トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 珪藻付着防止効果を有する魚介類養殖網
【発明者】 【氏名】清水 隆夫
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラレ内

【氏名】楠戸 一正
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラレ内

【要約】 【課題】珪藻類の付着を長期に亘って防止できる魚介類養殖網を提供する。

【解決手段】ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)金属塩系防汚剤を含有する熱可塑性ポリエステル樹脂で被覆されてなる樹脂被覆糸がモジリ目を形成してなる魚介類養殖網。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)金属塩を含有する熱可塑性樹脂により被覆されてなる樹脂被覆糸が、モジリ目を形成してなることを特徴とする魚介類養殖網。
【請求項2】 樹脂被覆糸の芯糸を形成するポリマーの融点または軟化点より、被覆樹脂の融点または軟化点が50℃以上低い請求項1に記載の魚介類養殖網。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海水に長期間接触して使用された時に、珪藻類の付着が極めて少ない魚介類養殖網に関する。
【0002】
【従来の技術】海水中で長期間使用される魚介類養殖網としては、例えばハマチ、マダイ、トラフグ、ヒラメ等の稚魚養殖用モジ網;アコヤ貝、ホタテ貝、牡蠣等の貝類養殖用籠等の網地がある。これらの網地は、海水に接触するうちに短期間にその表面に種々の珪藻類が付着する。そして珪藻類の付着により網地の目が詰まり、酸素欠乏やエラムシ・ハダムシ等の寄生虫病の発生等、魚介類への大きな障害をきたすこととなる。
【0003】海水に接触して使用される定置網や養殖生け簀等は、上記のような水棲生物の付着を防止するための対策として、トリブチルスズオキシド、トリフェニルスズオキシド、トリフェニルスズアセテート、トリフェニルスズクロライド等の有機スズ化合物や、銅、銀、亜鉛、ニッケルなどの金属やその化合物、または窒素硫黄系、ハロゲン系等の有機化合物を含有させた塗料を塗布する方法が広く知られている。しかしながら、防汚塗料を処理する際に、防汚成分自体や有機溶媒に起因する激しい不快臭、刺激臭を伴い、更に作業者の健康を害するという問題があり、塗料塗布が不要で、防汚効果が長期間持続する製品が強く要望されている。また、これらの防汚塗料は海水中への薬剤溶出速度が大きく、そのため養殖魚介類が死亡する場合があり、特に稚魚や貝類には使用できなかった。
【0004】そこで、上記のような弊害を防止する手段として、3日毎にモジ網、生け簀籠の交換を行い、珪藻が付着した網の洗浄・補修を行う必要が有り、その作業に多大な労力と時間が費やされてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、塗料塗布が不要で、魚介類や人体に対する安全性が高く、耐久性があり、珪藻の付着を長期に亘って防止することが可能な魚介類養殖網を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)金属塩を含有する熱可塑性樹脂により被覆されてなる樹脂被覆糸が、モジリ目を形成してなる魚介類養殖網を提供することによって達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明においては、被覆樹脂中にビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)金属塩を含有していることが重要であり金属塩としては、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム等の塩が挙げられる。
【0008】かかる化合物の熱可塑性樹脂への含有量は、珪藻付着防止効果を考慮して、0.1〜30質量%の範囲であることが好ましい。含有量を多くしても効果の向上は認められず、また少なすぎても効果は奏されない。より好ましい含有量は3〜10質量%の範囲である。
【0009】上述の化合物を含有する熱可塑性樹脂は、ジオール変性もしくは酸変性の芳香族ポリエステルであることが、後述する芯糸を形成するポリマーとの融点または軟化点差を利用した熱融着性の点、上述の化合物との混練性等の点で好ましい。なおここで変性とは共重合を意味するものである。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等のポリエステルを用いることができるが、熱融着性、融点、繊維強度の点からは、テレフタル酸と1,6−ヘキサンジオールからなるポリヘキサメチレンテレフタレートを用いることが好ましい。該ポリエステルを変性させ得るジオール成分は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等であり、該ポリエステルを構成するジオール成分の10〜50モル%の範囲であることが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等は該ポリエステルを構成するジオール成分の1〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0010】該ポリエステルを変性させ得る酸成分としては、例えばイソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4−ジカルボキシフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸もしくはアジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、またはこれらのエステル類であり、該ポリエステルを構成する酸成分の5〜50モル%の範囲であることが好ましい。
【0011】また、該変性ポリエステルは、融点が150℃以下、溶融粘度が10000ポイズ以下(160℃、キャピラリー長10mm、キャピラリー径1mm、剪断速度1000sec-1の条件)であることが望ましい。融点が150℃を越える場合には、熱溶融による上述の化合物との混練、紡糸、成形の各工程で180℃を越えて熱をかける必要が生じ、上述の化合物が気化、または分解して、その効果が低下してしまう場合がある。また溶融粘度も、あまり高過ぎると混練、紡糸、成形の各工程で180℃以上の剪断熱が生じ、上述の化合物の気化、分解を招く場合が生じる。より好ましい融点は140℃以下、溶融粘度は2000〜5000ポイズの範囲である。
【0012】変性ポリエステルの中には融点が高いものがあるが、この場合には融点降下剤としてポリブテン、液状ポリエステル等の中分子ポリマーを使用することができる。該融点降下剤の添加量は、融点が150℃以下に下がる程度に、また溶融粘度が10000ポイズ以下に下がる程度の量を添加させれば、特に限定されるものではない。
【0013】また、これら熱可塑性樹脂中には、本発明の効果を損なわない範囲であれば相溶化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、導電性改良剤、結晶化遅延剤等の改質剤や着色顔料等の添加剤を適宜含有させることができる。
【0014】上述の熱可塑性樹脂が被覆されてなる芯糸を形成するポリマーとしては、その融点または軟化点が該熱可塑性樹脂の融点または軟化点より50℃以上高いポリマーが好ましく、かかる融点または軟化点を有するポリマーであれば特に限定されるものではないが、該熱可塑性樹脂からなる被膜が芯糸と剥離しないもの、被覆糸としての強度を保持するものが好ましい。
【0015】本発明においては、後述するレピア織機の工程通過性を良好なものとするために、被覆剥離を生じさせることがないように被覆樹脂と芯糸とが接着していることが望ましく、被覆樹脂と芯糸との間に空隙は存在しないことが望ましい。融点または軟化点差が50℃未満の場合には、溶融押出被覆、後述する経糸と緯糸との交点の熱融着の際に、溶断や著しい収縮が発生し、加工が不可能となる。
【0016】以上のような観点から被覆樹脂として上述の変性ポリエステル組成物を使用し、芯糸としてポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル、全芳香族アラミド等を用いることが好ましい。
【0017】熱可塑性樹脂を芯糸に被覆する方法としては該樹脂を溶媒に溶解して芯糸表面に塗布する被覆方法もあるが、本発明においては溶融押出法により芯糸に被覆することが好ましい。
【0018】また芯糸は、フィラメント糸、紡績糸の形態を問わず、これらからなる合撚糸等も目的に応じて使用することができる。該フィラメント糸はモノフィラメントでもマルチフィラメントでもよい。
【0019】本発明の網の製造方法については、上述の化合物が含有された熱可塑性樹脂で芯糸が被覆されてなる樹脂被覆糸が、モジリ目を形成するような網を製造できる方法であれば特に制限されるものではない。本発明の網を製造する方法の一例を示すと、まず、二軸混練押出機を使用して、前記構造式に記載の化合物さらには必要に応じてその他の化合物と熱可塑性樹脂とを均一に混合しダイに導き、芯糸表面に被覆させる。被覆樹脂と芯糸との接着性を高めるためには、加圧型ダイを使用することが好ましい。芯糸を形成するポリマーと、上記化合物を含む熱可塑性樹脂との融点または軟化点の差を50℃以上にすることによって、柔軟且つ断面形状が不均一の芯糸表面にほぼ均一に上記熱可塑性樹脂組成物を被覆することができる。その上、被覆樹脂との接触によって軟化した芯糸にかかる余分な変形や摩擦による断糸を抑制することができる。
【0020】芯糸の走行速度、ドラフト率は適宜設定することができ、ドラフトを受けた樹脂被覆糸は冷却ゾーンに導かれ、冷却固化され巻き取られる。次に、得られた被覆糸を用いてレピア織機等により絡み織でメッシュを作製する。この際に、緯糸がモジリ目を形成するのである。そして乾式加熱により、経糸と緯糸との交点を熱融着させることにより、網を得ることができる。経糸と緯糸との交点を熱融着させることにより、目ズレを防ぐことができ、網としての用をなすことができる。
【0021】本発明の網は、一見織物のように経糸と緯糸を交差して織り込み、正方形の網目を持った網である。細目網分野を中心として使用することができ、イリコのパッチ網やハマチの稚魚、マダイ、ヒラメ、トラフグ等の養殖網(生け簀網)、海苔網、ワカメ網、アコヤ貝・ホタテ貝牡蠣等の養殖籠などに有用である。
【0022】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。尚、実施例中の各評価は、以下の方法により測定されたものである。
(1)珪藻付着状況の判定基準作製した網を50cm×50cmの銅枠に取り付け、鹿児島県東町の海中に水深1mの位置で懸垂し、経時的に珪藻の付着状況を観察し、次の5段階で評価した。
判定基準5:珪藻の付着が全く観察されなかった。
4:対象物の表面全体の10%程度に珪藻の付着が認められた。
3:対象物の表面全体の20%程度に珪藻の付着が認められた。
2:対象物の表面全体の50%程度に珪藻の付着が認められた。
1:対象物の表面全体に珪藻の付着が見られた。
(2)ポリマーの融点(℃)
示差操作熱量計(メトラー社製、TCプロセッサーTC10A型)を用いて測定した。
(3)ポリマーの溶融粘度(ポイズ)
キャピログラフ(東洋精機社製、キャピログラフ1C)を用いて、160℃における溶融粘度を測定した。
【0023】実施例1イソフタル酸を10モル%共重合したポリヘキサメチレンテレフタレート([η]=0.86、融点135℃、溶融粘度3500ポイズ)に、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)亜鉛塩を10質量%、アジピン酸系液状ポリエステル(旭電化製アデカサイザーPN−350:25℃粘度10000cp)を15質量%、カーボンよりなる黒色顔料を0.4質量%含有させ、熱溶融樹脂被覆装置を用いて、ポリアリレートマルチフィラメント(クラレ製:融点320℃、1100dtex/200フィラメント、80T/M片撚)100質量部に対し、200質量部被覆し、3300dtexの樹脂被覆糸を得た。次に、該樹脂被覆糸を使用してレピア織機にて絡み織で経糸密度4本×2/吋、緯糸密度4本×2/吋のメッシュを作製し、151℃で30秒加熱して経糸、及び緯糸の交点を熱融着させ網を得た。この網について珪藻付着試験を行った結果、海中浸漬3ヶ月間充分な防汚効果を示した。
【0024】実施例2実施例1のビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)亜鉛塩を、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)銅塩に変更したこと以外は、実施例1と同様に防汚性網を得た。この網について珪藻付着試験を行った結果、海中浸漬3ヶ月間充分な防汚効果を示した。
【0025】実施例3実施例1で使用したイソフタル酸を10モル%共重合したポリヘキサメチレンテレフタレートを、エチレングリコールを20モル%共重合したポリヘキサメチレンテレフタレート([η]=0.81、融点137℃、溶融粘度3300ポイズ)に変更したこと以外は、実施例1と同様に防汚性網を得た。この網について珪藻付着試験を行った結果、海中浸漬3ヶ月間充分な防汚効果を示した。
【0026】実施例4実施例1で使用したイソフタル酸を10モル%共重合したポリヘキサメチレンテレフタレートを、1,4−ブタンジオールを30モル%共重合したポリヘキサメチレンテレフタレート([η]=0.86、融点126℃、溶融粘度4000ポイズ)に変更したこと以外は、実施例1と同様に防汚性網を得た。この網について珪藻付着試験を行った結果、海中浸漬3ヶ月間充分な防汚効果を示した。
【0027】比較例1実施例1のビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)亜鉛塩を、ジンクジメチルジチオカーバメートに変更したこと以外は実施例1と同様に防汚性網を得た。この網について珪藻付着試験を行った結果、海中浸漬3ヶ日間で珪藻が大量に付着し、目詰まりして使用できない状態になった。
【0028】比較例2ナイロンマルチフィラメント製の目合90経の稚魚養殖用モジ網について珪藻付着試験を行った結果、海中浸漬3ヶ日間で珪藻が大量に付着し、目詰まりして使用できない状態になった。
【0029】
【発明の効果】本発明の網は、長期間海中に浸漬しても珪藻類の付着が全く無く、魚介類養殖網に最適である。
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【住所又は居所】岡山県倉敷市酒津1621番地
【出願日】 平成14年2月5日(2002.2.5)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−225032(P2003−225032A)
【公開日】 平成15年8月12日(2003.8.12)
【出願番号】 特願2002−28184(P2002−28184)