが好適である。MRIは、被験動物の脳のMR画像(撮像)により損傷度を評価する方法である。画像から視覚的に障害の発現状況が確認される。すなわち、当該評価方法では、MR画像の経時的な変化が薬効評価として示され、外傷後の二次的損傷の防止や発現した症状の軽減度が評価される。これは、脳損傷、特に二次的損傷に対する治療、予防用薬物の開発、既知薬物の再評価に貢献することを意味する。特に、確実に二次的損傷を与える条件下で実験が行われ、評価の信頼性が高まる。また、MRIによれば、衝撃後わずかな時間、例えば1時間程度の間で脳障害の進行状況が把握できる。言い換えるならば、衝撃により二次的損傷を生じないような実験動物を実験開始直後に実験対象から除外できる。これによりその後の実験を中止し、無駄な実験を減少できる。 【0025】頭部外傷を受けた場合、当該外傷は記憶に影響を及ぼすことがある。つまり、記憶は、海馬領域(CA1領域及びCA3領域)により司られているが、記憶に影響を及ぼす外傷は撮像された海馬領域のMR画像からも判断される。 【0026】さらに、図2及び図3に示す構造をした記憶測定用の迷路装置によっても記憶に及ぼす影響を判断できる。この迷路装置は、実験動物の記憶を確かめる迷路部50と迷路部50から実験動物を隔離して収容しておくための収容部60を有する。迷路部50は、実験動物が自由に移動できる平面視で略矩形状をした移動空間51と、当該移動空間51に望む開放端と当該開放端と反対側に閉塞端とを有するほぼ直線状の通路部52とを有する。迷路部50は複数の通路部52を有し、実験動物は移動空間51を介して全ての通路部52を自由に往来できる。図示する例では4つの通路部52が配置されているが、迷路装置には好ましくは少なくとも4つ以上の通路部52が必要である。実験動物の記憶を正しく判断するためであり、2、3つの通路部52では偶然性を必ずしも排除できない恐れがある。また、多くなれば記憶の測定は正確になるが、多くなれば測定に時間を要しすぎるので、多くても6〜8程度の通路部52に留めるのがよい。各通路部52の大きさ、すなわち通路部52の奥行きや高さ、開放端の開放幅はいずれも同じであり、通路部52と通路部52との間隔も等しくされる。図示された迷路部50は、平面形状が矩形状であり上面が開放された箱53の内部を3枚の仕切り板54で仕切ることにより、作製されている。もちろん、単独の箱状をした通路部52を並列したり、通路部52と通路部52との間を非通路部として、通路部52間に距離を置くこともできる。 【0027】各通路部52の閉塞端には給餌部55が備えられる。給餌部55は実験動物の餌を入れておくものであって、餌が実験動物の視界に入らない構造とされる。図示例の給餌部55は、給餌台56の上面中央に凹所57を備えたものである。また、図示はしないが、給餌部55は板状物によって囲みを作ったものであってもよい。なお、各通路部52の開放端近郊の側壁には、一対の溝58が備えられている。この溝58には、遮蔽板(図示しない)が嵌められる。この遮蔽板は、実験動物が通路部52へ進入するのを防ぐものである。多数配列された通路部52の一部のみを使用する場合や給餌部55への給餌作業を隠したりする場合に使用される。 【0028】迷路部50は、使用毎に前回使用した餌や実験動物の臭いが残らないよう殺菌性アルコール等を含浸させた綿や布等によって拭われる。また、実験動物の視力への影響を極力少なくすべく、迷路部50の内面は暗色、一般には黒色に塗装される。 【0029】さらに、迷路装置は実験に供される実験動物を一匹収容する収容部60を備える。収容部60は、前記移動空間51の開放端側と反対側において、移動空間51に開口部61を臨ませて備えられる。収容部60の形状は特に限定されるものではなく、例えば平面視で矩形状や正方形状、円形などであり、収容された実験動物が開口部61から自由に移動空間51に移動できる構造であればよい。開口部61は、当該開口部61を開閉する一枚の遮蔽板63を備える。この遮蔽板63はその両端が開口部61の左右に備えられた一対の溝62に挿通され、実験者によって適宜取り外される。また、開口部61は移動空間51のほぼ中央に位置される。 【0030】記憶の測定は次のようにして行なわれる。迷路部50の内壁がまず殺菌性アルコール等を含浸させた綿等によって清拭される。次いで、開口部61が閉じられた状態で収容部60に実験動物が収容される。この間に、給餌部55の凹所57に、凹所57からはみ出ないようにして餌が入れられる。そして、遮蔽板63が取り除かれると、実験動物は餌を求めて各通路部52を行き来して餌を見つけ出す。このようにして、遮蔽板63が取り除かれてから、実験動物が餌を見つけて食べるまでに要した時間が計測される。この作業が繰り返して行なわれ、記憶が確かであれば所要時間は大きく変化しない。但し、餌は、前回測定に使用したのと同じ通路部52にある給餌部55に配置される。従って、餌にたどり着くまでの時間を経時的に計測することにより、実験動物の記憶を測定できる。この方法は実験動物が餌を探すことにより実行される方法であり、主たる対象動物はラットやマウスである。また、場合によってはウサギやモルモットなどにも適用できる。なお、記憶は繰り返しによって定着するものである。従って、記憶の測定に先立ち、実験動物に学習させておくことが必要である。具体的には、実験開始前約1週間前頃に一日絶食させ、その後一日一回同様な測定を行う。この結果、例えば実験開始直後には所要時間が約30分程度であったのに対し、開始後4〜5日経過した頃には30秒程度となり、それ以降記憶が定着し、所要時間はほぼ一定値に安定する。 【0031】当該装置は、外傷による記憶への評価や脳神経障害の薬効評価に使用される。例えば、衝撃を与える前に前記学習を行っておき、上記の方法により頭部に外傷を加える。その後、迷路装置を用いて餌にたどり着くまでの時間を計測する。記憶が維持されていれば、受傷後の所要時間は受傷前のそれとほぼ同じとなる。一方、所要時間が長くなれば記憶が失われたと理解される。従って、衝撃を与えた後、一定時間が経過した際に測定した所要時間が受傷前とほぼ同じであれば、記憶に影響がないとして取り扱える。一般には、頭部外傷によって一時的に記憶を失いその後記憶が戻る。しかし、二次的損傷が生じると記憶の回復が遅れたり(所要時間が長くなる)、回復が見られることがない(餌にたどり着けない)。すなわち、当該迷路装置は、記憶に対する影響の測定に貢献できる。 【0032】また、上記装置を用いる用いないにかかわらず、外傷を与えた後MRIにより明らかに二次的損傷を与えるような外傷を確認しておくのがよい。これによって、無駄な実験が排除され、抗脳神経障害薬の薬効評価の信頼性が向上する。また、病理解剖的な評価を加えた場合、その後当該動物について記憶の回復を調べることができないが、上記重錘落下分銅による外部衝撃とMRIとを併用することにより解剖することなく記憶測定その他の脳障害に対する評価が行える。 【0033】このように、本発明の簡易脳神経障害実験モデル作製器によれば、簡単かつ確実に種々の脳神経障害、特に外傷による二次的脳損傷を実験動物に発現させることができる。また、得られた実験モデル(実験動物)は、抗脳神経障害薬・抗記憶障害薬の薬効評価、例えば二次的脳損傷の発現予防薬、治療薬の評価に有効に利用される。特に、MRIや迷路装置による記憶測定法を利用して、経時的に脳損傷度を観察・測定することは、脳損傷に対する評価を確実なものにする。また、本発明の方法により外傷を与えた実験動物に対してMRIを適用すれば、将来発現する二次的損傷を短期間(短時間)で確実に予見できる。 【0034】 【実施例】以下に本発明の実施例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限られるものではなく、本発明の技術的思想に影響を与えない範囲で実施態様を種々変更できる。 【0035】〔実施例1〕 (実験モデル作製器の作製)ラット用の作製器には、外径4mm、内径3.5mm、長さ40cmのステンレス管を用い、その一方の管端面(基準面とする)から5cmの間隔で、直径2mmの保持穴を5つ開設した。また、直径1mmのステンレス棒を長さ2cm程度に切断して、保持ピンを作製した。さらに、直径3mmの銅棒を長さ約8.5cmに切断して重さ5gの分銅を得た。 【0036】また、イヌ/ネコ用の作製器には、外径6mm、内径5.5mm、長さ30cmのステンレス管を用い、その一方の管端面(基準面とする)から5cmの間隔で、直径2mmの保持穴を5つ開設した。また、直径5mmの銅棒を長さ約7.5cmに切断して、重さ12gの分銅を得た。保持ピンには、ラット用作製器と同様のものを使用した。 【0037】(実験モデルの作製)ラット、イヌ、ネコに外傷を与えた。各動物には、左側前頭骨開頭によりアプローチし、硬膜を切除しないで脳露出部に上記円筒管の基準面を接触して、所定の高さから分銅を重錘落下した。表1に、分銅の重さ及び基準面からの落下高さと脳神経障害の病態との関係を示す。表1に示す各条件によって、ラット、イヌ、ネコに表1に示す障害をほぼ90%以上100%近くの確実性でもって再現性よく発現させることができた(硬膜外重錘落下法と称す)。なお、ラットにおいては、12gの分銅を高さ5cmから落下した場合(60cm・g)にもSBDを生じた。 【0038】 【表1】
【0039】〔実施例2〕グルタミン酸過剰遊離による神経毒性に対して、神経保護効果を発揮する薬物を用いて、ラットの実験的脳外傷に続く二次的脳損傷の発現状況を確認すると共に、当該発現状況を指標にして、組織学的並びにMRI撮像による画像的見地からそれらの治療効果(薬効)に関して検討を加えた。遅発性組織損傷を引き起こす原因とされる神経化学的変化の中で、興奮性アミノ酸神経伝達物質のグルタミン酸過剰遊離による神経毒性や、細胞内の酵素系の異常によって誘発される細胞崩壊過程が、二次的脳損傷における主要な誘導機序と考えられているためである。 【0040】(実験方法)雄Fisher系ラット(体重400〜450g)をペントバルビタールナトリウム(商品名「ネンブタール」:大日本製薬社製)40mg/kgの腹腔内投与麻酔下にてラット用定位脳固定装置に固定後、実施例1によるラット用実験モデル作製器を用いて実験を行った。5gの分銅を5cmの高さ(25cm・g)から脳露出部に重錘落下して、脳外傷を与えた。その後、1時間及び48時間経過後に、MRI撮像により脳外傷の二次的損傷の発現状況を追跡した。 【0041】ラットを2群に分け、1群を薬物無投与外傷群とし、残る1群には、N−メチル−D−アスパラギン酸受容体(NMDA受容体)選択的非競合拮抗薬(MK801:TOCRIS社製)3mg/kgを前投与した。なお、衝撃を与えられたラットについては、外傷直後のMRI撮像において、■損傷がないもの、■クモ膜下出血がない、■脳表が軽度損傷であることのいずれかを満たすものについては、その後の追跡から除外し、一群6匹として実験を行った。 【0042】(MRIによる撮像)MRI撮像には、超伝導磁石、磁場強度0.5TのMRI(FLEXARTMRTー50GP:東芝メディカル社製)にて、自作の直径8cmのラット用小型QDコイルを用い、撮像中はイソフルラン(商品名「フォーレン」:大日本製薬社製)の吸入麻酔を維持した。ラットをコイル内に伏臥位に保持し、T1強調像は、SpinEcho(SE)法で、T2強調画像はFastSpinEcho(FSE)法により行い、撮像条件はT1強調像はTR/TE=50/14で、T2強調像はTR/TE=4000/102とし、全てのラットを外傷直後に撮像し、引き続き外傷後1時間経過後と48時間経過後に撮像した。 【0043】(病理組織学分析)1時間経過後と48時間経過後のMRI撮像後に、脳損傷の状況を組織学的に評価するため、経心臓的な方法にて、200mlの0.9w/w%生理食塩水を血管から血球を排除する目的で還流し、続いて500mlの0.2MPBS(pH7.4)を含む4%パラフォルムアルデヒド(PFA)を用いて組織の固定を行い、パラフィンに包埋し、冠状方向で切片を作製し、ヘマトキシリン−エオジン(HE)染色を行なった。 【0044】各薬物の治療効果の評価に当たり、海馬CA1・CA3領域の1mm2当たりの生存錐体細胞数と、画像解析ソフト(NIHImageVer.1.55)を用いて組織損傷面積を計測した。損傷面積計測に当たっては、損傷面積が最大となる組織切片を対象とし、二群間を同一の方法で評価した。 【0045】(実験結果)二次的脳損傷(SBD)を発現する条件下で衝撃を加えたラットに対して、経時的に脳障害に伴う行動学的検討を加えたところ、次の結果を得た。二次的損傷を境にしてラットを尾懸垂した時の回旋現象の姿勢の程度(重度:2、軽度:1、正常:0)と反側前肢のカタトニア反応(重度:2、軽度:1、正常:0)の累積スコアにより評価した際、行動学的異常が見られた。また、12時間のうちにすべての行動学的異常は正常行動に回復した。 【0046】MRIの画像上での2群間における変化の差は外傷後48時間目において強く認め、無投与群では脳表及び皮質下白質の広範囲にわたり、T2強調像に高信号域と、T1強調像で低信号域も同程度に認めた。また、非投与群では壊死と考えられる損傷の程度に比例し脳浮腫の形成も見られた。 【0047】これに対して薬物投与群のラットでは、T2強調像高信号域、T1強調像域の割合は各々の1時間目に比べ若干の拡大を認めたが、無投与群に比べ大きく減少し、損傷面積、脳浮腫形成ともに画像的変化は最も軽度であった。図4(a)(b)に、薬物無投与群と薬物前投与群それぞれの48時間経過後のMRI撮像図(T2強調像)を示す。 【0048】組織学的検討に関しては、冠状切片において外傷側の大脳表面は外傷直下に損傷領域を形成し、特に48時間後では著明であった。無投与外傷群、薬物前投与群ともに、外傷後1時間の時点では損傷面積の割合が約10%とその損傷領域に大きな違いは認められないが、48時間後においては無投与外傷群と薬物前投与群の間に明確な差異を認めた。無投与群では、外傷後1時間において10%であった損傷面積が48時間で27.7%にまで増加し、その増加率は17.7%であった。対して薬物前投与群では損傷面積増加率は6.7%であった(図5参照)。このように、薬物投与群においても、1時間後にくらべ48時間後では損傷面積は拡大しているものの、無投与群に比べ二次的脳損傷の広がりが阻止され、損傷の大きさに有意な減少を認めた。なお、図6(a)(b)に、薬物無投与群(a)と薬物前投与群(b)それぞれの48時間経過後の脳損傷(海馬CA3領域)の病理組織学的写真を示す。 【0049】海馬CA1領域の錐体細胞における単位面積当たりの生存細胞数は、無投与外傷群の外傷後生存細胞数はコントロール群に比べ外傷後1時間では59.2%と著名に減少し、48時間では44.5%にまで減少した(図7(a)参照)。一方薬物前投与群においては、外傷後1時間では66.4%、48時間では54.8%であった(図7(b)参照)。 【0050】海馬CA3領域について同様の検討を行うと、無投与外傷群では生存細胞数は外傷後1時間で45.9%と減少し、48時間で37.6%と減少しているのに対し(図8(a)参照)、前投与群では1時間で63%、48時間では61.2%であった(図8(b)参照)。 【0051】このように、海馬生存細胞数においてはCA1領域、CA3領域ともに高い保護効果を認めたが、1時間目に対し外傷後48時間目は総数としての減少を認めた。また、損傷面積は細胞数同様、48時間後で縮小した。無投与群に比べ48時間目に薬物による保護効果が認められた。 【0052】薬物投与群での生存細胞数増加がみられたが、48時間目に、1時間目の状態より総数減少がみられたことは、この実験で用いた薬物は二次的脳損傷の増加抑制はされるが完全に阻止することは不可能であることを示唆した。以上の事実より、外傷後の二次的損傷に対し抑制効果を認め、薬物前投与を行うとより二次的脳損傷病変重症度や広がりが抑制されていることが明らかにされた。 【0053】〔実施例3〕次に、イヌのSBDについては臨床的に重要ではあるが、その報告はない。そのために、脳血流速度(cerebral blood flow (CBF)velocity; cm/sec)を介して、本発明による実験モデル作製器による場合と直逹挫滅巣(direct contusion nest:DCN)作製による場合とを比較検討した。 【0054】(実験方法)8匹の臨床上健康と認められた4才齢の雄のビーグル犬を用いた。実験群(n=6)は、正方形(1.2cm×1.2cm)に頭蓋骨を切除され、目的別に処理が実施された。異なる二つの病態の脳損傷モデル犬を作製するため、左前頭骨開頭によりアプローチした。切開創により自家製の直達挫滅巣作製器を刺入し、再現性のある直径5mmの球形の局所的直逹挫滅巣(direct contusion nest:DCN)を作製した(n=2)。なお、これは表1におけるCCに該当する。一方、上記実験モデル作製器による場合(硬膜外重錘落下法:WD法)には、12gの分銅を基準面から20cmの高さ(240cm・g)から重錘落下して、外傷を与えた。 【0055】(MRI撮像及び脳血流速度の測定)MRI撮像は、超伝導磁石、磁場強度0.5TのMRI(FLEXART MRTー50GP:東芝メディカル社製)を用いて行った。脳血流速度は当該MRI撮像より、3Dphase shift MRI angiography with presaturation pulse(PSMRA:TE=25, TR=10)法により、DCN群(n=2)、硬膜外重錘落下法群(n=4、切除した頭蓋骨片を再度術部に戻して固定した犬を含む。なお、骨片の再固定は外科用接着剤を用いた。)に対してそれぞれ実施した。 【0056】(実験結果)まず、MRI所見について、薬物前投与DCN群では外傷直後(0時間)から損傷部位は直径5mmの高信号領域を呈した。時間の経過と共に高信号領域は低信号領域となり、この低信号域の周囲には高信号領域が見られ、損傷自体は拡大した(図9参照)。このことから、DCN領域の周囲には虚血と浮腫が存在していることが理解される。一方、薬物前投与WD群では、落下直後(0時間)でのMRI所見は、わずかに点状の高信号領域が見られたが、その後の損傷の拡大は見られなかった(図10参照)。このことは、240cm・gの条件下での受傷後3時間経過以降からSBDが形成されたことを意味する。また、DCN群とWD群とを比較すると、両者のMRI所見は大きく異なり、DCN群では虚血と浮腫が拡散する傾向があった。これは、WD群ではSBDが発現するが、DCN群ではSBDが発現しないことを意味する。 【0057】また、脳血流速度について言えば、DCN群では、薬物無投与群(図11の破線で示す)及び薬物前投与群(図11の実線で示す)のいずれにおいても、脳血流速度が受傷直後に高値を示したが、以後低下して上昇することはなかった。すなわち、脳血流速度は損傷部位で不可逆的なダメージを受けたことにより、代償性に増えることはなく、むしろ減少経過をたどった。 【0058】一方、WD群においては、薬物無投与群では、ほとんど病変の見られない早期に、将来SBDの発現する部位に一致して上昇した。また、イヌの二次的脳損傷(SBD)の形成が受傷3時間目以降でみられ、このときの脳血流速度がピークに達した。さらに、MRI所見で見られたSBDの悪化につれて脳血流は減少した(図12参照)。また、頭蓋骨片を再固定したWD群にあっても、その脳血流は変化することはなかった(データを示さず)。この点、薬物前投与群においては、SBD出現時のピークは発現されず、SBDは抑制されうることが判明した。 【0059】この結果より、脳血流速度の変化は、頭蓋内圧と無関係で主として病巣の相違、すなわちWD群あるいはDCN群によって異なり、WD法においてSBDは遅発性の脳血流の上昇によって発症することが明らかにされた。すなわち、硬膜外重錘落下法によれば、遅発性の脳血流の上昇に伴うSBDを発症させることが確認された。また、経時的なMRI撮像診断法を利用することにより薬物の抗脳神経障害に対する評価も十分に行えるものと考えられる。 【0060】〔実施例4〕次に本発明の迷路装置を用いた記憶測定により評価を行った。雄Fisher系ラット(体重400〜450g)をペントバルビタールナトリウム(商品名「ネンブタール」:大日本製薬)40mg/kgの腹腔内投与麻酔下にてラット用定位脳固定装置に固定後、上記ラット用実験モデル作製器を用いて脳外傷を与えた。ラットは、一群3匹とし、一群のラットには、SBDが出現する条件、すなわち12gの分銅を5cmの高さ(60cm・g)から重錘落下し、残る一群にはSBDが出現しない条件、5cm・gで重錘落下した。 【0061】次いで、迷路装置を用いて外傷前後の所要時間を測定し、記憶障害の発現を確認した。その結果を表2に示す。通路部は開放端の開放幅15cm、奥行き50cm、高さ30cmであり、給餌台は平面視が一辺2.5cmの正方形状、高さが1cmであった。また、自由空間は通路方向に20cmであり、迷路部は全体として平面視で約70cm×62cmの大きさであった。なお、実験に先立つ1週間前から、同じ給餌所に餌を置いた状態で迷路を学習させた。各ラットは学習開始前1日絶食させた状態で学習に供した。また、餌は市販のラット用餌(日本クレア社製)を2〜3mmの粒状にしたものを用いた。 【0062】 【表2】
【0063】表2に示すように、SBD発現条件下で外傷を与えた場合には、明らかに餌を探し出す時間が増加したが、SBDが発現しない条件下で外傷を与えた場合には遅延が見られず、本発明の方法によって与えた衝撃が二次的損傷を発現させることが確認された。また、明らかに記憶領域にも影響を与えることが認識された。 【0064】 【発明の効果】本発明の簡易脳神経障害実験モデル作製器によれば、ラットやイヌ、ネコなどの実験動物に対して、簡単かつ再現性よく種々の脳神経障害、特に二次的脳損傷を引き起こすことができる。この結果、二次的脳損傷を付与できる条件下で頭部に衝撃を与え、その後例えばMRIによって経時的に脳の損傷度を評価し、被験物質が外傷に伴う二次的脳損傷の予防や治療に与える評価を得ることができる。また、本発明に係る迷路装置を用いて経時的に記憶を測定することによっても、同様な評価を得ることができる。 【0065】特に本発明によれば、衝撃付与された実験動物に二次的脳損傷が確実に発現し、あるいは撮像直後のMRIを採用することにより二次的脳損傷の発現の有無が直ちに峻別できる。これにより、無駄な実験動物の数が減少される。また、脳外傷に伴う障害、例えば二次的脳損傷に対する予防剤や治療剤などの抗脳神経障害薬、記憶に対する抗記憶障害薬について、効率良く薬効評価を行え、これらの薬物のスクリーリングに大きく貢献できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】501169486 【氏名又は名称】イメックスジャパン株式会社
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| 【出願日】 |
平成14年4月5日(2002.4.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100104307 【弁理士】 【氏名又は名称】志村 尚司
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| 【公開番号】 |
特開2003−289750(P2003−289750A) |
| 【公開日】 |
平成15年10月14日(2003.10.14) |
| 【出願番号】 |
特願2002−104478(P2002−104478) |
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